説明

変位センサ

【課題】分解能を維持しつつ広い計測レンジで変位を測定することが可能な変位センサを提供する。
【解決手段】センサヘッド100は、レーザダイオード1と、フォトダイオード2と、偏光ビームスプリッタ(PBS)3と、レンズ4〜6と、ピンホール7aが形成された絞り板7と、アーム8a,8bを有する音叉状の振動子8と、振動子8のアーム8aに取り付けられたレンズ9(コリメートレンズ)と、振動子8のアーム8bに取り付けられたレンズ10(対物レンズ)とを備える。レンズ9の焦点距離は、レンズ10の焦点距離の2倍以下、好ましくは1倍と定められる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触で計測対象物の変位を計測する変位センサに関し、特に、共焦点光学系を用いた計測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、共焦点光学系を利用して計測対象物の変位を計測する計測装置が提案されている。たとえば特開平7−113617号公報(特許文献1)に開示された変位計は、音叉に取り付けられたレンズを光軸方向に振動させることで計測対象物へ向けて照射する光の集光位置を変化させる。当該変位計は、集光位置が計測対象物の表面と一致するときにピンホールを通って受光部で受光される反射光の受光量が最大となることを利用して変位量を計測している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平7−113617号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
変位センサの性能向上の観点から、変位の計測の分解能を維持しつつ計測レンジを広げることが求められている。このための方法として、たとえばレンズを追加することが考えられる。しかしながら単純にレンズを追加しただけでは計測の分解能が悪化する可能性がある。
【0005】
一方、音叉の振幅を増大させれば、分解能を維持しながら計測レンジを拡大できると考えられる。しかしながら、音叉の振幅を大きくすることによって、たとえば計測中に音叉から発生する騒音が大きくなるといった問題、変位センサの消費電力が増大するといった問題、あるいは音叉の負荷が大きくなるために音叉の寿命が縮まるといった問題が生じ得る。
【0006】
本発明の目的は、分解能を維持しつつ広い計測レンジで変位を測定することが可能な変位センサを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のある局面に係る変位センサは、光を照射する投光部と、投光部からの光を計測対象物に投射するための対物レンズと、計測対象物からの反射光を受光する受光部と、対物レンズと同一の光軸上に配置されたコリメートレンズと、コリメートレンズおよび対物レンズをそれぞれ支持する第1および第2のアームを有し、第1および第2のアームを光軸に沿って互いに逆方向に振動させる振動子とを備える。コリメートレンズの焦点距離が、対物レンズの焦点距離の2倍以下に定められる。
【0008】
好ましくは、コリメートレンズの焦点距離は、対物レンズの焦点距離の1倍である。
好ましくは、変位センサは、計測対象物からの反射光の光路を、投光部から照射された光の光路から分離する光路分離部と、開口が形成され、投光部からの光の光路と計測対象物からの反射光の光路とが共通する位置に配置された遮光部材と、遮光部材の開口の位置において投光部から照射された光が焦点を結ぶように投光部から照射された光を集光する光学系とをさらに備える。受光部の位置は、投光部から発せられた光が計測対象物の表面で焦点を結ぶときに、計測対象物からの反射光が焦点を結ぶ位置に対応する。
【0009】
好ましくは、変位センサは、対物レンズと計測対象物に対応する位置との間に配置されて、投光部から照射された光が計測対象物の表面において焦点を結ぶときの計測対象物の位置を対物レンズから遠ざかる方向に変位させるための光学系をさらに備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、分解能を維持しつつ広い計測レンジで変位を測定することが可能な変位センサを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一つの実施の形態に係る変位センサの全体構成を模式的に示す図である。
【図2】図1に示した変位センサの測定原理を説明するための模式図である。
【図3】従来技術に基づく、計測レンジを広げることが可能と考えられる第1の方法を示した図である。
【図4】従来技術に基づく、計測レンジを広げることが可能と考えられる第2の方法を示した図である。
【図5】本発明の実施の形態に係る変位センサの計測方法を説明するための図である。
【図6】焦点距離f1を小さくした場合における変位センサの構成を示した図である。
【図7】図1に示した構成の変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰返さない。
【0013】
図1は、本発明の一つの実施の形態に係る変位センサの全体構成を模式的に示す図である。図1を参照して、本発明の実施の形態に係る変位センサは、センサヘッド100と、当該センサヘッド100を制御するコントローラ200とを備える。
【0014】
センサヘッド100は、レーザダイオード1と、フォトダイオード2と、偏光ビームスプリッタ(PBS)3と、レンズ4〜6と、ピンホール7aが形成された絞り板7と、アーム8a,8bを有する音叉状の振動子8と、振動子8のアーム8aに取り付けられたレンズ9(コリメートレンズ)と、振動子8のアーム8bに取り付けられたレンズ10(対物レンズ)と、振動子8のアーム8a,8bを振動させるための駆動部11と、アーム8a,8bの位置を検出するための位置検出部12と、これらの要素を収容する筐体50とを備える。
【0015】
レーザダイオード1はコントローラ200から電流が供給されることによって一定の強度の光を発生させる。レーザダイオード1の発光点1aから発せられた光はレンズ4によってコリメートされる。偏光ビームスプリッタ3は、レンズ4によってコリメートされた光を透過させる。偏光ビームスプリッタ3を透過した光はレンズ5によって、絞り板7に設けられたピンホール7aに向けて集光される。
【0016】
ピンホール7aを通過した光は、レンズ9,10によって計測対象物90の表面上に集光される。レンズ9,10は、それぞれ振動子8のアーム8a,8bに支持される。
【0017】
振動子8の近傍には、振動子8を駆動するための駆動部11が設けられる。図1に示していないが、駆動部11はコイルおよびそのコイルに通電するための駆動回路を有する。コイルへの電流の供給とコイルへの電流の供給の停止とが一定の周期で繰返される。これにより振動子8のアーム8a,8bが振動する。
【0018】
レンズ9,10は、アーム8a,8bが光軸Xに沿って互いに逆方向に振動することにより、計測対象物90に接近する方向および遠ざかる方向に移動する。なお、レンズ9,10は、光軸Xに沿って互いに逆方向に振動する。位置検出部12は、レーザダイオード1の照射光の光軸Xの方向に沿ったレンズ9,10の位置を検出する。この光軸Xは、レンズ9の光軸およびレンズ10の光軸にも一致する。
【0019】
レーザダイオード1から計測対象物90へ向けて照射された光は、当該計測対象物90によって反射される。計測対象物90からの反射光は、レンズ9,10によって絞り板7に設けられたピンホール7aに向けて集光される。ピンホール7aを通過した光は、レンズ5によってコリメートされて偏光ビームスプリッタ3に入射する。
【0020】
偏光ビームスプリッタ3は、レンズ5からの光の光路、すなわち計測対象物90からの反射光の光路を、レーザダイオード1から発せられる光の光路から分離する。具体的には、偏光ビームスプリッタ3は、レンズ5からの光を反射させる。偏光ビームスプリッタ3によって反射した光はレンズ6によって集光されてフォトダイオード2の受光面2aに入射する。フォトダイオード2から出力された受光信号は、コントローラ200に入力される。なお、偏光ビームスプリッタ3に代わり、ハーフミラー(必要に応じて、偏光板をさらに追加してもよい)を用いることも可能である。フォトダイオード2の受光面2aの位置は、レーザダイオード1から発せられた光が計測対象物90の表面で焦点を結ぶときに、計測対象物90からの反射光が焦点を結ぶ位置に対応する。
【0021】
コントローラ200は、駆動部11に信号を送り、駆動部11の動作を制御する。さらに、コントローラ200は、位置検出部12からの信号およびフォトダイオード2からの受光信号に基づいて、アーム8a,8bの変位量と受光信号の強度とを対応付ける。これにより、コントローラ200は、受光信号の強度が最大値であるときのアーム8a,8bの変位量を検出して、その変位量に基づいて計測対象物90の表面の変位を測定する。
【0022】
この明細書では「変位」とはレーザダイオード1の照射光の光軸方向における位置の変化を意味する。したがって、「変位」とは高さ方向の変化に限定されるものではない。たとえばレーザダイオード1の光軸方向が水平方向となるように光学系が構成されている場合には、「変位」とは水平方向の変化に対応する。
【0023】
図2は、図1に示した変位センサの測定原理を説明するための模式図である。図2を参照して、測定原理を分かりやすく説明するため、レンズ9のみが振動子8によって変位し、レンズ10は固定された位置に設けられているものとする。
【0024】
図示しないレーザダイオードから投射された光は、絞り板7のピンホール7aを通り、レンズ9,10によって集められ、計測対象物90の表面に照射される。計測対象物90の表面で反射した光は、レンズ9,10によって集められ、絞り板7の位置に到達する。ピンホール7aを通過する反射光の光量は、レンズ9の変位量に依存する。
【0025】
(a)は、レーザダイオードから投射された光が、計測対象物90の手前で焦点を結ぶ場合を示している。この場合には、計測対象物90の表面で反射した光が、レンズ9,10によって集められるが、ピンホール7aの手前で焦点を結ぶ。このため、ピンホール7aの位置ではピンホール7aの径よりも光スポットの径が大きくなり、ピンホール7aを通過する光の量が小さくなる。したがって受光信号の強度が小さくなる。
【0026】
(b)は、レーザダイオードから投射された光が、計測対象物90の表面で焦点を結ぶ場合を示している。この場合には、計測対象物90の表面で反射した光は、レンズ9,10によって集められ、ピンホール7aの位置で焦点を結ぶ。このため、ピンホール7aを通過する光の量が最大となるので、受光信号の強度も最大となる。なお、この場合にはレーザダイオードから投射された光の光路と計測対象物90の表面で反射した光の光路とは一致する。ただし図2では、計測対象物90に照射される光と計測対象物90で反射した光とを分かりやすく示すために、これらの光路をわずかにずらして示している。
【0027】
(c)は、レーザダイオードから投射された光が、計測対象物90の表面よりも内部の位置で焦点を結ぶ場合を示している。この場合にも、計測対象物90の表面からの反射光がピンホール7aの位置で形成するスポットは、ピンホール7aより大きくなる。したがってピンホール7aを通過する光の量が小さくなる。
【0028】
(a)〜(c)より、受光信号の強度は、レーザダイオードから投射された光の焦点位置が計測対象物90の表面に一致するときに最大となり、焦点位置が計測対象物90の表面と異なる場合には、最大値に比べて著しく小さくなることが分かる。図2の上半分に示したレンズ9の変位と受光信号の強度との関係は、上記の関係を表わしている。レンズ9の変位と計測対象物の変位との関係は予め求められている。したがって、受光信号の強度が最大になるときのレンズ9の変位から、計測対象物90の変位を求めることができる。
【0029】
焦点位置の計測対象物90の表面からのずれに対して受光信号の強度が大きく変化するほど、計測対象物90の変位を精度よく求めることができる。すなわち、図2の上半分に示した変位と受光信号の強度との関係において、受光信号波形の幅が細いほど変位の計測の分解能が高い。また、グラフの横軸の範囲すなわち変位が大きいほど、計測レンジが大きくなる。ただし計測レンジを広げても、受光信号波形の幅ができるだけ広がらないことが好ましい。
【0030】
このため本発明の実施の形態では、音叉状の振動子8の2つのアーム(8a,8b)にレンズ(9,10)を取り付ける。さらに、計測対象物90に遠い側のレンズ9(コリメートレンズ)の焦点距離を、計測対象物90に近い側のレンズ10(対物レンズ)の焦点距離の2倍以下、好ましくは、レンズ10の焦点距離の1倍とする。これによって、計測の分解能の低下を抑えながら計測レンジを広げることができる。
【0031】
以下、本発明の実施の形態による効果について詳細に説明する。以下では、まず、従来技術に基づいて本発明者らが検討した、計測レンジを広げるための2つの方法を説明し、次に本発明の実施の形態に係る変位センサについて説明する。
【0032】
図3は、従来技術に基づく、計測レンジを広げることが可能と考えられる第1の方法を示した図である。図3を参照して、(a)は、変位センサの基本的構成を模式的に示し、(b)は(a)の構成にレンズ15,16を追加した構成を示している。(a),(b)に示した構成ではレンズ10のみが振動子8のアーム8bによって変位し、レンズ9の位置は固定されているものとする。(a),(b)ともにレンズ10の変位量は±dである。
【0033】
なお、(a)および(b)の構成では絞り板7がフォトダイオード2の手前に設けられているが、図1に示したように絞り板7が配置されていても以下の説明が成り立つ。
【0034】
レンズ9の焦点距離をf1とし、レンズ10の焦点距離をf2とし、レンズ15の焦点距離をf3とし、レンズ16の焦点距離をf4とする。(a)の場合、計測レンジは±dとなるのに対して(b)の場合には計測レンジが±d×(f4/f3)2となる。ここでf4>f3であるので、(b)の場合の計測レンジは(a)の場合の計測レンジに比べて大きくなる。すなわち、(b)の構成では、(a)の構成にレンズ15,16が追加されることにより、その計測レンジが縦倍率(=(f4/f3)2)の割合で拡大する。なお「縦倍率」とは、結像光学系における光軸方向の結像倍率を意味する。
【0035】
ピンホール7aのサイズが回折限界とほぼ同じ場合、ピンホールを通過する光の焦点深度はλ/2NA2(λ:光の波長、NA:開口数)と表わされる。(a),(b)の場合ともに、焦点深度はレンズ9の焦点距離f1の二乗に比例する量となる(=A・(f1)2:Aは定数)。
【0036】
しかしながら、被写界深度についてみると、(a)の場合には、被写界深度がA・(f1)2×(f2/f1)2=A・(f2)2であるのに対して、(b)の場合には、被写界深度がA・(f1)2×(f2/f1)2×(f4/f3)2=A・(f2)2×(f4/f3)2となる。すなわち(b)の場合の被写界深度は(a)の場合の被写界深度に対して縦倍率の割合で拡大する。
【0037】
被写界深度は、変位センサの分解能と関連する。被写界深度が大きくなるということは焦点位置の計測対象物90の表面からのずれに対して受光信号の強度が変化しにくくなることを示しており、変位センサの分解能が低下することを意味する。すなわち(b)の構成によれば、(a)の構成に比べて計測レンジを拡大することができるものの分解能が低下する。
【0038】
図4は、従来技術に基づく、計測レンジを広げることが可能と考えられる第2の方法を示した図である。図4を参照して(a)の構成および(b)の構成は互いに同一であり、さらに両方の構成は図3(a)の構成とも同一である。(a)の場合には、レンズ10の変位量が±dであるのに対して(b)の場合にはレンズ10の変位量が±2dである。したがって計測レンジは単純にレンズの変位量に依存する。(c)に示されるように、(b)の場合の計測レンジは(a)の場合の計測レンジの2倍となる。(a)の構成と(b)の構成とは互いに同一であるため、焦点深度および被写界深度は(a),(b)間で同じとなる。
【0039】
図4に示すように、振動子8の振幅を大きくすれば、分解能を維持したまま計測レンジを大きくすることができる。しかしながら、振動子8のアームの振幅を大きくすることにより、振動子から生じる騒音が大きくなる。また、振動子8を駆動するための電力が大きくなるので変位センサの消費電力が増大する。さらに振動子8の負荷が大きくなるため振動子8の寿命が縮まるという問題も生じうる。
【0040】
図5は、本発明の実施の形態に係る変位センサの計測方法を説明するための図である。図5を参照して、(a)は図3(a)と同様に変位センサの基本的構成を模式的に示す。(b)は本発明の実施の形態に係る変位センサの構成を模式的に示す。上述のように、本発明の実施の形態では、レンズ9,10は、音叉状の振動子8のアーム8a,8bにそれぞれ取り付けられる。アーム8a,8bの各々の振幅はdである。なお、アーム8a,8bは互いに逆方向に振動する。
【0041】
(b)に示した構成によれば、計測レンジは±d(1+(f2/f1)2)となり、(a)に示した構成での計測レンジに対して±d×(f2/f1)2だけ増大する。一方、(b)の構成での焦点深度は、A・(f1)2であり、(a)の構成での焦点深度と同じである。さらに、(b)の構成での被写界深度はA・(f2)2となり、(a)の構成での被写界深度と同じである。このことは、計測の分解能が維持されていることを示している。
【0042】
このように本発明の実施の形態では、音叉状の振動子が有する2つのアームの両方にレンズを取り付けることによって、振動子の振幅を増大させることなく計測レンジを広げることができる。さらに、本発明の実施の形態では、計測レンジが広がっても分解能を維持することができる。
【0043】
上記のように、本発明の実施の形態では、レンズ9,10の焦点距離の比(=f2/f1)が計測レンジにとって重要となる。f1=f2の場合には、計測レンジは±2dとなり、図5(a)の構成での計測レンジの2倍となる。焦点距離f1を焦点距離f2よりも大きくするほど、計測レンジを拡大させる効果が小さくなる。さらにレーザダイオード1(およびフォトダイオード2)とレンズ9との間の距離が焦点距離f1に等しいため、焦点距離f1を長くなるほど、センサヘッドを大型化させる必要が生じる。
【0044】
このような観点から、本発明の実施の形態では、焦点距離f1の上限値を焦点距離f2の2倍とする。f1=2×f2の場合、計測レンジは±1.25dとなり、計測レンジを拡大させる効果を十分に発現させることができる。
【0045】
図6は、焦点距離f1を小さくした場合における変位センサの構成を示した図である。図6を参照して、焦点距離f1を焦点距離f2よりも小さくするほど(f2/f1)が大きくなる。これにより計測レンジを拡大させることができる。ただし、レーザダイオード1(およびフォトダイオード2)とレンズ9との間の距離が縮まるので、レンズ9,10を配置することが難しくなる可能性がある。たとえば偏光ビームスプリッタ3とレンズ9とが干渉する可能性が考えられる。
【0046】
さらにレーザダイオード1から発生された光はある角度で広がる。焦点距離f1を小さくした場合にはレンズ9の外径を小さくする必要があると考えられる。しかしながら外径の小さいレンズをレンズ9として用いた場合には、より高い精度での位置合わせが必要であるといった課題が発生する。このため、たとえば変位センサを組み立てるためのコストが増大するといった課題が発生する。
【0047】
このような観点から、本発明の実施の形態では、焦点距離f1を焦点距離f2の1倍以上2倍以下とする。これにより、分解能の低下を防ぎつつ計測レンジを拡大させる効果を十分に発現させることができる。
【0048】
好ましくは、焦点距離f1を焦点距離f2に等しくする。これによりレンズ9,10に同一種類のレンズを用いることができるので、センサヘッドのコストダウンを図ることができる。さらにレンズ9,10に同一種類のレンズを用いることで、振動子8のアーム8a,8bの間で重量のバランスをとることができる。これにより2つのアームを効率的に振動させることができる。
【0049】
なお、図1の構成では、レーザダイオード1から計測対象物90に投射される光と、計測対象物90により反射された光とが共通のピンホール(ピンホール7a)を通過する。すなわちピンホール7aは、実質的な光源となり、また、計測対象物90での反射光に対する絞りとなっている。
【0050】
これにより、光源と絞りとが同一のもので構成されるため、両者の位置ずれに起因する計測誤差の発生を抑制することができる。さらに、レーザダイオード1から発せられる光の広がり角度が大きいので、コリメートレンズ(レンズ9)の焦点距離が短くなったとしても、当該コリメートレンズの外径を大きくすることができる。これによりセンサヘッドの組立ておよび光学素子の配置の調整などを容易に行なうことができる。
【0051】
ただし本発明の実施形態に係るセンサヘッドを構成する光学系は、共焦点光学系であればよく、図1の構成に限定されるものではない。たとえば図5(b)に示したように、絞り板7をフォトダイオード2の手前に置いて、レーザダイオード1から計測対象物90に投射される光の光路上には開口がなく、計測対象物90からの反射光の光路にのみ開口が設けられていてもよい。
【0052】
さらに、図1に示した構成に、光学素子を適宜追加してもよい。図7は、図1に示した構成の変形例を示した図である。図1および図7を参照して、センサヘッド100の筐体50には、レンズユニット20が接続される。レンズユニット20は、筐体50に着脱可能である。
【0053】
レンズユニット20は、レンズ17,18を備える。レーザダイオード1からの光は、レンズ10から出た後にレンズユニット20に入射する。レンズ10から出た光はレンズ17,18によって、計測対象物90の表面において焦点を結ぶ。計測対象物90の表面で反射した光は、レンズ18,17を通り、レンズ10に入射する。なお、図7に示したセンサヘッド100の他の部分の構成および機能は、図1に示したセンサヘッドの対応する部分の構成および機能と同一であるので以後の説明は繰返さない。
【0054】
図7に示した構成では、レンズユニット20を筐体50に着脱することによって、センサヘッド100と計測対象物90との間の距離、言い換えればワーキングディスタンスを変えることができる。具体的には、レンズユニット20は、レーザダイオード1から照射された光が計測対象物90の表面において焦点を結ぶときの計測対象物90の位置をレンズ10から遠ざかる方向に変位させる。これによりワーキングディスタンスを長くすることができる。
【0055】
なお、焦点距離の異なる複数のレンズユニット20を準備すれば、筐体50に接続されるレンズユニットをそれら複数のレンズユニット20の中から適宜選択することができる。これにより計測対象物90とセンサヘッド100との間のワーキングディスタンスを、より広い範囲で変更することが可能になる。
【0056】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0057】
1 レーザダイオード、1a 発光点、2 フォトダイオード、2a 受光面、3 偏光ビームスプリッタ、4〜6,9,10,15〜18 レンズ、7 絞り板、7a ピンホール、8 振動子、8a,8b アーム、11 駆動部、12 位置検出部、20 レンズユニット、50 筐体、90 計測対象物、100 センサヘッド、200 コントローラ、X 光軸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を照射する投光部と、
前記投光部からの光を計測対象物に投射するための対物レンズと、
前記計測対象物からの反射光を受光する受光部と、
前記対物レンズと同一の光軸上に配置されたコリメートレンズと、
前記コリメートレンズおよび前記対物レンズをそれぞれ支持する第1および第2のアームを有し、前記第1および第2のアームを前記光軸に沿って互いに逆方向に振動させる振動子とを備え、
前記コリメートレンズの焦点距離が、前記対物レンズの焦点距離の2倍以下に定められる、変位センサ。
【請求項2】
前記コリメートレンズの焦点距離は、前記対物レンズの焦点距離の1倍である、請求項1に記載の変位センサ。
【請求項3】
前記計測対象物からの前記反射光の光路を、前記投光部から照射された光の光路から分離する光路分離部と、
開口が形成され、前記投光部からの光の光路と前記計測対象物からの前記反射光の光路とが共通する位置に配置された遮光部材と、
前記遮光部材の前記開口の位置において前記投光部から照射された光が焦点を結ぶように前記投光部から照射された光を集光する光学系とをさらに備え、
前記受光部の位置は、前記投光部から発せられた光が前記計測対象物の表面で焦点を結ぶときに、前記計測対象物からの反射光が焦点を結ぶ位置に対応する、請求項1または2に記載の変位センサ。
【請求項4】
前記対物レンズと前記計測対象物に対応する位置との間に配置されて、前記投光部から照射された光が前記計測対象物の表面において焦点を結ぶときの前記計測対象物の位置を前記対物レンズから遠ざかる方向に変位させるための光学系をさらに備える、請求項1〜3のいずれか1項に記載の変位センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−189546(P2012−189546A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55488(P2011−55488)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000002945)オムロン株式会社 (3,542)
【Fターム(参考)】