説明

変位検出装置

【課題】対物レンズを正確に変位させることにより、精度の高い測定を行うことのできる変位検出装置を提供する。
【解決手段】変位検出装置1では、対物レンズ3が光源2からの出射光を被測定面101に向けて集光する。被測定面101からの反射光の光路は、分離光学系4により光源2から出射光の光路と分離される。分離光学系4を通った反射光は、集光手段7により集光され、非点収差発生手段8により非点収差が発生した状態で受光部9に入射する。受光部9の直近に設けられた入射光束径調整手段12は、受光部9へ入射する被測定面からの反射光の光束径を調整する。位置情報生成部10は、受光部9で検出した光量から得られるフォーカスエラー信号及びSUM信号を用いて被測定面101の位置情報を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源から出射された光を用い、非接触センサによって被測定面の変位を検出する変位検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、被測定面の変位や形状を測定する装置として変位検出装置が広く利用されている。従来の変位検出装置では、光源から出射した光を対物レンズで被測定面に集光し、被測定面で反射した反射光を非点光学素子で集光して受光素子に入射させて、非点収差法によりフォーカスエラー信号を生成する。そして、フォーカスエラー信号を用いてサーボ機構を駆動させ、対物レンズの焦点位置が被測定面となるように対物レンズを変位させる。このとき、連結部材を介して対物レンズに一体的に取り付けられたリニアスケールの目盛を読み取ることで、被測定面の変位を検出する(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−89480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、対物レンズの変位量を示すフォーカスエラー信号は迷光等によってリンギング状の波形乱れが発生する場合があり、対物レンズが基準位置にあることを示すゼロクロス点が複数発生する。サーボ機構を駆動させる条件として、対物レンズを光軸方向に駆動した際の各受光素子における受光量のSUM(和)信号がある一定値よりも大きく、かつ、フォーカスエラー信号がゼロクロス点にあるという2条件を満たした対物レンズの位置にフォーカスサーボをかけるため、SUM信号がある一定値よりも大きい区間(以下、SUM信号の立ち上がり区間という)が長いと、その範囲内に上述したフォーカスエラー信号のゼロクロス点が多数発生し、最悪の場合、誤ったゼロクロス点に基づいてサーボ機構を駆動し、対物レンズを間違った位置に変位させてしまうという問題がある。
【0005】
また、SUM信号の立ち上がり区間が長いと、サーボ機構を駆動させるまでの処理時間が長くなるという問題も生じる。
【0006】
一方、SUM信号の立ち上がり区間が長いと、被測定面へのフォーカスサーボロック中に衝撃等の外乱が加わり、フォーカスサーボがはずれて対物レンズが光軸方向に若干動いたとしても、SUM信号がSUM信号立ち上がり区間からはずれにくくなるため、フォーカスサーボ復帰時にシステム側で必要なプロセスが少なくてすみ、フォーカスサーボ復帰までの時間を短くすることができるメリットがある。このようにSUM信号の立ち上がり区間は使用環境、動作状況等の仕様に応じて最適化させる必要がある。
【0007】
SUM信号の立ち上がり区間を最適化するためには、受光素子を交換して受光素子の面積を変化させることが考えられるが、受光素子自体を交換しなければならないという問題が生じる。
【0008】
本発明は、以上のことを配慮してなされたものであり、受光素子を変えることなく、適正なSUM信号立ち上がり区間を持った変位検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明の変位検出装置は、光源と、対物レンズと、分離光学系と、集光手段と、非点収差発生手段と、受光部と、光量調整手段と、位置情報生成部とを備えている。対物レンズは、光源からの出射光を被測定面に向けて集光し、分離光学系は、被測定面からの反射光の光路を光源から出射光の光路と分離する。集光手段は、分離光学系によって出射光の光路と分離された反射光を集光し、非点収差発生手段は、集光手段によって集光された反射光に非点収差を発生させる。
【0010】
受光部は、非点収差発生手段により非点収差が発生した反射光の光量を検出し、入射光束径調整手段は、受光部に入射する被測定面からの反射光の光束径を調整する。位置情報生成部は、受光部により検出された光量から得られるフォーカスエラー信号を用いて被測定面の位置情報を生成する。
【0011】
上記構成の変位検出装置では、入射光束径調整手段によって、受光部に入射する被測定面からの反射光の光束径を調整し、SUM信号の立ち上がり区間を任意の長さに設定することができる。そのため、変位検出装置のSUM信号立ち上がり区間の長さを変える場合であっても、受光素子自体を交換する必要がない。また、SUM信号の立ち上がり区間を短く設定することで、フォーカスエラー信号の誤ったゼロクロス点にフォーカスサーボをかけてしまう可能性が少なくなる。その結果、サーボ機構によって、対物レンズを正確な位置に変位させることができ、精度の高い測定を行うことができる。また、この入射光束径調整手段は受光部の近くに設置することが好ましく、受光素子に入射する被測定面からの反射光の光束径を正確に調整することができ、SUM信号の立ち上がり区間をより正確に設定することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明の変位検出装置によれば、対物レンズを正確に変位させて、精度の高い測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の変位検出装置の実施の形態を示すブロック図である。
【図2】本発明の変位検出装置の実施の形態に係る受光部の照射像の例を示す説明図である。
【図3】本発明の変位検出装置の実施の形態に係る受光部によって検出された光量から得られるフォーカスエラー信号及びSUM信号の特性を示す図である。
【図4】本発明の変位検出装置の実施の形態に係るアパーチャと受光素子との相対位置関係を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の変位検出装置を実施するための形態について、図1〜図4を参照して説明する。各図において共通の部材には、同一の符号を付している。
【0015】
まず、変位検出装置の実施の形態について、図1を参照して説明する。
図1は、変位検出装置の実施の形態を示すブロック図である。
【0016】
図1に示すように、変位検出装置1は、光源2と、対物レンズ3と、分離光学系4と、ミラー5と、2つのコリメータレンズ6,7と、非点収差発生手段8と、受光部9と、位置情報生成部10と、筐体11、光量調整手段12とを備えている。光源2、対物レンズ3、分離光学系4、ミラー5、2つのコリメータレンズ6,7、非点収差発生手段8、受光部9、位置情報生成部10、光量調整手段12は、それぞれ筐体11に配設されている。
【0017】
光源2は、例えば、半導体レーザダイオードやスーパールミネッセンスダイオードから構成されている。この光源2は、筐体11に着脱可能に取り付けられている。光源2を筐体11に着脱可能に取り付けることにより、筐体11を設置箇所から取り外さなくても、劣化した光源2を新しい光源と交換することができる。これにより、光源2を交換する度に筐体11の設置位置がずれる心配が無く、信頼性を必要とする測定や製造装置に変位検出装置1を使用する場合に有利となる。
【0018】
対物レンズ3は、光源2からの出射光を被測定面101に向けて集光する。この対物レンズ3は、レンズ保持部(不図示)に固定されており、レンズ保持部は、アクチュエータ(不図示)によって対物レンズ3の光軸方向に移動可能になっている。レンズ保持部を移動させるアクチュエータとしては、例えば、可動コイルと永久磁石から構成することができる。
【0019】
また、レンズ保持部には、リニアスケール(不図示)が固定されている。このリニアスケールの目盛りは、対物レンズ3の光軸と同軸上に配置されている。このリニアスケールとしては、例えば、光の干渉縞を目盛りとして記録した光学式スケール(ホログラムスケール)や、磁気式スケール等を用いることができる。なお、リニアスケールには、目盛りの略中央位置に原点(基準点)が形成されているとよい。
【0020】
分離光学系4は、偏光ビームスプリッタ15と、位相板16から構成されており、被測定面101からの反射光の光路を光源2から出射光の光路と分離する。偏光ビームスプリッタ15は、光源2からの出射光を反射し、被測定面101によって反射された反射光を透過させる。位相板16は、偏光ビームスプリッタ15とミラー5との間に配置されており、偏光ビームスプリッタ15によって反射された出射光と、被測定面101によって反射された反射光の偏光状態を変える。
【0021】
ミラー5は、偏光ビームスプリッタ15によって反射された出射光と、被測定面101によって反射された反射光の光軸方向を変える。具体的には、偏光ビームスプリッタ15によって反射された出射光の光軸を対物レンズ3に向け、被測定面101によって反射されて対物レンズ3を通過した反射光の光軸を位相板16(偏光ビームスプリッタ15)に向ける。
【0022】
ミラー5の表面には、金属皮膜が施されている。これにより、一般的な誘電体多層膜で生じる湿度の変化による偏光や波長特性の変化を抑えることができ、安定な位置検出が可能になる。
【0023】
コリメータレンズ6は、光源2と偏光ビームスプリッタ15との間に配置されており、光源2からの出射光を平行光にする。コリメータレンズ7は、偏光ビームスプリッタ15と非点収差発生手段8との間に配置されている。このコリメータレンズ7は、集光手段の一具体例を示すものであり、偏光ビームスプリッタ15を透過した反射光を集光して受光部9へ導く。
【0024】
なお、対物レンズ3及びコリメータレンズ6,7には、光源2の波長変動による焦点距離の変動を受け難くする色消し対策(色収差補正)を施してもよい。このようにすることで、光源2の波長や温度を監視しなくてもよく、被測定面101の変位量を測定した測定値に補正を行う必要が無くなる。
【0025】
また、本実施の形態では、光源2から出射された出射光の光路中にコリメータレンズ6を配置し、被測定面101によって反射された反射光の光路中にコリメータレンズ7を配置した。これにより、出射光の光路長と反射光の光路長を任意に設定することが可能になる。その結果、設計の自由度を向上させることができ、最適な部品配置を実現することができる。さらに、コリメータレンズ6によりカップリング効率の最適化、使用する光源の強度分布の取り込み角度の最適化を行うことができ、コリメータレンズ7により後述するフォーカスエラー信号の特性を変化させて、例えば、対物レンズ3を変位させるためのサーボ機構が駆動する範囲(サーボ引き込み範囲)を最適化することができる。
【0026】
非点収差発生手段8は、コリメータレンズ7と受光部9との間に配置されており、コリメータレンズ7によって集光された被測定面101からの反射光に非点収差を発生させる。この非点収差発生手段8は、コリメータレンズ7から受光部9までの反射光の光路中に配置されたシリンドリカル面を含む光学部品により構成されている。非点収差発生手段としては、一般にシリンドリカルレンズを用いるが、本実施の形態では、球面とシリンドリカル面を複合させたマルチレンズを採用している。これにより、非点収差の発生と出力信号波形の調整をすることが可能となり、部品点数を削減することができる。
【0027】
なお、本実施の形態の非点収差発生手段8としては、コリメータレンズ7から受光部9までの反射光の光路中に斜めに配置された透明な基板により構成することもできる。
【0028】
受光部9は、非点収差発生手段8により非点収差が発生した反射光の光量を検出する。この受光部9は、反射光の光軸に直交する平面上に並ぶ4つの受光素子21〜24から構成されている(図2参照)。これら4つの受光素子21〜24に入射する反射光の照射像は、反射光に非点収差が発生しているため、対物レンズ3から被測定面101までの距離によって変化する。この照射像(照射スポット)の形状については、後で説明する。
【0029】
入射光束径調整手段12は、対物レンズ3から受光部9までの反射光の光路中に配置され、受光部9へ入射する被測定面からの反射光の光束径を調整する。本実施の形態では、入射光束径調整手段12は、コリメータレンズ7と受光部9との間であって、受光部9の直近に配置されている。入射光束径調整手段12は、受光部に照射される光束径の大きさと位置とを正確に調整する為に、受光部上もしくは受光部直近に配置することが好ましい。本実施形態の入射光束径調整手段12は、受光部9へ入射する被測定面からの反射光を遮断するアパーチャ13により構成されている。アパーチャ13は、受光部9へ入射する被測定面からの反射光を遮断する枠部13aと、受光部9に被測定面からの反射光を入射させる開口部13bとを有している。アパーチャ13を用いると、被測定面と対物レンズの距離が大きくずれて、受光部上に照射される光束径が大きくなった際、アパーチャ13aの上部に落ちた光が受光部に入らなくなるのでSUM信号が減少し、アパーチャを用いない場合と比較して、SUM信号の立ち上がり区間を短くすることができる。
【0030】
アパーチャ13は、固定型でも可変型でもよい。可変型のアパーチャは、シャッタ機能等により開口の大きさが変えられるので、変位検出装置の環境、動作状況等の仕様に応じて、受光部9へ入射する被測定面からの反射光の光束径を調整することができる。
【0031】
位置情報生成部10は、受光部9により得られるフォーカスエラー信号及びSUM信号を用いて被測定面101の位置情報を生成する。この位置情報生成部10は、フォーカスエラー信号生成部及びSUM信号生成部(不図示)と、サーボ制御回路(不図示)と、前述のアクチュエータと、前述のリニアスケールと、リニアスケールの目盛りを読み取る検出ヘッド(不図示)から構成されている。
【0032】
フォーカスエラー信号の値が「0」のときの対物レンズ3で集光される出射光の焦点位置は、集光手段であるコリメータレンズ7と、非点収差発生手段8と、受光部9の光軸方向の位置によって決定される。本実施の形態では、対物レンズ3で集光される出射光の焦点位置が被測定面101にあるときにフォーカスエラー信号の値が「0」になるように、コリメータレンズ7、非点収差発生手段8又は受光部9の光軸上の位置を設定している。
【0033】
次に、変位検出装置1による被測定面101の変位量の測定について、図1〜図3を参照して説明する。
図2は、変位検出装置1の受光部9に照射される照射像の例を示す説明図である。図3は、受光部9によって検出された光量から得られるフォーカスエラー信号及びSUM信号の特性を示す図である。
【0034】
図1に示すように、光源2から出射された出射光は、コリメータレンズ6によって平行光となり、偏光ビームスプリッタ15によって反射される。偏光ビームスプリッタ15によって反射された光源2からの出射光は、位相板16を通過して円偏光となり、ミラー5によって反射されて対物レンズ3に導かれる。その後、出射光は、対物レンズ3によって被測定面101に向けて集光され、被測定面101で結像される。
【0035】
被測定面101で反射した反射光は、ミラー5によって反射されて位相板16に導かれる。位相板16を通過した反射光は、位相板16を通過する前の出射光と直交する直線偏光となり、偏光ビームスプリッタ15を透過する。その後、反射光は、コリメータレンズ7によって集光され、非点収差発生手段8によって非点収差を発生した状態となり、入射光束径調整手段12の内側を通過して受光部9に照射される。
【0036】
図2に示すように、受光部9は、反射光の光軸に直交する平面上に並ぶ4つの受光素子
21〜24から構成されている。これら4つの受光素子21〜24は、反射光の光軸周りに所定の間隔を空けて配置されており、受光素子21と受光素子23は、反射光の光軸を挟んで対向している。そして、受光素子22と受光素子24は、反射光の光軸を挟んで対向している。
【0037】
非点収差が発生した反射光が4つの受光素子21〜24に照射される領域(照射スポットP)は、対物レンズ3から被測定面101までの距離によって変化する。本実施の形態では、対物レンズ3によって集光される出射光の焦点位置fが被測定面101にあるときに、照射スポットが小円形になる(図2(d)参照)。ここで、照射スポットが小円形になるときの対物レンズ3の位置を基準位置とする。
【0038】
本実施の形態では、対物レンズ3が基準位置よりも被測定面101に近づくと、照射スポットは、受光素子22,24側に延びた楕円形になる(図2(c)参照)。対物レンズ3が被測定面101にさらに近づくと、照射スポットは、受光部である受光素子21,22,23、24上で円形になり(図2(b)参照)、対物レンズ3が被測定面101にさらに近づくと、照射スポットは、さらにぼけて受光部より大きくなる。(図2 (a)参照)。また、対物レンズ3が、基準位置よりも、被測定面101から遠ざかると、照射スポットは、受光素子21,23側に延びた楕円形となり(図2(e)参照)、対物レンズ3が被測定面101からさらに遠ざかると、照射スポットは、受光素子21,22,23、24上で大円形になり(図2(f)参照)、対物レンズ3が被測定面101からさらに遠ざかると、照射スポットは、さらにぼけて受光部より大きくなる。(図2 (g)参照)。
【0039】
各受光素子21〜24は、検出した光を電気エネルギーに変換(光電変換)して出力信号を生成し、位置情報生成部10のフォーカスエラー信号生成部及びSUM信号生成部へ出力する。
【0040】
フォーカスエラー信号生成部は、各受光素子21〜24が出力した出力信号からフォーカスエラー信号SFEを生成する。このフォーカスエラー信号SFEは、対物レンズ3の基準位置に対する光軸方向へのずれを表している。
【0041】
各受光素子21,22,23,24の出力信号を出力信号A,B,C,Dとすると、フォーカスエラー信号SFEは、次式により算出される。
(数1)SFE=(A+C)−(B+D)
【0042】
SUM信号生成部は、各受光素子21〜24が出力した出力信号からSUM信号SSUMを生成する。このSUM信号SSUMは、受光素子21,22,23,24に入射する被測定面からの反射光の総光量を表している。
【0043】
各受光素子21,22,23,24の出力信号を出力信号A,B,C,Dとすると、SUM信号SSUMは、次式により算出される。
(数2)SSUM=(A+C)+(B+D)
【0044】
上述の(数1)により算出されたフォーカスエラー信号SFE及び(数2)により算出されたSUM信号SSUMの特性は、図3に示すようになる。
【0045】
図3の実線で示したフォーカスエラー信号SFEの特性において、原点Oは対物レンズ3の基準位置を示している。
位置情報生成部10のフォーカスエラー信号生成部は、生成したフォーカスエラー信号SFEをアナログデジタル変換して、サーボ制御回路へ出力する。サーボ制御回路は、フォーカスエラー信号SFEの値が「0」となるような駆動信号をアクチュエータに出力して、アクチュエータの駆動制御を行う。これにより、レンズ保持部に固定されたリニアスケールが対物レンズ3の光軸方向に移動する。そして、検出ヘッドがリニアスケールの目盛りを読み取ることにより、被測定面101の変位量が測定される。
【0046】
図3において、従来の入射光束径調整手段を用いない場合のSUM信号の特性を点線で示す。
図3の点線で示したSUM信号SSUMの特性において、被測定面からの反射光の受光面上での光束径が小さくなり各受光素子21,22,23,24に入射する光量が多くなると、Sに示すようにSUM信号が立ち上がる。一方、被測定面からの反射光の受光面上での光束径が大きくなり各受光素子21,22,23,24に入射する光量が少なくなると、Sに示すようにSUM信号が立ち下がる。SUM信号の立ち上がり区間Sは、SUM信号が立ち上がってから立ち下がるまでの間で形成される。なお、照射スポットが図2(a)及び図2(g)の状態の場合には、被測定面から反射する光束径が非常に大きく、各受光素子21,22,23,24に入射する光量が非常に小さくなるため、SUM信号SSUMの値は「ほぼ0」となる。
【0047】
図4は、変位検出装置の実施の形態に係る入射光束径調整手段であるアパーチャと受光素子との相対位置関係を示す平面図である。
本実施形態においては、入射光束径調整手段として、受光素子21,22,23,24を覆うアパーチャ13を用いる。アパーチャ13の中央部には、開口部13bが形成されている。開口部13bの大きさは、変位検出装置の仕様形態に合わせて、適宜設定する。
【0048】
図3において、アパーチャ13を用いた場合のSUM信号SSUMの特性を実線で示す。
照射スポットが図2(a)及び図2(b)の状態においては、被測定面からの反射光の大部分がアパーチャ13の枠部13aによって遮られるため、入射光束径調整手段を用いない場合と比較すると、開口部13bを通じて受光素子に入射する被測定面からの反射光の総光量は少なくなり、SUM信号SSUMの値は小さくなり、アパーチャ13に入射する被測定面からの反射光の大きさが大きくなるほどSUM信号SSUMの値は「0」に近くなる。
【0049】
照射スポットが図2(c)及び図2(d)及び図2(e)の状態においては、アパーチャ13の枠部13aによって遮られる被測定面からの反射光はほとんどなく、大部分の被測定面からの反射光が開口部13bを通じて受光素子に入射する。このため、受光素子に入射する被測定面からの反射光の総光量が多く、SUM信号が立ち上がった状態となる。
【0050】
照射スポットが図2(f)及び図2(g)の状態においては、被測定面からの反射光の大部分がアパーチャ13の枠部13aによって遮られるため、入射光束径調整手段を用いない場合と比較すると、開口部13bを通じて受光素子に入射する被測定面からの反射光の総光量は少なくなり、SUM信号SSUMの値は小さくなり、アパーチャ13に入射する被測定面からの反射光の大きさが大きくなるほどSUM信号SSUMの値は「0」に近くなる。
【0051】
以上説明したように、アパーチャ13を用いない場合では、図2(b)の状態においても、受光素子に入射する被測定面からの反射光の総光量が多くなり、SUM信号が立ち上がってしまうが、本実施の形態のように、アパーチャ13を用いることで、被測定面からの反射光が受光素子に入射できる光束径を小さくして総光量を少なくし、SUM信号の立ち上がりを遅らせることができる。また、アパーチャ13を用いない場合では、図2(f)の状態においても、受光素子に入射する被測定面からの反射光の総光量が多く、SUM信号が立ち上がったままの状態であるが、本実施の形態のように、アパーチャ13を用いることで、被測定面からの反射光が受光素子に入射できる光束径を小さくして総光量を少なくし、SUM信号の立ち下がりを早くさせることができる。このように、SUM信号の立ち上がりを遅くして、SUM信号の立ち下がりを早くし、SUM信号の立ち上がり区間を短くすると、その区間に存在するフォーカスエラー信号の範囲も短くなる。従って、フォーカスエラー信号に迷光等によるリンギング状の誤ったゼロクロス点が複数発生している場合であっても、SUM信号の立ち上がり区間内に存在するゼロクロス点は少なくなるので、誤ったゼロクロス点に基づいてサーボ機構を駆動してしまう可能性を少なくすることができる。
【0052】
また、SUM信号の立ち上がり区間、SUM信号の立ち下がり区間は、アパーチャ13の開口部13bの大きさを変えることで、制御することができる。すなわち、開口部13bを大きくした場合には、受光素子へ入射する被測定面からの反射光の光束径が大きくなり、SUM信号の立ち上がりが速くなり、SUM信号の立ち下がりが遅くなり、SUM信号の立ち上がり区間は長くなる。一方、開口部13bを小さくした場合には、受光素子へ入射する被測定面からの反射光の光束径が小さくなり、SUM信号の立ち上がりが遅くなり、SUM信号の立ち下がりが早くなるのでSUM信号の立ち上がり区間は短くなる。なお、開口部の大きさの変更は、アパーチャ13に設けたシャッタ機能で行うようにしてもよいし、異なった開口を有するアパーチャに交換してもよい。
【0053】
本実施形態の変位検出装置では、入射光束径調整手段によって、受光部に入射する被測定面からの反射光の光量を調整して、SUM信号の立ち上がり区間を適性に調整することで、誤ったゼロクロス点に基づいてサーボ機構が対物レンズを変位させてしまうことを防止できる。その結果、対物レンズを正確な位置に変位させて、精度の高い測定を行うことができる。また、変位検出装置の仕様が変更された場合でも、受光素子自体を交換して対応する必要がない。さらに、SUM信号の立ち上がり区間を短くすることで、サーボ機構を駆動させるまでの処理時間を短くすることができる。また、SUM信号の立ち上がり区間を長くすると、被測定面へのフォーカスサーボロック中に衝撃等の外乱が加わり、対物レンズが光軸方向に若干動いてフォーカスサーボがはずれたとしても、SUM信号はSUM信号立ち上がり区間からはずれにくくなるため、フォーカスサーボ復帰時に必要なプロセスが少なくてすみ、フォーカスサーボ復帰までの時間を短くすることができるメリットもある。このように、SUM信号の立ち上がり区間は使用環境、動作状況等の仕様に応じて最適化させる必要がある。
【0054】
本発明は、前述しかつ図面に示した実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の変形実施が可能である。例えば、上述した実施の形態では、光源2から出射された出射光をコリメータレンズ6により平行光にしたが、コリメータレンズ6を通った光源2からの出射光は、発散光或いは収束光であってもよい。また、光量調整手段12としてアパーチャ13を用いたが、マスク等の部材を用いてもよい。
【0055】
また、上述した実施の形態では、光源2を筐体11に着脱可能に取り付ける構造とした。しかしながら、本発明の変位検出装置としては、光源2を筐体11内に配設せずに筐体11から離れた位置に配設し、光ファイバを介して筐体11内に光を供給するようにしてもよい。
これにより、熱源となる光源2を筐体11から切り離すことができ、筐体11内の温度上昇を防止することができる。また、光源2を光ファイバに着脱可能に取り付ける構造にすることにより、筐体11から離れた場所で光源2の交換を行うことができるようになり、メンテナンス性を向上させることができる。
【0056】
また、本発明の変位検出装置としては、光源2を筐体11から離れた位置に配設し、光源2からの出射光を気体、液体又は真空の空間を介して筐体11内に供給するようにしてもよい。
これにより、熱源となる光源2を筐体11から切り離すことができると共に、光ファイバ等の筐体11に接続される部材が削除され、筐体11に振動が伝わらないようにすることができる。
【0057】
また、本発明の変位検出装置としては、ハーフミラー等を介して、波長の等しい光源を2個設けるようにしてもよい。
これにより、2個の光源を交互に発光することができるため、一の光源が寿命等によって使えなくなった場合であっても、他の光源に切り替えることで、変位検出装置を長時間にわたって使用することができる。
【0058】
また、上述した実施の形態では、非点収差発生手段8によって非点収差を発生させた反射光を受光部9が直接検出するようにした。しかしながら、本発明の変位検出装置としては、非点収差が発生した反射光を光ファイバによって受光部9に導くようにしてもよい。
これにより、受光部9の設置位置を自由に設定することができるため、受光部9と位置情報生成部10に近接して配置することができる。その結果、電気通信距離の短縮化を図ることができ、応答速度を高速化することができる。
【0059】
また、本発明の変位検出装置としては、偏光ビームスプリッタ15と受光部9との間の光路上に、例えばくもりガラス等の光散乱体を配置してもよい。
これにより、受光部9に入射する反射光の光軸方向に垂直な断面内において均一な光強度分布が得られ、被測定面101の面粗度の影響をより低減することができる。
また、こうした光散乱体を例えば1KHz以上で振動させ、散乱方向を様々に変化させると、受光素子21〜24上でのスペックルが平均化され、スペックルコントラストが低減される。
【0060】
また、被測定面101に、光源2から出射される出射光を反射させるミラー処理を施してもよい。これにより、S/N比の高い信号から位置情報を得ることができる。
また、被測定面を有する被測定物に光源2から出射される出射光と同一の波長の光を反射させる回折格子を形成してもよい。このような被測定面に対しては、上述した実施の形態の変位検出装置と、回折光を受光して面方向の位置を検出するいわゆるリニアスケールとを組み合わせた変位検出装置を構成することが好ましい。これにより、3次元方向の変位検出が可能となる。
【0061】
また、被測定物に回折格子を形成する場合は、回折格子上の表面に、光源2からの出射光を反射させる反射膜を形成して被測定面としてもよい。上述した実施の形態の変位検出装置は、反射膜によって形成された被測定面からの反射光を検出することで、高さ方向の変位検出を行う。このとき、光源2から出射された出射光には、回折格子による回折光が生じないため、正確な変位検出を行うことができる。なお、リニアスケールは、この反射膜を透過する光源を用いることにより、回折光等の検出を行う。
【0062】
また、反射膜によって形成された被測定面は、回折格子の下地側に形成してもよい。この場合は、光源2から出射された光が回折格子を形成する材料を透過し、リニアスケールに用いる光が回折格子によって回折光となる。
【0063】
また、本発明の変位検出装置では、対物レンズによって集光された出射光の焦点が被測定面の手前又は奥側で結像されている状態として、被測定面上の出射光の径(ビーム径)を所定の大きさにしてもよい。これにより、被測定面の面粗度、汚れ、微細なゴミ等を変位量として検出することを抑制することができる。なお、被測定面上の出射光の径は、50μm以上であることが望ましい。
【符号の説明】
【0064】
1・・・位検出装置、2・・・光源、3・・・対物レンズ、4・・・分離光学系、5・・・ミラー、6・・・コリメータレンズ、7・・・コリメータレンズ(集光手段)、8・・・非点収差発生手段、9・・・受光部、10・・・位置情報生成部、11・・・筐体、12・・・入射光束径調整手段、13・・・アパーチャ、13a・・・枠部、13b・・・開口部、15・・・偏光ビームスプリッタ、16・・・位相板、21,22,23,24・・・受光素子、101・・・被測定面、P・・・照射スポット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源からの出射光を被測定面に向けて集光する対物レンズと、
前記被測定面からの反射光の光路を前記光源からの出射光の光路と分離する分離光学系と、
前記分離光学系によって前記出射光の光路と分離された前記反射光を集光する集光手段と、
前記集光手段によって集光された前記反射光に非点収差を発生させる非点収差発生手段と、
前記非点収差発生手段により非点収差が発生した前記反射光の光量を検出する受光部と、
反射光の光路上であって、前記対物レンズと前記受光部との間に、前記受光部に入射する被測定面からの反射光の光束径を調整する入射光束径調整手段と、
前記受光部により検出された光量から得られるフォーカスエラー信号を用いて前記被測定面の位置情報を生成する位置情報生成部と、を備えたこと
を特徴とする変位検出装置。
【請求項2】
前記入射光束径調整手段は、前記集光手段と前記受光部との間に設けられていること
を特徴とする請求項1に記載の変位検出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−21801(P2012−21801A)
【公開日】平成24年2月2日(2012.2.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−157863(P2010−157863)
【出願日】平成22年7月12日(2010.7.12)
【出願人】(000146847)株式会社森精機製作所 (204)
【Fターム(参考)】