説明

変位測定装置及び光無線通信システム

【課題】光無線通信システムのトラッキング機構の小型化、測定精度向上等を実現する。
【解決手段】送信ユニット11に2つの距離センサ14,15を設け、受信ユニット21に位置指標部23と基準高さ部24を設ける。位置指標部23は、複数のエリアに区画され且つ各エリア毎に高さが異なる三次元形状に形成され、基準高さ部24を基準とした各エリアの高さとエリア位置との関係を変位測定テーブルデータとして記憶する。各距離センサ14,15によって位置指標部23の1つのエリアまでの距離と基準高さ部24までの距離をそれぞれ測定し、これら2つの距離測定値の差分と変位測定テーブルデータとに基づいて位置指標部23のうちの第1の距離センサ14で測定したエリア位置を特定することで、受信ユニット21の変位量及び変位方向を判定し、その判定結果に基づいて送信部12と受信部22との光軸ずれを補正するように光軸ずれ補正機能を作動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、測定対象物の変位量及び変位方向を判定する変位測定装置及び光無線通信システムに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
一般に、光無線通信システムでは、特許文献1(特開平11−346192号公報)、特許文献2(特開2007−282144号公報)に記載されているように、送信部から光ビーム(光信号)を受信部に向けてワイヤレスで送信し、その光ビームを受信部で受信するようにしている。この光無線通信システムでは、光ビームのパワーを効率良く送信するためには光ビームの拡がり角を小さくする必要があるが、光ビームの拡がり角を小さくすると、送信部や受信部の振動による揺れ、温度変動に伴う熱膨張・収縮による位置ずれ、経時変化等による光軸のずれや角度変動等のために、光ビームが受信部から外れやすくなり、光ビームの受信状態が不安定になる可能性がある。
【0003】
この対策として、光無線通信システムでは、光軸ずれを補正する光軸ずれ補正機構を備えたものがある。
特許文献1,2に記載された光軸ずれ補正機構は、光ビームが受信部に到達する経路の途中で、光ビームの通過位置を光位置検出素子で検出して光軸ずれを補正するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−346192号公報
【特許文献2】特開2007−282144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1,2では、光ビームが受信部に到達する経路の途中で、光ビームの位置ずれを検出するため、光ビームの到達位置と受信部との実際の位置ずれを検出しているわけではない。このため、受信部の位置が送信部とは無関係に変動(移動又は振動)するシステムでは、光軸ずれの補正精度が悪くなるという欠点がある。
【0006】
また、測定対象物の変位量や変位方向を検出する場合は、測定対象物をカメラで撮像して、画像処理により測定対象物の変位量や変位方向を検出するものがある。しかし、この方法では、カメラや画像処理装置を必要として装置が大型化するだけでなく、画像処理に時間がかかる等の欠点がある。
【0007】
そこで、本発明が解決しようとする課題の1つは、測定対象物の変位量や変位方向を判定する変位測定装置の小型化、高速処理化、測定精度向上を実現できるようにすることであり、また、他の課題は、光無線通信システムのトラッキング機構の小型化、高速処理化、測定精度向上を実現できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、測定対象物の測定位置までの距離を測定する距離測定手段と、前記測定対象物のうちの前記距離測定手段と対向する部位に設けられた位置指標部及び基準高さ部とを備え、前記位置指標部は、三次元形状に形成されていると共に、前記基準高さ部を基準とした高さと位置との関係が変位測定テーブルデータとして記憶手段に記憶され、前記距離測定手段によって前記位置指標部の測定位置までの距離と前記基準高さ部までの距離をそれぞれ測定し、これら2つの距離測定値の差分と前記変位測定テーブルデータとに基づいて前記位置指標部のうちの前記距離測定手段で測定した位置を特定することで前記測定対象物の変位量及び変位方向を判定するようにしたものである。ここで、位置指標部の高さは、距離測定手段の方向への突出高さである。
【0009】
この場合、基準高さ部を基準とした位置指標部の高さと位置との関係が変位測定テーブルデータとして記憶されているため、距離測定手段によって位置指標部の測定位置までの距離と基準高さ部までの距離をそれぞれ測定し、これら2つの距離測定値の差分を求めれば、測定した位置の高さが判明し、変位測定テーブルデータを参照すれば、測定した高さに対応する位置を特定することができ、その位置から測定対象物の変位量及び変位方向を特定することができる。これにより、測定対象物の変位量や変位方向を判定する変位測定装置の小型化、高速処理化、測定精度向上を実現することができる。すなわち、距離測定手段を用いた簡単な構成であるため、変位測定装置の小型化が可能であると共に、距離測定手段の2つの距離測定値の差分を演算して変位測定テーブルデータを参照するだけの簡単な処理で測定対象物の変位量及び変位方向を求めることができ、高速処理化が可能であり、更に、距離測定手段の測定精度を上げるだけで、変位測定装置の測定精度を簡単に向上させることができる。
【0010】
具体的には、請求項2のように、前記距離測定手段は、測定対象物の測定位置までの距離をピンポイントで測定し、前記位置指標部は、複数のエリアに区画され且つ各エリア毎に高さが異なる三次元形状に形成され、前記変位測定テーブルデータは、前記基準高さ部を基準とした各エリアの高さとエリア位置との関係がデータ化され、前記距離測定手段によって前記位置指標部の1つのエリアまでの距離と前記基準高さ部までの距離をそれぞれピンポイントで測定し、これら2つの距離測定値の差分と前記変位測定テーブルデータとに基づいて前記位置指標部のうちの前記距離測定手段で測定したエリア位置を特定することで前記測定対象物の変位量及び変位方向を判定するようにすると良い。これにより、測定対象物の変位量や変位方向を精度良く判定することができる。
【0011】
更に、請求項3のように、距離測定手段は、位置指標部の1つのエリアまでの距離をピンポイントで測定する第1の距離センサと、前記基準高さ部までの距離をピンポイントで測定する第2の距離センサとを備え、前記第1の距離センサの測距方向と前記第2の距離センサの測距方向とが略平行となるように構成すると良い。このようにすれば、2つの距離センサによって位置指標部の1つのエリアまでの距離と基準高さ部までの距離を簡単に精度良く測定することができる。
【0012】
更に、請求項4のように、第1の距離センサによる位置指標部の1つのエリアまでの距離の測定と、第2の距離センサによる前記基準高さ部までの距離の測定とを同時に行い、これら2つの距離測定値の差分と前記変位測定テーブルデータとに基づいて前記位置指標部のうちの前記距離測定手段で測定したエリア位置を特定するようにしても良い。このように、位置指標部の1つのエリアまでの距離の測定と基準高さ部までの距離の測定とを同時に行うようにすれば、測定対象物の位置が変動(移動又は振動)しているときでも、測定したエリアの高さ(2つの距離測定値の差分)を精度良く検出することができる。
【0013】
また、請求項5のように、位置指標部の中心部のエリアが基準高さ部と同じ高さとなるように形成しても良い。この場合は、2つの距離測定値の差分が0となるエリア位置が位置指標部の中心部となる。
【0014】
また、位置指標部は、複数のエリアを碁盤目状に区画したものであっても良いが、請求項6のように、位置指標部は、中心部のエリアを円形に形成して、その周囲に複数のエリアを同心円状に配列すると良い。このようにすれば、測定ポイントが位置指標部の中心からどの様な方向に変位しても、その変位量や変位方向を精度良く検出することができる。
【0015】
更に、請求項7のように、位置指標部の中心から半径が同じ円周上に位置する各エリアは、全て同じ面積となるように形成すると良い。このようにすれば、測定精度を更に向上させることができる。
【0016】
また、請求項8のように、位置指標部の中心から半径が同じ円周上に位置する各エリアは、円周方向に順番に高さが高く又は低くなるように形成し、前記位置指標部の中心から半径が異なる円周上に位置する各エリアは、外周側ほど高さが高く又は低くなるように形成すると良い。このようにすれば、円周方向に隣接するエリアの高さの差を小さくすることができるため、距離測定手段で測定したエリアの高さ(2つの距離測定値の差分)の測定誤差によって、測定したエリア位置が誤判定されても、誤判定するエリア位置が正しい測定ポイントのエリア位置に隣接するエリア位置にずれるだけであり、測定対象物の変位量及び変位方向の測定誤差を小さくすることができる。
【0017】
また、測定対象物の変位量の測定可能範囲が位置指標部の大きさで決まることを考慮して、請求項9のように、基準高さ部は、位置指標部と同じ大きさ又はそれ以上の大きさに形成すると共に、該基準高さ部の外周囲には、該基準高さ部とは高さの異なるエラー領域を形成し、前記位置指標部の外周囲には、該位置指標部の各エリアとは高さの異なるエラー領域を形成すると良い。このようにすれば、測定対象物の変位量が位置指標部の大きさ以下(つまり位置指標部の各エリアの高さを測定可能な範囲内)であれば、基準高さ部の高さを測定可能であり、確実に測定対象物の変位量及び変位方向を測定できる。しかも、測定対象物の変位量が位置指標部の大きさを超えれば、エラー領域が検出されるため、測定対象物の変位量が測定可能な範囲を超えていることを確認できる。
【0018】
以上説明した請求項1〜9に記載の変位測定装置は、測定対象物の変位量及び変位方向を測定する機能を必要とする様々な装置に組み合わせて実施することが可能であり、例えば、光無線通信システムに組み合わせて実施する場合は、請求項10のように、光信号をワイヤレスで送信する送信部と、前記光信号を受信する受信部と、前記送信部から送信される光信号の到達位置と前記受信部との位置ずれを補正するトラッキング機構とを備えた光無線通信システムにおいて、請求項1乃至9のいずれかに記載の変位測定装置を備え、前記距離測定手段は、前記送信部が取り付けられた送信ユニットに設けられ、前記測定対象物は、前記受信部が取り付けられた受信ユニットであり、前記位置指標部及び前記基準高さ部は、前記受信ユニットに設けられ、前記変位測定装置は、前記距離測定手段による2つの距離測定値の差分と前記変位測定テーブルデータとに基づいて前記受信ユニットの変位量及び変位方向を判定し、前記トラッキング機構は、前記変位測定装置の測定結果に基づいて前記送信部から送信される光信号の到達位置と前記受信部との位置ずれを補正するようにしても良い。このようにすれば、光無線通信システムにおいて、本発明の変位測定装置を用いて、送信ユニットに対する受信ユニットの相対的な変位量及び変位方向を精度良く検出することができ、光無線通信システムのトラッキング機構の小型化、高速処理化、測定精度向上を実現できる。
【0019】
この場合、請求項11のように、送信ユニットと受信ユニットの両方又はいずれか一方は、移動又は振動する物体に取り付けられ、変位測定装置は、位置指標部の測定位置までの距離の測定と基準高さ部までの距離の測定とを同時に行い、これら2つの距離測定値の差分と前記変位測定テーブルデータとに基づいて前記受信ユニットの変位量及び変位方向を判定するようにしても良い。このようにすれば、送信ユニットと受信ユニットの両方又はいずれか一方が移動又は振動する場合でも、送信ユニットに対する受信ユニットの相対的な変位量及び変位方向を精度良く検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は本発明の一実施例における光無線通信システムの構成を概略的に示す図である。
【図2】図2は位置指標部と基準高さ部を拡大して示す平面図である。
【図3】図3は変位測定テーブルデータの一例を示す図である。
【図4】図4は各距離センサの測距方向(角度)のずれが距離測定値に及ぼす影響を説明する図である。
【図5】図5は部品実装機への光無線通信システムの適用例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための形態を部品実装機に適用して具体化した一実施例を説明する。
まず、図1に基づいて光無線通信システムの構成を説明する。
【0022】
送信ユニット11には、光信号(光ビーム)をワイヤレスで送信する送信部12と、距離測定器13(距離測定手段)とが設けられている。送信部12は、半導体レーザ等で構成され、光信号(光ビーム)の出射方向(光軸)を自動的に調整する光軸ずれ補正機能が搭載されている。光軸ずれ補正機能は、光軸ずれに応じて送信部12の角度や位置をアクチュエータで機械的に調整するものであっても良いし、或は、ビーム出射方向を自在に制御可能な半導体レーザを用いても良い。この半導体レーザは、周期の異なる2種類のフォトニック結晶を複合した結晶を用い、その周期の差を変化させることで、ビーム出射方向を変化させることができるようになっている。ビーム出射方向を自在に制御可能な半導体レーザを用いて光軸ずれ補正機能を構成すれば、サーボ等の駆動機構が不要となり、光軸ずれ補正機能を軽量化できる利点がある。
【0023】
尚、光軸ずれ補正機能は、後述する受信部22側に設けても良く、例えば、受信部22側にファインポジショニングミラー(FPM)を設けて、送信部12から出射される光ビームを受信部22へ反射させるファインポジショニングミラーの角度を後述する光軸ずれ検出値に応じて調整して光軸ずれを補正するようにしても良い。或は、光軸ずれに応じて受信部22の位置をアクチュエータで機械的に調整するものであっても良い。
【0024】
本実施例では、距離測定器13は、第1の距離センサ14と第2の距離センサ15とからなり、第1の距離センサ14の測距方向と第2の距離センサ15の測距方向とが略平行となるように構成されている。これら2つの距離センサ14,15の測距方向は、送信部12の光ビーム出射方向(角度0°)と略平行となっている。各距離センサ14,15は、測定対象物までの距離をピンポイントで測定できる距離センサ、例えば、反射型のレーザ式変位センサを用いて構成されている。
【0025】
一方、受信ユニット21には、送信部12から送信されてくる光信号(光ビーム)を受信する受信部22が取り付けられている。更に、受信ユニット21には、送信ユニット11の2つの距離センサ14,15で距離がピンポイントで測定される位置指標部23と基準高さ部24とが設けられている。
【0026】
位置指標部23は、第1の距離センサ14の測距方向(レーザ出射方向)に位置し、図2に示すように、複数のエリアに区画され且つ各エリア毎に高さが異なる三次元形状に形成されている。ここで、エリアの高さは、第1の距離センサ14の方向への突出高さである。各エリアの大きさ(面積、寸法)は、第1の距離センサ14で、隣接するエリアと区別して測定できる大きさに形成され、各エリアの高さの差は、他のエリアの高さと区別して測定できる高さの差(第1の距離センサ14の測定誤差より大きい差)に設定されている。
【0027】
位置指標部23は、複数のエリアを碁盤目状に区画したものであっても良いが、本実施例では、位置指標部23は、中心部のエリアA0を円形に形成して、その周囲に複数のエリアA1〜A56を同心円状に配列し、且つ、位置指標部23の中心から半径が同じ円周上に位置する各エリアは、全て同じ面積(同一ピッチ)となるように形成されている。このようにすれば、測定ポイントが位置指標部23の中心からどの様な方向に変位しても、その変位量や変位方向を精度良く検出することができる。
【0028】
更に、位置指標部23の中心から半径が同じ円周上に位置する各エリアは、円周方向に順番に高さが高く(又は低く)なるように形成され、位置指標部23の中心から半径が異なる円周上に位置する各エリアは、外周側ほど高さが高く(又は低く)なるように形成されている。位置指標部23の外周囲には、該位置指標部23の各エリアA1〜A56とは高さの異なるエラー領域Aerror が形成されている。
【0029】
図2の例では、位置指標部23の全てのエリアA0〜A56のうち、中心部のエリアA0が最も低いエリアであり、その外周に合計8個のエリアA1〜A8が45°ピッチで配列され、各エリアA1〜A8の高さが時計回り方向に少しずつ高くなっている。1周目のエリアA1〜A8の外周に合計16個のエリアA9〜A24が22.5°ピッチで配列され、各エリアA9〜A24の高さが時計回り方向に少しずつ高くなっている。2周目の最初のエリアA9は、1周目の最後のエリアA8に隣接する位置に配置されている。これにより、1周目と2周目との間で高さの差が最小となる2つのエリアA8,A9が隣接するように配列されている。2周目のエリアA9〜A24の外周に合計32個のエリアA25〜A56が11.25°ピッチで配列され、各エリアA25〜A56の高さが時計回り方向に少しずつ高くなっている。3周目の最初のエリアA25は、2周目の最後のエリアA24に隣接する位置に配置されている。これにより、2周目と3周目との間で高さの差が最小となる2つのエリアA24,A25が隣接するように配列されている。
【0030】
このようにすれば、円周方向に隣接するエリアの高さの差を小さくすることができると共に、1周目と2周目と3周目との間で高さの差が最小となるエリアを隣接させることができるため、距離測定器13で測定したエリアの高さ(2つの距離測定値の差分)の測定誤差によって、測定したエリア位置が誤判定されても、誤判定するエリア位置が正しい測定ポイントのエリア位置に隣接するエリア位置にずれるだけであり、測定対象物の変位量及び変位方向の測定誤差を小さくすることができる。
【0031】
一方、基準高さ部24は、第2の距離センサ15の測距方向(レーザ出射方向)に位置し、位置指標部23の中心部のエリアA0と同じ高さに形成され、且つ、位置指標部23と同じ大きさ又はそれ以上の大きさの円形に形成されていると共に、該基準高さ部24の外周囲には、該基準高さ部24とは高さの異なるエラー領域Berror が形成されている。位置指標部23の中心と基準高さ部24の中心との間隔は、第1の距離センサ14の中心と第2の距離センサ15の中心との間隔と一致し、第1の距離センサ14の測定ポイントが位置指標部23の中心であるときには、第2の距離センサ15の測定ポイントが基準高さ部24の中心となるように構成されている。
【0032】
尚、基準高さ部24の高さは、位置指標部23の中心部のエリアA0とは異なる高さに形成しても良いし、基準高さ部24の形状も円形に限定されず、例えば、四角形であっても良い。
【0033】
基準高さ部24の高さを基準とした位置指標部23の各エリアA0〜A56の高さとエリア位置との関係が変位測定テーブルデータ(図3参照)として作成されている。ここで、エリア位置は、例えば位置指標部23の中心を原点とする極座標で表され、各エリアA0〜A56の中心の角度と、位置指標部23の中心から各エリアA0〜A56の中心までの距離(同心円の半径)で表されている。各エリアA0〜A56の中心の角度は、鉛直上方を0°として時計回り方向の角度で表されている。尚、エリア位置は、例えば位置指標部23の中心を原点とする直交座標(XY座標)で表しても良い。
【0034】
図4に示すように、第1の距離センサ14の測距方向(レーザ出射方向)がL0、L1、L2と変動した場合、第1の距離センサ14で測定する距離が位置指標部23の半径やエリア高さに対して十分に長ければ、中心からの角度による距離測定値の変動を無視でき、測定誤差を補正する必要はないが、より影響を少なくするには、各エリアA0〜A56の高さが外周側ほど高くなるようにすれば良い。尚、位置指標部23の反りによる影響は無視できるものとする。
【0035】
図3の変位測定テーブルデータは、制御演算装置31の記憶装置32(記憶手段)に記憶されている。制御演算装置31は、送信ユニット11に設けても良いし、送信ユニット11とは別に設けても良い。制御演算装置31は、2つの距離センサ14,15によって位置指標部23の1つのエリアまでの距離と基準高さ部24までの距離をそれぞれピンポイントで測定し、これら2つの距離測定値の差分と変位測定テーブルデータとに基づいて位置指標部23のうちの第1の距離センサ14で測定したエリア位置を特定することで、測定対象物である受信ユニット21の変位量及び変位方向を判定する。更に、制御演算装置31は、受信ユニット21の変位量及び変位方向の判定結果に基づいて送信部12と受信部22との光軸ずれを補正するように光軸ずれ補正機能を作動させて、送信部12の光ビーム出射方向(光軸)を受信部22に一致させるように自動調整する。
【0036】
以上のように構成された光無線通信システムを部品実装機に適用した例を図5を用いて説明する。装着ヘッド41には、フィーダ(図示せず)によって供給される部品を吸着して回路基板に装着する吸着ノズル(図示せず)が下向きに保持されている。装着ヘッド41は、Y軸スライド機構42によってY軸方向(回路基板の搬送方向と直交する方向)にスライド可能に支持されている。Y軸スライド機構42は、X軸スライド機構43によってX軸方向(回路基板の搬送方向)にスライド可能に支持されている。
【0037】
Y軸スライド機構42とX軸スライド機構43との連結部44には、中継用の受信ユニット21aと中継用の送信ユニット11とがそれぞれX軸方向とY軸方向に向けて設けられ、装着ヘッド41には、中継用の送信ユニット11と対向する位置に受信ユニット21bとが設けられている。X軸スライド機構43の一端側には、中継用の受信ユニット21aと対向する位置に送信ユニット(図示せず)が設けられ、この送信ユニットは、部品実装機の制御装置(図示せず)に接続されている。尚、連結部44に設けられた中継用の受信ユニット21aと中継用の送信ユニット11との間は、信号ケーブル45で接続され、中継用の受信ユニット21aで受信した信号を中継用の送信ユニット11に送信するように構成されている。
【0038】
各送信ユニット11と各受信ユニット21a,21bの構成は、図1〜図4を用いて説明したものと同じであり、2つの距離センサ14,15によって位置指標部23の1つのエリアまでの距離と基準高さ部24までの距離をそれぞれピンポイントで測定し、これら2つの距離測定値の差分と変位測定テーブルデータとに基づいて位置指標部23のうちの第1の距離センサ14で測定したエリア位置を特定することで、受信ユニット21の変位量及び変位方向を判定し、その判定結果に基づいて送信部12と受信部22との光軸ずれを補正するように光軸ずれ補正機能を作動させて、送信部12の光ビーム出射方向(光軸)を受信部22に一致させるように自動調整する。これにより、送信部12から出射した光ビームを確実に受信部22で受光させる。
【0039】
2つの距離センサ14,15の少なくとも一方の測定ポイントがエラー領域Aerror ,Berror に入っている場合は、受信ユニット21の変位量・変位方向を判定できないため、光軸ずれを補正できない。従って、この場合は、送信部12から光ビームを出射しても、受信部22で受光できないと判断して、送信部12の光ビームの出射を停止する。
【0040】
従来は、部品実装機の制御装置と装着ヘッド41との間をケーブルで接続していたため、ケーブルの配線スペースが必要となったり、装着ヘッド41の移動の繰り返しによるケーブルの移動・曲げ動作の繰り返しによりケーブルの断線や接続不良が発生する可能性があった。
【0041】
これに対し、図6のように、本実施例の光無線通信システムを部品実装機に適用すれば、部品実装機の制御装置と装着ヘッド41との間を接続するケーブルを廃止することができるため、ケーブルの配線スペースが不要となり、省スペース化に貢献できると共に、ケーブルの断線や接続不良の問題も解消できる。
【0042】
以上説明した本実施例の変位測定装置は、2つの距離センサ14,15によって位置指標部23の1つのエリアまでの距離と基準高さ部24までの距離をそれぞれピンポイントで測定し、これら2つの距離測定値の差分と変位測定テーブルデータとに基づいて位置指標部23のうちの第1の距離センサ14で測定したエリア位置を特定することで、送信ユニット11に対する受信ユニット21の相対的な変位量及び変位方向を判定することを特徴としている。この場合、基準高さ部24の高さを基準とした位置指標部23の各エリアの高さとエリア位置との関係が変位測定テーブルデータとして記憶されているため、2つの距離センサ14,15によって位置指標部23の1つのエリアまでの距離と基準高さ部24までの距離をそれぞれピンポイントで測定し、これら2つの距離測定値の差分を求めれば、測定したエリアの高さが判明し、変位測定テーブルデータを参照すれば、測定したエリアの高さに対応するエリア位置を特定することができ、そのエリア位置から測定対象物である受信ユニット21の変位量及び変位方向を特定することができる。これにより、受信ユニット21の変位量や変位方向を判定する変位測定装置の小型化、高速処理化、測定精度向上を実現することができる。すなわち、距離センサ14,15を用いた簡単な構成であるため、変位測定装置の小型化が可能であると共に、2つの距離センサ14,15の距離測定値の差分を演算して変位測定テーブルデータを参照するだけの簡単な処理で受信ユニット21の変位量及び変位方向を求めることができ、カメラの撮像画像を画像処理する場合と比べて高速で受信ユニット21の変位量や変位方向を演算することが可能であり、更に、距離センサ14,15の測定精度を上げるだけで、変位測定装置の測定精度を簡単に向上させることができる。
【0043】
ところで、送信ユニット11と受信ユニット21(21a,21b)の両方が停止しているときに、受信ユニット21a,21bの変位量及び変位方向を判定する場合は、位置指標部23の1つのエリアまでの距離の測定と基準高さ部24までの距離の測定を同時に行っても良いし、いずれか一方の距離の測定を行ってから、他方の距離の測定を行っても良い。送信ユニット11と受信ユニット21の両方が停止している場合は、2つの距離の測定を別々に行っても、測定条件が変化しないため、基準高さ部24の高さを基準とした位置指標部23の各エリアの高さ(2つの距離測定値の差分)を正確に測定することができる。
【0044】
しかし、送信ユニット11と受信ユニット21の両方又はいずれか一方が移動又は振動している場合は、2つの距離の測定を別々に行うと、測定条件が変化して基準高さ部24の高さを基準とした位置指標部23の各エリアの高さ(2つの距離測定値の差分)を正確に測定できない。
【0045】
そこで、送信ユニット11と受信ユニット21の両方又はいずれか一方が移動又は振動しているときに、送信ユニット11に対する受信ユニット21の相対的な変位量及び変位方向を判定する場合は、位置指標部23の1つのエリアまでの距離の測定と基準高さ部24までの距離の測定を同時に行うようにすれば良い。このようにすれば、送信ユニット11と受信ユニット21の両方又はいずれか一方が移動又は振動する場合でも、基準高さ部24の高さを基準とした位置指標部23の各エリアの高さ(2つの距離測定値の差分)を正確に測定することができ、送信ユニット11に対する受信ユニット21の相対的な変位量及び変位方向を精度良く検出することができる。
【0046】
また、本実施例では、受信ユニット21の変位量の測定可能範囲が位置指標部23の大きさで決まることを考慮して、基準高さ部24は、位置指標部23と同じ大きさ又はそれ以上の大きさに形成すると共に、該基準高さ部24の外周囲には、該基準高さ部24とは高さの異なるエラー領域Berror を形成し、位置指標部23の外周囲には、該位置指標部23の各エリアとは高さの異なるエラー領域Aerror を形成している。このようにすれば、受信ユニット21の変位量が位置指標部23の大きさ以下(つまり位置指標部23の各エリアの高さを測定可能な範囲内)であれば、基準高さ部24の高さを測定可能であり、確実に受信ユニット21の変位量及び変位方向を測定できる。しかも、受信ユニット21の変位量が位置指標部23の大きさを超えれば、エラー領域Aerror が検出されるため、受信ユニット21の変位量が測定可能な範囲を超えていることを確認できる。
【0047】
尚、本実施例では、測定対象物までの距離をピンポイントで測定する距離測定手段を、位置指標部23の1つのエリアまでの距離を測定する第1の距離センサ14と、基準高さ部24までの距離を測定する第2の距離センサ15とから構成したが、停止している測定対象物までの距離を測定する場合は、距離測定手段を1つの距離センサで構成して、該距離センサの測距方向(角度)又は位置を位置指標部23測定用と基準高さ部24測定用との間で切り換えて、位置指標部23の1つのエリアまでの距離の測定と基準高さ部24までの距離の測定を別々に行うようにしても良い。
【0048】
また、本発明の変位測定装置を用いた光無線通信システムの適用範囲は、部品実装機に限定されず、通信システムを搭載した各種機器に広く適用して実施でき、更には、マイクロ波、ミリ波を用いた無線通信システムにも適用できる。
【0049】
また、本発明の変位測定装置の適用範囲は、光無線通信システムに限定されず、測定対象物の変位量及び変位方向を判定する機能を必要とする各種機器に広く適用して実施できる。
【符号の説明】
【0050】
11…送信ユニット、12…送信部、13…距離測定器(距離測定手段)、14…第1の距離センサ、15…第2の距離センサ、21,21a,21b…受信ユニット(測定対象物)、22…受信部、23…位置指標部、24…基準高さ部、31…制御演算装置、32…記憶装置(記憶手段)、41…装着ヘッド、42…Y軸スライド機構、43…X軸スライド機構、44…連結部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物の測定位置までの距離を測定する距離測定手段と、
前記測定対象物のうちの前記距離測定手段と対向する部位に設けられた位置指標部及び基準高さ部とを備え、
前記位置指標部は、三次元形状に形成されていると共に、前記基準高さ部を基準とした高さと位置との関係が変位測定テーブルデータとして記憶手段に記憶され、
前記距離測定手段によって前記位置指標部の測定位置までの距離と前記基準高さ部までの距離をそれぞれ測定し、これら2つの距離測定値の差分と前記変位測定テーブルデータとに基づいて前記位置指標部のうちの前記距離測定手段で測定した位置を特定することで前記測定対象物の変位量及び変位方向を判定することを特徴とする変位測定装置。
【請求項2】
前記距離測定手段は、測定対象物の測定位置までの距離をピンポイントで測定し、
前記位置指標部は、複数のエリアに区画され且つ各エリア毎に高さが異なる三次元形状に形成され、
前記変位測定テーブルデータは、前記基準高さ部を基準とした各エリアの高さとエリア位置との関係がデータ化され、
前記距離測定手段によって前記位置指標部の1つのエリアまでの距離と前記基準高さ部までの距離をそれぞれピンポイントで測定し、これら2つの距離測定値の差分と前記変位測定テーブルデータとに基づいて前記位置指標部のうちの前記距離測定手段で測定したエリア位置を特定することで前記測定対象物の変位量及び変位方向を判定することを特徴とする請求項1に記載の変位測定装置。
【請求項3】
前記距離測定手段は、前記位置指標部の1つのエリアまでの距離をピンポイントで測定する第1の距離センサと、前記基準高さ部までの距離をピンポイントで測定する第2の距離センサとを備え、前記第1の距離センサの測距方向と前記第2の距離センサの測距方向とが略平行となるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載の変位測定装置。
【請求項4】
前記第1の距離センサによる前記位置指標部の1つのエリアまでの距離の測定と前記第2の距離センサによる前記基準高さ部までの距離の測定とを同時に行い、これら2つの距離測定値の差分と前記変位測定テーブルデータとに基づいて前記位置指標部のうちの前記距離測定手段で測定したエリア位置を特定することを特徴とする請求項3に記載の変位測定装置。
【請求項5】
前記位置指標部の中心部のエリアが前記基準高さ部と同じ高さとなるように形成されていることを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載の変位測定装置。
【請求項6】
前記位置指標部は、中心部のエリアが円形に形成され、その周囲に複数のエリアが同心円状に配列されていることを特徴とする請求項2乃至5のいずれかに記載の変位測定装置。
【請求項7】
前記位置指標部の中心から半径が同じ円周上に位置する各エリアは、全て同じ面積となるように形成されていることを特徴とする請求項6に記載の変位測定装置。
【請求項8】
前記位置指標部の中心から半径が同じ円周上に位置する各エリアは、円周方向に順番に高さが高く又は低くなるように形成され、
前記位置指標部の中心から半径が異なる円周上に位置する各エリアは、外周側ほど高さが高く又は低くなるように形成されていることを特徴とする請求項6又は7に記載の変位測定装置。
【請求項9】
前記基準高さ部は、前記位置指標部と同じ大きさ又はそれ以上の大きさに形成されていると共に、該基準高さ部の外周囲には、該基準高さ部とは高さの異なるエラー領域が形成され、
前記位置指標部の外周囲には、該位置指標部の各エリアとは高さの異なるエラー領域が形成されていることを特徴とする請求項2乃至8のいずれかに記載の変位測定装置。
【請求項10】
光信号をワイヤレスで送信する送信部と、
前記光信号を受信する受信部と、
前記送信部から送信される光信号の到達位置と前記受信部との位置ずれを補正するトラッキング機構とを備えた光無線通信システムにおいて、
請求項1乃至9のいずれかに記載の変位測定装置を備え、
前記距離測定手段は、前記送信部が取り付けられた送信ユニットに設けられ、
前記測定対象物は、前記受信部が取り付けられた受信ユニットであり、
前記位置指標部及び前記基準高さ部は、前記受信ユニットに設けられ、
前記変位測定装置は、前記距離測定手段による2つの距離測定値の差分と前記変位測定テーブルデータとに基づいて前記受信ユニットの変位量及び変位方向を判定し、
前記トラッキング機構は、前記変位測定装置の測定結果に基づいて前記送信部から送信される光信号の到達位置と前記受信部との位置ずれを補正することを特徴とする光無線通信システム。
【請求項11】
前記送信ユニットと前記受信ユニットの両方又はいずれか一方は、移動又は振動する物体に取り付けられ、
前記変位測定装置は、前記位置指標部の測定位置までの距離の測定と前記基準高さ部までの距離の測定とを同時に行い、これら2つの距離測定値の差分と前記変位測定テーブルデータとに基づいて前記受信ユニットの変位量及び変位方向を判定することを特徴とする請求項9に記載の光無線通信システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−44686(P2013−44686A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−184126(P2011−184126)
【出願日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【出願人】(000237271)富士機械製造株式会社 (775)
【Fターム(参考)】