説明

外観検査システム

【課題】判定方法や表示方法などが変更された場合であっても、大きくプログラムを作り直す必要がなく、また、複数のプロセッサーを有する検査装置で検査する場合であっても大きくプログラムを作り直す必要のないシステムを提供する。
【解決手段】プリント基板3の形成状態を検査する外観検査システム1において、まず、基準データ記憶手段17aに基準画像データを格納しておき、コア処理手段21は、この基準画像データの読み出しを行う。そして、プリント基板3の形成状態を判定する複数の判定手段22から基準画像データの読み出し要求があると、判定手段22a、22bは、独自の判定プログラムに基づいて対応基準データを生成し、その対応基準データと被検査画像を用いて形成状態の良否の判定を行う。そして、その判定結果を、コア処理手段21に送信し、判定結果記憶手段17bに格納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検査対象物の形成状態を検査する外観検査システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、物品の形成状態を検査する場合、まず、画像取得手段によって検査対象物の画像を取得し、その画像を検査データとしてメモリに格納するとともに、あらかじめ検査に必要となる基準データを記憶手段に格納しておき、検査対象物から取得された検査データとこの記憶手段に格納された基準データとを比較する。そして、その比較判定による結果、不良箇所が存在する場合はその不良位置やその不良位置における画像をディスプレイに表示する。
【0003】
この外観検査システムについて、プリント基板を検査する場合を説明すると、まず、プリント基板の形成状態を検査する場合、画像取得手段を用いてプリント基板の表面に形成された配線パターンやパッド、レジスト、シルクなどの画像を取得し、その取得した画像をメモリに格納する。また、あらかじめ検査のために必要となる基準データも記憶手段に格納しておく。ここで、基準データとしては、良品のプリント基板の画像や、その画像をもとに判定処理する際に用いられる閾値などのデータである。
【0004】
そして、取得された配線パターンやパッド、レジスト、シルクなどの画像からその形成状態を検査する場合、例えば、取得された画像からヒストグラムを生成するとともに、これに対応して、あらかじめ記憶手段に良品のプリント基板から生成されたヒストグラムに関する基準データを格納しておく。そして、検査対象物のヒストグラムとあらかじめ記憶手段に格納されているヒストグラムとを比較し、図3に示すように、第一の輝度値P1よりも低い輝度を有する画素の数が基準数(図における斜線部)以上存在している場合や、第二の輝度値P2よりも高い輝度を有する画素の数が基準数(図における斜線部)以上存在している場合は、不良であると判定する。そして、配線パターンやパッド、レジスト、シルクなどの各検査領域についてそれぞれ独自の判定アルゴリズムに基づいて判定を行い、不良と判定されたプリント基板については、その検査結果を記憶手段に格納していくとともに、事後的に、ディスプレイに不良箇所の画像や位置データなどを表示させて、目視検査を行えるようにしている(特許文献1)。
【0005】
また、プリント基板を検査する他の検査方法としては、検査対象となるパターン領域を内側と外側領域に分割し、比較的大きな欠陥が許容されるパターン領域の内側について緩やかな基準を適用し、また、微細な欠陥も問題とされるパターン領域の外側については厳しい基準を適用して検査を行うようにする方法もある(特許文献2)。
【0006】
また、これ以外にも多くの検査方法が存在し、一般に、物品の形成状態を検査する場合、ユーザーの仕様に基づいて判定アルゴリズムや閾値などを設定し、これに基づいて検査を行うことが多い。
【特許文献1】特開2003−86919号公報
【特許文献2】特開2005−181218号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、このように各ユーザーの仕様に応じて検査のための判定アルゴリズムを変更すると、一からプログラムを作り直さなければならず、そのプログラムの作成に時間がかかってしまう。また、同一のユーザーであっても、例えば、配線パターンやパッド、レジスト、シルクなどのように検査対象領域ごとに判定アルゴリズムを変えて検査しなければならない場合は、それぞれの検査対象領域ごとにプログラムを作成しなければならない。一方、現在では複数のプロセッサーを有する検査装置や、ネットワークで接続された他の検査装置で検査を行えるようにした検査装置も提案されているが、このような検査装置で検査する場合においても、同じ判定アルゴリズムで検査を行おうとしてもデータ送受信のためのプログラムを組み込まなければならない。
【0008】
そこで、本発明は上記課題に着目してなされたもので、検査方法が変更された場合であっても、大きく判定プログラムを作り直す必要がなく、また、複数のプロセッサーを有する検査装置やネットワークで接続された装置を用いて検査する場合であっても、大きく判定プログラムを作り直す必要のない外観検査システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は上記課題を解決するために、検査対象物の形成状態を第一判定プログラムによって判定する第一判定手段と、当該第一判定プログラムとは異なる第二判定プログラムを用いて判定する第二判定手段とを備えてなる外観検査システムにおいて、検査対象物から被検査画像を取得する画像取得手段と、被検査画像を判定するに際して基準となる基準画像データを記憶する記憶手段と、当該基準画像データを読み出して前記第一判定手段および第二判定手段に出力するコア処理手段とを備え、前記第一判定手段で、基準画像データをもとに第一判定プログラムで使用される第一基準データを生成するとともに、当該生成された第一基準データと前記画像取得手段から取得した被検査画像とに基づいて判定処理を行い、前記第二判定手段で、基準画像データをもとに第二判定プログラムで使用される第二基準データを生成するとともに、当該生成された第二基準データと前記画像取得手段から取得した被検査画像とに基づいて判定するようにしたものである。
【0010】
このようにすれば、検査対象領域ごとに判定プログラムを変更する場合であっても、すべてのプログラムに共通する基準画像データの読み出しをコア処理手段で行うので、判定プログラムを大きく作り直す必要がなくなる。また、判定プログラムが変更された場合であっても、その判定処理の際に使用される対応基準データを判定手段で生成するので、対応基準データを自動的に生成することができ、また、対応基準データの作成や記憶をコア処理手段で行う必要がなくなる。
【0011】
また、別の発明では、検査対象物の形成状態を判定する複数の判定プログラムのうち少なくとも一つを記憶させ、当該判定プログラムによって検査対象物の形成状態の良否を判定するようにした外観検査システムにおいて、検査対象物から被検査画像を取得する画像取得手段と、被検査画像を判定するに際して基準となる基準画像データを記憶する記憶手段と、当該基準画像データを読み出して判定手段に出力するコア処理手段とを備えてなり、当該判定手段で、基準画像データをもとに前記判定プログラムで使用される対応基準データを生成するとともに、当該生成された対応基準データと前記画像取得手段から取得した被検査画像とに基づいて判定する。
【0012】
このようにすれば、ユーザーの要求によって判定アルゴリズムが変更された場合であっても、コア処理手段におけるコアプログラムを作り替える必要がなく、また、判定処理の際に使用される対応基準データも自動的に生成することができるようになる。
【0013】
さらに、コア処理手段が判定手段からの画像取得要求を受け取った場合、その画像取得要求を他のプロセッサーで駆動する第二コア処理手段に出力し、当該第二コア処理手段で、対応して設けられた記憶手段に格納された基準画像データを読み出して前記コア処理手段に出力する。そして、そのコア処理手段が判定手段に対して基準画像データを出力する。
【0014】
このようにすれば、マルチプロセッサーを有する外観検査システムやネットワークで接続された複数の装置で検査する場合であっても、単一のプロセッサー用の判定プログラムであるかマルチプロセッサー用の判定プログラムであるかを意識することなく判定プログラムを作成することができる。
【0015】
また、このような発明において、検査対象物の形成状態を目視検査する複数の表示プログラムのうち少なくとも一つを記憶させ、当該表示プログラムによって検査対象物の形成状態の良否を目視検査できるようにする場合、判定手段による判定結果をコア処理手段に出力し、当該判定結果を記憶させるとともに、表示手段からの判定結果読み出し要求に基づいて、コア処理手段から判定結果を出力し、当該表示手段で、その自動判定結果に基づく目視判定結果の入力を受け付けてコア処理手段に出力する。
【0016】
このようにすれば、目視検査に使用されるディスプレイの表示方法が変わった場合であっても、判定プログラムやコアプログラムを大きく変更することなく、簡単に表示プログラムの変更のみで対応することができる。
【0017】
また、コア処理手段が表示手段から判定結果の読み出し要求を受け取った場合、その要求を他のプロセッサーで駆動する第二コア処理手段に出力し、当該第二コア処理手段で、対応して設けられた記憶手段から判定結果を読み出して前記コア処理手段に出力する
【0018】
このようにすれば、マルチプロセッサーを有する外観検査システムやネットワークで接続された複数の装置で検査する場合であっても、単一のプロセッサー用の表示プログラムであるかマルチプロセッサー用の表示プログラムであるかを意識することなく表示プログラムを作成することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、ユーザーの要求によって判定アルゴリズムが変更された場合や、検査対象領域ごとに判定プログラムを変更すべき場合であっても、すべてのプログラムに共通する基準画像データの読み出しをコア処理手段で行うので、判定プログラムの大きく作り直す必要がなくなる。また、判定プログラムが変更された場合であっても、その判定処理の際に使用される対応基準データを判定手段で生成するので、対応基準データを自動的に生成することができ、また、対応基準データの作成や記憶をコア処理手段で行う必要がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施の形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明の第一の実施の形態であるプリント基板3を検査する外観検査システム1の概略図を示したものであり、図2は、その外観検査システム1の機能ブロック図を示したものである。なお、この実施の形態では、プリント基板3を検査する外観検査システム1について説明するが、必ずしもプリント基板3を検査する装置に限定されるものではなく、例えば、液晶基板や、物品の表面に形成された印刷文字などを検査する検査装置のほか、物品の表面に発生した傷や欠けなどの有無を検査する検査装置などに適用することができる。
【0021】
<第一の実施の形態>
まず、第一の実施の形態における外観検査システム1について説明すると、第一の実施の形態における外観検査システム1は、一つのプロセッサーで判定処理を行う検査装置からなるもので、その内部に、検査対象物であるプリント基板3の表面画像を取得する画像取得手段14と、その取得された画像からプリント基板3の形成状態の良否を検査する検査処理手段16とを備える。そして、特徴的には、その検査処理手段16に、コアプログラムに基づいて駆動するコア処理手段21と、判定プログラムに基づいて駆動する複数の判定手段(第一判定手段22a、第二判定手段22b)と、表示プログラムに基づいて駆動する複数の表示処理手段23とを分離して設けておき、各判定手段22a、22bとコア処理手段21との間、および、表示処理手段23とコア処理手段21との間でコマンドとレスポンスの送受信を行うことで判定処理や表示処理を行うようにしたものである。
【0022】
この外観検査システム1の機能構成を説明する。図1において、外観検査システム1は、検査対象であるプリント基板3を積層するスタッカ10と、そのスタッカ10からプリント基板3を取り出して載置台12に載置するピックアップ機構11と、載置台12に載せられたプリント基板3を画像取得手段14まで移動させる移動機構13とを備える。そして、その取得された画像を用いて検査処理手段16を用いて検査を行い、その判定結果に応じてプリント基板3を振り分けて回収する回収部15とを備えている。
【0023】
この画像取得手段14は、プリント基板3に斜め方向から光を照射する発光装置141と、プリント基板3からの反射光を受光する受光装置142とを備えてなり、その受光装置142によって取得された画像を一旦画像メモリに格納する。そして、この画像メモリに格納された検査対象の画像データ(以下、「被検査画像」という)を検査処理手段16に出力して良否判定を行い、コア処理手段21と各判定手段22a、22bによって検査領域ごとの良否判定を行う。
【0024】
このコア処理手段21は、ユーザーによって異なる仕様の判定プログラムや表示プログラムに対して共通の処理を行うもので、判定プログラムや表示プログラムが変更された場合であっても新たにプログラムを作り直す必要がないものである。具体的に、このコア処理手段21は、あらかじめ基準データ記憶手段17aに基準画像データを記憶させておき、判定手段22a、22bから画像取得要求があった場合はその基準画像データを読み出して判定手段22a、22bに出力する。また、その際、画像取得手段14によって取得された被検査画像も判定手段22a、22bに対して出力する。なお、ここでは、被検査画像をコア処理手段21を介して判定手段22a、22bに出力するようにしているが、被検査画像については直接画像取得手段14から判定手段22a、22bに出力するようにしてもよい。
【0025】
基準データ記憶手段17aには、検査に際して基準となるプリント基板3の画像のビットマップデータが基準画像データとして格納される。そして、第一判定手段22aや第二判定手段22bから画像取得要求があった場合、コア処理手段はその画像取得要求に含まれる指定画像アドレスを抽出し、そのアドレスに基づく領域の基準画像データを読み出して第一判定手段22aや第二判定手段22bに出力する。ここで、「画像データ」とは、ビットマップデータだけでなく、基準となるプリント基板3から取得された画像の圧縮データ、もしくは、取得された画像の一部の画像データ、あるいは、プリント基板3を形成する際に使用されるCADデータに基づいて生成される画像データを使用してもよい。
【0026】
判定手段22は、コア処理手段21から受信した基準画像データや被検査画像に基づいて検査対象となるプリント基板3の良否を判定するもので、この実施の形態では、2種類の判定手段(第一判定手段22a、第二判定手段22b)を備える。もちろん、この判定手段は3種類以上設けるようにすることもできる。この判定手段は判定アルゴリズムを実行する判定プログラムとそれに関連するハードウェアで構成されるものである。
【0027】
このうち第一判定手段22aは、パッドや配線パターンの形成状態の良否を判定し、また、第二判定手段22bは、シルクの形成状態を判定する。なお、本実施の形態では、パッドや配線パターン、シルクの形成状態を判定する場合について説明するが、これ以外に、レジスト、スルーホールなどの判定手段も設けるようにしてもよい。
【0028】
第一判定手段22aで、パッドや配線パターンの欠けや突起などを検査する場合、まず、目視検査によって良品と判定されたプリント基板3の基準画像データをコア処理手段21から取得し、ここからパッドの輝度幅である輝度90から輝度150の画素数を計数して、図3の太い実線に示すようなヒストグラムを生成する。そして、このヒストグラムのピークを中心に明るい側と暗い側における一定輝度幅P1〜P2の第一基準画素数(輝度P2×輝度幅P1〜P2)、およびP3〜P4の第二基準画素数(輝度P3×輝度幅P3〜P4)を第一基準データとして対応基準データ記憶手段220aに格納しておく。
【0029】
また、第一判定手段22aは、画像取得手段14から取得された画像をもとに、上述と同様の処理手順によってパッドの輝度幅である輝度90〜150の画素数を計数し、図3(b)(c)の細い実線に示すヒストグラムを生成する。そして、このヒストグラムにおいて、輝度P1〜P2の輝度幅の画素数を計数するとともに、輝度P3〜P4の輝度幅の画素数を計数し、これと第一基準画素数および第二基準画素数と比較する。そして、第一基準画素数よりも検査対象物の画素数が多い場合は、パッドに欠けがあると判定し(図3(b))、また、第二基準画素数よりも検査対象物の画素数が多い場合は、パッドに突起があると判定する(図3(c))。一方、検査対象物の画素数が第一基準画素数および第二基準画素数よりも少ない場合は良品であると判定し、その結果をコア処理手段21に出力する。このコア出力部に判定結果を出力する場合は、欠陥が存在する座標位置とその欠陥の種類(例えば、突起や欠け)を出力する。
【0030】
次に、シルク検査のための第二判定手段22bについて説明する。第二判定手段22bで、シルクの印刷状態を検査する場合、まず、同様に、目視によって良品と判定されたプリント基板3からシルクの画像を抽出する。このシルクの画像を抽出する場合、基準画像データをコア処理手段21から取得し、これを、シルクの輝度幅である輝度200〜255の画素を抽出し、その領域の画像を図4に示すように数画素分膨らまし処理する。この膨らまし処理を行う画素数としては、例えば、2〜3画素とし、この膨らまし処理によって輪郭部分をスムージングする。そして、さらに、この膨らましによって生成された領域(以下、外側ブロック領域という)をさらに膨らまし処理し、この状態を図4を用いて詳細に説明すると、太い実線40は、実際に印刷されたシルクの輪郭線であり、41aはその輪郭線を膨らまし処理して得られた外側ブロック領域41の輪郭線である。また、最も内側における細い破線で示した線42aは内側ブロック領域42の輪郭線である。また、最も外側における太い実線43aは、外側ブロック領域41をさらに膨らまし処理した最外領域43の輪郭線である。この最外領域43においては、パッドなどの他の検査対象物を除去した窪み44が形成されている。この窪み44を形成する場合、膨らまし処理することによって得られた最外領域43に対して、パッドの領域を除去することによって行われる。なお、ここではパッド領域を除去するようにしているが、これはパッドの銅箔が露出して白く反射し、シルクと誤認されるおそれがあるからである。そして、今度は、先の膨らまし処理された外側ブロック領域41を逆に縮小させる方向に処理する。この縮小画素数としては、膨らまし処理した画素数よりも大きく、しかも、実際のシルクの輪郭線40よりも若干内側に輪郭線が位置するようにする。そして、このように膨らまし処理と縮小処理を行うことにより、スムージングされた内側ブロック領域42が生成される。そして、このように生成された外側ブロック領域41、内側ブロック領域42、最外領域43の情報を第二基準データとして対応基準データ記憶手段220bに格納しておく。また、第二基準データとして、図5(a)に示すように、最外領域43から外側ブロック領域41を刳り貫いた刳り貫き領域におけるヒストグラムと、そのヒストグラムにおける第一の輝度P5よりも低い側の第一基準画素数、および第二の輝度P6よりも高い側の第二基準画素数を第二基準データとして記憶させておく。
【0031】
そして、第二判定手段22bは、検査対象であるシルクの印刷状態を検査する場合、画像取得手段14によって取得された検査対象物の画像から、シルクの輝度幅である輝度200〜255の画素を抽出し、その抽出されたシルクと第二基準データの内側ブロック領域42をマッチング処理する。具体的には、図5に示すように、検査対象となるシルクの画像を数画素ずつX方向、Y方向にずらしながら内側ブロック領域42と相関をとり、相関値が最も高くなるような位置を検出することによって検査対象物のシルクと基準となる内側ブロック領域42との位置ずれを検出する。この位置ずれの検出により、基準対象物におけるシルクの位置ずれ(x、y)が検出される。そして、このずれ量(x、y)から、検査対象物からの取得画像を全体的に(x、y)分だけシフトさせ、基準となる内側ブロック領域42と一致させる。
【0032】
そして、このシフト処理された検査対象物の画像から外側ブロック領域41を刳り貫き、最外領域43内における刳り貫き領域43を生成する。このとき、検査対象物のシルクがほぼ基準となるシルクの印刷状態と同じであれば、刳り貫き領域43内にはレジストの輝度に対応する画素だけが存在することになる。しかし、検査対象物のシルクの輪郭外側にシルクの滲みや塵が付着している場合や、「A」の中空部分が塗り潰されている場合には、その刳り貫き領域43に白い輝度の画素とレジストの輝度の画素が含まれることとなる。
【0033】
そして、この刳り貫き領域43内における画素のヒストグラムを生成し、このヒストグラムからシルクの印刷状態の良否を判定する。検査対象物のシルクの輪郭外側にシルクの滲みや塵などの異物がまったく存在しない場合は、図6(a)に示すように、レジストの輝度幅内の画素が最も多くなり、低輝度側の画素や高輝度側の画素は存在しないことになる。一方、検査対象物のシルクの輪郭外側にシルクの滲みが存在する場合は、図6(b)に示すように、レジストの輝度幅よりも高輝度側の画素数が増え、また、シルクの輪郭外側に黒い塵が存在している場合は、レジストの輝度よりも低輝度側の画素数が増える。そこで、第二判定手段22bでは、この生成されたヒストグラムからレジストの輝度幅における第一の輝度P5よりも低い輝度の画素数を計数するとともに、レジストの輝度幅における第二の輝度P6よりも高い輝度の画素数を計数する。そして、第二基準データとして記憶されている低輝度側における第一基準画素数と、高輝度側における第二基準画素数とを用いて比較し、そして、検査対象物における第一の輝度P5よりも低輝度側の総画素数が第一基準画素数よりも大きい場合、または、検査対象物における第二の輝度P6よりも高輝度側の総画素数が第二基準画素数よりも大きい場合には、印刷状態が不良であると判定する。一方、検査対象物における低輝度側の総画素数が第一基準画素数よりも少なく、かつ、検査対象物における高輝度側の総画素数が第二基準画素数よりも少ない場合には、印刷状態良好であると判定し、その結果と不良位置をコア処理手段21に出力する。
【0034】
そして、コア処理手段21は、第一判定手段22aや第二判定手段22bから受け取った判定結果やその不良原因、および、不良箇所の画像などを判定結果記憶手段17bに記憶させる。
【0035】
次に、コア処理手段21は、表示処理手段23に対してその判定結果記憶手段17bに格納された判定結果と不良箇所を示す座標データの一覧を送信する。この表示処理手段23は、ユーザーからの仕様によって様々な表示形態で表示されるもので、不良箇所の画像を表示し、目視検査の結果を入力できるようにしたもので、表示や入力処理を実行する表示プログラムとそれに関連するハードウェアで構成されるものである。この表示処理手段23は、コア処理手段21に対して不良箇所の表示一覧要求を出力し、そのレスポンスとしてコア処理手段21から不良箇所の一覧を受信する。そして、その不良箇所の画像をディスプレイに表示させ、目視検査の結果を受け付けて、その結果をコア処理手段21に出力できるようにしている。なお、ここでは一つの表示処理手段23について説明するが、ユーザーの仕様によって表示方法が変更された場合であっても、表示一覧要求の出力と受信、および、目視判定結果の出力は共通化しておく。
【0036】
この表示処理手段23は、図7に示すように、ディスプレイに被検査画像を表示する第一の表示領域231と、基準となるプリント基板3の同じ位置における画像を表示する第三の表示領域233と、不良箇所のリストを表示する第三の表示領域233を表示させる。この第三の表示領域233には、不良と判断されたプリント基板3の識別番号と、その識別番号に対応する不良箇所のリストが上下方向に並べて表示され、マウスで選択されるようになっている。
【0037】
これらの各表示領域に表示する場合、コア処理手段21から判定結果が送信されることによって、不良箇所のリストのみが表示される。このとき、第一の表示領域231と第二の表示領域232には画像は表示されていない状態となる。そして、目視検査者がその表示された一覧の中の一部を選択することによって、表示処理手段23はその選択された不良箇所の(X,Y)座標を読み出し、コア処理手段21に画像読み出し要求を送信する。すると、コア処理手段21は、基準データ記憶手段17aに格納されていた基準データの(X,Y)座標の画像と、検査対象となるプリント基板3の(X,Y)座標における画像データをレスポンスとして表示処理手段23に返信する。そして、その受信した画像データのうち、被検査画像を第一の表示領域231に表示し、また、基準画像データを第二の表示領域232に表示させる。このとき、被検査画像の座標位置にマーキングMを施し、不良箇所を容易に特定できるようにする。そして、この第一の表示領域231に表示された不良箇所の画像と、第二の表示領域232に表示された基準データの画像を目視検査することによって操作者からの目視検査の結果の入力を受け付け、その受け付けた目視判定の結果を座標データとともにコア処理手段21に出力する。このとき、表示処理手段23はコア処理手段21に対して座標位置データとともに判定結果の書き換えを要求するコマンドを送信する。すると、このデータを受信したコア処理手段21は、判定結果記憶手段17bに格納されていたその座標位置の判定結果を書き換える。
【0038】
このようにすれば、判定方法や表示方法が変更・追加された場合であっても、コア処理手段を変更することなく対応することができるようになる。
【0039】
<第二の実施の形態>
【0040】
次に、第二の実施の形態について説明する。図8は、第二の実施の形態におけるプリント基板3の外観検査システム1の概略図を示したものであり、図9は、その機能ブロック図を示したものである。
【0041】
上記第一の実施の形態では、一台の装置本体で検査を行う場合について説明したが、第二の実施の形態は、プリント基板3をピックアップして自動で検査する自動検査装置1aと、目視で良否を判断する目視検査装置1bを用いて外観検査装置を構成した場合について説明する。
【0042】
この実施の形態における外観検査システム1は、自動検査装置1aと目視検査装置1bをネットワークを介して接続したものである。このうち、自動検査装置1aは、上記第一の実施の形態における外観検査システム1と同様に、スタッカ10やピックアップ機構11、移動機構13、画像取得手段14、回収部15などを設けている。一方、目視検査装置1bは、内部にCPUや記憶装置を備え、また、キーボードなどの入力部やディスプレイなどを備えている。
【0043】
この自動検査装置1aには、コア処理手段21と判定手段22a、22bを備え、一方、目視判定装置には、自動検査装置1aと同じ第二コア処理手段21bと、表示処理手段23とを備えている。
【0044】
そして、このように構成された外観検査システム1において、プリント基板3を検査する場合、事前に自動検査装置1aの基準データ記憶手段17aに基準画像データを記憶させておく。
【0045】
検査対象となるプリント基板3を検査する場合、判定処理手段22a、22bがコア処理手段21に対して判定処理開始のコマンドと画像アドレスを送信し、これに基づいて、コア処理手段21は、そのアドレスに対応した領域の基準画像データを返信する。
【0046】
そして、判定処理手段22aは、各判定アルゴリズムによって被検査画像とその基準画像データに基づいてプリント基板3の良否を判定し、判定結果と不良箇所を示す座標データをコア処理手段21に返信し、コア処理手段21は、その判定結果などのデータを判定結果記憶手段17bに格納させる。
【0047】
一方、目視検査装置1bで不良となるプリント基板3の目視検査を行う場合、表示処理手段23は、その目視検査装置1bの第二コア処理手段21bに対して一覧表示要求のコマンドを送信するとともに、その第二コア処理手段21bは、自動検査装置1aのコア処理手段21に対してそのコマンドを転送する。するとコア処理手段21は、判定結果記憶手段17bに格納されていた不良箇所の一覧を読み出し、そのデータを目視検査装置1bの第二コア処理手段21bに返信し、第二コア処理手段21bはその一覧を表示処理手段23に転送する。このように一覧を受信すると、表示処理手段23は、その不良箇所の一覧を、図7のように第三の表示領域233に表示させ、そして、検査者による選択を受け付ける。このとき、検査者が一覧の中の特定の不良箇所を選択すると、表示処理手段23は、目視検査装置1bの第二コア処理手段21に対して、その不良箇所の座標データとその位置の画像取得のための要求コマンドを送信し、その第二コア処理手段21bは、自動検査装置1aのコア処理手段21に対して転送処理を行う。そして、自動検査装置1aの判定結果記憶手段17bからその座標位置における検査対象物の画像や、基準データ記憶手段17aから基準画像データを取得し、その取得した画像を目視検査装置1bの第二コア処理手段21bを介して表示処理手段23に返信する。
【0048】
表示処理手段23がこの画像データを受信すると、第一の表示領域231に不良箇所の画像データを表示させるとともに、第二の表示領域232に基準データとなる画像を表示させる。そして、検査者による目視の検査を受け付ける。検査者がこれらの表示された画像に基づいて良品であると判断した場合は、その入力を受け付け、表示処理手段23が、その座標位置と目視検査の結果を書き換えるためのコマンドを第二コア処理手段21bに送信する。そして、目視検査装置1bの第二コア処理手段21bは、そのコマンドを自動検査装置1aのコア処理手段21に転送し、自動検査装置1aのコア処理手段21の動作によって判定結果記憶手段17bに格納されている検査結果を書き換える。
<第三の実施の形態>
【0049】
次に、第三の実施の形態について図10を用いて説明する。上記第二の実施の形態では、遠隔に設けられた目視検査装置1bで目視検査を行う場合について説明したが、この第三の実施の形態では、自動検査装置1aにコア処理手段21と基準データ記憶手段17aを設けておき、この装置から遠隔に設けられた自動検査装置1cで判定処理や目視検査を行えるようにしたものである。
【0050】
この第三の実施の形態における処理について説明すると、あらかじめ自動検査装置1aの基準データ記憶手段17aに基準画像データを格納しておき、この状態で、遠隔に設けられた目視検査装置1bで自動検査と目視検査を行う。
【0051】
自動検査を行う場合は、目視検査装置1bでプリント基板3から被検査画像を取得し、そして、第n判定手段22nで自動判定を行う場合は、前述と同様に、第n判定手段22nから画像アドレスを指定した画像取得要求を送る。すると第二コア処理手段21bは、その要求をコア処理手段21に転送し、コア処理手段21が基準データ記憶手段17aから取得した基準画像データを取得する。そして、その取得した基準画像データを第n判定手段22nに送信し、第n判定手段22nで判定処理を行う。そして、その判定結果を第二コア処理手段21bを介してコア処理手段21に送信し、判定結果記憶手段17bに格納する。
【0052】
そして、目視判定を行う場合は、第二の実施の形態と同様に、表示処理手段23から不良画像の一覧表示要求を出力し、その要求を第二コア処理手段21bがコア処理手段21に転送して、判定結果記憶手段17bに格納された不良箇所の一覧を表示処理手段23に戻す。そして、目視検査者による目視検査の結果を受け付け、その結果を第二コア処理手段21bを介してコア処理手段21に送信し、自動検査装置1aの判定結果記憶手段17bにその結果を格納する。
【0053】
このように上記実施の形態によれば、コア処理手段21ですべての処理に必要な基準画像の読み出し処理を行い、また、判定結果を記憶させるようにしたので、判定方法や表示方法が変更された場合であっても、入出力部分だけを共通化しておけば、大きく判定プログラムや表示プログラムを作り替える必要がなくなる。
【0054】
また、判定手段22a、22bが変更された場合、その判定手段22a、22bを用いてその判定のために使用される対応基準データを生成するので、判定方法が変更された場合であっても、簡単に対応基準データを生成することができる。
【0055】
コア処理手段21が判定手段22a、22bや表示処理手段23からの要求を受け取った場合、その要求を他のプロセッサーで駆動する第二コア処理手段21bに出力し、当該第二コア処理手段21bで、基準データ記憶手段17aに格納された基準画像データを読み出して返信するようにしたので、単一のプロセッサー用の判定プログラムであるかマルチプロセッサー用の判定プログラムであるかを意識することなく判定プログラムを作成することができる。
【0056】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されることなく、種々の態様で実施することができる。
【0057】
例えば、上記第二の実施の形態では、1台の目視検査装置1bを設けて検査するようにしているが、これを複数台設けるようにしてもよい。また、第三の実施の形態では、自動検査装置1cを別に1台設けているが、これを複数台とし、各装置で、例えば、配線パターンの検査、パッドの検査、レジストの検査、シルクの検査を振り分けて検査するようにしてもよい。また、複数台の装置を用いて検査するのではなく、一台の装置に複数のプロセッサーが設けられている場合は、各プロセッサーで動作するコア処理手段21を用いて同様の処理を行わせるようにしてもよい。
【0058】
また、上記実施の形態では、表示処理手段23を設けて目視検査を行わせるようにしているが、必ずしも目視検査を行わせる必要はなく、判定手段22a、22bだけによる検査を行うようにしてもよい。
【0059】
また、上記実施の形態では、目視検査装置1bで目視検査した結果を、自動検査装置1aの判定結果記憶手段17bに記憶させるようにしているが、この判定結果を目視検査装置1b側に記憶させるようにしてもよい。
【0060】
また、第三の実施の形態では、目視検査装置1b側に画像取得手段14を設けるようにしているが、これを自動検査装置1a側に設けるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の第一の実施の形態を示す外観検査システムの概略を示す図
【図2】同形態における機能ブロックを示す図
【図3】同形態における第一の判定処理に使用されるヒストグラムを示す図
【図4】同形態における第二の判定処理で使用される形状検査を示す図
【図5】同形態における第二の判定処理で使用される形状検査を示す図
【図6】同形態における第二の判定処理で使用されるヒストグラムを示す図
【図7】同形態における表示手段の表示例を示す図
【図8】本発明の第二の実施の形態を示す外観検査システムの概略図
【図9】同形態における機能ブロックを示す図
【図10】同形態における機能ブロックを示す図
【符号の説明】
【0062】
1・・・外観検査システム
1a、1c・・・自動検査装置
1b・・・目視検査装置
3・・・プリント基板
4・・・シルク
10・・・スタッカ
11・・・ピックアップ機構
12・・・載置台
13・・・移動機構
14・・・画像取得手段
141・・・発光装置
142・・・受光装置
15・・・回収部
16・・・検査処理手段
17a・・・基準データ記憶手段
17b・・・判定結果記憶手段
21、21b・・・コア処理手段(第二コア処理手段)
22a、22b・・・判定手段(第一判定手段、第二判定手段)
23・・・表示処理手段
231・・・第一の表示領域
232・・・第二の表示領域
233・・・第三の表示領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査対象物の形成状態を第一判定プログラムによって判定する第一判定手段と、当該第一判定プログラムとは異なる第二判定プログラムを用いて判定する第二判定手段とを備えてなる外観検査システムにおいて、
検査対象物から被検査画像を取得する画像取得手段と、
当該取得された被検査画像を判定するに際して基準となる基準画像データを記憶する記憶手段と、
当該基準画像データを読み出して前記第一判定手段および第二判定手段に出力するコア処理手段とを備えてなり、
前記第一判定手段で、基準画像データをもとに第一判定プログラムで使用される第一基準データを生成するとともに、当該生成された第一基準データと前記画像取得手段から取得した被検査画像とに基づいて判定処理を行い、
前記第二判定手段で、基準画像データをもとに第二判定プログラムで使用される第二基準データを生成するとともに、当該生成された第二基準データと前記画像取得手段から取得した被検査画像とに基づいて判定処理を行うようにしたことを特徴とする外観検査システム。
【請求項2】
検査対象物の形成状態を判定する複数の判定プログラムのうち少なくとも一つを記憶させ、当該判定プログラムによって検査対象物の形成状態の良否を判定するようにした外観検査システムにおいて、
検査対象物から被検査画像を取得する画像取得手段と、
当該取得された被検査画像を判定するに際して基準となる基準画像データを記憶する記憶手段と、
当該基準画像データを読み出して判定手段に出力するコア処理手段とを備えてなり、
当該判定手段で、基準画像データをもとに前記判定プログラムで使用される対応基準データを生成するとともに、当該生成された対応基準データと前記画像取得手段から取得した被検査画像とに基づいて判定処理を行うようにしたことを特徴とする外観検査システム。
【請求項3】
前記コア処理手段が、判定手段から受け取った画像取得要求を他のプロセッサーで駆動する第二コア処理手段に出力し、当該第二コア処理手段が、当該第二コア処理手段に対応する記憶手段から基準画像データを読み出して前記コア処理手段に出力するものである請求項1または2に記載の外観検査システム。
【請求項4】
検査対象物の形成状態を目視検査する複数の表示プログラムのうち少なくとも一つを記憶させ、当該表示プログラムによって検査対象物の形成状態の良否を目視検査できるようにした請求項1から3いずれか1項に記載の外観検査システムにおいて、
前記判定手段による判定結果をコア処理手段に出力して記憶させる判定結果記憶手段と、
表示手段からの判定結果読み出し要求に基づいて、判定結果を表示手段に出力するコア処理手段とを備えてなり、
当該表示手段で、前記読み出された判定結果に基づく目視判定結果の入力を受け付け、当該目視判定結果をコア処理手段に出力するようにしたことを特徴とする外観検査システム。
【請求項5】
前記コア処理手段が、表示手段から受け取った判定結果の読み出し要求を他のプロセッサーで駆動する第二コア処理手段に出力し、当該第二コア処理手段が、当該第二コア処理手段に対応する記憶手段から判定結果を読み出して前記コア処理手段に出力するものである請求項4に記載の外観検査システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−286692(P2008−286692A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−132950(P2007−132950)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、経済産業省、独立行政法人情報処理推進機構の委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(597028081)株式会社メガトレード (27)
【Fターム(参考)】