説明

多層の耐粘着性セラミックコーティングを有する調理器具およびその製造方法

多層の耐粘着性セラミックコーティングを有する調理器具物品。本発明の調理器具物品は、内側の食品接触表面(310)と外側表面(315)を有する金属調理器具物品(305);その食品接触表面上に堆積された接着層(320);およびその接着層に隣接して堆積された(Ti,Al,Cr)Nの第一層(325)を含む。随意に、第一(Ti,Al,Cr)N層に隣接して堆積された窒化クロムの層(330)、およびその窒化クロム層上に堆積された(Ti,Al,Cr)Nの第二層が存在する。これらの層は所望とされるとおりの多数の回数反復することができる。(Ti,Al,Cr)N層は一般に多層コーティングの上層である。コーティングは耐粘着性、耐引掻き性、熱安定性、耐腐食性および色安定性である。この調理器具は塩味および酸味系の両食品と共に使用するのに適している。このような調理器具物品を製造する方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、耐粘着性を有する調理器具物品、さらに詳しくは多層の、耐久性、耐粘着性のセラミックコーティングを有する調理器具物品、およびこのような調理器具物品を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
調理道具は、鋳鉄、銅、アルミニウムおよび鋼を含めて各種の材料から造ることができる。各種類の調理道具には長所と欠点がある。
シーズニング済み鋳鉄製調理道具は強靱な耐磨耗性表面を有する。しかし、鋳鉄は錆びやすく、またそれは調理道具表面に対する損傷を防止するように注意深く洗浄されなければならない。加えて、食品中の酸はその調理道具表面から鉄を侵出させ得るが、それはある場合には健康問題に至ることがある。
【0003】
銅製調理道具には卓越した熱伝達性がある。しかし、それは鋳鉄またはステンレス鋼のような他の調理器道具材料よりもはるかに軟らかいので、ひっかき傷が簡単にできる。銅はまた酸化を容易に受けるが、その酸化は曇りをもたらす。銅はその曇りを取り除くために研磨することができるが、その表面仕上げを維持するには実質的な努力が必要とされる。銅イオンはまた食品中に侵出する可能性がある。
【0004】
ステンレス鋼製調理道具が広く用いられている。ステンレス鋼はその強度と耐久性で知られている。ステンレス鋼はきれいに洗うのが比較的容易であって、その光沢を銅よりも良好に保持する。しかし、食品はおそらくシーズニング済み鋳鉄に対してよりもステンレス鋼に対してより粘着しやすい。過熱することや、塩水と共に調理することや、或いは平鍋を「クックドライ(cook dry)」させることは、その表面を変色させる。加えて、鉄、クロム、マンガンおよびニッケルのようなイオンの侵出は一般的には相当に低いけれども、ステンレス鋼に関してはそれもまた問題である。
【0005】
アルミニウム製調理道具は卓越した熱伝達性を有する。しかし、アルミニウムもイオンの侵出を受けやすい。この問題を軽減する1つの方法は、アルミニウムの表面を被覆することである。アルマイトは酸化アルミニウムで被覆されている。この酸化物層はそれを処理されていないアルミニウムよりもるかに硬くする。(処理されていないアルミニウムは空気中の酸素との反応により酸化アルミニウムの薄層を有する。)しかし、食品は、一般に、調理で油が使われていないならばアルマイト製調理道具に粘着する。加えて、アルマイト製調理道具は典型的な自動皿洗い洗剤製品によって変色または腐食を起こし得るので、この調理道具は皿洗い機で安全ではない。
【0006】
アルミニウムは、また、侵出を防ぐために溶射処理することができる。しかし、この方法は粗面を生成させ、そして食品は一般にその表面にそれが処理されていなければ粘着する。
【0007】
調理道具の1つのよく知られた処理に、ペルフルオロカーボン重合体の使用を含むものがある。ペルフルオロカーボンコーティングは非粘着表面を与えるが、それらには引掻き傷が簡単にできる。最新のペルフルオロカーボンコーティングがたとえ以前のものよりも強靱であるとしても、それらには依然としてかなり簡単に引掻き傷ができる。その表面に引掻き傷または切り傷ができると、そのペルフルオロカーボンの剥片が調理されている食品に入り込む可能性がある。このフレーキングは、ペルフルオロカーボン剥片で健康への危険が出ることは知られていないという事実にもかかわらず、多くの人にとって好ましくない。加えて、ペルフルオロカーボン重合体は標準的な調理温度で安全であるけれども、それら重合体は高温で損傷を受ける可能性があり、また有毒な煙霧を発することがある。
【0008】
もう1つの表面処理はセラミックコーティングの使用を含むものである。米国特許第5,447,803号明細書は、チタンの層および窒化チタンの層の堆積について述べている。窒化チタンコーティングは高硬度と金色を有する。窒化チタンコーティングはその色を安定化するために酸化または窒化することができるが、これらの酸化物または窒化物コーティングは薄くて、依然として引掻き傷ができることがあり、その結果平鍋に変色がもたらされる可能性がある。
【0009】
米国特許第6,197,438号明細書は、耐引掻き性および非粘着性を達成するために、プライマー層またはトップコート層としての窒化クロムまたは窒化アルミニウムの厚い層(約2〜50ミクロン)の使用について述べている。窒化ケイ素、アルミナまたはダイヤモンド様炭素のような装飾性または機能性トップコート層を加えることができる。プラズマ溶射アルミニウム合金基材に基づくセラミック被覆調理器具も開示されている。
【0010】
米国特許第6,360,423号明細書は、調理道具上への窒化ジルコニウムコーティングの堆積について述べている。その表面は、耐粘着性コーティングを得るために、窒化ジルコニウム層を堆積させる前に高表面平滑性となるまで研磨されなければならない。窒化ジルコニウムコーティングは色を安定化するために酸化または窒化される必要はないけれども、窒化ジルコニウムは過熱によって、または塩味系食品によって色々な程度で変色を受ける可能性がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、金属の外観を有する、酸味系および塩味系の両食品と共に使用するのに適した、耐引掻き性で、色安定性の耐粘着性コーティングの必要が残されている。
本発明は、耐粘着性を有する調理器具物品を提供することによってこの必要を満たす。「調理器具」とは、調理道具、刃物類および(水切り用品、漉し器等のような)他の手で使う食品加工用製品を含めて食品調製用品、(皿類、ボール類等のような)食品給仕用品、および食品を食べるための用具を意味する。「調理道具」とは、料理用ストーブの上部表面で調理するためのポットおよび平鍋、耐熱皿、グリドル、グリル、(スプーン、へら等のような)調理用具、並びに食品を調理するために使用される(電気フライパン、炊飯装置等のような)食品調製装置を意味する。「耐粘着性」とは、調理器具物品が耐粘着性を少なくとも有することを意味する;それは非粘着性を有することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の調理器具物品は、内側の食品接触表面と外側表面を有する金属調理器具物品;その食品接触表面上に堆積された接着層;およびその接着層に隣接して堆積された(Ti,Al,Cr)Nの第一層を含む。(Ti,Al,Cr)Nとは、チタン、アルミニウムおよびクロムの窒化物合金を意味する。チタン、アルミニウムおよびクロムの窒化物合金は、限定されるものではないが、窒化チタン・アルミニウムと窒化クロムとの超格子構造化コーティングを包含する。「上に堆積された」とは、その前の層の上に、いかなる介在層もなしに直接堆積されていることを意味する。「に隣接して堆積された」とは、その前の層の次に、但し必ずしもその層の上に直接でなくてもよいが、堆積されていることを意味する。それはその前の層上に直接堆積されることができるか、または互いに隣接して堆積された層間に1つまたは2つ以上の介在層が存在することができる。
【0013】
随意に、第一(Ti,Al,Cr)N層に隣接して堆積された窒化クロムの層、およびその窒化クロム層上に堆積された(Ti,Al,Cr)Nの第二層が存在する。
接着層は金属であることができる。適した金属に、限定されるものではないがチタン、クロム、ジルコニウムまたはそれらの合金がある。
【0014】
金属調理器具物品は、限定されるものではないが、鋼、ステンレス鋼、銅、チタン、鋳鉄、アルミニウム、クラッド材料またはそれらの合金を含めて金属から造られていることができる。
【0015】
窒化クロム層の厚さは一般に約2ミクロン未満である。窒化クロム層と(Ti,Al,Cr)N層との交互層が存在するとき、(Ti,Al,Cr)N層および窒化クロム層の各々の厚さは、一般に、約0.1〜約2.0ミクロンの範囲内である。
【0016】
多層コーティングの総厚さは、一般に、約1.0〜約20ミクロンの範囲内、典型的には約1.5〜約10ミクロンの範囲内である。
本発明のもう1つの面は、多層の耐粘着性セラミックコーティングを有する調理器具物品を製造する方法に関係する。この方法は、内側の食品接触表面と外側表面を有する金属基材を用意し;その食品接触表面上に接着層を堆積させ;その接着層に隣接して(Ti,Al,Cr)Nの第一層を堆積させ;そしてその金属基材を調理器具物品に成形することを含む。
【0017】
上記の多層コーティングは、限定されるものではないが、物理蒸着法を包含する方法によって堆積させることができる。この多層コーティングは、所望ならば陰極アーク堆積法によって堆積させてもよい。
【0018】
窒化チタン・アルミニウム(Ti,Al)Nコーティングは、一般に、その高い耐酸化性および耐磨耗性の故に、乾式、高速の機械加工操作において使用される。(Ti,Al)N(TiAlターゲット50/50At%)上での最高使用温度は1450°Fに達することができ、このことがTiN、TiCN、CrNxおよびZrNのような他の物理蒸着(PVD)コーティングよりも熱安定性にする。(Ti,Al)N(TiAl=50/50At%)の微小硬度(microhardness)は、使用されるPVD法に依存するが、TiN、CrNxまたはZrNのそれより硬く、2600−3000HVの間で0.05で変わる。
【0019】
窒化クロム(CrNx)コーティングは、(Ti,Al)Nを補足する機械的および腐食抵抗性を示す。
平滑な(Ti,Al,Cr)N層は非反応性表面の特徴を有し、その結果少なくとも耐粘着性能が、そしてしばしば非粘着性能がもたらされる。所望ならば、超格子概念、即ち(Ti,Al)N/CrNx系が、調理器具に対する適用に適した(Ti,Al,Cr)Nコーティングを生成させるために本発明で利用することができる。
【0020】
この(Ti,Al,Cr)N層は高耐腐食性を有して、厳しい耐腐食性試験である96時間ASTM B 368-97試験の銅加速酢酸−塩噴霧試験(copper accelerated acetic acid-salt spray test)に合格する。
【0021】
本発明の多層(Ti,Al,Cr)Nコーティングを有する調理道具は、酸味系(acidic-based)および塩味系(salty-based)の両食品を変色なしで調理するのに適している。加えて、この調理道具はそれを損傷させる心配をすることなしにどんな高調理温度でも使用することができる。
【0022】
(Ti,Al,Cr)Nコーティングは(Ti,Al)NおよびCrNxよりもはるかに硬く、その結果高耐磨耗性がもたらされる。この(Ti,Al,Cr)N層は最高の硬度と高い耐腐食性を合わせ有し、このことがその調理道具の調理面を耐引掻き性、耐粘着性および耐久性とする。それはこの調理道具の母体材料からイオンが侵出する問題を取り除く。(Ti,Al,Cr)N層は一般に多層コーティングの上層である。
【0023】
交互(Ti,Al,Cr)N /CrNx層のコーティングが、それは多層コーティングの靭性をさらに改善するので望ましい。この特長は、薄い多層コーティングを持つ金属板金を成形プロセスでそのコーティングを亀裂させることなく絞り成形することを可能にする。
【0024】
図1は本発明の調理器具物品の1つの態様100の断面を示す。それには平鍋のような金属調理器具物品105がある。金属調理器具物品105は内側の食品接触表面110と外側表面115を有する。この金属調理器具物品は、限定されるものではないが、鋼、ステンレス鋼、銅、アルミニウム、チタン、鋳鉄、クラッド材料およびそれらの合金を含めて色々な材料から造ることができる。この金属調理器具物品は固体金属または固体合金から造ることもできるし、或いは金属表面を有する多層構造物のようなクラッド材料であることもできる。多層構造物の例を挙げると、限定されるものではないが、ステンレス鋼−クラッドアルミニウム若しくは銅、プラズマ溶射ステンレス鋼コーティングを有するアルミニウム、または黒鉛のような非金属材料コアを取り囲んでいる金属外側層がある。
【0025】
食品接触表面110上に堆積した接着層120がある。この接着層は一般に厚さが約1.0ミクロン未満である。この接着層は金属であることができる。適した金属に、限定されるものではないが、チタン、クロム、ジルコニウムまたはそれらの合金がある。1つの態様において接着層はクロムである。
【0026】
(Ti,Al,Cr)Nの第一層125は接着層120に隣接して堆積されている。この態様において、第一(Ti,Al,Cr)N層125は典型的には約10ミクロン未満である。第一(Ti,Al,Cr)N層125は、強い、耐引掻き性、耐粘着性の層を与える。この第一(Ti,Al,Cr)N層は、この態様においては接着層上に堆積されているものとして示されているけれども、接着層120と第一(Ti,Al,Cr)N層125との間には、所望とされるならば、1つまたは2つ以上の介在層が存在することができる。コーティングの総厚さは一般に約1.0〜20.0ミクロンの範囲内である。
【0027】
図2は本発明の調理器具物品のもう1つの態様200の断面を示す。そこには内側の食品接触表面210と外側表面215を有する金属調理器具物品205がある。接着層220が食品接触表面210上に堆積されている。(Ti,Al,Cr)Nの第一層225が接着層220に隣接して堆積されている。この態様において、第一(Ti,Al,Cr)N層は接着層上に堆積されているものとして示されているけれども、接着層220と第一(Ti,Al,Cr)N層225との間には、所望とされるならば、1つまたは2つ以上の介在層が存在することができる。第一(Ti,Al,Cr)N層225は典型的には厚さが約0.1〜約1.5ミクロンの範囲内である。第一(Ti,Al,Cr)N層は、強い、耐引掻き性、熱安定性の多層セラミックコーティング用ベース層を与える。
【0028】
窒化クロムの第一層230は第一(Ti,Al,Cr)N層225に隣接して堆積されている。この態様において、第一窒化クロム層230は第一(Ti,Al,Cr)N層225上に堆積されているものとして示されているけれども、第一(Ti,Al,Cr)N層225と第一窒化クロム層230との間には、所望とされるならば、1つまたは2つ以上の介在層が存在することができる。第一窒化クロム層は一般に厚さが約2ミクロン未満である。その上層が浸透を受ける場合、その第一窒化クロム層は耐腐食性および耐酸化性を与える。
【0029】
(Ti,Al,Cr)Nの第二層235が第一窒化クロム層230上に堆積されている。第二(Ti,Al,Cr)N層は一般に厚さが約10ミクロン未満である。
図3は本発明の調理器具物品のもう1つの態様300の断面を示す。そこには内側の食品接触表面310と外側表面315を有する金属調理器具物品305がある。接着層320が食品接触表面310上に堆積されている。(Ti,Al,Cr)Nの第一層325が接着層320に隣接して堆積されている。この態様において、第一(Ti,Al,Cr)N層325は接着層320上に堆積されているものとして示されているけれども、接着層320と第一(Ti,Al,Cr)N層325との間には、所望とされるならば、1つまたは2つ以上の介在層が存在することができる。窒化クロムの第一層330が第一(Ti,Al,Cr)N層325に隣接して堆積されている。この態様において、第一窒化クロム層330は第一(Ti,Al,Cr)N層325上に堆積されているものとして示されているけれども、第一窒化クロム層330と第一(Ti,Al,Cr)N層325との間には、所望とされるならば、1つまたは2つ以上の介在層が存在することができる。(Ti,Al,Cr)Nの第二層335が第一窒化クロム層330上に堆積されている。この後に窒化クロムの第二層340および(Ti,Al,Cr)Nの第三層345が続いている。これらの層はこの態様においてその先行層上に堆積されているものとして示されているけれども、窒化クロムの第二層と先行層との間には、所望とされるならば、1つまたは2つ以上の介在層が存在することができる。
【0030】
所望とされるならば、窒化クロムと(Ti,Al,Cr)Nとの交互層を堆積させることができる。(Ti,Al,Cr)Nおよび窒化クロムの各層は典型的には0.1〜約2.0ミクロンの範囲内である。もっと薄い層が望ましい;多層コーティングの機械的抵抗性および耐腐食性が改善されるからである。
【0031】
1つの望ましい態様は(Ti,Al,Cr)N/CrNxの交互層を含んでいる。上層は典型的には(Ti,Al,Cr)N層である。
コーティング層は、蒸発、スパッタリング、陰極アーク若しくはイオンビーム法のような物理的蒸着法を用いて、または他の適切な方法を用いて堆積させることができる。
【0032】
例として、コーティングを調理器具物品上に堆積させる1つの方法を説明することにする。他の方法または工程も、この技術分野の当業者によく知られているとおり使用することができる。
【0033】
調理器具物品をまず形成し、次いで被覆することもできるし、或いは平らな金属板金を被覆し、次いで平鍋に成形することもできる。予備形成した平鍋を被覆する方法を説明することにする。
【0034】
平鍋は、必要ならば、平滑な表面を作るために堆積前に研磨することができる。この技術分野の当業者に知られているように、バフ磨き用または研削用のコンパウンドが使用できる。表面は、その表面上の同心基礎線(concentric ground line)に対して垂直に測定して一般に16ミクロインチ未満で、できるだけ平滑であるべきであるが、但し2−4ミクロインチのような超高光沢の表面仕上げを達成することは必要でない。
【0035】
次に平鍋を完全にきれいに洗い、そして乾燥して、グリース、研磨残留物、ばらばらの埋入粒子、酸化物、塩残留物または他の異物を全て除去する。典型的な洗浄法は水性洗浄系を超音波洗浄と共に含むものであろう。
【0036】
平鍋を適切な取付具の中に装填し、そして図4に示されるとおり堆積チャンバー400の遊星形装置(planetary)に入れる。平鍋405は、図示されるとおり、堆積中に一重または二重の遊星回転に付されることができる。支持体410は平鍋の全てを回転させることもできるし、また、所望とされるならば各個の平鍋405を回転させることもできる。
【0037】
適切なターゲット415をチャンバー中に図4に示されるように配置する。例えば、50%チタン/50%アルミニウム(At%)の圧縮金属粉末ターゲットが、純粋なクロムの圧縮粉末化金属ターゲットと共に使用することができる。この技術分野の当業者に周知のように、チタン/アルミニウム/クロムターゲットがクロムターゲットと共に、そしてまた他の組み合わせと共に使用することができる。ターゲットの数と種類はチャンバーおよび堆積されるコーティングのサイズに依存する。
【0038】
チャンバーをポンプで約10−3Paの圧力になるまで排気する。平鍋をそれが造られている材料の種類に応じて約350−450°Fの範囲内の温度まで加熱する。
上記平鍋をマイクロ洗浄するために、その平鍋を約800−1200Vの負電圧でバイアスすることによってグロー放電を作りだす。
【0039】
接着層をまず堆積させる。適切なターゲットを強熱し(例えばCr)、そして上記平鍋にイオン(Cr)を、約10−2Paの真空レベルにおいて約600−1000Vのバイアス電圧で衝突させて、約1.0ミクロン未満の厚さを持つ接着層を形成する。
【0040】
TiAlおよびCrターゲットの全てをオンにしたら、次いでその系に窒素を導入して(Ti,Al,Cr)Nコーティングを形成する。印加電圧は約0.4−1.5Paの真空レベルにおいて約80−200Vである。
【0041】
TiAl陰極を切るが、一方Cr陰極はオンのままにして80−200Vのバイアス電圧および約0.4−1.5Paの真空レベルにおいて窒化クロムの層を堆積させる。
TiAl陰極を次にオンに戻して(Ti,Al,Cr)Nのもう1つの層を堆積させる。この手順は、窒化クロムおよび(Ti,Al,Cr)Nの所望とされるほど多くの層を堆積させるために繰り返すことができる。堆積温度は、平鍋が造られている材料に依存して、堆積の終点で約600−900°Fまで上昇させることができる。
【0042】
平鍋には、埋入粒状物やコーティング残留物がない表面を達成するために、この技術分野の当業者に知られているように、Jeweler Rouge、ダイヤモンドコンパウンドまたは他の研磨媒体を用いて最終研磨を与えることができる。
【0043】
上記の色々な(Ti,Al,Cr)N層の組成は同じであることもできるし、或いは所望とされるならば異なる層で異なっていることもできる。組成は、この技術分野でよく知られているように、各層に使用されるターゲットの数と種類を変えることによって変化させることができる。
【0044】
陰極アーク堆積法では、Crターゲットの数は、望ましくは、コーティングの組み合わせの物理的性質(即ち、耐粘着性、耐酸化性、靭性、色安定性等々)の全てをバランスさせるように、(Ti,Al,Cr)N層を堆積させる際に使用されるTiAlターゲットの数に等しいか、またはそれより多い。TiAlの数がCrターゲットの数より多いとき、結果として得られる(Ti,Al,Cr)Nコーティングは依然として耐粘着性コーティングとしての使用によく適合するけれども、その(Ti,Al,Cr)Nコーティングは塩味系食品を調理する際に僅かな変色を示す。変色はある種の用途には装飾上の理由から望ましくないことがあるけれども、他の用途にはそれは問題にならないことがある。その変色は、Bar Keepers(登録商標)洗剤または数滴のレモンジュースを用いると容易に除去することができる。
【実施例】
【0045】
実験1
本発明のコーティングを現存コーティングと耐粘着性能に関して比較するために、卵を異なる処理表面を有する平鍋またはポット中で炒めた。例1および2は、アルミニウムコアを有するクラッド材料から造られたステンレス鋼製ポットであった。例3および4は、アルミニウムコアを有するクラッド材料から造られた窒化ジルコニウム被覆耐熱皿であった。実5および6はPTFE被覆アルミニウム製平鍋であった。
【0046】
例7、8および9は、アルミニウムコアを有するクラッド材料から造られた直径7.5インチのステンレス鋼製ポットであった。これらポットを前記の方法を用いて被覆した。それらのコーティングは(Ti,Al,Cr)N/CrNxの交互層であって、そのコーティング厚さは約2ミクロンであった。(Ti,Al,Cr)N層を堆積させる際に、コーティング1220については3つのCrターゲットと1つのTiAlターゲットを用い、一方コーティング1−14は4つのCrターゲットと1つのTiAlターゲットを用いた。
【0047】
上記のポットおよび平鍋には調理用油を噴霧したか、または調理用油を噴霧しなかったかのいずれかであり、そして卵を各ポットまたは平鍋中で炒めた。卵を調理した後、それらのポットおよび平鍋をそれらの非粘着性能について評価した。この手順を10回繰り返した。条件および結果は表1に示される。
【0048】
例1に油を噴霧し、その油を次いでペーパータオルで拭い取ったが、幾分かの残留油が残った。卵はポットに粘着した。例2では、それに少しの油を噴霧したが、そのポットは卵を調理した後に褐色残留物を示した。
【0049】
例3に油を使用しなかったとき、炒められた卵の底が窒化ジルコニウム被覆耐熱皿に粘着した。その平鍋は僅かな変色を示した。例4でその平鍋上に少量の油を噴霧したときは、粘着がなかった。
【0050】
例5において、PTFE被覆平鍋は油を用いなかったとき粘着を示した。例6でその平鍋に少量の油を噴霧したとき、粘着はなかった。
例7および8において、それらの平鍋に油を噴霧し、そしてその油をペーパータオルで拭い取ったが、幾分かの残留油が残った。炒められた卵は粘着しなかった。
【0051】
例9では例8におけると同じ平鍋を用いたが、油は使用しなかった。炒められた卵は平鍋に粘着した。変色は見いだされなかった。
本発明のコーティングの性能は非粘着性PTFEコーティングに匹敵していた。
【0052】
【表1】

【0053】
実験2−米の調理試験
塩味系および酸味系食品についてコーティングの非粘着性能を評価するために、より厳しい米調理試験も行った。
【0054】
米の調理条件は油による「標準」調理とは異なる。米飯は、それが米調理道具の表面上で乾くと、調理道具に粘着する。固まった米飯粒はその調理道具に付着し、そして粘着する。「褐色化した」または焦げた(「ばりばりの」)米飯が生ずる。米飯が長すぎる時間単に「保温」にされているとしても、米飯の重なりの底は焦げる可能性があり、そしてそれは調理道具に粘着する。これは、PTFE被覆ポットを用いても、それを取り除き、きれいに洗うのが難しいことが多い。
【0055】
ほとんどの炊飯装置は、米飯が乾くことおよび結果として生ずる粘着問題を制限するために温度および調時制御装置を備えている。
加えて、米の調理は、ほとんど、米と混合される塩味系または酸味系食品を伴う。PTFEは酸味系食品に感受性であり、また窒化チタンおよび窒化ジルコニウム調理道具は塩味系食品によって変色せしめられる。
【0056】
例1および2は、アルミニウムコアを有するクラッド材料から造られたステンレス鋼製ポットであった。例3はPTFE被覆アルミニウム製平鍋であった。例4は、アルミニウムコアを有するクラッド材料から造られた窒化ジルコニウム被覆耐熱皿であった。例5、6および7は、実験1の例7、8および9で説明されたステンレス鋼製ポットであった。例8は直径6.0インチのステンレス鋼製平鍋であった。例8の1−23コーティングは(Ti,Al,Cr)N/CrNxの交互層であり、そのコーティング厚さは約2ミクロンであった。(Ti,Al,Cr)N層を堆積させるために2つのCrターゲットと1つのTiAlターゲットが用いられた。
【0057】
塩味系の米飯は次のレシピに従って調製された:360mLの米を420mLの水の中に入れ、そして2.2mLの醤油、2.2mLのミリン、および0.2mLの塩と0.2mLの味の素と混合した。
【0058】
酸味系の米飯は次の指示に従って調製された:25mLの新しく絞ったレモンジュースを360mLの米および420mLの水と混合した。
白米レシピは米と適量の水だけを要した。
【0059】
米を10分間煮沸し、次いでガスストーブで弱火または中火で1時間10分温めた。この長い加温時間は褐色化した「ばりばり」の米飯をもたらす。
前記コーティングの耐粘着性を、それがポット全体の米飯および褐色化米飯を離すことがどのくらい容易であったかによって評価した。次に前記平鍋をきれいに洗い、そしてそれらの外観を評価した。この手順を3回繰り返した。結果は表2に示される。
【0060】
例1および2に関し、米飯の底が褐色であった。例1では、米飯は平鍋の底全体に粘着した。例2では、小さい米飯部分のみが、部分的に熱がより低かったことに因り平鍋の底に粘着した。平鍋は、熱い石鹸水できれいに洗った後、変色(「虹」色味)していることを示した。次いで例1をBar Keepers(登録商標)洗剤で洗うと、ぴかぴかの外観がもたらされた。例2をレモンジュースの溶液で洗ったが、それは平鍋に幾らかの青味を残した。
【0061】
例3に関し、米飯の底は褐色で、バリバリの焦げた斑点を持っていた。この米飯は平鍋の底に粘着しなかった。この平鍋を熱石鹸水できれいに洗った。
例4に関し、米飯の底は褐色であった。米飯は平鍋のほとんど底全体に粘着した。熱石鹸水による洗浄は平鍋上に虹色味を残した。Bar Keepers(登録商標)洗剤を用いて平鍋を洗浄すると、その変色は消失した。塩味系米飯は窒化ジルコニウムコーティングを変色させたが、但しこの変色は追加の洗浄によって取り除くことができた。
【0062】
例5−8は、塩味系米飯(例5、7および8)および酸味系米飯の本発明のコーティングに及ぼす影響を示す。長い加温期間後、褐色化したバリバリの米飯がポットの壁および底にできた。へらを用いると、その褐色化した米飯はポット壁から容易に離れた。ポットを逆さにすると、米飯の塊は容易に落ちたが、これは非粘着性能を示している。例6では、褐色化米飯は、ポットをひっくり返すことによって、その米飯をへらで壁から離す必要なしに簡単に除去された。ポットの底には残留褐色着色があったけれども、米飯粒はポットの底または壁に粘着しなかった。それらポットを熱石鹸水で洗ってきれいにした。こすり洗いすることは必要でなかった。塩味系米飯かまたは酸味系米飯のいずれに関しても変色はみられなかった。
【0063】
例5−8は、使用されたTiAlおよびCrターゲットの数が異なることに因る(Ti,Al,Cr)Nの異なる組成を表す。それら組成は全て卓越した非粘着性能を示した。本発明のコーティングは「完全乾燥」調理条件で非粘着性能を示した。食品が調理中にひどく焼け焦げたときでも、その食品および焼焦げ部は、熱石鹸水中に浸漬して置き、そして必要ならばナイロンブラシを用いることによって容易に離れ、洗い落とされた。焼焦げ残留物を除去するのに激しいこすり洗いは必要とされなかった。
【0064】
上記のコーティングは塩味系および酸味系の両食品に関して十分に機能した。それら平鍋は塩味系および酸味系食品がガスストーブで1時間10分加熱されたとき変色を示さなかった。
【0065】
【表2】

【0066】
実験3
304ステンレス鋼のブランク(8”x8”平方、厚さ0.8mm)を、10ミクロインチの平滑度を有する滑らかな#4仕上げまで、および2−4ミクロインチの平滑度を有する鏡面仕上げ研磨度まで予備バフ磨きした。これらブランクを完全に洗浄してきれいにし、そして乾燥した。それらをチャンバーに装填し、そして前記のように被覆した。そのコーティングの総厚さは約1.5ミクロンであった。
【0067】
被覆後、その被覆表面を保護し、かつ成形プロセス中に損傷を防ぐために、その表面を接着PVCフィルムで覆った。図5はこの被覆ブランク500を示す。それには本発明の多層コーティング510を有するブランク(基材)505がある。図5には個々の層は示されていない。次に、その8”直径の被覆ブランクを、図5bに示される平らな底を有する6”直径の平鍋に浅絞り成形した。この平鍋の側壁515は底520に対して90°の角度にあって、それには小さいアールがある。
【0068】
本発明のコーティングはアールの領域を含めて全表面によく接着した。これら#4表面仕上げ平鍋のアール領域中には有意の表面組織変化はなかった。上記の鏡面を有する高度に研磨された平鍋は、アールの領域中において、底の鏡面に比較して視認できる表面組織の相違を示した。
【0069】
成形された平らな平鍋の耐粘着性を、ケーキを焼くことによって評価した。これは、食品が表面の全てに触れるので、底、側面およびアール領域を含めて平鍋の表面の全てを評価するのを可能にする。
【0070】
さらっとしたショートニング(light shortening)を全表面に一様に噴霧し、そしてケーキを400−450°Fで焼いた。#4仕上げ平鍋および鏡面仕上げ平鍋は両者とも全表面上で非粘着性であった。焼かれたケーキは容易に離れた。これらの平鍋を熱石鹸水で洗ってきれいにしたが、変色は見いだされなかった。
【0071】
前記鏡面研磨は浅絞り成形後に視認できる表面の相違を示したけれども、そのコーティングの耐粘着性は影響されないだろう。従って、ブランクが被覆され、次いで平鍋に成形されるべきときは、審美上の理由から鏡面仕上げを用いることが望ましいとしても、上記コーティングは依然として機能するだろう。
【0072】
ブランクを被覆し、そのブランクを平鍋に浅絞り成形することによって調理器具物品を製造する方法は、絞り成形中にアールのある領域中で表面組織の変化を避けるべく十分に大きいアールを持つ形状を有する調理器具物品によく合う。この方法では、表面仕上げは典型的には10−16ミクロインチの範囲内である。10ミクロインチ未満の高度に研磨された表面仕上げは、浅絞り成形において非常に大きいアールを有する調理器具に使用することができる。
【0073】
本発明のコーティングは従来公知の耐粘着性コーティングよりもはるかに耐久性であり、かつ過熱または完全乾燥条件で熱安定性であり、そして塩味系および酸味系の両食品に適している。それは安定な金属色を有する。それはまた洗浄してきれいにするのが容易である。食品が調理中にひどく焼け焦がされているならば、その焼焦げ部分(黒色、「バリバリ」)は、熱石鹸水中に浸漬して置くことによって、そして必要ならばナイロンブラシを用いることによって容易に離すことができる。焼焦げ残留物を除去するのに激しいこすり洗いは必要とされない。
【0074】
以上、本発明を例証する目的からある特定の代表的態様および細部を示したが、本明細書に開示された組成および方法では、添付特許請求の範囲で定義される本発明の範囲から逸脱しない限り、色々な変更がなされ得ることは、この技術分野の当業者には明白であろう。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の調理器具物品の1つの態様の断面図である。
【図2】本発明の調理器具物品のもう1つの態様の断面図である。
【図3】本発明の調理器具物品のもう1つの態様の断面図である。
【図4】本発明において有用な陰極アーク堆積チャンバーの概略図である。
【図5】a:本発明により被覆された金属ブランクの概略図である。b:本発明により被覆され、平鍋に浅絞り成形された金属ブランクの概略図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層の耐粘着性セラミックコーティングを有する調理器具物品であって:
内側の食品接触表面と外側表面を有する金属調理器具物品;
上記食品接触表面上に堆積された接着層;
上記接着層に隣接して堆積された(Ti,Al,Cr)Nの第一層
を含む上記の調理器具物品。
【請求項2】
接着層が金属である、請求項1に記載の調理器具物品。
【請求項3】
金属がチタン、クロム、ジルコニウムまたはそれらの合金から選ばれる、請求項2に記載の調理器具物品。
【請求項4】
第一(Ti,Al,Cr)N層に隣接して堆積された窒化クロムの層、およびその窒化クロム層上に堆積された(Ti,Al,Cr)Nの第二層をさらに含む、請求項1に記載の調理器具物品。
【請求項5】
第一(Ti,Al,Cr)N層上に堆積された窒化クロムと(Ti,Al,Cr)Nとの交互層をさらに含む、請求項1に記載の調理器具物品。
【請求項6】
(Ti,Al,Cr)N層および窒化クロム層の各々の厚さが約0.1〜約2.0ミクロンの範囲内である、請求項5に記載の調理器具物品。
【請求項7】
金属調理器具物品が鋼、ステンレス鋼、銅、チタン、鋳鉄、アルミニウム、クラッド材料またはそれらの合金から選ばれる材料から造られている、請求項1に記載の調理器具物品。
【請求項8】
多層コーティングの総厚さが約1.0〜約20ミクロンの範囲内である、請求項1に記載の調理器具物品。
【請求項9】
多層コーティングの上層が(Ti,Al,Cr)Nである、請求項1に記載の調理器具物品。
【請求項10】
多層コーティングが物理蒸着法によって堆積される、請求項1に記載の調理器具物品。
【請求項11】
多層コーティングが陰極アーク堆積法によって堆積される、請求項1に記載の調理器具物品。
【請求項12】
多層の耐粘着性セラミックコーティングを有する調理器具物品であって:
内側の食品接触表面と外側表面を有する金属調理器具物品;
上記食品接触表面上に堆積された接着層;
上記接着層に隣接して堆積された(Ti,Al,Cr)Nの第一層;
第一(Ti,Al,Cr)N層上に堆積された窒化クロムの第一層;および
上記第一窒化クロム層上に堆積された(Ti,Al,Cr)Nの第二層
を含む上記の調理器具物品。
【請求項13】
接着層が金属である、請求項12に記載の調理器具物品。
【請求項14】
金属がチタン、クロム、ジルコニウムまたはそれらの合金から選ばれる、請求項13に記載の調理器具物品。
【請求項15】
金属調理器具物品が鋼、ステンレス鋼、銅、チタン、鋳鉄、アルミニウム、クラッド材料またはそれらの合金から選ばれる材料から造られている、請求項12に記載の調理器具物品。
【請求項16】
第一(Ti,Al,Cr)N層上に堆積された窒化クロムと(Ti,Al,Cr)Nとの交互層をさらに含む、請求項12に記載の調理器具物品。
【請求項17】
(Ti,Al,Cr)N層および窒化クロム層の各々の厚さが約0.1〜約2.0ミクロンの範囲内である、請求項16に記載の調理器具物品。
【請求項18】
多層コーティングの総厚さが約1.0〜約20ミクロンの範囲内である、請求項12に記載の調理器具物品。
【請求項19】
多層コーティングが物理蒸着法によって堆積される請求項12に記載の調理器具物品。
【請求項20】
多層コーティングが陰極アーク堆積法によって堆積される、請求項12に記載の調理器具物品。
【請求項21】
多層コーティングの上層が(Ti,Al,Cr)Nである、請求項12に記載の調理器具物品。
【請求項22】
多層の耐粘着性セラミックコーティングを有する調理器具物品を製造する方法であって:
内側の食品接触表面と外側表面を有する金属基材を用意し;
上記食品接触表面上に接着層を堆積させ;
上記接着層に隣接して(Ti,Al,Cr)Nの第一層を堆積させ;そして
上記金属基材を調理器具物品に成形する
工程を含む上記の方法。
【請求項23】
第一(Ti,Al,Cr)N層上に窒化クロムと(Ti,Al,Cr)Nとの交互層を堆積させる工程をさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
多層コーティングの上層が(Ti,Al,Cr)Nである、請求項22に記載の方法。
【請求項25】
多層コーティングを物理蒸着法によって堆積させる、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
多層コーティングを陰極アーク堆積法によって堆積させる、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
金属基材を、多層コーティングを堆積させる前に調理器具物品に成形する、請求項22に記載の方法。
【請求項28】
金属基材を、多層コーティングを堆積させた後に調理器具物品に成形する、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
食品接触表面を、接着層を堆積させる前に、少なくとも16ミクロインチの表面仕上げ度またはそれより良好な表面仕上げ度まで研磨する工程をさらに含む、請求項22に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2006−518632(P2006−518632A)
【公表日】平成18年8月17日(2006.8.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503332(P2006−503332)
【出願日】平成16年2月4日(2004.2.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/003250
【国際公開番号】WO2004/074538
【国際公開日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(505315960)ナショナル・マテリアル・エルピー (3)
【Fターム(参考)】