説明

多層印刷配線板およびその製造方法、プリプレグ、樹脂付金属箔、樹脂フィルム、ならびに金属箔張積層板

【課題】スルーホールを有する領域に折り曲げ部を設けた場合でも、層間接続の抵抗値の上昇が抑制される多層印刷配線板を提供する。
【解決手段】第1の熱硬化性樹脂に由来する樹脂硬化物を含む第1の絶縁層100、および前記第1の絶縁層の両面に配置された厚さが1〜35μmである金属箔を有し、前記金属箔からなる回路層26および前記第1の絶縁層100の両面に配置された金属箔を互いに接続するスルーホール20が形成された回路基板と、前記回路基板の少なくとも一方の面上に設けられ、グリシジルアクリレート樹脂およびポリアミドイミド樹脂から選択される少なくとも1種である第2の熱硬化性樹脂に由来する樹脂硬化物を含み厚さが80μm以下である第2の絶縁層200と、を有する多層印刷配線板の前記回路基板および第2の絶縁層200が積層された領域に折り曲げ部を備えて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層印刷配線板およびその製造方法、プリプレグ、樹脂付金属箔、樹脂フィルム、ならびに金属箔張積層板に関する。
【背景技術】
【0002】
情報端末電子機器の急速な普及に伴って、電子機器の小型化・薄型化が進んでいる。またその中に搭載される印刷配線板も高密度化・薄型化の要求が高まっている。さらに、携帯電話に代表される電子機器の高機能化により、カメラ等をはじめとした様々な高性能モジュールや高密度印刷配線板間の接続が必要となってきた。
【0003】
さらに、電子部品の実装点数も急激に増加しており、印刷配線板の限られたスペースに多数の電子部品を実装するため、従来の剛直な印刷配線板のみならず自由に折り曲げ可能な柔らかい基板が必要となっている。
従来の剛直な印刷配線板は多少たわむことは可能でも、ガラス布やガラス不織布を用いていることもあり、折り曲げることは不可能であった。
【0004】
一方、折り曲げ可能な印刷配線板材料として、ポリイミドを中心とした熱可塑性樹脂フィルムが主に使用されている。しかしながら、ポリイミドなどの熱可塑性樹脂は回路等を構成する金属箔との接着性が低いこともあり、接着層として物性値の異なる樹脂層を複数層積層して印刷配線板材料を形成する場合が多い。
【0005】
また、回路の保護と折り曲げ特性の向上を目的として、回路形成した樹脂フィルム上に可とう性に優れた別の樹脂フィルムを貼り合わせる手法が用いられている。貼り合せ用の樹脂フィルムは回路形成した樹脂フィルムとは異なる樹脂組成物を使用するのが一般的であり、さらに樹脂フィルムどうしの接着性を向上させるために、回路形成した樹脂フィルム面に接する側にはまた別の樹脂層を形成する場合が多い。このようなフィルム基板を用いた多層印刷配線板では、異なる材料を用いた貼り合わせが顕著となり、ポリイミドのような剛直な骨格を有する樹脂では、多層化した際の折り曲げ性は著しく低下する傾向を示す。これらのことから、従来の折り曲げ可能な印刷配線板は、そのいずれもが配線部分もしくは接続端子部分のみ折り曲げが可能に構成されている。
【0006】
例えば、コア材としてフレキシブル基板を用い、コア材に接着機能を有する屈曲性絶縁材料を介してリジッド基板が積層されてなる多層リジッドフレキシブル配線板が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
また、複数の樹脂層を有する印刷配線板では、金属箔のエッチング時や貼り合せ後に基板の反りやねじれが発生する場合があった。さらに、異なる樹脂系の材料からなる複数の樹脂層を貼り合せているため、回路加工時等のプロセスが単一の樹脂系に比べて煩雑になる問題がある。この煩雑さが、製品化のタクトタイムを延ばし、価格の上昇に直接影響する場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−93647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
このような状況において、今後ますます高密度化する印刷配線板を極小の筐体に組み込むためには、従来の配線部分の折り曲げのみならず層間を接続する非貫通ビアやスルーホールが設けられた領域等も含めて、いずれの場所も折り曲げ可能な多層印刷配線板が配線板を設計する上でも非常に有効となる。
本発明は、上記従来技術の問題点を解消し、スルーホールを有する領域に折り曲げ部を設けた場合でも、層間接続の抵抗値の上昇が抑制される多層印刷配線板およびその製造方法、ならびに、該多層印刷配線板の形成に用いられるプリプレグ、樹脂付金属箔、樹脂フィルムおよび金属箔張積層板を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記課題を解決するための具体的手段は以下の通りである。
<1> 第1の熱硬化性樹脂組成物に由来する樹脂硬化物を含む第1の絶縁層および前記第1の絶縁層の両面に配置された厚さが1〜35μmである金属箔を有し、前記金属箔からなる回路層および前記第1の絶縁層を貫通するスルーホールが形成された回路基板と、前記回路基板の少なくとも一方の面上に設けられ、グリシジルアクリレート樹脂およびポリアミドイミド樹脂から選択される熱硬化性樹脂の少なくとも1種を含む第2の熱硬化性樹脂組成物に由来する樹脂硬化物を含み厚さが80μm以下である第2の絶縁層と、を有し、前記回路基板および第2の絶縁層が積層された領域に、全層を貫通するスルーホールおよび非貫通ビアの少なくとも1つが設けられた折り曲げ部を備える多層印刷配線板である。
【0011】
<2> 前記第1の熱硬化性樹脂組成物および第2の熱硬化性樹脂組成物の少なくとも一方は、重量平均分子量が10000〜1500000である熱硬化性樹脂の少なくとも1種を含む、前記<1>に記載の多層印刷配線板である。
【0012】
<3> 前記第1の熱硬化性樹脂組成物および第2の熱硬化性樹脂組成物は、同一の樹脂組成である、前記<1>または<2>に記載の多層印刷配線板である。
<4> 前記第2の絶縁層の前記回路基板に対向する面とは反対側の面上に金属箔を有する前記<1>〜<3>のいずれか1項に記載の多層印刷配線板である。
<5> 4層以上の回路層と、スルーホールおよび非貫通ビアの少なくとも1つと、を有する前記<1>〜<4>のいずれか1項に記載の多層印刷配線板である。
<6> 全層を貫通するスルーホールを有する前記<1>〜<5>のいずれか1項に記載の多層印刷配線板である。
【0013】
<7> 第1の熱硬化性樹脂組成物に由来する樹脂硬化物を含む第1の絶縁層および前記第1の絶縁層の両面に配置された厚さが1〜35μmである金属箔を有する金属箔張積層板に、前記第1の絶縁層を貫通するスルーホールおよび前記金属箔からなる回路層を形成して回路基板を得る工程と、前記スルーホールおよび回路層が形成された回路基板の少なくとも一方の面上に、グリシジルアクリレート樹脂およびポリアミドイミド樹脂から選択される熱硬化性樹脂の少なくとも1種を含有する第2の熱硬化性樹脂組成物に由来する樹脂硬化物を含み、厚さが80μm以下である第2の絶縁層を設ける工程と、前記回路基板および第2の絶縁層が積層された領域に、全層を貫通するスルーホールおよび非貫通ビアの少なくとも1つを備える折り曲げ部を設ける工程と、を含む多層印刷配線板の製造方法である。
【0014】
<8> 厚さが30μm以下であるガラス織布もしくはガラス不織布に、前記第1の熱硬化性樹脂組成物を含浸して得られるプリプレグ、または、前記プリプレグを所定枚数積層したプリプレグ積層体と、前記プリプレグまたはプリプレグ積層体の両方の面上に配置された金属箔と、を加熱・加圧して金属箔張積層板を得る工程をさらに含む、前記<7>に記載の多層印刷配線板の製造方法である。
【0015】
<9> 前記第2の絶縁層を設ける工程は、前記スルーホールおよび回路層が形成された回路基板の少なくとも一方の面上に、前記第2の熱硬化性樹脂組成物からなる層を設け、さらに前記第2の熱硬化性樹脂組成物からなる層上に金属箔を配置する工程と、前記第2の熱硬化性樹脂組成物からなる層および金属箔を、加熱・加圧して表面に金属箔を有する第2の絶縁層を形成する工程と、を含む請求項7または請求項8に記載の多層印刷配線板の製造方法である。
【0016】
<10> 前記第2の絶縁層を設ける工程は、前記スルーホールおよび回路層が形成された回路基板の少なくとも一方の面上に、前記第2の熱硬化性樹脂組成物を用いて得られる樹脂付金属箔を樹脂面が前記回路基板と接触するように配置する工程と、前記樹脂付金属箔を、加熱・加圧して表面に金属箔を有する第2の絶縁層を形成する工程と、を含む請求項7または請求項8に記載の多層印刷配線板の製造方法である。
【0017】
<11> 前記第1の熱硬化性樹脂組成物および第2の熱硬化性樹脂組成物は、同一の樹脂組成である、前記<7>〜<10>のいずれか1項に記載の多層印刷配線板の製造方法である。
【0018】
<12> 前記<8>に記載の多層印刷配線板の製造方法に用いられるプリプレグである。
<13> 前記<10>に記載の多層印刷配線板の製造方法に用いられる樹脂付金属箔である。
<14> 前記<9>に記載の多層印刷配線板の製造方法において、第2の熱硬化性樹脂組成物からなる層を形成することに用いられる樹脂フィルムである。
<15> 前記<7>に記載の多層印刷配線板の製造方法に用いられる金属箔張積層板である。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、スルーホールを有する領域に折り曲げ部を設けた場合でも、層間接続の抵抗値の上昇が抑制される多層印刷配線板およびその製造方法、ならびに、該多層印刷配線板の形成に用いられるプリプレグ、樹脂付金属箔、樹脂フィルムおよび金属箔張積層板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の多層印刷配線板における折り曲げ部の一例を模式的に示す断面図である。
【図2】本発明の評価用に用いた多層印刷配線板の模式平面図である。
【図3】(A)は、評価用に用いた多層印刷配線板の線ABにおける模式断面図であり、(B)は、線CDにおける模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値および最大値として含む範囲を示す。
【0022】
<多層印刷配線板>
本発明の多層印刷配線板は、図1に模式的に示すように、第1の熱硬化性樹脂組成物に由来する樹脂硬化物を含む第1の絶縁層100、および前記第1の絶縁層の両面に配置された厚さが1〜35μmである金属箔を有し、前記金属箔からなる回路層26および前記第1の絶縁層を貫通するスルーホール20が形成された回路基板と、前記回路基板の少なくとも一方の面上に設けられ、グリシジルアクリレート樹脂およびポリアミドイミド樹脂から選択される熱硬化性樹脂の少なくとも1種を含む第2の熱硬化性樹脂組成物に由来する樹脂硬化物を含み、厚さが80μm以下である第2の絶縁層200と、を有し、前記回路基板および第2の絶縁層が積層された領域に、全層を貫通するスルーホール22および非貫通ビア24の少なくとも1つが設けられた折り曲げ部を備える。
特定の厚さを有する金属箔を備えた回路基板と、特定の熱硬化性樹脂に由来する樹脂硬化物を含み、特定の厚さを有する第2の絶縁層とが積層されていることで、その積層された領域を折り曲げた場合に、積層された領域、特に折り曲げ部に設けられたスルーホールおよび非貫通ビアの導電性が損なわれることが抑制される。
【0023】
本発明における折り曲げ部とは、回路基板と第2の絶縁層が積層された領域を、該領域の同一面が対向するように180°折り曲げて形成されるものであり、曲率半径が0〜25mmである範囲を意味する。尚、曲率半径0mmは所謂「ハゼ折り」状態を意味する。
またこの折り曲げ部は、実用上の観点から、一度の折り曲げのみならず少なくとも10回は折り曲げ可能である必要がある。
さらに本発明において折り曲げ可能であるとは、回路基板の両面に配置されたそれぞれの金属箔間を互いに導通接続するスルーホールを含む領域に上記のような折り曲げ部を形成しても、その導通が妨げられないこと、すなわち金属箔間の電気抵抗の上昇が抑制されることを意味する。
具体的には、マンドレルテスタを用いて折り曲げ半径0.5mmで180度の折り曲げおよびその回復を行なった後に金属箔間の抵抗値を測定することを所定の回数繰り返して、折り曲げ性が評価される。
【0024】
本発明における回路基板は、第1の絶縁層と、前記第1の絶縁層の両面に配置された厚さが1〜35μmである金属箔からなる回路層とを含む。
前記第1の絶縁層は、基材と第1の熱硬化性樹脂組成物とを含むプリプレグ、または、前記プリプレグを所定枚数積層して得られるプリプレグ積層体を、加熱・加圧成形して得られる樹脂硬化物を含むものであることが好ましい。
プリプレグ積層体を構成するプリプレグの枚数には特に制限はなく、例えば、第1の絶縁層の層厚が所望の厚さとなるように適宜選択することができる。
【0025】
本発明におけるプリプレグは基材と第1の熱硬化性樹脂組成物とを有するが、基材に第1の熱硬化性樹脂組成物を含浸し、必要に応じてこれを乾燥して得られるものであることが好ましい。
前記基材としては、ガラス布およびガラス不織布であれば特に制限されないが、折り曲げ性の観点から、ガラス不織布であることが好ましい。また基材の厚さは特に制限がなく、例えば、100μm以下とすることができる。好ましくは30μm以下であり、より好ましくは13μm以上30μm以下である。基材がかかる厚さであることで折り曲げ特性がより向上する。
【0026】
また第1の前記熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂の少なくとも1種と、硬化剤の少なくとも1種とを含み、必要に応じて硬化促進剤や有機溶剤をさらに含んで構成される。
前記熱硬化性樹脂としては特に限定されない。具体的には例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、トリアジン樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ポリエステル樹脂、シアネートエステル樹脂、アクリル樹脂、およびこれら樹脂の変性物(例えば、アクリルグリシジル樹脂等)等を挙げることができる。
【0027】
本発明における第1の熱硬化性樹脂組成物は、折り曲げ性と耐熱性の観点から、アクリルグリシジル樹脂、ポリアミドイミド樹脂から選ばれる熱硬化性樹脂(以下、「第1の特定熱硬化性樹脂」ということがある)の少なくとも1種を含むことが好ましく、アクリルグリシジル樹脂およびポリアミドイミド樹脂から選ばれる熱硬化性樹脂の少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0028】
前記アクリルグリシジル樹脂としては、グリシジル(メタ)アクリレートに由来する構造単位を含むアクリル樹脂であれば特に制限はない。中でもグリシジル(メタ)アクリレートに由来する構造単位の含有率が1〜30質量%であることが好ましい。また、グリシジル(メタ)アクリレート以外の構成モノマーについては特に制限されない。
具体的には例えば、HTR−860P3(ナガセケムテクス(株)製)等を挙げることができる。
【0029】
前記ポリアミドイミド樹脂としては、アミドイミド骨格を有するものであればよい。中でも変性ポリアミドイミド樹脂であることが好ましく、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂であることがより好ましい。
【0030】
本発明における第1の熱硬化性樹脂組成物は、前記第1の特定熱硬化性樹脂に加えて、他の熱硬化性樹脂をさらに含むことが好ましい。他の熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができ、耐熱性と接着性の観点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂であることが好ましい。
また、これら他の熱硬化性樹脂は1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0031】
前記熱硬化性樹脂の重量平均分子量には特に制限はなく、例えば、10000〜1500000とすることができる。前記第1の熱硬化性樹脂組成物に含まれる熱硬化性樹脂の少なくとも1種は、重量平均分子量が10,000〜1,500,000であることが好ましく、30,000〜1,000,000であることがより好ましい。
重量平均分子量が10000以上であることで、折り曲げ性がより向上する。また重量平均分子量が1500000以下であることで、基材への含浸性が低下することを抑制し、耐熱性や折り曲げ性が低下することが抑制される。
【0032】
前記第1の熱硬化性樹脂組成物に含まれることがある第1の特定熱硬化性樹脂の含有率としては特に制限はないが、折り曲げ性の観点から、第1の熱硬化性樹脂組成物の固形分に対して10〜100質量%であることが好ましく、10〜80質量%であることがより好ましい。
尚、熱硬化性樹脂組成物の固形分は、熱硬化性樹脂組成物から揮発性成分以外の成分を意味する。
【0033】
第1の熱硬化性樹脂組成物における熱硬化性樹脂の含有率としては、特に制限はなく、例えば、20〜90質量%とすることができ、50〜90質量%であることが好ましい。熱硬化性樹脂を第1の熱硬化性樹脂組成物の固形分に対して20質量%以上含むことで折り曲げ性がより向上する。また90質量%以下の含有率であることで樹脂組成物の基材への含浸性の低下を抑制することができる。
尚、ここでいう熱硬化性樹脂の含有率は、第1の熱硬化性樹脂組成物が2種以上の熱硬化性樹脂を含む場合には、第1の熱硬化性樹脂組成物における熱硬化性樹脂の総量を用いて求められる。
【0034】
本発明における第1の熱硬化性樹脂組成物は、折り曲げ性と接着性の観点から、重量平均分子量が10,000〜1,500,000であって、アクリルグリシジル樹脂およびポリアミドイミド樹脂から選ばれる熱硬化性樹脂の少なくとも1種を含み、その含有率が第1の熱硬化性樹脂組成物の固形分に対して10〜80質量%であることが好ましく、重量平均分子量が10,000〜15,00000であって、アクリルグリシジル樹脂およびポリアミドイミド樹脂から選ばれる熱硬化性樹脂の少なくとも1種と、エポキシ樹脂の少なくとも1種とを含み、アクリルグリシジル樹脂およびポリアミドイミド樹脂から選ばれる少なくとも1種の熱硬化性樹脂の含有率が第1の熱硬化性樹脂組成物の固形分に対して10〜50質量%であることがより好ましい。
【0035】
前記硬化剤としては、従来公知の種々のものを使用することができる。例えば熱硬化性樹脂としてエポキシ樹脂を用いる場合には、ジシアンジアミド、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、無水フタル酸、無水ピロメリット酸、ビスフェノールA、フェノールノボラック及びクレゾールノボラック等の多官能性フェノール及びこれらの臭素化化合物等を挙げることができる。
前記第1の熱硬化性樹脂組成物における硬化剤の含有率としては、特に制限されないが、熱硬化性樹脂に対して3〜50質量%であることが好ましく、10〜40質量%であることがより好ましい。
【0036】
前記第1の熱硬化性樹脂組成物は、熱硬化性樹脂と硬化剤との反応等を促進させる等の目的で促進剤の少なくとも1種を含むことができる。促進剤の種類や配合量は特に限定されるものではない。促進剤の具体例としては例えば、イミダゾール系化合物、有機リン系化合物、第3級アミン、第4級アンモニウム塩等を挙げることができ、これらは1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
前記第1の熱硬化性樹脂組成物における促進剤の含有率としては、特に制限されないが、熱硬化性樹脂に対して0.0001〜10質量%であることが好ましく、0.001〜1.00質量%であることがより好ましい。
【0037】
前記第1の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて有機溶剤を含んでいてもよい。有機溶剤としては、例えば、アルコール系、エーテル系、ケトン系、アミド系、芳香族炭化水素系、エステル系、ニトリル系等を挙げることができ、1種単独でも、2種以上を併用した混合溶剤として用いてもよい。
前記第1の熱硬化性樹脂組成物における有機溶剤の含有率としては、特に制限されず、第1の熱硬化性樹脂組成物の粘度や含浸性等に応じて適宜選択することができる。
【0038】
さらに本発明における第1の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて、難燃剤、流動調整剤、カップリング材、酸化防止剤等の添加剤をさらに含んでいてもよい。これらの添加剤としては通常用いられる成分を特に制限なく用いることができる。
【0039】
前記プリプレグにおける第1の熱硬化性樹脂組成物の含浸量には特に制限はないが、折り曲げ性と耐熱性と接着性の観点から、基材および熱硬化性樹脂の総質量に対する熱硬化性樹脂の含有率が30〜90質量%であることが好ましく、35〜65質量%であることがより好ましい。
【0040】
前記第1の絶縁層の層厚としては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば3μm〜200μmとすることができ、折り曲げ性の観点から、5μm〜100μmであることが好ましい。
前記第1の絶縁層は、例えば、前記プリプレグまたはプリプレグ積層体を加熱・加圧することで、前記プリプレグに含まれる第1の熱硬化性組成物中の成分が反応して樹脂硬化物を形成することで得られる。この製造方法の詳細については後述する。
【0041】
前記第1の絶縁層の両側に配置される金属箔としては、金箔、銅箔、アルミニウム箔など特に制限されないが、一般的には銅箔が用いられる。
前記金属箔の厚さとしては、1μm〜35μmであれば特に制限されないが、3〜18μmの金属箔を用いることで折り曲げ性がより向上する。
ここで金属箔の厚さには、後述するスルーホール形成の際に、めっき処理を行った場合に形成されるめっき層の厚さは含まないものとする。
また、金属箔として、ニッケル、ニッケル−リン、ニッケル−スズ合金、ニッケル−鉄合金、鉛、鉛−スズ合金等を中間層とし、この両面に銅層を設けた3層構造の複合箔、またはアルミニウムと銅箔とを複合した2層構造複合箔を用いることもできる。
【0042】
本発明における金属箔は回路層を構成している。金属箔から回路層を形成する方法については後述する。また回路の形状は必要に応じて適宜選択される。
尚、回路層は金属箔からなるが、後述するスルーホール形成の際に、めっき処理を行った場合に形成されるめっき層も回路層の一部を構成するものとする。
【0043】
また本発明における回路基板には、第1の絶縁層を貫通するスルーホールが設けられている。前記スルーホールは回路基板の両面に設けられた金属箔からなる回路層を互いに電気的に接続するスルーホールであっても、前記金属箔を有さない領域に設けられたスルーホールであってもよい。
スルーホールは、例えば、金属箔張積層板に対してドリルまたはレーザー加工等の通常用いられる方法によって貫通孔を形成した後に、貫通孔をめっき処理することで形成することができる。
【0044】
スルーホールの直径については特に制限はなく、必要に応じて適宜選択することができ、例えば25μm〜10mmとすることができ、25μm以上1000μm以下であることが好ましい。またスルーホールの数量については特に制限されず、必要に応じて適宜選択することができる。さらに2つのスルーホールの壁間隔が50μm以上であることが好ましい。
まためっき処理によって形成されるめっき層の厚さは特に制限されないが、例えば1μm〜20μmとすることができ、5μm〜15μmであることが好ましい。尚、本発明における回路層の厚さには、金属箔の厚さに加えてめっき層の厚さが含まれる。前記回路層の厚さは、例えば2〜55μmとすることができ、4〜38μmであることが好ましい。
【0045】
本発明においては前記回路基板の少なくとも一方の面上に、厚さが80μm以下であって、アクリルグリシジル樹脂およびポリアミドイミド樹脂から選択される熱硬化性樹脂の少なくとも1種を含有する第2の熱硬化性樹脂組成物に由来する樹脂硬化物を含む第2の絶縁層が設けられている。本発明において第2の絶縁層の厚さは80μm以下であるが、折り曲げ性と耐熱性の観点から5〜80μmであることが好ましく、7〜60μmであることがより好ましい。
特定の熱硬化性樹脂を含み、特定の厚さを有する第2の絶縁層を設けることで、多層印刷配線板の折り曲げ性が向上する。
【0046】
また第2の絶縁層は、回路基板の一方の面上のみに設けられていても、両方の面上に設けられていてもよい。さらに第2の絶縁層は、回路基板の全面に設けられていても、一部の領域にのみ設けられていてもよい。
【0047】
前記第2の絶縁層は、アクリルグリシジル樹脂およびポリアミドイミド樹脂から選択される熱硬化性樹脂(以下、「第2の特定熱硬化性樹脂」ということがある)の少なくとも1種を含有する第2の熱硬化性樹脂組成物に由来する樹脂硬化物の少なくとも1種を含む。
前記第2の特定熱硬化性樹脂の重量平均分子量としては特に制限されないが、折り曲げ性の観点から、10,000〜1,500,000であることが好ましく、30,000〜1,000,000であることがより好ましい。
【0048】
また前記第2の熱硬化性樹脂組成物は、アクリルグリシジル樹脂およびポリアミドイミド樹脂以外の他の熱硬化性樹脂をさらに含むことが好ましい。他の熱硬化性樹脂としては例えば、他の熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることができ、耐熱性の観点から、エポキシ樹脂、フェノール樹脂であることが好ましい。
また、これら他の熱硬化性樹脂は1種単独でも、2種以上を併用してもよい。
【0049】
前記第2の熱硬化性樹脂組成物に含まれる第2の特定熱硬化性樹脂の含有率としては特に制限はないが、折り曲げ性の観点から、第2の熱硬化性樹脂組成物の固形分に対して33.0〜99.0質量%であることが好ましく、40.0〜70.0質量%であることがより好ましい。
【0050】
さらに第2の熱硬化性樹脂組成物は、必要に応じて硬化剤、促進剤、有機溶剤や、難燃剤、流動調整剤、カップリング材、酸化防止剤等の添加剤をさらに含んでいてもよい。これらの詳細については既述の第1の熱硬化性樹脂組成物と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0051】
本発明において前記第2の熱硬化性樹脂組成物と前記第1の熱硬化性樹脂組成物は、互いに同一の樹脂組成を有するものであっても、異なる樹脂組成を有するものであってもよい。本発明における第1の熱硬化性樹脂組成物および第2の熱硬化性樹脂組成物は、折り曲げ性と反り等の変形抑制の観点から、同一の樹脂組成を有することが好ましい。
【0052】
本発明における第2の絶縁層は、例えば、前記回路基板上に第2の熱硬化性樹脂組成物からなる層を形成し、これを加熱・加圧することで形成することができる。第2の絶縁層を形成する方法の詳細については後述する。
【0053】
本発明における第2の絶縁層は回路基板に対向する面とは反対側の面上に、金属箔を有することが好ましい。第2の絶縁層上に設けられる金属箔としては、金箔、銅箔、アルミニウム箔など特に制限されないが、一般的には銅箔が用いられる。
前記金属箔の厚さには特に制限はなく、例えば、1μm〜35μmとすることができる、3〜18μmであることが、折り曲げ性の観点から好ましい。
また、金属箔として、ニッケル、ニッケル−リン、ニッケル−スズ合金、ニッケル−鉄合金、鉛、鉛−スズ合金等を中間層とし、この両面に銅層を設けた3層構造の複合箔、またはアルミニウムと銅箔とを複合した2層構造複合箔を用いることもできる。
【0054】
本発明の多層印刷配線板においては、第2の絶縁層上に設けられた金属箔は回路層を形成していてもよい。また第2の絶縁層上に設けられた金属箔の上にさらに絶縁層や、絶縁層および金属箔(好ましくは回路層)が設けられていてもよく、第2の絶縁層上に設けられた金属箔の上に設けられた絶縁層および金属箔は2層以上さらに積層されていてもよい。
【0055】
本発明の多層印刷配線板は、前記回路基板および第2の絶縁層が積層された領域に、全層を貫通するスルーホールおよび非貫通ビアの少なくとも1つが設けられた折り曲げ部を備える。
前記全層を貫通するスルーホールは、全層を貫通し、少なくとも2層の回路層を互いに導通接続するものであればよい。また全層を貫通するスルーホールは既述の回路基板におけるスルーホールと同様にして形成することができる。
さらにスルーホールの直径、数量、スルーホールの壁間隔については既述の回路基板におけるスルーホールと同様であり、好ましい態様も同様である。
【0056】
前記非貫通ビアは、前記第1の絶縁層または第2の絶縁層の少なくとも1層を貫通して、少なくとも2層の回路層を導通接続するものであって、全層を貫通するものでなければ特に制限はない。
例えば、前記回路基板の両面に設けられた回路層を導通接続するものであっても、回路基板の一方面上の回路層とその上に設けられた第2の絶縁層上の回路層とを導通接続するものであってもよい。
【0057】
また非貫通ビアは、例えば、第1の絶縁層または第2の絶縁層に対してドリルまたはレーザー加工等の通常用いられる方法によって非貫通孔を形成した後に、非貫通孔をめっき処理することで形成することができる。
【0058】
非貫通ビアの直径については特に制限はなく、必要に応じて適宜選択することができるが、折り曲げ性の観点から、25μm以上200μm以下であることが好ましく、25μm以上100μm以下であることがより好ましい。また、折り曲げ性の観点から、非貫通ビアの深さに対する非貫通ビアの直径の比が0.025以上15.0以下であることが好ましく、0.1以上5.0以下であることがより好ましい。
非貫通ビアの数量については特に制限されず、必要に応じて適宜選択することができる。さらに2つの非貫通ビアの壁間隔が50μm以上であることが好ましい。
【0059】
本発明の多層印刷配線板は、4層以上の回路層を有することが好ましく、全層を貫通するスルーホールをさらに有することがより好ましい。
本発明の多層印刷配線板において、4層以上の回路層を有する多層印刷配線板は、前記回路基板の一方の面上に、金属箔を有する第2の絶縁層を2層以上設けて構成されていてもよく、また、前記回路基板の両方の面上に、金属箔を有する第2の絶縁層をそれぞれ1層以上設けて構成されてもよい。本発明においては製造効率の観点から、回路基板の両面に、表面に金属箔を有する第2の絶縁層のそれぞれ1層以上設けて構成されていることが好ましい。
【0060】
本発明においては回路基板および第2の絶縁層が上記の態様であることで、4層以上の回路層や、全層を貫通するスルーホール等を設けた領域に折り曲げ部を形成しても、スルーホール等で接続された回路層間の導電性が損なわれることが抑制される。
【0061】
<多層印刷配線板の製造方法>
本発明の多層印刷配線板の製造方法は、第1の熱硬化性樹脂組成物に由来する樹脂硬化物を含む第1の絶縁層および前記第1の絶縁層の両面に配置された厚さが1〜35μmである金属箔を有する金属箔張積層板に、前記第1の絶縁層を貫通するスルーホールおよび前記金属箔からなる回路層を形成して回路基板を得る工程と、前記スルーホールおよび回路層が形成された回路基板の少なくとも一方の面上に、グリシジルアクリレート樹脂およびポリアミドイミド樹脂から選択される熱硬化性樹脂の少なくとも1種を含有する第2の熱硬化性樹脂組成物に由来する樹脂硬化物を含み、厚さが80μm以下である第2の絶縁層を設ける工程と、前記第2の絶縁層上の金属箔を回路加工する工程と、前記回路基板および第2の絶縁層が積層された領域に、全層を貫通するスルーホールおよび非貫通ビアを供える折り曲げ部を設ける工程と、を含む。
かかる製造方法で製造された多層印刷配線板は、スルーホールや非貫通ビアが設けられた領域であっても折り曲げ性に優れ、スルーホールや非貫通ビアを介して接続された回路層間の抵抗値の上昇が抑制される。
【0062】
前記回路基板にスルーホールを設ける方法は、穴あけ加工する工程とめっき処理する工程とを含むことができる。穴あけ加工は特に制約はなく、通常のメカニカルなドリルやレーザー加工が主に用いられる。また、めっき処理は無電解めっきおよび電気めっきのいずれであってもよい。
スルーホールの好ましい態様については既述の通りである。
【0063】
回路層を形成する方法については、特に制限されるものではなく、通常用いられる回路形成方法を適宜選択して用いることができる。例えば通常のフォトリソ法を用いて、金属箔からなる回路層を形成することができる。
【0064】
本発明の多層印刷配線板の製造方法において、前記金属箔張積層板は、ガラス織布もしくはガラス不織布に第1の熱硬化性樹脂組成物を含浸して得られるプリプレグ、または、前記プリプレグを所定枚数積層したプリプレグ積層体と、前記プリプレグまたはプリプレグ積層体の両方の面上に配置された金属箔と、を加熱・加圧して金属箔張積層板を得る工程を含む製造方法で得られることが好ましい。
第1の熱硬化性組成物を含むプリプレグまたはプリプレグ積層体を加熱・加圧することで、第1の熱硬化性組成物中の成分が反応して樹脂硬化物を形成するとともに、第1の絶縁層が形成される。
【0065】
加熱する温度および圧力は特に制限されないが、加熱する温度は通常80℃〜250℃とすることができ、130℃〜230℃であることが好ましい。また圧力は圧力は通常0.5MPa〜8.0MPaとすることができ、1.5MPa〜5.0MPaであることが好ましい。
加熱および加圧には、例えば真空プレスが好適に用いられる。
【0066】
また前記プリプレグは、ガラス織布もしくはガラス不織布(以下、単に「基材」ということがある)に第1の熱硬化性樹脂組成物を含浸する工程と、必要に応じて乾燥工程とを含む製造方法で得られることが好ましい。プリプレグを構成する基材としてのガラス織布およびガラス不織布、ならびに、第1の熱硬化性樹脂組成物の詳細は、既述の通りであり、好ましい態様も同様である。
【0067】
基材に第1の熱硬化性樹脂組成物を含浸する方法としては、通常用いられる含浸方法を特に制限なく用いることができ、例えば塗工機により塗布する方法を挙げることができる。
【0068】
また前記第1の熱硬化性樹脂組成物は樹脂ワニスとして基材に含浸させることができる。本発明において第2の熱硬化性樹脂組成物が有機溶剤を含む場合、得られるプリプレグは有機溶剤を含んでいてもよいが、第2の熱硬化性樹脂組成物に含まれていた有機溶剤の80%以上が除去されていることが好ましい。有機溶剤の除去は例えば、加熱により行なうことができ、80〜180℃で加熱することが好ましい。また加熱による乾燥時間については特に制限されず、目的に応じて適宜選択することができる。
【0069】
本発明におけるプリプレグの厚さには特に制限はないが、折り曲げ性の観点から、15μm〜200μmであることが好ましく、15μm〜100μmであることがより好ましい。
またプリプレグ積層体を構成するプリプレグの枚数には特に制限はなく、所望の厚さとなるように適宜選択することができるが、1〜5枚であることが好ましい。
【0070】
前記プリプレグまたはプリプレグ積層体の両方の面上に配置される金属箔の詳細は、前記回路基板における金属箔と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0071】
本発明における多層印刷配線板の製造方法は、前記スルーホールおよび回路層が形成された回路基板の少なくとも一方の面上に、グリシジルアクリレート樹脂およびポリアミドイミド樹脂から選択される熱硬化性樹脂の少なくとも1種を含有する第2の熱硬化性樹脂組成物に由来する樹脂硬化物を含み、厚さが80μm以下である第2の絶縁層を設ける工程を含む。
本発明における第2の絶縁層を設ける工程は、前記第2の絶縁層の、前記回路基板に対向する面とは反対側の面上に金属箔を設ける工程をさらに含むことが好ましい。すなわち本発明における第2の絶縁層を設ける工程は、前記回路基板上に、表面に金属箔を有する第2の絶縁層を設ける工程であることが好ましい。
尚、前記金属箔の詳細については、既述の通りである。
【0072】
回路基板の少なくとも一方の面上に、表面に金属箔を有する第2の絶縁層を設ける方法としては、前記回路基板上に、前記第2の熱硬化性樹脂組成物からなる層(以下、「第2の熱硬化性樹脂組成物層」ということがある)を形成する工程と、前記第2の熱硬化性樹脂組成物層上に金属箔を配置する工程と、前記回路基板及び金属箔が設けられた第2の熱硬化性樹脂組成物層を加熱・加圧する工程とを含む第1の方法、ならびに、回路基板上に前記第2の樹脂組成物から得られる樹脂付金属箔を樹脂面が回路基板と接触するように配置する工程と、樹脂付金属箔が配置された回路基板を加熱・加圧する工程とを含む第2の方法を挙げることができる。
【0073】
前記第1の方法において、回路基板上に第2の熱硬化性樹脂組成物層を形成する方法としては、例えば、第2の熱硬化性樹脂組成物を塗布法等により回路基板上に付与して第2の熱硬化性樹脂組成物層を形成する方法や、回路基板上に第2の熱硬化性樹脂組成物を含む樹脂フィルムを貼付する方法等を挙げることができる。
【0074】
ここで用いる第2の熱硬化性樹脂組成物については既述の通りである。
第2の熱硬化性樹脂組成物を塗布する方法としては、形成される第2の絶縁層の厚さを80μm以下とすることができる塗布方法であれば、公知の塗布方法を特に制限無く用いることができる。具体的には例えば、コンマコート、ダイコート、リップコート、グラビアコート等の方法が挙げられる。所定の厚みに樹脂層を形成するための塗布方法としては、ギャップ間に被塗工物を通過させるコンマコート法、ノズルから流量を調整した樹脂ワニスを塗布するダイコート法等を適用することができる。
【0075】
回路基板上に形成された第2の熱硬化性樹脂組成物層においては、塗布に用いた第2の熱硬化性樹脂組成物に含まれる有機溶剤の80質量%以上が除去されていることが好ましい。有機溶剤を除去する乾燥条件としては例えば、乾燥温度を80〜180℃程度とすることができる。また乾燥時間については特に制限されない。
【0076】
また第2の熱硬化性樹脂組成物を含む樹脂フィルムは、例えば、離型基材上に前記第2の熱硬化性樹脂組成物を塗布して、乾燥後、離型基材を除去することで製造することができる。離型基材としては、乾燥時の温度に耐えうるものであれば特に制限はなく、一般的に用いられる離型剤付きのポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリイミドフィルム、アラミドフィルム、離型剤付きのアルミニウム箔等の金属箔を用いることができる。
【0077】
第2の熱硬化性樹脂組成物の離型基材への塗布は、上述した塗布方法と同様の方法を用いることができる。乾燥温度は、80℃〜180℃程度であり、乾燥時間は第2の熱硬化性樹脂組成物のゲル化時間との兼ね合いで決めることができ、特に制限はない。第2の熱硬化性樹脂組成物の塗布量は、得られる樹脂フィルムの厚みが、80μm以下となるように塗布することが好ましく、30μm〜80μmとなることがより好ましい。
また第1の方法における金属箔の詳細については、既述の金属箔と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0078】
第2の熱硬化性樹脂組成物層および金属箔が設けられた回路基板を加熱・加圧することで、第2の熱硬化性組成物中の成分が反応して樹脂硬化物を形成するとともに、表面に金属箔を有する第2の絶縁層が形成される。
加熱する温度および圧力は、特に制限されないが、加熱する温度は通常80℃〜250℃とすることができ、130℃〜230℃であることが好ましい。また圧力は通常0.5MPa〜8.0MPaとすることができ、1.5MPa〜5.0MPaであることが好ましい。
加熱および加圧には、例えば真空プレスが好適に用いられる。
【0079】
前記第2の方法における樹脂付金属箔は、金属箔と、前記金属箔上に第2の熱硬化性樹脂組成物を用いて形成された樹脂層とを有して構成される。
金属箔および第2の熱硬化性樹脂組成物の詳細は、既述の通りである。
樹脂付金属箔は、第2の熱硬化性樹脂組成物を金属箔上に塗布・乾燥することにより樹脂層を形成することで製造することができる。塗布および乾燥は既述の塗布方法および乾燥方法と同様にして行なうことができる。
【0080】
樹脂付金属箔が設けられた回路基板を加熱・加圧することで、表面に金属箔を有する第2の絶縁層が形成される。
加熱する温度および圧力については、前記第1の方法と同様である。
【0081】
本発明の製造方法において、第1の絶縁層を形成する第1の熱硬化性樹脂組成物と第2の絶縁層を形成する第2の熱硬化性樹脂組成物は、互いに同一の樹脂組成を有するものであっても、異なる樹脂組成を有するものであってもよい。第1の熱硬化性樹脂組成物および第2の熱硬化性樹脂組成物は、折り曲げ性と反り等の変形抑制の観点から、同一の樹脂組成を有するものであることが好ましい。
また本発明においては、第2の絶縁層を形成する際に、回路基板に設けられたスルーホールが第2の絶縁層を形成する第2の熱硬化性樹脂組成物によって充填されていることが好ましい。これにより折り曲げ性がより向上する。
【0082】
本発明の多層印刷配線板の製造方法においては、第2の絶縁層上に設けられた金属箔を回路加工する工程を含むことが好ましい。
金属箔を回路加工する方法については、特に制限されるものではなく、通常用いられる回路形成方法を適宜選択して用いることができる。例えば通常のフォトリソ法を用いて、金属箔からなる回路層を形成することができる。
【0083】
本発明においては、第2の絶縁層上の回路層と第1の絶縁層上の回路層とを導通接続するスルーホールまたは非貫通ビアを設ける工程をさらに含んでいてもよい。
スルーホールを設ける工程は、貫通孔を設ける工程と、貫通孔をめっき処理する工程とを含んで構成される。また非貫通ビアを設ける工程は、第2の絶縁層に非貫通孔を設ける工程と、非貫通孔をめっき処理する工程とを含んで構成される。
貫通孔および非貫通孔は、メカニカルなドリルやレーザー加工等の通常用いられる方法で設けることができる。まためっき処理は、無電解めっき処理であっても、電解めっき処理であってもよい。
【0084】
本発明の多層印刷配線板の製造方法においては、回路基板および第2の絶縁層が積層された領域に折り曲げ部を設ける工程を含む。
本発明における折り曲げ部の詳細については既述の通りである。また折り曲げ部を設ける方法としては、特に制限なく通常用いられる方法を適用することができる。
【実施例】
【0085】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、「部」及び「%」は質量基準である。
【0086】
<実施例1>
以下に示す熱硬化性樹脂組成物の各成分を混合し、メチルエチルケトンを用いて樹脂固形分30%に希釈して熱硬化性樹脂ワニスを作製した。
・アクリル樹脂組成物 : 80部
(グリシジルアクリレート樹脂;HTR-860P3(ナガセケムテクス(株)製)
・エポキシ樹脂 : 40部
(DER-331L(ダウケミカル(株)製)
・ノボラックフェノール樹脂 : 40部
(VP6371(日立化成工業(株)製)
・イミダゾール : 0.4部
(2PZ−CN(四国化成(株))
【0087】
上記で得られた熱硬化性樹脂ワニスを、厚さ約20μmのガラス布に含浸後、140℃で5〜10分間加熱乾燥して、樹脂分75%のプリプレグを得た。
このプリプレグの両側の面上に厚さが12μmの銅箔をそれぞれ重ねて、170℃、90分、4.0MPaのプレス条件で加熱・加圧処理して、厚さ50μmの両面銅張積層板を作製した。
得られた両面銅張積層板にΦ=0.2mmのドリルを用い、1.2mmピッチのマトリックス(格子)状に貫通孔を形成した後、無電解めっき処理によりスルーホールめっきを施した。めっき厚は15μmとした。この両面銅張積層板の端部に基準点となるパッド及びデイジーチェーンパターン回路をエッチングにより列状に形成し、内層板となるスルーホール付き回路基板を得た。
【0088】
上記で得られた熱硬化性樹脂ワニスを、18μm厚の銅箔にキャスト後、140℃で5〜10分間加熱乾燥して、樹脂層厚が40μmの半硬化の樹脂付き銅箔を作製した。
上記で作製したスルーホール付き回路基板の両側の面上に、半硬化の樹脂付き銅箔の樹脂層側を上記スルーホール付き内層印刷配線側に向けてそれぞれ貼付け、170℃、90分、4.0MPaのプレス条件で加熱・加圧処理して、厚さ134μmの模擬基板を作製した。
得られた模擬基板にΦ=0.2mmのドリルを用い、スルーホール付き回路基板のスルーホール間に1.2mmピッチのマトリックス(格子)状に貫通孔を形成した後、無電解めっき処理によりスルーホールめっきを施した。めっき厚は15μmとした。この両面銅張積層板の端部に基準点となるパッド及びスルーホール付き回路基板のデイジーチェーン回路の向きと平行な向きにデイジーチェーンパターン回路をエッチングにより列状に形成し、164μm厚の多層印刷配線板を得た。
得られた多層印刷配線板は、第1の絶縁層上に設けられた金属箔の厚さは12μmであり、第2の絶縁層の厚さは36μmであった。
【0089】
(評価)
上記で得られた多層印刷配線板300の模式平面図を図2に、模式断面図を図3に示す。多層印刷配線板には非貫通ビア34のデイジーチェーンパターン回路の列と全層を貫通するスルーホール32のデイジーチェーンパターン回路の列が交互に配列している。多層印刷配線板の端部には、デイジーチェーンパターン回路の抵抗測定用のパッド部36が設けられている。多層印刷配線板形成時に、非貫通ビアのデイジーチェーンパターン回路のパッド部38は、一旦第2の絶縁樹脂組成物で覆われるが、模擬基板作製工程後、多層印刷配線板形成工程において、非貫通ビアのデイジーチェーンパターン回路のパッド部38を覆う第2の絶縁樹脂組成物をサンドペーパーで除去した。このようにして得られた多層印刷配線板について、マンドレルテスタを用いて折り曲げ半径0.5mmで180度の折り曲げ性を評価した。
試験片は幅10mmの短冊状とし、折り曲げ部位としては横1列にスルーホールを有する部分を用いた。180度の折り曲げを繰り返して内層回路のスルーホール又は全層のスルーホールの何れか一方の抵抗値が初期抵抗値の10%以上上昇するもしくは断線するまでの回数を測定した。評価結果を表1に示す。
【0090】
<実施例2>
実施例1において、熱硬化性樹脂組成物を以下の樹脂組成に変更したこと以外は実施例1と同様にして168μm厚の多層印刷配線板を作製し、これを用いて評価を行なった。
得られた多層印刷配線板は、第1の絶縁層上に設けられた金属箔の厚さは12μmであり、第2の絶縁層の厚さは38μmであった。
評価結果を表1に示す。
(樹脂組成)
・アクリル樹脂組成物 : 250部
(グリシジルアクリレート樹脂;HTR-860P3(ナガセケムテクス(株)製)
・エポキシ樹脂 : 40部
(DER-331L(ダウケミカル(株)製)
・ノボラックフェノール樹脂 : 40部
(VP6371(日立化成工業(株)製)
・イミダゾール : 0.4部
(2PZ−CN(四国化成(株))
【0091】
<実施例3>
実施例1において、熱硬化性樹脂組成物を以下の樹脂組成に変更したこと以外は実施例1と同様にして162μm厚の多層印刷配線板を作製し、これを用いて評価を行なった。
得られた多層印刷配線板は、第1の絶縁層上に設けられた金属箔の厚さは12μmであり、第2の絶縁層の厚さは35μmであった。
評価結果を表1に示す。
(樹脂組成)
・アクリル樹脂組成物 : 20部
(グリシジルアクリレート樹脂;HTR-860P3(ナガセケムテクス(株)製)
・エポキシ樹脂 : 40部
(DER-331L(ダウケミカル(株)製)
・ノボラックフェノール樹脂 : 40部
(VP6371(日立化成工業(株)製)
・イミダゾール : 0.4部
(2PZ−CN(四国化成(株))
【0092】
<実施例4>
実施例1において、熱硬化性樹脂組成物を以下のようにして調製した熱硬化性樹脂組成物に変更したこと以外は実施例1と同様にして166μm厚の多層印刷配線板を作製し、これを用いて評価を行なった。
得られた多層印刷配線板は、第1の絶縁層上に設けられた金属箔の厚さは12μmであり、第2の絶縁層の厚さは37μmであった。
評価結果を表1に示す。
重量平均分子量28000、1分子中のアミド基数が52であるシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂のN−メチルピロリドン(NMP)溶液225g(樹脂固形分40%)と、エポキシ樹脂としてYDCN−500(東都化成株式会社製、商品名:クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、樹脂固形分50%のジメチルアセトアミド溶液)20gと、2−エチル−4−メチルイミダゾール1.0gとを配合し、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌した後、脱泡のため24時間、室温で静置して熱硬化性樹脂組成物ワニスを調製した。
【0093】
<実施例5>
実施例1において、熱硬化性樹脂組成物を以下のようにして調製した熱硬化性樹脂組成物に変更したこと以外は実施例1と同様にして168μm厚の多層印刷配線板を作製し、これを用いて評価を行なった。
得られた多層印刷配線板は、第1の絶縁層上に設けられた金属箔の厚さは12μmであり、第2の絶縁層の厚さは38μmであった。
評価結果を表1に示す。
重量平均分子量30000、1分子中のアミド基数が38のシロキサン変性ポリアミドイミド樹脂のNMP溶液225g(樹脂固形分40%)と、エポキシ樹脂としてDER331L(ダウケミカル(株)商品名、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、樹脂固形分50%のジメチルアセトアミド溶液)20gと、2−エチル−4−メチルイミダゾール1.0gとを配合し、樹脂が均一になるまで約1時間撹拌した後、脱泡のため24時間、室温で静置して熱硬化性樹脂組成物ワニスを調製した。
【0094】
<実施例6>
実施例1で作製したプリプレグの両側の面上にキャリヤ付き銅箔(銅箔厚さ;1μm、キャリヤ層厚さ;18μm)の銅箔側の面をプリプレグに向けてそれぞれ重ねて、170℃、90分、4.0MPaのプレス条件で加熱・加圧処理後、キャリヤ層を剥離して厚さ28μmの両面銅張積層板を作製した。
得られた両面銅張積層板に、実施例1と同様の処理をしてスルーホール付き回路基板を得た。
次に、実施例1で作製した熱硬化性樹脂ワニスを、キャリヤ付き銅箔(銅箔厚さ;1μm、キャリヤ層厚さ;18μm)の銅箔側の面上にキャスト後、140℃で5〜10分間加熱乾燥して、樹脂層厚が25μmの半硬化の樹脂付き銅箔を作製した。
次に、上記で作製したスルーホール付き回路基板の両側の面上に、上記樹脂付き銅箔の樹脂層側を上記スルーホール付き回路基板側に向けてそれぞれ貼付け、170℃、90分、4.0MPaのプレス条件で加熱・加圧処理して、キャリヤ層を剥離した後、実施例1と同様の処理を行い、厚さ74μmの模擬基板を作製した。後の工程は、実施例1と同様にして104μm厚の多層印刷配線板を得た。これを用いて評価を行なった。
得られた多層印刷配線板は、第1の絶縁層上に設けられた金属箔の厚さは1μmであり、第2の絶縁層の厚さは23μmであった。
評価結果を表1に示す。
【0095】
<実施例7>
実施例1において、厚さが18μmの銅箔を用い、樹脂層厚45μmの樹脂付き銅箔を用いたこと以外は実施例1と同様にして厚さ186μmの模擬基板を作製した。こうして得られた模擬基板を用いたこと以外は実施例1と同様にして174μm厚の多層印刷配線板を得た。これを用いて評価を行なった。
得られた多層印刷配線板は、第1の絶縁層上に設けられた金属箔の厚さは18μmであり、第2の絶縁層の厚さは41μmであった。
評価結果を表1に示す。
【0096】
<実施例8>
実施例1において、樹脂層厚が40μmの半硬化の樹脂付き銅箔の代わりに樹脂層厚75μmの半硬化の樹脂付き銅箔(銅箔厚さ;18μm)を用いたこと以外は実施例1と同様にして厚さ198μmの模擬基板を作製した。こうして得られた模擬基板を用いたこと以外は実施例1と同様にして228μm厚の多層印刷配線板を得た。
得られた多層印刷配線板は、第1の絶縁層上に設けられた金属箔の厚さは12μmであり、第2の絶縁層の厚さは68μmであった。
評価結果を表1に示す。
【0097】
<比較例1>
実施例1において、熱硬化性樹脂組成物を以下のようにして調製した熱硬化性樹脂組成物に変更したこと以外は実施例1と同様にして168μm厚の多層印刷配線板を作製し、これを用いて評価を行なった。
得られた多層印刷配線板は、第1の絶縁層上に設けられた金属箔の厚さは12μmであり、第2の絶縁層の厚さは38μmであった。
評価結果を表1に示す。
【0098】
以下に樹脂組成を示す熱硬化性樹脂組成物をメチルエチルケトン及びプロピレングリコールモノメチルエーテルで樹脂固形分70%に希釈して熱硬化性樹脂ワニスを作製した。
(樹脂組成)
・臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂 : 100部
(エポキシ当量:530)
・ジシアンジアミド : 4部
・イミダゾール(2E4MZ、四国化成(株)製) : 0.5部
【0099】
<比較例2>
金属箔張積層板として、厚さ18μmの銅箔を両面に有するポリイミドフィルム(AX182518、ポリイミド厚み25μm、新日鐵化学(株)製)を用いて、実施例1と同様にしてスルーホールを形成して、スルーホール付き回路基板を得た。次に、樹脂フィルムとして以下のようにして調製した組成物から形成した厚み38μmの樹脂フィルムを用いたこと以外は実施例1と同様にして、模擬基板を作製し、これを用いて評価を行なった。
得られた多層印刷配線板は、第1の絶縁層上に設けられた金属箔の厚さは18μmであり、第2の絶縁層の厚さは25μmであった。
評価結果を表1に示す。
【0100】
(樹脂組成)
・エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート : 30部
・TMCH : 50部
(2,2,4−トリメチルヘキサメチレン−1,6−ジイソシアナートと2−ヒドロキシエチルアクリレートのモル比1:2付加物、日立化成工業(株)製)
・ジシアンジアミド : 1部
・N,N−ジメチルホルムアミド : 3部
【0101】
<比較例3>
特開2006−93647号公報に準じて、微粒子架橋ゴムのメチルエチルケトン分散液(濃度20%)を調製した。
比較例1の樹脂組成において、微粒子架橋ゴムのメチルエチルケトン分散液を100質量部追加して得られる熱硬化性樹脂ワニスを用いて、上記と同様にして樹脂フィルムAを製造した。
比較例2において、樹脂フィルムとして上記で得られた厚み38μmの樹脂フィルムAを用いたこと以外は同様にして模擬基板を作製し、これを用いて評価を行なった。
得られた多層印刷配線板は、第1の絶縁層上に設けられた金属箔の厚さは18μmであり、第2の絶縁層の厚さは24μmであった。
評価結果を表1に示す。
【0102】
<比較例4>
比較例1で作製した熱硬化性樹脂ワニスを用いて作製したプリプレグの両側の面上にキャリヤ付き銅箔(銅箔厚さ;0.5μm、キャリヤ層厚さ;18μm)の銅箔側の面をプリプレグに向けてそれぞれ重ねて、170℃、90分、4.0MPaのプレス条件で加熱・加圧処理後、キャリヤ層を剥離して厚さ27μmの両面銅張積層板を作製したこと以外は実施例1と同様の処理をして厚さ119μmの模擬基板を作製し、後の工程は、実施例1と同様にして164μm厚の多層印刷配線板を得た。これを用いて評価を行なった。
得られた多層印刷配線板は、第1の絶縁層上に設けられた金属箔の厚さは0.5μmであり、第2の絶縁層の厚さは36μmであった。
評価結果を表1に示す。
【0103】
<比較例5>
比較例1で作製した熱硬化性樹脂ワニスを用いて作製したプリプレグの両側の面上に厚さが70μmの銅箔をそれぞれ重ねて、両面銅張積層板を作製し、スルーホール付き回路基板を作製した後、樹脂層厚が100μmの半硬化の樹脂付き銅箔(銅箔厚さ;18μm)を用いたこと以外は、実施例1と同様の処理をして厚さ282μmの多層印刷配線板を作製し、これを用いて評価を行なった。
得られた多層印刷配線板は、第1の絶縁層上に設けられた金属箔の厚さは70μmであり、第2の絶縁層の厚さは95μmであった。
評価結果を表1に示す。
【0104】
【表1】

【0105】
表1から本発明の多層印刷配線板は、スルーホールを有する領域における折り曲げ性に優れることが分かる。
【符号の説明】
【0106】
20 金属箔張積層板を貫通するスルーホール
22 全層を貫通するスルーホール
24 非貫通ビア
26 回路層
32 全層を貫通するスルーホール
34 非貫通ビア
36、38 パッド部
100 第1の絶縁層
200 第2の絶縁層
300 評価用模擬基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の熱硬化性樹脂組成物に由来する樹脂硬化物を含む第1の絶縁層および前記第1の絶縁層の両面に配置された厚さが1〜35μmである金属箔を有し、
前記金属箔からなる回路層および前記第1の絶縁層を貫通するスルーホールが形成された回路基板と、
前記回路基板の少なくとも一方の面上に設けられ、グリシジルアクリレート樹脂およびポリアミドイミド樹脂から選択される熱硬化性樹脂の少なくとも1種を含む第2の熱硬化性樹脂組成物に由来する樹脂硬化物を含み、厚さが80μm以下である第2の絶縁層と、を有し、
前記回路基板および第2の絶縁層が積層された領域に、全層を貫通するスルーホールおよび非貫通ビアの少なくとも1つが設けられた折り曲げ部を備える多層印刷配線板。
【請求項2】
前記第1の熱硬化性樹脂組成物および第2の熱硬化性樹脂組成物の少なくとも一方は、重量平均分子量が10000〜1500000である熱硬化性樹脂の少なくとも1種を含む、請求項1に記載の多層印刷配線板。
【請求項3】
前記第1の熱硬化性樹脂組成物および第2の熱硬化性樹脂組成物は、同一の樹脂組成である、請求項1または請求項2に記載の多層印刷配線板。
【請求項4】
前記第2の絶縁層の前記回路基板に対向する面とは反対側の面上に金属箔を有する、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の多層印刷配線板。
【請求項5】
4層以上の回路層を有する、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の多層印刷配線板。
【請求項6】
全層を貫通するスルーホールを有する、請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の多層印刷配線板。
【請求項7】
第1の熱硬化性樹脂組成物に由来する樹脂硬化物を含む第1の絶縁層および前記第1の絶縁層の両面に配置された厚さが1〜35μmである金属箔を有する金属箔張積層板に、前記第1の絶縁層を貫通するスルーホールおよび前記金属箔からなる回路層を形成して回路基板を得る工程と、
前記スルーホールおよび回路層が形成された回路基板の少なくとも一方の面上に、グリシジルアクリレート樹脂およびポリアミドイミド樹脂から選択される熱硬化性樹脂の少なくとも1種を含有する第2の熱硬化性樹脂組成物に由来する樹脂硬化物を含み、厚さが80μm以下である第2の絶縁層を設ける工程と、
前記回路基板および第2の絶縁層が積層された領域に、全層を貫通するスルーホールおよび非貫通ビアの少なくとも1つを備える折り曲げ部を設ける工程と、
を含む多層印刷配線板の製造方法。
【請求項8】
厚さが30μm以下であるガラス織布もしくはガラス不織布に、前記第1の熱硬化性樹脂組成物を含浸して得られるプリプレグ、または、前記プリプレグを所定枚数積層したプリプレグ積層体と、
前記プリプレグまたはプリプレグ積層体の両側の面上に配置された厚さが1〜35μmである金属箔と、
を加熱・加圧して金属箔張積層板を得る工程をさらに含む、請求項7に記載の多層印刷配線板の製造方法。
【請求項9】
前記第2の絶縁層を設ける工程は、前記スルーホールおよび回路層が形成された回路基板の少なくとも一方の面上に、前記第2の熱硬化性樹脂組成物からなる層を設け、さらに前記第2の熱硬化性樹脂組成物からなる層上に金属箔を配置する工程と、
前記第2の熱硬化性樹脂組成物からなる層および金属箔を、加熱・加圧して表面に金属箔を有する第2の絶縁層を形成する工程と、
を含む請求項7または請求項8に記載の多層印刷配線板の製造方法。
【請求項10】
前記第2の絶縁層を設ける工程は、前記スルーホールおよび回路層が形成された回路基板の少なくとも一方の面上に、前記第2の熱硬化性樹脂組成物を用いて得られる樹脂付金属箔を樹脂面が前記回路基板と接触するように配置する工程と、
前記樹脂付金属箔を、加熱・加圧して表面に金属箔を有する第2の絶縁層を形成する工程と、
を含む請求項7または請求項8に記載の多層印刷配線板の製造方法。
【請求項11】
前記第1の熱硬化性樹脂組成物および第2の熱硬化性樹脂組成物は、同一の樹脂組成である、請求項7〜請求項10のいずれか1項に記載の多層印刷配線板の製造方法。
【請求項12】
請求項8に記載の多層印刷配線板の製造方法に用いられるプリプレグ。
【請求項13】
請求項10に記載の多層印刷配線板の製造方法に用いられる樹脂付金属箔。
【請求項14】
請求項9に記載の多層印刷配線板の製造方法において、第2の熱硬化性樹脂組成物からなる層を形成することに用いられる樹脂フィルム。
【請求項15】
請求項7に記載の多層印刷配線板の製造方法に用いられる金属箔張積層板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−54464(P2012−54464A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−196910(P2010−196910)
【出願日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(000004455)日立化成工業株式会社 (4,649)
【Fターム(参考)】