説明

多層電子部品の特性調整方法及び特性調整装置

【課題】 集合基板上の複数の多層電子部品の特性を効率よく調整することが可能な多層電子部品の特性調整方法及び多層電子部品の特性調整装置を提供する。
【解決手段】 本発明による多層電子部品の測定方法は、多層電子部品の特性を測定する測定工程S21と、測定工程S21で得られた測定結果に基づき、必要なトリミング量を算出する算出工程S22と、算出工程S22で得られたトリミング量に従って、多層電子部品内に設けられたトリミングパターンをトリミングするトリミング工程S23とを備える。これにより、既に測定工程S21が完了した多層電子部品に対するトリミング工程S23と他の多層電子部品に対する測定工程S21とを並行して行うことが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層電子部品の特性調整方法及び特性調整装置に関し、特に、集合基板上の複数の多層電子部品の特性を効率よく調整することが可能な特性調整方法及び特性調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多層電子部品の中には、電圧制御発振器(VCO)のように、集合基板を作製した後、トリミングによりインダクタンスやキャパシタンスを変化させ、これにより特性を調整する必要のあるものが存在する(特許文献1〜3参照)。トリミングは、通常、対象となる多層電子部品の特性をリアルタイムに測定しながらトリミングパターンにレーザビームを照射し、その一部を切断することによって行われる。トリミングパターンは、多層電子部品の表面に形成されている場合と、多層電子部品の内部に形成されている場合があり、前者の場合には、画像認識によってトリミングパターンの位置を特定し、後者の場合には認識用マークを参照することによってトリミングパターンの位置を特定することが一般的である。
【特許文献1】特開平11−127031号公報
【特許文献2】特開平10−93342号公報
【特許文献3】特開平11−214925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、いずれの場合も、対象となる多層電子部品の特性をリアルタイムに測定しながらレーザトリミングを行っていることから、集合基板上のすべての多層電子部品に対してこのような工程を個別に行うには、多くの時間がかかるという問題があった。
【0004】
しかも、認識用マークを参照することによってトリミングパターンの位置を特定する方法では、認識用マークとトリミングパターンとが互いに異なる層に形成されている場合、層間におけるパターンずれによりトリミング位置の特定が不正確となるおそれもあった。このような場合、レーザビームにトリミングパターンが正しく照射されないケースが考えられ、トリミング位置の再調整などによりさらに多くの時間がかかるという問題があった。
【0005】
したがって、本発明の目的は、集合基板上の複数の多層電子部品の特性を効率よく調整することが可能な多層電子部品の特性調整方法及び多層電子部品の特性調整装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による多層電子部品の特性調整方法は、多層電子部品の特性を測定する測定工程と、前記測定工程で得られた測定結果に基づき、必要なトリミング量を算出する算出工程と、前記算出工程で得られた前記トリミング量に従って、前記多層電子部品内に設けられたトリミングパターンをトリミングするトリミング工程とを備えることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、特性をリアルタイムに測定しながらトリミングを行うのではなく、別個の多層電子部品に対して測定工程とトリミング工程を並行して行うことができることから、集合基板上の複数の多層電子部品の特性を効率よく調整することが可能となる。測定工程とトリミング工程を並行して行う方法としては、測定工程とトリミング工程を多層電子部品単位で並行して行う方法と、集合基板単位で並行して行う方法とを挙げることができる。いずれの場合も、複数の多層電子部品に対して測定工程を順次行った後、複数の多層電子部品に対してトリミング工程を順次行うことにより、複数の多層電子部品に対する特性調整作業を効率よく進めることが可能となる。
【0008】
したがって、本発明によれば、電圧制御発振器に代表されるトリミングが必要な多層電子部品の特性の調整を効率よく行うことが可能となる。トリミングパターンとしては、トリミングによりインダクタンス又はキャパシタンスを変化させることが可能なパターンを挙げることができる。
【0009】
本発明において、前記トリミング工程におけるトリミング位置の特定は、前記トリミングパターンとの相対的な位置関係を示す認識用マークを用いて行うことが好ましく、認識用マークは、トリミングパターンと同一平面上に設けられていることが好ましい。これによれば、認識用マークとトリミングパターンとの相対的な位置関係がほぼ固定的であることから、トリミング前に多層電子部品の特性を測定すれば、認識用マークを基準としてどの程度トリミングを行えば所望の特性が得られるか、予測することができる。この場合には、特性を測定しながらトリミングを行う必要がなく、計算値で求められた量のトリミングを行えば、所望の特性を得ることが可能となる。
【0010】
トリミングパターン及び認識用マークは、いずれも前記多層電子部品を構成する複数の絶縁層のうち所定の絶縁層上に形成されており、前記所定の絶縁層は、両面が他の絶縁層に覆われた内部絶縁層であることが好ましい。これによれば、トリミングパターンが多層電子部品の部品搭載面を占有することがないので、多層電子部品の平面サイズを小型化することが可能となる。
【0011】
前記複数の絶縁層のうち前記認識用マークを覆う絶縁層は、少なくとも前記認識用マークに対応する領域が露出していることが好ましい。これによれば、絶縁層を介して認識用マークをはっきりと視認することが可能となる。
【0012】
前記トリミング工程では、前記所定の絶縁層から見て前記認識用マークを覆う絶縁層側からレーザビームを照射することによってトリミングを行うことが好ましい。
【0013】
前記認識用マークは、切断により前記多層電子部品を取り出すための切りしろ領域に配置されていることが好ましい。これによれば、認識用マークによる有効エリアの占有が全くないことから、多層電子部品の平面サイズを小型化することが可能となる。
【0014】
本発明による多層電子部品の特性調整装置は、多層電子部品の特性を測定する測定部と、前記測定部で得られた測定結果に基づき、必要なトリミング量を算出する算出部と、前記算出部で得られた前記トリミング量に従って、前記多層電子部品内に設けられたトリミングパターンをトリミングするトリミング部とを備えることを特徴とする。
【0015】
前記算出部は、所望の特性に対する前記多層電子部品の特性の差とトリミング量との関係を示す算出テーブルを参照することにより、必要なトリミング量を算出することが好ましい。これによれば、特性をリアルタイムに測定しながらトリミングを行う必要がなく、計算値で求められた量のトリミングを行うことによって、所望の特性を得ることが可能となる。
【0016】
前記測定部及び前記トリミング部は、前記測定部による測定と前記トリミング部によるトリミングとが別個の多層電子部品に対して並列に実行されるように、それぞれ構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
このように、本発明によれば、別個の多層電子部品に対して測定工程とトリミング工程を並行して行うことができ、集合基板上の複数の多層電子部品の特性を効率よく調整することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施の形態について詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の好ましい実施形態による特性調整方法の対象となる多層電子部品の集合基板の構造を示す略斜視図である。
【0020】
図1に示すように、多層電子部品の集合基板10は、マトリクス状に配置された複数の多層電子部品100と、各多層電子部品100の周囲に存在する切りしろ領域101と、マトリクス状の多層電子部品100を取り囲む枠体102によって構成されている。図1に示す集合基板10は、後述する集合基板作製工程によって作製され、その後、切りしろ領域101に沿って集合基板10を切断することにより個々の多層電子部品100を取り出すことができる。各多層電子部品100は、トリミングによりインダクタンスやキャパシタンスを調整する必要のある多層電子部品であり、特に限定されるものではないが電圧制御発振器(VCO)を好ましく挙げることができる。
【0021】
図2は、一つの多層電子部品100の構造を模式的に示す略断面図である。
【0022】
図2に示すように、多層電子部品100は、複数の絶縁層111〜113と、各絶縁層の表面に設けられた導体層121〜124と、プリント基板(図示せず)への実装面100aである最下層の導体層121を覆うメッキ層131及びレジスト層141と、部品搭載面100bである最上層の導体層124を覆うメッキ層132及びレジスト層142と、部品搭載面100bに搭載されたコンデンサやトランジスタなどのチップ部品150によって構成されている。特に限定されるものではないが、絶縁層111〜113の材料としては、エポキシ樹脂やフェノール樹脂などの絶縁性樹脂を用いることができ、その厚さとしては30μm〜200μm程度に設定すればよい。本実施形態では、絶縁層111〜113の材料として全て透明度の高い材料を使用しているが、少なくとも絶縁層111についてはできるだけ透明度の高い材料を用いることが好ましい。
【0023】
また、導体層121〜124の材料としては銅(Cu)などの金属材料を用いることができ、その厚さとしては10μm〜20μm程度に設定すればよい。尚、特に限定されるものではないが、実装面100aである最下層の導体層121はグランドパターンであり、絶縁層111の大部分を覆っていることが通例である。
【0024】
詳細については後述するが、トリミングパターンは導体層122に形成され、実装面100a側からレーザビームLを照射することによってトリミングが行われる。つまり、本実施形態では、トリミングパターンが部品搭載面100b上(導体層124)ではなく、両面が他の絶縁層111,113に覆われた内部絶縁層112上の内部パターンがトリミングパターンを構成している。この種の多層電子部品では、部品搭載面にトリミングパターンが設けられることが一般的であるが(特許文献1,2参照)、上述の通り、部品搭載面100bには各種チップ部品が搭載されるため、ここにトリミングパターンを設けると多層電子部品の平面サイズが大きくなってしまう。この点を考慮して、多層電子部品100では、トリミングパターンを内部の導体層122に設けている。
【0025】
図3は、図1に示した領域10aを実装面100a側から拡大して示す略平面図である。
【0026】
図3に示すように、集合基板10には、一方向に延在する複数のスルーホール160aと、これと直交する方向に延在する複数のスルーホール160bとが設けられており、図示しないがこれらスルーホール160a,160bの内壁には導体が形成されている。スルーホール160a,160bに沿った領域は、それぞれ切りしろ領域101a,101bであり、切りしろ領域101a,101bに沿って集合基板10を切断すると、スルーホール160a,160bの内壁に形成されている導体の一部が表面に現れて外部電極となる。図3には、切断により一つの多層電子部品100となる領域が破線で示されている。
【0027】
各多層電子部品100の実装面100aは、図3に示すように、その大部分がレジスト層141によって覆われているが、切りしろ領域101aと切りしろ領域101bの交差する領域141aは、レジスト層141に覆われておらず、また図2に示した導体層121やメッキ層131にも覆われていないため、絶縁層111が露出した状態となっている。絶縁層111は光透過性を有することから、本実施形態では、絶縁層111を介して導体層122を視認することができる。導体層122のうち、領域141aに対応する部分には十字形の認識用マーク122aが設けられており、図3に示すように、領域141aを介して十字形の視認用マーク122aを視認することができる。この認識用マーク122aは、同じく導体層122に形成されたトリミングパターンとの相対的な位置関係を示し、これによりトリミングパターンの位置を特定するために用いられる。
【0028】
図4は、導体層122の主要なパターン形状を拡大して示す略平面図である。
【0029】
図4に示すように、導体層122は認識用マーク122a及びトリミングパターン122bを有しており、さらに、スルーホール160a,160bを形成すべき領域には、それぞれ電極パターン122c,122dが設けられている。このように、認識用マーク122aとトリミングパターン122bは同一の導体層(122)によって構成されているため、認識用マーク122aとトリミングパターン122bは同一工程によって同時に形成することができる。導体層122の形成方法については特に限定されないが、サブトラクティブ法、アディティブ法、セミアディティブ法、スクリーン印刷法などを用いることができ、いずれの方法を用いた場合も、これらは同時に形成されることから、両者の相対的な位置関係にずれが生じることはほとんどない。
【0030】
本実施形態では、トリミングパターン122bはトリミングによりインダクタンスを調整可能なパターンを構成しており、トリミングパターン122bを図4に示すA点からB点に向かって所定の長さに切断し、これにより線路長を変化させることによってインダクタンスを変化させることができる。
【0031】
以上が本実施形態による特性調整方法の対象となる多層電子部品の集合基板10の構造である。次に、多層電子部品の製造方法について説明する。
【0032】
図5は、多層電子部品100の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【0033】
まず、集合基板作製工程により、上述した多層電子部品の集合基板10を作製する(ステップS10)。集合基板作製工程は、絶縁層111〜113の表面に導体層121〜124を形成し、これを積層する積層工程(ステップS11)と、最下層の導体層121を覆うメッキ層131及びレジスト層141を形成するとともに、最上層の導体層124を覆うメッキ層132及びレジスト層142を形成するメッキ・レジスト形成工程(ステップS12)と、スルーホール160a,160bを形成するスルーホール形成工程(ステップS13)と、スルーホール160a,160bの内壁に導体を形成するスルーホール電極形成工程(ステップS14)と、部品搭載面100bにチップ部品150を搭載するチップ部品搭載工程(ステップS15)とを含んでいる。
【0034】
特に限定されるものではないが、積層工程(ステップS11)は、コア基板となる絶縁層112の表面に導体層122,123を形成した後、未硬化又は半硬化の樹脂からなるプリプレグによってこれを挟み込み、熱プレスによってプリプレグを硬化させることにより絶縁層111,113を形成する工程を含むことが好ましい。この場合、コア基板である絶縁層112の表面には、図4に示したパターンを形成する工程が含まれることになるが、上述の通り、認識用マーク122a及びトリミングパターン122bは同一工程で同時に形成することができるため、両者の相対的な位置関係にずれが生じることはほとんどない。
【0035】
上述の通り、絶縁層111の表面に形成する導体層121は、通常グランドパターンである。このため、導体層121は絶縁層111の大部分を覆うように形成されることから、トリミングパターン122bに対応する領域の一部又は全部が導体層121によって覆われることになる。この場合、トリミングパターン122bの一部又は全部は実装面100a側から視認できなくなるが、導体層121は、少なくとも認識用マーク122aに対応する領域を避けて形成され、これにより、認識用マーク122aについては実装面100a側から視認可能とされる。メッキ・レジスト形成工程(ステップS12)においても、絶縁層111の表面のうち、認識用マーク122aに対応する領域が露出するよう、レジスト層141が形成される。
【0036】
このようにして多層電子部品の集合基板10の作製が完了すると、次に、特性調整工程によって各多層電子部品100の特性調整を行う(ステップS20)。特性調整工程は、多層電子部品100の特性を測定する測定工程(ステップS21)と、測定工程で得られた測定結果に基づき、必要なトリミング量を算出する算出工程(ステップS22)と、算出工程で得られたトリミング量に従って、トリミングパターン122bをトリミングするトリミング工程(ステップS23)とを含んでいる。
【0037】
まず、測定工程(ステップS21)では、図3に示したスルーホール160a,160b内の導体にプローブを当てて、実際に多層電子部品100を動作させた状態で、多層電子部品100の特性(多層電子部品100がVCOであれば、制御電圧と発振周波数との関係など)を測定する。次いで、算出工程(ステップS22)では、所望の特性に対する多層電子部品の特性の差とトリミング量との関係を示す算出テーブルを参照することにより、測定工程で得られた測定結果から必要なトリミング量を算出する。トリミング量と特性の変化量との関係は、あらかじめ測定し、数式化又はテーブル化しておけば、トリミング前に多層電子部品100の特性を測定するだけでどの程度トリミングを行うべきか簡単に算出することが可能となる。
【0038】
そして、トリミング工程(ステップS23)では、図2に示したように、実装面100a側からレーザビームLを照射することによりトリミングパターン122bを切断する。上述の通り、導体層122は基板内部の層であり、レーザビームの照射方向には他の導体層111や、メッキ層131及びレジスト層141が存在するため、目視や画像認識によりトリミングパターン122bを直接認識することはできないが、導体層122には、トリミングパターン122bとの相対的な位置関係を示す認識用マーク122aが含まれており、これが実装面100a側から認識可能であることから、この認識用マーク122aを基準としてトリミング位置を特定することができる。
【0039】
つまり、図6に示すように、実際には実装面100a側からトリミングパターン122bを見ることはできないが(図6では、見えないパターンを破線で表示)、認識用マーク122aとトリミングパターン122bとの相対的な位置関係をあらかじめ把握しておけば、領域141aを介して見える認識用マーク122aを目視又は画像認識によって参照することにより、トリミングすべき位置を特定することができる。そして、従来においては、トリミングパターンの位置を正確に特定することができなかったため、トリミング量に対して多層電子部品の特性の変化量が一定ではなく、多層電子部品の特性を測定しながらトリミングを行わなければならなかったが、本発明においては、認識用マーク122aを参照することでトリミングパターン122bの位置を正確に特定することができることから、多層電子部品の特性の測定工程(ステップS21)及び算出工程(ステップS22)と、トリミング工程(ステップS23)を別々に行うことが可能となる。その方法としては、測定工程及び算出工程とトリミング工程とを多層電子部品単位で並行して行う第1の方法と、集合基板単位で並行して行う第2の方法とがある。
【0040】
図7は、第1の特性調整方法を説明するための模式図であり、集合基板上の多層電子部品の配列を示す図である。
【0041】
上述した第1の特性調整方法では、図7に示すように、まず集合基板上の多層電子部品P11の特性を測定する。測定工程では、上述したように、スルーホール内の導体にプローブを当てて、実際に多層電子部品を動作させた状態で、多層電子部品の特性を測定する。次いで、多層電子部品P11の測定が完了すると、その隣の多層電子部品P12に対する測定工程を行う。そして、このような測定工程を、集合基板上の個々の多層電子部品に対して順次行って、すべての多層電子部品の特性の測定を完了させる。
【0042】
一方、多層電子部品P12に対する測定工程と並行して、既に測定が完了した多層電子部品P11に対するトリミング工程を行う。トリミング工程では、図6に示したように、A点を始点としてレーザビームLを照射し、照射位置を徐々にずらしていき、所望の特性が得られる地点であるB点でレーザビームの照射を終了する。ここで、トリミング量(A点からB点までの距離)の決定は、トリミング工程に先立って行われる算出工程において、トリミング量と特性の変化量との関係を示すテーブルを参照することにより行う。そして、このようなトリミング工程を、集合基板上のすべての多層電子部品に対して測定工程と並行して順次行い、各多層電子部品のトリミングを完了させる。
【0043】
このように、第1の特性調整方法では、既に測定が完了した多層電子部品に対するトリミング工程と他の多層電子部品に対する測定工程とを多層電子部品単位で並行して行っていることから、複数の多層電子部品に対する特性調整作業を効率よく進めることができる。
【0044】
図8は、第2の特性調整方法を説明するための模式図であり、複数の集合基板を示す図である。
【0045】
第2の特性調整方法では、図8に示すように、まず集合基板S1上の多層電子部品P11乃至Pmnの特性を順次測定する。次いで、多層電子部品P11の測定が完了すると、新たな集合基板S2上の多層電子部品に対する測定工程を行う。そして、このような測定工程を、複数の集合基板S1乃至Sx上の多層電子部品に対して順次行い、集合基板上のすべての多層電子部品の特性の測定を完了させる。
【0046】
一方、集合基板S2上の多層電子部品に対する測定工程と並行して、既に測定が完了した集合基板S1上の多層電子部品P11乃至Pmnに対するトリミング工程を行う。そして、このようなトリミング工程を、複数の集合基板S1乃至Sxに対して測定工程と並行して順次行い、集合基板上のすべての多層電子部品のトリミングを完了させる。
【0047】
このように、第2の特性調整方法では、既に測定が完了した多層電子部品に対するトリミング工程と他の多層電子部品に対する測定工程とを集合基板単位で並行して行っていることから、やはり、複数の多層電子部品に対する特性調整作業を効率よく進めることができる。
【0048】
そして、このような特性調整工程を個々の多層電子部品100に対して行った後、切断工程により切りしろ領域101a,101bに沿って集合基板10を切断すれば(ステップS30)、特性調整の完了した多層電子部品100を取り出すことが可能となる。
【0049】
図9は、上述した第1及び第2の特性調整方法を実施することが可能な装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【0050】
図9に示すように、この特性調整装置200は、多層電子部品の特性を測定する測定部201と、測定部201で得られた測定結果に基づき、必要なトリミング量を算出する算出部202と、算出部202で得られた前記トリミング量に従って、前記多層電子部品内に設けられたトリミングパターンをトリミングするトリミング部203とを備えて構成されている。
【0051】
測定部201は、プローブや測定回路などを含み、多層電子部品の特性を測定する。算出部202は、所望の特性に対する前記多層電子部品の特性の差とトリミング量との関係を示す算出テーブルを有しており、この算出テーブルを参照することにより、測定部201で得られた測定結果から必要なトリミング量を算出する。トリミング部203は、レーザー装置、認識用マークを識別するための画像処理装置などを含み、算出部202で得られたトリミング量に従って、前記多層電子部品内に設けられたトリミングパターンをトリミングする。
【0052】
ここで、測定部201及びトリミング部203は、測定部201による測定とトリミング部203によるトリミングが別個の多層電子部品に対して並列に実行されるように、それぞれ独立して構成されている。例えば上述した第1の特性調整方法を実施するのであれば、測定部201及びトリミング部203は、集合基板上のある多層電子部品に対して測定工程を行い、同じ集合基板上の他の多層電子部品に対してトリミング工程を行うようにそれぞれ構成される。また、第2の特性調整方法を実施するのであれば、測定部201がある集合基板上の多層電子部品に対して測定工程を行い、トリミング部203が別の集合基板上の多層電子部品に対してトリミング工程を行うようにそれぞれ構成される。このような構成により、トリミング工程と他の多層電子部品に対する測定工程とを並行して行うことができ、複数の多層電子部品に対する特性調整作業を効率よく進めることができる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態では、既に測定が完了した多層電子部品に対するトリミング工程と他の多層電子部品に対する測定工程とを並行して行っていることから、複数の多層電子部品に対する特性調整作業を効率よく進めることが可能となる。
【0054】
また、本実施形態では、トリミングパターン122bとの相対的な位置関係を示す認識用マーク122aが集合基板10に設けられていることから、画像認識によりトリミング位置の特定を行う場合であっても、非常に簡単な処理でトリミング位置の特定を行うことが可能となる。しかも、認識用マーク122aがトリミングパターン122bと同じ層に形成された導体層であることから、これらを同一工程によって同時に形成することができる。このため、両者間には原理的にパターンずれが生じず、極めて正確にトリミング位置を特定することが可能となる。
【0055】
また、本実施形態では、トリミングパターン122bを内部の導体層122に設けていることから、トリミングパターンが部品搭載面100bを占有することがなく、このため、多層電子部品100の平面サイズを小型化することが可能となる。しかも、本実施形態では認識用マーク122aを切りしろ領域101a,101bに沿って配置していることから、認識用マーク122aによって集合基板上の有効エリアが占有されることは全くない。
【0056】
また、トリミングパターンを実装面100aに形成した場合には、トリミング時にトリミングパターンを構成する導体が周囲に飛散し、ショート不良を引き起こす可能性があるが、本実施形態のように、トリミングパターン122bを内部の導体層122に設けていることから、このような問題が生じることもない。
【0057】
さらに、本実施形態のように、トリミングパターン122bを内部の導体層122に設ければ、トリミングパターン122bの両面が絶縁層111と絶縁層112によって覆われることから、トリミングパターンを実装面100aに形成した場合と比べ、より安定した電気特性を得ることも可能となる。
【0058】
このように、本実施形態では、トリミング位置を簡単且つ正確に特定することが可能となるばかりでなく、完成品である多層電子部品100を小型化することも可能となる。
【0059】
本発明は、以上説明した実施の形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。
【0060】
例えば、上記実施形態では、認識用マーク122aとして十字形のパターンを用いたが、トリミングパターン122bとの相対的な位置関係を表示可能である限り、これに限定されるものではない。したがって、図10(a)に示すようにL字型のパターンであっても構わないし、図10(b)に示すように円形のパターンであっても構わないし、図10(c)に示すように四角形のパターンであっても構わないし、図10(d)に示すように外径が四角形であり、内部が十字形にくり抜かれたパターンであっても構わない。
【0061】
また、上記実施形態では、実装面100a側からレーザビームLを照射することによってトリミングを行っているが、図11に示すように、部品搭載面100b側からレーザビームLを照射することによってトリミングを行っても構わない。図11に示す例においてトリミングパターンを内蔵させるためには、部品搭載面100bからみて2層目の導体層123にトリミングパターン及び認識マークを設ければよい。また、認識マークの視認方向とレーザビームLの照射方向とを一致させることは必須でなく、例えば、実装面100a側から認識マークを視認し、部品搭載面100b側からレーザビームを照射しても構わない。
【0062】
また、上記実施形態では、トリミングパターン122bがインダクタンスを変化させることが可能なパターンであるが、多層電子部品の特性を調整可能なパターンである限り、例えばキャパシタンスを変化させることが可能なパターンなどであっても構わない。
【0063】
また、上記実施形態では、領域141aは導体層121、メッキ層131及びレジスト層141に覆われておらず、絶縁層111が露出した状態となっているが、必ずしも絶縁層111が領域141aにおいて露出している必要はなく、認識用マーク122aが視認可能である限り、領域141aが何らかの層で覆われていても構わない。
【0064】
さらに、上記実施形態では、認識用マーク122aを切りしろ領域101a,101bの交点部分に配置しているが、トリミングパターンと同一平面に形成されている限り、認識用マークの位置については特に限定されない。但し、切りしろ領域101a及び切りしろ領域101bの少なくとも一方に沿って認識用マークを配置すれば、認識用マークによる有効エリアの占有を防ぐことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の好ましい実施形態による多層電子部品の集合基板10の構造を示す略斜視図である。
【図2】多層電子部品100の構造を模式的に示す略断面図である。
【図3】図1に示した領域10aを実装面100a側から拡大して示す略平面図である。
【図4】導体層122の主要なパターン形状を拡大して示す略平面図である。
【図5】本発明の好ましい実施形態による多層電子部品100の製造方法を説明するためのフローチャートである。
【図6】トリミングすべき位置の特定方法を説明するための図である。
【図7】第1の特性調整方法を説明するための模式図であり、集合基板上の多層電子部品の配列を示す図である。
【図8】第2の特性調整方法を説明するための模式図であり、複数の集合基板を示す図である。
【図9】図9は、上述した第1及び第2の特性調整方法を実施することが可能な装置の構成を概略的に示すブロック図である。
【図10】認識用マーク122aとして用いることができる種々のパターン形状を示す略平面図であり、(a)はL字型のパターン、(b)は円形のパターン、(c)は四角形のパターン、(d)は外径が四角形であり内部が十字形にくり抜かれたパターンをそれぞれ示している。
【図11】部品搭載面100b側からレーザビームLを照射することによってトリミングを行う例を説明するための図である。
【符号の説明】
【0066】
10 集合基板
100 多層電子部品
100a 実装面
100b 部品搭載面
101a,101b 切りしろ領域
102 枠体
111〜113 絶縁層
121〜124 導体層
122a 認識用マーク
122b トリミングパターン
122c,122d 電極パターン
131,132 メッキ層
141,142 レジスト層
141a 認識用マークに対応する領域
150 チップ部品
160a,160b スルーホール
200 特性測定装置
201 測定部
202 算出部
203 トリミング部
L レーザビーム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層電子部品の特性を測定する測定工程と、
前記測定工程で得られた測定結果に基づき、必要なトリミング量を算出する算出工程と、
前記算出工程で得られた前記トリミング量に従って、前記多層電子部品内に設けられたトリミングパターンをトリミングするトリミング工程とを備えることを特徴とする多層電子部品の特性調整方法。
【請求項2】
前記トリミング工程におけるトリミング位置の特定は、前記トリミングパターンとの相対的な位置関係を示す認識用マークを用いて行うことを特徴とする請求項1に記載の多層電子部品の特性調整方法。
【請求項3】
前記認識用マークは、前記トリミングパターンと同一平面上に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の多層電子部品の特性調整方法。
【請求項4】
前記トリミングパターン及び前記認識用マークは、いずれも前記多層電子部品を構成する複数の絶縁層のうち所定の絶縁層上に形成されており、前記所定の絶縁層は、両面が他の絶縁層に覆われた内部絶縁層であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の多層電子部品の特性調整方法。
【請求項5】
前記複数の絶縁層のうち前記認識用マークを覆う絶縁層は、少なくとも前記認識用マークに対応する領域が露出していることを特徴とする請求項4に記載の多層電子部品の特性調整方法。
【請求項6】
前記トリミング工程では、前記所定の絶縁層から見て前記認識用マークを覆う絶縁層側からレーザビームを照射することによってトリミングを行うことを特徴とする請求項5に記載の多層電子部品の特性調整方法。
【請求項7】
前記認識用マークは、切断により前記多層電子部品を取り出すための切りしろ領域に配置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の多層電子部品の特性調整方法。
【請求項8】
既に測定工程が完了した多層電子部品に対するトリミング工程と他の多層電子部品に対する測定工程とを並行して行うことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の多層電子部品の特性調整方法。
【請求項9】
複数の多層電子部品に対して前記測定工程を順次行った後、前記複数の多層電子部品に対して前記トリミング工程を順次行うことを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の多層電子部品の特性調整方法。
【請求項10】
前記多層電子部品は、電圧制御発振器であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の多層電子部品の特性調整方法。
【請求項11】
前記トリミングパターンは、前記トリミングによりインダクタンス又はキャパシタンスを変化させることが可能なパターンであることを特徴とする請求項1乃至10のいずれか1項に記載の多層電子部品の特性調整方法。
【請求項12】
多層電子部品の特性を測定する測定部と、
前記測定部で得られた測定結果に基づき、必要なトリミング量を算出する算出部と、
前記算出部で得られた前記トリミング量に従って、前記多層電子部品内に設けられたトリミングパターンをトリミングするトリミング部とを備えることを特徴とする多層電子部品の特性調整装置。
【請求項13】
前記算出部は、所望の特性に対する前記多層電子部品の特性の差とトリミング量との関係を示す算出テーブルを参照することにより、必要なトリミング量を算出することを特徴とする請求項12に記載の多層電子部品の特性調整装置。
【請求項14】
前記測定部による測定と前記トリミング部によるトリミングとが別個の多層電子部品に対して並列に実行されるように、前記測定部及び前記トリミング部がそれぞれ構成されていることを特徴とする請求項12又は13に記載の多層電子部品の特性調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2006−66694(P2006−66694A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−248238(P2004−248238)
【出願日】平成16年8月27日(2004.8.27)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】