説明

多数個取りセラミック基板およびセラミック基板

【課題】 絶縁層が光の反射層となることができ、個片のセラミック基板への分割も容易な多数個取りセラミック基板および個片のセラミック基板を提供することにある。
【解決手段】 複数の基板領域2を有する母基板1と、母基板1の上面に、基板領域2の境界に沿って設けられた分割溝3とを備えており、母基板1が、第1のセラミック焼結体からなる絶縁層1aと、第1のセラミック焼結体よりも結晶化温度が低い第2のセラミック焼結体からなる拘束層1bとが交互に、最上層が絶縁層1aとなるように積層されて形成されているとともに、母基板1の上面に分割溝3に沿って、第2のセラミック焼結体からなる帯状拘束層4が付着している多数個取りセラミック基板9である。帯状拘束層4により、分割溝3が形成された部分における絶縁層1aの収縮を抑制して分割溝3の変形を抑制できる。そのため、分割が容易な多数個取りセラミック基板9を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光ダイオードや半導体レーザ等の発光素子が搭載されるセラミック基板、およびセラミック基板となる複数の基板領域が母基板に配列されてなる多数個取りセラミック基板に関する。
【背景技術】
【0002】
LED(発光ダイオード)やLD(半導体レーザ)等の発光素子は、一般に、発光素子搭載用の基板に搭載され、蛍光体の成分を含有する透明な樹脂等で封止されて用いられている。基板への搭載および封止によって、機械的な衝撃や化学的な作用から発光素子が保護され、また、プリント回路基板等の外部基板への発光素子の実装が容易になる。
【0003】
発光素子搭載用の基板は、例えばセラミック焼結体からなる平板状の絶縁基板の上面に発光素子の搭載部が設けられ、この搭載部およびその周辺に光の反射層が配置されて形成されている。光の反射層としては、従来、銀または銀を主成分とする合金等の金属材料からなる金属層が多用されている。また、絶縁基板の上面等には、発光素子と電気的に接続される導体層が配置される。
【0004】
このような発光素子搭載用の基板は、多数個取りセラミック基板が個片に分割されて作製されている。多数個取りセラミック基板は、個片のセラミック基板となる基板領域が母基板に設けられ、この母基板の上面に、それぞれの基板領域の境界に沿って分割溝が設けられて形成されている。分割溝は、例えば縦断面における底部がV字状等の鋭角状であり、この底部に母基板を分割するための応力が集中して母基板が厚み方向に破断し、個片のセラミック基板への分割が行なわれる。
【0005】
母基板は、一般に、セラミック焼結体からなる複数の絶縁層が積層されて形成されている。また、母基板の焼成時の収縮を抑制して平面視における各基板領域の寸法精度を高めるために、絶縁層の結晶化温度と異なる結晶化温度を有する拘束層が、絶縁層と交互に積層される場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−335518号公報
【特許文献2】特開2006−100688号公報
【特許文献3】特開2006−303366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
近年、反射層における金属材料の酸化や硫化等に起因した反射率の低下を抑制するために、絶縁基板の上面自体の光の反射率を高くして、この上面を反射層として利用することが考えられる。この場合、光の反射率が高い材料によって絶縁層が形成され、絶縁基板の最上層が絶縁層となる。
【0008】
しかしながら、この場合、最上層の絶縁層に対する焼成時の拘束が不十分となるため、最上層の絶縁層の特に上面側が、分割溝で区切られた範囲毎に、つまり基板領域毎に平面方向(絶縁層の主面に平行な方向)に焼成収縮しやすくなる。そのため、分割溝が幅方向に広がるように変形し、分割溝の底部に対する応力の集中が難しくなって、母基板の分割が難しくなる可能性がある。
【0009】
本発明は、このような従来の問題に鑑みて完成されたものであり、その目的は、絶縁層と拘束層とが交互に積層されて母基板が形成されて母基板が形成された多数個取りセラミック基板であって、個片のセラミック基板への分割が容易な多数個取りセラミック基板、およびそのような多数個取りセラミック基板が個片に分割されてなる、長期信頼性の高い発光装置を作製することが可能なセラミック基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一つの態様の多数個取りセラミック基板は、母基板と、該母基板に設けられた複数の基板領域と、前記母基板の上面に、前記セラミック基板領域の境界に沿って設けられた複数の分割溝とを備える多数個取りセラミック基板であって、前記母基板が、第1のセラミック焼結体からなる絶縁層と、前記第1のセラミック焼結体よりも結晶化温度が低い第2のセラミック焼結体からなる拘束層とが交互に、最上層が前記絶縁層となるように積層されて形成されており、前記母基板の上面に前記分割溝に沿って、前記第2のセラミック焼結体からなる帯状拘束層が付着していることを特徴とする。
【0011】
本発明の一つの態様のセラミック基板は、第1のセラミック焼結体からなる絶縁層と、前記第1のセラミック焼結体よりも結晶化温度が低い第2のセラミック焼結体からなる拘束層とが交互に、最上層が前記絶縁層となるように積層されて形成された絶縁基板と、該絶縁基板の上面の中央部に設けられた発光素子の搭載部と、前記絶縁基板の前記上面の外周部に付着された、前記第2のセラミック焼結体からなる帯状拘束層とを備えており、
前記帯状拘束層の表面粗さが、前記搭載部における前記絶縁層の表面粗さよりも大きいことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一つの態様の多数個取りセラミック基板によれば、上記のように絶縁層と拘束層とが交互に積層されて母基板が形成されていることから、母基板の焼成時の平面方向の収縮が抑制される。そのため、母基板の平面視における寸法精度が高い。
【0013】
また、母基板の上面に分割溝に沿って帯状拘束層が付着していることから、分割溝が設けられた部分における母基板の上面の平面方向の収縮を抑制することができる。そのため、分割溝が外側に開くように変形することが抑制される。
【0014】
したがって、絶縁層と拘束層とが交互に積層されて母基板が形成された多数個取りセラミック基板であって、個片のセラミック基板への分割が容易な多数個取りセラミック基板を提供することができる。
【0015】
また、本発明の一つの態様のセラミック基板によれば、上記多数個取りセラミック基板の場合と同様に、絶縁基板の平面視における寸法精度が高い。
【0016】
また、絶縁基板の上面の外周部に帯状拘束層が付着されており、この帯状拘束層の表面粗さが比較的大きい(粗い)ため、例えば発光素子を封止する樹脂の絶縁基板に対する接合性を向上させる上で有利である。また、帯状拘束層は絶縁基板の上面の外周部に付着しているため、絶縁基板の上面の中央部における光の反射率が高い。そのため、絶縁層自体が光の反射層となり得る、発光素子の搭載に適したセラミック基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】(a)は本発明の実施形態の多数個取りセラミック基板を示す平面図であり、(b)は(a)のA−A線における断面図である。
【図2】図1に示す多数個取りセラミック基板の要部を拡大して示す断面図である。
【図3】本発明の実施形態のセラミック基板を示す斜視図である。
【図4】図1に示す多数個取りセラミック基板の一つの変形例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態における多数個取りセラミック基板およびセラミック基板ついて、添付の図面を参照して説明する。なお、以下の説明において、発光素子は、LED(発光ダイオード)やLD(半導体レーザ)等である。また、光(可視光)の反射率を単に反射率という場合がある。
【0019】
図1(a)は本発明の実施形態における多数個取りセラミック基板を示す平面図であり、図1(b)は図1(a)のA−A線における断面図であり、図2は、図1に示す多数個取りセラミック基板の要部を拡大して示す断面図であり、図3は本発明の実施形態におけるセラミック基板を示す斜視図である。
【0020】
図1および図2に示すように、複数の絶縁層1aと拘束層1bとが交互に積層されて母基板1が形成されている。母基板1には個片のセラミック基板10となる複数の基板領域2が配列されている。母基板1の上面には、基板領域2の境界に沿って分割溝3が形成されている。また、母基板1の上面に、分割溝3に沿って帯状拘束層4が付着している。
【0021】
母基板1は、例えば長方形等の四角形板状であり、それぞれが個片のセラミック基板10となる基板領域2が配列されている。図1に示す例では、正方形状の複数の基板領域2が母基板1に縦横の並びに配列されている。
【0022】
母基板1は、第1のセラミック焼結体からなる絶縁層1aと、第1のセラミック焼結体よりも結晶化温度が低い第2のセラミック焼結体からなる拘束層1bとが交互に積層されて形成されている。
【0023】
母基板1は、例えば絶縁層1aとなるセラミックグリーンシートと、絶縁層1aとなるセラミックグリーンシートとが交互に積層され、この積層体が焼成されて作製されている。これにより、母基板1は、焼成時の平面方向の収縮が抑制されて平面視における寸法精度が高められている。
【0024】
すなわち、母基板1となるセラミックグリーンシートの積層体の焼成時の昇温過程において、まず結晶化温度が低い拘束層1bが結晶化するが、絶縁層1aは未だ結晶化せず、収縮しない。そのため、結晶化にともなう拘束層1bの平面方向の収縮は抑制される。次に、拘束層1bが結晶化した後に絶縁層1aが結晶化するが、この段階では拘束層1bは既に結晶化しているため収縮しない。そのため、絶縁層1aの結晶化にともなう平面方向の収縮も抑制される。したがって、母基板1について、焼成時の平面方向の収縮が抑制されるため、平面視における母基板1の寸法精度が高い。
【0025】
絶縁層1aは、例えば、ホウケイ酸系ガラスやリチウムケイ酸系ガラス等のガラス成分と酸化アルミニウムや酸化カルシウム等のセラミック成分とを主成分とするガラスセラミック焼結体(第1のセラミック焼結体)によって形成されている。
【0026】
絶縁層1aとなるセラミックグリーンシートは、例えば上記ガラス成分の粉末とセラミック成分の粉末とを主成分とする原料粉末を適当な有機溶剤およびバインダとともに混練してスラリーを作製、このスラリーをドクターブレード法やリップコータ法等の成形方法でシート状に成形することによって作製することができる。
【0027】
拘束層1bは、例えば、ホウケイ酸系ガラスやリチウムケイ酸系ガラス等のガラス成分と酸化アルミニウムや酸化カルシウム等のセラミック成分とを主成分とするガラスセラミック焼結体(第2のセラミック焼結体)によって形成されている。この拘束層1bを形成する第2のセラミック焼結体について、ガラス成分を調整することによって、その結晶化温度を、絶縁層1aを形成する第1のセラミック焼結体よりも低くすることができる。
【0028】
拘束層1bとなるセラミックグリーンシートは、上記絶縁層1aとなるセラミックグリーンシートと同様に、ガラス成分およびセラミック成分を含む原料粉末を有機バインダ等とともにスラリーとし、これをドクターブレード法等の方法でシート状に成形することによって作製することができる。
【0029】
拘束層1bを形成する第2のセラミック焼結体の結晶化温度を、絶縁層1aを形成する第1のセラミック焼結体の結晶化温度よりも低くするための方法としては、例えば、それぞれのガラス材料を変えることにより、ガラスの軟化点を変える方法が挙げられる。その他の方法として、ガラス成分とセラミック成分の量比を変えることや、酸化チタン(TiO),酸化セリウム(CeO)または酸化スズ(SnO)などの核形成材を添加する方法を挙げることができる。第1のガラスセラミック焼結体に含まれるガラス材料の軟化点は、第2のセラミック焼結体に含まれるガラス材料の軟化点に対して約80℃またはそれ以上低いものとすればよい。
【0030】
一例を挙げれば、第1のセラミック焼結体が、下記組成のガラス材料30〜100質量%と
、下記組成のセラミック材料0〜70質量%とから構成され、第2のセラミック焼結体が下記組成のガラス材料40〜90質量%と、下記組成のセラミック材料10〜60質量%とから構成されたものとすればよい。
【0031】
第1のセラミック焼結体のガラス材料は、SiOを20〜60質量%と、Alを10〜25質量%と、MgOを8〜35質量%と、BaOを10〜20質量%とを含み、さらにB,Y,CaO,SrO,NaO,SnO,P,ZrOおよびLiOから選ばれる少なくとも1種を0〜20質量%を含む。
【0032】
第1のセラミック焼結体のセラミック材料は、Al,SiO,MgTiO,CaZrO,CaTiO,BaTi,SrTiO,ZrO,TiO,AlN,Siから選ばれる少なくとも1種を含む。
【0033】
第2のセラミック焼結体のガラス材料は、SiOを10〜30質量%と、Alを1〜9質量%と、MgOを5〜30質量%と、BaOを21〜35質量%と、Bを10〜30質量%とを含み、さらにY,CaO,SrO,ZnO,TiO,NaO,SnO,P,ZrOおよびLiOから選ばれる少なくとも1種を0〜20質量%含む。
【0034】
第2のセラミック焼結体のセラミック材料は、Al,SiO,MgTiO,CaZrO,CaTiO,BaTi,SrTiO,ZrO,TiO,AlNおよびSiから選ばれる少なくとも1種を含む。
【0035】
上記の、第1のセラミック焼結体に含まれるガラス材料は、軟化点が780〜810℃、結晶化点が880〜900℃程度あり、第2のセラミック焼結体に含まれるガラス材料は、軟化点が630〜650℃、結晶化点が760〜800℃程度である。また、第1のセラミック焼結体の焼結温度は850〜950℃程度であり、第2のセラミック焼結体の焼結温度は750〜850℃程度である。
【0036】
なお、上記各組成の第1のセラミック焼結体および第2のセラミック焼結体は、焼結温度がガラスの軟化点および結晶化点に応じて変化する。ガラスの軟化点および結晶化点は組成に応じて異なるので、所定の軟化点および結晶化点の組成を持つガラスを適宜選択すればよい。
【0037】
基板領域2または個片のセラミック基板10が発光素子12の搭載用に用いられる場合には、絶縁層1a、特に最上層の絶縁層1aの上面における表面粗さが小さいものであることが望ましい。絶縁層1aの表面粗さが小さいことにより、搭載部5における絶縁層1aの上面の反射率が高くなり、発光素子12の搭載に適する。
【0038】
絶縁層1aの反射率を高くするためには、例えば、酸化ニオブ等のニオブ(Nb)系の成分を第1のセラミック焼結体に含有させて、拡散反射により反射率を向上させるようにすればよい。
【0039】
また、絶縁層1aは、白色、銀白色等の反射率が高い色であることが望ましい。白色の絶縁層1aは、上記のように酸化アルミニウムや酸化ケイ素,酸化カルシウム等を原料として形成することができる。
【0040】
この場合には、光の反射率が高い発光装置を製作することができる。また、反射層がセラミック焼結体で形成されるため、酸化または硫化しにくく、光の反射率を長期にわたって高く維持することが可能な、長期信頼性に優れた発光装置を製作することができる。
【0041】
また、この場合において、搭載部5またはその周辺に導体層6が形成されている。導体層6は、発光素子12がボンディングワイヤやはんだ等の接続材を介して電気的に接続される、接続用の端子として機能する。導体層6は、例えば母基板1の内部に形成された配線導体(図示せず)を介して母基板1の下面等に電気的に導出されている。この配線導体の導出された部分を外部電気回路に接続すれば、発光素子12と外部電気回路とが電気的に接続される。外部電気回路は、発光素子12に電力を供給する電気回路等である。
【0042】
導体層6の表面には、酸化腐食を抑制するとともに、接続材の接続性(ボンディング性等)を高めるために、ニッケルや金等のめっき層が、電解めっき法等の方法で被着される。
【0043】
上記の場合には、拘束層1bは、絶縁層1aに比べて表面粗さが大きい。これは、上記めっきの工程において、拘束層1bを形成している第2のガラスセラミック焼結体のガラス成分の一部が溶出しやすいことによる。
【0044】
例えば、基板領域2において搭載部5となっている絶縁層1aの上面における表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)で約2μmである。また、この絶縁層1aの上面(搭載部5)における反射率は約90〜97%と高い。なお、拘束層1bの表面粗さは、算術平均粗さ(Ra)で約3〜4μm程度である。
【0045】
個片のセラミック基板10となる基板領域2は、例えば平面視で四角形状であり、個片のセラミック基板10は、例えば四角板状である。基板領域2の境界(隣り合う基板領域2同士の境界)に沿って、母基板1の上面に分割溝3が設けられている。
【0046】
分割溝3は、母基板1を個片のセラミック基板10に分割するための部分である。分割溝3が形成された部分において母基板1に曲げ応力等の応力を加えれば、分割溝3の底部から母基板1の下面にかけて亀裂が生じ、母基板1が厚み方向に破断する。これにより、多数個取りセラミック基板9が個片のセラミック基板10に分割される。
【0047】
母基板1の上面には、分割溝3に沿って帯状拘束層4が付着している。帯状拘束層4は、分割溝3が形成された部分において母基板1の焼成時の収縮を抑制するためのものであり、第2のセラミック焼結体により形成されている。
【0048】
このような上記帯状拘束層4が付着していることから、分割溝3が設けられた部分における母基板1の上面の平面方向の収縮を抑制することができる。そのため、分割溝3が外側に開くように変形することが抑制される。したがって、絶縁層1aと拘束層1bとが交互に積層されて母基板1が形成されており、個片のセラミック基板10への分割が容易な多数個取りセラミック基板9を提供することができる。
【0049】
帯状拘束層4についても、その上面側における平面方向の収縮が、下面側における平面方向の収縮よりも大きい。そのため、縦断面において帯状拘束層4は台形状になっている。ただし、帯状拘束層4は、その幅が狭いため、収縮量自体は小さく、分割溝3の変形も小さい。そのため、分割溝3の底部に応力を効果的集中させることは可能であり、母基板1の分割も容易である。
【0050】
帯状拘束層4は、分割溝3の変形を抑制するためには、分割溝3を挟んだ両側において母基板1(絶縁層1a)の上面に付着していることが好ましい。
【0051】
帯状拘束層4は、拘束層1bと同様のガラスセラミック焼結体である第2のセラミック焼結体によって形成されている。すなわち、帯状拘束層4は、例えば、ホウケイ酸系ガラスやリチウムケイ酸系ガラス等のガラス成分と酸化アルミニウムや酸化カルシウム等のセラミック成分とを主成分とするガラスセラミック焼結体によって形成されている。
【0052】
帯状拘束層4は、例えば拘束層1bとなるセラミックグリーンシートを作製するのと同様の原料粉末を用いてセラミックペーストを作製し、これを、母基板1となるセラミックグリーンシートの積層体の上面に、所定のパターンで塗布した後に同時焼成することによって形成することができる。
【0053】
帯状拘束層4は、セラミックペーストを塗布して同時焼成する上記方法に限らず、拘束層1bを形成するのと同様のセラミックグリーンシートを所定のパターンに切断し、これを母基板1となるセラミックグリーンシートの積層体の上面に積層し、同時焼成する方法で付着させるようにしてもよい。
【0054】
また、母基板1について、絶縁層1aが最上層であることから、母基板1の上面における光の反射率が高い。この場合、帯状拘束層4が、分割溝3が設けられた部分、つまり基板領域2の外周部分に付着しているため、反射率の高い絶縁層1aの上面が基板領域2の中央部分に露出する。言い換えれば、多数個取りセラミック基板9において、基板領域2の中央部の発光素子12等が搭載される搭載部5における反射率が高い。したがって、絶縁層1a自体が光の反射層となることが可能であり、個片のセラミック基板10への分割も容易な多数個取りセラミック基板9を提供することができる。
【0055】
上記多数個取りセラミック基板9において、基板領域2の上面の中央部が発光素子の搭載部5であり、帯状拘束層4が発光素子の搭載部5よりも外側に位置しており、帯状拘束層4の表面粗さが、搭載部5における絶縁層1aの表面粗さよりも大きい場合には、前述したように、特に発光素子12の搭載用に適した多数個取りセラミック基板9を提供することができる。
【0056】
この場合には、各基板領域2において、その上面の外周部に比較的表面粗さが大きい帯
状拘束層4が、例えば枠状に付着しているとともに、この帯状拘束層4で取り囲まれた基板領域2の中央部に発光素子の搭載部5が設けられることになる。そのため、発光素子12が搭載されたときに、発光素子12が発する光を搭載部5における絶縁層1aの上面で効率よく(例えば上記のように反射率約90〜97%で)反射することができる。したがって、輝度の高い発光装置を製作することが可能な基板領域2を有する、多数個取りセラミック基板9とすることができる。
【0057】
発光装置においては、発光素子12が透明な樹脂材料で覆われて封止される。樹脂材料には、必要に応じて粒子状等の形態で蛍光材が添加される。これに対して、帯状拘束層4の表面粗さが比較的大きいため、例えば、上記樹脂材料が基板領域2または個片のセラミック基板10の搭載部5よりも外側に広がり出るようなことが効果的に抑制される。
【0058】
帯状拘束層4は、図1に示す例では縦横に格子状のパターンで付着されているが、例えば図4に示すように、一部に非形成の部分を有していても構わない。図4は、図1に示す多数個取りセラミック基板9の一つの変形例を示す上面図である。図4において図1と同様の部位には同様の符号を付している。
【0059】
図4に示す例においては、基板領域2の角部分で帯状拘束層4が非形成となっている。つまり、四角形状の基板領域2の4つの辺のそれぞれに、長方形状の4つの帯状拘束層4が互いに独立して付着している。このような場合には、各角部において帯状拘束層4となるセラミックペーストの厚みが特に厚くなることを抑制して、搭載部5内にセラミックペーストがはみ出るようなことを防ぐ上で有効である。
【0060】
多数個取りセラミック基板9は、上記のように、発光素子12を搭載するセラミック基板10を作製するものとして、すなわち、基板領域2の上面の中央部が発光素子の搭載部5であるものとして特に適している。これは、帯状拘束層4の表面粗さが、搭載部5における絶縁層1aの表面粗さよりも大きいためであり、この場合、帯状拘束層4が搭載部5よりも外側に位置していることが好ましい。
【0061】
多数個取りセラミック基板9を用いて複数の発光装置を製作する場合、まず多数個取りセラミック基板9を個片のセラミック基板10に分割した後に、それぞれのセラミック基板10に発光素子12を搭載して発光装置(図示せず)を製作するようにしてもよい。また、多数個取りセラミック基板9の各基板領域2の搭載部5にそれぞれ発光素子12を搭載した後に、個片の基板領域2(発光装置)毎に分割するようにしてもよい。
【0062】
この場合、帯状拘束層4の表面粗さが上記のように大きいため、発光素子12を樹脂等の封止材(図示せず)で封止するときに、封止材の帯状拘束層4に対する接合性が高く、また封止材が基板領域2の外側まで流れ出るようなことも効果的に抑制される。
【0063】
なお、図1に示す例においては、母基板1の外周部にダミー領域7が設けられ、このダミー領域7にも帯状拘束層4が付着している。ダミー領域7は、多数個取りセラミック基板9の取り扱いを容易とすること等のために設けられている。また、帯状拘束層4は、このように分割溝3の両側に設けられていることが好ましい。
【0064】
図3に示す本発明の実施形態におけるセラミック基板10は、例えば前述したように、図1に示す多数個取りセラミック基板9が個片に分割されて形成されている。以下のセラミック基板10についての説明において、前述した多数個取りセラミック基板9と同様の部位についての説明は省略する。
【0065】
セラミック基板10は、第1のセラミック焼結体からなる絶縁層1aと、第1のセラミッ
ク焼結体よりも結晶化温度が低い第2のセラミック焼結体からなる拘束層1bとが交互に、最上層が絶縁層1aとなるように積層されて形成された絶縁基板11と、絶縁基板11の上面の中央部に設けられた発光素子の搭載部5と、絶縁基板11の上面の外周部に搭載部5を取り囲んで付着された、第2のセラミック焼結体からなる帯状拘束層4とを備えており、帯状拘束層4の表面粗さが、搭載部5における絶縁層1aの表面粗さよりも大きい。
【0066】
このようなセラミック基板10によれば、上記多数個取りセラミック基板9の場合と同様に、絶縁基板11の平面視における寸法精度が高く、また、絶縁基板11の上面における光の反射率が高い。
【0067】
また、絶縁基板11の上面の外周部に帯状拘束層4が付着されており、この帯状拘束層4の表面粗さが比較的大きい(粗い)ため、発光素子12を封止する樹脂(図示せず)の絶縁基板11に対する接合性を向上させる上で有利である。
【0068】
したがって、絶縁層1a自体が光の反射層となることが可能であり、長期信頼性の高い発光装置を作製することが可能なセラミック基板10を提供することができる。
【符号の説明】
【0069】
1・・・母基板
1a・・絶縁層
1b・・拘束層
2・・・基板領域
3・・・分割溝
4・・・帯状拘束層
5・・・搭載部
6・・・導体層
7・・・ダミー領域
9・・・多数個取りセラミック基板
10・・・セラミック基板
11・・・絶縁基板
12・・・発光素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
母基板と、該母基板に設けられた複数の基板領域と、前記母基板の上面に、前記基板領域の境界に沿って設けられた複数の分割溝とを備える多数個取りセラミック基板であって、前記母基板が、第1のセラミック焼結体からなる絶縁層と、前記第1のセラミック焼結体よりも結晶化温度が低い第2のセラミック焼結体からなる拘束層とが交互に、最上層が前記絶縁層となるように積層されて形成されており、
前記母基板の上面に前記分割溝に沿って、前記第2のセラミック焼結体からなる帯状拘束層が付着していることを特徴とする多数個取りセラミック基板。
【請求項2】
前記基板領域の上面の中央部が発光素子の搭載部であり、前記帯状拘束層が前記発光素子の搭載部よりも外側に位置しており、
前記帯状拘束層の表面粗さが、前記搭載部における前記絶縁層の表面粗さよりも大きいことを特徴とする請求項1記載の多数個取りセラミック基板。
【請求項3】
第1のセラミック焼結体からなる絶縁層と、前記第1のセラミック焼結体よりも結晶化温度が低い第2のセラミック焼結体からなる拘束層とが交互に、最上層が前記絶縁層となるように積層されて形成された絶縁基板と、
該絶縁基板の上面の中央部に設けられた発光素子の搭載部と、
前記絶縁基板の前記上面の外周部に付着された、前記第2のセラミック焼結体からなる帯状拘束層とを備えており、
前記帯状拘束層の表面粗さが、前記搭載部における前記絶縁層の表面粗さよりも大きいことを特徴とするセラミック基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−105901(P2013−105901A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−248859(P2011−248859)
【出願日】平成23年11月14日(2011.11.14)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】