説明

多方向入力装置

【課題】傾動操作時にアナログ信号が出力可能で小型薄型化が容易な多方向入力装置を提供すること。
【解決手段】基台1の内底面1aの外周部に複数の接点部11を配設し、これら接点部11に圧接可能な感圧導電ゴム3を内底面1a上に対向して配置させると共に、基台1上で多方向へ傾動操作可能な導電性の操作体4を感圧導電ゴム3を覆うように配置させる。また、導電性の環状部材であるフレーム部材7を基台1に外装し、操作体4の外周部の複数箇所に設けた被規制部4bがフレーム部材7に当接して上動が規制されるようにする。傾動操作時に操作体4の径方向一端側で被規制部4bが傾動支点となり、かつ径方向他端側で感圧導電ゴム3が操作体4に加圧されて所定の接点部11上で圧縮するようになし、この接点部11とフレーム部材7との導通状態が感圧導電ゴム3の圧縮量に応じて変化するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子機器のリモコンや携帯電話機などに使用して好適な多方向入力装置に係り、特に、傾動操作によって感圧導電ゴムを接点部に圧接させるようにした多方向入力装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の多方向入力装置の従来例として、対をなす接点部を間隙を存して並設してなる接点対を絶縁性の基台(ハウジング)の内底面に計4対分散して配設し、各接点対と操作部材との間にそれぞれ感圧導電ゴムを介在させることによって、操作部材の傾動操作に伴い操作方向で感圧導電ゴムが圧縮して所定の接点対に圧接するように構成したものが知られている(例えば、特許文献1参照)。かかる従来の多方向入力装置において、操作部材に加圧されて圧縮する感圧導電ゴムの内部抵抗は圧縮量に応じて変化するため、この感圧導電ゴムが圧接した接点対は両接点部どうしが導通されるだけでなく、その導通状態が感圧導電ゴムの圧縮量に応じて変化することになる。これにより、操作部材の傾動操作方向を検出できるのみならず、傾動角度に応じたアナログ信号を出力させることができるため、例えばスクロール画面やカーソル等の移動速度がアナログ的に無段階調整できるようになる。
【特許文献1】特開2002−278695号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、前述した従来例のように、基台の内底面に配設した対をなす接点部に感圧導電ゴムを圧接させることによって両接点部どうしを導通させるようにした多方向入力装置において、一方の接点部は基台の外方に突設されたコモン端子に導出されるが、基台の内底面に分散されている複数の接点部を1個のコモン端子へと導出させるためには、比較的長い引き回しパターンが必要となる。そのため、かかる従来例において基台が小型薄型化されると、コモン端子への引き回しパターンを基台にレイアウトすることが困難となり、結果として基台の小型薄型化が促進しにくいという問題があった。なお、コモン端子の数を増やして引き回しパターンの長さを短縮化することは可能であるが、その場合、コモン端子自体が基台の小型薄型化を阻害してしまい、かつ多方向入力装置を実装する配線基板に複雑な配線パターンを追加しなければならないため好ましくはない。
【0004】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたもので、その目的は、傾動操作時にアナログ信号が出力可能で小型薄型化が容易な多方向入力装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するため、本発明の多方向入力装置は、内底面を露出させた絶縁性の基台と、前記内底面の外寄り領域に分散して配設された複数の接点部と、前記内底面上に対向して配置されて前記接点部に圧接可能な感圧導電ゴムと、該感圧導電ゴムを覆うように配置されて前記基台上で多方向へ傾動操作可能な導電性の操作体と、前記基台に外装されて前記操作体の上動を規制する導電性の規制部材とを備え、前記操作体の外周部に前記規制部材に当接して上動が規制される被規制部を設け、傾動操作時に前記操作体の径方向一端側で前記被規制部が傾動支点となり、かつ径方向他端側で前記感圧導電ゴムが前記操作体に加圧されて所定の前記接点部上で圧縮するようになし、この接点部と前記規制部材との導通状態が前記感圧導電ゴムの圧縮量に応じて変化するように構成した。
【0006】
このように構成された多方向入力装置では、操作体が傾動操作されたとき、その径方向一端側で上動しようとする被規制部が規制部材に規制されて傾動支点となり、かつ径方向他端側で感圧導電ゴムが操作体に加圧されるため、圧縮された感圧導電ゴムが下方に存する接点部に圧接し、この接点部と規制部材とが感圧導電ゴムおよび操作体を介して導通される。そして、感圧導電ゴムの内部抵抗が圧縮量に応じて変化することから、操作体の傾動操作方向および傾動角度に応じたアナログ信号を出力させることができる。すなわち、この多方向入力装置は、規制部材をコモン端子と同様に機能させることができるため、基台にコモン端子やその引き回しパターンを設ける必要がなく、装置全体の小型薄型化が図りやすい。
【0007】
上記の構成において、規制部材が基台の外周部に沿って配置された環状のフレーム部材であると共に、操作体がフレーム部材の内径よりも小なる外径に形成されて感圧導電ゴム上に配置された天板部を有し、この天板部の外周縁の複数箇所から複数の被規制部がフレーム部材に掛止可能なフック状に延設されていると、装置の小型薄型化を阻害しないフレーム部材によって操作体の上動への移動が確実に規制できるため好ましい。この場合において、操作体の天板部に周方向に沿って分散された複数の貫通孔が形成されていると、これら貫通孔よりも外周側で天板部が撓みやすくなるため、装置の薄型化を犠牲にすることなく感圧導電ゴムの最大圧縮量や操作体のオーバーストローク量を増大させることができて好ましい。また、基台の外壁部に複数の被規制部を個別に配置させるための複数の切欠き部を設け、これら切欠き部上にフレーム部材の一部を配置させると、操作体やフレーム部材の外径寸法を基台と略同等に抑えることができるため小型化に有利であると共に、被規制部と切欠き部の側壁とによって操作体の径方向への移動が確実に規制できる。
【0008】
また、上記の構成において、感圧導電ゴムが天板部の裏面のほぼ全面と対向して該裏面に固定されていると、複数の接点部上にそれぞれ感圧導電ゴムを配置させる構成に比べて部品点数を削減できるため、装置の低コスト化が図りやすくなる。この場合において、基台の内底面で互いに導通されていない接点部どうしの間に絶縁性突起を設け、この絶縁性突起の上端を接点部の上端よりも高い位置に配置させておけば、絶縁性突起に隣接する一方の接点部の真上で感圧導電ゴムが加圧されたときに、該感圧導電ゴムが他方の接点部に圧接しなくなるため、誤検出を回避できて信頼性が向上するため好ましい。ただし、絶縁性突起の真上で加圧された感圧導電ゴムは該突起を挟むように撓むため、該突起に隣接する両方の接点部に感圧導電ゴムを圧接させることはできる。また、フレーム部材が、基台が搭載される配線基板に半田付けされる複数の脚部を有し、これら複数の脚部のうちの1つがコモン端子として外部回路と接続されるようにしてあれば、操作体の上動への移動を規制するフレーム部材を配線基板に確実に固定することができる。
【0009】
また、上記の構成において、操作体と複数の接点部を覆う一枚の部材で構成された感圧導電ゴムの各中央部にセンタ孔を設けると共に、基台の内底面に設けられた常閉固定接点上に搭載されてセンタ孔を臨む導電性の反転ばねと、基台の内底面で反転ばねと接離可能に対向する領域に設けられた固定接点と、センタ孔に遊挿されて反転ばね上に搭載された絶縁性の押圧ノブとを備え、押圧ノブをプッシュ操作して反転ばねを反転させることによって、反転ばねが固定接点に接触し、この固定接点と常閉固定接点とを導通するようにしておけば、操作体を多方向へ傾動させて傾動方向に位置する接点部に感圧導電ゴムを圧接させるという傾動操作に加えて、押圧ノブを下動させて反転ばねを固定接点に接触させるというプッシュ操作が行なえるため、装置を大型化しなくても多機能化が実現できる。この場合において、押圧ノブに設けた鍔部上に傾動操作用の操作体を搭載し、反転ばねの弾性付勢力によって操作体の被規制部が規制部材に当接して上動が規制されるようにしてあると、操作体や押圧ノブを脱落やガタのない安定した状態に保持することができるため好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の多方向入力装置は、操作体が傾動操作されたとき、その径方向一端側で上動しようとする被規制部が規制部材に規制されて傾動支点となり、かつ径方向他端側で感圧導電ゴムが操作体に加圧されるため、圧縮された感圧導電ゴムが下方に存する接点部に圧接し、この接点部と規制部材とが感圧導電ゴムおよび操作体を介して導通されるように構成されており、基台にコモン端子やその引き回しパターンを設ける必要がない。それゆえ、装置全体の小型薄型化を容易に促進できる。また、この多方向入力装置は、感圧導電ゴムの内部抵抗がその圧縮量に応じて変化するため、操作体の傾動操作方向および傾動角度に応じたアナログ信号を出力させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
発明の実施の形態を図面を参照して説明すると、図1は本発明の実施形態例に係る多方向入力装置の上面図、図2は該入力装置の側面図、図3は該入力装置の分解斜視図、図4は図1のA−A線に沿う傾動操作時の断面図、図5は該入力装置の非操作時の断面図、図6は該入力装置を小さな操作力で傾動操作した状態を示す断面図、図7は該入力装置を大きな操作力で傾動操作した状態を示す断面図、図8は該入力装置のプッシュ操作時の断面図である。
【0012】
これらの図に示す多方向入力装置は、内底面1aを露出させた絶縁性の基台1と、この内底面1aに配設された各種の接点11〜13と、基台1の外方へ突設された各種の端子14〜16と、内底面1a上に載置されたドーム状の反転ばね2と、内底面1a上に対向して配置されて接点11群に圧接可能な感圧導電ゴム3と、この感圧導電ゴム3を覆うように配置されて基台1上で多方向へ傾動操作可能な導電性の操作体4と、これら感圧導電ゴム3および操作体4の内周部どうしを接合している環状の両面接着テープ5と、反転ばね2上に搭載されて感圧導電ゴム3および操作体4の各センタ孔3a,4aに遊挿された絶縁性の押圧ノブ6と、基台1の外周部に沿って配置された環状部材で操作体4の上動および径方向への移動を規制する導電性のフレーム部材7とによって主に構成されている。そして、この多方向入力装置は、操作体4を等間隔な4方向(または8方向)へ傾動させて傾動方向に応じたオン信号を出力させるという傾動操作と、押圧ノブ6を押下してオン信号を出力させるというプッシュ操作とが行なえるようになっている。
【0013】
基台1は平面視八角形状に形成されており、図4に示すように、基台1の内底面1aの最外周部には等間隔な4箇所に台形状の絶縁性突起1bが突設されている。これら絶縁性突起1bの上端は隣接する接点11群の上端よりも若干高い位置に配置されている。また、図1と図5に示すように、基台1の外壁部には等間隔な4箇所に凹状の切欠き部1cが設けられており、各切欠き部1c内にそれぞれ操作体4の外周縁部に設けられたフック状の被規制部4bが配置されている。なお、切欠き部1cは導通されている隣り合う2個1組の周縁固定接点11の間に導通状態を維持しつつ設けられている。
【0014】
接点11〜13は、傾動操作用接点機構の接点部である8個の周縁固定接点11と、プッシュ操作用接点機構の固定接点である1個の中央固定接点12および2個の常閉固定接点13とからなる。端子14〜16は、傾動操作用の周縁固定接点11から導出された計4個の端子14と、プッシュ操作用の中央固定接点12から導出された1個の端子15と、プッシュ操作用の2個の常閉固定接点13から導出された1個の端子16とからなる。8個の周縁固定接点11は内底面1aの最外周部の等間隔な8箇所に突設されており、隣り合う2個1組の周縁固定接点11が基台1内で導通されて、これら両周縁固定接点11から1個の端子14が導出されている。また、隣り合っているが導通されていない2個の周縁固定接点11どうしの間の内底面1a上に前述した絶縁性突起1bが立設されている。図4に示すように、この絶縁性突起1bの上端の高さ位置よりも若干低い位置に各周縁固定接点11の上端が配置されている。
【0015】
中央固定接点12は内底面1aの中央部に位置し、2個の常閉固定接点13は中央固定接点12から離隔した2箇所に配設されて互いに導通されている。後述するように、これら常閉固定接点13上には反転ばね2が搭載される。なお、接点11〜13や端子14〜16はインサート成形によって基台1に一体化されている。また、端子14を共有する2個1組の周縁固定接点11を配設している理由は、操作体4の傾動操作方向に若干のばらつきがあっても感圧導電ゴム3がいずれかの周縁固定接点11と確実に圧接できるようにするためである。
【0016】
反転ばね2は弾性に富む導電性金属板を所定形状にフォーミングして形成されており、そのドーム形状部2aは弾性的な反転時(座屈変形時)にクリック感を生起する。反転ばね2の外周部は2個の常閉固定接点13上に搭載されているため該常閉固定接点13と常時導通されており、ドーム形状部2aが中央固定接点12と接離可能に対向している。したがって、反転ばね2はプッシュ操作用の可動接点として動作させることができる。また、反転ばね2のドーム形状部2a上には、感圧導電ゴム3および操作体4の各センタ孔3a,4aを貫通する押圧ノブ6が搭載されており、この押圧ノブ6はドーム形状部2aによって上方へ弾性付勢されている。その結果、図5に示すように、操作体4の各被規制部4bはフレーム部材7に当接して上動が規制されており、これにより操作体4の脱落やガタが防止されている。また、図6と図7に示すように、操作体4を傾動操作したときには、傾動操作方向に応じて1箇所または2箇所の被規制部4bがフレーム部材7に当接して傾動支点となり、残余の被規制部4bは下動してフレーム部材7から離れるようになっている。なお、反転ばね2はドーム状で外周縁が連続するものに限らず、常閉固定接点11と接触しクリック感を生起するものであれば、外周縁が不連続の形状のものであってもよい。
【0017】
感圧導電ゴム3は、外形が八角形状で中央部に円形のセンタ孔3aが形成された1枚の弾性板状体である。この感圧導電ゴム3にはカーボン等の導電粉が充填されているため、その内部抵抗は圧縮量に応じて変化する。すなわち、感圧導電ゴム3を加圧して局部的に圧縮させると、この圧縮部分で内部抵抗が小さくなり、さらに圧縮させると内部抵抗はより小さくなる。感圧導電ゴム3の内周部は環状の両面接着テープ5を介して操作体4の天板部4dに接合されており、この天板部4dの下面(裏面)のほぼ全面が感圧導電ゴム3と対向している。そして、後述するように、天板部4dが押圧ノブ6の鍔部6a上に搭載されているため、感圧導電ゴム3は基台1の内底面1aの上方で天板部4dに保持されており、図5に示すように、非操作状態で感圧導電ゴム3と各周縁固定接点11との間にはクリアランスが確保されている。
【0018】
操作体4は導電性金属板に打ち抜き加工や曲げ加工を施して形成されたものである。この操作体4は、センタ孔4aや複数の貫通孔である透孔4cを有して感圧導電ゴム3上に配置された天板部4dと、天板部4dの外周縁の等間隔な4箇所からそれぞれ下方および外方へ向けてフック状(鉤状)に延設された4片の被規制部4bとからなり、各被規制部4bがフレーム部材7に掛止されるようになっている。被規制部4bを詳述すると、天板部4dの外周縁から下方へ向かう下方部4b1とその下方部4b1の下端から外方へ向かう水平先端部4b2とを有するL字状とから成っている。天板部4dの外形は感圧導電ゴム3とほぼ同じ大きさの八角形状であり、周方向に沿って複数の透孔4cが分散されているため天板部4dの外周部は撓みやすくなっている。センタ孔4aには押圧ノブ6が遊挿されており、この押圧ノブ6に設けられた鍔部6a上に天板部4dの内周部が搭載されているため、天板部4dは反転ばね2のドーム形状部2aによって上方へ弾性付勢された状態で押圧ノブ6とフレーム部材7とに支持されている。また、天板部4dの下面には内周側の領域に両面接着テープ5が貼着されており、この両面接着テープ5を介して天板部4dが感圧導電ゴム3を保持している。
【0019】
操作体4の天板部4dの外径はフレーム部材7の内径よりも若干小さく、この天板部4dと各被規制部4bの下方部4b1(水平先端部4b2を除く部分)にフレーム部材7が外挿され、各被規制部4bはそれぞれ基台1の相異なる切欠き部1c内に配置されているため、操作体4の径方向の移動は各被規制部4bと各切欠き部1cの側壁とによって規制されている。また、操作体4の各被規制部4bの水平先端部4b2は、フレーム部材7に設けられた各規制桟部7bの下方に配置されている。各被規制部4bはそれぞれ基台1の相異なる切欠き部1c内に配置されて下動できるようになっているが、非操作状態で各被規制部4bは反転ばね2に押し上げられて各規制桟部7bに当接しているため上動は規制されている(図5参照)。つまり、各被規制部4bをフレーム部材7で掛止可能な位置に配置させたうえで、この操作体4は反転ばね2等を介して基台1上に傾動操作可能に支持されており、操作体4を傾動させると径方向一端側で被規制部4bが傾動支点となり、かつ径方向他端側で天板部4dが感圧導電ゴム3を加圧して圧縮させるようになっている。
【0020】
押圧ノブ6は絶縁性樹脂からなり、反転ばね2のドーム形状部2a上に安定した姿勢で搭載できる形状に形成されている。この押圧ノブ6は径方向外側へ突出する環状の鍔部6aを有しており、この鍔部6a上に操作体6の天板部4dが搭載されている。そして、操作体4の上動への移動がフレーム部材7により、径方向への移動が切欠き部1cによりそれぞれ規制されていると共に、ドーム形状部2aが押圧ノブ6を上方へ弾性付勢しているため、押圧ノブ6がガタを生じたり脱落する虞はない。
【0021】
フレーム部材7は平面視八角形状の環状の導電性金属板からなり、操作体4を包囲するように基台1の外周部に沿って配置されている。フレーム部材7の複数箇所には脚部7aが突設されており、この多方向入力装置が実装される図示せぬ配線基板のランド部に各脚部7aが半田付けされるようになっている。ただし、これらランド部のうち1個は配線パターンに導通されているが、他はすべて電気的に孤立している。つまり、フレーム部材7は複数の脚部7aのうちの1個をコモン端子17aとして利用しており、このコモン端子17aが任意の周縁固定接点11と導通されるようにしてある(図1参照)。また、フレーム部材7には等間隔な4箇所に規制桟部7bが設けられており、各規制桟部7bがそれぞれ操作体4の相異なる被規制部4bの水平先端部4b2上に配置されるため、これら被規制部4bの上動が規制桟部7bによって規制されるようになっている。
【0022】
次に、このように構成された多方向入力装置の動作について説明する。図5に示すように、非操作時には、反転ばね2のドーム形状部2aが押圧ノブ6を上方へ弾性付勢して操作体4の各被規制部4bをフレーム部材7の各規制桟部7bに押し付けているため、操作体4はガタのない水平姿勢に保持されており、この操作体4に保持された感圧導電ゴム3は下方に存する各周縁固定接点11から離隔している。また、ドーム形状部2aも中央固定接点12から離隔している。
【0023】
かかる非操作状態でユーザが操作体4の天板部4dの外寄り領域の一部、例えば所定の被規制部4bの基端付近で天板部4dを押し込んで操作体4を傾動操作すると、図6に示すように、操作体4は押し込まれた側とは径方向逆側に位置する被規制部4bを傾動支点として傾動するため、押し込まれた側で天板部4dが感圧導電ゴム3を押下してこれを下方の周縁固定接点11に圧接させ、感圧導電ゴム3は次第に圧縮されていく。その結果、傾動操作方向に位置する周縁固定接点11が、感圧導電ゴム3の圧縮部分と導電性の操作体4とを介して、傾動支点の被規制部4bに当接している導電性のフレーム部材7と導通されるため、該周縁固定接点11の端子14とフレーム部材7のコモン端子17aとが導通されることになる。そして、図7に示すように、操作体4の傾動角度を増大させるのに伴って感圧導電ゴム3がさらに圧縮されて、その圧縮部分の内部抵抗が低下するため、該周縁固定接点11の端子14とコモン端子17a間を流れる電流が増大して、感圧導電ゴム3の圧縮量に応じたアナログ信号が出力される。それゆえ、このアナログ信号に基づいて、操作体4の傾動操作方向と傾動角度とを検出できる。また、操作体4が傾動操作されると天板部4dの内周部が押圧ノブ6の鍔部6aを押下するため、この押圧ノブ6が反転ばね2のドーム形状部2aを押し込む。そのため、操作体4を所定角度傾動させた時点でドーム形状部2aを反転(座屈変形)させてクリック感を生起させることができる。
【0024】
なお、ユーザが絶縁性突起1bの真上で天板部4dを押し込んだ場合には、感圧導電ゴム3は絶縁性突起1bを挟むように撓むため、該突起1bに隣接する互いに導通されていない2個の周縁固定接点11にそれぞれ感圧導電ゴム3が圧接して、出力される2種類のオン信号に基づいて傾動操作方向を判定することができる(図4参照)。それゆえ、この多方向入力装置は、傾動操作方向を4方向に設定することもできるし、8方向に設定することもできる。
【0025】
なお、傾動操作時に反転ばね2のドーム形状部2aが反転すると中央固定接点12に接触してプッシュ操作用のオン信号も出力されるが、このオン信号が検出された時点ですでに傾動操作用のアナログ信号が出力されているため、図示せぬ外部の判定回路によってプッシュ操作用のオン信号は無効と判定(キャンセル)されるようになっている。つまり、この多方向入力装置は、傾動操作用接点機構のオフ状態が確認されたときだけ、プッシュ操作用接点機構のオンオフ切換えが行なえるように設定されている。
【0026】
また、操作体4の天板部4dは透孔4cを有するため外周側が撓みやすくなっている。それゆえ、反転ばね2のドーム形状部2aが反転して中央固定接点12に接触した後でも、ユーザは天板部4dの外周部をさらに押し込んで感圧導電ゴム3の圧縮量を増大させることができる。
【0027】
こうして操作体4を傾動操作した後、操作力が取り除かれると、座屈変形していたドーム形状部2aが押圧ノブ6を押し上げながら元の形状に戻るため、押圧ノブ6が操作体4を押し上げながら元の高さ位置まで上昇する。その結果、感圧導電ゴム3の圧縮部分が元の厚みに戻って内部抵抗が増大するため、傾動操作用のアナログ信号が遮断される。また、操作体4は傾動支点以外の被規制部4bがフレーム部材7の規制桟部7bに当接する高さ位置まで押し上げられると上動が規制されるため、図5に示す非操作状態に自動復帰する。
【0028】
また、非操作状態でユーザが押圧ノブ6を所定ストローク押下すると、プッシュ操作を行うことができる。かかるプッシュ操作時には、ユーザに押し込まれて下動する押圧ノブ6が反転ばね2のドーム形状部2aを押し込んで反転(座屈変形)させるため、クリック感が生起されると共に、図8に示すように、ドーム形状部2aが中央固定接点12に接触し、中央固定接点12と常閉固定接点13(図3参照)とが反転ばね2を介して導通されたことによるオン信号が出力される。また、押圧ノブ6が下動すると鍔部6a上に搭載されている操作体4も自重で下動するため、感圧導電ゴム3が周縁固定接点11上に搭載されることになるが、図8に示すように、各被規制部4bが下動して操作体4とフレーム部材7とが非導通状態となるため、傾動操作用のアナログ信号が誤検出されることはない。なお、この多方向入力装置を天地逆向きにしてプッシュ操作したときには、操作体4が押圧ノブ6に追動せず、よって感圧導電ゴム3は周縁固定接点11から離隔したままなので、この場合も傾動操作用のアナログ信号が誤検出されることはない。したがって、傾動操作用接点機構はオフ状態に保たれており、前述した判定回路はプッシュ操作用のオン信号を有効と判定する。つまり、ユーザは押圧ノブ6をプッシュ操作することによって所定の入力操作を行なうことができ、かつ、そのプッシュ操作が確実に行なわれたことをクリック感によって明瞭に感得することができる。
【0029】
こうして押圧ノブ6をプッシュ操作した後、操作力が取り除かれると、座屈変形していたドーム形状部2aが押圧ノブ6を押し上げながら元の形状に戻るため、中央固定接点12と常閉固定接点13との導通が解除されてプッシュ操作用のオン信号が遮断される。また、押圧ノブ6が操作体4を押し上げながら元の高さ位置まで上昇し、操作体4は各被規制部4bがフレーム部材7の各規制桟部7bに当接する高さ位置まで押し上げられた時点で上動が規制されるため、図5に示す非操作状態に自動復帰する。なお、この多方向入力装置を天地逆向きにしてプッシュ操作した場合には、操作体4や感圧導電ゴム3を変位させることなく押圧ノブ6が上下動することになる。
【0030】
以上説明したように本実施形態例に係る多方向入力装置は、操作体4が傾動操作されたとき、その径方向一端側で上動しようとする被規制部4bがフレーム部材7に規制されて傾動支点となり、かつ径方向他端側で感圧導電ゴム3が操作体4に加圧されるため、圧縮された感圧導電ゴム3が下方に存する周縁固定接点11に圧接し、この周縁固定接点11の端子14とフレーム部材7のコモン端子17aとが導通されるようになっている。そして、感圧導電ゴム3の内部抵抗が圧縮量に応じて変化することから、操作体4の傾動操作方向および傾動角度に応じたアナログ信号を出力させることができる。それゆえ、この多方向入力装置は、基台1にコモン端子やその引き回しパターンを設ける必要がなく、装置全体の小型薄型化が図りやすい。
【0031】
また、本実施形態例に係る多方向入力装置は、環状のフレーム部材7が基台1の外周部に沿って配置されていると共に、操作体4が、フレーム部材7の内径よりも小なる外径に形成されて感圧導電ゴム3上に配置された天板部4dを有し、この天板部4dの外周縁の複数箇所から被規制部4bがフレーム部材7に掛止可能なフック状に延設されているため、装置の小型薄型化を阻害しないフレーム部材7によって操作体4の上動への移動を確実に規制できる。さらに、この多方向入力装置には、操作体4の天板部4dに周方向に沿って分散された複数の透孔4cが形成されているため、これら透孔4cよりも外周側で天板部4dが撓みやすく、それゆえ装置の薄型化を犠牲にすることなく感圧導電ゴム3の最大圧縮量や操作体4のオーバーストローク量を増大させることができる。しかも、この多方向入力装置は、基台1の外壁部に各被規制部4bを個別に配置させるための切欠き部1cを設け、これら切欠き部1c上にフレーム部材7の規制桟部7bを配置させているため、操作体4やフレーム部材7の外径寸法を基台1と略同等に抑えることができ、この点でも装置の小型化に有利であると共に、各被規制部4bと各切欠き部1cの側壁とによって操作体4の径方向への移動が確実に規制できる。
【0032】
また、本実施形態例に係る多方向入力装置は、感圧導電ゴム3が操作体4の天板部4dの裏面のほぼ全面と対向して該裏面に固定されているため、複数の周縁固定接点上にそれぞれ感圧導電ゴムを配置させる構成に比べて部品点数を削減でき、装置の低コスト化が図りやすくなっている。しかも、この多方向入力装置は、基台1の内底面1aで互いに導通されていない周縁固定接点11どうしの間に絶縁性突起1bを突設し、この絶縁性突起1bの上端を周縁固定接点11の上端よりも高い位置に配置させているため、絶縁性突起1bに隣接する一方の周縁固定接点11の真上で感圧導電ゴム3が加圧されたときに、感圧導電ゴム3が他方の周縁固定接点11に圧接する虞がなくなり、それゆえ誤検出を回避できて信頼性が高まっている。ただし、絶縁性突起1bの真上で加圧された感圧導電ゴム3は該突起1bを挟むように撓むため、図4に示すように、絶縁性突起1bに隣接する両方の周縁固定接点11に感圧導電ゴム3を圧接させることもできる。
【0033】
なお、フレーム部材7は図示せぬ配線基板に半田付けされる複数の脚部7aを有しており、これら複数の脚部7aのうちの1つがコモン端子17aとして外部回路と接続されるため、操作体4の上動への移動を規制するフレーム部材7は該配線基板に確実に固定することができる。
【0034】
また、本実施形態例に係る多方向入力装置には、感圧導電ゴム3と操作体4の各中央部にセンタ孔3a,4aが設けてあり、かつ基台1の内底面1a上に搭載されてセンタ孔3a,4aを臨む導電性の反転ばね2が、内底面1aに設けられた中央固定接点12と接離可能に対向していると共に、センタ孔3a,4aに遊挿された絶縁性の押圧ノブ6が反転ばね2上に搭載されており、押圧ノブ6をプッシュ操作して反転ばね2を反転させることによって該反転ばね2が中央固定接点12に接触するようになっている。すなわち、この多方向入力装置は、操作体4を多方向へ傾動させて傾動方向に位置する周縁固定接点11に感圧導電ゴム3を圧接させるという傾動操作に加えて、押圧ノブ6を下動させて反転ばね2を中央固定接点12に接触させるというプッシュ操作が行なえるようになっており、装置を大型化することなく多機能化が実現されている。しかも、押圧ノブ6に設けた鍔部6a上に傾動操作用の操作体4を搭載し、反転ばね2の弾性付勢力によって操作体4の各被規制部4bがフレーム部材7に当接して上動が規制されるようにしてあるため、操作体4や押圧ノブ6を脱落やガタのない安定した状態に保持することができる。
【0035】
ただし、プッシュ操作が不要な多方向入力装置であっても本発明は適用可能であり、その場合は、例えば操作体4を平板状でその中央部に下方へ向けた膨出部を設けたものとし、基台1の内底面1a上に載置したクリック部材で感圧導電ゴム3や操作体4の膨出部を支持する等の構成が可能となる。
【0036】
また、上記実施形態例では、感圧導電ゴム3は連続環状の一枚の部材で構成されているが、一枚の部材でなく、接点部である2個1組の周縁固定接点11に対して各々感圧導電ゴムを設ける構成であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本実施形態例に係る多方向入力装置の上面図である。
【図2】該入力装置の側面図である。
【図3】該入力装置の分解斜視図である。
【図4】図1のA−A線に沿う傾動操作時の断面図である。
【図5】該入力装置の非操作時の断面図である。
【図6】該入力装置を小さな操作力で傾動操作した状態を示す断面図である。
【図7】該入力装置を大きな操作力で傾動操作した状態を示す断面図である。
【図8】該入力装置のプッシュ操作時の断面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 基台
1a 内底面
1b 絶縁性突起
1c 切欠き部
2 反転ばね
2a ドーム形状部
3 感圧導電ゴム
3a センタ孔
4 操作体
4a センタ孔
4b 被規制部
4c 透孔(貫通孔)
4d 天板部
5 両面接着テープ
6 押圧ノブ
6a 鍔部
7 フレーム部材(規制部材)
7a 脚部
7b 規制桟部
11 周縁固定接点(接点部)
12 中央固定接点(固定接点)
13 常閉固定接点
14〜16 端子
17a コモン端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内底面を露出させた絶縁性の基台と、前記内底面の外寄り領域に分散して配設された複数の接点部と、前記内底面上に対向して配置されて前記接点部に圧接可能な感圧導電ゴムと、該感圧導電ゴムを覆うように配置されて前記基台上で多方向へ傾動操作可能な導電性の操作体と、前記基台に外装されて前記操作体の上動を規制する導電性の規制部材とを備え、
前記操作体の外周部に前記規制部材に当接して上動が規制される被規制部を設け、傾動操作時に前記操作体の径方向一端側で前記被規制部が傾動支点となり、かつ径方向他端側で前記感圧導電ゴムが前記操作体に加圧されて所定の前記接点部上で圧縮するようになし、この接点部と前記規制部材との導通状態が前記感圧導電ゴムの圧縮量に応じて変化するようにしたことを特徴とする多方向入力装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記規制部材が前記基台の外周部に沿って配置された環状のフレーム部材であると共に、前記操作体が前記フレーム部材の内径よりも小なる外径に形成されて前記感圧導電ゴム上に配置された天板部を有し、この天板部の外周縁の複数箇所から複数の前記被規制部が前記フレーム部材に掛止可能なフック状に延設されていることを特徴とする多方向入力装置。
【請求項3】
請求項2の記載において、前記天板部に周方向に沿って分散された複数の貫通孔が形成されていることを特徴とする多方向入力装置。
【請求項4】
請求項2または3の記載において、前記基台の外壁部に前記各被規制部を個別に配置させるための複数の切欠き部を設け、これら切欠き上に前記フレーム部材の一部を配置させたことを特徴とする多方向入力装置。
【請求項5】
請求項2〜4のいずれか1項の記載において、前記感圧導電ゴムが前記天板部の裏面のほぼ全面と対向して該裏面に固定されていることを特徴とする多方向入力装置。
【請求項6】
請求項5の記載において、前記基台の内底面で互いに導通されていない前記接点部どうしの間に絶縁性突起を設け、この絶縁性突起の上端を前記接点部の上端よりも高い位置に配置させたことを特徴とする多方向入力装置。
【請求項7】
請求項2〜6のいずれか1項の記載において、前記フレーム部材が、前記基台が搭載される配線基板に半田付けされる複数の脚部を有し、これら複数の脚部のうちの1つがコモン端子として外部回路と接続されるようにしたことを特徴とする多方向入力装置。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項の記載において、前記操作体と前記複数の接点部を覆う一枚の部材で構成された前記感圧導電ゴムの各中央部にセンタ孔を設けると共に、前記基台の内底面に設けられた常閉固定接点上に搭載されて前記センタ孔を臨む導電性の反転ばねと、前記内底面で前記反転ばねと接離可能に対向する領域に設けられた固定接点と、前記センタ孔に遊挿されて前記反転ばね上に搭載された絶縁性の押圧ノブとを備え、前記押圧ノブをプッシュ操作して前記反転ばねを反転させることにより、該反転ばねが前記固定接点に接触し、この固定接点と前記常閉固定接点とを導通するようにしたことを特徴とする多方向入力装置。
【請求項9】
請求項8の記載において、前記押圧ノブに設けた鍔部上に前記操作体を搭載し、前記反転ばねの弾性付勢力によって前記被規制部が前記規制部材に当接して上動が規制されるようにしてあることを特徴とする多方向入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−80330(P2010−80330A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−248867(P2008−248867)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】