説明

多気筒内燃機関の運転制御装置

【課題】減筒運転が実行可能な多気筒内燃機関に対し、この減筒運転の実行による燃料消費率の更なる改善を図ることができる多気筒内燃機関の運転制御装置を提供する。
【解決手段】減筒運転実行条件が成立した際、減筒運転時に稼働が休止される気筒に繋がるスロットルバルブ72Lの開度を、運転者が選択した減筒運転モードに従って設定する。休止気筒に繋がるスロットルバルブ72Lを全閉にするモードでは、この休止気筒から触媒コンバータ82Lへの空気排出量は少なくなり、触媒コンバータ82Lの温度低下量を少なくできる。休止気筒に繋がるスロットルバルブ72Lを全開にするモードでは、休止気筒でのピストン往復動によるポンピングロスは低減され、稼働気筒の負荷を軽減して燃料消費率が改善される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多気筒内燃機関の運転制御装置に係る。特に、本発明は、内燃機関の負荷等に応じて一部の気筒の稼働を休止させる減筒運転が実行可能な多気筒内燃機関に対し、この減筒運転の実行による燃料消費率の更なる改善を図るための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、例えば下記の特許文献1や特許文献2に開示されているように、エンジンの無負荷時等に、一部の気筒の稼働を休止させて燃料消費率の改善を図る減筒運転が実行可能な多気筒エンジンが知られている。
【0003】
例えば、エンジンのアイドリング運転時等のように、余剰出力のある状態では、各気筒に掛かる負荷が小さいため、吸排気損失が大きくなり、燃焼効率の悪化が懸念される。このため、一部の気筒(例えばV型エンジンにあっては一方のバンクの気筒)への燃料供給を停止して、これら気筒を休止させる(非稼働にする)減筒運転を行い、燃料が供給される稼動気筒(他方のバンクの気筒)の負荷を高めて燃焼効率を高めるようにする。これにより、燃料消費率の改善及び燃料消費量の削減を図ることができる。
【0004】
尚、特許文献1には、減筒運転時に休止する気筒群と稼働する気筒群との吸気系を共通化したもの、つまり、各気筒に共通の1個のスロットルバルブを備えたエンジンに対し、上記減筒運転時にあっては、全気筒運転時(全ての気筒に対して燃料を供給する運転時)よりもスロットルバルブの開度を大きくし、吸気抵抗を減少させることで稼働気筒のポンピングロスを低減することが開示されている。
【0005】
また、特許文献2では、各気筒群の排気側に備えられた共通の触媒装置が活性状態であるときには休止気筒のスロットルバルブ開度を小さくして、この休止気筒の吸気量を減少させる一方、触媒装置が非活性状態であるときには休止気筒のスロットルバルブ開度を大きくして、この休止気筒の吸気量を増加させることが開示されている。
【0006】
更に、特許文献3には、排気ガスが過給機の駆動に利用される気筒群と、排気ガスが過給機の駆動に利用されない気筒群とを備えたエンジンにおいて、冷間始動時には、後者の気筒群のみで始動を行うと共に、この気筒群の吸入空気量を増加することが開示されている。これによって、各気筒群の排気側に備えられた共通の触媒装置の早期昇温が行えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−349304号公報
【特許文献2】特開2005−325781号公報
【特許文献3】特開2007−162489号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記減筒運転が実行可能なエンジンにおいて、特許文献1に開示されているように、減筒運転時に非稼働状態となる気筒(休止気筒)に繋がる排気系の触媒(以下、休止気筒側触媒と呼ぶ)と、稼働状態を継続する気筒(稼働気筒)に繋がる排気系の触媒(以下、稼働気筒側触媒と呼ぶ)とが互いに独立している構成にあっては、以下の課題が生じる可能性がある。
【0009】
つまり、エンジンが無負荷になるなどして減筒運転実行条件が成立した時点で、仮に、休止気筒側触媒の温度が活性温度下限値(例えば450℃)以上であったとしても、その触媒温度が十分に高くない状況(例えば触媒の活性温度下限値よりも50℃程度しか高くない状況)では、減筒運転の開始後、短時間のうちに触媒温度が活性温度下限値付近にまで低下してしまって、全気筒運転を復帰させねばならないことになる。
【0010】
特に、減筒運転中における休止気筒の吸気バルブ及び排気バルブの動作として、全気筒運転時と同様に開閉させるようにしたエンジン(所謂、弁停止しないエンジン)においては、減筒運転中に休止気筒側触媒に空気(外気と同程度の比較的低温の空気)が流れることになるため、単位時間当たりの触媒温度低下量が大きくなりやすく、上記課題は助長されることになる。
【0011】
このような場合、減筒運転の継続時間が極端に短くなって、この減筒運転が実行可能なエンジンシステムのメリットを十分に活用することが困難になってしまう。その結果、燃料消費率の改善効果及び燃料消費量の削減効果を十分に奏することができなくなってしまう可能性がある。
【0012】
尚、特許文献2及び特許文献3に開示されている排気系の構成は、全気筒(休止気筒及び稼働気筒)が共に同一の触媒に繋がっているため(休止気筒側触媒と稼働気筒側触媒とが独立する構成ではないため)、減筒運転実行中に一部の触媒の温度が低下してしまうといった上記課題は生じにくい。つまり、本発明が対象とする排気系構造とはなっていない。
【0013】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、減筒運転が実行可能な多気筒内燃機関に対し、この減筒運転の実行による燃料消費率の更なる改善を図ることができる多気筒内燃機関の運転制御装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
−課題の解決原理−
上記の目的を達成するために講じられた本発明の解決原理は、減筒運転時に非稼働状態となる気筒(休止気筒)に対する吸入空気量を調整可能とすることで、その内燃機関の運転状況に応じた適切な吸入空気量が得られるようにし、吸入空気量を少なくすることによる効果と、吸入空気量を多くすることによる効果とを選択的に得ることができるようにしている。
【0015】
−解決手段−
具体的に、本発明は、複数気筒のうちの一部の気筒に繋がる第1の排気通路に設けられた第1の排気浄化装置と、他の気筒に繋がる第2の排気通路に設けられた第2の排気浄化装置とを備えると共に、所定の減筒運転実行条件の成立に伴って上記一部の気筒を非稼働にする減筒運転が実行可能な多気筒内燃機関の運転制御装置を前提とする。この多気筒内燃機関の運転制御装置に対し、上記減筒運転実行条件の成立に伴って減筒運転が実行される際、上記非稼働となる気筒に対する吸気量を運転者の要求に応じて調整する非稼働気筒吸気量調整手段を備えさせている。
【0016】
ここで、上記減筒運転時に非稼働となる「一部の気筒」としては、単一の気筒ばかりでなく、複数の気筒(例えばV型エンジンにおける一方のバンクの気筒)をも含む概念である。また、互いに異なる排気通路に設けられることで独立配置される排気浄化装置としては、上記第1の排気浄化装置及び第2の排気浄化装置の2種類だけでなく、3種類以上の排気浄化装置が互いに独立配置されていてもよい。
【0017】
上記の特定事項により、全気筒運転の実行中に減筒運転実行条件が成立した際、予め入力されている運転者の要求に応じ、その減筒運転時において非稼働となる気筒に対する吸気量を調整する。例えば、吸気量を少なくするように設定された場合には、非稼働となっている気筒におけるピストンが往復動することによるポンピングロスは増加するものの、この非稼働となっている気筒から第1の排気浄化装置への空気排出量(略外気温に近い温度の空気の流通量)は少なくなるため、この第1の排気浄化装置の温度低下量を少なくすることができる。その結果、第1の排気浄化装置が活性温度下限値付近まで低下して減筒運転実行条件が解除されるタイミングを遅らせることができ、減筒運転の継続時間を長くできて燃料消費量の削減が図れることになる。
【0018】
逆に、吸気量を多くするように設定された場合には、第1の排気浄化装置の温度低下量はある程度大きくなるものの、非稼働となっている気筒におけるピストンが往復動することによるポンピングロスは低減され、稼働している気筒に対する負荷が軽減されることになる。その結果、減筒運転期間中における非稼働気筒でのポンピングロス低減に伴う燃料消費率の改善が図れることになる。
【0019】
このように、本解決手段によれば、第1の排気浄化装置の温度低下量を少なくすることによって燃料消費量を削減できる減筒運転と、非稼働気筒でのポンピングロス低減に伴う燃料消費率の改善が図れる減筒運転とを運転者の要求に応じて切り換えることが可能であり、減筒運転の適正化を図ることが可能になる。
【0020】
上記非稼働気筒吸気量調整手段により吸気量を調整するための具体的な手段としては、スロットルバルブの開度調整が挙げられる。つまり、上記複数気筒のうちの上記一部の気筒に繋がる第1の吸気通路に第1のスロットルバルブを、上記他の気筒に繋がる第2の吸気通路に第2のスロットルバルブをそれぞれ設けておく。そして、減筒運転が実行される際、上記非稼働となる気筒に繋がる吸気通路に設けられたスロットルバルブの開度を運転者の要求に応じて調整する構成としている。
【0021】
これによれば、既存の吸気量調整手段であるスロットルバルブを利用して、第1の排気浄化装置の温度低下量を少なくすることによる燃料消費量の削減効果と、非稼働気筒でのポンピングロス低減に伴う燃料消費率の改善効果とを選択することが可能になり、吸気量調整のための新たな手段を備えさせることなしに、上述した効果を発揮できる。
【0022】
特に、本発明は、上記減筒運転の実行時、非稼働となる気筒に備えられている吸気バルブ及び排気バルブが停止することなく、減筒運転の非実行時と同様の開閉動作を行う構成とされている多気筒内燃機関に適用した場合に顕著な効果を奏することができる。
【0023】
つまり、非稼働となる気筒に備えられている吸気バルブ及び排気バルブが停止しない内燃機関にあっては、減筒運転中、休止気筒の排気系に配設されている排気浄化装置(例えば触媒コンバータ)に空気(外気と同程度の温度の空気)が流れることになるため、単位時間当たりの触媒温度の低下量が大きくなりやすく、減筒運転の継続時間が極端に短くなって、この減筒運転が実行可能なエンジンシステムのメリットを十分に活用することが困難になってしまう可能性があった。このような内燃機関に本発明を適用すれば、運転者が吸気量を少なくするように設定した場合に、減筒運転の継続時間を長く得ることができ、減筒運転が実行可能なエンジンシステムのメリットを十分に活用することが可能になる。
【0024】
上記非稼働気筒吸気量調整手段により吸気量が調整された場合のその吸気量と減筒運転の継続時間との関係として具体的には以下のように特定される。つまり、運転者が要求する上記非稼働となる気筒に対する吸気量が少ないほど、減筒運転の継続時間を長く設定するようにしている。
【0025】
上記非稼働となる気筒に対する吸気量が少ない場合、上述した如く、非稼働となっている気筒から第1の排気浄化装置への空気排出量も少なくなるため、この第1の排気浄化装置の温度低下量を少なくすることができる。このため、減筒運転の継続時間を長くしても、第1の排気浄化装置が活性温度下限値付近まで低下する可能性は低い。その結果、非稼働となる気筒に対する吸気量を少なく設定するのに伴って減筒運転の継続時間を長く設定することで、この減筒運転による燃料消費量の削減効果を十分に得ることが可能になる。
【0026】
運転者からの吸気量要求を設定するための手段としては以下のものが挙げられる。つまり、上記多気筒内燃機関を車両に搭載されるものとし、車両の車室内に、上記非稼働となる気筒に対する吸気量を、運転者の操作によって選択可能な吸気量選択手段を設ける。そして、上記非稼働気筒吸気量調整手段が、この選択された吸気量に従って、上記非稼働となる気筒に対する吸気量を調整する構成としている。
【0027】
これにより、運転者は、車両を運転しながら上記吸気量選択手段を操作するなどして、非稼働となる気筒に対する吸気量を任意に設定することができる。例えば、エンジンの無負荷状態や軽負荷状態が比較的長く続く場合には、非稼働となる気筒に対する吸気量を少なく設定することで減筒運転の継続時間が長くなるように設定する。逆に、エンジンの無負荷状態や軽負荷状態が比較的短い場合には、非稼働となる気筒に対する吸気量を多く設定することで上記ポンピングロスの低減を図るようにする。
【発明の効果】
【0028】
本発明では、減筒運転時に非稼働状態となる気筒に対する吸入空気量を運転者の要求に応じて調整可能としている。このため、内燃機関の運転状況に応じた適切な吸入空気量を得て、燃料消費量の削減や燃料消費率の改善を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】実施形態に係るV型エンジンをクランクシャフトの軸心に沿った方向から見たエンジン内部の概略構成を示す図である。
【図2】エンジン、吸排気系及び制御系の概略を示すシステム構成図である。
【図3】エンジンの制御系を示すブロック図である。
【図4】各減筒運転モードにおける休止側バンクのスロットルバルブ開度及び減筒運転継続時間を示す図である。
【図5】減筒運転の制御手順を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、内燃機関としてV型10気筒ガソリンエンジンを搭載した車両に本発明を適用した場合について説明する。
【0031】
本実施形態の特徴とする制御である減筒運転時のスロットルバルブ開度制御について説明する前に、エンジン全体構成及び制御ブロックについて説明する。
【0032】
−エンジン全体構成の説明−
図1は、本実施形態に係るV型エンジンEをクランクシャフトCの軸心に沿った方向から見たエンジン内部の概略構成を示す図である。また、図2は、このエンジンE、吸排気系及び制御系の概略を示すシステム構成図である。
【0033】
これらの図に示すように、V型エンジンEは、シリンダブロック1の上部にV型に突出した一対のバンク2L,2Rを有している。各バンク2L,2Rは、シリンダブロック1の上端部に設置されたシリンダヘッド3L,3Rと、その上端に取り付けられたヘッドカバー4L,4Rとをそれぞれ備えている。上記シリンダブロック1には複数のシリンダ5L,5R,…(例えば各バンク2L,2Rに5個ずつ)が所定の挟み角(例えば90°(この値に限定されるものではない))をもって配設されており、これらシリンダ5L,5R,…の内部にピストン51L,51R,…が往復移動可能に収容されている。また、各ピストン51L,51R,…はコネクティングロッド52L,52R,…を介してクランクシャフトCに動力伝達可能に連結されている。更に、シリンダブロック1の下側にはクランクケース6が取り付けられており、上記シリンダブロック1内の下部からクランクケース6の内部に亘る空間がクランク室61となっている。また、このクランクケース6の更に下側にはオイル溜まり部となるオイルパン62が配設されている。
【0034】
また、上記シリンダヘッド3L,3Rには吸気ポート31L,31Rを開閉するための吸気バルブ32L,32R及び排気ポート33L,33Rを開閉するための排気バルブ34L,34Rがそれぞれ組み付けられており、シリンダヘッド3L,3Rとヘッドカバー4L,4Rとの間に形成されているカム室41L,41Rに配置されたカムシャフト35L,35R,36L,36Rの回転によって各バルブ32L,32R,34L,34Rの開閉動作が行われるようになっている。
【0035】
また、本実施形態に係るエンジンEのシリンダヘッド3L,3Rは、分割構造となっている。詳しくは、シリンダブロック1の上面に取り付けられるシリンダヘッド本体37L,37Rと、このシリンダヘッド本体37L,37Rの上側に組み付けられるカムシャフトハウジング38L,38Rとによりシリンダヘッド3L,3Rが構成されている。
【0036】
また、上記各バンク2L,2Rそれぞれの吸気系は互いに独立して配設されている。つまり、各バンク2L,2Rそれぞれに対応し、上記吸気ポート31L,31Rから上流側に向かって、吸気マニホールド7L,7R、サージタンク71L,71R(図2参照)、吸気管73L,73R(左バンク2Lの吸気管73Lが本発明でいう第1の吸気通路を構成し、右バンク2Rの吸気管73Rが本発明でいう第2の吸気通路を構成している)、エアクリーナ74L,74Rが設けられている。そして、各吸気マニホールド7L,7Rの下流側が、各気筒に繋がる各吸気ポート31L,31R,…に応じて分岐されてブランチ管78L,78R,…とされ、これらブランチ管78L,78R,…が吸気ポート31L,31R,…にそれぞれ連通している。また、各吸気マニホールド7L,7Rの各ブランチ管78L,78Rそれぞれにはスロットルバルブ72L,72Rが配設され、このスロットルバルブ72L,72Rの開度が調整されることにより各気筒への吸入空気量が調整されるようになっている。また、各スロットルバルブ72L,72Rとしては、左バンク2Lの吸気マニホールド7Lに対応する5個のスロットルバルブ(第1のスロットルバルブ)72L,72L,…、及び、右バンク2Rの吸気マニホールド7Rに対応する5個のスロットルバルブ(第2のスロットルバルブ)72R,72R,…がそれぞれ配設されている。左バンク2Lのスロットルバルブ72L,72L,…は互いにリンク機構等によって連結されて連動するようになっている。同様に、右バンク2Rのスロットルバルブ72R,72R,…も互いにリンク機構等によって連結されて連動するようになっている。
【0037】
これにより、各バンク2L,2Rそれぞれの吸気系にあっては、上記エアクリーナ74L,74Rから吸気管73L,73R内に導入された空気が、サージタンク71L,71Rを通じてそれぞれ独立して各吸気マニホールド7L,7Rに導入されるようになっている。
【0038】
上記シリンダヘッド3L,3Rの吸気ポート31L,31Rにはインジェクタ75L,75Rがそれぞれ設けられており、このインジェクタ75L,75Rからの燃料噴射時にあっては、吸気マニホールド7L,7R内に導入された空気と、このインジェクタ75L,75Rから噴射された燃料とが混合されて混合気となり、吸気バルブ32L,32Rの開弁に伴って燃焼室76L,76Rへ導入されることになる。
【0039】
燃焼室76L,76Rの頂部には点火プラグ77L,77Rが配設されている。上記燃焼室76L,76Rにおいて、点火プラグ77L,77Rの点火に伴う混合気の燃焼圧力はピストン51L,51Rに伝えられ、ピストン51L,51Rを往復運動させる。このピストン51L,51Rの往復運動はコネクティングロッド52L,52Rを介してクランクシャフトCに伝えられ、回転運動に変換されてエンジンEの出力として取り出されることになる。また、上記各カムシャフト35L,35R,36L,36Rは、クランクシャフトCから取り出される動力がタイミングチェーンによって伝達されて回転駆動され、この回転によって上記各バルブ32L,32R,34L,34Rの開閉動作を行わせる。
【0040】
上記燃焼後の混合気は排気ガスとなり、排気バルブ34L,34Rの開弁に伴い排気マニホールド8L,8Rに排出される。排気マニホールド8L,8Rには排気管81L,81R(左バンク2Lの排気管81Lが本発明でいう第1の排気通路を構成し、右バンク2Rの排気管81Rが本発明でいう第2の排気通路を構成している)がそれぞれ接続され、更に、排気管81L,81Rには三元触媒等を内蔵した触媒コンバータ82L,82R(左バンク2Lに繋がる触媒コンバータ82Lが本発明でいう第1の排気浄化装置であり、右バンク2Rに繋がる触媒コンバータ82Rが本発明でいう第2の排気浄化装置である)が取り付けられている。この触媒コンバータ82L,82Rを排気ガスが通過することにより、排気ガス中に含まれる炭化水素(HC)、一酸化炭素(CO)、及び酸化窒素成分(NOx)が浄化されるようになっている。また、上記排気管81L,81Rの下流端側は合流されてマフラ83に接続されている。
【0041】
−制御ブロックの説明−
以上のエンジンEの運転状態は、左バンク用エンジンECU(Electronic Control Unit)9L,右バンク用エンジンECU9Rによって制御される。各ECU9L,9Rの構成は互いに略同一であるので、ここでは左バンク用エンジンECU9Lを代表して説明する。
【0042】
この左バンク用エンジンECU9Lは、図3に示すように、CPU(Central Processing Unit)91、ROM(Read Only Memory)92、RAM(Random Access Memory)93及びバックアップRAM94などを備えている。
【0043】
ROM92は、各種制御プログラムや、それら各種制御プログラムを実行する際に参照されるマップ等が記憶されている。CPU91は、ROM92に記憶された各種制御プログラムやマップに基づいて演算処理を実行する。
【0044】
RAM93は、CPU91での演算結果や各センサから入力されたデータ等を一時的に記憶するメモリであり、バックアップRAM94は、エンジンEの停止時にその保存すべきデータ等を記憶する不揮発性のメモリである。これらROM92、CPU91、RAM93及びバックアップRAM94は、バス97を介して互いに接続されるとともに、外部入力回路95及び外部出力回路96と接続されている。
【0045】
外部入力回路95には、水温センサ101、エアフローメータ102L、吸気温センサ103L、A/Fセンサ104aL、O2センサ104bL、スロットルポジションセンサ105L、クランク角センサ106、カム角センサ107L、ノックセンサ108L、吸気圧センサ109L、アクセル開度センサ110等が接続されている。また、後述する減筒運転時のスロットルバルブ制御におけるモード設定を行うためのモード設定スイッチ(吸気量選択手段)120も外部入力回路95に接続されている。このモード設定スイッチ120の詳細については後述する。
【0046】
一方、外部出力回路96には、上記インジェクタ75L、イグナイタ111L及び、スロットルバルブ72Lを駆動するスロットルモータ72aL等が接続されている。
【0047】
上記水温センサ101は、シリンダブロック1に形成されているウォータジャケット11内を流れる冷却水の温度を検出し、その冷却水温信号を左バンク用エンジンECU9Lに送信する。尚、この水温センサ101としては、左バンク用及び右バンク用の2個を配設し、左バンク用水温センサの冷却水温信号が左バンク用エンジンECU9Lに送信され、右バンク用水温センサの冷却水温信号が右バンク用エンジンECU9Rに送信されるようにしてもよい。
【0048】
エアフローメータ102Lは、左バンク2Lの吸入空気量を検出し、その吸入空気量信号を左バンク用エンジンECU9Lに送信する。
【0049】
吸気温センサ103Lは、上記エアクリーナ74Lの下流側に配設され、左バンク2Lの吸入空気温度を検出して、その吸気温信号を左バンク用エンジンECU9Lに送信する。
【0050】
A/Fセンサ104aLは、触媒コンバータ82Lの上流側に配設され、例えば限界電流式の酸素濃度センサが適用されている。そして、このA/Fセンサ104aLは、広い空燃比領域に亘って空燃比に対応した出力電圧を発生し、その電圧信号を左バンク用エンジンECU9Lに送信する。
【0051】
2センサ104bLは、触媒コンバータ82Lの下流側に配設され、例えば起電力式(濃淡電池式)の酸素濃度センサが適用されている。そして、このO2センサ104bLは、排気中の空燃比が理論空燃比にあるか否かを判定しその判定信号を左バンク用エンジンECU9Lに送信する。
【0052】
スロットルポジションセンサ105Lは、スロットルバルブ72Lの開度を検出するものであって、そのスロットル開度検出信号を左バンク用エンジンECU9Lに送信する。
【0053】
クランク角センサ106は、クランクシャフトCの近傍に配設されており、クランクシャフトCの回転角(クランク角CA)及び回転速度(エンジン回転速度NE)を検出するものである。具体的に、このクランク角センサ106は、所定のクランク角(例えば30°)毎にパルス信号を出力する。このクランク角センサ106によるクランク角の検出手法の一例としては、クランクシャフトCと回転一体のロータ(NEロータ)106aの外周面の30°おきに外歯を形成しておき、この外歯と対面して電磁ピックアップで成る上記クランク角センサ106を配置する。そして、クランクシャフトCの回転に伴って外歯がクランク角センサ106の近傍を通過した際に、このクランク角センサ106が出力パルスを発生するようになっている。尚、このNEロータ106aとしては、外周面に形成される外歯が10°おきに形成されたものが適用される場合もある。この場合、エンジンECU9内で分周して30°CA毎の出力パルスを発生する。尚、このクランク角センサ106としては、左バンク用及び右バンク用の2個を配設し、左バンク用クランク角センサの出力パルスが左バンク用エンジンECU9Lに送信され、右バンク用クランク角センサの出力パルスが右バンク用エンジンECU9Rに送信されるようにしてもよい。
【0054】
カム角センサ107Lは、吸気カムシャフト35Lの近傍に配設されており、例えば第1番気筒の圧縮上死点(TDC)に対応してパルス信号を出力することにより気筒判別センサとして使用される。つまり、このカム角センサ107Lは、吸気カムシャフト35Lの1回転毎にパルス信号を出力する。このカム角センサ107Lによるカム角の検出手法の一例としては、吸気カムシャフト35Lと回転一体のロータの外周面の1箇所に外歯を形成しておき、この外歯と対面して電磁ピックアップで成る上記カム角センサ107Lを配置し、吸気カムシャフト35Lの回転に伴って外歯がカム角センサ107Lの近傍を通過した際に、このカム角センサ107Lが出力パルスを発生するようになっている。上記ロータはクランクシャフトCの1/2の回転速度で回転するため、クランクシャフトCが720°回転する毎に出力パルスを発生する。言い換えると、ある特定の気筒が同一行程(例えば第1番気筒が圧縮上死点に達した時点)となる度に出力パルスを発生する構成である。
【0055】
ノックセンサ108Lは、シリンダブロック1に伝わるエンジンの振動を圧電素子式(ピエゾ素子式)または電磁式(マグネット、コイル)などによって検出する振動式センサであり、シリンダブロック1の振動の大きさに応じた出力信号を左バンク用エンジンECU9Lに送信する。
【0056】
吸気圧センサ109Lは、サージタンク71Lに取り付けられており、吸気管73L内の圧力(吸気管内圧力)を検出し、その吸気圧信号を左バンク用エンジンECU9Lに送信する。
【0057】
アクセル開度センサ110は、アクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)に応じた検出信号を出力するものであり、単位時間あたりのアクセル開度の変化量を認識することによってアクセルの操作速度を認識できるようになっている。
【0058】
そして、左バンク用エンジンECU9Lは、上記各種センサ101〜110の出力信号に基づいて、イグナイタ111L、インジェクタ75L、スロットルモータ72aL等の各部を制御することにより、点火時期制御等を含むエンジンEの各種制御を実行する。
【0059】
その一例として、イグナイタ111Lによる点火プラグ77Lの点火タイミングの基本制御としては、点火タイミングがMBT(Minimum Spark Advance for Best Torque:最適点火時期)に近付くように点火タイミングの進角補正を行っていきながら、ノックセンサ108Lによってノッキングが検知された場合には、点火タイミングの遅角補正を行ってノッキングを解消するといった制御が行われる。
【0060】
また、インジェクタ75Lの燃料噴射の制御としては、エンジン負荷やエンジン回転数等に基づいて目標空燃比を算出し、エアフローメータ102Lによって検出された吸入空気量に基づき、上記目標空燃比が得られるように燃料噴射量の制御(インジェクタ75Lの開弁時間の制御)が行われる。この際、上記A/Fセンサ104aL及びO2センサ104bLの各出力に基づいて排気ガス中の酸素濃度を算出し、その算出した酸素濃度から得られる実際の空燃比を目標空燃比(例えば理論空燃比)に一致させるように、インジェクタ75Lによる燃料噴射量を制御するといった空燃比フィードバック制御が行われる。
【0061】
また、スロットルモータ72aLの駆動制御としては、運転者により操作されるアクセルペダルの開度等に基づき、要求されたエンジン出力を得るための吸入空気量となるスロットルバルブ72Lの開度が得られるようにスロットルモータ72aLの駆動量が制御される。また、このスロットルモータ72aLの駆動制御として、後述する減筒運転時のスロットルバルブ制御も行われる。この減筒運転時のスロットルバルブ制御の詳細については後述する。
【0062】
また、右バンク用ECU9R及びこの右バンク用ECU9Rに接続される各種センサ101〜110の構成、この右バンク用ECU9Rによるイグナイタ111R、インジェクタ75R、スロットルモータ72aR等の各部の制御も左バンク2Lと同様にして行われる。
【0063】
また、上記左バンク用ECU9Lと右バンク用ECU9Rとは、エンジン制御に必要な情報を互いに送受信(例えばCAN通信による送受信)が可能に接続されている。
【0064】
−減筒運転−
次に、エンジンEの減筒運転について説明する。
【0065】
本実施形態に係るV型エンジンEは、左バンク2L及び右バンク2Rのうち一方のバンク(例えば左バンク2L)に属する気筒群(本実施形態では5気筒)の稼働を休止する減筒運転が可能となっている。つまり、エンジンEのアイドリング運転時等のように、余剰出力のある状態では、各気筒に掛かる負荷が小さいため、吸排気損失が大きくなり、燃焼効率の悪化が懸念される。このため、無負荷時や軽負荷時には、一方のバンク(本実施形態では左バンク2L)の気筒への燃料供給を遮断して、これら気筒を休止させる減筒運転を行い、燃料が供給される稼動気筒(他方のバンク(本実施形態では右バンク2R)の気筒)の負荷を高めて運転効率を上げることにより、燃料消費率の改善を図るようにしている。
【0066】
この減筒運転の具体的な動作としては、上記クランク角センサ106からの出力信号に基づいて算出されるエンジン回転数、スロットルポジションセンサ105L,105Rにより検出されるスロットルバルブ72L,72Rの開度、上記水温センサ101によって検出される冷却水の温度、各触媒コンバータ82L,82Rの温度等に基づいて、エンジンEがアイドリング運転等の無負荷状態や軽負荷状態にあるか否かを判定すると共に、冷却水温度が所定温度以上であるか否かを判定し、且つ各触媒コンバータ82L,82Rの温度が活性温度に達しているか否かを判定する。そして、無負荷状態や軽負荷状態にあり、冷却水温度が所定温度以上であり、且つ各触媒コンバータ82L,82Rが活性温度に達している際には減筒運転実行条件が成立したと判定するようにしている。
【0067】
また、本実施形態では、減筒運転の実行時には、常に左バンク2Lの5気筒について稼働を休止するようにしている。その理由は、図示しないが、燃料タンク内で発生した蒸発燃料が右バンク2Rの吸気マニホールド7Rに導入される構成となっており、この蒸発燃料を処理する必要があることから、この右バンク2Rの5気筒については稼働を継続させるためである。
【0068】
尚、減筒運転としては、これに限らず、減筒運転への移行時に、前回の減筒運転時に稼働していたバンクを休止バンクとし、前回の減筒運転時に休止していたバンクを稼働バンクとして運転するようにしてもよい。つまり、減筒運転が開始される度に、休止させるバンクを交互に切り換えることで、各気筒の累積稼働時間の均一化を図り、エンジンEの長寿命化を図るものである。
【0069】
また、本実施形態においては、減筒運転中は、休止気筒の吸気バルブ32L及び排気バルブ34Lについては、全気筒運転中と同様に開閉動作を行うようにしている。これにより、減筒運転を実行しない従来のエンジンからの大きな設計変更を必要とすることなしに、本実施形態に係るエンジンEを構築することができるようにしている。
【0070】
−減筒運転時のスロットルバルブ制御−
本実施形態の特徴とするところは、上述した如く左バンク2Lの各気筒の稼働を休止する減筒運転を実施する場合に、この左バンク2Lのスロットルバルブ72Lの開度の設定(非稼働気筒吸気量調整手段による吸気量の調整)と、その際の減筒運転の終了タイミング(全気筒運転への復帰タイミング)とを設定するためのモード設定スイッチ120が車室内の運転席近傍(例えばセンターコンソール上)に配設されていることにある。そして、このモード設定スイッチ120を運転者が操作することによって減筒運転時のモードが設定され、そのモード設定に従って、左バンク用ECU9Lが左バンク2Lのスロットルバルブ72Lの開度を調整する。
【0071】
つまり、右バンク用ECU9Rによる右バンク2Rのスロットルバルブ72Rの開度制御としては、上述した如く、運転者により操作されるアクセルペダルの開度等に基づき、要求されたエンジン出力を得るための吸入空気量となるスロットルバルブ72Rの開度が得られるようにスロットルモータ72aRの駆動量が制御される。一方、左バンク用ECU9Lによる左バンク2Lのスロットルバルブ72Lの開度制御としては、減筒運転モードの設定に従ったスロットルバルブ72Lの開度が得られるようにスロットルモータ72aLの駆動量が制御されるようになっている。
【0072】
以下、減筒運転時のスロットルバルブ制御について具体的に説明する。
【0073】
上記モード設定スイッチ120は、ダイヤル式のスイッチまたは押しボタン式のスイッチで成り、減筒運転モードとして「モード1」,「モード2」,「モード3」の3種類のモードのうちの1つを選択できるようになっている。
【0074】
図4は、各モードにおける左バンク2Lのスロットルバルブ72Lの開度と、減筒運転の終了タイミング(減筒運転継続時間)とを示している。
【0075】
この図4に示すように、「モード1」が選択された場合、休止側である左バンク2Lのスロットルバルブ72Lの開度を全閉(僅かな吸気の流れを許容する略全閉も含む)に設定し、且つ減筒運転の終了タイミングとしては減筒運転が開始されてからの積算吸入空気量(積算Ga)が所定値に達した時点としている。例えば、エンジンEのアイドリング運転中であれば、この積算吸入空気量が所定値に達するタイミングとしては減筒運転が開始されてから300sec後とされる。
【0076】
「モード2」が選択された場合、休止側である左バンク2Lのスロットルバルブ72Lの開度を右バンク2Rのスロットルバルブ72Rの開度と同一開度に設定する。例えば、エンジンEの軽負荷時であって、右バンク2Rのスロットルバルブ72Rの開度が5%であった場合には、休止側である左バンク2Lのスロットルバルブ72Lの開度も5%に設定されることになる。また、この「モード2」では、減筒運転の終了タイミングとしては減筒運転が開始されてからの積算吸入空気量(積算Ga)が所定値に達した時点としている。例えば、エンジンEの軽負荷運転中であれば、この積算吸入空気量が所定値に達するタイミングとしては減筒運転が開始されてから200sec後とされる。
【0077】
「モード3」が選択された場合、休止側である左バンク2Lのスロットルバルブ72Lの開度を全開(吸気の流入抵抗を最少にする回動位置よりも僅かに閉じ側の回動位置である略全開も含む)に設定し、且つ減筒運転の終了タイミングとしては減筒運転が開始されてからの積算吸入空気量(積算Ga)が所定値に達した時点としている。例えば、エンジンEのアイドリング運転中であれば、この積算吸入空気量が所定値に達するタイミングとしては減筒運転が開始されてから100sec後とされる。
【0078】
尚、減筒運転の終了タイミングを設定するための上記積算吸入空気量としては上述した各値には限定されず、実験やシミュレーション等により予め求められる。
【0079】
以下、上述した如くモード設定スイッチ120によって減筒運転モードが選択された状態での減筒運転時の制御手順について図5のフローチャートに沿って説明する。この図5に示した制御ルーチンは、エンジンEの起動後の所定時間毎またはクランクシャフトCの所定角度回転毎に繰り返して実行される。
【0080】
先ず、全気筒運転が実行されている状態で、ステップST1において、減筒運転実行条件が成立したか否かを判定する。この減筒運転実行条件としては、上述した如く、エンジンEがアイドリング運転等の無負荷状態や軽負荷状態にあるか否か、その他、上記水温センサ101によって検出される冷却水の温度が所定温度(例えば50℃)以上であるか否か、各触媒コンバータ82L,82Rの温度が所定の活性温度(例えば450℃以上)となっているか等が挙げられる。この各触媒コンバータ82L,82Rの温度は、現在のエンジン運転状態から推定される。具体的には、エンジン回転数とエンジン負荷(スロットルバルブ開度等)とから各触媒コンバータ82L,82Rの温度を推定する触媒温度推定マップを上記ROM92に記憶させておき、この触媒温度推定マップに、現在のエンジン回転数およびエンジン負荷を当て嵌めることで各触媒コンバータ82L,82Rの温度を推定する。また、各触媒コンバータ82L,82Rの温度推定動作としては、排気ガス温度から推定するようにしてもよい。更には、サーミスタなどの手段を用いて直接的に温度を検出するようにしてもよい。
【0081】
上記減筒運転実行条件が成立していない場合には、ステップST1でNO判定され、ステップST5に移って全気筒運転を継続する。また、減筒運転実行中に、ステップST1でNO判定された場合には、全気筒運転が復帰されることになる。
【0082】
一方、上記減筒運転実行条件が成立している場合には、ステップST1でYES判定され、ステップST2に移る。このステップST2では、運転者によるモード設定スイッチ120の操作によって設定されている減筒運転モードを判定する。つまり、運転者が要求している減筒運転モード(上記モード1〜3のうちの何れであるか)を判定する。
【0083】
その後、ステップST3に移り、上記設定されている減筒運転モードでの減筒運転を実行する。
【0084】
つまり、運転者が「モード1」を選択している場合には、休止側である左バンク2Lのスロットルバルブ72Lの開度を全閉に設定する。この場合、左バンク2Lのピストン51Lが往復動することによるポンピングロスは増加し、稼働側バンク(右バンク2R)の負荷は比較的大きいものの、左バンク2Lの各気筒から触媒コンバータ82Lへの空気排出量(略外気温に近い温度の空気の流通量)は少なくなるため、この触媒コンバータ82Lの温度低下量を少なくすることができる。その結果、触媒コンバータ82Lが活性温度下限値付近まで低下して減筒運転実行条件が解除されるタイミングを遅らせることができ、減筒運転の継続時間を長くできて燃料消費量の削減が図れることになる。例えば、このモード1は、比較的長い時間のアイドリング運転が継続される場合に選択される。
【0085】
尚、この運転モード(モード1)では、減筒運転が開始された後、例えば300sec後に減筒運転を終了する。つまり、減筒運転が開始されてから300secが経過したことで減筒運転解除条件が成立したとして、このステップST4でYES判定され、ステップST5に移って全気筒運転に復帰する。
【0086】
また、運転者が「モード3」を選択している場合には、休止側である左バンク2Lのスロットルバルブ72Lの開度を全開に設定する。この場合、左バンク2Lの排気系に備えられた触媒コンバータ82Lの温度低下量はある程度大きくなるものの、左バンク2Lのピストン51Lが往復動することによるポンピングロスは低減されることになる。その結果、減筒運転期間中における左バンク2Lでのポンピングロス低減に伴って、稼働側バンク(右バンク2R)の負荷は小さくなり燃料消費率の改善が図れることになる。例えば、このモード3は、比較的短い時間だけアイドリング運転が行われる場合(例えば交差点での信号待ちなどの場合)に選択される。
【0087】
尚、この運転モード(モード3)では、減筒運転が開始された後、例えば100sec後に減筒運転を終了する。つまり、減筒運転が開始されてから100secが経過したことで減筒運転解除条件が成立したとして、このステップST4でYES判定され、ステップST5に移って全気筒運転に復帰する。
【0088】
また、運転者が「モード2」を選択している場合には、休止側である左バンク2Lのスロットルバルブ72Lの開度を右バンク2Rのスロットルバルブ72Rの開度と同一開度に設定する。つまり、上述したモード1での減筒運転動作とモード3での減筒運転動作との略中間的な制御動作となる。このため、左バンク2Lの各気筒から触媒コンバータ82Lへの空気排出量(略外気温に近い温度の空気の流通量)をある程度少なくすることで、触媒コンバータ82Lの温度低下量を少なくすることができ、且つ左バンク2Lのピストン51Lが往復動することによるポンピングロスをある程度低減することが可能になる。
【0089】
尚、この運転モード(モード2)では、減筒運転が開始された後、例えば200sec後に減筒運転を終了する。つまり、減筒運転が開始されてから200secが経過したことで減筒運転解除条件が成立したとして、このステップST4でYES判定され、ステップST5に移って全気筒運転に復帰する。
【0090】
尚、上記ステップST4での減筒運転解除条件としては、上述した減筒運転が所定時間継続されたことだけでなく、運転者によるアクセルペダルの操作によってアクセル開度が所定値以上大きくなったことも挙げられ、この場合には、上記所定時間の経過を待つことなく全気筒運転に復帰されることになる。
【0091】
以上説明したように、本実施形態によれば、減筒運転を実行する際、予め上記モード設定スイッチ120の操作によって設定されている減筒運転モード(運転者の要求する減筒運転モード)に応じ、その減筒運転時において非稼働となる気筒に対する吸気量を調整するようにしている。そして、吸気量を少なくするように設定した場合には、休止気筒のピストン51Lが往復動することによるポンピングロスは増加するものの、この非稼働となっている気筒からその下流側の触媒コンバータ82Lへの空気排出量は少なくなるため、この触媒コンバータ82Lの温度低下量を少なくすることができる。その結果、触媒コンバータ82Lが活性温度下限値付近まで低下して減筒運転実行条件が解除されるタイミングを遅らせることができ、減筒運転の継続時間を長くできて燃料消費量の削減を図ることができる。
【0092】
逆に、吸気量を多くするように設定した場合には、触媒コンバータ82Lの温度低下量はある程度大きくなるものの、休止気筒のピストン51Lが往復動することによるポンピングロスは低減され、稼働している気筒に対する負荷が軽減されることになる。その結果、減筒運転期間中における休止気筒でのポンピングロス低減に伴う燃料消費率の改善を図ることができる。
【0093】
このように、本実施形態では、触媒コンバータ82Lの温度低下量を少なくすることによって燃料消費量を削減できる減筒運転と、休止気筒でのポンピングロス低減に伴う燃料消費率の改善が図れる減筒運転とを運転者の要求に応じて切り換えることが可能であり、減筒運転の適正化を図ることが可能になる。
【0094】
−他の実施形態−
以上説明した実施形態では、自動車用V型エンジンEに本発明を適用した場合について説明した。本発明はこれに限らず、自動車用水平対向型エンジン、自動車用直列型エンジン等に対しても適用可能である。また、ガソリンエンジンに限らずディーゼルエンジンにも適用可能である。また、本発明は、エンジンの気筒数、燃料噴射方式、その他、エンジンEの仕様は特に限定されるものではない。
【0095】
また、上記実施形態では、減筒運転モードとして3つのモードを選択可能な構成としていた。本発明はこれに限らず、減筒運転モードとして2つのモードを選択可能な構成としてもよい。この場合、スロットルバルブ72Lを全閉とする「モード1」と、スロットルバルブ72Lを全開とする「モード2(上記実施形態におけるモード3に相当)」とが選択可能な構成とする。また、4つ以上のモードを選択可能な構成としてもよい。例えば、各モード毎にスロットルバルブ72Lの開度を設定する(全閉から全開の間で複数段階に開度設定を行う)構成とする。
【0096】
また、本発明は、FF(フロントエンジン・フロントドライブ)型車両、FR(フロントエンジン・リアドライブ)型車両、4輪駆動車の何れにも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明は、自動車に搭載され減筒運転が実行可能とされたエンジンにおいて、減筒運転時における休止気筒の吸入空気量を調整するためのスロットルバルブの開度制御に適用することが可能である。
【符号の説明】
【0098】
2L 左バンク
2R 右バンク
32L 吸気バルブ
34L 排気バルブ
72L スロットルバルブ(第1のスロットルバルブ)
72R スロットルバルブ(第2のスロットルバルブ)
73L 吸気管(第1の吸気通路)
73R 吸気管(第2の吸気通路)
81L 排気管(第1の排気通路)
81R 排気管(第2の排気通路)
82L 触媒コンバータ(第1の排気浄化装置)
82R 触媒コンバータ(第2の排気浄化装置)
120 モード設定スイッチ(吸気量選択手段)
E エンジン(多気筒内燃機関)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数気筒のうちの一部の気筒に繋がる第1の排気通路に設けられた第1の排気浄化装置と、他の気筒に繋がる第2の排気通路に設けられた第2の排気浄化装置とを備えると共に、所定の減筒運転実行条件の成立に伴って上記一部の気筒を非稼働にする減筒運転が実行可能な多気筒内燃機関の運転制御装置において、
上記減筒運転実行条件の成立に伴って減筒運転が実行される際、上記非稼働となる気筒に対する吸気量を運転者の要求に応じて調整する非稼働気筒吸気量調整手段を備えていることを特徴とする多気筒内燃機関の運転制御装置。
【請求項2】
上記請求項1記載の多気筒内燃機関の運転制御装置において、
上記複数気筒のうちの上記一部の気筒に繋がる第1の吸気通路には第1のスロットルバルブが、上記他の気筒に繋がる第2の吸気通路には第2のスロットルバルブがそれぞれ設けられており、
上記非稼働気筒吸気量調整手段は、減筒運転が実行される際、上記非稼働となる気筒に繋がる吸気通路に設けられたスロットルバルブの開度を運転者の要求に応じて調整可能としていることを特徴とする多気筒内燃機関の運転制御装置。
【請求項3】
上記請求項1または2記載の多気筒内燃機関の運転制御装置において、
上記減筒運転の実行時、非稼働となる気筒に備えられている吸気バルブ及び排気バルブは停止することなく、減筒運転の非実行時と同様の開閉動作を行う構成とされていることを特徴とする多気筒内燃機関の運転制御装置。
【請求項4】
上記請求項1、2または3記載の多気筒内燃機関の運転制御装置において、
上記非稼働気筒吸気量調整手段は、運転者が要求する上記非稼働となる気筒に対する吸気量が少ないほど、減筒運転の継続時間を長く設定するよう構成されていることを特徴とする多気筒内燃機関の運転制御装置。
【請求項5】
上記請求項1〜4のうち何れか一つに記載の多気筒内燃機関の運転制御装置において、
上記多気筒内燃機関は車両に搭載されるものであって、
車両の車室内には、上記非稼働となる気筒に対する吸気量を、運転者の操作によって選択可能な吸気量選択手段が設けられており、上記非稼働気筒吸気量調整手段は、この選択された吸気量に従って、上記非稼働となる気筒に対する吸気量を調整するよう構成されていることを特徴とする多気筒内燃機関の運転制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−223133(P2010−223133A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−72602(P2009−72602)
【出願日】平成21年3月24日(2009.3.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】