説明

多点検査装置と方法

【課題】単孔用ツールと複孔用ツールを併用し、多数の箇所を最短時間又はこれに近い短時間で検査することができる多点検査装置と方法を提供する。
【解決手段】単孔用ツール14aと、複孔用ツール14bと、ツールのいずれかを孔2に対して位置決めする位置決め装置12と、各孔2の中心位置と干渉物4の位置とを記憶する記憶装置18とを備える。(A)各孔2の中心位置と干渉物位置を表示し、(B)指定した孔2の検査順が干渉物位置を通過する場合に、その前後を別の列として扱い、(C)検査順の各列に含まれる孔数mが、複孔用ツール14bで同時に検査する孔数kより小さい場合に、単孔用ツール14aの使用と、検査順に基づく孔2の順を決定し、(D)m≧kの場合に、複孔用ツール14bの使用と、検査順に基づくk個毎の孔2の順を決定し、かつkより少ない最後の1又は複数の孔を複孔用ツール14bで同時に検査する孔を決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大型の熱交換器や蒸気発生装置の製造工程において、多数の箇所を検査する多点検査装置と方法に関する。
【背景技術】
【0002】
CAD図面を利用した設計支援システムとして、例えば特許文献1,2が既に提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−292584号公報、「原子力計装設計支援システム」
【特許文献2】特開2002−7485号公報、「原子力プラント構造物の設計支援システム」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
大型の熱交換器や蒸気発生装置の管板は、伝熱管(チューブ)を固定する多数(例えば1万箇所以上)の孔を有する。このような装置の製造工程では、各孔に対して検査ツールを位置決めし検査する必要があり、検査に長期間かかる問題点があった。
【0005】
また従来、各孔の検査後に検査ツールを原点復帰させ、次の検査時に検査対象の孔に位置決めしていた。しかし、この場合、原点と検査位置との間の検査ツールの移動に余分な時間がかかっていた。
一方、原点復帰を省略し、隣接する検査位置に最短ルートで移動させると、検査ツールの移動時間を短縮できるが、管板の表面に存在する突起部(仕切板や外周部等)と干渉する可能性があった。
【0006】
また、検査時間を短縮するために、複数の孔を同時に検査できる複孔用ツールを適用することができるが、突起部の存在により複孔用ツールを適用できない孔も多く、単孔を検査する単孔用ツールと併用する必要がある。
しかし、管板に存在する孔の配列は、各列毎に相違する場合が多く、単孔用ツールと複孔用ツールの切り替えの判断が困難であった。
【0007】
従来、上述した問題点を解決するために、CAD図面を利用し、ディスプレイ装置に多数の孔と突起部を表示させ、各孔の検査順序を人為的に決定し、この順序に応じて、単孔用ツールと複孔用ツールの選択と、最短ルートと迂回ルートの選択を人為的に実施していた。
しかし、これらの選択は複雑であり、その検証に時間と手間がかかっていた。
また、この検証が不十分な場合、(1)検査時間が長期化する、(2)突起部と干渉する、などの問題点があった。
【0008】
本発明は、上述した問題点を解決するために創案されたものである。すなわち、本発明の目的は、単孔用ツールと複孔用ツールを併用し、多数の箇所を最短時間又はこれに近い短時間で検査することができる多点検査装置と方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、被検査平面に設けられた多数の孔を検査する多点検査方法であって、
各孔を単独に検査する単孔用のツールと、
検査方向の一列上に隣接する複数の孔を同時に検査する複孔用のツールと、
前記ツールのいずれかを孔に対して位置決めする位置決め装置と、
各孔の中心位置と各ツールが干渉する干渉物位置とを記憶する記憶装置とを備え、
(A)前記中心位置と干渉物位置を表示し、
(B)指定した孔の検査順が干渉物位置を通過する場合に、干渉物位置の前後を別の列として扱い、
(C)検査順の各列に含まれる孔数mが、複孔用ツールで同時に検査する孔数kより小さい場合に、単孔用ツールの使用と、検査順に基づく孔の順を決定し、
(D)m≧kの場合に、複孔用ツールの使用と、検査順に基づくk個毎の孔の順を決定し、かつkより少ない最後の1又は複数の孔を複孔用ツールで同時に検査する孔を決定する、ことを特徴とする多点検査方法が提供される。
【0010】
また本発明によれば、被検査平面に設けられた多数の孔を検査する多点検査装置であって、
各孔を単独に検査する単孔用のツールと、
検査方向の一列上に隣接する複数の孔を同時に検査する複孔用のツールと、
前記ツールのいずれかを孔に対して位置決めする位置決め装置と、
各孔の中心位置と各ツールが干渉する干渉物位置とを記憶する記憶装置と、
前記中心位置と干渉物位置を表示するディスプレイ装置と、
孔の検査順を指定する入力装置と、
前記検査順に基づき、使用するツール、位置決め孔、退避動作の有無を決定し出力する演算装置とを備え、前記演算装置は、
(A)指定した孔の検査順が干渉物位置を通過する場合に、干渉物位置の前後を別の列として扱い、
(B)検査順の各列に含まれる孔数mが、複孔用ツールで同時に検査する孔数kより小さい場合に、単孔用ツールの使用と、検査順に基づく孔の順を決定し、
(C)m≧kの場合に、複孔用ツールの使用と、検査順に基づくk個毎の孔の順を決定し、かつkより少ない最後の1又は複数の孔を複孔用ツールで同時に検査する孔を決定する、ことを特徴とする多点検査装置が提供される。
【発明の効果】
【0011】
上記本発明の装置と方法によれば、指定した孔の検査順が干渉物位置を通過する場合に、干渉物位置の前後を別の列として扱うので、各列には干渉物位置が存在しない。従って、各列内の孔の検査は、無駄な退避動作をなくして最短時間又はこれに近い短時間で検査することができる。
【0012】
また、各列に含まれる孔数mが、複孔用ツールで同時に検査する孔数kより少ない場合に、単孔用ツールを使用して検査順に1つずつ孔を検査して、m回でm個の孔を確実に検査することができる。
【0013】
また、逆に各列に含まれる孔数mが孔数kと同じかこれより多い場合、すなわちm≧kの場合に、複孔用ツールを使用して検査順にk個ずつ孔を検査して、検査時間を短縮することができる。
【0014】
さらにこの場合、mをkで割った商に相当する1又は複数の孔は、最後に複孔用ツールで同時に検査するので、単孔用ツールを使用する場合よりも、検査時間を短縮することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明が対象とするワークの一例を示す図である。
【図2】本発明による装置の全体構成図である。
【図3】本発明の方法によりツールと位置決め孔を決定するフロー図である。
【図4】本発明の方法により退避動作の有無を決定するフロー図である。
【図5】本発明によるツールと位置決め孔を決定する説明図である。
【図6】本発明による退避動作の有無を決定する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好ましい実施形態を添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0017】
図1は、本発明が対象とする被検査平面の一例を示す図である。
この図において、被検査平面1は、大型の熱交換器又は蒸気発生装置の管板である。この管板1は、例えば直径約4mの円板であり、2万箇所を超えるチューブ用の貫通孔2を有する。貫通孔2の直径は、例えば10〜30mmである。以下、貫通孔を単に「孔」と呼ぶ。
なお、本発明において被検査平面1は、このような管板1に限定されず、100を超える多数の箇所を検査ツールで検査するものであればよい。
【0018】
この例で管板1は、表面が鉛直に位置決めされ、中心Oを原点とする直交2軸(x軸、y軸)が表面(被検査平面1)に設定されている。また、z軸は管板1の表面に直交する軸である。
各孔2には伝熱管(チューブ)が裏面から挿入されている。各孔2の中心位置のx−y座標は、予め計測され既知であるものとする。
【0019】
本発明による多点検査装置は、被検査平面1に設けられた多数の孔2を検査する装置である。この検査は、例えば、チューブ位置の計測、溶接部のビード形状の計測、溶接部の写真撮影、等である。また検査ツールには、それぞれの検査に適したものが用いられる。
1つの孔の検査を仮に30秒で実施できるとすると、2万箇所を実施するには、1万分≒167時間≒6.9日が必要となる。
従って、各孔2において必要なすべての検査をできるだけ短時間に自動でできることが重要となる。
【0020】
図1において、4は干渉物であり、この例では、孔2の外側を囲む円弧状干渉物4aと、孔2の内側を仕切る直線状干渉物4bとからなる。
なお、干渉物4とは、被検査平面1より検査側に突出したものであり、検査ツール(後述する)を干渉物4の高さ(被検査平面1からの突出量)よりも大きく後退させない限り、検査ツールと干渉する可能性がある部分を意味する。
【0021】
以下、干渉物4を回避するために必要な後退動作を「退避動作」と呼ぶ。また単に孔位置間を移動するために必要な後退動作を「通常動作」と呼ぶ。
退避動作の必要時間は、通常動作の必要時間よりも当然長い。そのため、検査ツールの移動の際には、退避動作を最小限にすることが重要となる。
【0022】
図2は、本発明による装置の全体構成図である。
この図に示すように、本発明の多点検査装置10は、位置決め装置12を備える。
【0023】
位置決め装置12は、単孔用ツール14aと複孔用ツール14bのいずれかを孔2に対して位置決めする。
この例で位置決め装置12は、単孔用ツール14aと複孔用ツール14bを一体に移動する検査ヘッド13を備え、検査ヘッド13をx−y平面上で2次元的にNC制御で移動するようになっている。
【0024】
なお、z軸方向の制御は、上述した退避動作と通常動作を切換えて実施するが、これをNC制御で実施してもよい。
また、位置決め装置12は上述した構成に限定されず、例えば多関節ロボットや6軸ロボットであってもよい。
【0025】
単孔用ツール14a及び複孔用ツール14bによる検査内容は、同一であり、例えば、上述したチューブ位置の計測、溶接部のビード形状の計測、溶接部の写真撮影、等である。
単孔用ツール14aは、各孔2を単独に検査する検査ツールである。
複孔用ツール14bは、検査方向の一列上に隣接する複数の孔2を同時に検査する検査ツールである。
ここで「検査方向の一列」とは、この例では、x軸に平行な方向であり、x値が増加する方向でも減少する方向でもよい。
【0026】
本発明の多点検査装置10は、さらに、ツール交換装置16、記憶装置18、ディスプレイ装置20、入力装置22、及び演算装置24を備える。
【0027】
ツール交換装置16は、単孔用ツール14a又は複孔用ツール14bのいずれかを検査ヘッド13の基準位置Aに位置決めする。
この例で単孔用ツール14aと複孔用ツール14bは、隣接して配置されており、ツール交換装置16によりそのオフセット分シフトさせることで、単孔用ツール14a又は複孔用ツール14bを検査ヘッド13の基準位置Aに位置決めするようになっている。
【0028】
なお、単孔用ツール14a又は複孔用ツール14bの位置決めは、シフト以外の回転等であってもよい。
基準位置Aに位置決められたツール14a,14bは、上述した位置決め装置12により、検査ヘッド13を介して孔2に対して位置決めされる。
なお、ツール14a,14bの一方が基準位置Aに位置決められ場合、他方は基準位置Aから十分離れており、干渉物4又はその他の部材とは干渉しないようになっている。
【0029】
なお、本発明において、ツール交換装置16は必須ではなく、これを省略し、単孔用ツール14aと複孔用ツール14bの交換と位置決めを、手動で実施してもよい。
【0030】
記憶装置18は、各孔2の中心位置と各ツール14a,14bが干渉する干渉物4の位置を記憶する。
ディスプレイ装置20は、例えばCRTであり、各孔2の中心位置と干渉物4の位置を表示する。
入力装置22は、例えばキーボードであり、孔2の検査順を指定する。なおこの指定は、人が入力しても、演算装置24により自動で決定してもよい。
【0031】
演算装置24は、例えばコンピュータ(PC)であり、指定された孔2の検査順に基づき、使用するツール、位置決め孔、退避動作の有無を決定し出力する。
【0032】
図3は、本発明の方法によりツールと位置決め孔を決定するフロー図である。
この図において、本発明の方法は、S1〜S8の各ステップ(工程)からなる。
【0033】
S1では、ディスプレイ装置20により孔2の中心位置と干渉物4の位置を表示する。
S2では、孔2の検査順を指定する。この指定は、入力装置22を用いて人が入力しても、演算装置24により自動で決定してもよい。自動で決定する場合には、検査するすべての孔2を指定し、その孔2を連続的に検査するように検査順を決定するのがよい。
【0034】
S3では、検査順が干渉物4の位置を通過するか否かを判断する。
S4では、干渉物4の位置を通過する場合(YES)に、干渉物4の位置の前後を別の列とする。これは、干渉物4の前後を別の列として扱うことにより、それぞれに適したツール(14a又は14b)と位置決め孔2を決定できるからである。
【0035】
S5では、検査順の各列に含まれる孔数mが、複孔用ツール14bで同時に検査する孔数kより少ないか否かを判断する。同時に検査する孔数kは、後述の例では3であるが、4以上であるのが好ましく、例えば9であるのが特に好ましい。孔数kは、1列に含まれる孔2の数に応じて、予め設定する。
【0036】
S6では、孔数mが孔数kより少ない場合、すなわち、m<kの場合(YES)に、単孔用ツール14aの使用と、検査順に基づく孔2の順を決定する。これは、m<kの場合、複孔用ツール14bが使用できないからである。
【0037】
S7では、孔数mが孔数kと同じかこれより多い場合、すなわち、m≧kの場合(NO)に、複孔用ツール14bの使用と、検査順に基づくk個毎の孔2の順を決定する。これは、m≧kの場合、複孔用ツール14bが使用でき、同時にk個毎の孔2の検査により、時間短縮ができるからである。
【0038】
S7において、mをkで割った場合の商(余り)に相当する、kより少ない最後の1又は複数の孔2が発生する場合がある。この場合、複孔用ツール14bで商(余り)に相当する孔2を同時に検査する孔2を決定する。この孔2は、複孔用ツール14bの端部ツールが最後の孔2を検査するように決定する。
【0039】
S8では、S6,S7で決定した使用するツール(14a又は14b)と位置決め孔2を出力する。この出力先は、ディスプレイ装置20、記憶装置18、図示しないプリンタ、又は位置決め装置12であるのがよい。
【0040】
図4は、本発明の方法により退避動作の有無を決定するフロー図である。
この図において、本発明の方法は、S11〜S15の各ステップ(工程)からなる。
【0041】
S11では、S8で出力された使用するツール(14a又は14b)を用い、位置決め孔2を順に検査する。
S12では、次の孔2までの検査順が干渉物4の位置を通過するか否かを判断する。この判断は、上述したS3と同じであり、その結果を記憶して、S12を省略してもよい。
【0042】
S13では、干渉物4の位置を通過する場合(YES)に、「退避動作あり」と判断して退避動作を行う。退避動作は、干渉物4を回避するために必要な後退動作であり、ツールを干渉物4の高さ(被検査平面1からの突出量)よりも大きく後退(引き込む)させる。
S14では、干渉物4の位置を通過しない場合(NO)に、「退避動作なし」と判断して単に孔位置間を移動するために必要な後退動作を行う。この後退動作は、ツールが被検査平面1と干渉しない限りで小さく設定することができる。
【0043】
S15では、S13又はS14の後に、次の孔2の位置に移動する。この移動は、被検査平面1に対して平行な移動である。
S11〜S15は、孔2の検査順に従い、指定された孔2を全て検査するまで繰り返す。
【0044】
図5は、本発明によるツールと位置決め孔を決定する説明図である。
図5(A)に示すように、被検査平面1に対して単孔用ツール14aと複孔用ツール14bを移動させて孔2を検査する。孔2に付されたNo.1〜9は、指定された検査順を示している。
この例で、複孔用ツール14bの同時に検査する孔数kは3であり、その中心に位置するツールを位置決めするものとする。
検査順を指定すると、単孔用ツール14a又は複孔用ツール14bの中心位置がその孔2の前になるように移動する。
【0045】
このとき、全て、単孔用ツール14aを使用すれば干渉物4との干渉は起こらないが、複孔用ツール14bをNo.1やNo.2の孔2に適用すると干渉してしまうため使用できない。逆にNo.3〜5の孔2に対しては複孔用ツール14b1回で検査した方が効率的である。
またNo.3〜5の孔2の検査では、単孔用ツール14aならばNo.3〜5の孔2の各位置に単孔用ツール14aを移動できるが、複孔用ツール14bは、No.4の孔の位置だけしか移動できない。No.3,5の孔2の位置に複孔用ツール14bを移動すると、複孔用ツール14bの端部が干渉物4と干渉してしまう。
【0046】
上述の問題を回避するように、本発明では適切なツール(14a又は14b)の選定と検査位置を自動で生成する。
本発明では、複孔用ツール14bを優先的に使用しつつ、検査位置の重複を最小限に抑えることでデータ量を少なくする。ただし、検査時間の短縮を最優先にするため、単孔用ツール14aと複孔用ツール14bの切り替えをなるべく少なくする。
例えば、図5(B)に示すように、No.6〜9の孔の検査において、複孔用ツール14bをNo.7に1回、単孔用ツール14aをNo.9に1回の検査の方が重複なくデータ量が少なくなるが、時間がかかるため、複孔用ツール14bをNo.7,8に位置決めして重複検査を行う。
【0047】
図6は、本発明による退避動作の有無を決定する説明図である。
図6は、図5をX−Z軸方向から俯瞰したものである。ツール(この図では単孔用ツール14a)が移動するとき、常に手前方向に引けば干渉物4との干渉は発生しないが、ツールの移動に時間の分だけ検査時間が延びる。そこで、普段は最小の引き込みで移動し、干渉物を乗り越えるときだけ引き込みを大きくする。
【0048】
しかし、引きこみを実行する位置は検査の順序によって決定するので単純ではない。
本発明では、干渉を超える一つ前の検査完了時に引き込み動作(退避動作)を行い、干渉を超えた検査の実施前に押し込み動作を行う。それ以外のときには、押し引きを実施しない。
【0049】
従って、図5、図6の組み合わせにより、多数の箇所を最短時間又はこれに近い短時間で検査することができる。
【0050】
上述した本発明の装置と方法によれば、指定した孔2の検査順が干渉物4の位置を通過する場合に、干渉物位置の前後を別の列として扱うので、各列には干渉物位置が存在しない。従って、各列内の孔2の検査は、無駄な退避動作をなくして最短時間又はこれに近い短時間で検査することができる。
【0051】
また、各列に含まれる孔数mが、複孔用ツール14bで同時に検査する孔数kより少ない場合に、単孔用ツール14aの使用と、検査順に基づく孔2の順を決定するので、単孔用ツール14aを使用して検査順に1つずつ孔2を検査して、m回でm個の孔を確実にすることができる。
【0052】
また、逆に各列に含まれる孔数mが孔数kと同じかこれより多い場合、すなわちm≧kの場合に、複孔用ツール14bの使用と、検査順に基づくk個毎の孔2の順を決定するので、複孔用ツール14bを使用して検査順にk個ずつ孔2を検査して、検査時間を短縮することができる。
【0053】
さらにこの場合、mをkで割った商に相当する1又は複数の孔2は、最後に複孔用ツール14bで同時に検査するので、単孔用ツール14aを使用する場合よりも、検査時間を短縮することができる。
【0054】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。
【符号の説明】
【0055】
1 被検査平面(管板)、2 貫通孔(孔)、
4 干渉物、4a 円弧状干渉物、4b 直線状干渉物、
10 多点検査装置、12 位置決め装置、13 検査ヘッド、
14a 単孔用ツール、14b 複孔用ツール、
16 ツール交換装置、18 記憶装置、
20 ディスプレイ装置(CRT)、
22 入力装置(キーボード)、24 演算装置(コンピュータ)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査平面に設けられた多数の孔を検査する多点検査方法であって、
各孔を単独に検査する単孔用のツールと、
検査方向の一列上に隣接する複数の孔を同時に検査する複孔用のツールと、
前記ツールのいずれかを孔に対して位置決めする位置決め装置と、
各孔の中心位置と各ツールが干渉する干渉物位置とを記憶する記憶装置とを備え、
(A)前記中心位置と干渉物位置を表示し、
(B)孔の検査順を指定し、
(C)前記検査順が干渉物位置を通過する場合に、干渉物位置の前後を別の列として扱い、
(D)検査順の各列に含まれる孔数mが、複孔用ツールで同時に検査する孔数kより小さい場合に、単孔用ツールの使用と、検査順に基づく孔の順を決定し、
(E)m≧kの場合に、複孔用ツールの使用と、検査順に基づくk個毎の孔の順を決定し、かつkより少ない最後の1又は複数の孔を複孔用ツールで同時に検査する孔を決定する、ことを特徴とする多点検査方法。
【請求項2】
前記検査順が干渉物位置を通過する場合に、干渉物位置の直前の検査後に、干渉物との干渉を回避する退避動作を実施する、ことを特徴とする請求項1に記載の多点検査方法。
【請求項3】
被検査平面に設けられた多数の孔を検査する多点検査装置であって、
各孔を単独に検査する単孔用のツールと、
検査方向の一列上に隣接する複数の孔を同時に検査する複孔用のツールと、
前記ツールのいずれかを孔に対して位置決めする位置決め装置と、
各孔の中心位置と各ツールが干渉する干渉物位置とを記憶する記憶装置と、
前記中心位置と干渉物位置を表示するディスプレイ装置と、
孔の検査順を指定する入力装置と、
前記検査順に基づき、使用するツール、位置決め孔、退避動作の有無を決定し出力する演算装置とを備え、前記演算装置は、
(A)指定した孔の検査順が干渉物位置を通過する場合に、干渉物位置の前後を別の列として扱い、
(B)検査順の各列に含まれる孔数mが、複孔用ツールで同時に検査する孔数kより小さい場合に、単孔用ツールの使用と、検査順に基づく孔の順を決定し、
(C)m≧kの場合に、複孔用ツールの使用と、検査順に基づくk個毎の孔の順を決定し、かつkより少ない最後の1又は複数の孔を複孔用ツールで同時に検査する孔を決定する、ことを特徴とする多点検査装置。
【請求項4】
前記ツールのいずれかを検査ヘッドに位置決めするツール交換装置を備える、ことを特徴とする請求項3に記載の多点検査装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−88163(P2013−88163A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226609(P2011−226609)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】