多芯電流導入端子及びケーブル
【課題】真空容器を貫いて電気接続を行う多芯電流導入端子及びそれを用いたケーブルであって、多芯化を実現し、さらに真空容器内での不必要な放電を回避する電流導入端子及びケーブルを提供する。
【解決手段】真空容器を貫いて電気接続を行うべく、複数芯の導体と、導体と真空容器及び個々の導体間の絶縁を保つための絶縁体とを備えた多芯電流導入端子において、絶縁体に導体を通すための貫通孔を設け、貫通孔の真空側に凹部を形成した多芯電流導入端子を使用する。導体1の根元において、熱収縮チューブ32の一端が絶縁体2の凹部に挿入された状態で固定される。凹部2aは、2〜5mmの深さがあり熱収縮チューブの縮みかたのバラツキを十分に吸収できるので、導体1に真空雰囲気露出部分は生じない。従って、不必要な放電が防止される。
【解決手段】真空容器を貫いて電気接続を行うべく、複数芯の導体と、導体と真空容器及び個々の導体間の絶縁を保つための絶縁体とを備えた多芯電流導入端子において、絶縁体に導体を通すための貫通孔を設け、貫通孔の真空側に凹部を形成した多芯電流導入端子を使用する。導体1の根元において、熱収縮チューブ32の一端が絶縁体2の凹部に挿入された状態で固定される。凹部2aは、2〜5mmの深さがあり熱収縮チューブの縮みかたのバラツキを十分に吸収できるので、導体1に真空雰囲気露出部分は生じない。従って、不必要な放電が防止される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空装置に使用する多芯電流導入端子及びケーブルに関する。詳しくは真空容器を貫いて電気接続を行う多芯電流導入端子及びそれを用いたケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年増加している産業用真空機器、例えば、蒸着装置、CVD機等の成膜装置、半導体製造装置においては、モーター、センサー、測定器等の機器を構成品とし、その装置の真空容器内に設置して使用することが多い。そのために、真空容器内のモーター、センサー、測定器等に対して電力を供給し、信号のやり取りを行う必要がある。そこで、真空容器を貫いて真空側と大気側を結ぶ動力線や信号線を設けることとなった。
【0003】
従来、これらの動力線や信号線を設けるのに単芯又は2芯の電流導入端子を使用することが多かった(特許文献1、2参照)。この場合、真空容器に複数の貫通孔を開けることになる。
【0004】
しかしながら、真空容器内の真空度を維持するには、貫通孔はできるだけ少ないことが望ましい。真空容器の貫通孔と電流導入端子の間に適切な封止材を使用しても大気の漏れを完全に防ぐのは難しく、真空排気設備の負担になるためである。
【0005】
また、真空容器には大きな大気圧がかかるので、壊れないように貫通孔はできるだけ少なくして真空容器の強度を確保することが望ましい。
【0006】
また、動力線や信号線の取り回しや装置の維持管理のため、動力線と信号線を一括し、且つ真空容器の大気側で切離しが容易であることが望ましい。
【0007】
以上のような理由から、多芯の電流導入端子が使用されるようになった(図8参照)。前記多芯の電流導入端子(以下多芯電流導入端子という)60には、真空容器を貫いて電気的接続を行うべく、2〜50芯程度の導体41と、この導体41と真空容器もしくは個々の導体間の絶縁を保つための絶縁体42とを備えている。
【0008】
【特許文献1】実開平6―033322号公報(第4頁、図1)
【特許文献2】特開平4−147643号公報(第3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の多芯電流導入端子の課題を、図8〜15を用いて説明する。図8は従来の多芯電流導入端子60を側面方向から見た断面図である。図9は真空側から見た正面図、図10は大気側から見た正面図である。図11は、図8のC部の拡大断面図である。
【0010】
図12は多芯電流導入端子60を真空容器6に配置した模式図である。真空容器6の真空容器フランジ5と多芯電流導入端子ハウジング44のフランジ44bとの間にガスケット10を挟んで、ボルト11とナット12で締結している。多芯電流導入端子60で真空容器の真空側の導体41は金属体が真空雰囲気に露呈した状態となっている。
【0011】
この状態で真空容器を減圧(排気)してゆくと導体41に印加した電圧により、他の導体41や真空容器6との間で不必要な放電47を発生してしまうことがある(図13参照)。
このような不必要な放電47は、例えば蒸着装置の成膜のプロセスに悪影響を与えて、膜質を悪くする等の問題を発生させ、また蒸着装置自体の制御を不安定にする原因ともなっていた。
【0012】
そこで、従来から、この不必要な放電47を防ぐために、各導体41を個別に絶縁物72で覆う手法が採られている。例えば、ケーブル70を組み立てるのに絶縁物である熱収縮チューブ72を使用している(図14参照)。しかし、この方法では、絶縁体42から突き出した導体41の根元の部分までを必ずしも覆うことができるわけではなく、真空雰囲気露呈部分49から放電が発生してしまうことがあった(図15参照)。
【0013】
前記放電を防ぐ工夫として、前述の実開平6−33322号公報(特許文献1参照)に記載の方法がある。絶縁体を大きくして真空容器と導体間での放電を抑制するというものである。しかし、この方法では、直径30mm程度の大きさの中に導体を24芯ほど配置するような多芯化は容易に実現できなかった。
【0014】
また、前記放電を防ぐ工夫として、前述の特開平4−147643号公報(特許文献2参照)のように、導体間隔を広く取る方法がある。しかし、多芯化するためには各導体の周囲に一定の広い面積を確保する必要がある。従って、多芯化には限界があった。
【0015】
以上まとめると、多芯化を実現し、さらに真空中の不必要な放電を回避する電流導入端子及びケーブルを提供するのが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題は、真空容器を貫いて電気接続を行うべく、複数芯の導体と、前記導体と前記真空容器及び個々の導体間の絶縁を保つための絶縁体とを備えた多芯電流導入端子において、前記絶縁体に前記導体を通すための貫通孔を設け、前記貫通孔の真空側に凹部を形成している多芯電流導入端子によって解決される。
【0017】
また、前記真空容器を貫いて電気接続を行うべく、複数芯の前記導体と、前記導体と前記真空容器及び個々の前記導体間の絶縁を保つための前記絶縁体とを備えた多芯電流導入端子であって、前記絶縁体に前記導体を通すための貫通孔を設け、前記貫通孔の真空側に凹部を形成している多芯電流導入端子と、前記多芯電流導入端子の前記導体を覆う絶縁物と、前記真空容器内の機器に接続されるリード線とからなるケーブルによって解決される。
【発明の効果】
【0018】
多数の動力線、信号線に対し、少ない個数の多芯電流導入端子で対応できる。
【0019】
また、前記多芯電流導入端子と導体に絶縁チューブ等の絶縁物を併用することで10E−7〜10E+2Paの真空空間において0〜5kVの電圧で多芯電流導入端子の真空側で且つ導体間及び導体と真空容器との間で発生する不必要な放電を抑制できる。
【0020】
また、不必要な放電を皆無とすることで、必要なプロセスを安定して実現できる。
また、真空中で放電が発生すると真空容器の内部に一斉に広がることから、真空容器内のセンサ−、測定器に影響を与え、制御不能、測定不能になることがあったが、これを防止できる。
【0021】
また、放電による多芯電流導入端子の電食を防ぐことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。
図1は本発明の多芯電流導入端子20を側面方向から見た断面図である。図2は、図1のA部の拡大断面図である。導体1は電流を通すために金属から成る。電気的絶縁体2は、ガラス、樹脂、セラミック等より成る。図1に示すように、この絶縁体2が、多芯電流導入端子ハウジング4の中ほどに止めつけられて多芯電流導入端子20となる。
【0024】
図2に示す真空気密部3は、導体1と絶縁体2の隙間から空気等が流入するのを防ぎ真空容器の気密を保っているもので、ガラス、樹脂等により成る。また、図2に示すように、絶縁体2は真空側で且つ導体1の周囲が深さL=2〜5mmで凹構造(以下凹部という)2aに成るように形成されている。
【0025】
第1の実施の形態の導体1は、φ1.6のステンレス棒を用いる。導体1の断面形状は円形である。熱収縮チューブとしては、シリコン熱収縮チューブを使用する。シリコン熱収縮チューブは、収縮前の内径がφ2.2〜2.6、収縮前の外径がφ3.2〜3.6のものを使用する。
【0026】
また、第1の実施の形態の絶縁体2は、ジアリルフタレート(Diallyl Phthalate)樹脂を使用した。これにより、5000MΩ(500VDC時)以上の絶縁抵抗値を確保している。
【0027】
また、図2の絶縁体2の凹部2aは円筒形状をしており、その径は、熱収縮チューブによって根元まで覆う為に、収縮前の熱収縮チューブの先端を挿入できるように考慮して決めている。
【0028】
すなわち、凹部2aの径は、収縮前のシリコン熱収縮チューブが導体1の根元まで被さるように、収縮前のシリコン熱収縮チューブの外径φ3.2〜3.6に対してクリアランスを考慮してφ4.0としている。なお、シリコン熱収縮チューブの絶縁耐圧は25kV(肉厚1mm時)のものを使用した。
【0029】
以上の絶縁体2とシリコン熱収縮チューブを併用することにより、10E−7〜10E+2Paの真空空間において5kV以上の耐電圧を確保できる。
【0030】
また、図3(a)に、第1の実施の形態の導体1の端部加工を示す。
導体1は、φ1.6のステンレス棒を用いる。断面の形状は円形である。先端より6mm(導体1の面取り長さ:m)を面取り1aしてある。
【0031】
これは、コンタクト・ピンを用いて、リード線と接続するためである。面取り1aすることにより、半田付けがし易くなる。
【0032】
なお、第1の実施の形態の多芯電流導入端子20は、絶縁体2に大気側より導体1を通し、全長の8割がたを通したところで大気側よりエポキシ系樹脂の接着剤を流し込んで、絶縁体2に設けた貫通孔に導体1を固定及び気密封止をして組み立てている。
【0033】
つまり、接着剤が、導体1を止めつける接着部3と気密封止をする真空気密部3とを兼ねている。勿論、組立て方法は、これに限られるものではない。
【0034】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態の導体1(図3(a))を、導体1’(図3(b))に替えたものである。絶縁体2は、第1の実施の形態の多芯電流導入端子と同じ材質、形状のものを使用する。この絶縁体2が、多芯電流導入端子ハウジング4の中ほどに止めつけられて、本発明の第2の実施の形態の多芯電流導入端子となる。 従って、側面方向から見た断面図は図1と、A部の拡大断面図も図2と同様である。
【0035】
図3(b)に、第2の実施の形態の導体1’の端部加工を示す。
第2の実施の形態の、導体1’は、φ1.6のステンレス棒を用いる。断面の形状は円形である。先端より6mm(導体1’のネジ切り長さ:m’)をネジ切り1a’してある。
【0036】
これは、半田付けタイプのコンタクト・ピンを用いてリード線と接続するときに、また、リード線を直接絡げて半田付けを行うときに、半田付けし易くするためでもある。また、カシメるタイプのコンタクト・ピンを使用した場合に、コンタクト・ピンの抜け防止の効果がある。
【0037】
また、第2の実施の形態の絶縁体2も、第1の実施の形態と同じく、ジアリルフタレート(Diallyl Phthalate)樹脂を使用した。
【0038】
また、使用する熱収縮チューブも、第1の実施の形態と同じく、収縮前の内径がφ2.2〜2.6、収縮前の外径がφ3.2〜3.6のものを使用する。
【0039】
また、絶縁体2の凹部2aは円筒形状をしており、その径は、収縮前のシリコン熱収縮チューブが導体1’の根元まで被さるように、収縮前のシリコン熱収縮チューブの外径φ3.2〜3.6に対してクリアランス分を考慮してφ4.0としている。
【0040】
また、多心導入端子の組立て方法も第1の実施の形態と同様に接着剤3を用いた方法で行っている。
【0041】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
図4は、本発明の第3の実施の形態の多芯電流導入端子20を使用したケーブル30を側方から見た断面図である。図5は、図4のB部の拡大断面図である。
【0042】
図5に示すように導体1に熱収縮チューブ32で絶縁処理を行うときに、絶縁体2の凹部2aにその一端を挿入することができ、導体1が真空雰囲気に露呈しないようにすることができる。
【0043】
図6は、本発明の第3の実施の形態の多芯電流導入端子20の導体1とリード線31の端末処理方法を示す図である。(a)が導体1、(b)がリード線31の端末処理を示す。
【0044】
図6(b)に示すように、リード線31の被覆を剥離した端部の導体露出部分31bの先端にコンタクト・ピン34を半田付けする。このコンタクト・ピン34は、突合せ接続に使用されるタイプの接続端子であり、接続用の第一円筒部34a、第2円筒部34bを有する。
【0045】
すなわち、リード線31の導体露出部分31bの先端が嵌り込む第1円筒部34aが形成されている。また、コンタクト・ピン34には、図6(a)の導体1の面取り1aした端部が、丁度嵌り込む第2円筒部34bが形成されている。
【0046】
上記のようにして、多芯電流導入端子20の導体1に、端末処理したリード線31を半田付けにて接続したのが図7(a)である。その後、熱収縮チューブ32を被せて加熱・収縮させたものが図7(b)である。
【0047】
導体1の根元において、熱収縮チューブ32の一端が絶縁体2の凹部2aに挿入された状態で固定される。凹部2aは前述のように円筒状で2〜5mmの深さがあり、熱収縮チューブ32の縮みかたのバラツキを十分に吸収できるので、導体1に従来のような真空雰囲気露出部分は生じない。従って、不必要な放電が防止される。
【0048】
また、第3の実施の形態では、図7(b)に示すように、導体1とリード線31の接続部分も含めて熱収縮チューブ32で覆う。また、リード線31の導体露出部分31bも熱収縮チューブ32で覆う。
【0049】
つまり、導体1とリード線31の接続部分Eにぴたりと沿って熱収縮チューブ32が収縮し、導体1の根元からリード線31の被覆のあるところまでを完全に覆うこととなる。
これにより、導体1とリード線31の接続部分Eにおいても、真空雰囲気露出部分は生じない。従って、ここでも不必要な放電が防止される。
【0050】
ここで、コンタクト・ピン34の最外径がφ2.9であることから、熱収縮チューブ32として使用するシリコン熱収縮チューブ32は、収縮前の内径がφ3.4〜4.0、収縮前の外径がφ5.0〜5.6のものを使用する。
【0051】
また、凹部2aの径は、収縮前のシリコン熱収縮チューブ32が導体1の根元まで被さるように、収縮前のシリコン熱収縮チューブの外径φ5.0〜5.6に対しクリアランス分を考慮してφ6.0としている。
【0052】
なお、導体1とリード線31の接続部分Eにぴたりと沿って熱収縮チューブ32が収縮するので、接続部分Eの抜け止め対策ともなっている。
【0053】
以上、本発明の第1〜第3の実施の形態について説明したが、勿論、本発明はこれらに限定されることなく、本発明の技術思想に基づいて種々の変更が可能である。
【0054】
第1、第2の実施の形態では、導体1、1’にステンレス棒を使用したが、銅、アルミ、等の金属棒でも良い。良導体の棒であれば使用可能である。
【0055】
また、第1、第2の実施の形態では、導体1、1’の断面形状を円形としたが、楕円形、四角形、六角形等の他の形状であっても良い。使用する金属の種類に応じて、必要な電流容量を確保できる断面積があれば良い。
【0056】
また、第1の実施の形態では、導体1の端部の面取り加工1aを、2面にしているが、これに限ることなく、1面以上であればよい。導体1に使用する金属棒の断面形状や材質、使用するコンタクト・ピンとの接続方法(半田付け/カシメ)によって、適宜選択するものとする。勿論、面取りする必要が無ければ、面取りせずに接続することもできる。
【0057】
また、第1、第2の実施の形態では、導体1、1’の端部加工を、面取り1aやネジ切り1a’としたが、フランジ状の突起を設けたり、切り欠きであっても良い。コンタクト・ピンを半田付けする為の加工であれば良い。また、フランジ状の突起や切り欠きが、リード線を絡げて半田付けする加工であっても良い。さらに、フランジ状の突起や切り欠きがカシメるタイプのコンタクト・ピンを使用する場合の抜け止めの為の加工であっても良い。
【0058】
また、第1、第2の実施の形態では、導体1、1’の端末加工長(m、m’)を6mmとしたが、勿論使用するコンタクト・ピンの筒部の長さに合わせて決めるものである。
【0059】
また、第1、第2の実施の形態では、絶縁体2にジアリルフタレート(Diallyl Phthalate)樹脂を使用したが、他の合成樹脂を用いても良い。また、十分な絶縁抵抗値を有する材質のものであれば、同様に使用することができる。
【0060】
また、第1、第2の実施の形態では、絶縁体2の凹部2aは、その断面形状が円形の円筒形状であったが、これに限ることなく、断面形状が楕円形、扇形、四角形等の他の形状の筒体形状でも良い。収縮前のシリコン熱収縮チューブの外径に対し、クリアランス分を考慮した大きさであって、絶縁体2の隣り合う他の凹部2aとの間に十分な間隔を確保できるものであれば良い。
【0061】
また、第1、第2の実施の形態では、接着部3にエポキシ系接着剤を使用したが、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ゴム系などの他の種類の接着剤でも良い。
また、ガラス封止(ハーメチック)でも良い。導体1、1’を確実に止め付け、真空を保持できるものであれば良い。
【0062】
また、第3の実施の形態では、コンタクト・ピン34の取り付けを半田付けで行ったが、カシメによっても良い。導体1、1’とリード線を接続できれば良い。
【0063】
また、第3の実施の形態では、導体1とリード線31の接続にコンタクト・ピン34を使用したが、導体とリード線31を直接半田付けしても良い。実施例2の導体1’等を用いて、リード線31の端部の導体露出部分31bを絡げて半田付けすることが可能である。
【0064】
また、第1〜第3の実施の形態では、導体1、1’を覆う絶縁物32に熱収縮チューブ32を用いたが、粘着テープでも良い。導体1、1’を覆って絶縁が確保できるものであれば、同様に使用することができる。
【0065】
また、第3の実施の形態では、リード線31の片端の導体露出部分31aについて特に記述していないが、例えば、真空容器内に設置したモーター、センサー等に、半田付けやネジ止めで接続される。また、測定器類等との接続のため、コネクタ、配線用圧着端子類(丸端子、ホーク端子等)を取り付ける端末処理を行ったものも本発明のケ−ブルに含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1の実施の形態の多芯電流導入端子20を側面方向から見た断面図である。
【図2】図1のAの拡大断面図である。導体1を接着した絶縁体2の根元部分を示す。絶縁体2の真空側端面には凹部2aが形成されている。
【図3】本発明の第1、第2の実施の形態の導体1、1’の端部の拡大斜視図を示す。多心導入端子に使用する導体の端部加工を示した図である。 (a)が第1の実施形態の導体1の端部の面取り加工1aを示す。(b)が第2の実施の形態の導体1’の端部のネジ切り加工1a’を示す。
【図4】本発明の第3の実施の形態のケーブル30を側面方向から見た断面図である。
【図5】図4のBの拡大断面図である。導体1を接着した絶縁体2の根元部分を熱収縮チューブ32で覆った様子を示す。熱収縮チューブ32の一端が凹部2aに挿入されている。
【図6】本発明の第3の実施の形態の導体1とリード線31の端末処理方法を示す図である。(a)が導体1の端末処理、(b)がリード線31の端末処理を示す。
【図7】本発明の第3の実施の形態の導体1とリード線31の接続方法を示す図である。(a)が、導体1とリード線31を接続したところ、(b)が、熱収縮チューブ32を被せたところを示す。
【図8】従来の多芯電流導入端子60を側方より見た断面図である。
【図9】多芯電流導入端子を真空側から見た正面図である。
【図10】多芯電流導入端子を大気側から見た正面図である。
【図11】図8のCの拡大断面図である。導体41と絶縁体42を接着した根元部分を示す。絶縁体42の真空側端面は平らである。
【図12】多芯電流導入端子60を真空容器6に配置した模式図である。真空容器6の真空容器フランジ5と多芯電流導入端子ハウジング44のフランジ44bとの間にOリング10を挟んで、ボルト11とナット12で締結している。
【図13】剥き出しの導体41から放電47が発生しているイメージの図である。
【図14】従来の多芯電流導入端子60を使用したケーブル70を側方より見た断面図である。
【図15】図14のDの拡大断面図である。導体41と絶縁体42を接着した根元に熱収縮チューブ72の被らない導体41の真空雰囲気露呈部分49が生じている。
【符号の説明】
【0067】
1・・・導体、1a・・・面取り、1’・・・導体、1a’・・・ネジ切り、2・・・絶縁体、2a・・・凹部、3・・・接着部(真空気密部)、4・・・多芯電流導入端子ハウジング、4a・・・円筒部、4b・・・フランジ、4c・・・ボルト穴、5・・・真空容器フランジ(ポート)、6・・・真空容器、
10・・・ガスケット、11・・・ボルト、12・・・ナット、
20・・・多芯電流導入端子、
30・・・ケーブル、31・・・リード線、31a・・・導体露出部分、31b・・・導体露出部分、32・・・絶縁物(熱収縮チューブ)、34・・・コンタクト・ピン、34a・・・第1円筒部、34b・・・第2円筒部、
41・・・導体、42・・・絶縁体、43・・・接着部(真空気密部)、44・・・多芯電流導入端子ハウジング、44a・・・円筒部、44b・・・フランジ、44c・・・ボルト穴、47・・・放電(グロー)、49・・・導体の真空雰囲気露呈部、
60・・・多芯電流導入端子、
70・・・ケーブル、71・・・リード線、71a・・・導体露出部分、72・・・絶縁物(熱収縮チューブ)、
L・・・絶縁体2の凹部2aの深さ、m・・・導体1の面取り長さ、m’・・・導体1’のネジ切り長さ、
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空装置に使用する多芯電流導入端子及びケーブルに関する。詳しくは真空容器を貫いて電気接続を行う多芯電流導入端子及びそれを用いたケーブルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年増加している産業用真空機器、例えば、蒸着装置、CVD機等の成膜装置、半導体製造装置においては、モーター、センサー、測定器等の機器を構成品とし、その装置の真空容器内に設置して使用することが多い。そのために、真空容器内のモーター、センサー、測定器等に対して電力を供給し、信号のやり取りを行う必要がある。そこで、真空容器を貫いて真空側と大気側を結ぶ動力線や信号線を設けることとなった。
【0003】
従来、これらの動力線や信号線を設けるのに単芯又は2芯の電流導入端子を使用することが多かった(特許文献1、2参照)。この場合、真空容器に複数の貫通孔を開けることになる。
【0004】
しかしながら、真空容器内の真空度を維持するには、貫通孔はできるだけ少ないことが望ましい。真空容器の貫通孔と電流導入端子の間に適切な封止材を使用しても大気の漏れを完全に防ぐのは難しく、真空排気設備の負担になるためである。
【0005】
また、真空容器には大きな大気圧がかかるので、壊れないように貫通孔はできるだけ少なくして真空容器の強度を確保することが望ましい。
【0006】
また、動力線や信号線の取り回しや装置の維持管理のため、動力線と信号線を一括し、且つ真空容器の大気側で切離しが容易であることが望ましい。
【0007】
以上のような理由から、多芯の電流導入端子が使用されるようになった(図8参照)。前記多芯の電流導入端子(以下多芯電流導入端子という)60には、真空容器を貫いて電気的接続を行うべく、2〜50芯程度の導体41と、この導体41と真空容器もしくは個々の導体間の絶縁を保つための絶縁体42とを備えている。
【0008】
【特許文献1】実開平6―033322号公報(第4頁、図1)
【特許文献2】特開平4−147643号公報(第3頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の多芯電流導入端子の課題を、図8〜15を用いて説明する。図8は従来の多芯電流導入端子60を側面方向から見た断面図である。図9は真空側から見た正面図、図10は大気側から見た正面図である。図11は、図8のC部の拡大断面図である。
【0010】
図12は多芯電流導入端子60を真空容器6に配置した模式図である。真空容器6の真空容器フランジ5と多芯電流導入端子ハウジング44のフランジ44bとの間にガスケット10を挟んで、ボルト11とナット12で締結している。多芯電流導入端子60で真空容器の真空側の導体41は金属体が真空雰囲気に露呈した状態となっている。
【0011】
この状態で真空容器を減圧(排気)してゆくと導体41に印加した電圧により、他の導体41や真空容器6との間で不必要な放電47を発生してしまうことがある(図13参照)。
このような不必要な放電47は、例えば蒸着装置の成膜のプロセスに悪影響を与えて、膜質を悪くする等の問題を発生させ、また蒸着装置自体の制御を不安定にする原因ともなっていた。
【0012】
そこで、従来から、この不必要な放電47を防ぐために、各導体41を個別に絶縁物72で覆う手法が採られている。例えば、ケーブル70を組み立てるのに絶縁物である熱収縮チューブ72を使用している(図14参照)。しかし、この方法では、絶縁体42から突き出した導体41の根元の部分までを必ずしも覆うことができるわけではなく、真空雰囲気露呈部分49から放電が発生してしまうことがあった(図15参照)。
【0013】
前記放電を防ぐ工夫として、前述の実開平6−33322号公報(特許文献1参照)に記載の方法がある。絶縁体を大きくして真空容器と導体間での放電を抑制するというものである。しかし、この方法では、直径30mm程度の大きさの中に導体を24芯ほど配置するような多芯化は容易に実現できなかった。
【0014】
また、前記放電を防ぐ工夫として、前述の特開平4−147643号公報(特許文献2参照)のように、導体間隔を広く取る方法がある。しかし、多芯化するためには各導体の周囲に一定の広い面積を確保する必要がある。従って、多芯化には限界があった。
【0015】
以上まとめると、多芯化を実現し、さらに真空中の不必要な放電を回避する電流導入端子及びケーブルを提供するのが本発明の課題である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題は、真空容器を貫いて電気接続を行うべく、複数芯の導体と、前記導体と前記真空容器及び個々の導体間の絶縁を保つための絶縁体とを備えた多芯電流導入端子において、前記絶縁体に前記導体を通すための貫通孔を設け、前記貫通孔の真空側に凹部を形成している多芯電流導入端子によって解決される。
【0017】
また、前記真空容器を貫いて電気接続を行うべく、複数芯の前記導体と、前記導体と前記真空容器及び個々の前記導体間の絶縁を保つための前記絶縁体とを備えた多芯電流導入端子であって、前記絶縁体に前記導体を通すための貫通孔を設け、前記貫通孔の真空側に凹部を形成している多芯電流導入端子と、前記多芯電流導入端子の前記導体を覆う絶縁物と、前記真空容器内の機器に接続されるリード線とからなるケーブルによって解決される。
【発明の効果】
【0018】
多数の動力線、信号線に対し、少ない個数の多芯電流導入端子で対応できる。
【0019】
また、前記多芯電流導入端子と導体に絶縁チューブ等の絶縁物を併用することで10E−7〜10E+2Paの真空空間において0〜5kVの電圧で多芯電流導入端子の真空側で且つ導体間及び導体と真空容器との間で発生する不必要な放電を抑制できる。
【0020】
また、不必要な放電を皆無とすることで、必要なプロセスを安定して実現できる。
また、真空中で放電が発生すると真空容器の内部に一斉に広がることから、真空容器内のセンサ−、測定器に影響を与え、制御不能、測定不能になることがあったが、これを防止できる。
【0021】
また、放電による多芯電流導入端子の電食を防ぐことが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について図面を参照しながら詳細に説明する。
【0023】
まず、本発明の第1の実施の形態について説明する。
図1は本発明の多芯電流導入端子20を側面方向から見た断面図である。図2は、図1のA部の拡大断面図である。導体1は電流を通すために金属から成る。電気的絶縁体2は、ガラス、樹脂、セラミック等より成る。図1に示すように、この絶縁体2が、多芯電流導入端子ハウジング4の中ほどに止めつけられて多芯電流導入端子20となる。
【0024】
図2に示す真空気密部3は、導体1と絶縁体2の隙間から空気等が流入するのを防ぎ真空容器の気密を保っているもので、ガラス、樹脂等により成る。また、図2に示すように、絶縁体2は真空側で且つ導体1の周囲が深さL=2〜5mmで凹構造(以下凹部という)2aに成るように形成されている。
【0025】
第1の実施の形態の導体1は、φ1.6のステンレス棒を用いる。導体1の断面形状は円形である。熱収縮チューブとしては、シリコン熱収縮チューブを使用する。シリコン熱収縮チューブは、収縮前の内径がφ2.2〜2.6、収縮前の外径がφ3.2〜3.6のものを使用する。
【0026】
また、第1の実施の形態の絶縁体2は、ジアリルフタレート(Diallyl Phthalate)樹脂を使用した。これにより、5000MΩ(500VDC時)以上の絶縁抵抗値を確保している。
【0027】
また、図2の絶縁体2の凹部2aは円筒形状をしており、その径は、熱収縮チューブによって根元まで覆う為に、収縮前の熱収縮チューブの先端を挿入できるように考慮して決めている。
【0028】
すなわち、凹部2aの径は、収縮前のシリコン熱収縮チューブが導体1の根元まで被さるように、収縮前のシリコン熱収縮チューブの外径φ3.2〜3.6に対してクリアランスを考慮してφ4.0としている。なお、シリコン熱収縮チューブの絶縁耐圧は25kV(肉厚1mm時)のものを使用した。
【0029】
以上の絶縁体2とシリコン熱収縮チューブを併用することにより、10E−7〜10E+2Paの真空空間において5kV以上の耐電圧を確保できる。
【0030】
また、図3(a)に、第1の実施の形態の導体1の端部加工を示す。
導体1は、φ1.6のステンレス棒を用いる。断面の形状は円形である。先端より6mm(導体1の面取り長さ:m)を面取り1aしてある。
【0031】
これは、コンタクト・ピンを用いて、リード線と接続するためである。面取り1aすることにより、半田付けがし易くなる。
【0032】
なお、第1の実施の形態の多芯電流導入端子20は、絶縁体2に大気側より導体1を通し、全長の8割がたを通したところで大気側よりエポキシ系樹脂の接着剤を流し込んで、絶縁体2に設けた貫通孔に導体1を固定及び気密封止をして組み立てている。
【0033】
つまり、接着剤が、導体1を止めつける接着部3と気密封止をする真空気密部3とを兼ねている。勿論、組立て方法は、これに限られるものではない。
【0034】
次に、本発明の第2の実施の形態について説明する。
本発明の第2の実施の形態は、第1の実施の形態の導体1(図3(a))を、導体1’(図3(b))に替えたものである。絶縁体2は、第1の実施の形態の多芯電流導入端子と同じ材質、形状のものを使用する。この絶縁体2が、多芯電流導入端子ハウジング4の中ほどに止めつけられて、本発明の第2の実施の形態の多芯電流導入端子となる。 従って、側面方向から見た断面図は図1と、A部の拡大断面図も図2と同様である。
【0035】
図3(b)に、第2の実施の形態の導体1’の端部加工を示す。
第2の実施の形態の、導体1’は、φ1.6のステンレス棒を用いる。断面の形状は円形である。先端より6mm(導体1’のネジ切り長さ:m’)をネジ切り1a’してある。
【0036】
これは、半田付けタイプのコンタクト・ピンを用いてリード線と接続するときに、また、リード線を直接絡げて半田付けを行うときに、半田付けし易くするためでもある。また、カシメるタイプのコンタクト・ピンを使用した場合に、コンタクト・ピンの抜け防止の効果がある。
【0037】
また、第2の実施の形態の絶縁体2も、第1の実施の形態と同じく、ジアリルフタレート(Diallyl Phthalate)樹脂を使用した。
【0038】
また、使用する熱収縮チューブも、第1の実施の形態と同じく、収縮前の内径がφ2.2〜2.6、収縮前の外径がφ3.2〜3.6のものを使用する。
【0039】
また、絶縁体2の凹部2aは円筒形状をしており、その径は、収縮前のシリコン熱収縮チューブが導体1’の根元まで被さるように、収縮前のシリコン熱収縮チューブの外径φ3.2〜3.6に対してクリアランス分を考慮してφ4.0としている。
【0040】
また、多心導入端子の組立て方法も第1の実施の形態と同様に接着剤3を用いた方法で行っている。
【0041】
次に、本発明の第3の実施の形態について説明する。
図4は、本発明の第3の実施の形態の多芯電流導入端子20を使用したケーブル30を側方から見た断面図である。図5は、図4のB部の拡大断面図である。
【0042】
図5に示すように導体1に熱収縮チューブ32で絶縁処理を行うときに、絶縁体2の凹部2aにその一端を挿入することができ、導体1が真空雰囲気に露呈しないようにすることができる。
【0043】
図6は、本発明の第3の実施の形態の多芯電流導入端子20の導体1とリード線31の端末処理方法を示す図である。(a)が導体1、(b)がリード線31の端末処理を示す。
【0044】
図6(b)に示すように、リード線31の被覆を剥離した端部の導体露出部分31bの先端にコンタクト・ピン34を半田付けする。このコンタクト・ピン34は、突合せ接続に使用されるタイプの接続端子であり、接続用の第一円筒部34a、第2円筒部34bを有する。
【0045】
すなわち、リード線31の導体露出部分31bの先端が嵌り込む第1円筒部34aが形成されている。また、コンタクト・ピン34には、図6(a)の導体1の面取り1aした端部が、丁度嵌り込む第2円筒部34bが形成されている。
【0046】
上記のようにして、多芯電流導入端子20の導体1に、端末処理したリード線31を半田付けにて接続したのが図7(a)である。その後、熱収縮チューブ32を被せて加熱・収縮させたものが図7(b)である。
【0047】
導体1の根元において、熱収縮チューブ32の一端が絶縁体2の凹部2aに挿入された状態で固定される。凹部2aは前述のように円筒状で2〜5mmの深さがあり、熱収縮チューブ32の縮みかたのバラツキを十分に吸収できるので、導体1に従来のような真空雰囲気露出部分は生じない。従って、不必要な放電が防止される。
【0048】
また、第3の実施の形態では、図7(b)に示すように、導体1とリード線31の接続部分も含めて熱収縮チューブ32で覆う。また、リード線31の導体露出部分31bも熱収縮チューブ32で覆う。
【0049】
つまり、導体1とリード線31の接続部分Eにぴたりと沿って熱収縮チューブ32が収縮し、導体1の根元からリード線31の被覆のあるところまでを完全に覆うこととなる。
これにより、導体1とリード線31の接続部分Eにおいても、真空雰囲気露出部分は生じない。従って、ここでも不必要な放電が防止される。
【0050】
ここで、コンタクト・ピン34の最外径がφ2.9であることから、熱収縮チューブ32として使用するシリコン熱収縮チューブ32は、収縮前の内径がφ3.4〜4.0、収縮前の外径がφ5.0〜5.6のものを使用する。
【0051】
また、凹部2aの径は、収縮前のシリコン熱収縮チューブ32が導体1の根元まで被さるように、収縮前のシリコン熱収縮チューブの外径φ5.0〜5.6に対しクリアランス分を考慮してφ6.0としている。
【0052】
なお、導体1とリード線31の接続部分Eにぴたりと沿って熱収縮チューブ32が収縮するので、接続部分Eの抜け止め対策ともなっている。
【0053】
以上、本発明の第1〜第3の実施の形態について説明したが、勿論、本発明はこれらに限定されることなく、本発明の技術思想に基づいて種々の変更が可能である。
【0054】
第1、第2の実施の形態では、導体1、1’にステンレス棒を使用したが、銅、アルミ、等の金属棒でも良い。良導体の棒であれば使用可能である。
【0055】
また、第1、第2の実施の形態では、導体1、1’の断面形状を円形としたが、楕円形、四角形、六角形等の他の形状であっても良い。使用する金属の種類に応じて、必要な電流容量を確保できる断面積があれば良い。
【0056】
また、第1の実施の形態では、導体1の端部の面取り加工1aを、2面にしているが、これに限ることなく、1面以上であればよい。導体1に使用する金属棒の断面形状や材質、使用するコンタクト・ピンとの接続方法(半田付け/カシメ)によって、適宜選択するものとする。勿論、面取りする必要が無ければ、面取りせずに接続することもできる。
【0057】
また、第1、第2の実施の形態では、導体1、1’の端部加工を、面取り1aやネジ切り1a’としたが、フランジ状の突起を設けたり、切り欠きであっても良い。コンタクト・ピンを半田付けする為の加工であれば良い。また、フランジ状の突起や切り欠きが、リード線を絡げて半田付けする加工であっても良い。さらに、フランジ状の突起や切り欠きがカシメるタイプのコンタクト・ピンを使用する場合の抜け止めの為の加工であっても良い。
【0058】
また、第1、第2の実施の形態では、導体1、1’の端末加工長(m、m’)を6mmとしたが、勿論使用するコンタクト・ピンの筒部の長さに合わせて決めるものである。
【0059】
また、第1、第2の実施の形態では、絶縁体2にジアリルフタレート(Diallyl Phthalate)樹脂を使用したが、他の合成樹脂を用いても良い。また、十分な絶縁抵抗値を有する材質のものであれば、同様に使用することができる。
【0060】
また、第1、第2の実施の形態では、絶縁体2の凹部2aは、その断面形状が円形の円筒形状であったが、これに限ることなく、断面形状が楕円形、扇形、四角形等の他の形状の筒体形状でも良い。収縮前のシリコン熱収縮チューブの外径に対し、クリアランス分を考慮した大きさであって、絶縁体2の隣り合う他の凹部2aとの間に十分な間隔を確保できるものであれば良い。
【0061】
また、第1、第2の実施の形態では、接着部3にエポキシ系接着剤を使用したが、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ゴム系などの他の種類の接着剤でも良い。
また、ガラス封止(ハーメチック)でも良い。導体1、1’を確実に止め付け、真空を保持できるものであれば良い。
【0062】
また、第3の実施の形態では、コンタクト・ピン34の取り付けを半田付けで行ったが、カシメによっても良い。導体1、1’とリード線を接続できれば良い。
【0063】
また、第3の実施の形態では、導体1とリード線31の接続にコンタクト・ピン34を使用したが、導体とリード線31を直接半田付けしても良い。実施例2の導体1’等を用いて、リード線31の端部の導体露出部分31bを絡げて半田付けすることが可能である。
【0064】
また、第1〜第3の実施の形態では、導体1、1’を覆う絶縁物32に熱収縮チューブ32を用いたが、粘着テープでも良い。導体1、1’を覆って絶縁が確保できるものであれば、同様に使用することができる。
【0065】
また、第3の実施の形態では、リード線31の片端の導体露出部分31aについて特に記述していないが、例えば、真空容器内に設置したモーター、センサー等に、半田付けやネジ止めで接続される。また、測定器類等との接続のため、コネクタ、配線用圧着端子類(丸端子、ホーク端子等)を取り付ける端末処理を行ったものも本発明のケ−ブルに含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の第1の実施の形態の多芯電流導入端子20を側面方向から見た断面図である。
【図2】図1のAの拡大断面図である。導体1を接着した絶縁体2の根元部分を示す。絶縁体2の真空側端面には凹部2aが形成されている。
【図3】本発明の第1、第2の実施の形態の導体1、1’の端部の拡大斜視図を示す。多心導入端子に使用する導体の端部加工を示した図である。 (a)が第1の実施形態の導体1の端部の面取り加工1aを示す。(b)が第2の実施の形態の導体1’の端部のネジ切り加工1a’を示す。
【図4】本発明の第3の実施の形態のケーブル30を側面方向から見た断面図である。
【図5】図4のBの拡大断面図である。導体1を接着した絶縁体2の根元部分を熱収縮チューブ32で覆った様子を示す。熱収縮チューブ32の一端が凹部2aに挿入されている。
【図6】本発明の第3の実施の形態の導体1とリード線31の端末処理方法を示す図である。(a)が導体1の端末処理、(b)がリード線31の端末処理を示す。
【図7】本発明の第3の実施の形態の導体1とリード線31の接続方法を示す図である。(a)が、導体1とリード線31を接続したところ、(b)が、熱収縮チューブ32を被せたところを示す。
【図8】従来の多芯電流導入端子60を側方より見た断面図である。
【図9】多芯電流導入端子を真空側から見た正面図である。
【図10】多芯電流導入端子を大気側から見た正面図である。
【図11】図8のCの拡大断面図である。導体41と絶縁体42を接着した根元部分を示す。絶縁体42の真空側端面は平らである。
【図12】多芯電流導入端子60を真空容器6に配置した模式図である。真空容器6の真空容器フランジ5と多芯電流導入端子ハウジング44のフランジ44bとの間にOリング10を挟んで、ボルト11とナット12で締結している。
【図13】剥き出しの導体41から放電47が発生しているイメージの図である。
【図14】従来の多芯電流導入端子60を使用したケーブル70を側方より見た断面図である。
【図15】図14のDの拡大断面図である。導体41と絶縁体42を接着した根元に熱収縮チューブ72の被らない導体41の真空雰囲気露呈部分49が生じている。
【符号の説明】
【0067】
1・・・導体、1a・・・面取り、1’・・・導体、1a’・・・ネジ切り、2・・・絶縁体、2a・・・凹部、3・・・接着部(真空気密部)、4・・・多芯電流導入端子ハウジング、4a・・・円筒部、4b・・・フランジ、4c・・・ボルト穴、5・・・真空容器フランジ(ポート)、6・・・真空容器、
10・・・ガスケット、11・・・ボルト、12・・・ナット、
20・・・多芯電流導入端子、
30・・・ケーブル、31・・・リード線、31a・・・導体露出部分、31b・・・導体露出部分、32・・・絶縁物(熱収縮チューブ)、34・・・コンタクト・ピン、34a・・・第1円筒部、34b・・・第2円筒部、
41・・・導体、42・・・絶縁体、43・・・接着部(真空気密部)、44・・・多芯電流導入端子ハウジング、44a・・・円筒部、44b・・・フランジ、44c・・・ボルト穴、47・・・放電(グロー)、49・・・導体の真空雰囲気露呈部、
60・・・多芯電流導入端子、
70・・・ケーブル、71・・・リード線、71a・・・導体露出部分、72・・・絶縁物(熱収縮チューブ)、
L・・・絶縁体2の凹部2aの深さ、m・・・導体1の面取り長さ、m’・・・導体1’のネジ切り長さ、
【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器を貫いて電気接続を行うべく、複数芯の導体と、前記導体と前記真空容器及び個々の導体間の絶縁を保つための絶縁体とを備えた多芯電流導入端子において、前記絶縁体に前記導体を通すための貫通孔を設け、前記貫通孔の真空側に凹部を形成していることを特徴とする多芯電流導入端子。
【請求項2】
前記導体が2〜50芯であることを特徴とする請求項1に記載の多芯電流導入端子。
【請求項3】
前記凹部が、前記貫通孔に対して同心円的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の多芯電流導入端子。
【請求項4】
前記凹部は、前記絶縁体の真空側端面より2〜5mm凹であることを特徴とする請求項1に記載の多芯電流導入端子。
【請求項5】
前記絶縁体の前記導体を通す貫通孔に前記導体を止め付け、且つ前記貫通孔の側壁面と前記導体との間の気密封止を接着剤またはガラス封止により行うことを特徴とする請求項1に記載の多芯電流導入端子。
【請求項6】
前記多芯電流導入端子と前記導体を覆う絶縁物を併用することで10E−7〜10E+2Paの真空空間において0〜5kVの電圧で前記多芯電流導入端子の真空側で且つ導体間及び導体と真空容器との間で発生する不必要な放電を抑制できることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の多芯電流導入端子。
【請求項7】
前記絶縁物が、熱収縮チューブ、粘着テープのいずれかであることを特徴とする請求項6に記載の多芯電流導入端子。
【請求項8】
前記真空容器を貫いて電気接続を行うべく、複数芯の前記導体と、前記導体と前記真空容器及び個々の前記導体間の絶縁を保つための前記絶縁体とを備えた多芯電流導入端子であって、前記絶縁体に前記導体を通すための貫通孔を設け、前記貫通孔の真空側に凹部を形成している多芯電流導入端子と、前記多芯電流導入端子の前記導体を覆う絶縁物と、前記真空容器内の機器に接続されるリード線とからなることを特徴とするケーブル。
【請求項9】
前記多芯電流導入端子の前記導体と前記リード線の接続に、コンタクト・ピンを用いたことを特徴とする請求項8に記載のケーブル。
【請求項10】
前記リ−ド線が、被覆線であることを特徴とする請求項8に記載のケーブル。
【請求項11】
前記多芯電流導入端子の前記導体を覆う前記絶縁物が、前記多芯電流導入端子の前記導体と前記リード線の接続部分も含めて覆うようにしたことを特徴とする請求項8に記載のケーブル。
【請求項12】
前記絶縁物が、熱収縮チューブ、粘着テープのいずれかであることを特徴とする請求項8乃至11のいずれかに記載のケーブル。
【請求項1】
真空容器を貫いて電気接続を行うべく、複数芯の導体と、前記導体と前記真空容器及び個々の導体間の絶縁を保つための絶縁体とを備えた多芯電流導入端子において、前記絶縁体に前記導体を通すための貫通孔を設け、前記貫通孔の真空側に凹部を形成していることを特徴とする多芯電流導入端子。
【請求項2】
前記導体が2〜50芯であることを特徴とする請求項1に記載の多芯電流導入端子。
【請求項3】
前記凹部が、前記貫通孔に対して同心円的に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の多芯電流導入端子。
【請求項4】
前記凹部は、前記絶縁体の真空側端面より2〜5mm凹であることを特徴とする請求項1に記載の多芯電流導入端子。
【請求項5】
前記絶縁体の前記導体を通す貫通孔に前記導体を止め付け、且つ前記貫通孔の側壁面と前記導体との間の気密封止を接着剤またはガラス封止により行うことを特徴とする請求項1に記載の多芯電流導入端子。
【請求項6】
前記多芯電流導入端子と前記導体を覆う絶縁物を併用することで10E−7〜10E+2Paの真空空間において0〜5kVの電圧で前記多芯電流導入端子の真空側で且つ導体間及び導体と真空容器との間で発生する不必要な放電を抑制できることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の多芯電流導入端子。
【請求項7】
前記絶縁物が、熱収縮チューブ、粘着テープのいずれかであることを特徴とする請求項6に記載の多芯電流導入端子。
【請求項8】
前記真空容器を貫いて電気接続を行うべく、複数芯の前記導体と、前記導体と前記真空容器及び個々の前記導体間の絶縁を保つための前記絶縁体とを備えた多芯電流導入端子であって、前記絶縁体に前記導体を通すための貫通孔を設け、前記貫通孔の真空側に凹部を形成している多芯電流導入端子と、前記多芯電流導入端子の前記導体を覆う絶縁物と、前記真空容器内の機器に接続されるリード線とからなることを特徴とするケーブル。
【請求項9】
前記多芯電流導入端子の前記導体と前記リード線の接続に、コンタクト・ピンを用いたことを特徴とする請求項8に記載のケーブル。
【請求項10】
前記リ−ド線が、被覆線であることを特徴とする請求項8に記載のケーブル。
【請求項11】
前記多芯電流導入端子の前記導体を覆う前記絶縁物が、前記多芯電流導入端子の前記導体と前記リード線の接続部分も含めて覆うようにしたことを特徴とする請求項8に記載のケーブル。
【請求項12】
前記絶縁物が、熱収縮チューブ、粘着テープのいずれかであることを特徴とする請求項8乃至11のいずれかに記載のケーブル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−53007(P2008−53007A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−226900(P2006−226900)
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月23日(2006.8.23)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】
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