説明

大径管の外径測定装置

【課題】種々の外径仕様を有する大径管が混在する場合であっても、検査能率を損なうことなく、大径管の外径を自動的に精度良く測定可能な装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る外径測定装置100は、大径管Pが挿通される基材1a,1bと、基材を回転させる回転駆動機構2と、大径管の左右方向についての外径を算出する第1の外径測定器3と、大径管の上下方向についての外径を算出する第2の外径測定器4と、第1及び第2の外径測定器を基材に対して移動させる移動機構5,6と、基材を上下方向に昇降させる昇降装置7と、制御装置8とを備える。制御装置は、大径管の外径仕様に応じて、基材の回転中心が大径管の中心と略一致するように、昇降装置を制御し、第1及び第2の外径測定器が大径管の両端位置を検出可能となるように、移動機構を制御した後、回転駆動機構を制御して基材を大径管の周方向に少なくとも90°回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大径管の外径測定装置に関する。特に、本発明は、種々の外径仕様を有する大径管が混在する場合であっても、検査能率を損なうことなく、大径管の外径(最大外径、最小外径)を自動的に精度良く測定可能な装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、大径管(外径500mm〜1550mm程度)の真円度(例えば、大径管の一縦断面における最大外径と最小外径との差で定義される)を評価するため、外径(最大外径、最小外径)を自動的に測定する技術が種々提案されているが、従来提案されているものは、主として管端部の外径測定技術である。大径管の中央部(管端から管軸方向に100mm以上内側)に関しては、一般的に、検査員の手動測定によって外径を測定している。
【0003】
上記の検査員の手動測定には、一般的に、大型のノギスが用いられている。しかしながら、ノギスのジョーの撓みにより、0.5mm程度の測定誤差が生じる。また、ノギスの使用回数が増えるに従い、摺動部の摩耗が進み、ジョーのガタツキによって最大で1.5mm程度の誤差が生じる。このため、絶えず新しいノギスを用意する必要がある。
【0004】
測定精度を高める上では、大型のマイクロメータを用いることも考えられる。しかしながら、最大で1550mmの外径を測定できるようなマイクロメータは、重量が嵩むため、検査員の手動測定に用いるには操作性に難がある。また、マイクロメータを用いた測定は、点接触による測定である。このため、大径管の外径の最大値及び最小値を測定するために、大径管の全周に亘って外径を測定するには、多大な時間を要する。さらに、マイクロメータの測定ストロークは、一般的に50mm程度であるため、大径管の外径仕様に応じて、複数種のマイクロメータを用意する必要が生じる。従って、マイクロメータに比べて測定精度は劣るものの、上記大型のノギスを用いた手動測定を行っているのが実情である。
【0005】
上記のように、大型のノギスを用いる場合であっても、検査員の手動測定には時間を要し、大径管全数の測定が困難であるため、抜き取り測定で対応せざるを得なかった。
【0006】
しかしながら、近年は、大径管の敷設場所の関係で、全数測定で且つ管軸方向の複数箇所での測定が要求されている。この要求に応えるべく、検査員の手動により、大径管の全数について、管軸方向の複数箇所で外径を測定すると、測定時間の増加による検査能率の低下や、検査員の増員によるコスト増加が問題になる。また、同じく、大径管の敷設場所の関係で、大径管の管端部のみならず、中央部についても、真円度に対する要求仕様が厳格になってきているため、中央部についても精度良く外径(最大外径、最小外径)を測定することが要求されている。
【0007】
一方、上述した大型のノギスやマイクロメータを用いた測定方法以外で管の外径を測定する技術としては、例えば、特許文献1〜4に記載の技術を挙げることができる。
【0008】
特許文献1には、管に密着させる寸法測定端子の移動量をダイヤルゲージで読み取ることにより管の外径を測定する外径寸法測定装置が提案されている。
しかしながら、特許文献1に記載の装置は、前述したノギスやマイクロメータと同様に、検査員の手動測定に用いられるものであるため、外径(最大外径、最小外径)の測定に時間を要すると共に、十分な測定精度が得られないという問題がある。
【0009】
特許文献2には、管が挿通可能な四角枠状の計測架台と、この計測架台の表裏面のうちの一方の面に取付けられ、管の上端・下端の位置をそれぞれ非接触で検出する縦径用の位置検出センサーと、計測架台の他方の面に取付けられ、管の左端・右端の位置をそれぞれ非接触で検出する横径用の位置検出センサーと、管の長さ方向の移動量を検出する移動量検出センサーと、管の端部を検出する端部検出センサーと、前記各センサーの検出信号を用いて、管の基準外径に対する管の縦径および横径の偏差を算出し、管の長さ方向の真円度分布を求める演算処理手段を備えていることを特徴とする管の真円度測定装置が提案されている。
しかしながら、特許文献2に記載の装置は、あくまでも一定方向の管の外径、すなわち、管の縦径(上下方向の外径)及び横径(左右方向の外径)を測定するものである。縦径及び横径のうちの何れか一方が最大外径で、他方が最小外径であるとは限らないため、特許文献2に記載の装置では、真に必要な真円度を算出することができない。
また、大径管の製品検査時には、種々の外径仕様を有する大径管が混在するケースが多いが、特許文献2には、このようなケースに対して自動的に対応可能な構成について、何ら開示されていない。特許文献2に記載の装置を用いる場合には、検査員が装置の近くに待機し、大径管の外径仕様が変更になったときに、位置検出センサーの計測架台への取り付け位置を手動で変更する手間が生じる。
【0010】
特許文献3には、管の搬送ラインを上下に挟んで互いに平行に設けられた一対の支持体と、該支持体の向かい合う面の左右一方に設けられたレーザ投光器と、左右他方に設けられた一次元ラインセンサと、該支持体を支持し且つ管の軸芯を中心として搬送ラインと直交する面内で回転駆動する面盤などを備え、前記面盤を管の軸芯を中心として180°回転させることにより管の外径を測定する装置が提案されている。
しかしながら、特許文献3に記載の装置は、外径仕様が同一の管についての外径を測定することを想定しており、種々の外径仕様を有する管が混在するケースに対して対応可能な構成については、何ら開示されていない。
また、特許文献3に記載の装置は、面盤を(ひいてはレーザ投光器及び一次元ラインセンサを)180°回転させることによって初めて、管の全周に亘る外径を測定可能であるため、測定に時間を要する。管軸方向の複数箇所で外径を測定する場合には、尚更時間を要する。
【0011】
特許文献4には、平坦なレール上で円筒状ワークを転動させるとともに、このワークを横切るようにワーク軸心に対し所定角度傾斜した方向からスリット光を照射する投光部と、この投光部からのスリット光を受光する受光部とを、前記ワークをはさんで対向配置し、転動中のワークの上部エッジ部の変位を光学的に測定するようにしたことを特徴とする円筒状ワークの真円度測定装置が提案されている。
しかしながら、特許文献3に記載の装置は、外径仕様が同一のワークについての外径を測定することを想定しており、種々の外径仕様を有するワークが混在するケースに対して対応可能な構成については、何ら開示されていない。
【特許文献1】特開平7−35536号公報
【特許文献2】特許第3028058号公報
【特許文献3】特開平8−114422号公報
【特許文献4】特開平11−304456号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、斯かる従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、種々の外径仕様を有する大径管が混在する場合であっても、検査能率を損なうことなく、大径管の外径(最大外径、最小外径)を自動的に精度良く測定可能な装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するため、本発明は、軸方向が略水平となるように配置された大径管が挿通される基材と、前記基材を大径管の周方向に少なくとも90°回転させる回転駆動機構と、前記基材に取り付けられた、大径管の第1の径方向についての両端位置をそれぞれ検出する一対のレーザ式外径計を具備し、該一対のレーザ式外径計で検出した両端位置に基づいて、前記第1の径方向についての大径管の外径を算出する第1の外径測定器と、前記基材に取り付けられた、大径管の前記第1の径方向と直交する第2の径方向についての両端位置をそれぞれ検出する一対のレーザ式外径計を具備し、該一対のレーザ式外径計で検出した両端位置に基づいて、前記第2の径方向についての大径管の外径を算出する第2の外径測定器と、前記第1の外径測定器及び前記第2の外径測定器がそれぞれ具備するレーザ式外径計を前記基材に対して移動させる移動機構と、前記基材を上下方向に昇降させる昇降装置と、前記回転駆動機構、前記移動機構及び前記昇降装置を制御する制御装置とを備え、前記制御装置は、大径管の外径仕様に応じて、前記基材の回転中心が大径管の中心と略一致するように、前記昇降装置を制御して前記基材を上下方向に昇降させると共に、前記レーザ式外径計が大径管の両端位置を検出可能な位置となるように、前記移動機構を制御した後、前記回転駆動機構を制御して、前記基材を大径管の周方向に少なくとも90°回転させることを特徴とする大径管の外径測定装置を提供する。
【0014】
本発明に係る大径管の外径測定装置が備える制御装置は、大径管の外径仕様に応じて、基材の回転中心が大径管の中心と略一致するように、昇降装置を制御して基材を上下方向に昇降させる。また、制御装置は、大径管の外径仕様に応じて、第1及び第2の外径測定器が具備するレーザ式外径計が大径管の両端位置を検出可能な位置となるように、移動機構を制御する。これにより、制御装置が回転駆動機構を制御して、基材(ひいては、基材に取り付けられた第1及び第2の外径測定器)を大径管の周方向に回転させる際に、大径管の外径仕様に関わらず、どの回転位置についても精度良く外径を測定することが可能である。
また、本発明に係る大径管の外径測定装置は、第1の径方向についての大径管の外径を算出する第1の外径測定器と、第1の径方向と直交する第2の径方向についての大径管の外径を算出する第2の外径測定器とを備えるため、回転駆動機構によって、基材(ひいては、基材に取り付けられた第1及び第2の外径測定器)を大径管の周方向に少なくとも90°回転させるだけで(換言すれば、短時間で)、大径管の全周に亘る外径を測定可能である。従って、検査能率を損なうことなく、大径管の外径(最大外径、最小外径)を測定可能である。
さらに、本発明に係る大径管の外径測定装置においては、制御装置が回転駆動機構、移動機構及び昇降装置を制御するため、大径管の外径を自動的に測定可能である。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明によれば、種々の外径仕様を有する大径管が混在する場合であっても、検査能率を損なうことなく、大径管の外径(最大外径、最小外径)を自動的に精度良く測定可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、添付図面を適宜参照しつつ、本発明の一実施形態について説明する。
【0017】
図1は、本発明の一実施形態に係る大径管の外径測定装置の概略構成を模式的に示す縦断面図である。図2は、図1に示す外径測定装置の要部を模式的に示す分解斜視図である。
図1又は図2に示すように、本実施形態に係る外径測定装置100は、基材1a,1bと、回転駆動機構2と、第1の外径測定器3と、第2の外径測定器4と、移動機構5,6と、昇降装置7と、回転駆動機構2、移動機構5及び昇降装置7を制御する制御装置8とを備えている。また、本実施形態に係る外径測定装置100は、基材1a,1b、回転駆動機構2(モータ23は除く)、第1の外径測定器3、第2の外径測定器4及び移動機構5,6を収納する架台9を備えている。
【0018】
基材1a、1bは、円盤状の部材とされている。基材1a,1bには、軸方向が略水平となるように配置された大径管Pが挿通される。具体的には、基材1a,1bには、最も外径仕様の大きな大径管Pが挿通し得るような内径を有する挿通孔11a,11bがそれぞれ設けられており、この挿通孔11a,11bに大径管Pが挿通される。基材1a,1bは、両者の間に介装されたシャフト12によって連結されている。なお、基材1aと基材1bの離間距離(シャフト12の長さ)は、基材1aに取り付けられた第1の外径測定器3が具備するレーザ式外径計から投光されるレーザ走査光と、基材1bに取り付けられた第2の外径測定器4が具備するレーザ式外径計から投光されるレーザ走査光とが、互いに干渉しないように設定されている。
【0019】
回転駆動機構2は、基材1a,1bを大径管Pの周方向に少なくとも90°回転させるように構成されている。具体的には、回転駆動機構2は、基材1bに取り付けられ、基材1a,1bの中心軸CL上の点Cを中心とする円弧状のギア21と、ギア21に螺合するギア22と、ギア22を回転させるモータ23とを具備する。モータ23を駆動することによってギア22を回転させると、ギア22に螺合するギア21が中心軸CL周りに回動することになる。これにより、ギア21が取り付けられた基材1b及び基材1bに連結された基材1aも、中心軸CL周りに回動する。中心角が90°以上の円弧状のギア21を用いることにより、基材1a,1bは、大径管Pの周方向に少なくとも90°回転することになる。なお、回転駆動機構2のモータ23の駆動は、制御装置8からの制御信号によって制御される。
【0020】
なお、回転駆動機構2は、基材1a,1bと架台9との間に介装された、支持ローラ24及びガイドローラ(本実施形態では、フリーベアリング)25を具備する。これら支持ローラ24及びガイドローラ25が、基材1a,1bの回転を案内することにより、基材1a,1bは、円滑に回転することが可能である。
【0021】
第1の外径測定器3は、基材1aに取り付けられた(後述するように、移動機構5を介して基材1aに取り付けられた)、大径管Pの第1の径方向(図1、図2に示す状態では、矢符Xで示す左右方向)についての両端位置をそれぞれ検出する一対のレーザ式外径計を具備する。具体的には、第1の外径測定器3は、投光器3a及び該投光器3aに対向配置された受光器3bから構成されるレーザ式外径計(以下、適宜「左側レーザ式外径計3L」という)と、投光器3c及び該投光器3cに対向配置された受光器3dから構成されるレーザ式外径計(以下、適宜「右側レーザ式外径計3R」という)とを具備する。
【0022】
左側レーザ式外径計3Lの投光器3aは、レーザ光源や走査光学系から構成され、レーザ走査光を受光器3bに向けて投光する。左側レーザ式外径計3Lの受光器3bは、集光光学系や光電センサから構成され、投光器3aから投光されたレーザ走査光のうち、大径管Pで遮蔽されずに到達したレーザ走査光を受光して電気信号に変換する。右側レーザ式外径計3Rの投光器3c及び受光器3dも、上述した左側レーザ式外径計3Lの投光器3a及び受光器3bと同様の構成を有する。
【0023】
図3(a)は、第1の外径測定器3による大径管Pの外径算出方法を説明する説明図である。第1の外径測定器3は、左側レーザ式外径計3L及び右側レーザ式外径計3Rでそれぞれ検出した、大径管Pの左右方向の両端位置に基づいて、左右方向についての大径管Pの外径dXを算出する。具体的には、図3(a)に示すように、左側レーザ式外径計3Lの投光器3aから投光されたレーザ走査光のうち、受光器3bで受光されなかった(大径管Pで遮蔽された)レーザ走査光の走査時間を長さX1に換算する(長さX1が大径管Pの左端位置に対応する)と共に、右側レーザ式外径計3Rの投光器3cから投光されたレーザ走査光のうち、受光器3dで受光されなかった(大径管Pで遮蔽された)レーザ走査光の走査時間を長さX2に換算する(長さX2が大径管Pの右端位置に対応する)。そして、左側レーザ式外径計3Lと右側レーザ式外径計3Rとの離間距離(大径管Pが存在しない場合における、各レーザ式外径計3L,3Rのレーザ走査光の離間距離)LXと、上記の長さX1,X2とを加算することにより、左右方向についての大径管Pの外径dXを算出する。なお、左側レーザ式外径計3Lと右側レーザ式外径計3Rとの離間距離LXは、後述するように、移動機構5が具備する変位計(マグネスケール等)からの出力値に基づいて算出される。
【0024】
第2の外径測定器4は、基材1bに取り付けられた(後述するように、移動機構6を介して基材1bに取り付けられた)、大径管Pの第1の径方向と直交する第2の径方向(図1、図2に示す状態では、矢符Yで示す上下方向)についての両端位置をそれぞれ検出する一対のレーザ式外径計を具備する。具体的には、第2の外径測定器4は、投光器4a及び該投光器4aに対向配置された受光器4bから構成されるレーザ式外径計(以下、適宜「上側レーザ式外径計4U」という)と、投光器4c及び該投光器4cに対向配置された受光器4dから構成されるレーザ式外径計(以下、適宜「下側レーザ式外径計4L」という)とを具備する。
【0025】
上側レーザ式外径計4Uの投光器4a及び受光器4b、下側レーザ式外径計4Lの投光器4c及び受光器4dは、前述した左側レーザ式外径計3Lの投光器3a及び受光器3bや、右側レーザ式外径計3Rの投光器3c及び受光器3dと同様の構成を有する。
【0026】
図3(b)は、第2の外径測定器4による大径管Pの外径算出方法を説明する説明図である。第2の外径測定器4は、上側レーザ式外径計4U及び下側レーザ式外径計4Lでそれぞれ検出した、大径管Pの上下方向の両端位置に基づいて、上下方向についての大径管Pの外径dYを算出する。具体的には、図3(b)に示すように、上側レーザ式外径計4Uの投光器4aから投光されたレーザ走査光のうち、受光器4bで受光されなかった(大径管Pで遮蔽された)レーザ走査光の走査時間を長さY1に換算する(長さY1が大径管Pの上端位置に対応する)と共に、下側レーザ式外径計4Lの投光器4cから投光されたレーザ走査光のうち、受光器4dで受光されなかった(大径管Pで遮蔽された)レーザ走査光の走査時間を長さY2に換算する(長さY2が大径管Pの下端位置に対応する)。そして、上側レーザ式外径計4Uと下側レーザ式外径計4Lとの離間距離(大径管Pが存在しない場合における、各レーザ式外径計4U,4Lのレーザ走査光の離間距離)LYと、上記の長さY1,Y2とを加算することにより、上下方向についての大径管Pの外径dYを算出する。なお、上側レーザ式外径計4Uと下側レーザ式外径計4Lとの離間距離LYは、後述するように、移動機構6が具備する変位計(マグネスケール等)からの出力値に基づいて算出される。
【0027】
なお、本実施形態のレーザ式外径計3L,3R,4U,4Lは、投光器と受光器との離間距離が最大で1200mm程度となるように配置されている。また、本実施形態のレーザ式外径計3L,3R,4U,4Lのレーザ走査光の走査幅は、約120mmである。
【0028】
移動機構5は、第1の外径測定器3が具備するレーザ式外径計3L,3Rを基材1aに対して移動させる。具体的には、移動機構5は、アーム51a,51bと、サーボモータ52a,52bと、リニアガイド53a,53bとを具備する。
【0029】
アーム51aの基材1aに対向する側と反対側の面には、レーザ式外径計3Lの投光器3a及び受光器3bが取り付けられている。アーム51bの基材1aに対向する側と反対側の面には、レーザ式外径計3Rの投光器3c及び受光器3dが取り付けられている。アーム51a,51bは、レーザ式外径計3L,3Rの測定精度に支障を来さないように、撓みや捻れが生じ難い剛性を有する形状に設計されている。サーボモータ52aは、アーム51aを左右方向(矢符Xで示す方向)に進退動させる機能を有する。サーボモータ52bは、アーム51bを左右方向(矢符Xで示す方向)に進退動させる機能を有する。リニアガイド53a,53bは、アーム51a,51bと基材1aとの間に介装されている。すなわち、リニアガイド53a,53bは、一方の面がアーム51a,51bの基材1aに対向する側の面に取り付けられると共に、他方の面が基材1aに取り付けられている。
【0030】
上記の構成において、サーボモータ52aを駆動することにより、アーム51a(ひいては、レーザ式外径計3Lの投光器3a及び受光器3b)は、リニアガイド53a,53bに案内されながら、基材1aに対して左右方向に進退動することになる。また、サーボモータ52bを駆動することにより、アーム51b(ひいては、レーザ式外径計3Rの投光器3c及び受光器3d)は、リニアガイド53a,53bに案内されながら、基材1aに対して左右方向に進退動することになる。アーム51a,51bの所定の基準位置からの変位は、マグネスケール等の変位計(図示せず)によって測定され、第1の外径測定器3に出力される。なお、サーボモータ52a,52bの駆動は、制御装置8からの制御信号によって制御される。
【0031】
移動機構6は、第2の外径測定器4が具備するレーザ式外径計4U,4Lを基材1bに対して移動させる。具体的には、移動機構6は、アーム61a,61bと、サーボモータ62a,62bと、リニアガイド63a,63bとを具備する。
【0032】
アーム61aの基材1bに対向する側と反対側の面には、レーザ式外径計4Uの投光器4a及び受光器4bが取り付けられている。アーム61bの基材1bに対向する側と反対側の面には、レーザ式外径計4Lの投光器4c及び受光器4dが取り付けられている。アーム61a,61bは、レーザ式外径計4U,4Lの測定精度に支障を来さないように、撓みや捻れが生じ難い剛性を有する形状に設計されている。サーボモータ62aは、アーム61aを上下方向(矢符Yで示す方向)に進退動させる機能を有する。サーボモータ62bは、アーム61bを上下方向(矢符Yで示す方向)に進退動させる機能を有する。リニアガイド63a,63bは、アーム61a,61bと基材1bとの間に介装されている。すなわち、リニアガイド63a,63bは、一方の面がアーム61a,61bの基材1bに対向する側の面に取り付けられると共に、他方の面が基材1bに取り付けられている。
【0033】
上記の構成において、サーボモータ62aを駆動することにより、アーム61a(ひいては、レーザ式外径計4Uの投光器4a及び受光器4b)は、リニアガイド63a,63bに案内されながら、基材1bに対して上下方向に進退動することになる。また、サーボモータ62bを駆動することにより、アーム61b(ひいては、レーザ式外径計4Lの投光器4c及び受光器4d)は、リニアガイド63a,63bに案内されながら、基材1bに対して上下方向に進退動することになる。アーム61a,61bの所定の基準位置からの変位は、マグネスケール等の変位計(図示せず)によって測定され、第2の外径測定器4に出力される。なお、サーボモータ62a,62bの駆動は、制御装置8からの制御信号によって制御される。
【0034】
昇降装置7は、サーボモータ等を具備し、基材1a,1bを上下方向に昇降させる機能を有する。具体的には、昇降装置7は、架台9の下方に取り付けられ、直接的には架台9を昇降させる。これにより、架台9に取り付けられた基材1a,1b(ひいては、基材1a,1bに取り付けられた回転駆動機構2、第1の外径測定器3、第2の外径測定器4及び移動機構5)が上下方向に昇降することになる。なお、昇降装置7の駆動は、制御装置8からの制御信号によって制御される。
【0035】
以上の構成を有する外径測定装置100において、制御装置8には、まず最初に、上位の制御装置(例えば、プロセスコンピュータ)から、測定対象である大径管Pの外径仕様が入力される。制御装置8は、入力された大径管Pの外径仕様に応じて、基材1a,1bの回転中心(中心軸CL)が大径管Pの中心(中心軸)と略一致するように、昇降装置7を制御して基材1a,1bを上下方向に昇降させる。
【0036】
図4は、大径管Pの外径に応じた大径管Pの中心位置の変動例を説明する説明図である。大径管Pが傾斜角15°の搬送ロールRによって、外径測定装置100の設置位置まで搬送されるとすれば、外径(仕様値)508mmの大径管P1の中心位置(搬送ロールRの回転軸を基準とした高さ)は、幾何学的に約265mmとなる。また、外径(仕様値)1524mmの大径管P2の中心位置(搬送ロールRの回転軸を基準とした高さ)は、幾何学的に約790mmとなる。このように、制御装置8は、入力された大径管Pの外径仕様に応じて大径管Pの中心位置を算出し、基材1a,1bの回転中心が前記算出した大径管Pの中心位置と略一致するように、昇降装置7を駆動制御する。
【0037】
次に、大径管Pを外径測定装置100の設置位置まで搬送しながら、或いは、搬送した後に、制御装置8は、入力された大径管Pの外径仕様に応じて、第1の外径測定器3が具備するレーザ式外径計3L,3Rが大径管Pの左右方向両端位置を検出可能な位置となるように、移動機構5のサーボモータ52a,52bを駆動制御する。同様に、制御装置8は、入力された大径管Pの外径仕様に応じて、第2の外径測定器4が具備するレーザ式外径計4U,4Lが大径管Pの上下方向両端位置を検出可能な位置となるように、移動機構6のサーボモータ62a,62bを駆動制御する。
【0038】
最後に、制御装置8は、回転駆動機構2を制御して、基材1a,1bを大径管Pの周方向に少なくとも90°回転させる。これにより、基材1a,1bに取り付けられた第1及び第2の外径測定器3,4も大径管Pの周方向に少なくとも90°回転するため、大径管Pの全周に亘る外径を測定可能である。従って、大径管Pの最大外径、最小外径を測定でき、真に必要な真円度を算出することも可能である。
【0039】
以上に説明した外径測定装置100において、レーザ式外径計3L,3R,4U,4Lの投光器と受光器との離間距離を1200mm(最大値)としたとき、外径測定値のバラツキは、50〜100μm程度であった。近年の大径管Pの真円度に対して要求される計測精度は100μmであるため、上記の測定値バラツキであれば、十分な測定精度で大径管Pの外径を測定できているといえる。
また、大径管Pについて許容される真円度(最大外径−最小外径)は、外径仕様の1%であるため、最大で約15.5mmである。前述のように、本実施形態のレーザ式外径計3L,3R,4U,4Lのレーザ走査光の走査幅は、約120mmであるため、大径管Pの外径仕様に応じて、大径管Pの上下方向及び左右方向の両端位置が、レーザ走査光の走査幅の中心と合致するように、移動機構5,6を制御すれば、上記の真円度を十分測定できるといえる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係る大径管の外径測定装置の概略構成を模式的に示す縦断面図である。
【図2】図2は、図1に示す外径測定装置の要部を模式的に示す分解斜視図である。
【図3】図3は、図1及び図2に示す第1及び第2の外径測定器による大径管の外径算出方法を説明する説明図である。
【図4】図4は、大径管の外径に応じた大径管の中心位置の変動例を説明する説明図である。
【符号の説明】
【0041】
1a,1b・・・基材
2・・・回転駆動機構
3・・・第1の外径測定器
4・・・第2の外径測定器
5,6・・・移動機構
7・・・昇降装置
8・・・制御装置8
9・・・架台
100・・・外径測定装置
P・・・大径管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸方向が略水平となるように配置された大径管が挿通される基材と、
前記基材を大径管の周方向に少なくとも90°回転させる回転駆動機構と、
前記基材に取り付けられた、大径管の第1の径方向についての両端位置をそれぞれ検出する一対のレーザ式外径計を具備し、該一対のレーザ式外径計で検出した両端位置に基づいて、前記第1の径方向についての大径管の外径を算出する第1の外径測定器と、
前記基材に取り付けられた、大径管の前記第1の径方向と直交する第2の径方向についての両端位置をそれぞれ検出する一対のレーザ式外径計を具備し、該一対のレーザ式外径計で検出した両端位置に基づいて、前記第2の径方向についての大径管の外径を算出する第2の外径測定器と、
前記第1の外径測定器及び前記第2の外径測定器がそれぞれ具備するレーザ式外径計を前記基材に対して移動させる移動機構と、
前記基材を上下方向に昇降させる昇降装置と、
前記回転駆動機構、前記移動機構及び前記昇降装置を制御する制御装置とを備え、
前記制御装置は、大径管の外径仕様に応じて、前記基材の回転中心が大径管の中心と略一致するように、前記昇降装置を制御して前記基材を上下方向に昇降させると共に、前記レーザ式外径計が大径管の両端位置を検出可能な位置となるように、前記移動機構を制御した後、前記回転駆動機構を制御して、前記基材を大径管の周方向に少なくとも90°回転させることを特徴とする大径管の外径測定装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−71778(P2010−71778A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−238989(P2008−238989)
【出願日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(000002118)住友金属工業株式会社 (2,544)
【Fターム(参考)】