説明

大気圧プラズマ発生装置

【課題】長尺の放電路を形成し、長尺のプラズマを発生、照射する大気圧プラズマ発生装置を提供。
【解決手段】噴出口211からアルゴン流が電極41及び電極42間の高周波電力によりプラズマ化され、予備プラズマとして筒状部15内部に左端から右方向へ噴出される。噴出口221においては、アルゴン流が電極43及び電極44間の高周波電力によりプラズマ化され、予備プラズマとして筒状部15内部に右端から左方向へ噴出される。電極41と電極43との間に高周波電力を印加すると、放電領域150の両端からなだれ込む2つのアルゴンプラズマ間で放電が生じ放電領域150全体が放電状態となる。導入口13を介してアルゴン及び酸素の混合気体を供給すると、酸素プラズマP150が生じて、筒状部15の下側に設けられた170個の第2の孔部152から下方向に照射される。即ち、長さ50cmに及ぶ長尺の酸素プラズマP150が生成し、照射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、大気圧下で処理対象を処理可能な、大気圧プラズマ発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶画面その他のディスプレイ基板としてのガラス基板や、種々の半導体基板の表面の清浄方法として、大気圧下で酸素を含むガスをプラズマ化して照射する技術が多用されている。その他、被処理対象物の表面の清浄方法や滅菌方法として、大気圧プラズマは今後もその用途が拡大することが期待されている。
【0003】
処理すべき基板等の板状物や膜状物の面積が大きい場合、細長い矩形状領域にプラズマ照射を行いながら、被処理対象物を搬送することで、迅速な大面積のプラズマ処理が行われている。この点で、連続処理可能な大気圧プラズマ処理は非常に有用である。
【0004】
上述したような、長尺の矩形状範囲のプラズマ発生装置としては、当該長尺な2つの電極を空隙を有して相対させる方法が一般的である。即ち、例えば長辺側が10cmの矩形状範囲のプラズマを発生させるためには、長さが10cmの2つの電極を数mm離して対向電極を形成し、当該空隙の長辺方向に垂直に例えば酸素とアルゴンの混合気体を通過させながら2つの電極に高周波を印加することで、長手方向が10cmの照射領域に大気圧プラズマが生成可能である。
【0005】
本発明者らによる特許文献1には、所定長さのマイクロホローカソード電極を、微小間隔で対向させて、その間隔にガスを流して、プラズマを発生する大気圧プラズマ発生装置が開示されている。また、特許文献2には、軸方向に伸びた同心円筒状の電極間に、ガスを軸方向に流して、軸の垂直な方向に放電させて、ガスを外側円筒に軸方向に沿って設けられた孔からプラズマを発生する大気圧プラズマ発生装置が開示されている。また、軸方向に伸びた平行平板電極間に電圧を印加して平行平板間で放電させると共に、平行平板間において、軸に垂直方向にガスを流して、軸方向に垂直な方向にプラズマを出力する装置が開示されている。また、特許文献3には、軸方向に長く伸びた円筒空間の両端にリング状電極を対向させて、軸方向にガスを供給すると共に、リング状の電極間の軸方向に放電を発生させて、軸方向にプラズマを出力する大気圧プラズマ発生装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−196210
【特許文献2】特開2003−109799
【特許文献3】特表2008−533666
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1、2の大気圧プラズマ発生装置は、長く伸びた対向電極間で放電を発生させ、この放電方向に垂直な方向からガスを供給するようにしている。しかし、大気圧で電極間で放電させることは容易ではない。この特許文献1、2の場合には、対向する電極面積が広いために、電極表面の一部の点部分で放電が開始して、大きな電流が流れると、電極への配線での電圧降下のために、電極間の電圧は放電と共に急速に低下する。このため、電極表面の他の部分では、放電が起こらないという問題がある。すなわち、大気圧放電の場合には、広い電極間で、一様な放電を実現することが困難である。したがって、放電方向に垂直な方向にガスを流したとしても、この特許文献1、2の大気圧プラズマ発生装置では、照射面上において線状に一様な密度のプラズマを発生することは困難である。
【0008】
また、特許文献3は、軸方向の両端に設けらた平板状の対向するリング電極間に軸方向に放電を発生させて、リング電極に設けられた中心孔からガスを軸方向に流して、プラズマを軸方向に出力している。しかし、この大気圧プラズマ発生装置においても、対向する電極面間で、一様な放電を実現することは困難であり、この場合には、対向する電極面の点間の線状放電に平行にガスを流すものであるため、照射面上において、効率良く、長い線状となるプラズマを出力することが困難であるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明の目的は、照射面上において、線状となる幅の広い平面状の大気圧プラズマを出力できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本第1発明は、大気圧プラズマ発生装置において、一軸方向に伸びた柱状の主プラズマ化領域を形成する絶縁体から成る筐体部と、主プラズマ化領域の一端において軸方向に開口する第1の噴出口と、第1の噴出口において軸方向に垂直な方向に空隙を有して対峙する第1及び第2の電極と、第1の噴出口に向って所定の気体を供給する第1の気体供給手段とを有する第1の予備プラズマ発生部と、主プラズマ化領域の他端において軸方向の第1の噴出口に向かって開口する第2の噴出口と、第2の噴出口において軸方向に垂直な方向に空隙を有して対峙する第3及び第4の電極と、第2の噴出口に向って所定の気体を供給する第2の気体供給手段とを有する第2の予備プラズマ発生部と、主プラズマ化領域の軸方向に垂直に所定の気体を供給する第3の気体供給手段と、主プラズマ化領域でプラズマ化された、第1の気体供給手段、第2の気体供給手段及び第3の気体供給手段から供給された気体の混合気体プラズマを、主プラズマ化領域の前記軸方向に垂直な方向に噴出し、主プラズマ化領域の軸方向に沿って配設された噴出口とを有することを特徴とする大気圧プラズマ発生装置である。
【0011】
本発明の特徴は、互いに対向して放出される2つの予備プラズマを言わば熱電極として扱い、それらの間で放電を生ぜしめ、当該放電領域に垂直に、主目的たる気体を供給して、当該気体をプラズマ化させるものである。したがって、軸方向に対向する2つの電極の配設部分における主プラズマ化領域の軸方向に垂直な断面においては、一定の面を有したプラズマが生成される。その結果、一定の断面面積を有したプラズマが、主プラズマ化領域の軸方向に伸びて、絶縁体で区画された主プラズマ化領域の全体に一様なプラズマが生成される。この結果、軸方向には、最大数mに及び得る、柱状の放電領域が形成でき、且つその長手方向に垂直に主目的たるプラズマを放出できるので、矩形のプラズマ照射領域の長辺が最大数mに及び得る。
【0012】
第1発明において、第1の予備プラズマ発生部に設けられた所定の気体を供給する第1の気体供給手段と、第2の予備プラズマ発生部に設けられた所定の気体を供給する第2の気体供給手段は、例えば同じ気体や、同じ組成の混合気体を供給しても良く、それぞれ異なる、或いは組成比の異なる混合気体を供給しても良いものとする。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、第1及び第2の電極間に電圧を印加してその間に放電させてプラズマを発生させ、第3及び第4の電極間に電圧を印加してその間に放電させてプラズマを発生させ、第1の電極と、第3の電極との間に電圧を印加して、主プラズマ化領域の軸方向にプラズマを生成することを特徴とする。
【0014】
また、第3の発明は、第1発明又は第2発明において、第1及び第2の電極間に電圧を印加する第1の電源と、第3及び第4の電極間に電圧を印加する第2の電源と、第1の電極と、第3の電極との間に電圧を印加する第3の電源とを有することを特徴とする。
【0015】
印加する電圧は、直流、交流、何れであっても良く、直流と交流とが混合したものであっても良い。第1及び第2の電極間、第3及び第4の電極間には、直流を印加して、第1の電極と第3の電極間には、交流を印加するものであっても良く、その逆に、第1及び第2の電極間、第3及び第4の電極間には、交流を印加して、第1の電極と第3の電極間には、直流を印加するものであっても良い。また、両方とも、交流、又は、直流であっても良い。このように電圧を印加することで、主プラズマ領域の全体に、軸方向に長く伸びた一様のプラズマを生成することができる。
【0016】
ここで所定の気体を供給する第3の気体供給手段は、第1の予備プラズマ発生部に設けられた第1の気体供給手段が供給する気体や、第2の予備プラズマ発生部に設けられた第2の気体供給手段が供給する気体と、例えば同じ気体や、同じ組成の混合気体を供給しても良く、それらとは異なる、或いは組成比の異なる混合気体を供給しても良いものとする。
【0017】
第4の発明は、第1発明から第3発明において、主プラズマ化領域の軸方向の長さは、3cm以上2m以下であることを特徴とする。
【0018】
第5の発明は、第1発明から第4発明において、主プラズマ化領域の軸方向の断面形状は、軸方向及び第3の気体供給手段による気体の供給方向に垂直な一辺は、0.1mm以上1cm以下、軸方向及び第3の気体供給手段による気体の供給方向に平行な一辺は、5mm以上2cm以下の正方形又は長方形であることを特徴とする。
【0019】
第6発明は、第1発明から第5発明において、噴出口は、主プラズマ化領域の軸方向に沿って、複数配設されていることを特徴とする。
【0020】
第7発明は、第1発明から第6発明において、第3の気体供給手段は、主プラズマ化領域の軸方向に垂直に、主プラズマ領域に向かって開口し、軸方向に沿って、多数、配設された孔を有することを特徴とする。
【0021】
上記の全ての発明において、第1の噴出口、第2の噴出口に向って気体を供給する第1の気体供給手段、第2の気体供給手段は、アルゴンガスを供給する手段で構成しても良い。また、第3の気体供給手段は、酸素ガスを供給する手段で構成しても良い。
【発明の効果】
【0022】
本発明の特徴は、得るべき矩形状のプラズマ照射領域の長辺方向が、主プラズマ化領域又は放電領域の長さ方向であることであり、長尺の柱状のプラズマ化領域を形成可能とした、又は、長尺の放電路を形成可能としたものである。
【0023】
互いに対向して放出される2つの予備プラズマが、熱電極により放出された荷電粒子と見做すことができる。それらの第1の電極及び第2の電極間、及び第3の電極及び第4の電極間で、放電を生ぜしめることで、これらの電極間に予備プラズマが生成される。そして、第1の電極と第3の電極間に軸方向に印加される電圧により、主プラズマ化領域の軸方向の両端に発生した予備プラズマが、主プラズマ化領域の軸方向に成長して、絶縁体で区画された主プラズマ化領域の全体に渡り柱状のプラズマが生成される。
【0024】
そして、この主プラズマ化領域の軸方向に垂直な方向から、プラズマの主成分となる気体を供給して、当該気体の柱状のプラズマを生成させる。例えば、2つの予備プラズマを形成するための気体とは異なる第3の気体、例えば、不活性ガスと酸素の混合気体を軸方向に垂直に供給する。当該第3の気体中の原子又は分子から、イオンが形成され、励起分子が形成され、ラジカルが形成され、或いは例えば酸素分子が含まれる場合にオゾン分子が形成される。
【0025】
したがって、軸方向に対向する2つの電極の配設部分における主プラズマ化領域の軸方向に垂直な断面においては、一定の面を有したプラズマが生成される。その結果、一定の断面面積を有したプラズマが、主プラズマ化領域の軸方向に伸びて、絶縁体で区画された主プラズマ化領域の全体に一様なプラズマが生成される。この結果、軸方向には、最大数mに及び得る、柱状の放電領域が形成でき、且つ、その長手方向に垂直に主目的たるプラズマを放出できるので、矩形のプラズマ照射領域の長辺が最大数mに及び得る。この長尺の主プラズマ化領域又は放電領域に垂直に酸素を含むガスを供給すれば、放電領域の長さが長辺となる矩形状の酸素プラズマ照射領域が形成可能となる。これにより、一度に長尺の矩形状の酸素プラズマ照射領域を形成できるので、大面積の処理対象であっても迅速な酸素プラズマ処理が可能となる。なお、酸素ガスは一例であり、他のガスを用いることができる。
【0026】
尚、本発明は、任意のプラズマ生成種に適用できるのであり、上記説明で用いたのアルゴンと酸素を他の任意の気体、或いは、霧状物又は微粒子を分散させた気体等に置換可能である。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の具体的な一実施例に係るプラズマ発生装置100の外観図。
【図2.A】プラズマ発生装置100の軸方向に平行な断面図。
【図2.B】プラズマ発生装置100の第1の予備プラズマ発生部の軸方向に垂直な断面図。
【図3】プラズマ発生装置100を駆動させた状態を示す断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明の一実施例について、図面を用いて説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0029】
図1は、本発明の具体的な第1の実施例に係る大気圧プラズマ発生装置100の構成を示す外観図である。図1の大気圧プラズマ発生装置100は、プラズマの発生において減圧や外気の遮断を要しない、大気圧プラズマ発生装置である。図1において、プラズマ発生装置100は、概略直方体状の筐体部10、筐体部10の軸方向(x軸方向)の両端に設けられた第1の予備プラズマ発生部21及び第2の予備プラズマ発生部22、筐体部10の上部に接続されたアルゴン及び酸素の混合気体供給管30(第3の気体供給手段)、3つの高周波電源51、52及び53(第1の電源、第2の電源、第3の電源)から成る。
【0030】
図2.Aは、図1のプラズマ発生装置100の筐体部10の軸方向(x軸方向)に平行な断面図であり、図2.Bは、第1の予備プラズマ発生部21の軸方向(x軸方向)に垂直な断面図である。筐体部10は、略直方体形状の外側筐体11と、x軸方向に伸びた円筒形状の筒状部15から成る。筒状部15は絶縁体から成り、x軸方向の長さが約50cmであって、x軸方向に沿って170個の第1の孔部151と、170個の第2の孔部152を有する。また、筒状部15内部の円柱状の空間は主プラズマ化領域150(放電領域)である。外側筐体11は、絶縁体から成り、内部空間12と、その上側においてアルゴン及び酸素の混合気体供給管30を接続するための4つの導入口13とを有する。
【0031】
筒状部15を外側筐体11の内部空間12の下側からに組み込んで筐体部10が形成される。筒状部15は内部空間12側に170個の第1の孔部151が配置され、外側に向けて170個の第2の孔部152が配置される。
【0032】
筒状部15のx軸方向の両端には、第1の予備プラズマ発生部21及び第2の予備プラズマ発生部22が接合される。
【0033】
筒状部15の左端に接続される第1の予備プラズマ発生部21の構成は次の通りである。筒状部15の主プラズマ化領域(放電領域)150と連通するように、第1の噴出口211が設けられており、当該第1の噴出口211を上下から挟むように第1の電極41と第2の電極42が設けられている。また、第1の噴出口211を介して筒状部15の主プラズマ化領域(放電領域)150に向ってx軸方向にアルゴンが供給可能なように、アルゴン供給管212が設けられている。これら、第1の電極41と第2の電極42、アルゴン供給管212を固定するため、絶縁体から成る固定部210が設けられている。
【0034】
筒状部15の右端に接続される第2の予備プラズマ発生部22の構成も同様である。即ち、筒状部15の主プラズマ化領域(放電領域)150と連通するように、第2の噴出口221が設けられており、当該第2の噴出口221を上下から挟むように第3の電極43と第4の電極44が設けられている。また、第2の噴出口221を介して筒状部15の主プラズマ化領域(放電領域)150に向ってアルゴンを供給可能なように、アルゴン供給管222が設けられている。これら、第3の電極43と第4の電極44、アルゴン供給管222を固定するため、絶縁体から成る固定部220が設けられている。
【0035】
図2.Aに示される通り、第1の予備プラズマ発生部21のアルゴン供給管212及び第1の噴出口211を介して、筒状部15の主プラズマ化領域(放電領域)150の左端から−x軸方向に沿って、x軸方向の長さの中央部に向けてアルゴンが供給される。また、第2の予備プラズマ発生部22のアルゴン供給管222及び第2の噴出口221を介して、筒状部15の主プラズマ化領域(放電領域)150の右端からx軸方向に沿って、x軸方向の長さの中央部に向けてアルゴンが供給される。このように、第1の予備プラズマ発生部21の第1の噴出口211と、第2の予備プラズマ発生部22の第2の噴出口221とは、x軸方向に離間して、互いに対向した位置に配置されている。
【0036】
図2.Bは、図2.Aにおける一点鎖線経路に沿った2.B−2.B矢視方向の断面図である。上述した通り、筒状部15を外側筐体11の内部空間12の下側から組み込んで筐体部10が形成されており、内部空間12側に向けて筒状部15の170個の第1の孔部151が配置され、外側である下側(y軸方向)に向けて、x軸方向に沿って170個の第2の孔部152が配置されている。
【0037】
尚、第1の孔部151及び第2の孔部152はいずれも円柱状側面を有し、その開口部である上下の円周の直径は1mmとした。また、図2.Bに示される通り、第1の孔部151の中心軸と、第2の孔部152の中心軸とは一直線上に配置していない。これは、主プラズマ化領域150において、混合気体供給管30から内部空間12を介して、供給されるガスが一様に分散するようにするためである。これにより、主プラズマ化領域150において発生するプラズマ密度が均一一様となる。
【0038】
図3は、図1のプラズマ発生装置100を駆動させ、主プラズマ化領域150におけるプラズマの発生状況と、x軸方向の長さ50cmの領域に、プラズマを照射させる状態にを示した概念図である。尚、図3の装置構成のうち、図1、図2.A、及び図2.Bにおける対応する構成要素については、同一符号を付して、説明を省略する。
【0039】
第1の予備プラズマ発生部21の第1の電極41と第2の電極42に第1の高周波電源51が接続される。第2の予備プラズマ発生部22の第3の電極43と第4の電極44に第2の高周波電源52が接続される。また、第1の予備プラズマ発生部21の第1の電極41と、第2の予備プラズマ発生部22の第3の電極43に第3の高周波電源53が接続される。第1の電極41と第2の電極42は、−x軸方向に伸びて、先端部分が相互に対向するようにy軸方向、及び−y軸方向に曲げられている。
【0040】
また、第1のアルゴン供給管212から、筒状部15内部に図3の左端から−x軸方向にアルゴン(Ar)が供給される。第2のアルゴン供給管222から、筒状部15内部に図3の右端からx軸方向に向けてアルゴン(Ar)が供給される。
【0041】
こうして、第1の予備プラズマ発生部21の、第1の噴出口211においては、アルゴン流が第1の電極41及び第2の電極42間の高周波電力によりプラズマ化され、予備プラズマとして筒状部15の内部の、主プラズマ化領域(放電領域)150の左端から−x軸方向へ噴出される。同様に、第2の予備プラズマ発生部22の、第2の噴出口221においては、アルゴン流が第3の電極43及び第4の電極44間の高周波電力によりプラズマ化され、予備プラズマとして筒状部15内部の、主プラズマ化領域(放電領域)150の右端からx軸方向へ噴出される。
【0042】
この状態で、第1の予備プラズマ発生部21の第1の電極41と、第2の予備プラズマ発生部22の第3の電極43との間に第3の高周波電源53により高周波電力を印加すると、柱状の空間である主プラズマ化領域(放電領域)150の両端から流れ込む2つの予備プラズマ(アルゴンプラズマ)間で放電が生ずる。これにより、柱状の空間である主プラズマ化領域(放電領域)150全体が放電状態となり、且つプラズマ生成領域となる。
【0043】
また、アルゴン及び酸素の混合気体供給管30から、導入口13、内部空間12、第1の孔部151を介して、放電状態となった主プラズマ化領域(放電領域)150に酸素をアルゴンと供に、主プラズマ化領域150の軸方向に垂直な方向(y軸方向)に供給される。これにより、主プラズマ化領域150において、供給された酸素がイオン化、ラジカル化、酸素分子の活性化(励起状態)、或いは反応によりオゾンが生成されて、酸素プラズマP150となる。そして、酸素プラズマP150は、酸素ガスの供給される方向であるy軸方向な流れ、筒状部15の下側側壁に設けられた170個の第2の孔部152から図3において、筒状部15の側壁に垂直なy軸方向に外部に向かって照射される。
【0044】
筒状部15の側壁の下面に設けられた170個の第2の孔部152は、直径が1mmであり、x軸方向に、一列に、長さ約50cmに渡って配置されている。これらの孔部152からプラズマが外部に噴射されることにより、幅50cmの帯び状に、酸素プラズマP150が外部に出力される。
【0045】
即ち、図1のプラズマ発生装置100は、減圧及び外気の遮断の必要のない、有用な大気圧プラズマ発生装置である。
【0046】
主プラズマ化領域150の軸方向(x軸方向)の長さは、2m以下まで実現可能である。また、下限値は特に限定されないが、3cm以上とすることが望ましい。上記実施例では、主プラズマ領域は、内径2mmの円筒形状としたが、主プラズマ化領域150のx軸に垂直な断面を長方形としても良い。長方形とする場合には、一辺の長さは2mm以上5mm以下の範囲が望ましい。断面形状は、一辺の長さが2mm以上5mm以下の範囲において正方形や、長方形とすることが望ましい。この範囲の場合に、主プラズマ化領域150のx軸方向の長さを2m以下とすることができる。断面積は3mm2 以上25mm2 以下が望ましい。また、筒状部15の170個の第2の孔部152に連続して、y軸方向に伸びた5cm程度の長さを有する多数の孔をx軸方向に配設した部材を設けても良い。この場合に、この孔は、y軸に対して傾斜させても良い。
【産業上の利用可能性】
【0047】
ディスプレイその他のガラス基板表面の清浄化や各種半導体基板表面の清浄化、その他処理対象物表面の不純物除去、更には滅菌処理等に用いることができる。本発明は特に第面積の板状物、膜状物の大気圧下の連続処理に適している。
【符号の説明】
【0048】
100:プラズマ発生装置
10:筐体部
11:外側筐体
12:内部空間
13:導入口
15:筒状部
150:主プラズマ化領域(放電領域)
151:第1の孔部
152:第2の孔部
21:第1の予備プラズマ発生部
211:第1の噴出口
212:第1のアルゴン供給管(所定の気体を供給する第1の手段)
22:第2の予備プラズマ発生部
221:第2の噴出口
222:第2のアルゴン供給管(所定の気体を供給する第2の手段)
30:アルゴン及び酸素の混合気体供給管(所定の気体を供給する第3の手段)
41、42、43、44:第1、第2、第3、第4の電極
51、52、53:第1、第2、第3の高周波電源
55:他の高周波電源
60:電極板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧プラズマ発生装置において、
一軸方向に伸びた柱状の主プラズマ化領域を形成する絶縁体から成る筐体部と、
前記主プラズマ化領域の一端において前記軸方向に開口する第1の噴出口と、
前記第1の噴出口において前記軸方向に垂直な方向に空隙を有して対峙する第1及び第2の電極と、
前記第1の噴出口に向って所定の気体を供給する第1の気体供給手段とを有する第1の予備プラズマ発生部と、
前記主プラズマ化領域の他端において前記軸方向の前記第1の噴出口に向かって開口する第2の噴出口と、
前記第2の噴出口において前記軸方向に垂直な方向に空隙を有して対峙する第3及び第4の電極と、
前記第2の噴出口に向って所定の気体を供給する第2の気体供給手段とを有する第2の予備プラズマ発生部と、
前記主プラズマ化領域の前記軸方向に垂直に所定の気体を供給する第3の気体供給手段と、
主プラズマ化領域でプラズマ化された、前記第1の気体供給手段、第2の気体供給手段及び第3の気体供給手段から供給された気体の混合気体プラズマを、前記主プラズマ化領域の前記軸方向に垂直な方向に噴出し、前記主プラズマ化領域の前記軸方向に沿って配設された噴出口と、
を有することを特徴とする大気圧プラズマ発生装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の電極間に電圧を印加してその間に放電させてプラズマを発生させ、前記第3及び第4の電極間に電圧を印加してその間に放電させてプラズマを発生させ、前記第1の電極と、前記第3の電極との間に電圧を印加して、前記主プラズマ化領域の前記軸方向にプラズマを生成することを特徴とする請求項1に記載の大気圧プラズマ発生装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の電極間に電圧を印加する第1の電源と、
前記第3及び第4の電極間に電圧を印加する第2の電源と、
前記第1の電極と、前記第3の電極との間に電圧を印加する第3の電源と、
を有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の大気圧プラズマ発生装置。
【請求項4】
前記主プラズマ化領域の前記軸方向の長さは、3cm以上2m以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか1項に記載の大気圧プラズマ発生装置。
【請求項5】
前記主プラズマ化領域の前記軸方向の断面形状は、前記軸方向及び前記第3の気体供給手段による気体の供給方向に垂直な一辺は、0.1mm以上1cm以下、前記軸方向及び前記第3の気体供給手段による気体の供給方向に平行な一辺は、5mm以上2cm以下の正方形又は長方形であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れか1項に記載の大気圧プラズマ発生装置。
【請求項6】
前記噴出口は、前記主プラズマ化領域の前記軸方向に沿って、複数配設されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか1項に記載の大気圧プラズマ発生装置。
【請求項7】
前記第3の気体供給手段は、前記主プラズマ化領域の前記軸方向に垂直に、前記主プラズマ領域に向かって開口し、前記軸方向に沿って、多数、配設された孔を有することを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の大気圧プラズマ発生装置。

【図1】
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【図2.A】
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【図2.B】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−218801(P2010−218801A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62632(P2009−62632)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成20年度、文部科学省、知的クラスター創成事業(第二期)「先進プラズマナノ基盤技術の開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(504139662)国立大学法人名古屋大学 (996)
【出願人】(304036008)NUエコ・エンジニアリング株式会社 (59)
【Fターム(参考)】