説明

天然ハチミツを含む組成物及びその調製方法

天然由来のセルラーゼの活性を阻害する、キレート剤の存在に起因する、不安定性の低下を示す、セルロース性ポリマー及び天然ハチミツを含む組成物を記載する。天然ハチミツをキレート剤と混合する工程と、所望によりその混合物を加熱する工程とを含む、天然ハチミツを処理して、セルラーゼ活性を阻害する方法を提供する。天然ハチミツと、キレート剤と、所望によりキャリアから成るフレーバ組成物を更に記載する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ハチミツ及びキレート剤を含むフレーバ組成物、並びに、前記フレーバ組成物及びセルロース性ポリマーを含む組成物に関する。本発明の組成物の調製方法もまた、提供される。
【背景技術】
【0002】
天然ハチミツは、フレーバ剤として有用かつ重要であり、いくつかの医療及び薬草効果を有する。天然ハチミツは、医薬製剤、並びに食品及び飲料組成物における使用が増加しつつある。天然ハチミツを含むとき、これらの組成物の安定性は、天然ハチミツ自体の構成成分の結果として影響を受ける場合がある。例えば、天然ハチミツは、グルコース単位間のα1−4結合を切断する酵素である、アミラーゼの存在に起因する、デンプン(アミロース及びアミロペクチン)分解効果を有することが示されている(ババカン,S(Babacan, S.)ら、(2002)ハチミツのアミラーゼ活性及び食品デンプンの分解(Honey Amylase Activity and Food Starch Degradation)67(5)、1625〜1630)。
【0003】
本発明者らは、セルロース性ポリマーを含む組成物中で天然ハチミツを使用するとき、デンプン系分子とは対照的に、セルロース性ポリマーの分解が観察される場合があることを見出している。アミラーゼはそれ程セルロース性ポリマーに影響を及ぼさないため、この分解は、天然ハチミツ中のアミラーゼ活性とは関係なかった。本発明者らは、セルロース性ポリマーの分解の原因として、天然ハチミツ中のセルラーゼ酵素の存在を同定している。セルラーゼが天然ハチミツ中に存在することは、これまで報告されていない。セルロースを分解できる化合物の混合物をセルラーゼと呼ぶことが一般的であるが、それは、本当に、β−1−4−グルカナーゼ及びβ−グルコシダーゼ(以下の概略を参照のこと)を含む、1種を超える酵素から構成されている。
【化1】

【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】(ババカン,S(Babacan, S.)ら、(2002)ハチミツのアミラーゼ活性及び食品デンプンの分解(Honey Amylase Activity and Food Starch Degradation)67(5)、1625〜1630)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セルロース性ポリマーと天然ハチミツとの併用は、一般に製剤の粘度低下として確認される、最終組成物の安定性の喪失をもたらした。したがって、セルロース性ポリマーと併用するとき、天然ハチミツがセルロース性ポリマーの分解及びそれに続く組成物の不安定性をもたらさないような、天然ハチミツを含む組成物及びフレーバ、並びにその調製方法に対する要求が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、
a)少なくとも1種のセルラーゼ酵素を含む天然ハチミツと、
b)キレート剤と、
から本質的に成る、ハチミツ組成物を提供する。
【0007】
更に、本発明は、
a)少なくとも1種のセルラーゼ酵素を含む天然ハチミツと、
b)キレート剤と、
c)セルロース性ポリマーと、
を含む組成物を提供する。
【0008】
更に、本発明は、キレート剤を、少なくとも1種のセルラーゼ酵素、及び所望によりキャリアを含む天然ハチミツと混合する工程を含む、天然ハチミツを含む組成物の製造方法を提供する。組成物及び調製方法は、安定性の向上した天然ハチミツを含む組成物を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】天然ハチミツを含む系におけるカルボキシメチルセルロースナトリウムの分解に付随する粘度の低下、及びキレート剤処理を用いるときの前記ポリマーの分解及び粘度低下の阻害。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本明細書で使用するとき、特に断らない限り、全ての百分率は重量パーセントである。全ての温度は、特に断らない限り、摂氏温度(℃)である。
【0011】
本発明は、少なくとも1種のセルラーゼ酵素と、キレート剤と、を含む天然ハチミツから本質的に成るハチミツ組成物を提供する。ハチミツ組成物は、天然ハチミツ及びキレート剤を、キャリアと組み合わせることにより、フレーバ組成物として配合してよい。更に、本発明は、キレート剤及びセルロース性ポリマーと組み合わせて、少なくとも1種のセルラーゼ酵素を含む天然ハチミツを含む組成物を提供する。
【0012】
天然ハチミツ
本明細書の組成物、フレーバ組成物、及び製造方法は、天然ハチミツの存在を必要とする。本明細書で使用するとき、用語「天然ハチミツ」は、植物の花蜜又は、ミツバチが集め、自身の特定の物質と組み合わせることにより変換し、沈着させ、脱水し、成熟及び熟成のためにハチの巣に貯蔵し、放置する、植物の生存部の分泌物から、ミツバチ(アピス・メリフェラ(Apis mellifera L.)又は他の昆虫により生産されるハチミツを含む。天然ハチミツは、少なくとも1種のセルラーゼ酵素を含まなくてはならない。
【0013】
天然ハチミツ及びキレート剤から本質的に成る本明細書のハチミツ組成物は、天然ハチミツを含む。セルロース性ポリマーと完成組成物を併用するとき、天然ハチミツは、好ましくは、組成物の約0.1重量%〜約25重量%の濃度で存在する。より好ましくは、組成物は、組成物の約0.1重量%〜約15重量%、更により好ましくは約0.1重量%〜約10重量%の天然ハチミツを含む。
【0014】
キレート剤
本発明のハチミツ組成物、ハチミツフレーバ組成物、及び組成物は、キレート剤を更に含む。理論に束縛されるものではないが、キレート剤は、天然ハチミツ中に存在するセルラーゼ酵素の四次構造内に保持されている金属補助因子をキレート化する作用を有すると考えられる。結果として、セルラーゼ酵素は、部分的に変性し、それによりその酵素活性は低下する。
【0015】
本明細書で使用するとき、用語「キレート剤」は、単一の金属イオンと配位結合を形成できる、2つ又はそれ以上の電子供与体原子を含む分子を意味する化合物及び物質である。用語「キレート剤」は、キレート剤に加えてその塩を含むと理解される。例えば、用語「キレート剤」は、クエン酸に加えてその塩形を含む。
【0016】
最も一般的であり、広く用いられているキレート剤は、酸素若しくは窒素供与体原子又はその両方を通して、金属原子に配位する。他のそれ程一般的ではないキレート剤は、−SH(チオール又はメルカプト)基の形の硫黄を通して配位する。最初の配位結合を形成した後、結合する次に続く各供与原子が金属原子を含む環を構成する。キレート剤は、それが金属原子に結合できる2個、3個、4個又はそれ以上の供与体原子を含むかどうかに応じて、二座、三座、四座等であってよい。カーク−オスマーの工業化学百科事典(Kirk-Othmer Encyclopedia of Chemical Technology)(第4版、2001年)を参照のこと。
【0017】
キレート剤は、食品中で金属イオンと錯化するのに容易に利用可能である限り、天然ハチミツに可溶性又は不溶性であってよい。種々の部類のキレート剤が、本発明での使用に好適である。これらの部類の非限定例としては、ポリホスフェート(例えば、トリポリリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸、酸性ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸四ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、メタリン酸ナトリウム);アミノカルボン酸(例えば、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、1,2−ビス(2−アミノ−フェノキシ)エタン−N,N,N’N’−四酢酸(EGTA)、エチレンビス(オキシエチレンニトリロ)四酢酸(BAPTA)、N−(ヒドロキシエチル)−エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、N−ジヒドロキシエチルグリシン(2−HxG)、エチレンビス(ヒドロキシフェニル−グリシン)(EHPG)、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、リジン);1,3−ジケトン(例えば、アセチルアセトン、トリフルオロアセチルアセトン、テノイルトリフルオロアセトン、アスコルビン酸);ヒドロキシカルボン酸(例えば、酒石酸、クエン酸、リンゴ酸、グルコン酸、フェルラ酸、乳酸、グルクロン酸);ポリアミン(例えば、ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン);アミノアルコール(例えば、トリエタノールアミン、N−ヒドロキシエチルエチレン−ジアミン、アミノエチルエタノールアミン(AEEA);フェノール(例えば、ジスルホピロカテコール、クロモトロプ酸);アミノフェノール(例えば、オキシンスルホン酸);シッフ塩基(例えば、ジサリチルアルデヒド1,2−プロピレンジイミン);テトラピロール(例えば、テトラフェニルポルフィン、フタロシアニン);ケイ酸塩(アルミニウムカルシウムケイ酸塩、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、カルシウムナトリウムアルミノケイ酸塩(水和物)、ケイ酸三カルシウム);硫黄化合物(例えば、カリウムエチルキサネート(potassium ethyl xanate)、ジエチルジチオカルバミド酸ナトリウム、ジエチルジチオリン酸、チオ尿素、硫酸マグネシウム);合成大環式化合物(例えば、ヘキサメチル−[14]−4,11−ジエンN,2.2.2−クリプテート);ポリマー(例えば、ポリエチレンイミン、ポリメタクリロイルアセトン、ポリ(p−ビニルベンジルイミノ二酢酸))、ホスホン酸及びビスホスホン酸(例えば、ニトリロトリメチレンホスホン酸、エチレンジアミンテトラ−(メチレンホスホン酸)、ヒドロキシエチリデン二ホスホン酸)が挙げられる。
【0018】
好ましい実施形態では、キレート剤は、ポリホスフェート、アミノカルボン酸、1,3−ジケトン、ヒドロキシカルボン酸、及びこれらの混合物を含む群から選択される。より好ましくは、キレート剤は、アミノカルボン酸、1,3−ジケトン、ヒドロキシカルボン酸、及びこれらの混合物を含む群から選択される。更により好ましくは、キレート剤は、EDTA、フィチン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、アジピン酸、コハク酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン又はこれらの混合物を含む群から選択される。更に好ましい実施形態では、キレート剤は、EDTA、フィチン酸、クエン酸、又はこれらの混合物であり、より好ましくはEDTA、フィチン酸、又はこれらの混合物である。
【0019】
ハチミツ組成物、ハチミツフレーバ組成物、及び組成物自体中に存在するキレート剤の量は、存在する天然ハチミツの量に依存し、更に、選択される具体的なキレート剤又はキレート剤類(すなわち、キレート化剤の混合物)に依存する。キレート剤は、一般に、天然ハチミツの約0.01重量%〜約5重量%、好ましくは天然ハチミツの約0.1重量%〜約3重量%の濃度で存在すべきである。キレート剤が、EDTA、フィチン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、アジピン酸、コハク酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、及びこれらの混合物を含む群から選択される場合、キレート剤は好ましくは天然ハチミツの約0.01重量%〜約5重量%存在する。好ましくは、キレート剤がEDTA、フィチン酸、又はこれらの混合物から選択されるとき、キレート剤は天然ハチミツの約0.01重量%〜約1重量%で存在する。
【0020】
セルロース性ポリマー
本発明の1つの実施形態による組成物は、セルロース性ポリマーを含む。セルロース性ポリマーは、一般に、本発明の組成物を増粘する又は構造化するために用いられる。本明細書で使用するとき、用語「セルロース性ポリマー」はセルロースモノマー主鎖を含むポリマーであり、セルロースモノマーは所望により化学的に修飾された官能基を含んでよい。化学修飾の好適な非限定的な例としては、ヒドロキシ官能基修飾が挙げられる。本明細書に用いるためのセルロース性ポリマーの非限定的な例としては、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース(icrocrystalline cellulose)、カルボキシメチルセルロースメチルヒドロキシエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びこれらの混合物、並びにこれらの一般に用いられる塩が挙げられる。好ましくは、セルロース性ポリマーは、カルボキシメチルセルロース及びその一般に用いられる塩を含む。
【0021】
本発明による組成物は、好ましくは、組成物の粘度を約0.05Pa.s(50cps)〜約5Pa.s(5000cps)、好ましくは約0.1Pa.s(100cps)〜約1Pa.s(1000cps)に維持するのに十分なセルロース性ポリマーを有する。本明細書で使用するとき、粘度は、10rpmで、コーン51及びサンプルを備えるブルックフィールズ(Brookfields)RVDV−II+を用いて、25℃にて測定する。
【0022】
本発明による組成物は、好ましくは、組成物の約0.1重量%〜約10重量%、より好ましくは約0.1重量%〜約5重量%のセルロース性ポリマーを含む。
【0023】
本発明の組成物は、セルロース性ポリマーもまた存在するという条件で、所望により、追加の増粘剤を更に含んでよいが。セルロース性ポリマーと併用して本明細書で使用するのに好適な増粘剤の好適な非限定的な例としては、天然ポリマー、ポリマー性セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン(PVP)、デキストランポリマー、ポリオックス(Polyox)−600を含むポリエチレンオキシドポリマー、熱可逆性ポリマー、イオン応答性ポリマー、ポリメチルビニルエーテル及び無水マレイン酸のコポリマー、及びこれらの混合物が挙げられる。ポリマーセルロース誘導体及び熱可逆性ポリマーが好ましい。
【0024】
本明細書で粘度上昇ポリマー(viscosity building polymer)として使用するのに好適な天然ポリマーの具体的な非限定的な例としては、イクロックガム(icroc gum)、トラガカントゴム、寒天ポリマー、キサンタンガム、アルギン酸及びアルギン酸ナトリウムのコポリマー、キトサンポリマー、ペクチン、カラギーナン、プルラン(pollulan)ポリマー、加工デンプン、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0025】
本明細書で粘度上昇ポリマーとして使用するのに好適なイオン応答性ポリマーの具体的な非限定的な例としては、ゲルライト(gelrite)、ジェランガム、ケルコゲルF(Kelcogel F)及びこれらの混合物が挙げられる。
【0026】
本明細書で粘度上昇ポリマーとして使用するのに好適なポリメチルビニルエーテル及び無水マレイン酸のコポリマー具体的な非限定的な例としては、ガントレS(Gantrez S)及びガントレMS(Gantrez MS)型コポリマーを含む商品名ガントレで販売されているコポリマーのようなものが挙げられる。
【0027】
本明細書で使用するのに好適な既知の粘度上昇ポリマーは、カルボキシポリメチレン、カルボキシビニルポリマー、ペンタエリスリトールのアリルエーテルで架橋されたアクリル酸のホモポリマー、スクロースのアリルエーテルで架橋されたアクリル酸のホモポリマー、ジビニルグリコールで架橋されたアクリル酸のホモポリマー及びこれらの混合物から成る群から選択される。
【0028】
キャリア
本発明のハチミツフレーバ組成物は、ハチミツ組成物及びキャリアを含む。キャリアは、フレーバ成分用のキャリアとして用いるのに好適な、当業者に既知である、任意の不活性賦形剤であってよい。このようなキャリアは、人間が摂取するのに好適であり、典型的には、フレーバ成分、この場合天然ハチミツ、がキャリアに可溶性又は混和性であるように選択される。あるいは、キャリアは、天然ハチミツがキャリア内で乳化されるように選択してよい。本発明のハチミツフレーバ組成物で用いるのに好適なキャリアの非限定的な例としては、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノール、水又はこれらの混合物が挙げられるが、これらに限定されない。好ましくは、キャリアは、ハチミツフレーバ組成物の約30重量%〜約95重量%で含まれる。
【0029】
組成物の形態
本発明は、天然ハチミツ、キレート剤及びセルロース性ポリマーを含む組成物を提供する。この実施形態による組成物は、薬剤、食品、飲料又は前述のカテゴリーのうち1つで用いるための既製の成分プレミックスの形態であってよい。好ましくは、組成物は薬剤の形態であってよい。薬剤は、シロップ剤、単位容量液体入りカプセル、中央充填(centre-filled)のどあめ等として処方してよく、好ましくはシロップ剤である。
【0030】
組成物が薬剤である場合、組成物は好ましくは薬剤活性物質を含む。薬剤活性物質は、個々の活性成分として、又は活性成分の組み合わせとして、組成物中に含むことができる。薬剤活性物質は、好ましくは、風邪及びインフルエンザ様症状の治療で特に有効である。薬剤活性物質は、本発明の医薬組成物中に、組成物の約0.01〜約60重量%、好ましくは約0.1重量%〜約20重量%、更により好ましくは約0.1重量%〜約10重量%の濃度で含まれる。
【0031】
本明細書で用いるのに好適な活性成分の非限定的な例としては、鎮咳剤、抗ヒスタミン剤、非鎮静性抗ヒスタミン剤、鬱血除去剤、去痰剤、粘液溶解剤、鎮痛剤、解熱剤、抗炎症剤、局部麻酔剤として薬理学的に分類される活性成分、及びこれらの混合物が挙げられる。これらの活性成分は、J.G.ハードマン(Hardman)、治療学の薬理学的基礎(The Pharmacologic Basis of Therapeutics)、第9版、マグローヒル(McGraw-Hill)、ニューヨーク、1995年に、より完全に記載されている。好ましくは、薬剤活性物質は、鎮咳剤、鬱血除去剤、抗ヒスタミン剤、去痰剤、粘液溶解剤又はこれらの混合物を含む群から選択される。より好ましくは、薬剤活性物質は、鎮咳剤、去痰剤、粘液溶解剤、鬱血除去剤又はこれらの混合物を含む群から選択される。
【0032】
本明細書で用いるのに好適な鎮咳剤の具体的な非限定的な例としては、咳の発作のような感冒の症状の治療に特に有効である、鎮咳剤化合物が挙げられる。好適な具体的な鎮咳剤としては、コデイン、デキストロメトルファン、デキストロルファン、ヒドロコドン、ノスカピン、オキシコドン、ペントキシベリン、及びこれらの混合物が挙げられる。デキストロメトルファンが好ましい鎮咳剤である。本明細書で使用するとき、「デキストロメトルファン」は、ラセメトルファン、(+−)−3−メトキシ−17−メチルモルフィナン、dl−シス−1,3,4,9,10,10a−ヘキサヒドロ−6−メトキシ−11−メチル−2H−10,4a−イミノエタノフェンフェナントレン及び、臭化水素酸デキストロメトルファンを含むこれらの薬剤的塩を意味する。デキストロメトルファン及びその薬剤として許容される塩は、米国特許第5,196,436号に、より完全に記載されている。本明細書で用いるのに好適な抗ヒスタミン剤の具体的な非限定的な例としては、アクリバスチン、アザタジン、ブロムフェニラミン、マレイン酸ブロムフェニラミン、クロルフェニラミン、マレイン酸クロルフェニラミン、クレマスチン、シプロヘプタジン、マレイン酸d−ブロムフェニラミン、ジメンヒドリナート、ジフェンヒドラミン、塩化ジフェンヒドラミン、ヒドロキシジン、メクリジン、フェニナミン(pheninamine)、フェニルトロキサミン、プロメタジン、ピリラミン、マレイン酸ピリラミン、トリペレナミン、トリプロリジン、ドキシルアミン、コハク酸ドキシルアミン、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0033】
本明細書で用いるのに好適な非鎮静性抗ヒスタミン剤の具体的な非限定的な例としては、アステミゾール、セチリジン、エバスチン、フェキソフェナジン、ロラチジン、テルフェナジン、及びこれらの混合物が挙げられる。本明細書で用いるのに好適な鬱血除去剤の具体的な非限定的な例としては、フェニルプロパノールアミン、偽エフェドリン、塩酸偽エフェドリン、偽エフェドリンサルフェート、エフェドリン、フェニレフリン、塩化フェニレフリン、及びこれらの混合物が挙げられ、本明細書で用いるのに好適な去痰剤の具体的な非限定的な例としては、塩化アンモニウム、グアイフェネシン(guafenesin)、トコン流エキス剤、ヨウ化カリウム、及びこれらの混合物が挙げられ、本明細書で用いるのに好適な粘液溶解剤の具体的な非限定的な例としては、アセチルシステイン、アンブロキソール、ブロムヘキシン、及びこれらの混合物が挙げられる。本明細書で用いるのに好適な鎮痛剤、解熱剤及び抗炎症剤の具体的な非限定的な例としては、アセトアミノフェン、アスピリン、サリチル酸ナトリウム、サリチルアミド、ジクロフェナク、ジフルニサル、エトドラク、フェノプロフェン、フルルビプロフェン、イブプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラク、ナブメトン、ナプロキセン、ピロキシカム、カフェイン、ケトロラク、インドメタシン、メクロフェナム酸、バルデコキシブ、セレコキシブ及びロフェコキシブのようなCOX−2阻害物質、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0034】
任意成分
水を本発明の組成物で用いてよい。本発明では、水の最高濃度は、組成物の約10重量%、好ましくは約1重量%〜約10重量%、より好ましくは約5重量%〜約10重量%、更により好ましくは約5重量%〜約8重量%である。
【0035】
本発明の組成物及びハチミツフレーバ組成物は、緩衝剤又は緩衝剤の混合物を更に含んでよい。本明細書で用いるのに好適な緩衝剤の非限定的な例としては、トリエタノールアミンを含むpKaが8〜11である塩基性緩衝剤、トロメタミン、グリシン、グリシルグリシン、グルタミン又は他のアミノ酸のアルカリ塩を含むアミノ酸の塩、ホスフェート、カーボネート又はこれらの混合物のアルカリ塩が挙げられる。緩衝剤は、8〜10のpH範囲内で組成物を唾液で希釈したとき、pH変化に対する組成物の耐性を提供する。
【0036】
甘味剤を所望により本発明の組成物及びハチミツフレーバ組成物に添加してよい。本明細書で用いるのに好適なフレーバとしては、アスパルテーム、サッカリン及びその塩、スクラロース(Sucralose)(商標)(ニューブランズウィック(New Brunswick)のニュージャージー州マクニール・スペシャルティ・プロダクツ(McNeil Specialty Products Co.)により販売されている);プロスイート(Prosweet)(商標)(ニューヨーク州ニューヨーク(New York)のバージニア・デア・エクストラクト(Virginia Dare Extract Co.)により販売されている);マグナスイート(Magnasweet)(商標)(MAFCOワールドワイド(MAFCO Worldwide Corp.)のカンゾウ部門(カムデン(Camden)、ニュージャージー州)により販売されている);グリチルリチン酸アンモニウム及びその塩、タリン(Talin)GA90のようなタリン(商標)(タウマチン)及びその希釈した製品(英国バーケンヘッド(Birkenhead)のタリン・フード・カンパニー(Talin Food Company)により販売されている);及びアセスルファムK、又はこれらの混合物が挙げられる。
【0037】
本発明の組成物及びハチミツフレーバ組成物で用いてよい他の着香剤としては、アニス、ペパーミント油、クローブ油、ユーカリ、レモン、ライム、ハチミツレモン、レッドフルーツ、ミント、グレープフルーツ、オレンジ、チェリーコーラ又はこれらの混合物が挙げられる。
【0038】
本発明の組成物及びハチミツフレーバ組成物は、感覚剤(sensory agent)を更に含んでよい。本明細書で用いるのに好適な感覚剤の具体的な非限定的な例は、冷却剤、唾液分泌剤、加温剤、又はこれらの混合物から成る群から選択される感覚剤である。存在するとき、これらの剤は、好ましくは、組成物の約0.001重量%〜約10重量%、好ましくは約0.1重量%〜約1重量%の濃度で組成物中に存在する。
【0039】
好適な冷却剤の非限定的な例としては、カルボキサミド、メントール、チモール、カンファー、フェノール、ユーカリ油、ベンジルアルコール、サリチルアルコール、エタノール、クローブ蕾油、及びヘキシルレゾルシノール、ケタール、ジオール並びにこれらの混合物が挙げられる。好ましい加温剤としては、チモール、カンファー、トウガラシ、フェノール、ベンジルアルコール、サリチルアルコール、エタノール、クローブ蕾油、及びヘキシルレゾルシノール、ベンジルニコチネートのようなニコチネートエステル、ケタール、ジオール、トウガラシ及びこれらの混合物が挙げられる。
【0040】
好ましい冷却剤としては、米国特許第4,136,163号(1979年1月23日発行、ワトソン(Watson)ら)により教示されている、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミド(スターリング・オーガニクス(Sterling Organics)により供給されているWS−3)のようなパラメンタンカルボキシアミド剤が挙げられる。好ましい冷却剤は、N−エチル−p−メンタン−3−カルボキサミドのようなパラメンタンカルボキシアミド剤である。別の好ましいパラメンタンカルボキシアミド剤は、「WS−23」として既知であるN,2,3−トリメチル−2−イソプロピルブタナミド、又はWS−3及びWS−23の混合物である。
【0041】
追加の好ましい冷却剤は、メントール、日本、東京の高砂香料(Takasago Perfumery Co.)により供給されているTK−10として既知である、3−1−メントキシプロパン−1,2−ジオール、ハーマン・アンド・ライマー(Haarmann and Reimer)により製造されているMGAとして既知であるメントングリセロールアセタール、ハーマン・アンド・ライマーにより製造されているフレスコラット(Frescolat)(登録商標)として既知であるメンチルラクテート、又はこれらの混合物から成る群から選択される。
【0042】
製造方法
本発明は、キレート剤を天然ハチミツ及び所望によりキャリアと混合する工程を含む、天然ハチミツを含む組成物を製造する方法を更に提供する。キレート剤は、希釈せずに天然ハチミツに添加し、混合してもよく、又は水若しくは類似の希釈剤の溶液として添加してもよい。天然ハチミツ及びキレート剤は、当業者に既知である混合技術を用いて一緒に混合され、混合技術の非限定的な例としては、攪拌、押出成形機による混合、振盪等が挙げられる。混合工程は、天然ハチミツ中に存在するセルラーゼを有効に阻害するように、天然ハチミツ中にキレート剤が適切に分布するのに十分でなくてはならない。
【0043】
本発明の方法は、好ましくは、キレート剤を天然ハチミツと混合する前又は後のいずれか、好ましくはキレート剤を天然ハチミツと混合した後に、天然ハチミツを加熱する追加工程を含んでよい。加熱工程は、一般に、天然ハチミツ、又は天然ハチミツとキレート剤との混合物を、約90℃〜約140℃、好ましくは約100℃〜約120℃の温度に加熱する工程を含む。加熱工程は、好ましくは、約1分〜約60分、好ましくは約1分〜約30分、より好ましくは約1分〜約10分の持続時間を有する。理論に束縛されるものではないが、加熱工程は、天然ハチミツ中に存在するセルラーゼ酵素を変性させ、それによりセルラーゼ酵素を不活性化すると考えられる。セルラーゼ酵素は、しかしながら、かなり頑強であり、明らかに中心金属補助因子の存在に起因して、高温への曝露後でさえ長期間再生することができる。キレート剤の存在下で加熱処理することにより、又はその後のキレート剤の添加と加熱処理を組み合わせることにより、中心金属補助因子が露出し、キレート剤によってより容易にキレート化される。金属補助因子の除去は、セルラーゼ酵素の再折りたたみを阻害し、結果として天然ハチミツ中のセルラーゼ酵素をより有効にかつ永続的に阻害する。
【0044】
加熱工程は、当業者に既知の方法及び設備を用いて行ってよく、その非限定的な例としては、高圧蒸気滅菌、加圧加熱容器、混合機能を有する加熱容器が挙げられる。好ましくは、加熱工程は、攪拌機能を有するオートクレーブ内で、又は他の好適なジャケット付加圧混合容器内で行われる。
【実施例】
【0045】
【表1−1】

【表1−2】

【0046】
本明細書に開示される寸法及び値は、列挙された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。それよりむしろ、特に規定がない限り、こうした各寸法は、列挙された値とその値周辺の機能的に同等の範囲との両方を意味することを意図されている。例えば、「40mm」として開示された寸法は、「約40mm」を意味すると意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.少なくとも1種のセルラーゼ酵素を含む天然ハチミツと、
b.キレート剤と、
から本質的に成る、ハチミツ組成物。
【請求項2】
前記組成物が、前記天然ハチミツの、0.01重量%〜5重量%、好ましくは0.1重量%〜3重量%、より好ましくは0.1〜1重量%のキレート剤を含む、請求項1に記載のハチミツ組成物。
【請求項3】
前記キレート剤が、ポリホスフェート、アミノカルボン酸、1,3−ジケトン、ヒドロキシカルボン酸、ポリアミン、フェノール、シッフ塩基、シリケート、イオウ化合物、合成大環状化合物、ポリマー、ホスホン酸及びビスホスホン酸、並びにこれらの混合物、好ましくはポリホスフェート、アミノカルボン酸、1,3−ジケトン、ヒドロキシカルボン酸、及びこれらの混合物、より好ましくはEDTA、クエン酸、リンゴ酸、フィチン酸、酒石酸、乳酸、アジピン酸、コハク酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、及びこれらの混合物、更により好ましくは更にEDTA、フィチン酸、及びこれらの混合物を含む群から選択される、請求項1又は2に記載のハチミツ組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のハチミツ組成物及びキャリアを含む、ハチミツフレーバ組成物。
【請求項5】
前記組成物が、5%〜70%の天然ハチミツを含む、請求項4に記載のハチミツフレーバ組成物。
【請求項6】
前記キャリアが、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、エタノール、水、及びこれらの混合物を含む群から選択される、請求項4又は5に記載のハチミツフレーバ組成物。
【請求項7】
a.少なくとも1種のセルラーゼ酵素を含む天然ハチミツと、
b.キレート剤と、
c.セルロース性ポリマーと、
を含む組成物。
【請求項8】
前記組成物が、前記組成物の0.1重量%〜25重量%、好ましくは0.1重量%〜15重量%、より好ましくは0.1重量%〜10重量%の天然ハチミツを含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記キレート剤が、ポリホスフェート、アミノカルボン酸、1,3−ジケトン、ヒドロキシカルボン酸、ポリアミン、フェノール、シッフ塩基、シリケート、イオウ化合物、合成大環状化合物、ポリマー、ホスホン酸及びビスホスホン酸、並びにこれらの混合物、好ましくはポリホスフェート、アミノカルボン酸、1,3−ジケトン、ヒドロキシカルボン酸、及びこれらの混合物、より好ましくはEDTA、フィチン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、アジピン酸、コハク酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、及びこれらの混合物、更により好ましくは更にEDTA、フィチン酸、及びこれらの混合物を含む群から選択される、請求項7又は8に記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物が、前記天然ハチミツの、0.01重量%〜5重量%、好ましくは0.1重量%〜3重量%、より好ましくは0.01〜1重量%のキレート剤を含む、請求項7〜9のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項11】
前記組成物が、前記組成物の、0.1重量%〜10重量%、好ましくは0.1重量%〜5重量%のセルロース性ポリマーを含む、請求項7〜10のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項12】
前記セルロース性ポリマーが、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、メチルセルロース、微晶質セルロース、カルボキシメチルセルロース及びその一般に用いられる塩、エチルヒドロキシエチルセルロース、酢酸フタル酸セルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、これらの塩、並びにこれらの混合物、好ましくはカルボキシメチルセルロース及びその塩を含む、請求項7〜11のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項13】
少なくとも1種のセルラーゼ酵素を含む天然ハチミツを含む組成物の製造方法であって、キレート剤を天然ハチミツ及び所望によりキャリアと混合する工程を含む方法。
【請求項14】
前記天然ハチミツ、又は天然ハチミツ及びキレート剤の混合物を、50℃〜140℃、好ましくは90℃〜130℃の温度に加熱する工程を更に含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記加熱工程を、前記キレート剤を前記天然ハチミツと混合した後に行う、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記加熱工程が、1〜60分、好ましくは1〜30分の持続時間を有する、請求項14又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記加熱工程が、オートクレーブ内、又は混合機能を有する好適なジャケット付加圧混合容器内で行われる、請求項14〜16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
前記キレート剤が、ポリホスフェート、アミノカルボン酸、1,3−ジケトン、ヒドロキシカルボン酸、ポリアミン、フェノール、シッフ塩基、シリケート、イオウ化合物、合成大環状化合物、ポリマー、ホスホン酸及びビスホスホン酸、並びにこれらの混合物、好ましくはポリホスフェート、アミノカルボン酸、1,3−ジケトン、ヒドロキシカルボン酸、及びこれらの混合物、より好ましくはEDTA、フィチン酸、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、乳酸、アジピン酸、コハク酸、アスパラギン酸、グルタミン酸、リジン、及びこれらの混合物、更により好ましくは更にEDTA、フィチン酸、及びこれらの混合物を含む、請求項13〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記天然ハチミツの、0.01重量%〜5重量%、好ましくは0.1重量%〜3重量%、より好ましくは0.1〜1重量%のキレート剤が、前記天然ハチミツと混合される、請求項13〜18のいずれか一項に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2010−529105(P2010−529105A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−510945(P2010−510945)
【出願日】平成20年6月6日(2008.6.6)
【国際出願番号】PCT/IB2008/052238
【国際公開番号】WO2008/149318
【国際公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】