説明

太陽電池用インターコネクタ材及びその製造方法、並びに、太陽電池用インターコネクタ

【課題】半田接合時に生じる熱応力を均一に吸収し、セルの反りの発生を防止することが可能な太陽電池用インターコネクタ材及び太陽電池用インターコネクタ材の製造方法、並びに、この太陽電池用インターコネクタ材によって構成された太陽電池用インターコネクタを提供する。
【解決手段】太陽電池モジュール30においてセル31間同士を接続する太陽電池用インターコネクタ32として使用される太陽電池用インターコネクタ材であって、質量百万分率で、Zr及びMgのうち少なくとも1種を3〜20ppm、Oを5ppm以下、を含み、残部がCu及び不可避不純物からなり、平均結晶粒径が300μm以上とされていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のセルからなる太陽電池モジュールにおいて、セル間を接続する太陽電池用インターコネクタに適した太陽電池用インターコネクタ材及びその製造方法、並びに、この太陽電池用インターコネクタ材からなる太陽電池用インターコネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、環境負荷の少ない発電方式として太陽電池モジュールを利用したものが注目され、様々な分野で広く使用されている。太陽電池モジュールは、例えば特許文献1に記載されているように、pn接合されたシリコン等の半導体の板材からなるセルを複数備え、これらのセルが太陽電池用インターコネクタおよびバスバーによって電気的に接続された構成とされている。
【0003】
ここで、セル間を電気的に接続するインターコネクタとしては、例えば特許文献2に示すように、無酸素銅やタフピッチ銅からなる銅平角線に半田メッキ層が形成されたものが広く使用されており、この半田メッキ層を介してセルに接続されている。また、非特許文献1に示すように、インターコネクタとして6N(純度99.9999%)の高純度銅からなるものが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−166915号公報
【特許文献2】特開平11−21660号公報
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】遠藤裕寿、外5名、“太陽電池用軟質型はんだめっき平角線の開発”、日立電線 No.26(2007−1)、P.15−P.18
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、太陽電池用インターコネクタとセルとの半田付け工程においては、太陽電池用インターコネクタとセルは、半田の液相線温度以上にまで昇温された後、常温にまで冷却される。ここで、シリコン等で構成されたセルの熱膨張係数と銅平角線である太陽電池用インターコネクタの熱膨張係数が異なるため、昇温された際に太陽電池用インターコネクタが延びた状態でセルと接合され、冷却時に太陽電池用インターコネクタが収縮することにより、セルに反りが発生するという問題があった。セルに反りが発生した場合、太陽電池モジュールを構成することができなくなったり、枠体への取付ができなくなるといった不都合が生じることになる。また、この反りによってセルが破損してしまうおそれもある。
【0007】
ここで、非特許文献1においては、6N(純度99.9999%)の高純度銅からなる太陽電池用インターコネクタが提案されており、6Nの高純度銅の結晶粒径を粗大化させて軟質化させることにより、半田接合時の反りの低減を図っている。
しかしながら、最近では、太陽電池モジュールを低コストで生産するために、セルの薄型化が進んでおり、半田付け工程において発生する熱応力を従来よりも精度良く制御する必要がある。ここで、6Nの高純度銅は、精錬処理工程が必要となり、生産コストが高くなってしまう。また、通常の無酸素銅の場合には、結晶粒の粗大化にばらつきが生じてしまい、半田接合時の熱応力を均一に吸収することができない。
【0008】
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、半田接合時に生じる熱応力を均一に吸収し、セルの反りの発生を防止することが可能な太陽電池用インターコネクタ材及び太陽電池用インターコネクタ材の製造方法、並びに、この太陽電池用インターコネクタ材によって構成された太陽電池用インターコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の課題を解決するために、本発明に係る太陽電池用インターコネクタ材は、太陽電池モジュールにおいてセル間同士を接続する太陽電池用インターコネクタとして使用される太陽電池用インターコネクタ材であって、質量百万分率で、Zr及びMgのうち少なくとも1種を3〜20ppm、Oを5ppm以下、を含み、残部がCu及び不可避不純物からなり、平均結晶粒径が300μm以上とされていることを特徴としている。
【0010】
また、本発明に係る太陽電池用インターコネクタは、太陽電池モジュールにおいてセル間同士を接続する太陽電池用インターコネクタであって、前述の太陽電池用インターコネクタ材からなり、断面が矩形状をなす平角線とされ、該平角線の延在方向に延びる主面の少なくとも一面に、鉛フリー半田メッキ層が形成されていることを特徴としている。
【0011】
この構成の太陽電池用インターコネクタ材および太陽電池用インターコネクタによれば、質量百万分率で、Zr及びMgのうち少なくとも1種を3〜20ppm、Oを5ppm以下、を含み、残部がCu及び不可避不純物からなる銅材料で構成されているので、Zr及びMgが、不可避不純物のひとつとして銅中に存在して結晶粒の粗大を阻害する元素であるS(硫黄)を固着することにより、結晶粒径の粗大化を図ることが可能となる。このように結晶粒径を粗大化させることで太陽電池用インターコネクタの変形抵抗が小さくなり、半田接合時におけるセルの反りの発生を抑制することができる。また、Zr及びMgによって結晶粒径のばらつきを抑えることが可能となり、半田接合時の熱応力を均一に吸収することができる。
【0012】
また、Zr及びMgが3ppm未満では、前述の効果を得ることができず、20ppmを超えると太陽電池用インターコネクタの導電率が低下するため、Zr及びMgの含有量を3〜20ppmとした。より望ましくは、Zr及びMgの含有量は10〜15ppmが良い。
また、O(酸素)が5ppm以下とされているので、易酸化元素であるZr及びMgの酸化によるロスを防止することができる。また、一般的な無酸素銅にZr及びMgを添加することによって、低コストで本発明の太陽電池用インターコネクタ材を生産することができる。
【0013】
本発明に係る太陽電池用インターコネクタ材の製造方法は、太陽電池モジュールにおいてセル間同士を接続する太陽電池用インターコネクタに用いられる太陽電池用インターコネクタ材の製造方法であって、銅原料を溶解して銅溶湯を得る溶解工程と、前記銅溶湯の酸素含有量を5ppm以下とする脱酸工程と、脱酸処理された前記銅溶湯にZr及びMgのうち少なくとも1種を添加して、Zr及びMgのうち少なくとも1種の含有量を質量百万分率で3〜20ppmとするZr及びMg添加工程と、Zr及びMgのうち少なくとも1種が添加された前記銅溶湯から鋳塊を得る鋳造工程と、前記鋳塊を加工して銅線を得る加工工程と、前記銅線に対して700〜800℃×1〜10minの熱処理を行い、平均結晶粒径を300μm以上とする熱処理工程と、を備えていることを特徴としている。
【0014】
この構成の太陽電池用インターコネクタ材の製造方法によれば、溶解工程で得られた銅溶湯の酸素含有量を5ppm以下とする脱酸工程の後に、Zr及びMgの少なくとも1種を添加するZr及びMg添加工程を有しているので、易酸化元素であるZr及びMgを歩留まり良く添加することができ、Zr及びMgの含有量を質量百万分率で3〜20ppmに精度良く調整することができる。また、700〜800℃×1〜10minの熱処理を行う熱処理工程を備えているので、この熱処理工程においてS等に阻害されることなく結晶粒径を十分に粗大化させることができる。
【0015】
ここで、前記鋳造工程を、鋳塊を連続的に製出する連続鋳造工程とし、前記加工工程を、前記鋳塊を連続的に圧延する連続圧延工程とすることが好ましい。
この場合、鋳塊を連続的に製出し、この鋳塊を連続的に圧延することで、荒引銅線を製出することが可能となり、太陽電池用インターコネクタを低コストで製造することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、半田接合時に生じる熱応力を均一に吸収し、セルの反りの発生を防止することが可能な太陽電池用インターコネクタ材及び太陽電池用インターコネクタ材の製造方法、並びに、この太陽電池用インターコネクタ材によって構成された太陽電池用インターコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態である太陽電池用インターコネクタを備えた太陽電池モジュールの説明図である。
【図2】図1におけるX−X断面図である。
【図3】図1の太陽電池モジュールに備えられた太陽電池セルの説明図である。
【図4】図3におけるY−Y断面図である。
【図5】荒引銅線の製造装置を概略的に示した模式図である。
【図6】本実施形態である太陽電池用インターコネクタ材の製造方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の実施形態に係る太陽電池用インターコネクタについて添付した図面を参照して説明する。
図1、図2に、本実施形態である太陽電池用インターコネクタ32を用いた太陽電池モジュール30を示す。図3、図4に、太陽電池モジュール30を構成する太陽電池セル31を示す。
図1、図2に示す太陽電池モジュール30は、複数の太陽電池セル31と、これらの太陽電池セル31を電気的に直列に接続する太陽電池用インターコネクタ32と、太陽電池用インターコネクタ32が接続されるバスバー35、36と、を備えている。
【0019】
太陽電池セル31は、例えばpn接合されたシリコンからなり、図3及び図4に示すように、概略正方形平板状をなし、本実施形態では、一辺が130mm、厚さが0.18mmのものを使用した。
【0020】
この太陽電池セル31の表面に、本実施形態である太陽電池用インターコネクタ32が配設されている。
太陽電池用インターコネクタ32は、断面が矩形状をなす銅平角線であって、本実施形態では、幅Wが2mm、厚さtが0.2mmとされている。この太陽電池用インターコネクタ32においては、、図4に示すように、銅平角線の延在方向に延びる2つの主面の少なくとも一面に、鉛フリー半田メッキ層33が形成されており、この鉛フリー半田メッキ層33を介して太陽電池セル31に接合されている。
そして、この太陽電池用インターコネクタ32は、質量百万分率で、Zr及びMgのうち少なくとも1種を3〜20ppm、O;5ppm以下を含み、残部がCu及び不可避不純物からなる太陽電池用インターコネクタ材で構成されている。
【0021】
図1及び図2に示すように、太陽電池用インターコネクタ32は、太陽電池セル31の表面及び裏面に接合され、隣接する太陽電池セル31同士を電気的に接続している。そして、太陽電池用インターコネクタ32が正極のバスバー35及び負極のバスバー36にそれぞれ接続されるように構成されており、これら太陽電池用インターコネクタ32およびバスバー35、36によって太陽電池モジュール30に備えられたすべての太陽電池セル31が直列に接続されることになる。
【0022】
次に、本実施形態である太陽電池用インターコネクタ材の原料となる荒引銅線23の製造装置について図4を参照して説明する。
この荒引銅線23の製造装置1は、溶解炉Aと、保持炉Bと、鋳造樋Cと、ベルト・ホイール式連続鋳造機Dと、連続圧延装置Eと、コイラーFとを有している。
【0023】
溶解炉Aとして、本実施形態では、円筒形の炉本体を有するシャフト炉を用いている。炉本体の下部には円周方向に複数のバーナ(図示略)が上下方向に多段状に配備されている。そして、炉本体の上部から原料である電気銅が装入され、前記バーナの燃焼によって溶解され、銅溶湯が連続的につくられる。
【0024】
保持炉Bは、溶解炉Aでつくられた銅溶湯を、所定の温度で保持したままで一旦貯留し、一定量の銅溶湯を鋳造樋Cに送るためのものである。
【0025】
鋳造樋Cは、保持炉Bから送られた銅溶湯を、ベルト・ホイール式連続鋳造機Dの上方に配置されたタンディシュ11まで移送するものである。この鋳造樋Cは、例えばAr 等の不活性ガス又は還元性ガスでシールされている。なお、この鋳造樋Cには、不活性ガスによって銅溶湯を攪拌する攪拌手段(図示なし)が設けられている。
【0026】
タンディシュ11の銅溶湯の流れ方向終端側には、注湯ノズル12が配置されており、この注湯ノズル12を介してタンディシュ11内の銅溶湯がベルト・ホイール式連続鋳造機Dへと供給される。
ベルト・ホイール式連続鋳造機Dは、外周面に溝が形成された鋳造輪13と、この鋳造輪13の外周面の一部に接触するように周回移動される無端ベルト14とを有しており、前記溝と無端ベルト14との間に形成された空間に、注湯ノズル12を介して供給された銅溶湯を注入して冷却し、棒状鋳塊21を連続的に鋳造するものである。
【0027】
そして、このベルト・ホイール式連続鋳造機Dは、連続圧延装置Eに連結されている。この連続圧延装置Eは、ベルト・ホイール式連続鋳造機Dから製出された棒状鋳塊21を連続的に圧延して、所定の外径の荒引銅線23を製出するものである。連続圧延装置Eから製出された荒引銅線23は、洗浄冷却装置15および探傷器16を介してコイラーに巻き取られる。
【0028】
洗浄冷却装置15は、連続圧延装置Eから製出された荒引銅線23をアルコール等の洗浄剤で表面を洗浄するとともに冷却するものである。
また、探傷器16は、洗浄冷却装置15から送られた荒引銅線23の傷を探知するものである。
【0029】
このような構成とされた荒引銅線23の製造装置を用いた本実施形態である太陽電池用インターコネクタ材の製造方法について、図4及び図5を参照して説明する。
まず、溶解炉Aに、4N(純度99.99%)の電気銅を投入して溶解し、銅溶湯を得る(溶解工程S1)。この溶解工程S1では、シャフト炉の複数のバーナの空燃比を調整して溶解炉Aの内部を還元雰囲気とすることにより、銅溶湯の酸素含有量を20ppm以下とする。
【0030】
溶解炉Aによって得られた銅溶湯は、保持炉B及び鋳造樋Cを介してタンディシュまで移送される。
ここで、不活性ガス又は還元性ガスでシールされた鋳造樋Cを通過する銅溶湯は、前述の攪拌手段によって攪拌されることによって、銅溶湯と不活性ガス又は還元性ガスとの反応が促進され、酸素含有量は5ppm以下にまで低下することになる(脱酸工程S2)。
【0031】
このようにして酸素含有量が5ppm以下に低減された銅溶湯にZr及びMgのうち少なくとも1種が連続的に添加され、Zr及びMgの含有量が3−20ppmに調整される(Zr及びMg添加工程S3)。なお、Zr及びMgの含有量は10−15ppmに調整することが好ましい。
【0032】
このように成分調整された銅溶湯は、ベルト・ホイール式連続鋳造機Dに注湯ノズル12を介して供給され、棒状鋳塊21が連続的に製出される(鋳造工程S4)。ここで、鋳造工程S4では、鋳造輪13に形成された前記溝と無端ベルト14との間に形成された空間が台形状をなしていることから、断面略台形状をなす棒状鋳塊21が製出されることになる。
【0033】
この棒状鋳塊21は、連続圧延装置Eに供給されてロール圧延加工が施され、所定の外径(本実施形態では直径8mm)の荒引銅線23が製出される(加工工程S5)。この荒引銅線23が洗浄冷却装置15によって洗浄・冷却され、探傷器16によって外傷の有無が検査される。
【0034】
このようにして得られた直径8mmの荒引銅線23に対して伸線加工を行い、直径1mmの銅線を製出する。その後、圧延機によって厚さ200μm、幅2mmの平角状に成形し、700〜800℃×1〜10minの熱処理を行い、太陽電池用インターコネクタ材を得る(熱処理工程S6)。この熱処理工程S6により、太陽電池用インターコネクタ材の平均結晶粒径が300μm以上となる。
【0035】
この太陽電池用インターコネクタ材を、SnAgCuメッキ浴に連続的に浸漬させながらメッキ層を形成する。太陽電池用インターコネクタ材の表面に鉛フリー半田メッキ層33が形成され、本実施形態である太陽電池用インターコネクタ32が製造される。なお、本実施形態では、鉛フリー半田メッキ層33の組成は、Sn−3.0質量%Ag−0.5質量%Cuとされている。
【0036】
このような構成とされた太陽電池用インターコネクタ32を備えた太陽電池モジュール30は、屋外に配置されて使用され、太陽光等が太陽電池セル31に照射され、発電された電気が太陽電池用インターコネクタ32及びバスバー35、36によって集められる。
【0037】
本実施形態である太陽電池用インターコネクタ32によれば、質量百万分率で、Zr及びMgのうち少なくとも1種を3〜20ppm、O;5ppm以下を含み、残部がCu及び不可避不純物からなる銅材料で構成されているので、Zr及びMgが、不可避不純物のひとつとして銅中に存在するS(硫黄)を固着し、結晶粒径の粗大化を促進することができる。このように結晶粒径を300μm以上とすることで、太陽電池用インターコネクタ32の変形抵抗が小さくなり、半田接合時における太陽電池セル31の反りの発生を抑制することができる。また、Zr及びMgによって結晶粒径のばらつきを抑えることが可能となり、半田接合時の熱応力を均一に吸収することができる。
【0038】
また、鋳造工程S4がベルト・ホイール式連続鋳造機Dによる連続鋳造工程とされ、加工工程S5が連続圧延装置Eによる連続圧延工程とされているので、低コストで太陽電池用インターコネクタ材を製造することができる。さらに、本実施形態では、4N(純度99.99%)とされた一般の無酸素銅ベースの銅材料であるので、特別な精錬処理を行う必要がなく、さらに太陽電池用インターコネクタ材の製造コストの低減を図ることができる。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
例えば、太陽電池セルのサイズを、一辺が130mm、厚さが0.1mmとしたもので説明したが、太陽電池セルのサイズに特に限定はない。ただし、厚さが0.2mm以下とされた薄型の太陽電池セルにおいては、半田接合時の反りによって割れが生じやすくなるため、本実施形態である太陽電池用インターコネクタの効果は顕著となる。
【0040】
さらに、太陽電池用インターコネクタ材の製造方法として、鋳造工程S4をベルト・ホイール式連続鋳造機Dによる連続鋳造工程とし、加工工程S5を連続圧延装置Eによる連続圧延工程としたものとして説明したが、これに限定されることはなく、例えば鋳造工程S4において円柱状の鋳塊を製出し、加工工程S5において円柱状の鋳塊から荒引銅線を得て、この荒引銅線より太陽電池用インターコネクタ材を製造してもよい。
【0041】
また、太陽電池用インターコネクタ材をメッキ浴に浸漬・通電して鉛フリー半田メッキ層を形成したものとして説明したが、これに限定されることはなく、他のメッキ方法によって鉛フリー半田メッキ層を形成してもよい。なお、この鉛フリー半田メッキ層は、太陽電池用インターコネクタ材(銅平角線)の延在方向に延びる主面のうちの少なくとも1つに形成されていればよい。
さらに、鉛フリー半田メッキ層の組成は、Sn−3.0質量%Ag−0.5質量%Cuに限定されることはなく、他の組成であってもよい。
【実施例】
【0042】
以下に、本発明の有効性を確認するために行った確認実験の結果について説明する。
確認実験は、前述した実施形態である太陽電池用インターコネクタ材(本発明例1−9)と、比較例としてZr、Mg、O含有量が本発明から外れたZr及びMg含有銅材料と、従来例として4N(純度99.99%)の無酸素銅と、を準備し、厚さ0.2mm、幅2mm、長さ150mmの試験片を作製した。
【0043】
この試験片に700℃×10minの熱処理を行った後に、結晶粒径の測定及び0.2%耐力の測定を行った。
結晶粒径の測定は、日立ハイテクノロジー社製S4300SEにより、視野面積5000mmで10箇所の平均結晶粒径及び最大結晶粒径と最小結晶粒径との差を測定した。また、JIS Z 2241に準拠して島津製作所製AG−5kNXを用いて引張試験を行い、0.2%耐力を測定した。
【0044】
確認実験結果を表1に示す。
【0045】
【表1】

【0046】
表1に示すように、本発明例1−9によれば、700℃×10minの熱処理によって、平均結晶粒径が300μm以上とされ、最大結晶粒径と最小結晶粒径との差も μm以下と小さく、結晶粒径にばらつきが小さいことが確認された。また、0.2%耐力は MPa以下であって、十分軟化していることが確認された。
これに対して比較例1−3、従来例においては、700℃×10minの熱処理によっても、平均結晶粒径が100〜180μmと小さく、最大結晶粒径と最小結晶粒径との差も200〜250μmと大きく、結晶粒径にばらつきが大きいことが確認された。また、0.2%耐力は75〜85MPaであって、軟化が不十分であることが確認された。
【0047】
したがって、本発明例によれば、平均結晶粒径が300μm以上と大きく、かつ、ばらつきも小さいことから、半田接合時の熱応力を十分に吸収でき、セルの反りを防止可能であることが確認された。
【符号の説明】
【0048】
30 太陽電池用モジュール
31 太陽電池セル
32 太陽電池用インターコネクタ
33 鉛フリー半田メッキ層
S1 溶解工程
S2 脱酸工程
S3 Zr及びMg添加工程
S4 鋳造工程
S5 加工工程
S6 熱処理工程

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池モジュールにおいてセル間同士を接続する太陽電池用インターコネクタとして使用される太陽電池用インターコネクタ材であって、
質量百万分率で、Zr及びMgのうち少なくとも1種を3〜20ppm、Oを5ppm以下、を含み、残部がCu及び不可避不純物からなり、平均結晶粒径が300μm以上とされていることを特徴とする太陽電池用インターコネクタ材。
【請求項2】
質量百万分率で、Zr及びMgのうち少なくとも1種を10〜15ppm含有することを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用インターコネクタ材。
【請求項3】
太陽電池モジュールにおいてセル間同士を接続する太陽電池用インターコネクタに用いられる太陽電池用インターコネクタ材の製造方法であって、
銅原料を溶解して銅溶湯を得る溶解工程と、
前記銅溶湯の酸素含有量を5ppm以下とする脱酸工程と、
脱酸処理された前記銅溶湯にZr及びMgのうち少なくとも1種を添加して、Zr及びMgのうち少なくとも1種の含有量を質量百万分率で3〜20ppmとするZr及びMg添加工程と、
Zr及びMgのうち少なくとも1種が添加された前記銅溶湯から鋳塊を得る鋳造工程と、
前記鋳塊を加工して銅線を得る加工工程と、
前記銅線に対して700〜800℃×1〜10minの熱処理を行い、平均結晶粒径を300μm以上とする熱処理工程と、
を備えていることを特徴とする太陽電池用インターコネクタ材の製造方法。
【請求項4】
前記鋳造工程は、鋳塊を連続的に製出する連続鋳造工程であり、前記加工工程は、前記鋳塊を連続的に圧延する連続圧延工程であることを特徴とする請求項3に記載の太陽電池用インターコネクタ材の製造方法。
【請求項5】
太陽電池モジュールにおいてセル間同士を接続する太陽電池用インターコネクタであって、
請求項1または請求項2に記載の太陽電池用インターコネクタ材からなり、断面が矩形状をなす平角線とされ、
該平角線の延在方向に延びる主面のうち少なくとも一面に、鉛フリー半田メッキ層が形成されていることを特徴とする太陽電池用インターコネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−280898(P2009−280898A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9270(P2009−9270)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(000006264)三菱マテリアル株式会社 (4,417)
【Fターム(参考)】