説明

定電流回路および半導体装置、電子機器

【課題】定電流源を構成するトランジスタに電流ばらつきがあっても、所望の出力電流に調整できる定電流回路(カレントミラー)回路を提供する。
【解決手段】このカレントミラー回路は、第1の電圧印加部分120の第1の電圧印加トランジスタであるNMOSトランジスタ102からPMOSトランジスタ101(電流源トランジスタ)のゲートに、PMOSトランジスタ101のソースに印加する電源電圧(第2の電圧)VCCよりも低い電圧Vneg(第1の電圧)を印加し、第3の電圧印加部分130で上記PMOSトランジスタ101のドレインにグランド(GND)電位を印加してPMOSトランジスタ101の閾値を調整できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、定電流回路、半導体装置および電子機器に関し、より詳しくは、出力電流量が可変な定電流(カレントミラー)回路およびそれを備えた半導体装置、電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルなどでは、ガラス基板上にもトランジスタを形成し、半導体回路が搭載されてきている。将来は、プラスチックス基板など、低温プロセスで処理できるフレキシブルな基板上にも、トランジスタ等を含む回路が形成されると考えられる。
【0003】
このようなガラス基板上やプラスチックス基板上等に形成されたトランジスタは、ガラスやプラスチックスの温度耐性が低いことに起因して、シリコン基板上に形成されたトランジスタと比べて、低いアニール温度のプロセスで形成されることとなる。このため、ガラス基板やプラスチックス基板上に形成されたトランジスタでは、電流のばらつきが大きくなり、製品の歩留まりを下げるという問題が生じる。例えば、液晶パネルや有機ELパネル等のソースドライバの電流ばらつきがあると、画像の輝度ムラが発生するなど製品の品質や歩留まりを下げてしまっていた。すなわち、上記電流ばらつきは、通常、0.5%以下が望まれている。
【0004】
従来、このようなトランジスタ特性のばらつきに対する代表的な解決手法としては、例えば、トランジスタのゲート長Lやゲート幅Wを大きくして、トランジスタ形状のばらつきによる電流ドライブ能力のばらつきを抑える方式が提案されている(特許文献1(特開2005−121843号公報)参照)。
【0005】
しかしながら、上記従来の方式では、個々のトランジスタのサイズを大きくする必要があるので、回路の面積を増大させるという問題があり、また、トランジスタの閾値Vthのばらつきや電流増幅率βのばらつきについては解決できないという問題があった。
【特許文献1】特開2005−121843号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、この発明の課題は、定電流源を構成するトランジスタに電流ばらつきがあっても、所望の出力電流に調整できる定電流回路(カレントミラー)回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、この発明の定電流回路は、定電流源を構成する電流源トランジスタと、
上記電流源トランジスタのゲートに、上記電流源トランジスタの入力端子または出力端子に印加する電圧よりも低い電圧を印加することで、上記電流源トランジスタのゲート絶縁膜にホールを注入して、上記電流源トランジスタの閾値を調整する電圧印加部とを備えることを特徴としている。
【0008】
この発明の定電流回路によれば、上記電圧印加部でもって上記電流源トランジスタのゲート絶縁膜にホールを注入することで、上記電流源トランジスタの閾値を調整できるので、上記電流源トランジスタに流す電流量を適切な値に設定できる。よって、定電流源を構成するトランジスタに電流ばらつきがあっても、所望の出力電流が得られる。
【0009】
また、一実施形態の定電流回路では、上記電圧印加部は、
上記電流源トランジスタのゲートに第1の電圧を印加する第1の電圧印加部分と、
上記電流源トランジスタの入力端子または出力端子の一方に上記第1の電圧よりも高い第2の電圧を印加する第2の電圧印加部分とを備える。
【0010】
この実施形態の定電流回路によれば、上記第1の電圧印加部分で上記電流源トランジスタのゲートに第1の電圧を印加すると共に、第2の電圧印加部分で電流源トランジスタの入力端子または出力端子の一方に上記第1の電圧よりも高い第2の電圧を印加する。これにより、上記電流源トランジスタのゲート絶縁膜にホールを注入して上記電流源トランジスタの閾値を調整でき、電流量を適切な所望の値に設定できる。
【0011】
また、一実施形態の定電流回路では、上記電圧印加部は、
上記電流源トランジスタの入力端子または出力端子の他方に上記第1の電圧よりも高いと共に上記第2の電圧とは異なる第3の電圧を印加する第3の電圧印加部分を有する。
【0012】
この実施形態の定電流回路によれば、上記第2,第3の電圧印加部分による第2,第3の電圧を上記電流源トランジスタの入力端子‐出力端子に印加することで、上記電流源トランジスタの入出力端子間(チャネル領域)に電流を流す。よって、このチャネル領域で発生したチャネルホットホールを相対的に低い電圧のゲート側へ引き寄せることにより、上記電流源トランジスタのゲート酸化膜にホールを注入し、閾値を変化させることができる。
【0013】
また、一実施形態の定電流回路では、上記電圧印加部は、
上記電流源トランジスタの入力端子または出力端子の他方に上記第1の電圧よりも高いと共に上記第2の電圧と同じ電圧を印加する第3の電圧印加部分を有する。
【0014】
この実施形態の定電流回路によれば、上記第2,第3の電圧印加部分で上記電流源トランジスタの2つの入出力端子に同じ電圧(第2の電圧)を印加すると共に第1の電圧印加部分で上記電流源トランジスタのゲートに上記電圧よりも低い電圧を印加する。これにより、上記電流源トランジスタにFN(ファウラー・ノルドハイム)トンネル電流を誘起して、上記電流源トランジスタのゲート酸化膜にホールを注入し、閾値を変化させることができる。
【0015】
また、一実施形態の定電流回路では、上記第1の電圧印加部は、
上記電流源トランジスタのゲートに入力端子または出力端子の一方が接続されると共に上記入力端子または出力端子の他方に上記第1の電圧が入力され、かつ、ゲートに第4の電圧が入力される第1の電圧印加トランジスタと、
上記電流源トランジスタのゲートに入力端子または出力端子の一方が接続されると共に上記入力端子または出力端子の他方に基準電圧が入力され、かつ、ゲートに上記第4の電圧が入力される第2の電圧印加トランジスタとを有する。
【0016】
この実施形態の定電流回路によれば、閾値調整時には、上記第1の電圧印加トランジスタから上記電流源トランジスタのゲートに、上記電流源トランジスタの入出力端子に印加する第2の電圧よりも低い第1の電圧を印加して閾値調整できる。また、定電流源としての通常動作時には、上記第2の電圧印加トランジスタから上記電流源トランジスタのゲートに基準電圧を供給できる。すなわち、第1,第2の2個の電圧印加トランジスタでもって、閾値調整時の第1の電圧と定電流動作時の基準電圧を電流源トランジスタに供給できる。
【0017】
また、一実施形態の定電流回路では、上記第3の電圧印加部分は、
入力端子または出力端子の一方が上記電流源トランジスタの入力端子または出力端子の他方に接続されていると共に入力端子または出力端子の他方に上記第3の電圧が印加される第3の電圧印加トランジスタと、
入力端子または出力端子の一方が上記電流源トランジスタの入力端子または出力端子の他方に接続されていると共に入力端子または出力端子の他方が上記定電流源の出力をなす第4の電圧印加トランジスタとを有する。
【0018】
この実施形態の定電流回路によれば、上記第3,第4の2個の電圧印加トランジスタでもって、上記定電流トランジスタの入出力端子の一方(定電流源としての出力側)に、閾値調整を行う際に必要な電圧を印加できる。
【0019】
また、一実施形態の半導体装置では、上記定電流回路を備えた。
【0020】
この実施形態の半導体装置によれば、電流源トランジスタの電流ばらつきが大きくても、上記電流源トランジスタの閾値を調整して、所望の出力電流を得ることができる。
【0021】
また、一実施形態の電子機器では、半導体装置を備えた。
【0022】
この実施形態の電子機器によれば、上記電流源トランジスタのばらつきが大きくなるプロセスを採用した場合においても、高い品質と歩留まりを実現でき、低コスト化、高機能化、高信頼性化を達成できる。
【発明の効果】
【0023】
この発明の定電流回路によれば、電圧印加部でもって電流源トランジスタのゲート絶縁膜にホールを注入することで、上記電流源トランジスタの閾値を調整できるので、上記電流源トランジスタに流す電流量を適切な値に設定できる。よって、定電流源を構成するトランジスタに電流ばらつきがあっても、所望の出力電流が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、この発明を図示の実施の形態により詳細に説明する。
【0025】
(第1の実施の形態)
図1は、この発明の定電流回路の第1実施形態を示す図である。この第1実施形態の定電流回路は、定電流源100とカレントコピー部110を備える。
【0026】
上記カレントコピー部110は、NMOSトランジスタ112とNMOSトランジスタ111とを有し、このNMOSトランジスタ112とNMOSトランジスタ111との電流駆動力比αnにより、定電流源100から入力される定電流Irefpのαn倍の出力電流Ioutnを出力する。
【0027】
また、上記定電流源100は、ソースが、第2の電圧印加部分をなす電源VCCに接続された電流源トランジスタをなすPMOSトランジスタ101と、このPMOSトランジスタ101のゲートに接続された第1の電圧印加部分120と、上記PMOSトランジスタ101のドレインに接続された第3の電圧印加部分130とを有する。
【0028】
上記第1の電圧印加部分120は、第1の電圧印加トランジスタであるNMOSトランジスタ102と第2の電圧印加トランジスタであるPMOSトランジスタ103とを有する。上記第1の電圧印加トランジスタであるNMOSトランジスタ102は、第1の電圧Vnegを発生する第1の電源Vnegにソースが接続され、上記PMOSトランジスタ101のゲートにドレインが接続され、ゲートがグランド(GND)に接続されている。このグランドの電位GNDが第4の電圧に相当する。なお、ここでは、説明の便宜上、電源とこの電源が発生する電圧とを同じ符号を用いて説明している。
【0029】
第1の電圧印加部分120と第2の電圧印加部分である電源VCCと第3の電圧印加部分130とが、上記電流源トランジスタであるPMOSトランジスタ101のゲート絶縁膜にホールを注入して、上記PMOSトランジスタ(電流源トランジスタ)101の閾値を調整する電圧印加部を構成している。
【0030】
また、上記第2の電圧印加トランジスタであるPMOSトランジスタ103は、基準電圧Vbiasを発生する基準電源Vbiasにソースが接続され、上記PMOSトランジスタ101のゲートにドレインが接続され、ゲートがグランド(GND)に接続されている。上記基準電圧Vbiasは、通常は正電圧である。
【0031】
また、上記第3の電圧印加部分130は、第3の電圧印加トランジスタであるNMOSトランジスタ104と、第4の電圧印加トランジスタであるPMOSトランジスタ105を有する。このNMOSトランジスタ104は、ドレインが上記PMOSトランジスタ101のドレインに接続され、ソースがグランド(GND)に接続され、ゲートが電圧Vprog‐onを発生する電源Vprog‐onに接続されている。また、上記第4の電圧印加トランジスタであるPMOSトランジスタ105は、電圧Vcutを発生する電源Vcutにゲートが接続され、ソースが上記PMOSトランジスタ101のドレインに接続され、ドレインが上記カレントコピー部110に接続されている。
【0032】
ここで、図7を参照して、この第1実施形態の比較例である通常のカレントミラー回路を説明する。このカレントミラー回路は、定電流源700とカレントコピー部710とを備える。上記定電流源700は、ゲートに基準電圧Vbiasが入力され、ソースが電源VCCに接続されたPMOSトランジスタ701からなる。上記基準電圧Vbiasは、図示しない基準電圧発生回路で生成される一定の電圧である。この基準電圧Vbiasは、複数のカレントミラー回路で共通に用いられる。このため、各カレントミラー回路の個別のばらつきを調整することができない。したがって、上記PMOSトランジスタ701、および、カレントコピー部710を構成するNMOSトランジスタ711,712がばらつくと、出力電流Ioutnもばらついてしまう。
【0033】
これに対して、この第1実施形態では、上記電圧印加部でもって、定電流源100のPMOSトランジスタ101の閾値Vthpを調整することによって、出力電流Ioutnを調整することを可能にしている。このPMOSトランジスタ101の閾値Vthpを調整することで、同じ基準電圧Vbiasがゲートに入力されていても、PMOSトランジスタ101に流れる電流Irefpを調整できる。この電流Irefpを調整することにより、たとえカレントコピー部110のトランジスタに電流ばらつきがあっても、出力電流Ioutnを所望の値に調整できる。この閾値調整を実現するために、この実施形態では、NMOSトランジスタ(第1の電圧印加トランジスタ)102とPMOSトランジスタ(第2の電圧印加トランジスタ)103とからなる第1の電圧印加部分120、および、NMOSトランジスタ(第3の電圧印加トランジスタ)104とPMOSトランジスタ(第4の電圧印加トランジスタ)105とからなる第3の電圧印加部分130とを有している。
【0034】
次に、この実施形態の動作を説明する。
【0035】
先ず、この実施形態のカレントミラー回路としての通常動作時は、第1の電圧Vnegと電圧Vprog‐on、およびVcutをグランド(GND)電位にして、基準電圧Vbiasに所定の電圧(通常は正電圧)が印加される。なお、これらの電圧Vneg,Vprog‐on,Vcut,Vbiasは、電圧制御部140から印加される。
【0036】
この結果、NMOSトランジスタ102のゲートとソースは共にグランド(GND)電位になるから、このNMOSトランジスタ102はオフ状態となる。また、PMOSトランジスタ103のゲートは、グランド(GND)電位になるから、このPMOSトランジスタ103はオン状態となり、ソースに入力された基準電圧Vbiasがそのままドレイン側に出力され、PMOSトランジスタ101のゲートに基準電圧Vbiasが印加される。これにより、PMOSトランジスタ101に流れる電流Irefpが決まり、定電流源100から定電流Irefpが入力されたカレントコピー部110では、この定電流Irefpのαn倍の出力電流Ioutnを出力する。
【0037】
次に、図5に示すタイミングチャートを参照して、電流源トランジスタであるPMOSトランジスタ101の閾値を調整する動作を説明する。
【0038】
この閾値調整動作では、基準電圧Vbiasは、グランド(GND)電位に固定しておき、最初に、時刻t1で、電圧Vcutを電源電圧VCCにして、PMOSトランジスタ105をオフにすることで、定電流源100をカレントコピー部110から切り離す。
【0039】
次に、時刻t2で、第1の電圧である電圧Vnegを負電圧にする。すると、第1の電圧印加トランジスタであるNMOSトランジスタ102のゲートはグランド(GND)電位なので、このNMOSトランジスタ(第1の電圧印加トランジスタ)102はオン状態となり、このNMOSトランジスタ102のドレインに負電圧が出力され、PMOSトランジスタ101のゲートに負電圧が印加される。一方、第2の電圧印加トランジスタであるPMOSトランジスタ103は、ゲートとソースがグランド(GND)電位であるので、ドレインに負電圧が入力されてもオフ状態である。
【0040】
続いて、時刻t3で、電圧Vprog‐onを電源電圧VCCにする。すると、第3の電圧印加トランジスタであるNMOSトランジスタ104はオン状態となり、PMOSトランジスタ101のドレインはNMOSトランジスタ104を経由してグランド(GND)に接続される。これにより、PMOSトランジスタ101のドレインはグランド電位となり、ソースに電源電圧VCCが印加されゲートに負電圧が印加されているPMOSトランジスタ101に電流が流れる。
【0041】
この結果、PMOSトランジスタ101のチャネルでは、ホットホールが発生し、これがゲート酸化膜に注入されて、閾値Vthpが下がる。ここで、PMOSトランジスタの閾値Vthpは負であるから、上記閾値Vthpの絶対値は大きくなる。
【0042】
続いて、時刻t4で電圧Vprog‐onをグランド(GND)電位に戻し、時刻t5で第1の電圧Vnegをグランド(GND)電位に戻し、時刻t6で、電圧Vcutをグランド(GND)電位に戻す。これにより、閾値調整を終了する。
【0043】
次に、先述したカレントミラー回路としての通常動作をさせて、定電流源100から定電流Irefpが入力されたカレントコピー部110では、この定電流Irefpのαn倍の出力電流Ioutnを出力する。そして、この出力電流Ioutnが、適切な所望の電流になるまで、前述の閾値調整を繰り返す。
【0044】
このように、この実施形態の定電流回路によれば、上記電圧印加部の第1,第3の電圧印加部分120,130でもって、上記PMOSトランジスタ(電流源トランジスタ)101のゲート絶縁膜にホールを注入することで、上記PMOSトランジスタ101の閾値を調整でき、上記PMOSトランジスタ101に流す電流量を適切な所望の値に設定できる。よって、定電流源100を構成するトランジスタ101に電流ばらつきがあっても、所望の出力電流が得られる。
【0045】
すなわち、この実施形態によれば、上記第1の電圧印加部分120で上記PMOSトランジスタ101のゲートに第1の電圧としての負電圧のVnegを印加すると共に、第2の電圧印加部分である電源VCCで上記PMOSトランジスタ101のソースに上記第1の電圧Vnegよりも高い第2の電圧としての電源電圧VCCを印加する。また、第3の電圧印加部分130で上記PMOSトランジスタ101のドレインに第3の電圧としてのグランド(GND)電位を印加する。
【0046】
これにより、上記PMOSトランジスタ101のチャネル領域で発生したチャネルホットホールを相対的に低い電圧のゲート側へ引き寄せることにより、上記PMOSトランジスタ101のゲート酸化膜にホールを注入し、閾値を変化させることができる。
【0047】
また、この実施形態によれば、閾値調整時には、上記第1の電圧印加トランジスタであるNMOSトランジスタ102から上記PMOSトランジスタ101(電流源トランジスタ)のゲートに、上記PMOSトランジスタ101のソースに印加する電源電圧(第2の電圧)VCCよりも低い電圧Vneg(第1の電圧)を印加して閾値調整できる。また、定電流源100としての通常動作時には、上記PMOSトランジスタ(第2の電圧印加トランジスタ)103から上記PMOSトランジスタ101のゲートに基準電圧Vbiasを供給できる。すなわち、第1,第2の2個の電圧印加トランジスタ102,103でもって、閾値調整時の負の電圧Vnegと定電流動作時の基準電圧Vbias(通常は正電圧)をPMOSトランジスタ101のゲートに供給できる。
【0048】
(第2の実施の形態)
次に、図2に、この発明の定電流回路の第2実施形態を示す。この第2実施形態の定電流回路は、定電流源200とカレントコピー部210を備える。
【0049】
上記カレントコピー部210は、PMOSトランジスタ212とPMOSトランジスタ211とを有し、このPMOSトランジスタ212とPMOSトランジスタ211との電流駆動力比αpにより、定電流源200から入力される定電流Irefnのαp倍の出力電流Ioutpを出力する。
【0050】
上記定電流源200は、電流源トランジスタであるNMOSトランジスタ201と、このNMOSトランジスタ201のゲートに接続された第1の電圧印加部分220と、上記NMOSトランジスタ201のドレインに接続された第2の電圧印加部分230とを有する。
【0051】
上記第1の電圧印加部分220は、第1の電圧印加トランジスタであるNMOSトランジスタ202と第2の電圧印加トランジスタであるPMOSトランジスタ203とを有する。上記第1の電圧印加トランジスタであるNMOSトランジスタ202は、第1の電圧Vnegを発生する第1の電源Vnegにソースが接続され、上記NMOSトランジスタ201のゲートにドレインが接続され、ゲートがグランド(GND)に接続されている。このグランドの電位GNDが第4の電圧に相当する。なお、ここでは、説明の便宜上、電源とこの電源が発生する電圧とを同じ符号を用いて説明している。
【0052】
また、上記NMOSトランジスタ201のソースは、グランド(GND)に接続され、このグランド(GND)が第3の電圧印加部分を構成している。この第3の電圧印加部分と第1の電圧印加部分220と第2の電圧印加部分230とが電圧印加部を構成している。
【0053】
また、上記第2の電圧印加トランジスタであるPMOSトランジスタ203は、基準電圧Vbiasを発生する基準電源Vbiasにソースが接続され、上記NMOSトランジスタ201のゲートにドレインが接続され、ゲートがグランド(GND)に接続されている。上記基準電圧Vbiasは、通常は正電圧である。
【0054】
上記第2の電圧印加部分230は、NMOSトランジスタ204と、NMOSトランジスタ205を有する。このNMOSトランジスタ205は、ソースが上記NMOSトランジスタ201のドレインに接続され、ドレインがカレントコピー部210に接続され、電圧Vcut#を発生する電源Vcut#にゲートが接続されている。また、上記NMOSトランジスタ204は、ゲートが電圧Vprog‐onを発生する電源Vprog‐onに接続され、ソースがグランド(GND)に接続され、ドレインが上記NMOSトランジスタ205のソースに接続されている。
【0055】
ここで、図8を参照して、この第2実施形態の比較例である通常のカレントミラー回路を説明する。このカレントミラー回路は、定電流源800とカレントコピー部810とを備える。上記定電流源800は、ゲートに基準電圧Vbiasが入力され、ドレインがグランド(GND)に接続されたNMOSトランジスタ801からなる。上記基準電圧Vbiasは、図示しない基準電圧発生回路で生成される一定の電圧である。この基準電圧Vbiasは、複数のカレントミラー回路で共通に用いられる。このため、各カレントミラー回路の個別のばらつきを調整することができない。したがって、上記NMOSトランジスタ801、および、カレントコピー部810を構成するPMOSトランジスタ811,812がばらつくと、出力電流Ioutpもばらついてしまう。
【0056】
これに対して、この第2実施形態では、上記電圧印加部でもって、定電流源200のNMOSトランジスタ201の閾値Vthnを調整することによって、出力電流Ioutpを調整することを可能にしている。このNMOSトランジスタ201の閾値Vthnを調整することで、同じ基準電圧Vbiasがゲートに入力されていても、NMOSトランジスタ201に流れる電流Irefnを調整できる。この電流Irefnを調整することにより、たとえカレントコピー部210のトランジスタに電流ばらつきがあっても、出力電流Ioutpを所望の値に調整できる。この閾値調整を実現するために、この実施形態では、NMOSトランジスタ(第1の電圧印加トランジスタ)202とPMOSトランジスタ(第2の電圧印加トランジスタ)203とからなる第1の電圧印加部分220、および、NMOSトランジスタ(第3の電圧印加トランジスタ)204とNMOSトランジスタ(第4の電圧印加トランジスタ)205とからなる第2の電圧印加部分230とを有している。
【0057】
次に、この第2実施形態の動作を説明する。先ず、この実施形態のカレントミラー回路としての通常動作時は、第1の電圧Vnegと電圧Vprog‐onとをグランド(GND)電位にすると共に、電圧Vcut#を電源電圧VCCにして、基準電圧Vbiasに所定の電圧(通常は正電圧)が印加される。なお、これらの電圧Vneg,Vprog‐on,Vcut#,Vbiasは、電圧制御部240から印加される。
【0058】
この結果、NMOSトランジスタ202のゲートとソースは共にグランド(GND)電位になるから、このNMOSトランジスタ202はオフ状態となる。また、PMOSトランジスタ203のゲートは、グランド(GND)電位になるから、このPMOSトランジスタ203はオン状態となり、ソースに入力された基準電圧Vbiasがそのままドレイン側に出力され、NMOSトランジスタ201のゲートに基準電圧Vbiasが印加される。これにより、NMOSトランジスタ201に流れる電流Irefnが決まり、定電流源200から定電流Irefnが入力されたカレントコピー部210では、この定電流Irefnのαp倍の出力電流Ioutpを出力する。
【0059】
次に、図5のタイミングチャートを参照して、電流源トランジスタであるNMOSトランジスタ201の閾値を調整する動作を説明する。
【0060】
この閾値調整動作では、基準電圧Vbiasは、グランド(GND)電位に固定しておき、最初に、時刻t1で、電圧Vcut#をグランド(GND)電位にして、PMOSトランジスタ205をオフにすることで、定電流源200をカレントコピー部210から切り離す。
【0061】
次に、時刻t2で、第1の電圧である電圧Vnegを負電圧にする。すると、第1の電圧印加トランジスタであるNMOSトランジスタ202のゲートはグランド(GND)電位なので、このNMOSトランジスタ(第1の電圧印加トランジスタ)202はオン状態となり、このNMOSトランジスタ202のドレインに負電圧が出力され、NMOSトランジスタ201のゲートに負電圧が印加される。一方、第2の電圧印加トランジスタであるPMOSトランジスタ203は、ゲートとソースがグランド(GND)電位であるので、ドレインに負電圧が入力されてもオフ状態である。
【0062】
続いて、時刻t3で、電圧Vprog‐onを電源電圧VCCにする。すると、第3の電圧印加トランジスタであるNMOSトランジスタ204はオン状態となり、NMOSトランジスタ201のドレインはNMOSトランジスタ204を経由してグランド(GND)に接続される。これにより、NMOSトランジスタ201のドレインとソースは共にグランド電位となる。この結果、ゲートに負電圧が印加されているNMOSトランジスタ201のゲート下方の基板では、ホットホールが発生し、このホットホールがゲート酸化膜に注入されて、閾値Vthnが下がる。ここで、NMOSトランジスタ201の閾値Vthnは正であるから、絶対値は小さくなる。
【0063】
続いて、時刻t4で電圧Vprog‐onをグランド(GND)電位に戻し、時刻t5で第1の電圧Vnegをグランド(GND)電位に戻し、時刻t6で、電圧Vcut#を電源電圧VCCに戻す。これにより、閾値調整を終了する。
【0064】
次に、先述したカレントミラー回路としての通常動作をさせて、定電流源200から定電流Irefnが入力されたカレントコピー部210では、この定電流Irefnのαp倍の出力電流Ioutpを出力する。そして、この出力電流Ioutpが、適切な所望の電流になるまで、前述の閾値調整を繰り返す。
【0065】
このように、この実施形態の定電流回路によれば、上記電圧印加部の第1,第2の電圧印加部分220,230でもって、上記NMOSトランジスタ(電流源トランジスタ)201のゲート絶縁膜にホールを注入することで、上記NMOSトランジスタ201の閾値を調整でき、上記NMOSトランジスタ201に流す電流量を適切な所望の値に設定できる。よって、定電流源200を構成するトランジスタ201に電流ばらつきがあっても、所望の出力電流が得られる。
【0066】
すなわち、この実施形態によれば、上記第1の電圧印加部分220で上記NMOSトランジスタ201のゲートに第1の電圧としての負電圧のVnegを印加すると共に、第2の電圧印加部分230で上記NMOSトランジスタ201のドレインにソースと同じグランド(GND)電位を印加する。これにより、NMOSトランジスタ201のゲート下方の基板では、ホットホールが発生し、このホットホールがゲート酸化膜に注入されて、NMOSトランジスタ201の閾値を調整できる。
【0067】
より詳しくは、この実施形態によれば、閾値調整時には、上記第1の電圧印加トランジスタであるNMOSトランジスタ202から上記NMOSトランジスタ201(電流源トランジスタ)のゲートに、上記NMOSトランジスタ201のドレイン,ソースに印加されるグランド(GND)電位よりも低い電圧Vneg(第1の電圧)を印加して閾値調整できる。また、定電流源200としての通常動作時には、上記PMOSトランジスタ(第2の電圧印加トランジスタ)203から上記NMOSトランジスタ201のゲートに基準電圧Vbiasを供給できる。すなわち、第1,第2の2個の電圧印加トランジスタ202,203でもって、閾値調整時の負の電圧Vnegと定電流動作時の基準電圧Vbias(通常は正電圧)をNMOSトランジスタ201のゲートに供給できる。
【0068】
なお、先述の第1実施形態の説明では、カレントコピー部110を図1に示す回路構成としたが、カレントコピー部としてはカレントコピーの働きをする回路であれば、これに限定されるものではない。例えば、図3に示すように、NMOSトランジスタ311,312とNMOSトランジスタ313,314とで構成されたカレントコピー部310としてもよい。図3の定電流源300は、上記定電流源100に相当している。また、上記カレントコピー部としては、図4に示すように、NMOSトランジスタ411,412と演算増幅器413,NMOSトランジスタ414で構成された回路のカレントコピー部410でも構わない。図4の定電流源400は、上記定電流源100に相当している。また、上述の第2実施形態のカレントコピー部210についてもカレントコピーの働きをする回路であれば、図2に示した回路構成に限定されるものではない。
【0069】
(第3の実施の形態)
次に、図6のブロック図を参照して、この発明の第3実施形態の電子機器としての液晶パネル600を説明する。この液晶パネル600は、この発明の出力電流量が可変なカレントミラー回路である先述の第1または第2実施形態を有するバッファ回路608を備えている。
【0070】
図6に示すように、この液晶パネル600は、液晶表示部601と、この液晶表示部601を駆動するゲートドライバ602と、ソースドライバ604と、タイミング発生回路603とで構成される。上記ソースドライバ604は、液晶表示部600のソース線毎に、シフトレジスタ605、ラッチ回路606、D/Aコンバータ607、バッファ回路608が接続された構成となっている。
【0071】
この液晶パネル600では、外部から入力されたデジタル映像信号609は、ラッチ回路606に送られる。このデジタル映像信号609はシリアル信号なので、タイミング発生回路603から出力されるクロックで動作するシフトレジスタ605によって、順次ラッチ回路606に取り込まれる。ラッチ回路606の出力はD/Aコンバータ607でアナログ映像信号に変換され、バッファ回路608で増幅されて、液晶表示部601のソース線に送られる。
【0072】
ここで、この実施形態のバッファ回路608は、出力電流量が可変なカレントミラー回路を有することで、このカレントミラー回路を構成するトランジスタに電流ばらつきがあっても、前述の如く、適切な所望の出力電流(増幅したアナログ映像信号)に調整することが可能である。したがって、各ソース線の映像信号の輝度のばらつきを低減することが可能となり、品質と歩留まりの向上が図れる。
【0073】
なお、上記電子機器としては、液晶パネルに限られず、デジタルカメラや携帯電話、携帯端末、デジタル音声レコーダや音楽録音再生機器等のあらゆる電子機器に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】この発明の定電流回路の第1実施形態であるカレントミラー回路を示す図である。
【図2】この発明の定電流回路の第2実施形態であるカレントミラー回路を示す図である。
【図3】上記第1実施形態が有するカレントコピー部の変形例を示す図である。
【図4】上記第1実施形態が有するカレントコピー部のもう1つの変形例を示す図である。
【図5】上記第1、第2の実施形態のカレントミラー回路の動作を説明するタイミングチャートである。
【図6】この発明の第3実施形態の電子機器としての液晶パネルを示すブロック図である。
【図7】この発明の第1実施形態に対応する従来のカレントミラー回路を示す図である。
【図8】この発明の第2実施形態に対応する従来のカレントミラー回路を示す図である。
【符号の説明】
【0075】
100、200、300、400、700、800 定電流源
101、103、105、203、211、212、701、811、812 PMOSトランジスタ
102、104、111、112、201、202、204、205、311〜314、411、412、414、711、712、801 NMOSトランジスタ
110、210、310、410、710、810 カレントコピー部
120、220 第1の電圧印加部分
130、230 第2の電圧印加部分
130 第3の電圧印加部分
413 オペアンプ
600 液晶パネル
601 液晶表示部
602 ゲートドライバ
603 タイミング発生回路
604 ソースドライバ
605 シフトレジスタ
606 ラッチ回路
607 D/Aコンバータ
608 バッファ回路
609 デジタル映像信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
定電流源を構成する電流源トランジスタと、
上記電流源トランジスタのゲートに、上記電流源トランジスタの入力端子または出力端子に印加する電圧よりも低い電圧を印加することで、上記電流源トランジスタのゲート絶縁膜にホールを注入して、上記電流源トランジスタの閾値を調整する電圧印加部とを備えることを特徴とする定電流回路。
【請求項2】
請求項1に記載の定電流回路において、
上記電圧印加部は、
上記電流源トランジスタのゲートに第1の電圧を印加する第1の電圧印加部分と、
上記電流源トランジスタの入力端子または出力端子の一方に上記第1の電圧よりも高い第2の電圧を印加する第2の電圧印加部分とを備えることを特徴とする定電流回路。
【請求項3】
請求項2に記載の定電流回路において、
上記電圧印加部は、
上記電流源トランジスタの入力端子または出力端子の他方に上記第1の電圧よりも高いと共に上記第2の電圧とは異なる第3の電圧を印加する第3の電圧印加部分を有することを特徴とする定電流回路。
【請求項4】
請求項2に記載の定電流回路において、
上記電圧印加部は、
上記電流源トランジスタの入力端子または出力端子の他方に上記第1の電圧よりも高いと共に上記第2の電圧と同じ電圧を印加する第3の電圧印加部分を有することを特徴とする定電流回路。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか1つに記載の定電流回路において、
上記第1の電圧印加部分は、
上記電流源トランジスタのゲートに入力端子または出力端子の一方が接続されると共に上記入力端子または出力端子の他方に上記第1の電圧が入力され、かつ、ゲートに第4の電圧が入力される第1の電圧印加トランジスタと、
上記電流源トランジスタのゲートに入力端子または出力端子の一方が接続されると共に上記入力端子または出力端子の他方に基準電圧が入力され、かつ、ゲートに上記第4の電圧が入力される第2の電圧印加トランジスタとを有することを特徴とする定電流回路。
【請求項6】
請求項3に記載の定電流回路において、
上記第3の電圧印加部分は、
入力端子または出力端子の一方が上記電流源トランジスタの入力端子または出力端子の他方に接続されていると共に入力端子または出力端子の他方に上記第3の電圧が印加される第3の電圧印加トランジスタと、
入力端子または出力端子の一方が上記電流源トランジスタの入力端子または出力端子の他方に接続されていると共に入力端子または出力端子の他方が上記定電流源の出力をなす第4の電圧印加トランジスタとを有することを特徴とする定電流回路。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1つに記載の定電流回路を備えた半導体装置。
【請求項8】
請求項7に記載の半導体装置を備えた電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−117996(P2010−117996A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292444(P2008−292444)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】