説明

室温硬化性ポリマー

室温硬化性ポリマーを作製する方法。反応物質は、シロキサン末端ポリマー及びシラノールを含む。反応物質を混合し、重合を、空気中で室温で進行させる。このポリマーにより、1種又は複数の治療化合物が得られる。このように、制御薬物放出(局所又は全身送達のため)がなされることが望ましい医療機器を、治療化合物を含有する本発明のポリマーでコーティングすることができる。好ましい実施形態では、ポリ(MPC:LAM:HPMA:TSMA)ポリマー(但しw、x、y及びzは、このポリマーを調製するための供給材料に使用されるモノマーのモル比を表し;MPCは、2−メタクリオイルオキシエチルホスホリルコリン単位を表し;LMAは、メタクリル酸ラウリル単位を表し、HMPAは、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル単位を表し、TSMAは、メタクリル酸3−トリメトキシシリルプロピル単位を表す。)を、ポリジメチルシロキサンと反応させる。別の好ましい実施形態では、デキサメタゾンなどの治療化合物をポリマーに組み込む。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[01]関連出願の相互参照
[02]本出願は、2005年12月21日出願の米国特許出願第11/314372号の優先権を主張するものであり、その全体を参照により本明細書に組み込む。
【0002】
[03]連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
[04]適用なし。
【0003】
[05]コンパクトディスクによって提出された材料の参照による組込み
[06]適用なし。
【0004】
[07]技術分野
[08]本発明は、ホスホリルコリンポリマーなどの室温硬化性ポリマーを生成する組成物及び方法に関する。一実施形態では、制御された速度で薬物を放出することができる、ホスホリルコリンポリマーが形成される。そのような組成物は、熱やγ線放射などの過剰な処理条件の必要性をなくし、以前は制限されていた適用例でのコーティングのさらなる使用が可能になる。
【0005】
[09]発明の背景
[010]概要
[011]ポリマーコーティングは、今日の医療機器の多くの能力を強化する。いくつかのコーティングは、潤滑性や生体適合性、抗菌性などの性質を、機器表面に与える。その他のコーティングは、機器から治療化合物を送達するのに、又は移植された機器を撮像システムによって容易に検出できるようにするのに、使用することができる。
【0006】
[012]治療化合物を送達するように設計されたコーティングの場合、この化合物は、通常、ポリマーコーティングの表面にコーティングされる。治療化合物の放出がより制御し易くなるように、ポリマーそのものに埋め込むため、この化合物を、重合反応中に組み込む。しかし、ほとんどの重合反応条件は、その薬理学的属性を維持する治療化合物に適合しないものである。特に、損傷反応条件は、熱及びγ線照射を含む。
【0007】
[013]医療機器(例えばステント)などの機器のコーティングは、ポリマーをエタノールなどの溶媒に溶解させるプロセスを使用する。この機器には、ポリマー溶液にこの機器を浸漬し又はポリマー溶液をこの機器の表面に噴霧するなどの適切な方法を使用して、ポリマーをコーティングする。コーティングしたら、機器を、通常は熱やγ線照射などの硬化条件にかける。熱及びγ線照射の後、浸漬又は噴霧技法によって薬物をコーティングの表面に付加することができるが、薬物は、主にポリマー表面に残る。
【0008】
[014]従来の熱又はγ線照射硬化の例に関しては、(Bowers他、1997;Bowers他、2000;Bowers他、2001;Bowers他、1998)を参照されたい。BiodivYsio(商標)ステント(Biocompatibles UK Ltd、Farnham、Surrey、UKの製品)は、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル及びメタクリル酸3−トリメトキシシリルプロピルモノマーからなる生体適合性ホスホリルコリン(PC)ポリマーでコーティングされる。コーティングは、付着させた後、熱で、典型的には70℃で、最短で4時間硬化され、架橋密度などの適正な材料特性が保証されるようにγ線照射される。しかしこれらの条件は、感受性ある材料を含有するためのポリマーコーティングの使用を極度に制限する。いくつかの感受性ある材料の例(治療化合物以外)には、ガラス転移(45〜48℃の間)になる前の高温に耐えることのできないナイロン11;及びγ線照射に曝されたときにその機械的性質が劣化するポリテトラフルオロエチレンが含まれる。これらの材料は、いくつかの血栓フィルタ(embolic filter)機器の構成に使用される。さらに、制御された局所送達のためにPCポリマーマトリックス内に投入される薬物の効力は、過剰な処理条件によってしばしば損なわれる。そのような硬化も、文献全体を通して教示されている。例えばLewis他(2001)は、メタクリル酸3−トリメトキシシリルプロピルモノマーのトリメトキシリル基(PCポリマーの主鎖から延びる側基)を架橋するための熱及びγ線照射の使用を含む、ホスホリルコリン(PC)ポリマーの調製及び特徴付けについて述べている(Lewis他、2001)。メタクリル酸3−トリメトキシシリルプロピルモノマーを含有せず、したがってトリメトキシシリル基を通して架橋することのできない、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン(MPC)及びメタクリル酸ラウリル(LMA)のコポリマーに関する合成及び特徴付けについても、記述されている(Lewis他、2000)。
【0009】
[015]硬化性コーティング系のためにメタクリル酸3−トリメトキシシリルプロピルモノマーを組み込むその他のメタクリレートコポリマーは、最終的な透明コーティングが着色下塗りの全面に付着される自動車の塗り換え(自動車上塗り)を目的とした自動車産業など、その他の産業で使用されている。しかし、これらの系は、典型的には触媒(テトラブチルチタネート又はジブチルスズジラウレートなど)の添加、並びに適正な硬化を行うための長時間にわたる過剰な熱を必要とし、これらは全て、適切な治療化合物の組込みを、硬化ステップによって劣化せず又はその他の方法によって悪影響(例えば治療活性の損失)を受けないものに制限する可能性がある。
【0010】
[016]最後に、アルコキシシラン官能性をアクリルポリマー主鎖にグラフト化してアルコキシシラン官能化されたアクリルポリマーであって、反応性シリコーンを含む反応性シラノール溶液(及び、任意選択でシラン架橋剤)と反応させて、シラノール−アルコキシシラン縮合反応を通してシリコーン−アクリル水素化物ポリマー網状構造を形成することができる、湿気硬化性シーラント組成物について、記述されている(Hernandez、1994)。得られた架橋シリコーン−アクリルハイブリッドポリマーは、シーラント、接着剤、又はコーティング組成物に使用することができる。
【0011】
[019]
[発明の概要]
[020]第1の態様では、本発明は、式IVの分子を含み、少なくとも1種の治療化合物をさらに含んでも含まなくてもよい組成物の調製を対象とし、
【0012】
【化1】

【0013】
[021]式IVの分子は、式Iの分子を
【0014】
【化2】

【0015】
[022]式IIの分子と反応させることによって作製され
【0016】
【化3】

【0017】
[023]式中、Rは、アシルオキシ、アルケニル、アルコキシル、アルキル、アルキルシクロアルケニル、アルキルシクロアルキル、アルケニルシクロアルキル、アルキニル、アミノ、アラルキル、アリール、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルシクロアルキル、ハロゲン、複素環、複素環系、ケトン、N−アシルアミノ、N含有複素環、飽和環系、部分飽和環系、不飽和環系、飽和環構造、部分飽和環構造、不飽和環構造及びこれらの組合せからなる群から選択された少なくとも1種を含有するポリマーを含み、R、R、R、R、R及びRは、アルキル又はシラノール末端アルキルであり、nは、1≦n≦100の整数である。この反応は、治療化合物に適合した温度で実施される。この温度は、約4℃≦T≦100℃、好ましくは5℃≦T≦30℃、より好ましくは20℃≦T≦22℃である。一実施形態では、R、R、R、R、R及びRはメチル基であり、Rは、式IIIに示される構造を有し、Rに関する結合はアスタリスク()によって示される。
【0018】
【化4】

【0019】
[024]式中、w、x、y及びzは、式IIIのポリマーを調製するための供給材料で使用されるモノマーのモル比を表す。
【0020】
[025]少なくとも1種の治療化合物が含まれるこれらの実施形態において、この化合物は、例えば、シロリムス、シロリムスの誘導体、シロリムス類似体並びにこれらの誘導体、エステル又は塩でよく、シロリムスの誘導体にはゾタロリムスが含まれる。さらに、少なくとも1種の治療化合物は、抗増殖薬、抗血小板薬、抗炎症薬、抗血栓薬及び血栓溶解薬でよい。この組成物は、ステントなどの医療機器に付着させることができ、この機器は、局所又は全身薬物送達のために使用することができる。別の実施形態では、組成物は、少なくとも2種の治療化合物を有し、第1の化合物はゾタロリムス又はパクリタキセルを含み、第2の化合物は抗増殖薬、抗血小板薬、抗炎症薬、抗血栓薬及び血栓溶解薬を含む。
【0021】
[026]第2の態様では、本発明は、少なくとも1種の治療化合物と共に又はこの化合物なしで、本発明のポリマーを含む組成物を対象とする。
【0022】
[027]第3の態様では、本発明は、少なくとも1種の治療化合物と共に又はこの化合物なしで、本発明のポリマーを含む医療機器を対象とする。
【0023】
[028]第4の態様では、本発明は特に、少なくとも1種の治療化合物と共に又はこの化合物なしで、本発明のポリマーを含むステントを対象とする。
【0024】
[029]
[発明の詳細な説明]
[030]一般に、室温硬化性ポリマーには、熱に不安定な又は放射線感受性成分をポリマーそのものに組み込むことが望まれる任意の状況において、重要な用途がある。そのようなポリマーは、感受性材料と共に又はその材料なしで、便利でありまた費用効果があり、熱又は放射線を当てるステップが排除される。室温硬化性PCポリマーには、特に、人体に挿入するためのコーティング医療機器において、並びに治療化合物の制御放出のためのマトリックスにおいて用途がある。ポリマー及びそのようなポリマーでコーティングされた機器は、局所並びに全身送達に使用することができる。
【0025】
[031]本発明は、ポリマーを硬化するための従来技術に比べ、非常に数多くの利点を有する。室温(RT)硬化は、処理条件(例えば熱、又はγ線放射)の必要性をなくす。RT硬化では、以前は制限されていた用途、特に、例えばナイロン11(熱的制約/45〜48℃の間のガラス転移温度)やポリテトラフルオロエチレン(γ線放射によって機械的性質が劣化する)などのより感受性の材料を含有する機器をコーティングするために、ポリマーコーティングをさらに使用することが可能になる。1種又は複数の薬物は、バルクポリマーマトリックス全体に薬物をより良好に分布させることができるよう、処理中に投入することができる。さらに、室温硬化(架橋)によって、PCポリマー並びに薬物が劣化する可能性も低減し、又はなくなる。
【0026】
[032]一実施形態では、本発明は、身体の疾患部位に位置決めされた後の薬物放出速度が、シラノール−アルコキシシランの相互作用から得られる架橋密度によって決定されるように、少なくとも1種の薬物を組成物の一部として組み込む。薬物の治療量は、指定された速度で特定の期間にわたり放出される。アルコキシシランを含有する、ホスホリルコリンをベースにしたポリマーは、生体適合性及び血液適合性の特徴を維持するために本発明で必要な成分であり、炎症応答が予防される。
【0027】
[033]定義
[034]「室温」は、典型的には約20〜22℃を指し、しかし本出願において、「室温」(RT)は、熱が加えられもせず除去もされないインキュベーション状態を指す。したがって、この用語に包含される温度範囲は非常に広く、通常は約15℃から約30℃を示す。同様に、「試薬適合温度」(RCT)とは、RTに戻った後に、対象試薬が認め得るほどに変化しない温度である。試薬が小さな耐変性ペプチドである場合、そのRCTは、0℃<RCT<100℃である。ある場合には、試薬は、より高い温度で活性を失う可能性があるが、RTに戻ると活性の一部又は全てを回復し、そのような試薬は高RCTを有する。
【0028】
[035]「プロドラッグ」は、例えば血液中の加水分解によって、上式の親化合物に生体内で迅速に変換される化合物を指す。詳細な考察が入手可能である(Higuchi及びStella、1987;Roche、1987)。
【0029】
[036]「医薬品として許容されるプロドラッグ」は、信頼できる医学的な判断の範囲内で、過度の毒性、刺激及びアレルギー応答のない状態でヒト及び下等哺乳動物の組織と接触させて使用するのに適しており、妥当な損益比に相応しく、それらの意図される用途に有効であるプロドラッグ、並びに両性イオン形態を指す。
【0030】
[037]「プロドラッグエステル」は、生理学的条件下で加水分解するいくつかのエステル形成基のいずれかを指す。プロドラッグエステル基の例には、アセチル、エタノイル、ピバロイル、ピバロイルオキシメチル、アセトキシメチル、フタリジル、メトキシメチル及びインダニルなど、並びに天然に存在し又は天然に存在しないアミノ酸の結合から得られるエステル基が含まれる。
【0031】
[038]「治療化合物」は、適切な用量で適切に被験体に投与したときに、被験体に有益な効果をもたらす任意の試薬を意味する。特定の小分子医薬品について述べる場合、その用語には、全ての活性誘導体が含まれる。同様に、治療化合物がタンパク質、リボ核酸(RNA)、又はデオキシリボ核酸(DNA)である場合、全ての活性変異体及び相同分子も含まれる。「治療化合物」、「薬剤」、「薬理学的物質」、「薬理学的実体」、「薬物」などの用語は、同義に使用される。
【0032】
[039]任意の置換基又は変数(例えばアリール、アルコキシ、R、R、R、R、Rなど)が、式中に複数回出現する場合、各出現ごとのそのような変数又は置換基の定義は、他に特に指示しない限り、他の全ての出現における定義とは独立している。本発明の化合物の構成要素における置換基及び/又は変数の組合せは、そのような組合せが安定な化合物をもたらす場合にのみ許容される。
【0033】
[040]R(例えば(H、OR)などの置換基の定義で使用される括弧付きの名称は、関係ある原子の全ての原子価での置換基を反映するものとする。本発明は、特定の異性体に限定するものではなく、括弧内の部分の順序は、特定の構成を示唆しない。
【0034】
[041]「アシルオキシ」は、−OC(O)−(アルキル)及び−OC(O)−(アリール)を意味する。
【0035】
[042]「アルケニル」は、単独で又は組合せにおいて、1つ又は複数の二重結合を有するアルキル基を意味する。そのようなアルケニル基の例には、エテニル、プロペニル、1−ブテニル、cis−2−ブテニル、trans−2−ブテニル、iso−ブチレニル、cis−2−ペンテニル、trans−2−ペンテニル、3−メチル−1−ブテニル、2,3−ジメチル−2−ブテニル、1−ペンテニル、1−ヘキセニル、1−オクテニル、デセニル、ドデセニル、テトラデセニル、ヘキサデセニル、cis−及びtrans−9−オクタデセニル、1,3−ペンタジエニル、2,4−ペンタジエニル、2,3−ペンタジエニル、1,3−ヘキサジエニル、2,4−ヘキサジエニル、5,8,11,14−エイコサテトラエニル及び9,12,15−オクタデカトリエニルが含まれる。
【0036】
[043]「アルコキシ」は、酸素に結合したアルキル基を意味する。
【0037】
[044]「アルキル」は、単独で又は組合せにおいて、1から約22個の炭素原子、約1から約18個の炭素原子、又は1から約12個の炭素原子を含有する直鎖又は分枝鎖アルキル基を意味する。そのような基の例には、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、iso−アミル、ヘキシル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル及びエイコシルが含まれる。
【0038】
[045]「アルキルシクロアルケニル」及び「アルケニルシクロアルケニル」は、上記にて定義されたアルキル又はアルケニル基によって置換される、上記にて定義されたシクロアルケニル基を意味する。アルキルシクロアルケニル及びアルケニルシクロアルケニル基の例には、1−メチル−2−シクロペンチル、1−ヘキシル−2−シクロペンテニル、1−エチル−2−シクロヘキセニル、1−ブチル−2−シクロヘキセニル、1−(9−オクタデセニル)−2−シクロヘキセニル及び1−(2−ペンテニル)−2−シクロヘキセニルが含まれる。
【0039】
[046]「アルキルシクロアルキル」及び「アルケニルシクロアルキル」は、上記にて定義されたアルキル又はアルケニル基によって置換される、上記にて定義されたシクロアルキル基を意味する。アルキルシクロアルキル及びアルケニルシクロアルキル基の例には、2−エチルシクロブチル、1−メチルシクロペンチル、1−ヘキシルシクロペンチル、1−メチルシクロヘキシル、1−(9−オクタデセニル)シクロペンチル及び1−(9−オクタデセニル)シクロヘキシルが含まれる。
[047]「アルキニル」は、単独で又は組合せにおいて、1つ又は複数の三重結合を有するアルキル基を意味する。そのようなアルキニル基の例には、エチニル、プロピニル(プロパルギル)、1−ブチニル、1−オクチニル、9−オクタデシニル、1,3−ペンタジイニル、2,4−ペンタジイニル、1,3−ヘキサジイニル及び2,4−ヘキサジイニルが含まれる。
【0040】
[048]「アミノ」は、−NH、−N(アルキル)2、−NH(アルキル)、−N(アリール)及び−NH(アリール)を意味する。
【0041】
[049]「アラルキル」は、単独で又は組合せにおいて、1個の水素原子がベンジルや2−フェニルエチルなどの上記にて定義されたアリール基により置換される、上記にて定義されたアルキル又はシクロアルキル基を意味する。
【0042】
[050]「アリール」は、単独で又は組合せにおいて、アルキル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アリール、複素環、アルコキシアリール、アルカリール、アルコキシ、ハロゲン、ヒドロキシ、アミン、シアノ、ニトロ、アルキルチオ、フェノキシ、エーテル及びトリフルオロメチルなどから選択された1個又は複数の置換基を任意選択で保持する、フェニル、p−トリル、4−メトキシフェニル、4−(tert−ブトキシ)フェニル、4−フルオロフェニル、4−クロロフェニル、4−ヒドロキシフェニル、1−ナフチル、2−ナフチルなどのフェニル又はナフチル基を意味する。
【0043】
[051]「シクロアルケニル」は、単独で又は組合せにおいて、1つ又は複数の二重結合を有するシクロアルキル基を意味する。シクロアルケニル基の例には、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロオクテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキサジエニル及びシクロオクタジエニルが含まれる。
【0044】
[052]「シクロアルケニルアルキル」は、上記にて定義されたシクロアルケニル基によって置換される、上記にて定義されたアルキル基を意味する。シクロアルケニルアルキル基の例には、2−シクロヘキセン−1−イルメチル、1−シクロペンテン−1−イルメチル、2−(1−シクロヘキセン−1−イル)エチル、3−(1−シクロペンテン−1−イル)プロピル、1−(1−シクロヘキセン−1−イルメチル)ペンチル、1−(1−シクロペンテン−1−イル)ヘキシル、6−(1−シクロヘキセン−1−1−イル)ヘキシル、1−(1−シクロペンテン−1−イル)ノニル及び1−(1−シクロヘキセン−1−イル)ノニルが含まれる。
【0045】
[053]「シクロアルキル」は、単独で又は組合せにおいて、3から約10個、好ましくは3から約8個、最も好ましくは3から約6個の炭素原子を含有するシクロアルキル基を意味する。そのようなシクロアルキル基の例には、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル及びペルヒドロナフチルが含まれる。
【0046】
[054]「シクロアルキルアルキル」は、上記にて定義されたシクロアルキル基によって置換される、上記にて定義されたアルキル基を意味する。シクロアルキルアルキル基の例には、シクロヘキシルメチル、シクロペンチルメチル、(4−イソプロピルシクロヘキシル)メチル、(4−t−ブチル−シクロヘキシル)メチル、3−シクロヘキシルプロピル、2−シクロヘキシルメチルペンチル、3−シクロペンチルメチルヘキシル、1−(4−ネオペンチルシクロヘキシル)メチルヘキシル及び1−(4−イソプロピルシクロヘキシル)メチルヘプチルが含まれる。
【0047】
[055]「シクロアルキルシクロアルキル」は、上記にて定義された別のシクロアルキル基により置換される、上記にて定義されたシクロアルキル基を意味する。シクロアルキルシクロアルキル基の例には、シクロヘキシルシクロペンチル及びシクロヘキシルシクロヘキシルが含まれる。
【0048】
[056]「ハロゲン」には、フルオロ−、クロロ−、ブロモ−及びヨード−が含まれる。
【0049】
[057]「複素環」は、飽和し又は飽和していない、炭素原子とN、O及びSからなる群から独立に選択された1から3個のヘテロ原子とからなる、安定な5から7員単環又は二環、或いは安定な7から10員二環式複素環を含み、但し窒素及び硫黄ヘテロ原子は酸化されていてもよく、窒素ヘテロ原子は4級化されていてもよく、また複素環がベンゼン環に縮合される任意の二環式基を含む。複素環は、安定な構造をもたらす任意のヘテロ原子又は炭素原子に結合することができる。複素環要素の例には、ピペリジル、ピペリジニル、ピペラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、オキサゾリル、フリル及びチエニルが含まれる。複素環は、ヘテロ原子に結合された炭素原子が、ヘテロ原子によって、またC〜Cアルキル、アリール、ヒドロキシル、C〜Cアルコキシル、アシルオキシ、アミノ、N−アシルアミノ、ニトロ及びハロゲンでもよい1から4個のメンバーによって、直接置換されないように置換することができる。
【0050】
[058]「複素環系」は、環の中に、炭素の他にも少なくとも1個のその他の種類の原子を含有する環構造を意味する。最も一般的なその他の種類の原子には、窒素、酸素及び硫黄が含まれる。複素環系の例には、ピロリジニル、ピペリジル、イミダゾリジニル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロチエニル、フリル、チエニル、ピリジル、キノリル、イソキノリル、ピリダジニル、ピラジニル、インドリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、ピリジニル、ベンゾキサジアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、トリアゾリル及びテトラゾリル基が含まれる。
【0051】
[059]「ケトン」は、−C(O)−を意味する。
【0052】
[060]「N−アシルアミノ」は、−NHC(O)−(アルキル)及び−NHC(O)−(アリール)を意味する。
【0053】
[061]「窒素含有複素環」は、環の2個の炭素及び1個の窒素が15員大環状配位子の一部でもある環構造を意味する。環10構造は、約2から約20、又は約4から約10個の炭素原子を含有することができ、置換されていても置換されていなくてもよく、部分的に又は完全に不飽和でも飽和されていてもよく、また、15員大環状配位子の一部ではない環の部分に、窒素、酸素及び/又は硫黄原子を含有することもできる。
【0054】
[062]「飽和、部分飽和、又は不飽和環系」は、環の2個の炭素が15員大環状配位子の一部でもある縮合環構造を意味する。この環構造は、約3から約20個の炭素原子、又は約5から約10個の炭素原子を含有することができ、炭素原子の他に、1個又は複数のその他の種類の原子を含有することもできる。最も一般的なその他の種類の原子には、窒素、酸素及び硫黄が含まれる。環構造は、複数の環を含有することもできる。
【0055】
[063]「飽和、部分飽和、又は不飽和環構造」は、環の1個の炭素が15員大環状配位子の一部でもある環構造を意味する。この環構造は、約3から約20、又は約5から約10個の炭素原子を含有することができ、また、窒素、酸素及び/又は硫黄原子を含有することもできる。
【0056】
[064]
[発明の実施]
[065]本発明の方法では、式Iを有する分子を、式IIを有する分子と反応させる。
【0057】
【化5】

【0058】
式中、Rは、アシルオキシ、アルケニル、アルコキシ、アルキル、アルキルシクロアルケニル、アルキルシクロアルキル、アルケニルシクロアルキル、アルキニル、アミノ、アラルキル、アリール、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルシクロアルキル、ハロゲン、複素環、複素環系、ケトン、N−アシルアミノ、N含有複素環、飽和、部分飽和、又は不飽和環系、飽和、部分飽和、又は不飽和環構造、或いはこれらの組合せを含有するポリマーである。
【0059】
【化6】

【0060】
式中、R、R、R、R、R及びRは、アルキル又はシラノール末端アルキルであり、nは、1〜100の任意の整数である。好ましい実施形態では、R、R、R、R、R及びRはメチル基であり、Rは、式IIIに示される構造を有し、Rへの結合はアスタリスク()によって示され、その結果、式IVによって表される分子が得られる。
【0061】
【化7】

【0062】
式中、w、x、y及びzは、式IIIのポリマーを調製するための供給材料に使用されるモノマーの、モル比を表す。
【0063】
【化8】

【0064】
[066]したがって、最も好ましい実施形態では、本発明はスキーム1に示される反応を包含し、この場合、式Vの分子は式VIの分子と反応して、式VIIのポリマー生成物及び式VIIIの副生成物を生成する。
【0065】
【化9】

【0066】
[067]スキーム1に示される反応のポリマー生成物は、例えば医療機器のコーティングに有用である。さらに、この生成物は、医療機器が後に化合物でコーティングされるように、治療化合物の組込みに用途を見出している。好ましいポリマー/治療化合物の組合せには、ゾタロリムス、ゾタロリムス及びデキサメタゾン、ゾタロリムス及びパクリタキセル、ゾタロリムス及びその他の治療化合物、パクリタキセル及びその他の治療化合物が含まれる。
【0067】
[068]一般に、本発明の方法は、下記の通り実施することができる:ホスホリルコリンポリマーPC1036(Biocompatibles Ltd.、Farnham、Surrey、UK)などの、選択されたシロキサン末端ポリマー(式Iの一般構造により示される)を、ジクロロメタン(DCM)などの適切な溶媒に溶解する。ポリマーを溶解した後、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(HTPDMS;Sigma−Aldrich;Saint Louis、MOから入手可能)などのヒドロキシ末端シロキサン(式IIの一般構造によって示される)を添加する。次いでこの溶液を混合し、次いで表面に、機器に、又はその他の手段に付着させ、硬化させる。PC1036及びHTPDMSの場合、硬化はしばしば、インキュベーション開始から2分以内に明らかになる。好ましい実施形態が本明細書に記述されるが、溶液に反応物質を添加する順序は問題ではない。
【0068】
[069]或いは、反応物質の溶液を形成し、次いで一緒に添加することができる。このように、シロキサン末端ポリマーの溶液を作製し、次いで第2の反応物質、ヒドロキシ末端シロキサンを含有する溶液と混合し、第3の溶液を生成する;この第3の溶液は、例えば、後に選択された物体をコーティングするのに使用される。
【0069】
[070]ポリマーへの治療化合物の組込み
[071]本発明の利点により、通常なら重合条件(例えば、熱限界、γ線照射がなされた)に対して感受性があると考えられる治療化合物を、ポリマーに組み込むことができる。そのような組込みは、架橋度を制御することができ、即ち治療薬の放出速度に影響を及ぼすので、有利である。この最も単純な形では、治療薬を、反応が進行するときに反応混合物に添加し、又は混合前に反応物質の別の溶液が調製される場合には、反応物質の混合物の1種又は複数に添加し、又は重合中に添加される第3の溶液として添加する。
【0070】
[072]医療機器及び治療化合物含有ポリマー(TCCP)
[073]本発明のポリマーを生成する方法は穏やかであるので、これらの方法は、ポリマーがコーティングされた、又はポリマーの機器を介して送達するための治療化合物を組み込むのに極めて有用である。
【0071】
[074]例えば、重合反応に組み込まれた化合物は、ステントなどの医療機器に付着させることができる。ステントのポリマーコーティングへの化合物の組込みは、ポリマー溶液中に化合物を含有する溶液に、ステントを十分な時間(例えば5分間など)浸漬し、次いでコーティングされたステントを、好ましくは空気によって十分な時間(例えば30分間など)乾燥することにより、実施することができる。噴霧など、TCCP溶液を付着させるその他の方法を、使用することができる。ステントの他に、移植片、カテーテル及びバルーン、又はその他の介入的機器を含めたその他の機器を使用して、本発明のポリマーと共に投入された治療化合物を導入することができる。場合によっては、治療化合物は、ポリマー溶液の前又は後に機器に付着されるが、同時コーティングが好ましい。
【0072】
[075]治療化合物
[076]ポリマーコーティング付きステントは、ほとんど全ての試薬でコーティングすることができる。例として、本発明をどのようにも限定するものではないが、本発明のポリマーで又は本発明の方法によりコーティングされたステントは、再狭窄、即ち元々の狭窄病変を修復した後に血管が再び細くなる現象の治療に、使用することができる。
【0073】
[077]医療機器がステントであり、治療がなされる状態が再狭窄である場合、本発明のポリマーに組み込むことができる治療化合物は、再狭窄の予防を助けるものである。特に有用な治療化合物は、好ましくは、Mollison他(Mollison、2000)によって発見されたようなシロリムス(ラパマイシン)のテトラゾール含有類似体である。
【0074】
[078]一般に、これらの化合物は、抗増殖薬、抗血小板薬、抗炎症薬、抗血栓薬、血栓溶解薬及び当技術分野で知られているその他の薬剤の種類に分類することができる。これらの種類は、さらに細分することができる。例えば抗増殖薬は、抗有糸分裂薬にすることができる。抗有糸分裂薬は、細胞分裂を阻害し又は細胞分裂に影響を及ぼし、通常は細胞分裂に関与するプロセスが生じない。抗有糸分裂薬の1つのサブクラスには、ビンカアルカロイドが含まれる。ビンカアルカロイドの代表的な例には、ビンクリスチン、パクリタキセル、エトポシド、ノコダゾール、インジルビン及びアントラサイクリン誘導体、例えばダウノルビシン、ダウノマイシン及びプリカマイシンなどが含まれる。抗有糸分裂薬のその他のサブクラスには、例えばタウロムスチン、ボフムスチン及びホテムスチンなどの抗有糸分裂アルキル化剤と、例えばメトトレキセート、フルオロウラシル、5−ブロモデオキシウリジン、6−アザシチジン及びシタラビンなどの抗有糸分裂代謝物が含まれる。抗有糸分裂アルキル化剤は、DNA、RNA、又はタンパク質を共有結合的に修飾することによって細胞分裂に影響を及ぼし、それによって、DNA複製、RNA転写、RNA翻訳、タンパク質合成、又は前述の組合せを阻害する。
【0075】
[079]非常に好ましい抗有糸分裂薬は、パクリタキセルである。パクリタキセルには、アルカロイドそのもの及び天然に生ずる形及び誘導体、並びに合成及び半合成の形が含まれる。
【0076】
[080]抗血小板薬は、(1)表面、典型的には血栓形成性の表面への血小板の接着を阻害すること、(2)血小板の凝集を阻害すること、(3)血小板の活性化を阻害すること、又は(4)これらの働きの組合せによって働く。血小板接着の阻害薬として働く抗血小板薬には、エプチフィバチド、チロフィバン、gpIIbIIIa又はαvβ3との結合を阻害するRGD(Arg−Gly−Asp)をベースにしたペプチド、gpIIaIIIb又はαvβ3との結合を遮断する抗体、抗P−セレクチン抗体、抗E−セレクチン抗体、P−セレクチン又はE−セレクチンとそのそれぞれの配位子との結合を遮断するペプチド、サラチン及び抗フォンウィルブランド因子抗体が含まれる。ADP媒介性血小板凝集を阻害する薬剤には、ジサグレギン及びシロスタゾールが含まれる。
【0077】
[081]抗炎症薬も使用することができる。その例には、プレドニゾン、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、エストラジオール及びアセトアミノフェンやイブプロフェン、ナプロキセン、フルチカゾン、クロベタゾール、アダリムマブ、スリンダクなどの非ステロイド系抗炎症薬が含まれる。その他の抗炎症薬は、サイトカイン又はケモカインと同族受容体との結合を阻害する。これらの例には、抗インターロイキン(IL)−1、抗IL2、抗IL3、抗IL4、抗IL8、抗IL15、抗MCP1、抗GM−CSF及び抗TNF抗体が含まれる。
【0078】
[082]抗血栓薬には、凝固経路の任意の段階で介入することができる、化学及び生物剤が含まれる。その例には、第Xa因子の活性を阻害する小分子が含まれる。さらに、FXa及びトロンビンの両方を直接又は間接的に阻害することができるヘパリノイド型薬剤は、例えば、ヘパリン、ヘパラン硫酸、低分子量ヘパリン、例えばClivarin(登録商標)など及び合成オリゴ糖、例えばArixtra(登録商標)などである。メラガトラン、キシメラガトラン、アルガトロバン、イノガトラン及びトロンビンに関するPhe−Pro−Argフィブリノゲン基質の結合部位のペプチド模倣体など、直接的なトロンビン阻害薬も含まれる。送達することができる別の種類の抗血栓薬は、第VII/VIIa因子阻害薬であり、例えば、抗第VII/VIIa因子抗体、rNAPc2及び組織因子経路阻害薬(TFPI)である。
【0079】
[083]血栓溶解薬は、血栓(血餅)の分解を助け、また血餅の溶解によって、血栓のフィブリンマトリックス内に捕捉された血小板の分散を助けるので、補助薬として使用することもできる。血栓溶解薬の代表的な例には、ウロキナーゼ又は組換えウロキナーゼ、プロウロキナーゼ又は組換えプロウロキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子又はその組換え体及びストレプトキナーゼが含まれる。
[084]本発明で使用することができるその他の治療化合物には、形質転換成長因子(TGF)を含めたアポトーシス誘導剤などの細胞傷害性薬剤、10−ヒドロキシカンプトテシン、イリノテカン及びドキソルビシンなどのトポイソメラーゼ阻害薬が含まれる。細胞の脱分化を阻害する薬物及び細胞分裂阻害薬も、使用することができる。
【0080】
[085]再狭窄予防の治療に有用なその他の薬剤には、例えばフェノビブレートなどの抗高脂血薬(anti−lipaedemic agents)、例えばバチミスタットなどのマトリックスメタロプロテイナーゼ阻害薬、例えばダルセンタンなどのエンドテリン−A受容体の拮抗薬及びαvβ3インテグリン受容体の拮抗薬が含まれる。
【0081】
[086]互いに組み合わされるそのような薬剤の1種又は複数は、本発明によるポリマーから送達することができる。
【0082】
[087]治療化合物及び本発明のポリマーを送達するためにステント又はその他の医療機器を使用して治療することができる、その他の状態には、虚血性腸疾患、炎症性腸疾患、壊死性腸炎、腸炎症/アレルギー、例えば小児脂肪便症、直腸炎、好酸球性胃腸炎、肥満細胞症、クローン病及び潰瘍性大腸炎など;多発性筋炎、ギラン−バレー症候群、メニエール病、多発性神経炎(polyneuritis)、多発性神経炎(multiple neuritis)、単発神経炎及び神経根障害などの神経疾患;甲状腺機能亢進症及びバセドー病などの内分泌性疾患;純赤血球無形成症、再生不良性貧血(aplastic anemia)、形成不全性貧血(hypoplastic anemia)、特発性血小板減少性紫斑病、自己免疫性溶血性貧血、無顆粒球症、悪性貧血、巨赤芽球性貧血及び赤血球形成不全などの血液性疾患;骨粗しょう症などの骨疾患;サルコイドーシス、肺線維症及び特発性間質性肺炎などの呼吸器疾患;皮膚筋炎、尋常性白斑、尋常性魚鱗癬、光アレルギー過敏症及び皮膚T細胞リンパ腫などの皮膚疾患;動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、大動脈炎症候群、結節性多発性動脈炎及び心筋症などの循環器疾患;強皮症、ウェグナー肉芽腫及びシェーグレン症候群などのコラーゲン疾患;脂肪過多;好酸球性筋膜炎;歯肉、歯根膜、歯槽骨及び歯のセメント質の病変などの歯周病;糸球体腎炎などのネフローゼ症候群;脱毛の予防、又は発毛の提供及び/又は発毛の促進及び毛の成長による、男性型脱毛症又は老人性脱毛症;筋ジストロフィー;膿皮症及びセザリー症候群;アジソン病;活性酸素媒介性疾患、例えば、保存、移植、又は虚血性疾患(例えば血栓症及び心筋梗塞)によって生ずる臓器(心臓、肝臓、腎臓及び消化管など)の虚血性再灌流傷害などの臓器障害など;エンドトキシンショック、偽膜性大腸炎及び薬物又は放射線によって引き起こされる大腸炎などの腸疾患;虚血性急性腎不全及び慢性腎不全などの腎疾患;肺−酸素又は薬物(パラコート及びブレオマイシン)によって引き起こされる中毒症、肺癌及び肺気腫などの肺疾患;白内障、シデローシス、網膜炎、網膜色素変性症、老年斑点性変性、硝子体瘢痕化及び角膜アルカリ火傷などの眼疾患;多形性紅斑、線状IgA水疱性皮膚症(linear IgA ballous dermatitis)及びセメント皮膚炎などの皮膚炎;歯肉炎、歯周炎、敗血症、膵炎、環境汚染(例えば空気汚染)によって引き起こされる疾患、老化、発癌、癌の転移及び高山病などのその他の疾患;ヒスタミン又はロイコトリエン−C放出によって引き起こされる疾患;腸、血管、又は神経性ベーチェット病、及び口腔、皮膚、眼、外陰部、関節、精巣上体、肺、腎臓などに影響を及ぼすベーチェット病が含まれる。さらに、本発明の化合物は、免疫原性疾患(例えば、自己免疫性肝炎、原発性胆汁性肝硬変及び硬化性胆管炎などの慢性自己免疫性肝疾患)、部分肝臓切除、急性肝壊死(例えば、毒素、ウイルス性肝炎、ショック、又は無酸素症によって引き起こされる壊死)、B型ウイルス肝炎、非A型/非B型肝炎、肝硬変(アルコール性肝硬変)、劇症肝不全、遅発性肝不全及び「慢性型急性憎悪(accute−on−chronic)」肝不全(慢性肝疾患における急性肝不全)のような肝不全などの肝疾患の治療及び予防に有用であり、さらに本発明の化合物は、化学療法の効果を増強するなどの有用な働きがあるので、様々な疾患、即ち、サイトメガロウイルス感染、特にHCMV感染、抗炎症活性、ネフローゼ、強皮症、肺線維症、動脈硬化症、うっ血性心不全、心室肥大、術後癒着及び瘢痕化、卒中、心筋梗塞、虚血及び再灌流に伴う損傷などの、硬化性及び線維性疾患に有用である。
【0083】
[088]さらに、FK−506拮抗特性を有する化合物を使用することができる。これらの化合物は、免疫抑制、又は免疫抑制に関わる障害の治療に使用することができる。免疫抑制に関わる障害の例には、後天性免疫不全症候群、癌、真菌感染、老人性痴呆、外傷(創傷治癒、手術及びショックを含む)、慢性細菌感染及び中枢神経系障害が含まれる。
【0084】
[089]治療上有効な量の治療化合物は、純粋な形で、又は医薬品として許容される塩、エステル、若しくはプロドラッグの形で投与することができる。或いはこの化合物は、1種又は複数の医薬品として許容される賦形剤又はその他の有益な薬剤と組み合わせて、問題の化合物を含有する医薬品組成物として投与される。医薬品物質の「治療上有効な量」は、任意の薬物治療に適用可能な妥当な損益比にある、障害を治療する物質の十分な量を意味する。しかし、化合物の1日当りの総使用量及び本発明のポリマーに組み込まれている化合物を投与する方法は、医師など、適切な医学的判断を有するものによって決定されることが理解されよう。任意の特定の患者に関する、特定の治療上有効な用量レベルは、治療がなされる障害及び障害の重症度、用いられる特定の化合物の活性、用いられる特定の組成物、患者の年齢、体重、全体的な健康、性別及び食事、用いられる特定の化合物の投与時間、投与経路及び排泄率、治療の持続期間、用いられる特定の化合物と組み合わせて又は同時に使用される薬物、医療分野で周知の同様の要因を含めた様々な要因に左右される。
【0085】
[090]被験体に投与される薬理学的物質の1日当りの総用量は、一般に約0.01から約10mg/kg/日に及ぶ。ステントからの日用量は、ステントの長さ及びポリマーの架橋度にいくぶん左右される。例えば15mmの冠状動脈ステントは、約1から約120μgに及ぶ量の薬物を含有することができ、その薬物を、数時間から数週間以内に、又はそれ以上で送達することができる。望むなら、有効な日用量を複数回分に分けることができ、その結果として、単回用量組成物は、日用量を構成するような量又は分割量を含有する。
【0086】
[091]治療化合物及びポリマー
[092]ポリマーに何を選択するかは、1つには、ポリマーに組み込むことが望まれる治療化合物又は薬剤に左右され、即ち薬物は、実質的に可溶性である。コーティングの目的は、治療化合物の制御放出ビヒクルとして、又は、機器移植部位から離れた病変部位に若しくは全身に送達される治療化合物のリザーバとして、働くことである。コーティングは、ポリマーにすることができ、さらに親水性、疎水性、生分解性、又は非生分解性にすることができる。本発明の方法によって形成されたポリマーが少なくとも1個のシロキサン基で終わることを条件に、このポリマーは、部分的に、ポリカルボン酸、セルロース系ポリマー、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、無水マレイン酸ポリマー、ポリアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキシド、グリコサミノグリカン、多糖、ポリエステル、ポリウレタン、シリコーン、ポリオルトエステル、ポリ酸無水物(polyanhydrides)、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシブチレートバレレート、ポリアクリルアミド、ポリエーテル、これらの混合物及びコポリマーにすることができる。これらのポリマーは、当業者に知られている方法を使用して、少なくとも1個のシロキサン基で終わるように修飾することができる。ポリウレタン分散液(BAYHYDROLなど)及びアクリル酸ラテックス分散液などのポリマー分散液から調製されたコーティングも、使用することができる。
【0087】
[093]本発明で使用することができる生分解性ポリマーには、ポリ(L−乳酸)、ポリ(DL−乳酸)、ポリカプロラクトン、ポリ(ヒドロキシブチレート)、ポリグリコリド、ポリ(ジオキサノン)、ポリ(ヒドロキシバレレート)、ポリオルトエステルなどのポリマー;ポリ(ラクチド−co−グリコリド)、ポリヒドロキシ(ブチレート−co−バレレート)、ポリグリコリド−co−トリメチレンカーボネートなどのコポリマー;ポリ酸無水物;ポリホスホエステル;ポリホスホエステル−ウレタン;ポリアミノ酸;ポリシアノアクリレート;フィブリン、フィブリノゲン、セルロース、デンプン、コラーゲン及びヒアルロン酸などの生体分子;及びこれらの混合物が含まれる。少なくとも1個のシロキサン基で終わらないものは、当業者に知られている方法によって修飾することができる。
【0088】
[094]やはり適切な生物学的安定性のある材料には、ポリウレタン、シリコーン、ポリエステル、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリカプロラクタム、ポリイミド、ポリ塩化ビニル、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアルコール、アクリル系ポリマー及びコポリマー、ポリアクリロニトリル、ビニルモノマーとオレフィンとのポリスチレンコポリマー(スチレンアクリロニトリルコポリマー、エチレンメチルメタクリレートコポリマー、エチレンビニルアセテートなど)、ポリエーテル、レーヨン、セルロース誘導体(酢酸セルロース、硝酸セルロース、プロピオン酸セルロースなど)、パリレン及びその誘導体;これらの混合物及びコポリマーなどのポリマーが含まれる。少なくとも1個のシロキサン基で終わらないものは、当業者に知られている方法によって修飾することができる。
【0089】
[095]医薬品組成物
[096]本発明のポリマーは、必要なら医薬品として許容される担体又はレシピエントと共に、治療化合物を投与するのに使用することができる。これらは、経口、直腸、非経口、大槽内、膣内、腹腔内、局所(粉末、軟膏、ドロップ、又は経皮パッチなどによって)、頬側、口又は鼻スプレーとして、又は脈管構造内に留置されたステント内のように、局所的に投与することができる。「医薬品として許容される担体」は、無毒性の固体、半固体、又は液体の充填剤、希釈剤、封入材料、又は任意のタイプの配合助剤を意味する。「非経口」は、静脈内、動脈内、筋肉内、腹腔内、胸骨内、皮下及び関節内注射、輸液及び例えば脈管構造内での留置を含む投与形態を指す。
【0090】
[097]非経口注射のための本発明の医薬品組成物は、医薬品として許容される滅菌水溶液又は非水溶液、分散液、懸濁液、又はエマルジョン、並びに使用直前に滅菌注射液又は分散液に溶かして元に戻すための滅菌粉末を含む。適切な水性及び非水性担体、希釈液、溶媒、又はビヒクルの例には、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール及びポリエチレングリコールなど)、カルボキシメチルセルロース及びこれらの適切な混合物、植物油(オリーブ油など)及びオレイン酸エチルなどの注射用有機エステルが含まれる。適正な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材料を使用することによって、また分散液の場合には必要とされる粒度を維持することによって、また界面活性剤を使用することによって、維持することができる。
【0091】
[098]これらの組成物は、保存剤、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などの補助剤を含有してもよい。微生物の活動の防止は、様々な抗菌及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール及びフェノールソルビン酸などを含むことによって、確実にすることができる。糖及び塩化ナトリウムなどの等張剤を含めることができる。注射用医薬品形態の長期吸収は、モノステアリン酸アルミニウムやゼラチンなどの、吸収を遅延させる薬剤を含めることによって引き起こすことができる。
【0092】
[099]場合によっては、薬物の効果を延ばすために、例えば皮下又は筋肉内注射からの薬物の吸収を遅くすることが望ましい。これは、水溶性に乏しい結晶質又は非晶質材料の液体懸濁剤を使用して実現することができる。次いで薬物の吸収速度は、結晶サイズ及び結晶形態に左右されると考えられるその溶解速度に左右される。或いは、非経口的に投与された薬物形態の遅延吸収は、薬物を油性ビヒクルに溶解し又は懸濁することによって実現される。
【0093】
[0100]注射可能な形は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生分解性ポリマー中に薬物のマイクロカプセル化マトリックスを形成することによって、作製することができる。薬物とポリマーとの比及び使用される特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出速度を制御することができる。蓄積注射用製剤(depot injectable formulations)は、身体組織に適合するリポソーム又はマイクロエマルジョンに薬物を閉じ込めることによっても調製される。
【0094】
[0101]注射用製剤は、例えば、細菌保持フィルターに通して濾過することにより、又は、使用直前に滅菌水若しくはその他の滅菌注射用媒体に溶解し若しくは分散させることができる滅菌固体組成物の形に、滅菌剤を組み込むことにより、滅菌することができる。
【0095】
[0102]活性化合物は、適切な場合、上述の賦形剤の1種又は複数と共にマイクロカプセル化された形にすることもできる。
【0096】
[0103]医療機器表面のポリマー層及び治療化合物
[0104]適切な、薬物が投入されたポリマー層の提供には、かなりの柔軟性がある。例えば、問題の薬物に関連した治療域パラメーター(一般に、治療上有効なレベルと毒性レベルとの間)内で、組み合わせて使用される薬物の比を、互いに対して変化させることができる。例えば一実施形態は、90:10の全薬物:ポリマー比を有し、組合せにおける薬物の比は、1:1にすることができる。薬物の総量の上限は、選択されたポリマーにおける選択された薬物の混和性、薬物/ポリマー混合物の安定性、例えば滅菌との適合性及び混合物の物理的性質、例えば流動性/加工性、弾性、脆性、粘度(ステントの支柱の間でウェブを作らず又は架橋しない)、ステントのプロファイルを実質的に増大させ、又は層間剥離若しくは亀裂を引き起こし、又は皺が寄りにくいコーティングの厚さを含めたいくつかの要因に左右されることになる。
【0097】
[0105]上塗りの厚さ(上塗りが使用される場合)は、望ましくは、薬物の放出動態を過度に妨げないものであるべきである。
【0098】
[0106]実施例
[0107]下記の実施例は、シロキサン末端ポリマーに関する室温硬化の概念を示す。これらの実施例では、薬物の添加を含む本発明の方法を例示するために、ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンと組み合わせてホスホリルコリンポリマーを使用する。
【0099】
[0108]実施例1 ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンを有するホスホリルコリンポリマーの室温硬化
[0109]この実施例では、ホスホリルコリンポリマーを溶媒に溶解し、次いでヒドロキシ末端シロキサンと反応させた。混合後、溶液を室温でインキュベートし、空気に曝した。
【0100】
[0110]40mlのシンチレーションバイアルに、ホスホリルコリンポリマーPC1036(Biocompatibles Ltd.、Farnham、Surrey、UK)を1.004g添加し、その後、10mlのジクロロメタン(DCM)を添加した。この混合物を、ボルテックスを使用して混合し、ポリマーが完全に溶解するまで(約20分)かき混ぜた。この溶液に、0.012gのヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン(HTPDMS;Sigma−Aldrich;Saint Louis、MOから入手可能)を添加した。この混合物を、ボルテックスを使用して混合し、HTPDMSが溶解するまでかき混ぜた。澄んだ無色透明の溶液を、アルミニウムの秤量皿に注ぎ、硬化させ、空気に曝した。溶液表面の薄くて丈夫なフィルム(「スキンオーバー」)が、2分以内で現れた。
【0101】
[0111]実施例2:ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンを有するホスホリルコリンポリマーの室温硬化
[0112]この実施例は、反応物質の順序を変更したこと以外、実施例1と同様であり、即ち、ヒドロキシ末端シロキサンを最初に溶液に添加し、その後、ホスホリルコリンポリマーを添加した。
【0102】
[0113]40mlのシンチレーションバイアルに、0.290gのHTPDMSを添加し、その後、10mlのDCMを添加した。この混合物を、ボルテックスを用いて混合し、HTPDMSが完全に溶解するまでかき混ぜた。この溶液に、1.000gのPC1036を添加した。混合物を、ボルテックスを用いて混合し、ポリマーが完全に溶解するまで(約20〜30分)かき混ぜた。濁った溶液をアルミニウムの秤量皿に注ぎ、硬化させ、空気に曝した。スキンオーバーが2分以内に観察された。
【0103】
[0114]実施例3 ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンを有するホスホリルコリンポリマーの室温硬化
[0115]この実施例では、PC1036のみ含有する第1の溶液を混合し、HTPDMSのみ含有する第2の溶液を作製し、次いでこれら2種類の溶液を混合した直後に、得られた溶液に浸漬することによって機器をコーティングした。次いで機器表面のコーティングを、目視検査からも明らかなように硬化した。
【0104】
[0116]溶液A:40mlのシンチレーションバイアルに、1.011gのPC1036を添加し、その後、5mlのDCMを添加した。この混合物を、ボルテックスを使用して混合し、PC1036が完全に溶解するまで約2時間かき混ぜた。
【0105】
[0117]溶液B:40mlのシンチレーションバイアルに、0.157gのHTPDMSを添加し、その後、5mlのDCMを添加した。この混合物を、ボルテックスを使用して混合し、ポリマーが完全に溶解するまで約2〜3分間かき混ぜた。
【0106】
[0118]溶液Bの内容物を溶液Aに注ぎ、その混合物を、ボルテックスを使用して撹拌し、かき混ぜ、コーティング溶液である溶液Cを生成した。
【0107】
[0119]エタノールで濯いだ直径1cmのステンレス鋼クーポンを、止血鉗子に取着し、溶液Cに5秒間浸漬し、クーポンの最上部が溶液で完全に覆われるようにした。空気に曝した後、1分以内で硬化したことが明白であった。
【0108】
[0120]溶液の残りをアルミニウムの秤量皿に注ぎ、硬化させ、空気に曝した。スキンオーバーが2分以内で明らかになった。
【0109】
[0121]実施例4 ヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサンを有するホスホリルコリンポリマーの室温硬化及び薬物の添加
[0122]この実施例では、HTPDMS及び薬物であるデキサメタゾンを有するPC1036ポリマーの室温硬化を行った。
【0110】
[0123]40mlのシンチレーションバイアルに、1.00685gのPC1036ポリマーを添加し、その後、10mlのDCMを添加した。この混合物を、ポリマーが完全に溶解するまで約2時間、周期的にかき混ぜた。ポリマーが溶解した後、5.83gのデキサメタゾンを添加した。この混合物を、薬物が溶解するまでかき混ぜた。透明な溶液からわかるように、溶解したら、0.176gのHTPDMSを添加し、この混合物を激しくかき混ぜた。得られた溶液の約3mlを、アルミニウムの秤量皿に注ぎ、室温で空気に曝した。得られた溶液を、新たなアルミニウムの秤量皿に注ぎ、室温で空気に曝した。どちらの場合も、スキンオーバーが2分以内に観察された。
【0111】
[0124]参考文献
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Roche, E. 1987. Bioreversible Carriers in Drug Design. American Pharmaceutical Association and Pergamon Press.
【0112】
[図面の簡単な説明]
適用なし。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の治療化合物及び式IVの分子を含む組成物を調製する方法であって、
【化1】


式Iの分子と、
【化2】


式IIの分子と、
【化3】


治療化合物とを反応させるステップを含み、
式中、Rは、アシルオキシ、アルケニル、アルコキシル、アルキル、アルキルシクロアルケニル、アルキルシクロアルキル、アルケニルシクロアルキル、アルキニル、アミノ、アラルキル、アリール、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルシクロアルキル、ハロゲン、複素環、複素環系、ケトン、N−アシルアミノ、N含有複素環、飽和環系、部分飽和環系、不飽和環系、飽和環構造、部分飽和環構造、不飽和環構造及びこれらの組合せからなる群から選択された少なくとも1種を含有するポリマーを含み、
、R、R、R、R及びRは、アルキル又はシラノール末端アルキルであり、
nは、1≦n≦100の整数であり、
前記反応は、前記治療化合物に適合した温度で実施される方法。
【請求項2】
前記反応が実施される温度Tが、4℃≦T≦100℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
15℃≦T≦30℃である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
20℃≦T≦22℃である、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
、R、R、R、R及びRがメチル基であり、
が、式IIIに示される構造を有し、Rに関する結合がアスタリスク()によって示され、
【化4】


式中、w、x、y及びzは、式IIIのポリマーを調製するための供給材料で使用されるモノマーのモル比を表す、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記治療化合物が、シロリムス、シロリムスの誘導体、シロリムス類似体並びにこれらの誘導体、エステル及び塩からなる群から選択された1種である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記治療化合物がゾタロリムスを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記治療化合物が、抗増殖薬、抗血小板薬、抗炎症薬、抗血栓薬及び血栓溶解薬からなる群から選択された1種を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記抗炎症薬が、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、エストラジオール、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、フルチカゾン、クロベタゾール、アダリムマブ及びスリンダクからなる群から選択された1種である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記治療化合物が抗体を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記治療化合物がデキサメタゾンを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記ポリマーを医療機器に付着させるステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記医療機器がステントを含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
少なくとも2種の治療化合物を含み、第1の化合物がゾタロリムス又はパクリタキセルを含み、第2の化合物が、抗増殖薬、抗血小板薬、抗炎症薬、抗血栓薬及び血栓溶解薬からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項15】
式IVの分子を調製する方法であって、
【化5】


式Iの分子と、
【化6】


式IIの分子とを反応させるステップを含み、
【化7】


式中、Rは、アシルオキシ、アルケニル、アルコキシル、アルキル、アルキルシクロアルケニル、アルキルシクロアルキル、アルケニルシクロアルキル、アルキニル、アミノ、アラルキル、アリール、シクロアルケニル、シクロアルケニルアルキル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、シクロアルキルシクロアルキル、ハロゲン、複素環、複素環系、ケトン、N−アシルアミノ、N含有複素環、飽和環系、部分飽和環系、不飽和環系、飽和環構造、部分飽和環構造、不飽和環構造及びこれらの組合せからなる群から選択された少なくとも1種を含有するポリマーを含み、
、R、R、R、R及びRは、アルキル又はシラノール末端アルキルであり、
nは、1≦n≦100の整数であり、
前記反応は、室温で実施される方法。
【請求項16】
前記反応が実施される温度Tが、15℃≦T≦30℃である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
20℃≦T≦22℃である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
、R、R、R、R及びRがメチル基であり、
が、式IIIに示される構造を有し、Rに関する結合がアスタリスク()によって示され、
【化8】


式中、w、x、y及びzは、式IIIのポリマーを調製するための供給材料で使用されるモノマーのモル比を表す、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリマーを医療機器に付着させるステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記医療機器がステントを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記ポリマーを付着させる前又は後に、治療化合物を前記医療機器に付着させるステップをさらに含む、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
少なくとも1種の治療化合物及び式IXの分子を含む組成物を調製する方法であって、
【化9】


式Vの分子と、
【化10】


式IIの分子と、
【化11】


治療化合物とを反応させるステップを含み、
式中、nは、1≦n≦100の整数であり、
、R、R、R、R及びRは、アルキル又はアルキル末端シラノールであり、
前記反応は、前記治療化合物に適合した温度で実施される方法。
【請求項23】
前記反応が実施される温度Tが、4℃≦T≦100℃である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
15℃≦T≦30℃である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
20℃≦T≦22℃である、請求項22に記載の方法。
【請求項26】
前記治療化合物が、シロリムス、シロリムスの誘導体、シロリムス類似体並びにこれらの誘導体、エステル及び塩からなる群から選択された1種である、請求項22に記載の方法。
【請求項27】
前記治療化合物がゾタロリムスを含む、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記治療化合物が、抗増殖薬、抗血小板薬、抗炎症薬、抗血栓薬及び血栓溶解薬からなる群から選択された1種を含む、請求項22に記載の方法。
【請求項29】
前記抗炎症薬が、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、エストラジオール、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、フルチカゾン、クロベタゾール、アダリムマ
ブ及びスリンダクからなる群から選択された1種である、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記治療化合物が抗体を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項31】
前記治療化合物がデキサメタゾンを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
前記ポリマーを医療機器に付着させるステップをさらに含む、請求項22に記載の方法。
【請求項33】
前記医療機器がステントを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
少なくとも2種の治療化合物を含み、第1の化合物がゾタロリムス又はパクリタキセルを含み、第2の化合物が、抗増殖薬、抗血小板薬、抗炎症薬、抗血栓薬及び血栓溶解薬からなる群から選択される、請求項22に記載の方法。
【請求項35】
、R、R、R、R及びRがメチル基である、請求項22に記載の方法。
【請求項36】
少なくとも1種の治療化合物及び式VIIの分子を含む組成物を調製する方法であって、
【化12】


式Vの分子と、
【化13】


式VIの分子と、
【化14】


治療化合物とを反応させるステップを含み、
式中、nは、1≦n≦100の整数であり、
w、x、y及びzは、式IIIのポリマーを調製するための供給材料で使用されるモノマーのモル比を表し、
前記反応は、前記治療化合物に適合した温度で実施される方法。
【請求項37】
前記反応が実施される温度Tが、4℃≦T≦100℃である、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
15℃≦T≦30℃である、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
20℃≦T≦22℃である、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記治療化合物が、シロリムス、シロリムスの誘導体、シロリムス類似体並びにこれらの誘導体、エステル及び塩である、請求項36に記載の方法。
【請求項41】
前記治療化合物がゾタロリムスを含む、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記治療化合物が、抗増殖薬、抗血小板薬、抗炎症薬、抗血栓薬及び血栓溶解薬からなる群から選択された1種を含む、請求項36に記載の方法。
【請求項43】
前記抗炎症薬が、デキサメタゾン、ヒドロコルチゾン、エストラジオール、アセトアミノフェン、イブプロフェン、ナプロキセン、フルチカゾン、クロベタゾール、アダリムマブ及びスリンダクからなる群から選択された1種である、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記治療化合物が抗体を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項45】
前記治療化合物がデキサメタゾンを含む、請求項42に記載の方法。
【請求項46】
前記ポリマーを医療機器に付着させるステップをさらに含む、請求項36に記載の方法。
【請求項47】
前記医療機器がステントを含む、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
請求項1、15、22又は36のいずれかによって作製された組成物。
【請求項49】
請求項1、15、22又は36のいずれかによって作製された組成物を含む医療機器。
【請求項50】
請求項1、15、22又は36のいずれかによって作製された組成物を含むステント。

【公表番号】特表2009−521489(P2009−521489A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−547691(P2008−547691)
【出願日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際出願番号】PCT/US2006/062066
【国際公開番号】WO2007/076288
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(507316642)アボット ラボラトリーズ (18)
【Fターム(参考)】