説明

容器用把手・把手付容器及びその製造方法

【課題】断面形状がほぼ四角形で保管性に優れ、ブロー成形性が良好であり、容器及び把
手に種々の不具合を生ずることがなく、その上落下衝撃に対しても充分な強度を有する容
器を提供出来る容器用把手、把手付容器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】上部から順次口部、肩部、胴部及び底部で構成し、この胴部の一部に凹部を
設けると共に、この凹部に把手取付用凸部を設けたポリエステル製の容器と、この容器の
把手取付用凸部に取り付けるポリエステル製の把手とからなり、凹部における把手取付用
凸部回りの壁面と把手との間に空隙部を設けてなるものであり、胴部の横断面形状はほぼ
四角形であり、凹部は胴部の上半部の角部にあると共に、把手取付用凸部は上半部の対角
線L上の凹部に位置している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、お茶などの液体を充填することが出来る把手付容器、とくに高温状態の液体
を容器の変形を伴わずに充填することができる把手付耐熱容器およびその製造方法に関す
るものであって、より詳しくは、胴部の横断面形状をほぼ四角形にし、凹部における把手
取付用凸部回りの壁面と把手との間に空隙部を設けることにより、ブロー成形性が良好と
なり、そのため容器及び把手に割れ、ひび、皺、変形及び不適切な延伸による肉厚の不均
衡などの不具合を生ずることがない、把手付容器及びその製造方法に関する。
また、本発明は、上記容器に好適に使用出来る容器用把手にも関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック容器は、お茶などの飲料、酒類、調味料などを収容する1.5L、2.0
L以上の大型のものに把手があることにより使い勝手がよく広く使用されている。一方、
この把手付容器は、性能面及びコスト面から、容器の材質がポリエチレンテレフタレート
などのポリエステル製であり、把手の材質はポリプロピレン製であることが多い。
把手付きプラスチック製容器の例としては、下記に示すものが知られている。
【0003】
【特許文献1】特開2000−255580号
【特許文献2】特開2000−43877号
【0004】
特許文献1のものは、リサイクル性の面から、把手の材質も容器の材質と同じポリエス
テル製としたものであり、図9、10に示すように、上部から順次口部a、肩部b、胴部
c及び底部dで構成し、この胴部cの一部に凹部eを設けると共にこの凹部eに把手取付
用凸部fを設けたポリエステル製の容器gと、この容器gの把手取付用凸部fに取り付け
るポリエステル製の把手hとからなり、凹部eにおける把手取付用凸部f回りの壁面iと
把手hとの間に空隙部jを設けてなるものである。その結果、空隙部jを設けた分、把手
取付用凸部f回りの壁面iと把手hとの摩擦抵抗が減り、ブロー成形性が向上し、凹部d
の擦り傷、溶融傷、白化、あるいは凹部dや底部dの肉厚不良が解消されて、良好な把手
付容器が得られる。
【0005】
また特許文献2の把手付耐熱容器は、図11に示すように、ポリエステル製の容器g上
部の胴部cに別体の把手hをインサート成形し、把手hを取り付けた上部の胴部cの横断
面形状は円形に成形して、減圧吸収パネルkを形成した下部の胴部cの横断面形状は四角
形状に成形してなり、更に、把手hのアンダーカット部を包み込む胴部cの壁面をヒート
セットすると共に、減圧吸収パネルkの面積と口部aのネックリングより下の表面積との
割合が0.22以上となるようにしたことにより良好な把手付耐熱容器が得られる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、プラスチック容器は保管時や輸送時の容積効率を高めるため、横断面形状をほぼ
四角形とした角型容器を求められることが多い。
ところが、特許文献1の把手付容器は、ブロー成形性が向上し、凹部dや底部dに発生
する不具合が解消されるという効果は記載されているが、実施例には、胴部断面形状が円
形のものしか記載されておらず、把手付角型容器を得るための課題も解決手段も記載され
ていない。また、高温充填を可能にする耐熱性の付与についても何ら記載がない。
【0007】
また、特許文献2の把手付耐熱容器は、把手取付位置より下の胴部は断面形状を四角形
としているものの、把手を取り付けた上部の断面形状は円形であり、容積効率を向上させ
るためには未だ不満足である。さらに、把手ののアンダーカット部を包み込む胴部をヒー
トセットすることにより、良好な耐熱性が得られるとしているが、ヒートセットされるの
は成形金型と接触する容器壁であり、把手アンダーカット部を包み込む部分は容器内部に
位置するので直接にはヒートセットできず、高温充填時の収縮・変形により把手取付強度
が低下する虞がある。
【0008】
そこで、本発明の目的は、断面形状が四角形で保管性に優れ、ブロー成形性が良好であ
り、容器及び把手に割れ、ひび、皺、変形及び不適切な延伸による肉厚の不均衡などの不
具合を生ずることを抑え、その上、落下衝撃に対しても充分な強度を有する把手付耐熱容
器及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記目的を達成するために提案されたものであって、下記の構成からなるこ
とを特徴とするものである。
すなわち、本発明によれば、上部から順次口部、肩部、胴部及び底部で構成し、前記胴
部の一部に凹部を設けたポリエステル製容器に、別体の把手を前記凹部に取付けてなる把
手付容器において、前記胴部の横断面形状がほぼ四角形であり、前記凹部が前記胴部の上
半部の角部にあると共に、前記把手が前記胴部の対角線に沿って前記凹部に取付けられて
いることを特徴とする把手付容器が提供される。
【0010】
また、本発明によれば、前記凹部に把手取付用凸部を設け、前記把手を前記把手取付用
凸部回りの壁面との間に、空隙を設けて取り付けてなる上記把手付容器が提供される。
【0011】
また、本発明によれば、前記把手付容器が把手付耐熱性容器であって、前記把手取付用
凸部回りの壁面まで熱固定されてなる上記把手付容器が提供される。
【0012】
また、本発明によれば、前記把手取付用凸部の端面はパネル状に形成してなる上記把手
付容器が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、前記容器に取り付けられた前記把手の下部に連なる胴部の角部
に、縦リブが形成されてなる上記把手付容器が提供される。
【0014】
また、本発明によれば、把手取付位置より下の胴部下半部において、対向する角部の距
離が底部に向けて次第に狭くなるように形成された上記把手付容器が提供される。
【0015】
また、本発明によれば、把持部と容器の把手取付用凸部に取り付ける取付部とからなり
、前記把持部は横断面形状がH型であり、且つ前記把持部の外側プレートよりも内側プレ
ートを幅狭に形成したことを特徴とする容器用把手が提供される。
【0016】
また、本発明によれば、前記把手の素材はポリエチレンテレフタレート製成形品の再生
材である上記容器用把手が提供される。
【0017】
また、本発明によれば、ポリエステル製のプリフォームをブロー成形して中空の容器に
する際、別体のポリエステル製の把手を容器の胴部上部にインサート成形してなる把手付
耐熱容器の製造方法において、前記胴部の上半部の凹部に設けた把手取付用凸部より下の
胴部の中心軸が、前記把手取付用凸部側に1.0°±0.5°傾くようにブロー成形金型
をセットしてブロー成形すると共に、前記凹部における前記把手取付用凸部回りの壁面を
ヒートセットする工程を含むことを特徴とする把手付耐熱容器の製造方法が提供される。
【0018】
また、本発明によれば、前記容器の前記凹部、および前記把手取付用凸部を成形する部
位のブロー成形金型の少なくとも一部に表面処理が施されてなる上記把手付耐熱容器の製
造方法が提供される。
【0019】
また、本発明によれば、前記インサート成形において、ブロー成形金型の把手と接する
可能性のある部位が断熱処理されている上記把手付耐熱容器の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0020】
本発明の把手付容器は、胴部の横断面形状がほぼ四角形であるため保管性に優れ、また
、把手を対角線に沿って取り付けるため、ブロー成形金型のパーティングラインを横断面
形状の対角線方向とすることができ、各面のデザインを制約なく設計することができる。
さらに、凹部に把手取付用凸部を設け、把手を把手取付用凸部回りの壁面との間に空隙を
設けて取り付けるようにすれば、凹部における把手取付用凸部回りの壁面と把手との間に
ある空隙部により、ブロー成形性が良好となり、そのため容器及び把手に、割れ、ひび、
皺、変形及び不適切な延伸による肉厚の不均衡などの不具合を生ずることがなくなり、加
えて、適切な延伸による肉厚の均衡、すなわち、強度の必要性に応じた肉厚となり、落下
衝撃に対しても充分な強度を有することが出来る。また、容器と把手ともポリエステル製
にすればリサイクル性にも優れた効果を有する。
さらに、把手取付位置より下の胴部下半部において、対向する角部の距離を底部に向け
て次第に狭くすれば、底部近傍の肉厚分布を良好にすることができる。
【0021】
また、インサート成形において、ブロー成形金型の把手と接する可能性のある部位を断
熱処理しておけば、把手が金型に粘着したり、変形、白化、熱劣化等を起こすのを防ぐこ
とができる。
また、把手の把持部の横断面形状をH型にすることにより軽量にすることが出来、且つ
、把持部の内側プレートが外側プレートよりも幅狭であることにより、把持部を手指で握
った際、内側プレートが手指に当たりづらく、把持し易い効果がある。
また、容器に取り付けられた把手の下部に連なる胴部の角部に縦リブを設けることによ
り、容器の縦圧縮強度を向上させることができる。
さらに、本発明の把手付き容器を耐熱容器として構成したときは、把手取付用凸部回り
の壁面も熱固定するために、内容物を高温充填しても把手がゆるむことなく、良好な耐熱
性を有する容器とすることができる。
【0022】
また、把手取付用凸部より下の胴部の中心軸が、把手取付用凸部側に1°±0.5°傾
くように、予め容器をブロー成形してある。把手付耐熱容器は、把手を取り付ける面が収
縮しないので傾きを生じ易いが、容器を予め逆方向に傾けた状態で成形することにより全
体のバランスが取れ、容器の傾きを是正し、正常な状態とする効果がある。また、把手取
付用凸部回りの壁面をヒートセットするから、皺が寄りづらくなり、把手がぐらついたり
、容易に外れるのを防止することができる。
【0023】
また、本発明の容器の製造方法においては、把手取付用凸部、容器の凹部、及び把手取
付用凸部を成形する部位のブロー成形金型の少なくとも一部に表面処理を施すことにより
、表面処理した部位のポリエステル素材の流れが良くなり、逆に把手取付用凸部の下は流
れづらいから、ポリエステル素材が溜まり厚くなって、最も荷重がかかる把手取付用凸部
の下の強度が増す効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下に、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態を説明する。
【実施例1】
【0025】
図1は本発明の実施の形態を示す把手付容器(把手付耐熱容器)の側面図、図2は図1
のA−A線断面図、図3は把手付容器の正面図、図4は図3のB−B線断面図、図5は把
手取付用凸部端面のパネル形状を示す拡大図、図6は把手の背面図、図7は把手の側面図
、図8は図7のX−X線断面図である。
図面において、把手付容器1は、上部から順次口部2、肩部3、胴部4及び底部5で構
成し、この胴部4の一部に凹部6を設けると共にこの凹部6に把手取付用凸部7を設けた
ポリエステル製の容器8と、この容器8の把手取付用凸部7に取り付けるポリエステル製
の把手9とからなり、凹部6における把手取付用凸部7回りの壁面10と把手9との間に
空隙部11を設けてなるものであり、胴部4の横断面形状はほぼ正方形であり、凹部6は
胴部4の上半部12の角部13にあると共に、把手取付用凸部7は上半部12の対角線L
上の凹部6に位置しているものである。
【0026】
前記容器8の口部2には、キャップを螺着脱するためのネジ20があり、更に、その下
にフランジ21がある。この口部2は肩部3を経て胴部4に至り、この胴部4は側壁22
にて構成し、この側壁22の下部は底部5に連なっている。
【0027】
前記胴部4は、上述のように、その横断面形状がほぼ正方形であり、中間にある横溝3
0を境に前記上半部12と下半部31とに分かれ、上半部12の角部13に前記把手9を
取り付ける前記凹部6が設けられている。この凹部6は、これに把手9を取り付けた際、
胴部4の外径から外方に出ないように形成して、密着して効率よく保管できるようになっ
ている。この凹部6には把手取付用凸部7が設けられているが、この把手取付用凸部7は
、上半部12の対角線L上の凹部6に位置し、側壁32とパネル状端面33とで構成して
いる。この側壁32は、充分高く形成されており、把手取付用凸部7回りの壁面10と把
手9との間に空隙部11を有するようになっている。
【0028】
この空隙部11は、容器成形の際に、把手取付用凸部7回りの壁面10と把手9の間に
金型が入り込み、この金型を高温にすることにより、把手取付用凸部7回りの壁面10を
ヒートセットすることを可能にするための構成であり、本発明において重要な構成の一つ
である。また、このパネル状端面33は、フランジ状に形成され、把手取付用凸部7に把
手9を取り付けた際、抜けないようになっている。
更に、パネル状端面33へパネル形状を成形することによリ加工量が増えて肉厚分布が
良好になり、高温充填時のシワの発生を抑制することができ、より一層収縮による容器8
及び把手9に不具合を生ずることを減らすことが可能となる。
【0029】
また、凹部6がある容器では、ブロー成形中の樹脂の動きが凹部の周辺で悪くなり、そ
の影響で最大延伸部である底部周辺の肉厚分布が不均一となり易いという問題があるが、
下半部31の対向する角部の距離を底部に向けて次第に狭くすると、底部近傍の肉厚分布
を良好にすることができる。対向する角部の距離は設地面の対応する方向の長さが55な
いし75%となるように次第に狭くするのが好ましい。または設地面において、対角線に
沿った方向の幅がほぼ同じになるように、次第に狭くするのが好ましい。
【0030】
さらに、把手の下部に連なる胴部の角部(下半部31の上端の把手取付位置に対応する
角部)には縦リブ14が形成されている。これは本発明のような把手付容器では、流通過
程で縦積みされる時のように圧縮荷重がかかると、把手の下端が接する胴部に応力が集中
することにより、容器の変形を招くことがあるが、この部分へ縦リブ14を設けることに
よって容器全体の圧縮強度を向上させることができるものであり、これも本発明の重要な
実施形態の一つである。なお、この実施例1では、縦リブ14
は1本の凹リブであるが、縦リブの形状は凸でも複数本の組み合わせでも良い。
【0031】
前記把手9は、図7、8に示すように、把持部40と前記容器8の把手取付用凸部7に
取り付ける取付部41とからなり、この把持部40は横断面形状がH型であり、且つ把持
部40の外側プレート42よりも内側プレート43を幅狭にしている。したがって、把手
9の把持部40の横断面形状がH型であることにより軽量に出来且つ材料の節減を可能と
し、把持部40の内側プレート43が外側プレート42よりも幅狭であることにより、把
持部40を手指で握った際、内側プレート43が手指に当たりづらく把持し易いというこ
うかがある。また、取付部41は、把手取付用凸部7に嵌め込むためのリング44及びそ
のリング44の上方には突起45を有し、これらリング44及び突起45により、容器8
の凹部6からの把手9の離脱及びガタツキを防止する。なお、図4中、46は補強リブで
ある。
【0032】
上記した容器8及び把手9の材質は、いずれもポリエステル製であり、例示すれば、ポ
リエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、エチレンテレフタ
レート単位を主体とする共重合ポリエステルなどである。また、把手9の材質は、ポリエ
チレンテレフタレート製成形品の再生材であっても良く、これを採用すれば、より一層リ
サイクル性が増すことになる。
【0033】
次に、上記構成になる把手付容器(把手付耐熱容器)1の製造方法について述べる。
まず、別体のポリエステル製の把手9を射出成形しておく。次に、容器8となるポリエ
ステル製のプリフォームをブロー成形金型にセットし、更に、ブロー成形金型に射出成形
した別体のポリエステル製の把手9をセットする。そして、プリフォームをブロー成形し
て中空の容器8にする。この際、胴部4の上半部12の凹部6に設けた把手取付用凸部7
より下の胴部4の中心軸Jが、把手取付用凸部7側に1°±0.5°傾いた形状ブロー成
形金型を設計する。容器を高温の金型でヒートセットすると、金型から取り出す際に容器
は若干収縮するが、インサート成形された把手は収縮しないので容器は傾き、充填、キャ
ッピング工程で不都合を生じる。
【0034】
本発明においては、容器を予め逆方向に傾けた状態で成形することにより、金型取り出
し時の収縮で全体のバランスが取れ、容器の傾きが是正される。また、把手取付用凸部7
の側壁32は、充分高く形成されており、把手取付用凸部7回りの壁面10と把手9との
間に充分余裕のある空隙部11が形成されている。この空隙部11には、前述したように
、把手取付用凸部7回りの壁面10と把手9の間に金型が入り込むため、この金型を高温
にすることにより、把手取付用凸部7回りの壁面10をヒートセットすることが出来、予
めこの部分のひずみを除くことが出来る。
【0035】
なお、容器のブロー成形において、容器8の凹部6および把手取付用凸部7を成形する
部位のブロー成形金型の少なくとも一分、例えば把手取付用凸部7回りの壁面10と把手
9の間に入り込む金型の上半分に、表面処理を施しておくと、ブロー成形する際、表面処
理を施したブロー成形金型の部位のポリエステル素材の流れが良くなり、逆に、把手取付
用凸部7の下は流れづらいから、ポリエステル素材が溜まり厚くなる。したがって、把手
9にて内容物入りの把手付耐熱容器1を持ち上げた際、最も荷重がかかる把手取付用凸部
7の下の強度が増すことになる。
【0036】
なお、前述した特許文献1では、把手取付用凸部回りの壁面と把手の間に金型が入り込
んで同質の樹脂で構成される容器と把手の接触面積が減り、ブロー成形途中の樹脂と把手
の間の摩擦抵抗が減少してブロー成形性が向上したが、本発明のようにヒートセットのた
めに成形金型を高温にすると、樹脂が金型に粘着する傾向があるので、金型表面に樹脂と
の摩擦や密着性を低減する表面処理を施すのが好適である。
ブロー成形金型の表面処理方法は特に限定されず、それ自体公知の方法を採用すること
ができるが、サンドブラストやイエプコ処理などの粗面化処理、テフロン(登録商標)系
やフッ素系などのコーティング処理などを例示することができる。
【0037】
容器のブロー成形中、ブロー成形金型はヒートセットのため高温になる。把手をインサ
ート成形するためにブロー成形金型へセットすると、把手が金型に粘着したり、変形、白
化、熱劣化等を起こす虞があり、特にポリエステル製の把手ではその可能性が大きいが、
ブロー成形金型の把手と接する可能性のある部位を断熱処理しておくとそのような虞がな
く、良好に成形品を得ることができる。
【0038】
このように製造された把手付耐熱容器1は、把手取付用凸部7回りの壁面10をヒート
セットしてあるから、上記のような高温充填によっても壁面10に皺が寄りづらくなり、
把手がぐらついたり、容易に外れるのを防止することができる。また、把手9にて内容物
入りの把手付耐熱容器1を持ち上げると、把手取付用凸部7の下に最も荷重がかかるが、
この部分は厚いので充分な強度があり、不具合が生じない。
【0039】
なお、以下に、本発明の把手付容器の優位性を示す。
〈試験例1〉
容器となるポリエステル製のプリフォーム及び射出成形した別体のポリエステル製の把
手から、上記した製造方法にて容量2Lの把手付耐熱容器を作製する。
この把手付耐熱容器にて、下記の2種のテストを行った。
(1)把手付耐熱容器に85℃の熱水を2L充填し、室温迄冷却した後、耐えうる落下高
さを測定した。
(2)把手取付用凸部の下の胴部の側壁の厚みを測定した。
【0040】
〈対照例1〉
把手取付用凸部回りの壁面と把手との間に空隙部を設けないこと(したがって、把手と
接する把手取付用凸部回りの壁面の部分はヒートセットされない)、且つPFA系の離型
剤を塗布しないこと以外、試験例1と同様にして容量2Lの把手付耐熱容器を作製する。
この把手付耐熱容器にて試験例1と同様の測定を行う。
試料として用いた容器はそれぞれ5個である。
【0041】
以上の測定結果は次のとおりである。
(1)<把手部の状態>
試験例1の把手付容器は、熱水の充填後も把手はしっかりと固定されていたのに対し、
対照例1の把手付き容器は、熱水を充填すると、把手取付部周辺に皺が生じ、把手がぐら
ついたり、外れたりするものがあった。
(2)<把手取付用凸部の下の胴部の側壁厚み>
試験例1の把手付耐熱容器では、平均約0.30mmで、容器内部の減圧に対して外観
上特に問題がなかったが、対照例1の把手付き容器では、平均約0.25mmで、把手よ
り下の胴部が菱形状に変形したり、容器が屈曲するなどの異常が見られた。
(3)<落下試験の結果>
試験例1の把手付容器は、落下高さ1.2mまで破損等の不具合がなかったが、対照例
1の把手付容器は、落下高さ0.3mで、すでに破損するものが見られた。
【0042】
以上、本発明の実施例1を説明したが、具体的な構成はこれに限定されず、また、容器
の胴部の横断面形状もほぼ四角形であるとしたが、本発明の要旨を逸脱しない範囲での変
更は適宜可能であることは理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の容器用把手、把手付容器及びその製造方法は、保管の優位性に優れ、特に耐熱
性を要求されその上リサイクル性も要求されるような場合に、利用可能性が極めて高くな
る。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の好適な実施の形態を示す把手付容器(把手付耐熱容器)の側面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明の把手付容器(把手付耐熱容器)の正面図である。
【図4】図3のB−B線断面図である。
【図5】本発明のパネル状端面を示す把手の一分を省略した拡大図である。
【図6】本発明の把手の背面図である。
【図7】本発明の把手の側面図である。
【図8】図7のX−X線断面図である。
【図9】従来の把手付容器の例を示す側面図である。
【図10】従来の把手付容器の把手の要部を拡大した側面図である。
【図11】従来の把手付耐熱容器の例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0045】
1 把手付容器(把手付耐熱容器)
2,a 口部
3,b 肩部
4,c 胴部
5,d 底部
6,e 凹部
7,f 把手取付用凸部
8,g 容器
9,h 把手
10,i 壁面
11,j 空隙部
12 上半部
13 角部
14 縦リブ
20 ネジ
21 フランジ
22 側壁
30 横溝
31 下半部
32 側壁
33 パネル状上端面
40 把持部
41 取付部
42 外側プレート
43 内側プレート
44 リング
45 突起
46 補強リブ
J 中心軸
k 減圧吸収パネル
L 対角線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部から順次口部、肩部、胴部及び底部で構成し、前記胴部の一部に凹部を設けたポリ
エステル製容器に、別体の把手を前記凹部に取付けてなる把手付容器において、前記胴部
の横断面形状がほぼ四角形であり、前記凹部が前記胴部の上半部の角部にあると共に、
前記把手が前記胴部の対角線に沿って前記凹部に取付けられていることを特徴とする把手
付容器。
【請求項2】
前記凹部に把手取付用凸部を設け、前記把手を前記把手取付用凸部回りの壁面との間に
、空隙を設けて取り付けてなる請求項1記載の把手付容器。
【請求項3】
前記把手付容器が把手付耐熱性容器であって、前記把手取付用凸部回りの壁面まで熱固
定されてなる請求項2記載の把手付容器。
【請求項4】
前記把手取付用凸部の端面はパネル状に形成してなる請求項1ないし3のいずれか1項
記載の把手付容器。
【請求項5】
前記容器に取り付けられた前記把手の下部に連なる胴部の角部に、縦リブが形成されて
なる請求項1ないし4のいずれか1項記載の把手付容器。
【請求項6】
把手取付位置より下の胴部下半部において、対向する角部の距離が底部に向けて次第に
狭くなるように形成された請求項1ないし5のいずれか1項記載の把手付容器。
【請求項7】
把持部と容器の把手取付用凸部に取り付ける取付部とからなり、前記把持部は横断面形
状がH型であり、且つ前記把持部の外側プレートよりも内側プレートを幅狭に形成したこ
とを特徴とする容器用把手。
【請求項8】
前記把手の素材はポリエチレンテレフタレート製成形品の再生材である請求項7記載の
容器用把手。
【請求項9】
ポリエステル製のプリフォームをブロー成形して中空の容器にする際、別体のポリエス
テル製の把手を容器の胴部上部にインサート成形してなる把手付耐熱容器の製造方法にお
いて、前記胴部の上半部の凹部に設けた把手取付用凸部より下の胴部の中心軸が、前記把
手取付用凸部側に1.0°±0.5°傾くようにブロー成形金型をセットしてブロー成形
すると共に、前記凹部における前記把手取付用凸部回りの壁面をヒートセットする工程を
含むことを特徴とする把手付耐熱容器の製造方法。
【請求項10】
前記容器の前記凹部、および前記把手取付用凸部を成形する部位のブロー成形金型の少
なくとも一部に表面処理が施されてなる請求項96記載の把手付耐熱容器の製造方法。
【請求項11】
前記インサート成形において、ブロー成形金型の把手と接する可能性のある部位が断熱
処理されている請求項9または10記載の把手付耐熱容器の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2006−327666(P2006−327666A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−156768(P2005−156768)
【出願日】平成17年5月30日(2005.5.30)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【Fターム(参考)】