説明

対象物検出装置

【課題】シングルビーム方式のレーダ装置を用いて車両の周囲に位置する対象物が存在するレーン位置を特定する対象物検出装置を提供する。
【解決手段】検出範囲にある対象物までの距離のみを検出可能なシングルビーム方式の右方レーダ装置4及び左方レーダ装置5を備え、各レーダ装置4、5のパラメータ情報と、車両2の現在位置情報と、車両2が走行する道路の道路形状情報とに基づいて、各レーダ装置4、5により特定のレーン内に位置する対象物を検出可能な対象物存在範囲70、71を算出し、検出した対象物までの距離に基づいて対象物のレーン位置を特定するように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の周囲に位置する対象物を検出する対象物検出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、車両運転時の事故防止の観点から、車両の周辺に位置する他車両、人、自転車等の障害物をレーダや撮像したカメラの画像等によって検出し、障害物との接触を防止するために運転者に対する警告や車両制御を行う運転支援システムを搭載する車両が増加している。しかし、このような運転支援システムの普及を妨げる原因の一つとして、システムの価格が高額であることが挙げられる。
【0003】
ここで、前記運転支援システムでは障害物の位置を特定する為に対象物検出装置が用いられている。この運転支援システムを構成する対象物検出装置は、対象物(他車両、人、自転車等の障害物)を検出する装置であり、ビーム電波や赤外線レーザを出力する出力部と、対象物によって反射されたビーム電波や赤外線レーザを受信する受信部からなる。
そして、障害物の位置を特定する為に対象物検出装置において障害物までの距離と方位を少なくとも検出する必要があった。ここで、対象物検出装置において特に検出した障害物の方位を検出する為には、複数の受信部を設けたり、受信部を回動させる機構とすることが必要となり、構造が複雑化していた。その結果として、システムの高額化を招いていた。また、装置が大型となり、耐久性についても低下していた。
【0004】
一方で、対象物までの距離のみを検出可能なシングルビーム方式のレーダ装置を対象物検出装置として用いることも考えられる。ここで、シングルビーム方式のレーダ装置は、耐久性に優れ、小型化、低コスト化が可能であるが、対象物の方位について検出できないという問題があった。そこで、例えば特開平8−329396号公報には、シングルビーム方式のレーダ装置を複数備えることによって対象物の方位についても検出し、対向車両や隣接車両の走行するレーンについて特定することが可能な障害物検知装置について記載されている。
【特許文献1】特開平8−329396号公報(第3頁〜第5頁、図1)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載の障害物検知装置では、複数のレーダ装置が必要であることから、依然として低コスト化を十分に図ることができなかった。また、検出対象の車両が自車レーンに存在するか、隣接レーンに存在するかを判定する為には、レーン内における自車位置も重要であるが、従来技術においてはこの点について考慮しておらず、精度の面についても対象物である対向車両や隣接車両の位置を正確に特定することができなかった。
【0006】
本発明は前記従来における問題点を解消するためになされたものであり、対向車両や後続車両等の対象物の存在するレーン位置について正確に特定することが可能となるとともに、耐久性に優れ、且つ小型化、低コスト化を実現した対象物検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するため本願の請求項1に係る対象物検出装置(1)は、車両(2)に搭載され、複数レーンから構成される道路を走行する場合に車両の周囲に位置する対象物を検出する対象物検出装置において、検出範囲内に存在する前記対象物までの距離のみを検出可能な対象物検出手段(4、5)と、前記複数レーンを区画するレーン区画線を検出する区画線検出手段(44)と、前記レーン区画線検出手段により検出されたレーン区画線までの距離と前記対象物検出手段が前記車両に対して設置された設置態様とに基づいて、前記対象物検出手段により特定のレーン内に位置する対象物を検出可能な範囲を特定する範囲特定手段(3)と、前記対象物検出手段によって対象物が検出された場合に、検出された対象物が前記範囲特定手段によって特定された範囲に位置するか否かを判定する位置判定手段(3)と、前記位置判定手段の判定結果に基づいて前記対象物検出手段により検出された前記対象物の存在するレーン位置を特定するレーン位置特定手段(3)と、を有することを特徴とする。
尚、ここで「レーン区画線」とは、車道中央線、車線境界線、車道外側線、歩行者横断指導線、車道幅員の変更、路上障害物の接近、路上駐車場、導流帯等の路面標示をいう。
【0008】
また、請求項2に係る対象物検出装置(1)は、請求項1に記載の対象物検出装置において、前記対象物検出手段(4、5)はシングルビーム方式のレーダ装置であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
前記構成を有する請求項1に記載の対象物検出装置によれば、対向車両や後続車両等の対象物の検出を行なう為に、対象物の距離のみを検出可能な検出手段を用いながらも、対象物の存在するレーン位置について正確に特定することが可能となる。更に、対象物の方位についても検出可能な検出手段を用いる場合と比較して、耐久性に優れ、且つ小型化、低コスト化を実現できる。
【0010】
また、請求項2に記載の対象物検出装置によれば、一の検出範囲に対して一のシングルビーム方式のレーダ装置のみを車両に設けることによって、レーダ装置で検出した対象物の存在するレーン位置についても特定することが可能となる。従って、構造を簡略化することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る対象物検出装置について具体化した一実施形態に基づき図面を参照しつつ詳細に説明する。
先ず、本実施形態に係る対象物検出装置1の概略構成について図1及び図2を用いて説明する。図1は本実施形態に係る対象物検出装置1の概略構成図である。図2は本実施形態に係る対象物検出装置1の制御系を模式的に示すブロック図である。
【0012】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る対象物検出装置1は、車両2に対して設置されたレーダ管理ECU(範囲特定手段、位置判定手段、レーン位置特定手段)3と、右方レーダ装置(対象物検出手段)4と、左方レーダ装置(対象物検出手段)5と、液晶ディスプレイ6と、スピーカ7と、車速センサ8、レーダ管理DB9と、ナビゲーション装置10とから構成されている。
【0013】
ここで、レーダ管理ECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)3は、ナビゲーション装置10から取得したナビゲーション情報と右方レーダ装置4及び左方レーダ装置5の検出結果に基づいて、検出した対象物(本実施形態では特に後続車両)の存在するレーン位置を特定する処理を行う電子制御ユニットである。尚、レーダ管理ECU3はナビゲーション装置10の制御に使用するナビゲーションECU41と兼用してもよい。また、レーダ管理ECU3の詳細な構成については後述する。
【0014】
また、右方レーダ装置4は、シングルビーム方式のレーダ装置であり、車両2の右側面に対して右後方に向けて取り付けられている。ここで、右方レーダ装置4はレーダ送信部とレーダ受信部とから基本的に構成されており、レーダ送信部から車両2の運転者の死角方向へ所定のビーム角でビームを照射するとともに、対象物(具体的には右後方のレーンを走行する後続車両)によって反射された反射波をレーダ受信部で受信する。その結果、受信した反射波の強度や波長に基づいて対象物までの距離を検出することが可能となる。
【0015】
一方、左方レーダ装置5は、同じくシングルビーム方式のレーダ装置であり、車両2の左側面に対して左後方に向けて取り付けられている。ここで、左方レーダ装置5は右方レーダ装置4と同様にレーダ送信部とレーダ受信部とから基本的に構成されており、レーダ送信部から車両2の運転者の死角方向へ所定のビーム角でビームを照射するとともに、対象物(具体的には左後方のレーンを走行する後続車両)によって反射された反射波をレーダ受信部で受信する。その結果、受信した反射波の強度や波長に基づいて対象物までの距離を検出することが可能となる。
尚、右方レーダ装置4と左方レーダ装置5は車両2に対して左右対称の位置に設置されているが、照射方向やビーム角については異なる。即ち、右方レーダ装置4及び左方レーダ装置5は、ビーム照射範囲(即ち、対象物の検出範囲)が運転者の死角をカバーするように照射方向やビーム角が設定されている。ここで、運転者からの死角は車両の右後方と左後方では異なるので、照射方向やビーム角についてもそれぞれ異なるものとなる。
【0016】
液晶ディスプレイ6は、車両2の室内のセンターコンソール又はパネル面に備え付けられ、対象物検出装置1が運転者の死角方向に後続車両を検出した場合に、その後続車両に注意を促す警告文を表示する。例えば、本実施形態に係る対象物検出装置1では、「右後方(左後方)に車両が接近中です」との文字を表示する。尚、液晶ディスプレイ6はナビゲーション装置10に使用するものと兼用してもよい。
【0017】
また、スピーカ7は、車両2の室内のセンターコンソール又はパネル面に備え付けられ、対象物検出装置1が運転者の死角方向に後続車両を検出した場合に、その後続車両に注意を促す警告音声を出力する。例えば、本実施形態に係る対象物検出装置1では、「右後方(左後方)に車両が接近中です。」との音声を出力する。
【0018】
また、車速センサ8は、車両2の車輪の回転に応じて車速パルスを発生させ、車両の移動距離や車速を検出するセンサである。
【0019】
レーダ管理DB9は、右方レーダ装置4及び左方レーダ装置5に関する各種パラメータ情報が記憶された記憶手段である。具体的には、右方レーダ装置4及び左方レーダ装置5の車両2に対する設置位置、ビームの照射方向、ビーム角等がそれぞれ記憶される。そして、レーダ管理ECU3はレーダ管理DB9に記憶された各種パラメータ情報を用いて対象物の検出制御を行う。
【0020】
また、ナビゲーション装置10は、車両2の室内のセンターコンソール又はパネル面に備え付けられ、地図や目的地までの探索経路を表示する液晶ディスプレイ(図示せず)や経路案内に関する音声ガイダンスを出力するスピーカ(図示せず)等を備えている。そして、GPS等によって車両2の現在位置を特定するととともに、目的地が設定された場合においては目的地までの経路の探索、並びに設定された経路に従った案内を液晶ディスプレイやスピーカを用いて行う。また、本実施形態に係るナビゲーション装置10では、後述するように車両2の現在位置に関する現在位置情報、車両が現在走行する道路の道路形状に関する道路形状情報を取得し、レーダ管理ECU3に対して取得した情報を出力する。そして、ナビゲーション装置10からナビゲーション情報を取得したレーダ管理ECU3は、後述のように右方レーダ装置4や左方レーダ装置5により特定のレーン(例えば、車両2が現在走行するレーンに対して隣接する隣接レーン)内に位置する対象物を検出可能な範囲を特定する。尚、ナビゲーション装置10の詳細な構成については後述する。
【0021】
次に、レーダ管理ECU3の詳細について図2を用いて説明すると、レーダ管理ECU3は、CPU31を核として構成されており、CPU31には記憶手段であるROM32及びRAM33が接続されている。そして、ROM32には後述の対象物検出処理プログラム(図4参照)、その他、液晶ディスプレイ6等の制御上必要な各種のプログラム等が格納されている。また、RAM33はCPU31で演算された各種データを一時的に記憶しておくメモリである。
【0022】
続いて、ナビゲーション装置10の構成について図2を用いて説明する。図2に示すように本実施形態に係るナビゲーション装置10は、ナビゲーションECU41、GPS42、地図情報DB43、後方カメラ(区画線検出手段)44等を備える。
【0023】
ナビゲーションECU41は、公知の経路探索及び経路案内の処理の他に、車両2の現在位置を検出する現在位置検出処理、車両が現在走行する道路の道路形状に関する道路形状情報を地図情報DB43から取得する情報取得処理、後方カメラ44で撮像した撮像画像に基づいて車両の左右に位置するレーン区画線を検出するレーン区画線検出処理、対象物検出装置1からレーン区画線検出処理で検出された左右のレーン区画線までの距離を算出するレーン距離算出処理等を行う電子制御ユニットである。
【0024】
また、GPS42は、人工衛星によって発生させられた電波を受信することにより、地球上における自車の現在地及び現在時刻を検出する検出手段である。
【0025】
また、地図情報DB43は、例えば、道路(リンク)に関するリンクデータ、ノード点に関するノードデータ、地図を表示するための地図表示データ、各交差点に関する交差点データ、経路を探索するための探索データ、施設に関する施設データ、地点を検索するための検索データ等が記憶された記憶手段である。
【0026】
また、後方カメラ44は、例えばCCD等の固体撮像素子を用いたものであり、車両2の後方に装着されたナンバープレートの上中央付近に取り付けられ、視線方向を水平より所定角度下方に向けて設置される。そして、走行時に車両2の進行方向と逆方向である車両後方を撮像し、後述のように車両2の周囲の路面上に形成されたレーンを区画するレーン区画線等の路面標示を検出する。尚、レーン区画線としては、車道中央線、車線境界線、車道外側線、歩行者横断指導線、車道幅員の変更、路上障害物の接近、路上駐車場、導流帯等がある。
【0027】
次に、ナビゲーションECU41で実行される処理の内、特にレーン区画線検出処理及びレーン距離算出処理について説明する。ここで、レーン区画線検出処理及びレーン距離算出処理は、後方カメラ44で撮像した撮像画像に対して所定の画像認識処理を施すことによって行われる。図3は後方カメラ44によって撮像された撮像画像51を示した模式図である。尚、後方カメラ44は、車両2の後バンパー付近から後方を撮像できるように光軸を水平から所定角度下方向に向けるように取り付けられており、撮像範囲が固定されている。
【0028】
レーン区画線検出処理では、先ず後方カメラ44によって撮像される車両2の後方環境の画像を取り込んで解析処理を行い、車両が走行する路面上に形成されたレーン区画線の境界線を特定する。
具体的には、先ず、NTSCのようなアナログ通信手段や、i−linkのようなデジタル通信手段を用いて後方カメラ44で撮像した映像を入力し、jpeg、mpeg等のデジタル画像フォーマットに変換する。次に、レーン区画線が一般に白線又は黄線であることを用いて、撮像画像中のレーン区画線が描かれた路面と他の路面を輝度差に基づいて輝度補正を行う。その後、対象となるレーン区画線を画像から分離する2値化処理、歪みを補正する幾何学処理、画像の雑音を除去する平滑化処理等を行い、レーン区画線と他の路面との境界線を検出する。
その後、ナビゲーションECU41は、検出された境界線の形状から検出されたレーン区画線の位置や種別を特定する。例えば、図3に示す撮像画像51に対して認識処理を行った場合には、車両の左側の路面52に破線からなる車道境界線53と実線からなる車道外側線54が形成されていることが検出され、車両の右側の路面52に実線からなる車道外側線55が形成されていることが検出される。
【0029】
また、レーン距離算出処理では、後方カメラ44による撮像範囲が固定されていることを用い、レーン区画線検出処理で検出されたレーン区画線の画像中の位置座標に基づいて、車両(即ち、各レーダ装置4、5)から左右に位置するレーン区画線までの距離を算出する。例えば、図3に示す撮像画像51からは、車両の左側に位置する車道境界線53までの距離と、車両の右側に位置する車道外側線55までの距離が算出される。
【0030】
尚、他にナビゲーションECU41で実行される現在位置検出処理、情報取得処理については公知の技術であり詳細を省略する。但し、現在位置検出処理では、複数レーンからなる道路を車両2が走行する場合には車両2が走行するレーン位置についても検出される。
【0031】
続いて、前記構成を有する本実施形態に係る対象物検出装置1のレーダ管理ECU3が実行する対象物検出処理プログラムについて図4に基づき説明する。図4は本実施形態に係る対象物検出処理プログラムのフローチャートである。ここで、対象物検出処理プログラムは車両のイグニションがONされた後に所定間隔(例えば200ms毎)で実行され、車両が右方レーダ装置4又は左方レーダ装置5で検出した対象物のレーン位置を特定するプログラムである。尚、以下の図4にフローチャートで示されるプログラムは、レーダ管理ECU3が備えているROM32やRAM33に記憶されており、CPU31により実行される。
【0032】
先ず、対象物検出処理プログラムではステップ(以下、Sと略記する)1において、CPU31はレーダ管理DB9から右方レーダ装置4及び左方レーダ装置5に関する各種パラメータ情報を取得する。具体的には、右方レーダ装置4及び左方レーダ装置5の車両2に対する設置位置、ビームの照射方向、ビーム角等に関する情報が取得される。
【0033】
次に、S2でCPU31はナビゲーション装置10からナビゲーション情報の一つとして、車両2の現在位置に関する現在位置情報を取得する。尚、前記S2で取得される現在位置情報としては、車両2が走行するレーン位置、車両2の左右に位置するレーン区画線までの距離、車両の方位等に関する情報がある。
【0034】
続いて、S3でCPU31はナビゲーション装置10からナビゲーション情報の一つとして、車両2が現在走行する道路に関する道路形状情報を取得する。尚、前記S3で取得される道路形状情報としては、車両2が走行する道路のレーン数、レーン幅等に関する情報がある。
【0035】
その後、S4においてCPU31は、前記S1で取得した右方レーダ装置4及び左方レーダ装置5のパラメータ情報と、前記S2で取得した車両2の現在位置情報と、前記S3で取得した道路形状情報とに基づいて、右方レーダ装置4及び左方レーダ装置5により特定のレーン内に位置する対象物を検出可能な範囲(以下、対象物存在範囲という)を算出する。
【0036】
以下に、前記S4の対象物存在範囲の算出処理について具体例を挙げて説明する。ここで、図5は4本のレーン61〜64からなる道路を走行する車両2を示した俯瞰図である。尚、右方レーダ装置4における対象物存在範囲の算出処理と、左方レーダ装置5における対象物存在範囲の算出処理とは、パラメータ値が異なるのみで同一内容の処理である。従って、以下には右方レーダ装置4における対象物存在範囲の算出処理のみを説明することとし、左方レーダ装置5における対象物存在範囲の算出処理は省略する。
【0037】
図5に示す具体例では、車両2が備える右方レーダ装置4は、車両方位に対するビームの照射方向Lの方位角がαでビーム角がβの照射範囲を有する。また、車両2は4本のレーン61〜64の内、左から2番目のレーン62を走行する。また、車両2の右側に位置するレーン区画線65とは距離Dだけ離れている。更に、レーン幅はWである。
【0038】
ここで、車両2が走行するレーン62の右側に隣接するレーン63を特定レーンとした場合の対象物存在範囲を算出すると、右方レーダ装置4によってレーン63を走行する後続車両のみを検出することが可能な範囲は、レーン区画線65とレーン区画線66に囲まれた図5に示す範囲70であり、この範囲70が対象物存在範囲となる。
具体的に範囲70は、右方レーダ装置4の設置位置を中心とした扇形形状を有し、右方レーダ装置4によるビームの照射範囲内であって且つ『X1≦右方レーダ装置4からの距離≦X2』を満たす範囲となる。
尚、X1、X2の値は以下の式(1)、(2)によって算出される。
X1=D/sin(α−2/β)・・・(1)
X2=(D+W)/sin(α+2/β)・・・(2)
【0039】
また、車両2が走行するレーン62の2つ右側に位置するレーン64を特定レーンとした場合には、対象物存在範囲はレーン区画線66とレーン区画線67に囲まれた図5に示す範囲71となる。
具体的に範囲71は、右方レーダ装置4の設置位置を中心とした扇形形状を有し、右方レーダ装置4によるビームの照射範囲内であって且つ『X3≦右方レーダ装置4からの距離≦X4』を満たす範囲となる。
また、X3、X4の値は、以下の式(3)、(4)によって算出される。
X3=(D+W)/sin(α−2/β)・・・(3)
X4=(D+2W)/sin(α+2/β)・・・(4)
【0040】
尚、レーン64の右側に更にレーンが存在するのであれば、そのレーンに対する対象物存在範囲についても、上記と同様の方法によって算出することが可能となる。また、上記式(1)〜(4)はレーン区画線に対して車両2の方位が並行である場合の式であり、車両2が傾いている場合には、車両2の傾きの値をナビゲーション装置10から取得し、パラメータを補正する必要がある。尚、上記S4が範囲特定手段の処理に相当する。
【0041】
その後、S5でCPU31は右方レーダ装置4又は左方レーダ装置5により対象物を検出したか否かが判定される。そして、対象物を検出したと判定された場合(S5:YES)にはS6へと移行する。それに対して、対象物を検出していないと判定された場合(S5:NO)には、当該対象物検出処理プログラムを終了する。
【0042】
S6ではCPU31は、右方レーダ装置4又は左方レーダ装置5により検出された対象物までの距離nと、前記S4で算出された特定レーンにおける対象物存在範囲とから、検出した対象物が対象物存在範囲に位置するか否か判定する。例えば、図5に示す対象物存在範囲が算出された場合においては、X1≦n≦X2を満たす場合にレーン63における対象物存在範囲に対象物が位置すると判定される。また、X3≦n≦X4を満たす場合にレーン64における対象物存在範囲に対象物が位置すると判定される。尚、上記S6が位置判定手段の処理に相当する。
【0043】
そして、S7においてCPU31は、前記S6の判定結果に基づいて、右方レーダ装置4又は左方レーダ装置5により検出された対象物が存在するレーン位置を特定する。例えば、図5に示す対象物存在範囲が算出された場合においては、レーン63における対象物存在範囲に位置すると判定された場合に対象物がレーン63に存在すると特定する。また、レーン64における対象物存在範囲に位置すると判定された場合に対象物がレーン64に存在すると特定する。尚、上記S7がレーン位置特定手段の処理に相当する。
【0044】
そして、本実施形態に係る対象物検出装置1では、上記S7の処理で各レーダ装置4、5で検出された対象物が特に車両2の隣接するレーンに位置すると特定された場合に、後続車両が運転者の死角に位置することを注意する警告を液晶ディスプレイ6やスピーカ7により出力する。それによって、車線変更を行う場合における安全性を向上させる。
【0045】
以上詳細に説明した通り、本実施形態に係る対象物検出装置1は、検出範囲にある対象物までの距離のみを検出可能なシングルビーム方式の右方レーダ装置4及び左方レーダ装置5を備え、各レーダ装置4、5のパラメータ情報と、車両2の現在位置情報と、車両2が走行する道路の道路形状情報とに基づいて、各レーダ装置4、5により特定のレーン内に位置する対象物を検出可能な対象物存在範囲70、71を算出し(S4)、検出した対象物までの距離に基づいて対象物のレーン位置を特定する(S6、S7)ので、対向車両や後続車両等の対象物の検出を行なう為に、対象物の距離のみを検出可能な検出手段を用いながらも、対象物の存在するレーン位置について正確に特定することが可能となる。更に、対象物の方位も検出可能な検出手段を用いる場合と比較して、耐久性に優れ、且つ小型化、低コスト化を実現できる。
また、一の検出範囲に対して一のシングルビーム方式のレーダ装置のみを車両2に設けることによって、レーダ装置で検出した対象物の存在するレーン位置についても特定することが可能となるので、構造を簡略化することができる。
【0046】
尚、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良、変形が可能であることは勿論である。
例えば、本実施形態では図5に示すような直線形状の道路を走行する場合を例にして説明したが、本願発明に係る対象物検出装置はカーブ形状の道路を車両2が走行する場合においても適用可能である。その際においては、道路のカーブ形状をナビゲーション装置10から取得し、取得したカーブ形状に基づいて対象物存在範囲を算出することにより、検出した後続車両や対向車両のレーン位置を特定することが可能となる。
【0047】
また、本実施形態では、右方レーダ装置4及び左方レーダ装置5を運転者の死角となる右後方及び左後方が検出範囲となるように設置したが、車両2に対して斜め前方や横方向が検出範囲となるように設置しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本実施形態に係る対象物検出装置の概略構成図である。
【図2】本実施形態に係る対象物検出装置の制御系を模式的に示すブロック図である。
【図3】後方カメラによって撮像された撮像画像を示した模式図である。
【図4】本実施形態に係る対象物検出処理プログラムのフローチャートである。
【図5】対象物存在範囲の算出方法の具体例を示した説明図である。
【符号の説明】
【0049】
1 対象物検出装置
2 車両
3 レーダ管理ECU
4 右方レーダ装置
5 左方レーダ装置
10 ナビゲーション装置
31 CPU
32 ROM
33 RAM
44 後方カメラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載され、複数レーンから構成される道路を走行する場合に車両の周囲に位置する対象物を検出する対象物検出装置において、
検出範囲内に存在する前記対象物までの距離のみを検出可能な対象物検出手段と、
前記複数レーンを区画するレーン区画線を検出する区画線検出手段と、
前記レーン区画線検出手段により検出されたレーン区画線までの距離と前記対象物検出手段が前記車両に対して設置された設置態様とに基づいて、前記対象物検出手段により特定のレーン内に位置する対象物を検出可能な範囲を特定する範囲特定手段と、
前記対象物検出手段によって対象物が検出された場合に、検出された対象物が前記範囲特定手段によって特定された範囲に位置するか否かを判定する位置判定手段と、
前記位置判定手段の判定結果に基づいて前記対象物検出手段により検出された前記対象物の存在するレーン位置を特定するレーン位置特定手段と、を有することを特徴とする対象物検出装置。
【請求項2】
前記対象物検出手段はシングルビーム方式のレーダ装置であることを特徴とする請求項1に記載の対象物検出装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−249634(P2008−249634A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−94066(P2007−94066)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000100768)アイシン・エィ・ダブリュ株式会社 (3,717)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】