射出成形機
【課題】射出成形機において、実効型締力を一定に保持する制御を、トグル式型締め機構のトグルが折れ曲がった状態でも、高価な制御用電気回路を用いずに簡単に行う。
【解決手段】電動サーボモータ(8)を使用した型締め機構(1)により金型(6,7)に負荷される型締力の制御方法を提供する。該制御方法は、実際に前記金型(6,7)に負荷させたい型締力よりも大きな型締力を型締め機構(1)により負荷する手順と、可動盤(5)及び固定盤(3)間に設けた型締力調整シリンダ(20a,20b)に作動油を供給して、可動盤及び固定盤間を押し広げる方向に、型締力調整シリンダを伸ばす手順と、実際に金型に負荷させる型締力が目標値になるように、型締力調整シリンダに供給される作動油の量を制御する手順と、を具備する。
【解決手段】電動サーボモータ(8)を使用した型締め機構(1)により金型(6,7)に負荷される型締力の制御方法を提供する。該制御方法は、実際に前記金型(6,7)に負荷させたい型締力よりも大きな型締力を型締め機構(1)により負荷する手順と、可動盤(5)及び固定盤(3)間に設けた型締力調整シリンダ(20a,20b)に作動油を供給して、可動盤及び固定盤間を押し広げる方向に、型締力調整シリンダを伸ばす手順と、実際に金型に負荷させる型締力が目標値になるように、型締力調整シリンダに供給される作動油の量を制御する手順と、を具備する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トグル式型締め機構を持った射出成形機に係り、より特別には、トグル式型締め機構における型締力制御方法及びその様な制御方法を実現可能な型締め機構に関する。
【背景技術】
【0002】
トグル式射出成形機は、例えば、CDディスクのような樹脂製品の成形において広く使用されている。樹脂の射出成形において、射出圧縮成形方法及び射出プレス成形方法と呼ばれるものがある。これらの方法においては、金型のキャビティに溶融樹脂を射出した後に、型締力を金型に作用させて型締めして成形する。この様な射出成形方法によれば、キャビティ内圧力を均一にして、ひけ等を防止できる効果や、金型の表面模様の転写性を良くすることができる等の効果がある。
【0003】
射出プレス成形方法は、図8に示したように、金型は最初は、ある程度開いた状態にしておき、樹脂を金型のキャビティ内に射出して、樹脂を完全充填するか、又はほぼ充填した状態にする(図10参照)。この射出状態では、中心部のみの樹脂圧力が高い状態になっている。次に、型締力をかけ、樹脂を所定の樹脂圧力まで圧縮する(図11参照)。この様に圧縮することにより保圧をかけると、射出圧力により保圧をかける場合に比べてキャビティ内の樹脂圧力は所定の圧力で均一化されるので、良好な品質の製品が得られる。図9には、射出圧縮成形方法を示しており、この場合には、金型は最初小さな力で閉じられている。その後樹脂をキャビティ内に射出すると、樹脂圧によって型が開き、図10に示す状態になる。その後の作動は、射出プレス成形方法と同様である。
【0004】
しかし、この様な成形方法において、その後冷却すると樹脂が収縮するため、型締力が減少する現象が起こる。そのため、型締力(樹脂圧力)を維持するため、トグルを少し伸ばして型締力を微調整する必要が生じるが、実際には、型締力を微調整することは困難である。
電動トグル式型締め機構を使用してトグルが折れ曲がった状態で型締力を制御する場合、予めクロスヘッド位置と実効型締力の関係線図に基づき型締力を設定する方法が知られている。この方法でたとえば射出プレス成形等で金型が開くだけの樹脂を射出した場合、樹脂の冷却に伴い実効型締力が次第に低下するという問題があった。これを解決するためにフィードバック制御を行おうとすると型締力がハンチング現象を起こし一定にコントロールすることが困難であった。そして、このハンチングを起こさないようにするためには高価な制御用電気回路を使用する必要があった。
【0005】
この様な従来例の型締め機構において、成形工程の移行に対するクロスヘッドの位置の時間変化及び樹脂圧力の時間変化を図12に示す。図12において、クロスヘッド12の位置は、成形工程が、型締力昇圧段階、射出段階、圧縮段階と進行するに伴って、固定盤3に近づいて、樹脂圧力(又は、金型に作用する力)は増大するが、冷却段階になると、樹脂圧力は減少する。このため、サーボモータ8を作動させてクロスヘッド位置を調整するが、図12の点線で示すようにハンチングしてしまい、制御不能となり、樹脂圧力の調整が出来ない。
【0006】
トグル式型締め機構を持った射出成形機において、型締力を制御する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)が、この射出成形機においても、型締力は、サーボモータによってのみ発揮されており、型締力の微調整は、やはり困難であり、そのために高価な制御用電気回路を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−150505号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたもので、電動トグル式型締め機構のトグルが折れ曲がった状態でも型締力を一定に保つ制御を、高価な制御用電気回路を用いずに簡単に行う方法を提供することを目的とする。更に本発明は、上記方法を実現するためのトグル式型締め機構を有する射出成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の形態では、上述した目的を達成するために、射出成形機において、電動サーボモータ(8)を使用したトグル式型締め機構(1)により金型(6,7)に負荷される型締力の制御方法は、実際に前記金型(6,7)に負荷させたい型締力よりも大きな型締力を前記型締め機構(1)により負荷する手順と、可動盤(5)及び固定盤(3)間に設けた型締力調整シリンダ(21a,21b)に作動油を供給して、前記可動盤(5)及び固定盤(3)間を押し広げる方向に、前記型締力調整シリンダ(21a,21b)を伸ばす手順と、実際に前記金型(6,7)に負荷させる型締力が目標値になるように、前記型締力調整シリンダ(21a,21b)に供給される作動油の量を制御する手順と、を具備する。
【0010】
型締力の制御方法は、前記金型(6,7)に負荷させる型締力を、前記金型(6,7)に取り付けた歪センサ(13a)又は金型内圧センサ(樹脂圧センサ)(13b)等の型締力検出センサ(13)で測定する手順を更に具備することが好ましい。
【0011】
また、前記制御する手順において、前記型締力調整シリンダ(21a,21b)に供給される作動油の量の制御は、前記型締力調整シリンダ(21a,21b)に作動油を供給するための油圧回路(20)に備えられた、比例電磁圧力弁(25)を調整することにより行われることが好ましい。
【0012】
本発明の第2の形態では、射出成形機において、金型(6,7)に型締力を負荷させるためのトグル式型締め機構(1)は、型締力を生じるための電動サーボモータ(8)と、前記金型(6,7)を間に挟む、可動盤(5)及び固定盤(3)と、前記可動盤(5)及び前記固定盤(3)間に設けられた型締力調整シリンダ(21a,21b)と、前記型締力調整シリンダ(21a,21b)に作動油を供給して伸縮作動させる油圧回路(20)と、前記型締力調整シリンダ(21a,21b)を制御するための制御装置(30)と、を具備する。実際に前記金型(6,7)に負荷させる型締力が目標値になるように、前記型締力調整シリンダ(21a,21b)に供給される作動油の量を制御する。
【0013】
該型締め機構(1)は、前記金型(6,7)に負荷させる型締力を測定するための型締力検出センサ(13,13a,13b)を更に具備し、前記油圧回路(20)は、前記型締力調整シリンダ(21a,21b)に供給される作動油の量を制御する、比例電磁圧力弁(25)を具備することが好ましい。
【0014】
上記の本発明の説明において、カッコ()内の記号又は数字は、以下に示す実施の形態との対応を示すために添付される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば以上のように、射出圧縮や射出プレス成形のように樹脂成形中に金型が開いた状態になる成形方法であっても、成形中の実効型締力が変化することを油圧シリンダの力を制御することで簡単に防止出来る。従って、樹脂等の射出成形において、冷却段階において、樹脂が収縮する際に困難であった実効型締力を一定に保持する制御を、型締め装置のトグルが折れ曲がった状態でも、高価な制御用電気回路を用いずに簡単に行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態係る射出成形機のトグル式型締め機構の構成を示す図解的概要図である。
【図2】図2は、図1の装置に含まれる油圧回路の概要系統図である。
【図3】図3は、型締力検出センサとして歪ゲージを金型に取り付けた場合の説明図である。
【図4】図4は、型締力検出センサとして樹脂圧センサ(金型内圧センサ)を金型に取り付けた場合の説明図である。
【図5】図5は、射出圧縮方式の場合の、クロスヘッド位置、型締力、油圧シリンダ力等の時間変化を示す図面である。
【図6】図6は、射出プレス方式の場合の、クロスヘッド位置、型締力、油圧シリンダ力等の時間変化を示す図面である。
【図7】図7は、冷却段階における型締力制御のフローチャート図である。
【図8】図8は、射出プレスの場合の、射出工程における射出開始時における金型の型開状態等を示す説明図である。
【図9】図9は、射出工程における射出圧縮の場合の、射出開始時における金型の型開状態等を示す説明図である。
【図10】図10は、射出工程における樹脂充填完了時における金型の樹脂射出状態等を示す説明図である。
【図11】図11は、射出工程における圧縮段階における金型の樹脂状態等を示す説明図である。
【図12】図12は、従来例の射出圧縮成形方法の場合の、クロスヘッド位置、樹脂圧力等の時間変化を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。図1〜図7は、本発明の実施例に係り、図1は本発明に係る射出成形機のトグル式型締め機構の構成を示す概要図、図2は図1の型締め機構に含まれる油圧回路の概略系統図、図3と4は型締力検出センサの説明図、図5と6は、本発明の実施の形態における型締め工程におけるクロスヘッド位置、型締力等諸元の時間変化の説明図、図7は冷却段階における型締力制御のフローチャート図である。
【0018】
全ての図面を通して、各図面において要素部分と同じ又は同様である別の図面の要素部分は、同じ参照符号により指定されている。
【0019】
本発明に使用する射出成形機の電動トグル式型締め機構1の構成および動作について図1に基づいて説明する。以下、射出成形機は樹脂の射出成形機として説明される。射出成形機の型締め機構1は、タイバ2の前端部に固定盤3を、タイバ2の後端部にリンクハウジング4を取付け、このリンクハウジング4にトグル駆動用(型締め用)サーボモータ8が固定されている。サーボモータ8とボールネジ機構11によりクロスヘッド12を駆動することにより、トグルリンク10を介してタイバ2上を摺動する可動盤5を固定盤3に対して離間接近させるものであり、この可動盤5に可動金型7が取付けられ、固定盤3に固定金型6が取付けられている。
【0020】
本実施の形態において、可動盤5と固定盤3の間には、型締力調整シリンダ21a及び21bが設置される。図1において、型締力調整シリンダ21a,21bの数は2基であるが、これ以外の数量であっても良い。型締力調整シリンダ21a,21bを含む油圧回路20を図2に示す。型締力調整シリンダ21a,21bは、電動の油圧ポンプ22から作動油が供給され、往復動することが出来る。即ち、型締力調整シリンダ21a,21bは、可動盤5を押し出し又は引き込むことができる。図2の油圧回路20において、型締力調整シリンダ21a,21bの前には、電磁切替弁24が備えられ、電磁切替弁24は、油圧ポンプ22から型締力調整シリンダ21a,21bへの作動油の供給の方向を切り替えて、型締力調整シリンダ21a,21bの作動方向を切り替えるように機能する。油圧ポンプ22の吐出側には、比例電磁圧力弁25が設けられて、型締力調整シリンダ21a,21bへの供給作動油の圧力を調整する。比例電磁圧力弁25は、油圧回路内の圧力が高い場合には、作動油をタンク26に戻すように作用して、油圧回路20の圧力を調整する。
【0021】
図3に示すように、型締力を検出するための型締力検出センサ13として、可動型7の内部構成体の側面上に歪ゲージ13aを貼り、その検出信号を制御装置30に送信している。歪ゲージ13aは固定型6に貼っても良い。型締力検出センサとして、歪ゲージ13aの代わりにキャビティ内の樹脂圧力を検出する樹脂圧センサ13bを使用し、樹脂圧力を型締力に換算しても良い(図4参照)。また、クロスヘッド12の位置検出のために、リニアセンサ等のクロスヘッド位置検出センサ14が備えられており、その検出信号を制御装置30に送信している。本実施例ではトグル駆動機構としてサーボモータ8とボールネジ機構11を採用しているのでサーボモータ8の回転角度よりクロスヘッド位置を算出することもできる。
【0022】
次に、本実施の形態における射出成形機及びトグル式型締め機構1の作動について概略説明する。先ず、射出圧縮の場合について説明する。射出圧縮の場合の、クロスヘッド位置、型締力、油圧シリンダ力等の時間変化について図5に示す。まず、型閉じが行われ(型閉じ段階)、型が閉じた状態で、型締力の昇圧(昇圧段階)及び樹脂射出(射出段階)が行われる。昇圧段階においては、型締力を測定し、設定した型締力になるまでクロスヘッド12を前進させ、型締力を金型に予めかけておくか、あるいは、設定した型締力になるクロスヘッド12の位置を予め算出しておき、その位置までクロスヘッド12を前進させることにより行う。樹脂の射出開始において、金型内の樹脂流路であるランナーに設置されたバルブゲート(図示されない)が開かれて、樹脂は金型間のキャビティ内に射出される。バルブゲートは、射出ノズルに取り付けられた樹脂流路開閉弁である、シャットオフノズルで代替されても良い。射出は、射出装置のスクリューを、所定量の樹脂を充填できる位置まで前進させるか、又は所定のストローク前進させて行う。既に説明したように、樹脂の射出力により、金型は開かれる。所定量の樹脂が射出されると射出(射出段階)は終了する。ここでは、型締力の昇圧後、射出が行われるように説明されたが、昇圧動作と射出動作が同時に開始されても良い。
【0023】
次に、サーボモータ8を駆動し、クロスヘッド12を固定盤3に向かって移動させて、金型を型締めして圧縮する(圧縮段階)。圧縮段階において、型開量(固定型6と可動型7の間の距離)を測定し、設定した型開量になるまで、サーボモータ8を作動させて、クロスヘッド12を前進させる。あるいは、前出の型締力検出センサ13aにより計測する、樹脂圧力又は金型に作用する力が設定値になるまでクロスヘッド12を前進させても良い。更にはこの代案として、クロスヘッド12の位置と型締力との関係を求めておき、予め算出した位置までクロスヘッド12を前進させても良い。圧縮段階の開始と同時に、切替弁24が励磁されるとともに比例電磁圧力弁25は、設定値に調整され、型締力調整シリンダ21a,21bに所定の力がかけられる。圧縮段階において、樹脂圧力を高くし過ぎると、樹脂密度が高くなり金型から取り出した後の成形品が大きくなるので、収縮しない程度の適度の強さで圧縮することが必要である。
【0024】
次に、キャビティ内の樹脂は冷却される(冷却段階)。冷却段階において、樹脂が冷却されることにより収縮し、型締力が低下する。冷却段階において、型締力を所定レベルに保持するために、型締力調整シリンダ21a,21b及びその油圧回路20が使用される。冷却段階における油圧制御のフローチャートを図7に示す。ステップ1(S1)において、圧縮段階が完了すると、ステップ2(S2)に進む。S2において、実効型締力F1を型締力検出センサにより測定する(実効型締力F1は、樹脂圧力又は金型に作用する力から換算して求める)。この測定のサンプリング間隔は、10〜100msecで行われることが好ましい。そして、ステップ3(S3)に進み、実効型締力F1と実効型締力設定値Fとの比較を行う。樹脂の冷却により、型締力が低下し、実効型締力F1が実効型締力設定値Fより低くなっていた場合は、ステップ4(S4)に進み、低くなっていなかった場合(高い場合)は、ステップ5(S5)に進む。
【0025】
S4において、制御装置30は、比例電磁圧力弁25の設定圧力を変え、型締力調整用シリンダ21a,21bの押圧力を低下させるように、型締力調整用シリンダ21a,21bを作動させる(型締力調整用シリンダ21a,21bの押圧力は、サーボモータ8による型締力に対向する方向で働いている)。この操作により、型締力は上昇する。その後、ステップ6(S6)に進む。S5に進んだ場合は、比例電磁圧力弁25の設定圧力を変えることなく、油圧を維持した状態でS6に進む。
【0026】
S6において、冷却タイマーのタイムアウト、即ち、冷却時間が所定時間経過したかどうかをチェックする。冷却タイマーがタイムアウトするまでは、S2に戻り、同じ制御ループを繰り返す。冷却タイマーがタイムアウトすると、ステップ7(S7)及びステップ8(S8)へ進み、型開きを行ない、また切替弁24を消磁し、型締力調整シリンダ21a,21bの圧力を落とす。
【0027】
上記の制御、即ち油圧回路の制御は、全て制御装置30により行う。制御装置30は、型締力設定部及び許容値設定部31と、演算部32と、油圧バルブ制御部33とを少なくとも具備する。型締力設定部及び許容値設定部31は、実効型締力設定値F等の設定が行われ、格納されており、演算部32において実効型締力F1と実効型締力設定値Fとの比較、演算が行われる。演算部32の演算結果に基づいて、油圧バルブ制御部33は、比例電磁圧力弁25、切替弁24等の制御を行う。
【0028】
図6を参照すると、射出プレス方式の場合のクロスヘッド位置、型締力、油圧シリンダ力等の時間変化が示されており、図5に対応する。図6の型閉じ段階において、クロスヘッド12は、所定の型開量になるまで前進させられるか、又は射出樹脂量に対応するように予め算出された位置まで前進させられる。射出プレス方式の場合は、型締力の昇圧段階は設けられず、型閉じ段階の次に射出段階が行われる。一般的には、やはり射出により型開量は変化する。その後の圧縮、冷却、型開きの手順は、基本的には射出圧縮の場合と同様であるので、説明の重複を避けて省略する。
【0029】
より具体的な例として次のような制御を行う。実際に金型に負荷したい型締力(実効型締力)を500KNとした場合に500KNより大きいたとえば600KNの初期型締力が負荷できる位置までトグルを伸ばす。その後型締力調整シリンダを伸ばすことにより、金型に500KNの実効型締力が負荷されるように型締力調整シリンダに供給される油圧力をフィードバック制御する。
従来技術の射出成形機のトグル式型締め機構においては、サーボモータにより生じる型締力に対して、金型の歪及び樹脂の圧力が対向する。一方、本発明のトグル式型締め機構においては、サーボモータにより生じる型締力に対して、金型の歪と樹脂の圧力に加えて型締力調整シリンダが対向する。そして、実効型締力として樹脂に作用する型締力を、型締力調整シリンダの押し力を調整することにより制御して、一定に保持する。
【0030】
次に上記実施の形態の効果及び作用について説明する。本発明の一実施の形態のトグル式射出成形機の型締装置により以下の効果が期待できる。
・樹脂等の射出成形において、冷却段階において樹脂が収縮する際に困難であった実効型締力を一定に保持する制御を、型締め機構のトグルが折れ曲がった状態でも、高価な制御用電気回路を用いずに簡単に行うことが出来る。
・その結果、バリの発生等を生じることなく、良好な品質の成形製品を製造することが出来る。
【0031】
上記の説明において、射出材料は、樹脂として記載されたが、樹脂以外の材料であっても良い。
【0032】
上記において記載した、あるいは添付図面に示した実施の形態の油圧回路において、説明を分かり易くするために、基本的に最低限の構成要素だけが記載されているが、装置の機能、制御、配置等に応じて必要な、弁、こし器、センサ等の構成要素が追加されても良い。
【0033】
本明細書において記載される数値について、説明の便宜上使用したものであって、特に本発明がこれらの数値によって限定されることはなく、例えば、射出装置の型式、成形製品、射出材料等が変わればこれらの数値が変わることがあり得る。
【0034】
上記の実施の形態は本発明の例であり、本発明は、該実施の形態により制限されるものではなく、請求項に記載される事項によってのみ規定されており、上記以外の実施の形態も実施可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 トグル式型締め機構
2 タイバ
3 固定盤
4 リンクハウジング
5 可動盤
6 固定金型
7 可動金型
8 サーボモータ
10 トグルリンク
11 ボールネジ機構
12 クロスヘッド
13 型締力検出センサ
13a 歪ゲージ
13b 樹脂圧センサ
14 クロスヘッド位置検出センサ
20 油圧回路
21a,21b 型締力調整シリンダ
22 ポンプ
24 電磁切替弁
25 比例電磁圧力弁
26 タンク
30 制御装置
F 実効型締力設定値
F1 実効型締力
【技術分野】
【0001】
本発明は、トグル式型締め機構を持った射出成形機に係り、より特別には、トグル式型締め機構における型締力制御方法及びその様な制御方法を実現可能な型締め機構に関する。
【背景技術】
【0002】
トグル式射出成形機は、例えば、CDディスクのような樹脂製品の成形において広く使用されている。樹脂の射出成形において、射出圧縮成形方法及び射出プレス成形方法と呼ばれるものがある。これらの方法においては、金型のキャビティに溶融樹脂を射出した後に、型締力を金型に作用させて型締めして成形する。この様な射出成形方法によれば、キャビティ内圧力を均一にして、ひけ等を防止できる効果や、金型の表面模様の転写性を良くすることができる等の効果がある。
【0003】
射出プレス成形方法は、図8に示したように、金型は最初は、ある程度開いた状態にしておき、樹脂を金型のキャビティ内に射出して、樹脂を完全充填するか、又はほぼ充填した状態にする(図10参照)。この射出状態では、中心部のみの樹脂圧力が高い状態になっている。次に、型締力をかけ、樹脂を所定の樹脂圧力まで圧縮する(図11参照)。この様に圧縮することにより保圧をかけると、射出圧力により保圧をかける場合に比べてキャビティ内の樹脂圧力は所定の圧力で均一化されるので、良好な品質の製品が得られる。図9には、射出圧縮成形方法を示しており、この場合には、金型は最初小さな力で閉じられている。その後樹脂をキャビティ内に射出すると、樹脂圧によって型が開き、図10に示す状態になる。その後の作動は、射出プレス成形方法と同様である。
【0004】
しかし、この様な成形方法において、その後冷却すると樹脂が収縮するため、型締力が減少する現象が起こる。そのため、型締力(樹脂圧力)を維持するため、トグルを少し伸ばして型締力を微調整する必要が生じるが、実際には、型締力を微調整することは困難である。
電動トグル式型締め機構を使用してトグルが折れ曲がった状態で型締力を制御する場合、予めクロスヘッド位置と実効型締力の関係線図に基づき型締力を設定する方法が知られている。この方法でたとえば射出プレス成形等で金型が開くだけの樹脂を射出した場合、樹脂の冷却に伴い実効型締力が次第に低下するという問題があった。これを解決するためにフィードバック制御を行おうとすると型締力がハンチング現象を起こし一定にコントロールすることが困難であった。そして、このハンチングを起こさないようにするためには高価な制御用電気回路を使用する必要があった。
【0005】
この様な従来例の型締め機構において、成形工程の移行に対するクロスヘッドの位置の時間変化及び樹脂圧力の時間変化を図12に示す。図12において、クロスヘッド12の位置は、成形工程が、型締力昇圧段階、射出段階、圧縮段階と進行するに伴って、固定盤3に近づいて、樹脂圧力(又は、金型に作用する力)は増大するが、冷却段階になると、樹脂圧力は減少する。このため、サーボモータ8を作動させてクロスヘッド位置を調整するが、図12の点線で示すようにハンチングしてしまい、制御不能となり、樹脂圧力の調整が出来ない。
【0006】
トグル式型締め機構を持った射出成形機において、型締力を制御する装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)が、この射出成形機においても、型締力は、サーボモータによってのみ発揮されており、型締力の微調整は、やはり困難であり、そのために高価な制御用電気回路を必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−150505号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたもので、電動トグル式型締め機構のトグルが折れ曲がった状態でも型締力を一定に保つ制御を、高価な制御用電気回路を用いずに簡単に行う方法を提供することを目的とする。更に本発明は、上記方法を実現するためのトグル式型締め機構を有する射出成形機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の形態では、上述した目的を達成するために、射出成形機において、電動サーボモータ(8)を使用したトグル式型締め機構(1)により金型(6,7)に負荷される型締力の制御方法は、実際に前記金型(6,7)に負荷させたい型締力よりも大きな型締力を前記型締め機構(1)により負荷する手順と、可動盤(5)及び固定盤(3)間に設けた型締力調整シリンダ(21a,21b)に作動油を供給して、前記可動盤(5)及び固定盤(3)間を押し広げる方向に、前記型締力調整シリンダ(21a,21b)を伸ばす手順と、実際に前記金型(6,7)に負荷させる型締力が目標値になるように、前記型締力調整シリンダ(21a,21b)に供給される作動油の量を制御する手順と、を具備する。
【0010】
型締力の制御方法は、前記金型(6,7)に負荷させる型締力を、前記金型(6,7)に取り付けた歪センサ(13a)又は金型内圧センサ(樹脂圧センサ)(13b)等の型締力検出センサ(13)で測定する手順を更に具備することが好ましい。
【0011】
また、前記制御する手順において、前記型締力調整シリンダ(21a,21b)に供給される作動油の量の制御は、前記型締力調整シリンダ(21a,21b)に作動油を供給するための油圧回路(20)に備えられた、比例電磁圧力弁(25)を調整することにより行われることが好ましい。
【0012】
本発明の第2の形態では、射出成形機において、金型(6,7)に型締力を負荷させるためのトグル式型締め機構(1)は、型締力を生じるための電動サーボモータ(8)と、前記金型(6,7)を間に挟む、可動盤(5)及び固定盤(3)と、前記可動盤(5)及び前記固定盤(3)間に設けられた型締力調整シリンダ(21a,21b)と、前記型締力調整シリンダ(21a,21b)に作動油を供給して伸縮作動させる油圧回路(20)と、前記型締力調整シリンダ(21a,21b)を制御するための制御装置(30)と、を具備する。実際に前記金型(6,7)に負荷させる型締力が目標値になるように、前記型締力調整シリンダ(21a,21b)に供給される作動油の量を制御する。
【0013】
該型締め機構(1)は、前記金型(6,7)に負荷させる型締力を測定するための型締力検出センサ(13,13a,13b)を更に具備し、前記油圧回路(20)は、前記型締力調整シリンダ(21a,21b)に供給される作動油の量を制御する、比例電磁圧力弁(25)を具備することが好ましい。
【0014】
上記の本発明の説明において、カッコ()内の記号又は数字は、以下に示す実施の形態との対応を示すために添付される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば以上のように、射出圧縮や射出プレス成形のように樹脂成形中に金型が開いた状態になる成形方法であっても、成形中の実効型締力が変化することを油圧シリンダの力を制御することで簡単に防止出来る。従って、樹脂等の射出成形において、冷却段階において、樹脂が収縮する際に困難であった実効型締力を一定に保持する制御を、型締め装置のトグルが折れ曲がった状態でも、高価な制御用電気回路を用いずに簡単に行うことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の一実施の形態係る射出成形機のトグル式型締め機構の構成を示す図解的概要図である。
【図2】図2は、図1の装置に含まれる油圧回路の概要系統図である。
【図3】図3は、型締力検出センサとして歪ゲージを金型に取り付けた場合の説明図である。
【図4】図4は、型締力検出センサとして樹脂圧センサ(金型内圧センサ)を金型に取り付けた場合の説明図である。
【図5】図5は、射出圧縮方式の場合の、クロスヘッド位置、型締力、油圧シリンダ力等の時間変化を示す図面である。
【図6】図6は、射出プレス方式の場合の、クロスヘッド位置、型締力、油圧シリンダ力等の時間変化を示す図面である。
【図7】図7は、冷却段階における型締力制御のフローチャート図である。
【図8】図8は、射出プレスの場合の、射出工程における射出開始時における金型の型開状態等を示す説明図である。
【図9】図9は、射出工程における射出圧縮の場合の、射出開始時における金型の型開状態等を示す説明図である。
【図10】図10は、射出工程における樹脂充填完了時における金型の樹脂射出状態等を示す説明図である。
【図11】図11は、射出工程における圧縮段階における金型の樹脂状態等を示す説明図である。
【図12】図12は、従来例の射出圧縮成形方法の場合の、クロスヘッド位置、樹脂圧力等の時間変化を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態について説明する。図1〜図7は、本発明の実施例に係り、図1は本発明に係る射出成形機のトグル式型締め機構の構成を示す概要図、図2は図1の型締め機構に含まれる油圧回路の概略系統図、図3と4は型締力検出センサの説明図、図5と6は、本発明の実施の形態における型締め工程におけるクロスヘッド位置、型締力等諸元の時間変化の説明図、図7は冷却段階における型締力制御のフローチャート図である。
【0018】
全ての図面を通して、各図面において要素部分と同じ又は同様である別の図面の要素部分は、同じ参照符号により指定されている。
【0019】
本発明に使用する射出成形機の電動トグル式型締め機構1の構成および動作について図1に基づいて説明する。以下、射出成形機は樹脂の射出成形機として説明される。射出成形機の型締め機構1は、タイバ2の前端部に固定盤3を、タイバ2の後端部にリンクハウジング4を取付け、このリンクハウジング4にトグル駆動用(型締め用)サーボモータ8が固定されている。サーボモータ8とボールネジ機構11によりクロスヘッド12を駆動することにより、トグルリンク10を介してタイバ2上を摺動する可動盤5を固定盤3に対して離間接近させるものであり、この可動盤5に可動金型7が取付けられ、固定盤3に固定金型6が取付けられている。
【0020】
本実施の形態において、可動盤5と固定盤3の間には、型締力調整シリンダ21a及び21bが設置される。図1において、型締力調整シリンダ21a,21bの数は2基であるが、これ以外の数量であっても良い。型締力調整シリンダ21a,21bを含む油圧回路20を図2に示す。型締力調整シリンダ21a,21bは、電動の油圧ポンプ22から作動油が供給され、往復動することが出来る。即ち、型締力調整シリンダ21a,21bは、可動盤5を押し出し又は引き込むことができる。図2の油圧回路20において、型締力調整シリンダ21a,21bの前には、電磁切替弁24が備えられ、電磁切替弁24は、油圧ポンプ22から型締力調整シリンダ21a,21bへの作動油の供給の方向を切り替えて、型締力調整シリンダ21a,21bの作動方向を切り替えるように機能する。油圧ポンプ22の吐出側には、比例電磁圧力弁25が設けられて、型締力調整シリンダ21a,21bへの供給作動油の圧力を調整する。比例電磁圧力弁25は、油圧回路内の圧力が高い場合には、作動油をタンク26に戻すように作用して、油圧回路20の圧力を調整する。
【0021】
図3に示すように、型締力を検出するための型締力検出センサ13として、可動型7の内部構成体の側面上に歪ゲージ13aを貼り、その検出信号を制御装置30に送信している。歪ゲージ13aは固定型6に貼っても良い。型締力検出センサとして、歪ゲージ13aの代わりにキャビティ内の樹脂圧力を検出する樹脂圧センサ13bを使用し、樹脂圧力を型締力に換算しても良い(図4参照)。また、クロスヘッド12の位置検出のために、リニアセンサ等のクロスヘッド位置検出センサ14が備えられており、その検出信号を制御装置30に送信している。本実施例ではトグル駆動機構としてサーボモータ8とボールネジ機構11を採用しているのでサーボモータ8の回転角度よりクロスヘッド位置を算出することもできる。
【0022】
次に、本実施の形態における射出成形機及びトグル式型締め機構1の作動について概略説明する。先ず、射出圧縮の場合について説明する。射出圧縮の場合の、クロスヘッド位置、型締力、油圧シリンダ力等の時間変化について図5に示す。まず、型閉じが行われ(型閉じ段階)、型が閉じた状態で、型締力の昇圧(昇圧段階)及び樹脂射出(射出段階)が行われる。昇圧段階においては、型締力を測定し、設定した型締力になるまでクロスヘッド12を前進させ、型締力を金型に予めかけておくか、あるいは、設定した型締力になるクロスヘッド12の位置を予め算出しておき、その位置までクロスヘッド12を前進させることにより行う。樹脂の射出開始において、金型内の樹脂流路であるランナーに設置されたバルブゲート(図示されない)が開かれて、樹脂は金型間のキャビティ内に射出される。バルブゲートは、射出ノズルに取り付けられた樹脂流路開閉弁である、シャットオフノズルで代替されても良い。射出は、射出装置のスクリューを、所定量の樹脂を充填できる位置まで前進させるか、又は所定のストローク前進させて行う。既に説明したように、樹脂の射出力により、金型は開かれる。所定量の樹脂が射出されると射出(射出段階)は終了する。ここでは、型締力の昇圧後、射出が行われるように説明されたが、昇圧動作と射出動作が同時に開始されても良い。
【0023】
次に、サーボモータ8を駆動し、クロスヘッド12を固定盤3に向かって移動させて、金型を型締めして圧縮する(圧縮段階)。圧縮段階において、型開量(固定型6と可動型7の間の距離)を測定し、設定した型開量になるまで、サーボモータ8を作動させて、クロスヘッド12を前進させる。あるいは、前出の型締力検出センサ13aにより計測する、樹脂圧力又は金型に作用する力が設定値になるまでクロスヘッド12を前進させても良い。更にはこの代案として、クロスヘッド12の位置と型締力との関係を求めておき、予め算出した位置までクロスヘッド12を前進させても良い。圧縮段階の開始と同時に、切替弁24が励磁されるとともに比例電磁圧力弁25は、設定値に調整され、型締力調整シリンダ21a,21bに所定の力がかけられる。圧縮段階において、樹脂圧力を高くし過ぎると、樹脂密度が高くなり金型から取り出した後の成形品が大きくなるので、収縮しない程度の適度の強さで圧縮することが必要である。
【0024】
次に、キャビティ内の樹脂は冷却される(冷却段階)。冷却段階において、樹脂が冷却されることにより収縮し、型締力が低下する。冷却段階において、型締力を所定レベルに保持するために、型締力調整シリンダ21a,21b及びその油圧回路20が使用される。冷却段階における油圧制御のフローチャートを図7に示す。ステップ1(S1)において、圧縮段階が完了すると、ステップ2(S2)に進む。S2において、実効型締力F1を型締力検出センサにより測定する(実効型締力F1は、樹脂圧力又は金型に作用する力から換算して求める)。この測定のサンプリング間隔は、10〜100msecで行われることが好ましい。そして、ステップ3(S3)に進み、実効型締力F1と実効型締力設定値Fとの比較を行う。樹脂の冷却により、型締力が低下し、実効型締力F1が実効型締力設定値Fより低くなっていた場合は、ステップ4(S4)に進み、低くなっていなかった場合(高い場合)は、ステップ5(S5)に進む。
【0025】
S4において、制御装置30は、比例電磁圧力弁25の設定圧力を変え、型締力調整用シリンダ21a,21bの押圧力を低下させるように、型締力調整用シリンダ21a,21bを作動させる(型締力調整用シリンダ21a,21bの押圧力は、サーボモータ8による型締力に対向する方向で働いている)。この操作により、型締力は上昇する。その後、ステップ6(S6)に進む。S5に進んだ場合は、比例電磁圧力弁25の設定圧力を変えることなく、油圧を維持した状態でS6に進む。
【0026】
S6において、冷却タイマーのタイムアウト、即ち、冷却時間が所定時間経過したかどうかをチェックする。冷却タイマーがタイムアウトするまでは、S2に戻り、同じ制御ループを繰り返す。冷却タイマーがタイムアウトすると、ステップ7(S7)及びステップ8(S8)へ進み、型開きを行ない、また切替弁24を消磁し、型締力調整シリンダ21a,21bの圧力を落とす。
【0027】
上記の制御、即ち油圧回路の制御は、全て制御装置30により行う。制御装置30は、型締力設定部及び許容値設定部31と、演算部32と、油圧バルブ制御部33とを少なくとも具備する。型締力設定部及び許容値設定部31は、実効型締力設定値F等の設定が行われ、格納されており、演算部32において実効型締力F1と実効型締力設定値Fとの比較、演算が行われる。演算部32の演算結果に基づいて、油圧バルブ制御部33は、比例電磁圧力弁25、切替弁24等の制御を行う。
【0028】
図6を参照すると、射出プレス方式の場合のクロスヘッド位置、型締力、油圧シリンダ力等の時間変化が示されており、図5に対応する。図6の型閉じ段階において、クロスヘッド12は、所定の型開量になるまで前進させられるか、又は射出樹脂量に対応するように予め算出された位置まで前進させられる。射出プレス方式の場合は、型締力の昇圧段階は設けられず、型閉じ段階の次に射出段階が行われる。一般的には、やはり射出により型開量は変化する。その後の圧縮、冷却、型開きの手順は、基本的には射出圧縮の場合と同様であるので、説明の重複を避けて省略する。
【0029】
より具体的な例として次のような制御を行う。実際に金型に負荷したい型締力(実効型締力)を500KNとした場合に500KNより大きいたとえば600KNの初期型締力が負荷できる位置までトグルを伸ばす。その後型締力調整シリンダを伸ばすことにより、金型に500KNの実効型締力が負荷されるように型締力調整シリンダに供給される油圧力をフィードバック制御する。
従来技術の射出成形機のトグル式型締め機構においては、サーボモータにより生じる型締力に対して、金型の歪及び樹脂の圧力が対向する。一方、本発明のトグル式型締め機構においては、サーボモータにより生じる型締力に対して、金型の歪と樹脂の圧力に加えて型締力調整シリンダが対向する。そして、実効型締力として樹脂に作用する型締力を、型締力調整シリンダの押し力を調整することにより制御して、一定に保持する。
【0030】
次に上記実施の形態の効果及び作用について説明する。本発明の一実施の形態のトグル式射出成形機の型締装置により以下の効果が期待できる。
・樹脂等の射出成形において、冷却段階において樹脂が収縮する際に困難であった実効型締力を一定に保持する制御を、型締め機構のトグルが折れ曲がった状態でも、高価な制御用電気回路を用いずに簡単に行うことが出来る。
・その結果、バリの発生等を生じることなく、良好な品質の成形製品を製造することが出来る。
【0031】
上記の説明において、射出材料は、樹脂として記載されたが、樹脂以外の材料であっても良い。
【0032】
上記において記載した、あるいは添付図面に示した実施の形態の油圧回路において、説明を分かり易くするために、基本的に最低限の構成要素だけが記載されているが、装置の機能、制御、配置等に応じて必要な、弁、こし器、センサ等の構成要素が追加されても良い。
【0033】
本明細書において記載される数値について、説明の便宜上使用したものであって、特に本発明がこれらの数値によって限定されることはなく、例えば、射出装置の型式、成形製品、射出材料等が変わればこれらの数値が変わることがあり得る。
【0034】
上記の実施の形態は本発明の例であり、本発明は、該実施の形態により制限されるものではなく、請求項に記載される事項によってのみ規定されており、上記以外の実施の形態も実施可能である。
【符号の説明】
【0035】
1 トグル式型締め機構
2 タイバ
3 固定盤
4 リンクハウジング
5 可動盤
6 固定金型
7 可動金型
8 サーボモータ
10 トグルリンク
11 ボールネジ機構
12 クロスヘッド
13 型締力検出センサ
13a 歪ゲージ
13b 樹脂圧センサ
14 クロスヘッド位置検出センサ
20 油圧回路
21a,21b 型締力調整シリンダ
22 ポンプ
24 電磁切替弁
25 比例電磁圧力弁
26 タンク
30 制御装置
F 実効型締力設定値
F1 実効型締力
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機において、電動サーボモータ(8)を使用したトグル式型締め機構(1)により金型(6,7)に負荷される型締力の制御方法であって、
実際に前記金型(6,7)に負荷させたい型締力よりも大きな型締力を前記型締め機構(1)により負荷する手順と、
可動盤(5)及び固定盤(3)間に設けた型締力調整シリンダ(21a,21b)に作動油を供給して、前記可動盤(5)及び固定盤(3)間を押し広げる方向に、前記型締力調整シリンダ(21a,21b)を伸ばす手順と、
実際に前記金型(6,7)に負荷させる型締力が目標値になるように、前記型締力調整シリンダ(21a,21b)に供給される作動油の量を制御する手順と、
を具備することを特徴とする型締力の制御方法。
【請求項2】
前記金型(6,7)に負荷させる型締力を、前記金型(6,7)に取り付けた歪センサ(13a)で測定する手順を更に具備することを特徴とする請求項1に記載の型締力の制御方法。
【請求項3】
前記金型(6,7)に負荷させる型締力を、前記金型(6,7)に取り付けた金型内圧センサ(13b)で測定する手順を更に具備することを特徴とする請求項1に記載の型締力の制御方法。
【請求項4】
前記制御する手順において、前記型締力調整シリンダ(21a,21b)に供給される作動油の量の制御は、前記型締力調整シリンダ(21a,21b)に作動油を供給するための油圧回路(20)に備えられた、比例電磁圧力弁(25)を調整することにより行われることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の型締力の制御方法。
【請求項5】
射出成形機において、金型(6,7)に型締力を負荷させるためのトグル式型締め機構(1)であって、
型締力を生じるための電動サーボモータ(8)と、
前記金型(6,7)を間に挟む、可動盤(5)及び固定盤(3)と、
前記可動盤(5)及び前記固定盤(3)間に設けられた型締力調整シリンダ(21a,21b)と、
前記型締力調整シリンダ(21a,21b)に作動油を供給して伸縮作動させる油圧回路(20)と、
前記型締力調整シリンダ(21a,21b)を制御するための制御装置(30)と、
を具備する、型締め機構(1)において、
実際に前記金型(6,7)に負荷させる型締力が目標値になるように、前記型締力調整シリンダ(21a,21b)に供給される作動油の量を制御することを特徴とする型締め機構。
【請求項6】
該型締め機構(1)は、前記金型(6,7)に負荷させる型締力を測定するための型締力検出センサ(13,13a,13b)を更に具備しており、
前記油圧回路(20)は、比例電磁圧力弁(25)を具備しており、前記型締力調整シリンダ(21a,21b)に供給される作動油の量の制御は、前記比例電磁圧力弁(25)を調整することにより行われることを特徴とする請求項5に記載の型締機構。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の型締め機構(1)を具備することを特徴とする射出成形機。
【請求項1】
射出成形機において、電動サーボモータ(8)を使用したトグル式型締め機構(1)により金型(6,7)に負荷される型締力の制御方法であって、
実際に前記金型(6,7)に負荷させたい型締力よりも大きな型締力を前記型締め機構(1)により負荷する手順と、
可動盤(5)及び固定盤(3)間に設けた型締力調整シリンダ(21a,21b)に作動油を供給して、前記可動盤(5)及び固定盤(3)間を押し広げる方向に、前記型締力調整シリンダ(21a,21b)を伸ばす手順と、
実際に前記金型(6,7)に負荷させる型締力が目標値になるように、前記型締力調整シリンダ(21a,21b)に供給される作動油の量を制御する手順と、
を具備することを特徴とする型締力の制御方法。
【請求項2】
前記金型(6,7)に負荷させる型締力を、前記金型(6,7)に取り付けた歪センサ(13a)で測定する手順を更に具備することを特徴とする請求項1に記載の型締力の制御方法。
【請求項3】
前記金型(6,7)に負荷させる型締力を、前記金型(6,7)に取り付けた金型内圧センサ(13b)で測定する手順を更に具備することを特徴とする請求項1に記載の型締力の制御方法。
【請求項4】
前記制御する手順において、前記型締力調整シリンダ(21a,21b)に供給される作動油の量の制御は、前記型締力調整シリンダ(21a,21b)に作動油を供給するための油圧回路(20)に備えられた、比例電磁圧力弁(25)を調整することにより行われることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の型締力の制御方法。
【請求項5】
射出成形機において、金型(6,7)に型締力を負荷させるためのトグル式型締め機構(1)であって、
型締力を生じるための電動サーボモータ(8)と、
前記金型(6,7)を間に挟む、可動盤(5)及び固定盤(3)と、
前記可動盤(5)及び前記固定盤(3)間に設けられた型締力調整シリンダ(21a,21b)と、
前記型締力調整シリンダ(21a,21b)に作動油を供給して伸縮作動させる油圧回路(20)と、
前記型締力調整シリンダ(21a,21b)を制御するための制御装置(30)と、
を具備する、型締め機構(1)において、
実際に前記金型(6,7)に負荷させる型締力が目標値になるように、前記型締力調整シリンダ(21a,21b)に供給される作動油の量を制御することを特徴とする型締め機構。
【請求項6】
該型締め機構(1)は、前記金型(6,7)に負荷させる型締力を測定するための型締力検出センサ(13,13a,13b)を更に具備しており、
前記油圧回路(20)は、比例電磁圧力弁(25)を具備しており、前記型締力調整シリンダ(21a,21b)に供給される作動油の量の制御は、前記比例電磁圧力弁(25)を調整することにより行われることを特徴とする請求項5に記載の型締機構。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の型締め機構(1)を具備することを特徴とする射出成形機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2010−234584(P2010−234584A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83591(P2009−83591)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(300041192)宇部興産機械株式会社 (268)
【Fターム(参考)】
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