説明

射出成形用硬質塩化ビニル樹脂組成物およびその利用

【課題】 組成物の混練性が良好であり外観が良好な射出成形体を与える、再利用塩化ビニル樹脂が使用された射出成形用硬質塩化ビニル樹脂組成物を提供する。
【解決手段】 平均重合度が900〜1200である塩化ビニル樹脂を主成分とする硬質塩化ビニル樹脂組成物からなる再利用原料Aまたは再利用原料Aの粉砕品 35〜80重量部、平均重合度が560〜850である塩化ビニル樹脂B 10〜50重量部、平均重合度が450〜550である塩化ビニル樹脂C 3〜25重量部、および安定剤D 1〜15重量部を含有し、再利用原料A、塩化ビニル樹脂Bおよび塩化ビニル樹脂Cの合計量は100重量部である射出成形用硬質塩化ビニル樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形用硬質塩化ビニル樹脂組成物に関するものである。詳しくは再利用塩化ビニル樹脂および未使用塩化ビニル樹脂を主成分として含有する射出成形用硬質塩化ビニル樹脂組成物に関するものである。特に再利用塩化ビニル樹脂が押出成形された硬質塩化ビニル樹脂である上記組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
再利用塩化ビニル樹脂および未使用塩化ビニル樹脂を主成分として含有する射出または押出成形用硬質塩化ビニル樹脂組成物は知られている(特許文献1〜2)。また、異なる平均重合度の未使用塩化ビニル樹脂2種類を含有する硬質塩化ビニル樹脂組成物も知られている(特許文献3〜6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−277396号公報
【特許文献2】特開平06−329859号公報
【特許文献3】特開昭60−223847号公報
【特許文献4】特公昭59−028342号公報
【特許文献5】特公平07−016967号公報
【特許文献6】特開2008−120852号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
押出成形された硬質塩化ビニル樹脂を射出成形用に再利用する場合、得られる成形体の外観が悪いなどの問題がある。これは通常押出成形に適する塩化ビニル樹脂の平均重合度は射出成形に適する平均重合度より大きく、流動性が小さいためである。
比較的平均重合度が大きい再利用塩化ビニル樹脂と比較的平均重合度が小さい塩化ビニル樹脂とからなる射出成形用硬質塩化ビニル樹脂組成物が知られている(特許文献1)が、条件によっては組成物の混練性が悪く、得られる成形体の外観が悪い場合があるため使用が制限される。
本発明は、組成物の混練性が良好であり外観が良好な射出成形体を与える、再利用塩化ビニル樹脂が使用された射出成形用硬質塩化ビニル樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明の射出成形用硬質塩化ビニル樹脂組成物は、
平均重合度が900〜1200である塩化ビニル樹脂を主成分とする硬質塩化ビニル樹脂組成物からなる再利用原料Aまたは再利用原料Aの粉砕品 35〜80重量部、
平均重合度が560〜850である塩化ビニル樹脂B 10〜50重量部、
平均重合度が450〜550である塩化ビニル樹脂C 3〜25重量部、および
安定剤D 1〜15重量部を含有し、
再利用原料A、塩化ビニル樹脂Bおよび塩化ビニル樹脂Cの合計量は100重量部である組成物である。
【0006】
請求項2に記載の発明の射出成形用硬質塩化ビニル樹脂組成物は、請求項1に記載の組成物において、耐衝撃改質剤E 2〜20重量部をも含有することを特徴とする。
請求項3に記載の発明の射出成形用硬質塩化ビニル樹脂組成物は、請求項1または2のいずれかに記載の組成物において、安定剤Dは鉛化合物であることを特徴とする。
請求項4に記載の発明の射出成形用硬質塩化ビニル樹脂組成物は、請求項3に記載の組成物において、再利用原料Aは鉛化合物を含有することを特徴とする。
請求項5に記載の発明の射出成形用硬質塩化ビニル樹脂組成物は、請求項2〜4のいずれかに記載の組成物において、耐衝撃改質剤Eはアクリル酸エステル重合体を含有するものであることを特徴とする。
【0007】
請求項6に記載の発明の射出成形用硬質塩化ビニル樹脂組成物の製造方法は、
再利用原料Aを粉砕して粉砕品Vを製造する工程1、
再利用原料A以外の原料および粉砕品Vを混合して原料混合品Wを製造する工程2、および
原料混合品Wを押出成形機により加熱、混練してペレットXを製造する工程3を備える、
請求項1〜5に記載の組成物を製造する方法である。
【0008】
請求項7に記載の発明の射出成形用硬質塩化ビニル樹脂組成物からなる成形体の製造方法は、
再利用原料Aを粉砕して粉砕品Vを製造する工程1、
再利用原料A以外の原料および粉砕品Vを混合して原料混合品Wを製造する工程2、
原料混合品Wを押出成形機により加熱、混練してペレットXを製造する工程3、および
ペレットXを射出成形機により射出成形して成形体Yを製造する工程4を備える、
請求項1〜5に記載の組成物からなる成形体を製造する方法である。
【0009】
請求項8に記載の発明のますは、請求項7に記載の方法により得られるものである。
請求項9に記載の発明の継手は、請求項7に記載の方法により得られるものである。
請求項10に記載の発明のますは、請求項1〜5に記載の射出成形用硬質塩化ビニル樹脂組成物からなるものである。
請求項11に記載の発明の継手は、請求項1〜5に記載の射出成形用硬質塩化ビニル樹脂組成物からなるものである。
【発明の効果】
【0010】
塩化ビニル樹脂の廃材を再利用原料として有効に使用することができた。組成物は混練性が良好であり、得られる成形体は外観が良好なものであった。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書において、数値範囲が「下限数値〜上限数値」で示される場合、下限数値以上上限数値以下であることを意味する。
平均重合度は、JIS K6720−2に準じて測定される。
また、硬質とは、引張弾性率が100000psi(7000kgf/cm)以上であることを意味する。
まず、本発明の組成物について、主要成分である再利用原料A、塩化ビニル樹脂B、塩化ビニル樹脂Cなどの順に説明する。次いで、組成物の製造、成形体の製造、評価などについて説明する。
【0012】
再利用原料Aは、平均重合度が900〜1200である塩化ビニル樹脂を主成分とする硬質塩化ビニル樹脂組成物からなる。本明細書における再利用とは、狭義の再利用(例えば市場で流通し使用された成形体または製造者から第三者に譲渡された成形体が粉砕されて使用されるなど)および再生(例えば製造者社内の裁ち落とし品または規格外れ成形体が粉砕されて使用されるなど)を含む広義の意味に解される。
【0013】
再利用原料Aは、再利用という性質上、常に同じ組成のものを入手することはできないが、一定の条件を満足するものを使用する。
給排水用の硬質塩化ビニル樹脂パイプは、再利用原料Aの主要な原料供給源である。該パイプは、平均重合度が900〜1200である塩化ビニル樹脂を主成分とする硬質塩化ビニル樹脂組成物の押出成形によって製造されるのが通常である。該パイプに代表される成形体は、後述すように適切な大きさに粉砕されて使用される。
再利用原料Aとしては平均重合度950〜1150の塩化ビニル樹脂を主成分とするものが好ましく、平均重合度1000〜1100の塩化ビニル樹脂を主成分とするものがより好ましい。
【0014】
再利用原料Aは、上記塩化ビニル樹脂のほか、通常数%程度の安定剤、および滑剤を含有する。
後述する安定剤Dが鉛化合物である場合、再利用原料Aは、硫化汚染防止のためおよび高い安定化効果のため、安定剤として鉛化合物を含有するものが好ましい。
再利用原料Aは、可塑剤を実質的に含有しないものが好ましい。実質的に含有しないとは、含有割合が10%以下、好ましくは7%以下、より好ましくは5%以下であることを意味する。
【0015】
塩化ビニル樹脂Bは、平均重合度が560〜850の塩化ビニル樹脂である。
塩化ビニル樹脂Cは、平均重合度が450〜550の塩化ビニル樹脂である。
塩化ビニル樹脂BおよびCは、特定の割合で再利用原料Aと併用されることにより、組成物は混練性の良好なものとなり、得られる成形体は外観の良好なものとなる。
【0016】
再利用原料A、塩化ビニル樹脂Bおよび塩化ビニル樹脂Cの合計量100重量部を基準とする各成分の割合は以下のとおりである。
再利用原料Aの割合は35〜80重量部であり、40〜75重量部が好ましく、45〜72重量部がより好ましい。
塩化ビニル樹脂Bの割合は10〜50重量部であり、13〜45重量部が好ましく、17〜42重量部がより好ましい。
塩化ビニル樹脂Cの割合は3〜25重量部であり、4〜20重量部が好ましく、5〜18重量部がより好ましい。
【0017】
再利用原料Aの割合が少なすぎると、得られる成形体が耐熱性や引張強度の不足したものとなりやすいほか、廃材の再利用による省資源省エネルギーの効果が薄れる。再利用原料Aの割合が多すぎると、得られる成形体が外観の悪いものとなる。
【0018】
塩化ビニル樹脂Bの割合が少なすぎると、組成物が混練性の悪いものとなり、得られる成形体が外観の悪いものとなる。塩化ビニル樹脂Bの割合が多すぎると、得られる成形体が耐熱性や引張強度の不足したものとなりやすいほか、廃材の再利用による省資源省エネルギーの効果が薄れる。
【0019】
塩化ビニル樹脂Cの割合が少なすぎると、組成物が混練性の悪いものとなり、得られる成形体が外観の悪いものとなる。塩化ビニル樹脂Cの割合が多すぎると、得られる成形体が耐熱性や引張強度の不足したものとなりやすいほか、廃材の再利用による省資源省エネルギーの効果が薄れる。
【0020】
再利用原料Aをそのまま射出成形に使用すると得られる成形体が外観の悪いものとなるのは、再利用原料Aのほとんどが押出成形仕様であり、比較的大きい平均重合度の塩化ビニル樹脂を主成分とするため流動性が小さく、射出成形機内では均一な溶融物になりにくいためと考えられる。射出成形機は押出成形機と比べて内容物にかかる剪断応力が小さいのでこのような結果を与えると考えられる。
【0021】
比較的平均重合度が小さい塩化ビニル樹脂Bおよび塩化ビニル樹脂Cは、比較的小さい剪断応力によって均一な溶融物となりやすい組成物を与えるため、組成物の混練性の改善効果を発揮し、得られる成形体の外観を良好なものとする効果を発現するものと考えられる。
【0022】
比較的平均重合度が小さい塩化ビニル樹脂として、塩化ビニル樹脂Bまたは塩化ビニル樹脂Cのいずれかのみの使用では上記効果が不十分であり、塩化ビニル樹脂Bおよび塩化ビニル樹脂Cを併用することが重要である。その理由について以下のように推測している。
【0023】
塩化ビニル樹脂Bは、再利用原料Aの主成分である平均重合度が900〜1200である塩化ビニル樹脂と比較的近い平均重合度を有しているため、両者は相溶しやすく、組成物の混練性が良好になりやすい要素を含むと思われる。しかし塩化ビニル樹脂Bは、平均重合度が極端に小さいものではないため、組成物の混練性を改善する効果は小さいのではないかと思われる。
【0024】
一方塩化ビニル樹脂Cは、平均重合度がかなり小さいものであるため、組成物の流動性を向上させやすく、組成物の混練性が良好になりやすい要素を含むと思われる。しかし塩化ビニル樹脂Cは、再利用原料Aの主成分である塩化ビニル樹脂との平均重合度の差が比較的大きいため、両者は相溶しにくく、組成物の混練性が良好になりにくい要素となっているのではないかと思われる。
【0025】
比較的平均重合度が小さい塩化ビニル樹脂として、塩化ビニル樹脂Bおよび塩化ビニル樹脂Cを特定の割合で併用することによって、それぞれの長所が相乗的に作用して、組成物の混練性が特に良好となり、得られる成形体が外観の特に優れたものとなるのではないかと推測している。
【0026】
安定剤Dは、主に塩化ビニル樹脂が高温で分解するのを防止するための成分であり、組成物の混練工程、成形工程などにおいて組成物の変色、劣化、成形機の腐食などを低減する。安定剤Dとしては、塩化ビニル樹脂の安定剤として公知のものを使用することができる。安定剤Dとしては、三塩基性硫酸鉛、二塩基性亜燐酸鉛、塩基性亜硫酸鉛、二塩基性フタル酸鉛、二塩基性ステアリン酸鉛、ステアリン酸鉛などの鉛化合物、アルキル錫メルカプタイドなどのメルカプト錫化合物、アルキル錫マレートなどのマレート錫化合物、Ca/Zn系安定剤として知られるものなどが挙げられる。
安定化の効果が優れるため、鉛化合物は好ましい安定剤である。
再利用原料A、塩化ビニル樹脂Bおよび塩化ビニル樹脂Cの合計量100重量部を基準とする安定剤Dの割合は、1〜15重量部であり、2〜10重量部が好ましい。
【0027】
本発明の組成物は、再利用原料Aまたは再利用原料Aの粉砕品、塩化ビニル樹脂B、塩化ビニル樹脂Cおよび安定剤Dを所定の割合で含有するものである。
【0028】
本発明の組成物は、上記必須成分のほか、耐衝撃改質剤Eが添加されたものであってもよい。耐衝撃改質剤Eとしては、ゴム成分をコアとし、メチルメタクリレート共重合体をシェルとするコアシェル粒子が挙げられる。ゴム成分としてスチレンブタジエンゴムまたはブタジエンゴムが使用されたもの(MBS)、アクリル酸エステル重合体からなるアクリルゴムが使用されたものは代表的な耐衝撃改質剤である。
ゴム成分としてアクリル酸エステル重合体からなるアクリルゴムが使用された改質剤(アクリルゴム系改質剤)は、組成物の混練性を良好にするため、本発明にとって好ましい耐衝撃改質剤である。
再利用原料A、塩化ビニル樹脂Bおよび塩化ビニル樹脂Cの合計量100重量部を基準とする耐衝撃改質剤Eの割合は、2〜20重量部であり、4〜15重量部が好ましい。
【0029】
本発明の組成物は、滑剤、安定化助剤、酸化防止剤、加工助剤、顔料、その他の添加剤が添加されたものであってもよい。
本発明の組成物は、実質的に可塑剤を含有しない。
【0030】
次に組成物の製造方法について例示して説明する。下記工程1、2および3を備える方法は、組成物の製造方法として好ましい方法である。
工程1の前処理として、再利用原料Aの洗浄などによる異物除去がなされることが好ましい。
【0031】
工程1は、再利用原料Aを粉砕して粉砕品Vを製造する工程である。本発明における粉砕は、破砕、解砕などの概念を含み、必ずしも粉となるまで砕くことに限定されない。粉砕品Vの大きさは、直径または長辺が10mm以下のものが好ましく、7mm以下のものがより好ましく、5mm以下のものがさらに好ましい。粉砕品が大きすぎると後の工程が円滑に行えない場合がある。粉砕品の大きさの下限は特にないが、0.01mm以上が好ましく、0.05mm以上がより好ましい。必要以上に細かくしても無駄であるだけでなく、かえって取扱作業性が悪くなる場合がある。
粉砕には公知の粉砕機、破砕機、解砕機などを使用できる。
【0032】
工程2は、再利用原料A以外の原料(塩化ビニル樹脂B、塩化ビニル樹脂C、安定剤Dなど)および粉砕品Vを混合して原料混合品Wを製造する工程である。混合には公知の混合機を使用できる。
【0033】
工程3は、原料混合品Wを押出成形機により加熱、混練してペレットXを製造する工程である。
押出成形機中の熔融した組成物の流路にはメッシュが装着されることが好ましい。除去しきれなかった再利用原料Aに由来する異物を除去するためにメッシュ装着は有効である。
組成物の混練性が良好であると該工程の単位時間あたりの処理量を多くでき、生産性が良好となる。
【0034】
次に成形体の製造方法について例示して説明する。上記工程1、2および3ならびに下記工程4を備える方法は、成形体の製造方法として好ましい方法である。
【0035】
工程4は、ペレットXを射出成形機により射出成形して成形体Yを製造する工程である。
組成物の混練性が良好であると外観の良好な成形体が得られやすい。
【0036】
成形体の用途に特に制限はないが、給排水設備用の資材として好適に使用できる。小口径マンホール、公共ます、排水ますなどのます、下水継手などの継手は特に適した用途である。
【実施例】
【0037】
(原料)
使用された原料は以下のとおりである。
1.再利用原料A
・再利用原料A1:塩化ビニル管・継手協会から譲渡された硬質塩ビ管または硬質塩ビ継手リサイクル材(押出成形体、塩化ビニル樹脂の平均重合度1050)
2.塩化ビニル樹脂B
・塩化ビニル樹脂B1:塩化ビニル樹脂粉末(平均重合度800)
・塩化ビニル樹脂B2:塩化ビニル樹脂粉末(平均重合度680)
・塩化ビニル樹脂B3:塩化ビニル樹脂粉末(平均重合度600)
3.塩化ビニル樹脂C
・塩化ビニル樹脂C1:塩化ビニル樹脂粉末(平均重合度500)
4.安定剤D
・安定剤D1:鉛化合物からなる安定剤
5.耐衝撃改質剤E
・改質剤E1:アクリルゴム系改質剤
6.その他の添加剤
・添加剤F1:滑剤
・添加剤F2:加工助剤(メチルメタクリレート重合体)
・添加剤F3:顔料
【0038】
(組成物の製造)
1.工程1
予め水洗して異物が除去された再利用原料A1を粉砕機により粉砕した。6mmメッシュの金網を通過した粉砕品Vを回収した。
2.工程2
表1に記載された原料を混合機により混合して原料混合品Wを製造した。
3.工程3
原料混合品Wを押出成形機により加熱、混練、押出、切断して、直径3mm、長さ3mmのペレットXを製造した。
4.工程4
ペレットXを射出成形機により射出成形して成形体Yを製造した。成形体Yとしては、公共ますおよび下水継手を製造した。
【0039】
(評価)
1.射出成形体外観
成形体Yの外観を目視にて評価した。外観の評価基準は以下のとおりである。
◎:表面荒れはなかった。
○:わずかに表面荒れがあった。
△:部分的に目立つ表面荒れがあった。
×:数多くの目立つ表面荒れがあった。
【0040】
2.組成物の混練性
ロールミル(株式会社安田精機製作所製、試験用2本練りロール、200D×514L)を使用して180℃に設定したロールミルに原料混合品W150gを供給し、原料混合品Wが溶融混練されてロールに巻き付く様子を観察した。評価基準は以下のとおりである。本評価は、工程3における混練が短時間で均一になされるか否か、または、工程4における射出成形機内での均一な溶融物が形成されやすいか否かの指標となる。
○:巻き付くまでの所要時間は1分以下であった。
×:巻き付くまでの所要時間は1分を超えた。
【0041】
3.静的熱安定性
上記ロールミルで180℃3分間混練した原料混合品Wの組成物を使用して厚さ2mmのシートを作成した。該シートを180℃の熱プレスで加熱して外観を目視にて評価した。本評価が良くない組成物は、得られる成形体が変色しやすい。
○:60分後も変色はなかった。
△:60分後に変色があった。
【0042】
4.組成物の溶融粘度
キャピログラフ(株式会社東洋精機製作所製、型式:1C)を使用して、温度165℃、ピストン降下速度100mm/分の条件で、原料混合物Wの溶融粘度を測定した。
5.引張試験
ペレットXの射出成形により1号ダンベル試験片を作成し、JIS K7113に準拠して引張強度および破断時の伸び率を測定した。
6.ビカット軟化温度
ペレットXの射出成形により試験片を作成し、JIS K7206に準拠してビカット軟化温度を測定した。
7.シャルピー衝撃強度
ペレットXの射出成形により試験片を作成し、JIS K7111に準拠してシャルピー衝撃強度を測定した。
【0043】
評価結果を表1に示す。
比較例1は、塩化ビニル樹脂として再利用原料A由来のもののみが使用された組成物であり、組成物の混練性が悪く、射出成形体の外観が悪いものであった。
比較例2〜4は、塩化ビニル樹脂として再利用原料A由来のものおよび比較的平均重合度が小さい1種類の塩化ビニル樹脂が使用された組成物であり、組成物の混練性が悪く、射出成形体の外観も悪いものであった。
【0044】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0045】
塩化ビニル樹脂の廃材を再利用原料として有効に使用することができる。再利用塩化ビニル樹脂が使用された射出成形用硬質塩化ビニル樹脂組成物を提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均重合度が900〜1200である塩化ビニル樹脂を主成分とする硬質塩化ビニル樹脂組成物からなる再利用原料Aまたは再利用原料Aの粉砕品 35〜80重量部、
平均重合度が560〜850である塩化ビニル樹脂B 10〜50重量部、
平均重合度が450〜550である塩化ビニル樹脂C 3〜25重量部、および
安定剤D 1〜15重量部を含有し、
再利用原料A、塩化ビニル樹脂Bおよび塩化ビニル樹脂Cの合計量は100重量部である
射出成形用硬質塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項2】
耐衝撃改質剤E 2〜20重量部をも含有する、
請求項1に記載の射出成形用硬質塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項3】
安定剤Dは鉛化合物である、
請求項1または2に記載の射出成形用硬質塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項4】
再利用原料Aは鉛化合物を含有するものである、
請求項3に記載の射出成形用硬質塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項5】
耐衝撃改質剤Eはアクリル酸エステル重合体を含有するものである、
請求項2〜4のいずれかに記載の射出成形用硬質塩化ビニル樹脂組成物。
【請求項6】
再利用原料Aを粉砕して粉砕品Vを製造する工程1、
再利用原料A以外の原料および粉砕品Vを混合して原料混合品Wを製造する工程2、および
原料混合品Wを押出成形機により加熱、混練してペレットXを製造する工程3を備える
請求項1〜5に記載の射出成形用硬質塩化ビニル樹脂組成物の製造方法。
【請求項7】
再利用原料Aを粉砕して粉砕品Vを製造する工程1、
再利用原料A以外の原料および粉砕品Vを混合して原料混合品Wを製造する工程2、
原料混合品Wを押出成形機により加熱、混練してペレットXを製造する工程3、および
ペレットXを射出成形機により射出成形して成形体Yを製造する工程4を備える
請求項1〜5に記載の射出成形用硬質塩化ビニル樹脂組成物からなる成形体の製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法により得られるます。
【請求項9】
請求項7に記載の方法により得られる継手。
【請求項10】
請求項1〜5に記載の射出成形用硬質塩化ビニル樹脂組成物からなるます。
【請求項11】
請求項1〜5に記載の射出成形用硬質塩化ビニル樹脂組成物からなる継手。

【公開番号】特開2010−275332(P2010−275332A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125913(P2009−125913)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【出願人】(000000505)アロン化成株式会社 (317)
【Fターム(参考)】