説明

射出成形装置及び射出成形方法

【課題】簡易な構成で射出成形装置の圧力を調整する。
【解決手段】射出成形装置1は、第1の端部241への圧力により節243の屈折状態が変化し、第2の端部242がスライドする射出リンク24と、第2の端部242の動作に基づいて移動するスプリング23と、スプリング23の移動に基づいて発生した圧力により樹脂33を射出する射出用シリンダー31と、射出された樹脂33の型取りを行う型22と、を備える。射出リンク24は、外部から与えられた圧力により、節243が屈折状態から伸長状態となった後、加圧前とは逆方向の屈折状態となり固定される。スプリング23は、節243の屈折状態が伸長状態となる前に射出用シリンダー31が型22内のストローク一杯となった場合に、スプリング23のアウターチューブをスライドさせ、節243が逆方向に屈折した状態で固定された場合に、射出用シリンダー31に与える圧力を固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形装置及び射出成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な機械においてパワー素子モジュールが利用されている。パワー素子モジュールの射出成形は、200℃近くに加熱された上下型に、半導体やリードフレーム等を挟み、数トンの力で型締めした状態で型内に樹脂を射出し、樹脂を硬化させることで完成する。
【0003】
従来の射出成形装置では、多数の製品を同時に生産するために、型締めプレス機の中で多数の製品を一括で、型締め、樹脂の射出、樹脂の硬化を継続して行う。図6は、型51に複数の製品52を規則正しく配置して成形する大きな型の一例である。
【0004】
図7は、プレス機を複数個並列で並べ、製品を順次投入し、完成したものから取り出すシステムの一例である。図7の矢印は製品の流れを示す。プレス機53、射出機(図示せず)、型51をセットで用い、型締めから射出、硬化を通して実施する。プレス機53は型51の数だけ必要である。例えば、複数個取りの製品対応のシステムでは、100トンレベルのプレス機を複数用意することとなる。
【0005】
また、自動車用の大型のパワー素子モジュールにおいて、型内に樹脂を射出したことに基づいて型内から反力が発生するため、型を保持する型締めユニットには、パワー素子1個当たり5トン以下の保持力が必要となる。また、大型のパワー素子モジュールにおいて樹脂の射出成形を行う際には、型内に溶融樹脂を射出する際の射出圧力として10メガパスカル以上が必要である。
【0006】
特許文献1には、射出成形用金属内の溶融物を圧縮し、溶融物の収縮を補償する装置が開示されている。
また、特許文献2〜特許文献4には、回転式の射出成形装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2010−042684号公報
【特許文献2】特開平10−278106号公報
【特許文献3】特開平06−039907号公報
【特許文献4】特開平06−079773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
製品に対して射出された樹脂は、硬化により体積が変化する。そのため、射出成形装置において、樹脂の射出を行うユニットは、樹脂の硬化による体積の変化に対応するため、樹脂の射出部に圧力を加え続ける必要がある。すなわち、樹脂の射出を行うユニットは、樹脂の硬化を行う間、射出の圧力を加え続ける必要がある。
したがって、多数の製品を同時に生産したい場合には、多数の箇所でプレスや樹脂の射出を行う必要があり、高コストの装置を多数準備する必要があるという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様にかかる射出成形装置は、製品が内部に搬入された複数の型締めフレームを循環させながら射出成形を行う射出成形装置であって、前記型締めフレームの外部から第1の端部に与えられた圧力に基づいて節の屈折状態が変化し、第2の端部がスライドする射出リンクと、前記射出リンクの第2の端部と接続し、前記第2の端部のスライド動作に基づいて移動を行うスプリングと、前記スプリングの移動に基づいて発生した圧力により、あらかじめ内部に充填された前記樹脂を射出する射出用シリンダーと、前記製品に対し前記射出用シリンダーから射出された前記樹脂の型取りを行う型と、を備え、前記射出リンクは、外部から前記第1の端部に与えられた圧力により、節が屈折状態から伸長状態となった後、前記第1の端部への加圧前とは逆方向の屈折状態となって固定され、前記スプリングは、前記射出リンクの前記節の屈折状態が伸長状態となる前に前記射出用シリンダーが前記型内のストローク一杯となった場合に、前記節が伸長状態となるまで前記スプリングのアウターチューブをスライドさせ、前記射出リンクの前記節が逆方向に屈折した状態で固定された場合には、前記アウターチューブが固定されることで前記射出用シリンダーに与える圧力を固定する。
これにより、樹脂の硬化を行う間、射出シリンダーにかかる圧力を高めた状態のまま保持することができる。
【0010】
本発明の第1の態様にかかる射出成形方法は、前記型締めフレームの外部から第1の端部に与えられた圧力に基づいて節の屈折状態が変化し、第2の端部がスライドする射出リンクと、前記射出リンクの第2の端部と接続し、前記第2の端部のスライド動作に基づいて移動を行うスプリングと、前記スプリングの移動に基づいて発生した圧力により、あらかじめ内部に充填された前記樹脂を射出する射出用シリンダーと、前記製品に対し前記射出用シリンダーから射出された前記樹脂の型取りを行う型と、を備え、製品が内部に搬入された複数の型締めフレームを循環させながら射出成形を行う射出成形装置の射出成形方法であって、前記射出リンクを、外部から前記第1の端部に与えられた圧力により、節が屈折状態から伸長状態となった後、前記第1の端部への加圧前とは逆方向の屈折状態となるように固定し、前記スプリングを用いて、前記射出リンクの前記節の屈折状態が伸長状態となる前に前記射出用シリンダーが前記型内のストローク一杯となった場合に、前記節が伸長状態となるまで前記スプリングのアウターチューブをスライドさせ、前記射出リンクの前記節が逆方向に屈折した状態で固定された場合には、前記アウターチューブが固定されることで前記射出用シリンダーに与える圧力を固定する。
これにより、樹脂の硬化を行う間、射出シリンダーにかかる圧力を高めた状態のまま保持することができる。
【発明の効果】
【0011】
簡易な構成で、射出成形装置の圧力を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態1にかかる射出成形装置の全体の上面図である。
【図2】実施の形態1にかかる射出成形装置の全体の立面図である。
【図3】実施の形態1にかかる型締め射出ユニットの図である。
【図4】実施の形態1にかかる型締めフレームの内部を示す図である。
【図5】実施の形態1にかかる射出成形装置の射出圧力の変化を示す図である。
【図6】背景技術にかかる多数個取りの型の図である。
【図7】背景技術にかかるプレス機を並列に並べたシステムの図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施の形態1
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1は、射出成形装置1の全体の上面図を示す。図2は、射出成形装置1の全体の立面図を示す。射出成形装置1では、製品41の射出成形を行う。射出成形装置1は、フレーム治具11と、型締め射出ユニット12と、外部加圧ユニット13と、硬化エリア14と、を備える。
【0014】
フレーム治具11は、動力を受けて回転する治具である。典型的には、フレーム治具11の回転軸は、床面に対して垂直方向である。フレーム治具11は、型締め射出ユニット12と連結している。例えば、フレーム治具11の周囲には6つの型締め射出ユニット12が連結している。これにより型締め射出ユニット12は、フレーム治具11の回転に基づいて、フレーム治具11の周囲を循環する。図2における矢印はフレーム治具11の回転による、型締め射出ユニット12の循環を示している。
【0015】
型締め射出ユニット12は、製品41の射出成形を行うユニットである。図3は、型締め射出ユニット12の外観を示した図である。型締め射出ユニット12は、型締めフレーム21と、型22と、スプリング23と、射出リンク24と、接続部25を備える。以下では、型締めフレーム21がある方向を上方向とし、射出リンク24がある方向を下方向とする。
【0016】
型締めフレーム21は、型22に樹脂が射出され、型22から反力が発生する場合に、反力を抑えて型22を保持する。型締めフレーム21は、所定の一面側を接続部211とし、フレーム治具11と接続している。
また型締めフレーム21は、射出用シリンダー31と、射出加圧部32と、樹脂33と、断熱板34を有する。図4は、製品41を搬入した状態の型締めフレーム21の内部を示した図である。
【0017】
型22は、上型221及び下型222を有する。上型221は、製品41が型締め射出ユニット12に搬入された際に、製品41の上側にあるよう設置される型である。上型221は、製品41に対し射出された樹脂33の型取りを行う。典型的には上型221は、型22内への樹脂33の硬化を行う場合に、200℃程度に加熱される。
下型222は、製品41が型締め射出ユニット12に搬入された際に、製品41の下側にあるよう設置される型である。下型222は、製品41に対し射出された樹脂33の型取りを行う。典型的には下型222は、型22内への樹脂33の硬化を行う場合に、200℃程度に加熱される。
【0018】
射出用シリンダー31は、内部に溶融した樹脂33が充填されている。射出用シリンダー31は、端部が射出加圧部32と接続されている。射出用シリンダー31の発射口は、型22の内部に設置された製品41に樹脂33を射出できるよう、型22の内部に設けられている。なお典型的には、射出用シリンダー31は、断熱板34を貫通するように設けられている。
典型的には、複数の射出用シリンダー31が設けられており、それぞれの端部が射出加圧部32と接続している。また、それぞれの射出用シリンダー31の発射口は、型22の内部に設けられている。
【0019】
射出加圧部32は、射出用シリンダー31と接続している。射出加圧部32は射出用シリンダー31を加圧することにより、射出用シリンダー31を動作させ、射出用シリンダー31に充填されている樹脂33を型内に射出する。典型的には射出加圧部32は、型締めフレーム21内に設けられている。
【0020】
樹脂33は、射出用シリンダー31内に溶融された状態で充填されている。樹脂33は、射出加圧部32に動作により加圧された射出用シリンダー31により、型22内に射出される。なお、型22内に射出された樹脂33は、型締め射出ユニット12が硬化エリア14を通過する間に硬化する。
【0021】
断熱板34は、加熱された型22が発する熱を遮断する断熱板である。例えば断熱板34は、下型222の下方向に配置される。
【0022】
スプリング23は、例えばガススプリングである。以下では、スプリング23はガススプリングであるものとして説明する。スプリング23は、ピストンロッドが射出加圧部32に接続している。またスプリング23は、アウターチューブが、射出リンク24のリンク245に接続している。すなわちスプリング23は、射出リンク24の動作により上下方向に移動する。これにより、スプリング23のピストンロッドは射出加圧部32を上方向に加圧し、射出加圧部32は射出用シリンダー31を動作させ、射出用シリンダー31は樹脂33を射出する。
また、スプリング23は、射出用シリンダー31が型22内のストローク一杯となった状態において、射出リンク24がさらに伸長状態となるよう動いた場合には、アウターチューブが上方向に移動する。
【0023】
射出リンク24は、典型的には、トグル機構を有する2つのリンクユニットを平行に配置したものである。射出リンク24は、第1の端部241と、第2の端部242と、節243と、回動部244と、を有する。なお射出リンク24において、第2の端部242を有するリンクを、リンク245とする。
第1の端部241は、外部加圧ユニット13が加圧を行う場合に、外部加圧ユニット13と接続する。なお、平行に配置された2つの第1の端部241どうしを接続する箇所と、外部加圧ユニット13が接続されてもよい。
第2の端部242は、スプリング23に接続している。例えば、平行に配置された2つの第2の端部242が、スプリング23のアウターチューブを挟持するように接続している。第2の端部242は、外部加圧ユニット13により第1の端部241が加圧された場合に、上方向にスライドする。
節243は、第1の端部241が加圧された場合に、屈折状態や伸長状態に変化する節である。節243は、外部加圧ユニット13により加圧されて伸長状態となった後に、更に外部加圧ユニット13により加圧された場合に、加圧前とは逆方向に入り込んだ屈折状態となる。例えば、射出リンク24が、型締め射出ユニット12に対して外側方向に凸状である場合に、外部加圧ユニット13により加圧し続けると、射出リンク24は型締め射出ユニット12に対して内側方向に凸状となる。なお、節243が屈折した状態から伸長状態となる手前において、射出用シリンダー31は、型22内においてストローク一杯となる。
回動部244は、第1の端部241と節243の間に設けられている。回動部244は、接続部25と回動可能な状態で接続している。すなわち回動部244は、外部加圧ユニット13により第1の端部241が加圧された場合に、支点となり回動する。
なお、射出リンク24は、第1の端部241と節243の間の枝において、僅かに屈折した形状であることが望ましい。ここで、第1の端部241と節243の間の枝は、例えば回動部244である。これにより、外部加圧ユニット13が第1の端部241を加圧し続けた場合に、節243を伸長状態から逆方向に入り込んだ屈折状態となりやすくなる。
【0024】
接続部25は、射出リンク24とフレーム治具11とを接続する。典型的には、接続部25におけるフレーム治具11との接続箇所は、接続部211の接続面と、同方向に設けられている。
【0025】
外部加圧ユニット13は、射出リンク24を加圧するユニットである。典型的には、外部加圧ユニット13は爪部を有しており、射出リンク24の端部と係合して加圧する。外部加圧ユニット13は、射出リンク24の第1の端部241を加圧した後は、射出リンク24の端部との係合状態が解除される。
【0026】
硬化エリア14は、型内に射出した樹脂33が硬化を行うエリアである。例えば硬化エリア14は、射出成形装置1において、型締め射出ユニット12に搬入された製品41に樹脂33が射出された後、フレーム治具11が約180°回転する間に、型締め射出ユニット12が通過するエリアとする。
【0027】
以下、図1を用いて射出成形装置1の動作について説明する。ここで、フレーム治具11の周囲を循環する型の個数が6個であるものとして、製品41A〜製品41Fを用いて説明する。ここで、製品41Aを内部に設ける型締め射出ユニットを型締め射出ユニット12Aとし、以下同様に、製品41B〜41Fを内部に設ける型締め射出ユニットを射出ユニット12B〜12Fとする。
【0028】
はじめに、射出成形装置1において、製品41Aを型締め射出ユニット12Aに設けられた型内に搬入する。また射出成形装置1では、射出用シリンダー31に樹脂33の装填を行う。その後、フレーム治具11は60°回動する。
【0029】
型締め射出ユニット12Aは、フレーム治具11の回動により、外部加圧ユニット13が設けられた位置に移動する。型締め射出ユニット12Aは、型締めフレーム21を固定し、樹脂33の射出注入を行う。樹脂33の射出注入については、後に詳述する。このとき型締め射出ユニット12Bは、フレーム治具11の回動前の型締め射出ユニット12Aと同様に、製品41Bを型内に搬入し、樹脂33の装填を行う。その後、フレーム治具11は60°回動する。
【0030】
型締め射出ユニット12Aは、フレーム治具11の回動により、外部加圧ユニット13が設けられた位置から硬化を行う硬化エリア14に移動し、硬化を開始する。このとき、型締め射出ユニット12Bは、フレーム治具11の回動前の型締め射出ユニット12Aと同様に、外部加圧ユニット13が設けられた位置に移動し、型締めフレーム21を固定し、樹脂33の射出注入を行う。このとき、型締め射出ユニット12Cは、フレーム治具11の回動前の型締め射出ユニット12Bと同様に、製品41Cを型内に搬入し、樹脂33の装填を行う。その後、フレーム治具11は60°回動する。
【0031】
型締め射出ユニット12Aは、フレーム治具11の回動により、硬化を行いながら硬化エリア14内を移動する。このとき、型締め射出ユニット12Bは、フレーム治具11の回動により、外部加圧ユニット13が設けられた位置から硬化エリア14に移動し、硬化を開始する。このとき型締め射出ユニット12Cは、外部加圧ユニット13が設けられた位置に移動し、型締めフレーム21を固定し、樹脂33の射出注入を行う。このとき型締め射出ユニット12Dは、製品41Dを型内に搬入し、樹脂33の装填を行う。その後、フレーム治具11は60°回動する。
【0032】
型締め射出ユニット12A及び型締め射出ユニット12Bは、フレーム治具11の回動により、硬化を行いながら硬化エリア14内を移動する。このとき、型締め射出ユニット12Cは、フレーム治具11の回動により、外部加圧ユニット13が設けられた位置から硬化エリア14に移動し、硬化を開始する。このとき型締め射出ユニット12Dは、外部加圧ユニット13が設けられた位置に移動し、型締めフレーム21を固定し、樹脂33の射出注入を行う。このとき型締め射出ユニット12Eは、製品41Eを型内に搬入し、樹脂33の装填を行う。その後、フレーム治具11は60°回動する。
【0033】
型締め射出ユニット12Aは、フレーム治具11の回動により硬化を行うエリアから、製品41を搬出するエリアに移動し、製品41Aを搬出する。このとき、締め射出ユニット12B及び締め射出ユニット12Cは、フレーム治具11の回動により、硬化を行いながら硬化エリア14内を移動する。このとき型締め射出ユニット12Dは、フレーム治具11の回動により、外部加圧ユニット13が設けられた位置から硬化エリア14に移動し、硬化を開始する。このとき型締め射出ユニット12Eは、外部加圧ユニット13が設けられた位置に移動し、型締めフレーム21を固定し、樹脂33の射出注入を行う。このとき型締め射出ユニット12Fは、製品41Fを型内に搬入し、樹脂33の装填を行う。
【0034】
このようにして、フレーム治具11の周囲を循環して型締めや樹脂33の射出を行うことで、1箇所で型締めと樹脂33の射出を行うことができる。
【0035】
次に、外部加圧ユニット13が設けられた位置における、型締め射出ユニット12への樹脂33の射出と、スプリング23及び射出リンク24を用いた圧力の保持動作について説明する。図5は、射出圧力の変化イメージの図である。
【0036】
まず、製品41を搬入された型締め射出ユニット12は、射出用シリンダー31に樹脂33が充填され、フレーム治具11の回動により外部加圧ユニット13が設けられた位置に移動する。
【0037】
次に、射出ユニット12において、樹脂33の射出を開始する。より具体的には、まず、型締めフレーム21に圧力が加えられ固定される。その後、外部加圧ユニット13が射出リンク24の第1の端部241を引くことで、第2の端部242が上方向にスライドする。これにより、スプリング23が上方に移動し、スプリング23のピストンロッドが射出加圧部32を押し上げ、射出用シリンダー31が型22の方向に押し出される。したがって、射出用シリンダー31から型22に樹脂33が射出する。このとき、スプリング23内には圧力が発生する。
【0038】
次に、射出用シリンダー31からの樹脂33の射出中において、射出用シリンダー31のピストンロッドが型22内のストローク一杯となった場合、射出用シリンダー31のアウターチューブが上方向に移動する。
射出リンク24の節243が屈折状態から伸長状態になったとき、スプリング23のアウターチューブが上方向に最も移動した状態となる。すなわち、スプリング23は最も縮んだ状態となり、スプリング23内の圧力がピークとなる。
【0039】
射出リンク24の節243が伸長状態となった後、さらに外部加圧ユニット13が射出リンク24の第1の端部241を加圧することで、節243が伸長状態から、逆側に屈折した状態となる。このとき射出リンク24の節243は、逆方向に僅かに屈折した状態でロックされる。
射出リンク24の節243が伸長状態から逆側に屈折した状態となるとき、スプリング23には下方向の力が加わるため、スプリング23内の圧力はわずかに低下する。これにより、射出用シリンダー31の追い込みストロークが確保される。
その後、射出リンク24の節243がロックされることで、スプリング23のアウターチューブが固定され、スプリング23内の圧力は高い状態で一定にロックされる。すなわち、射出用シリンダー31にかかる圧力が高い状態で固定される。これにより樹脂33の射出を完了する。
【0040】
スプリング23内の圧力が一定値でロックされた後は、スプリング23により射出用シリンダー31にかかる圧力は維持される。該射出ユニット12は、スプリング23により圧力が維持された状態を保ったまま硬化エリア14に移動し、樹脂33の硬化を開始する。
【0041】
これにより、簡易な構成で、樹脂を射出した後の射出シリンダーにかかる圧力を保持することができる。また、1箇所でプレス加工と射出を行うことができ、樹脂の硬化については、型を200℃近くに保持したままフレーム治具の周囲を循環させることで、硬化の時間を確保することができる。そのため、1つの型締め射出ユニットに対して樹脂の射出を行い、該射出ユニットの樹脂が硬化を行う間に、他の型締め射出ユニットに対して樹脂の射出を行うことができる。このとき、射出用シリンダーの追い込みストロークを確保したまま、型と型締め治具を移動させることができる。
したがって、型締めフレームの締め付けと、樹脂を射出する工程を1箇所にまとめ、時間を要する硬化の工程は、型締めと射出圧力を保持したままに型と型締め治具を移動式にすることができ、射出成形装置を小規模化することができる。
【0042】
なお、本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、スプリング23は上記ではガススプリングであるものとして説明したが、バネ機構で動作するスプリングであっても良い。また例えば、射出用シリンダー31が1つの場合には、射出加圧部32を用いず、スプリング23のピストンロッドが射出用シリンダー31を直接動作させるものとしても良い。また、外部加圧ユニット13は、第1の端部241に圧力を与えるものとしたが、例えば節243に圧力を与えるものとしても良い。
【符号の説明】
【0043】
1 射出成形装置
11 フレーム治具
12 型締め射出ユニット
13 外部加圧ユニット
14 硬化エリア
21 型締めフレーム
211 接続部
22 型
221 上型
222 下型
23 スプリング
24 射出リンク
241 第1の端部
242 第2の端部
243 節
244 回動部
245 リンク
25 接続部
31 射出用シリンダー
32 射出加圧部
33 樹脂
34 断熱板
41 製品
51 型
52 製品
53 プレス機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製品が内部に搬入された複数の型締めフレームを循環させながら射出成形を行う射出成形装置であって、
前記型締めフレームの外部から第1の端部に与えられた圧力に基づいて節の屈折状態が変化し、第2の端部がスライドする射出リンクと、
前記射出リンクの第2の端部と接続し、前記第2の端部のスライド動作に基づいて移動を行うスプリングと、
前記スプリングの移動に基づいて発生した圧力により、あらかじめ内部に充填された前記樹脂を射出する射出用シリンダーと、
前記製品に対し前記射出用シリンダーから射出された前記樹脂の型取りを行う型と、を備え、
前記射出リンクは、外部から前記第1の端部に与えられた圧力により、節が屈折状態から伸長状態となった後、前記第1の端部への加圧前とは逆方向の屈折状態となって固定され、
前記スプリングは、前記射出リンクの前記節の屈折状態が伸長状態となる前に前記射出用シリンダーが前記型内のストローク一杯となった場合に、前記節が伸長状態となるまで前記スプリングのアウターチューブをスライドさせ、前記射出リンクの前記節が逆方向に屈折した状態で固定された場合には、前記アウターチューブが固定されることで前記射出用シリンダーに与える圧力を固定する、射出成形装置。
【請求項2】
前記型締めフレームの外部から第1の端部に与えられた圧力に基づいて節の屈折状態が変化し、第2の端部がスライドする射出リンクと、
前記射出リンクの第2の端部と接続し、前記第2の端部のスライド動作に基づいて移動を行うスプリングと、
前記スプリングの移動に基づいて発生した圧力により、あらかじめ内部に充填された前記樹脂を射出する射出用シリンダーと、
前記製品に対し前記射出用シリンダーから射出された前記樹脂の型取りを行う型と、を備え、
製品が内部に搬入された複数の型締めフレームを循環させながら射出成形を行う射出成形装置の射出成形方法であって、
前記射出リンクを、外部から前記第1の端部に与えられた圧力により、節が屈折状態から伸長状態となった後、前記第1の端部への加圧前とは逆方向の屈折状態となるように固定し、
前記スプリングを用いて、前記射出リンクの前記節の屈折状態が伸長状態となる前に前記射出用シリンダーが前記型内のストローク一杯となった場合に、前記節が伸長状態となるまで前記スプリングのアウターチューブをスライドさせ、前記射出リンクの前記節が逆方向に屈折した状態で固定された場合には、前記アウターチューブが固定されることで前記射出用シリンダーに与える圧力を固定する、
射出成形方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−71250(P2013−71250A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209484(P2011−209484)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】