説明

導電体の作製方法

【課題】多孔質の紙及びポリマー基材上又は半導体表面上に低い電気抵抗をもつ導電性のライン及び表面パターンを作製する技術を提供する。
【解決手段】基材上に導電体を作製する方法であって、金属粒子、金属前駆体及びそれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1種の成分で構成された導体配合物を基材上に塗布する工程、該導体配合物を負に帯電したイオン性の還元性ガスに曝露しながら、焼結により該成分を金属に変えそして導電体を作製する工程、を含む。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
エレクトロニクス、ディスプレイ及びエネルギー産業は、回路を作製するのに有機及び無機基材上の導電性金属から構成される導電体のコーティング及びパターンの作製に依存している。導電体は、フラットパネルディスプレイ用の導電性配線の製造、携帯電話及び無線周波数(RF)タグ用アンテナの製造、プラズマディスプレイパネル用の電極や、母線ライン及びバリア・リブの作製、変圧器、電力変換装置及び移相器を含めた誘導子を基とする装置の製作、低コスト又は使い捨て式電子デバイスの製造、アンダーバンプメタライゼーションの作製、はんだ代用品としての使用、スマートカード及びRFタグの構成要素とチップとの接続、を目的として使用される。
【0002】
導電体の作製に関する最近の開発は、所望の部位において導電性媒体を適用するアディティブ法に焦点をあててきた。サブトラクティブ法は、アディティブ法とは異なり、広い領域全体にわたり導電性材料を適用し、その後この導電性材料を不所望の領域から選択的に除去する。回路を構築することへのアディティブ法のアプローチには、はるかに少ないプロセス工程しか関与せず、その材料使用量は比較的少なく、サブトラクティブ法に通常付随する廃棄物は最小限に抑えられる。またこれらの方法は、高コストの真空プロセスの必要性をなくすこともできる。
【0003】
厚膜技術は、導電体をアディティブ法で構築する1つの方法である。金属粒子及びガラス微粒子を基材上にステンシル印刷又はスクリーン印刷してアディティブ回路を作り上げる。初期の厚膜技術は、金属を焼結するために極めて高い温度(>650℃)を必要とした。シリコン、セラミック及びガラスといったような、そのような温度に耐えることのできる基材のみが使用可能であった。かくして、基材の選択には制限があった。また、厚膜により開発された製品は比較的高価であった。
【0004】
ポリマー厚膜(PTF)技術は、導電体をアディティブ法で構築するためのもう1つの例であり、その利点は、厚膜技術とは逆により低い温度を使用することができることである。金属粒子をポリマー結合剤に分散させ、ポリマーや紙の基材上にステンシル又はスクリーン印刷する。このPTF技術の主要な制限は、材料が一般に、バルク金属導体のものの30〜50%にすぎない厚膜技術により生成された最良の高温導電体の伝導率の、約10〜20%の伝導率しか有していないという点にある。
【0005】
近年、さまざまな基材に適用可能で且つ加熱により導体に変えることのできる金属前駆体で構成されたインク及びペーストが開発された。しかしながら、金属前駆体を導電性金属、特に銅に変えるのも、熱可塑性ポリマーや紙といったような一部の低コストの軟質基材とともに使用するためには高すぎる温度を必要としていた。従って、これらの基材上に導電体を作製しようとする場合には、低温プロセスが必要となる。
【0006】
以下の特許文献及び論文は、基材上に導電性金属から構成される導電体を作ること、特に金属前駆体から導電体を作製することに関して、当該技術分野の代表的なものである。
【0007】
米国特許第6036889号明細書、米国特許第6143356号明細書、米国特許第6153348号明細書、米国特許第6274412号明細書、米国特許第6379745号明細書は、PARMODという商標で市販されている一群の前駆体化合物を開示している。これらの組成物は、プリント配線板及びフレキシブル回路用に使用されるものなどのような基材の上に印刷することができ、そしてそれらは、細かい表面凹凸をもつ金属導体を、通常の多工程フォトグラフィックエッチングプロセスではなく単純な印刷・加熱プロセスによって製造できるという利点を提供する。
【0008】
印刷可能なインク又はペーストは、有機ビヒクルと合わせて配合される金属フレーク及び/又は金属粉末と反応性有機媒質(ROM)で構成されている。インク又はペーストを加熱すると、熱分解により金属が生成され、生成された新たな金属が、混合物のフレーク及び/又は粉末構成成分を「化学溶接」して導電性ネットワーク構造にする。
【0009】
国際公開第03/032084号パンフレット(2003/0180451)は、直接書込み方法による、例えばインクジェット被着による、適用を可能にする導電性電子フィーチャの被着のための低粘度前駆体を開示している。インク又はペーストで利用される金属前駆体の焼結温度を低下させるために、ナノメートル及びミクロンサイズに入る微粒子を用いて金属粉末の粒度を低下させた。代表的なナノ粒子としては、CuxO(原文のまま)、Ag及び熱分解シリカがある。インジウム、アンチモン、白金及びニッケルの導電性金属酸化物も同様に、導体を作製するための候補として示唆されている。
【0010】
米国特許第6776330号明細書は、はんだ付けしようとする金属表面を乾式フラックス処理するためのプロセスを開示している。利用される乾式フラックス処理のためのアプローチは、電子付着と呼ばれ、これには電極間に位置するターゲットに対し還元性ガスを供給することが必要である。乾式フラックス処理プロセスでは、負に帯電した還元性ガス、例えば負に帯電した水素が、利用される。
【0011】
米国特許出願公開第2004/0211675号明細書は、複数のはんだバンプを含む基材の表面から金属酸化物を除去する方法において、該複数のはんだバンプを含む表面の少なくとも一部分が、負に帯電した還元性ガスとキャリヤを含むガス混合物に曝露される方法について開示している。
【0012】
米国特許出願公開第2004/0226914号明細書は、イオン発生器の中に還元性ガスを通し負に帯電した還元性ガスを生成させることと、負に帯電した還元性ガスとターゲットアセンブリを接触させて少なくとも1つの構成要素上の酸化物を還元することを含む、少なくとも1つの構成要素の表面から金属酸化物を除去する方法を開示している。
【0013】
米国特許出願公開第2004/0231597号明細書は、電子付着を用いたはんだ表面の乾式フラックス処理を開示している。このプロセスでは、はんだ表面上のさまざまな構成要素の酸化物が負に帯電した水素イオンによって除去される。
【0014】
【特許文献1】米国特許第6036889号明細書
【特許文献2】米国特許第6143356号明細書
【特許文献3】米国特許第6153348号明細書
【特許文献4】米国特許第6274412号明細書
【特許文献5】米国特許第6379745号明細書
【特許文献6】国際公開第03/032084号パンフレット
【特許文献7】米国特許第6776330号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2004/0211675号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2004/0226914号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2004/0231597号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、一般的にはエレクトロニクス業界で利用されるタイプの基材上に支持された導電性金属から構成される導電体の作製における改良を対象としている。基本的方法においては、標準的にはインク又はペーストの形をしている、金属粒子及び金属前駆体並びにそれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1つの成分で一般的に構成される導体配合物を基材に塗布し、焼結するのに十分な時間、十分な熱を加えることによって導電体へと変える。該方法における改良点は、焼結しそして成分を金属に変えるのを容易にするために電子付着プロセスを使用するという点にある。
【0016】
この方法により有意な利点を達成することができ、それには以下のものが含まれる。
・温度に敏感な軟質基材を含めたさまざまな基材上に、低温で導電体を作ることができること。
・周囲圧力下で導電体を作製することができること。
・非毒性且つ非引火性のガス混合物を用いて導電体を作製することができること。
・200℃以下の温度でさまざまな基材上に導電体を作製するのを容易にするため、銅及び銀の前駆体といったような金属前駆体を利用することができること。
・200℃以下の温度で金属粒子を焼結させることができること。
・多孔質の紙及びポリマー基材上又は半導体表面上に低い電気抵抗をもつ導電性のライン及び表面パターンを作ることができること。
【課題を解決するための手段】
【0017】
近年、基材、特に紙やポリマーフィルムといった低コストの基材上に支持される、伝導性の高い金属のパターンを低温で作製するのを可能にする方法に対し多くの関心が寄せられている。特に温度に敏感な基材上に、例えば熱可塑性材料や紙の上に、高導電率の銅パターンを作るためには、200℃の、好ましくは≦150℃の処理温度が殊に重要である。
【0018】
アディティブ法によって製造される導電体は、導電性金属に変えることができる金属前駆体と組合わされた金属粒子を一般に含む導体配合物から作製される。大抵の場合、導体配合物は、金属前駆体及び/又は金属粒子と液体ビヒクル、例えば溶媒、との混合物を含む。高導電率の金属パターンを生じさせるプロセスの間に完了する必要のある反応がいくつか存在する。導電体を作製するための1つの反応は、金属前駆体を分解して金属及び有機副生物に分解するものである。第2の反応は、含有された金属粒子の表面上に存在し得る酸化物の除去を必要とする。第3の反応は、導体配合物の有機成分に由来するか、早期の金属粉末の凝集を防ぐ安定剤に由来するか、結合剤、表面エネルギー、粘性又は接着促進剤、もしくは液体ビヒクルとして作用する添加物に由来して存在し得る有機物質を除去するものである。第4の反応において、このようにして作られた微粉金属を融合又は焼結させて、導電性金属導体を作製する。
【0019】
少なくとも1種の金属粒子もしくは少なくとも1種の金属前駆体又はそれらの混合物から構成される導体配合物を基材上に塗布し、該金属粒子又は金属前駆体を金属に変えてその導電体を作製することにより導電体を作製するための方法における改良は、金属粒子又は金属前駆体を焼結された導電性金属へと変えるのに十分な時間且つ十分な温度で、金属粒子又は金属前駆体を電気的に活性化された還元性ガスに対し曝露する電子付着(EA)を利用する点にある。
【0020】
「導電体」という用語は、特許請求の範囲に記載した方法によって製造された製品を意味するものであり、それは電気用途以外の用途において、例えば熱伝導体として使用することができ、あるいは反射性コーティングの用途において使用することができる。
【0021】
基材上に導電性パターンを作るための導体配合物は、焼結金属に変化させることができる金属粒子もしくは金属前駆体又はそれらの組合せを含む。導体配合物はまた、それ自体導電性でありそして導電性金属と結合される非金属添加剤、例えばインジウム/スズ酸化物(ITO)、から構成することもできる。
【0022】
導体配合物で利用される構成成分又は金属成分には基本的に2つのタイプがある。一方のタイプはナノ及び/又はマイクロサイズの金属粉末又は金属フレークに基づくものであり、他方はM(+a)y(-b)wzという一般式(式中、Mは導電体を生じさせるのに用いるのに適した金属であり、Xは負に帯電した配位子であり、Lは中性の配位子であり、そしてay=bwであり、aは1〜5、bは1〜3、zは0〜5である)を有する金属化合物に基づくものである。これらの金属化合物は、時として有機金属分解化合物(MOD)と呼ばれる。インク又はペーストの形をした導体配合物の多くは、ナノ及びミクロンサイズの金属粉末と1種以上の有機金属分解化合物との組合せを使用する。
【0023】
導体配合物中の金属粒子として有用な好適な金属としては、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、パラジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、白金、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、インジウム、スズ、アンチモン、鉛、ビスマス、バナジウム、クロム、チタン、タンタル、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、カドミウム、ガリウム、ビスマス、又はそれらの組合せが挙げられる。より好ましくは、金属は、Cu、Ag、Ni及びAuからなる群から選択され、最も好ましいのは、その比較的低いコスト、高い導電率及び高い耐電気的マイグレーション性の理由から、銅である。
【0024】
前述した通り、導体配合物の1つのタイプは、約100ナノメートル以下の、例えば約5〜80ナノメートルといったような、平均サイズをもつナノ粉末を含む「金属粒子」に基づいている。特に好ましいのは、約25〜75ナノメートルの範囲内といったような、約75ナノメートル以下の平均サイズをもつナノ粉末である。好ましいナノ粉末組成物は、銅、銀、パラジウム、金、白金及びニッケルを含む。
【0025】
「金属粒子」という用語は同様に、1ミクロンと10ミクロンの間、好ましくは1ミクロンと5ミクロンの間の主寸法と、1ミクロン未満の厚みをもつ、「金属フレーク」という用語を含むようにも意図されている。フレークは複数の機能を果たすことができる。それらは、印刷された像において、その他の成分を一緒に保持し、且つインクを硬化させるために混合物を加熱するときに解像度が失われるのを防ぐ骨格構造を形成する。フレークは、石垣の石がどのような状態で一緒に重ね合わされているかと似た層状の連結構造を自然にとり、これが基材の表面に対し平行な方向に導電性を提供し、且つ、本発明の目的である純粋な金属導体を十分に統合するのに必要な金属輸送量を少なくするための骨組みを提供する。それらはまた、組成物のその他の構成成分が結合することができる低表面エネルギーの平坦な表面をも提供する。金属フレークは、対応する金属粉末を、脂肪酸又は脂肪酸石けんであることの多い潤滑剤とともに摩砕することによる当該技術分野において周知の技術によって製造することができる。
【0026】
既知のとおり、金属粒子の所望の分散度を達成しそれを保つためには、粒子が凝集しないように安定化させることが不可欠である。金属粒子は、金属どうしの接触を防止するよう界面活性剤又は安定剤配位子で粒子をコーティングすることによって安定化することができる。適切な界面活性剤及び安定剤配位子としては、予め生成させるか又はその場で生成させることができるカルボン酸及びカルボン酸の金属石けんが含まれる。
【0027】
微粒子金属としては、充填密度を高めるよう単一、双峰又は三峰粒度分布を含むことができる、ミクロンサイズの球状粉末を挙げることもできる。粉末分布の各峰について、充填密度を最大限にするため粒度分布を狭くすることが好ましい。回路の表面図形/構成要素をスクリーン印刷するためには、好ましい配合物は60〜85重量パーセントの量の微粒子金属から構成され、この場合ナノ粉末は全微粒子金属の20〜50重量パーセントの量で存在する。
【0028】
数多くの部類の有機化合物が、上述のとおりの式M(+a)y(-b)wzの化合物中における配位子X及びLとして機能できる。これらの化合物類が共有しそれらを有効なものにしている共通の特徴は、それらが配位タイプの化合物を提供するようヘテロ原子を介して金属に結合しているか、又はかかる結合を形成できるということであり、あるいはそれらが炭素に対する金属結合を形成しかくして有機金属分解化合物を形成できるということである。該ヘテロ原子は、酸素、窒素、硫黄、リン、ヒ素、セレン及びその他の非金属元素、好ましくは酸素、窒素又は硫黄であることができる。Xは、カルボキシレート、ハロカルボキシレート、アミド、ハロアミド、アミド、イミノ、ハロイミノ、β−ジケトン、ハロ(β−ジケトン)、β−ケトイミン、ハロ−(β−ケトイミン)、β−ジイミン、ハロ−(β−ジイミン)、β−ケトエステル、ハロ−(β−ケトエステル)、β−ケトアミド、ハロ−(β−ケトアミド)、アルコキシ、ハロアルコキシ、アミノアルコキシ、フェノキシ、ハロフェノキシ、アルキル、フルオロアルキル、アリール、ハロアリール、アルケニル、ハロアルケニル、ハロアルキン、トリフルオロメチルスルホネート、β−ケトイミンオレフィン、β−ジイミンオレフィン、ハライド、ナイトライド、ハイドロキサイド、サルフェート、サルファイト、ナイトレート、ナイトライト、カーボネート、バイカーボネート及び混合物からなる群から選択された負に帯電した配位子であり、配位子Lは、アンモニア、及び置換アミン、ジアミン、トリアミン、イミン、ニトリル、アルケン、アルキン、一酸化炭素又はアルキルもしくはフェニル置換ホスフィン錯体からなる群から選択された中性配位子である。
【0029】
式M(+a)y(-b)wzの金属前駆体の特定の例としては、ネオデカン酸及び2−エチルヘキサン酸の金属石けんが挙げられる。銅及び銀のギ酸塩、ネオデカン酸塩及び2−エチルヘキサン酸塩が、カルボキシレートの代表である。金属アミン2−エチルヘキサノエート及びアミンオクタノエートが、金属、例えば銅、のための配位子として、窒素誘導体を用いる例であり、金属t−ドデシルメルカプチドが硫黄誘導体を用いる例である。銅((4−N−メチルイミノ)−3−ペンテン−2−オナト)トリメチルビニルシランが、X及びLの両方の配位子を有する化合物の例である。その他の特定の例としては、酢酸銅、トリフルオロ酢酸銅、硝酸銅、銅メトキシド、銅ケトイミン、チオ硫酸銅、ペンタフルオロプロピオン酸銅、オクタン酸銅、及びこのような銅化合物の対応する銀誘導体、例えばトリフルオロ酢酸銀、チオ硫酸銀などが挙げられる。
【0030】
ペースト又はインク配合物中に溶媒又は液体ビヒクルを含ませるのは一般的なことである。溶媒の目的は金属前駆体を溶解させることにある一方、液体ビヒクルの目的は粘度を調整することにある。一部の好ましい態様においては、溶媒はビヒクルとして作用することもできる。溶媒及びビヒクルは、焼結中にその可使時間を維持する上で高すぎてはならずそしてその作業機能が完了した時点での除去を妨げるように低すぎてはならない適切な蒸気圧を有するべきである。溶媒及びビヒクルは、基材の性能を低下させたりそれにマイナスの影響を及ぼすべきでなく、不純物が少なく、蒸気の毒性が低く、また有機残留物を残す傾向が少ないものでなくてはならない。更に、溶媒は金属前駆体のために高い溶解度を提供することが好ましい。α−テルピネオールが、スクリーン印刷を容易にするべく銅及び銀組成物の粘度を低減させるためのビヒクルの例である。OH基を有しそして環に単不飽和のあるα−テルピネオールはまた、インク配合物を一つにまとめるのに関与するものと思われる。溶媒及びビヒクル添加物を選択することにより、10センチポイズの粘度をもつ流体インクから40000〜60000センチポイズの粘度をもつペーストまでの範囲の印刷可能な組成物を作ることが可能である。
【0031】
インク又はペーストでもって使用される金属前駆体並びにその他の薬剤は、純度が高いこと、及び溶媒が使用される場合それへの溶解度が高いことが好ましい。同じく、金属前駆体及びその他の薬剤はまた、周囲条件下で化学的に安定で且つ毒性揮発物質を発生する傾向が少ないことが好ましい。それらは、有機残留物を残す傾向が少なく、硬化時に毒性の低い揮発物質を発生させるものであるべきである。更に、高い金属収量及び低い還元温度を有する金属前駆体化合物が好ましい。
【0032】
金属前駆体は固体でも液体でもよく、導体配合物に最初に添加しても、又は加熱中にその場で生じさせてもよい。金属前駆体はまた、導体配合物で用いられる微粒子金属の表面に予備コーティングすることもできる。
【0033】
導電体を作るための上述の代表的インク又はペーストの具体的な例としては、米国ニュージャージー州Rocky HillのParelec, Inc.によりPARMODの商標で市販されているタイプの組成物が挙げられる。導電性金属フィルム、特に銅フィルムを作る際に使用するための導電性金属配合物を含有する特定の市販のインク又はペースト配合物について更に詳しいことは、米国特許第6036889号明細書、米国特許第6143356号明細書、米国特許第6153348号明細書、米国特許第6274412号明細書、米国特許第6379745号明細書及び国際公開第03/032084号パンフレット(2003/018045)に記載されており、これらの参考文献の内容は、金属含有インク及び導電体前駆体の上述の広範な記述に加えて、参照によりここに組み入れられる。
【0034】
基材上に支持される金属で構成される導電体の作製を容易にするために、電子付着(EA)を利用できる、ということが見いだされた。より具体的に言えば、EAにより、これまで可能であったよりも低い温度で導体配合物を金属に変化させることによって導電体を作ることができるということが見いだされた。
【0035】
基材、特に紙及びポリマー基材上で、導電体を作るのに使用される電子付着の原理は、電気的に活性化された還元性ガスを作りそれに金属粉末又は金属前駆体配合物を曝露することである。還元性ガスの電気的活性化は負に帯電したイオン性の還元性ガスを生じさせることになると考えられるものの、電気的に活性化された還元性ガス中には正に帯電した種と中性の種が存在し得る。電子付着を利用するための1つの手順においては、窒素などのキャリヤガスと水素などの還元性ガスのガス混合物を、カソード及びアノードがあって、基材がアノードに接続されてターゲットアセンブリを形成している加熱用チャンバ、オーブン又は炉へ導入する。カソード及びアノード間にパルスDC電圧を印加して、カソードで低エネルギー電子を生成させる。これらの電子は電界内でアノードまでドリフトし、この電子のドリフト中に、分子の還元性ガス、すなわちH2の一部分が、電子付着により負イオンを形成する。それらもまたアノードへドリフトする。アノードでは、負に帯電したイオン性水素が金属前駆体及び微粒子金属と相互作用する。この相互作用は、化学量論的に又は触媒の作用により、金属粒子上の表面酸化物を還元するだけでなく、その他の元素との金属結合を切断するのも促進して、金属前駆体から金属を放出させ、そしてこの「新たな」又は新しく発生した金属がその融合又は焼結を加速する。このプロセスの間、キャリヤガスは、影響を受けることがないとみなされるように、還元性ガスのものより低い電子親和力を有するように選択される。キャリヤガスとしては、電子親和力がゼロであり、コストが低く、且つ安全性及び環境上の問題がないことから、N2が特に望ましい。
【0036】
例えば水素分子からのような、低エネルギー電子による還元性ガスの電気的活性化は、感光性カソードからの光電子の放出、電子ビーム技術、放射線源技術、及び、カスケードする初期電子が電極アレイ内の連続的に高くなる電位の電極へとドリフトしておのおのの連続する電極から追加の電子を放出するアバランシェ技術、によって行うことができる。自由な低エネルギー電子の光電子放出は、例えば紫外線又はその他の適切な波長の光へ感光性源を曝露して行うことができる。電子がDC電圧を利用して放出されるのではない技術(すなわち光電子放出)においては、カソード及びアノードは、発生した電子そして最終的には負に帯電したイオンをアノードへと引きつけるようにバイアスされなくてはならない。
【0037】
EAで使用される還元性ガスは一般に、次の2つのカテゴリーに入り、すなわち、1)ガスは本質的に還元性のガスであり、そして2)ガスは活性な還元種を生成する能力をもつ。第1のカテゴリーのガスには、導電性金属配合物中の金属に対する還元剤として作用できるいずれのガスも含まれる。本質的に還元剤であるガスの例には、H2、CO、SiH4、Si26、ギ酸、例えばメタノール、エタノールなどといったアルコールが含まれる。第2のカテゴリーの還元性ガスには、本質的に還元性ではないが、活性種を生成する能力をもついずれのガスも含まれ、例えば、ガス分子への解離による電子の付着により、それぞれH-、C-及びS-を形成するH、C、S含有ガスなど、が含まれる。このタイプのガスの例としては、アンモニア、低級アルキルアミン、ヒドラジン、硫化水素、及びC1〜C10炭化水素が挙げられる。
【0038】
上述のカテゴリーのEA還元性ガスのうちの1種以上を含む混合物に加えて、EAガス混合物は1種以上のキャリヤガスを更に含有することができる。キャリヤガスは、例えば還元性ガスを希釈するため、衝突安定性を提供するため、及び還元性ガスに電子を渡すために、使用することができる。ガス混合物で使用されるキャリヤガスは、ガス混合物中の還元性ガスのものよりも電子親和力の低い任意のガスでよい。一部の好ましい態様においては、キャリヤガスは不活性ガスである。好適な不活性ガスの例としては、N2、Ar、He、Ne、Kr及びXeが挙げられるが、これらに限定されるわけではない。
【0039】
導電体を作製するためのEAプロセスの実施においては、ガス混合物中の還元性ガスの濃度は約0.1体積%と100体積%の間に含まれ得る。好ましい態様においては、ガス混合物は、還元性ガスとしての水素とキャリヤガスとしての窒素を含み、そしてガス混合物は1〜4体積%の水素を含む。EAガス混合物は非可燃性であることから、約4体積%以下の水素量が好ましい。
【0040】
導電体の作製において使用することができる基材としては、通常の高温基材、例えばガラス又はシリコン及びその酸化物が挙げられるが、紙及びポリマー基材といったような低温基材も挙げられる。好適なポリマー基材には、ポリエチレンテレフタレート、カプトン(登録商標)ポリイミド、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリカーボネート、ポリノルボルネン、ポリアリレート、ポリエーテルケトンなどが含まれる。一部の利用分野については、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリ(塩化ビニル)といったより低温向けの基材も好ましいことがある。
【0041】
焼結が完了した時点でX−Y平面内の誘電性を維持する一方で焼結中は電荷をドレインする必要があるということが、さまざまな導体配合物を金属導体へと変えるためにEAを利用する重要な要件であると思われる。接地された導電性基材及び多孔質基材が、この結果を達成する方法の例である。第1のアプローチでは、コーティング層を加熱中に又は高電位で絶縁性から導電性へと変化させることができるように、誘電性基材を表面コーティングすることが可能である。あるいは、誘電性基材上に半導体コーティング層を適用することができ、又は基材が本質的に半導電性であることができる。このようにして、作製した導電体の電気的機能をなおも維持することができる。第2のアプローチでは、Z軸に沿って電流を通すことのできる多孔質ポリエーテルスルホン(PES)及び多孔質の紙といったような基材を使用することができる。第3のアプローチでは、印刷された表面パターンを、アース端子又はアノードへの一時的な電気接続を介して接地することができる。多孔質基材の気孔の大きさは10nm〜1mm、好ましくは100nm〜10μm、より好ましくは100nm〜1μmの範囲内でよい。EAに支援される変換によって導電体を作製するための温度範囲は、一般に25〜350℃、好ましくは25〜200℃、より好ましくは100〜150℃の範囲内にある。DC電圧は、約−1〜−50kVを含むことができるが、好ましい範囲は約−2〜−10kVである。電子を発生させるカソード又はその他のデバイス(光電子放出又は放射線源)は、アノードの近くになければならない。カソードと処理すべき基材の上面との距離は、約0.5〜10cmでよく、好ましい範囲は約1〜2cmである。2つの電極間に印加される電圧は、定電圧でもパルス電圧でもよい。アーク放電を最小限にするために、電圧パルスを使用するのが好ましい。電圧パルスの周波数は、0〜100kHz、好ましくは5〜20kHzの範囲でよい。
【0042】
開放した連続生産ラインを提供するために、EA作業圧力は好ましくは周囲大気圧である。しかしながら、電子付着によりイオン性の還元性ガスを発生させる効率を増大させるためには、最高60気圧といったような、大気圧を超える圧力でプロセスを運転することが好ましいことがあるが、一般的には圧力は約10〜50psiaである。
【0043】
導体配合物、例えば金属粒子もしくは金属前駆体又はその両方から構成されるインク又はペースト、を用いて導電性ライン及び表面凹凸を作製するに当たっては、配合物を任意の都合のよい技術を用いて基材に塗布することができる。硬質及び軟質基材に対してはスクリーン印刷及びステンシル印刷が適している。軟質基材で高生産速度とするためには、グラビア印刷、凹印刷及びオフセット印刷が適している。インクジェット印刷及び静電印刷は、印刷イメージをコンピュータで直接制御するという利点を提供する。これらの方法によると、回路をコンピュータ援用設計(CAD)ファイルから直接印刷でき、特別なツールの必要性はなくなる。必要なら、コード化又はプロトタイプ化用として、各回路を異なるものとすることができる。コンピュータ制御式分配機器を用いてより低い生産速度で同じ最終目的を達成することができる。この機器は、表面全体にわたり針を移動させ、そしてポンプ又は加圧注射器により供給された印刷用組成物を分配することにより、ドット又はラインを作り出す。その他の方法としては、回転スクリーン印刷、フレキソ印刷、静電印刷、レーザートレンチアンドフィル、ディップペンナノリソグラフィー、及び予備コーティングされたリボンからの熱転写が挙げられるが、これらに制限されるわけではない。
【0044】
理論により束縛されることは望まないものの、EA支援条件下での、提案される低温金属焼結プロセス、例えば銅又は銀の焼結、の態様は、以下のように説明される。すなわち、焼結の際に、N2中にH2が≦4体積%のガス混合物を炉へ導入する。この炉は、中心軸に沿って異なる部分に位置する加熱ゾーンと冷却ゾーン、及び炉の一方の端部からもう一方の端部までの移動ベルトを収容している。炉の内部には、電子放射カソードが上部に取付けられており、接地された移動ベルト上に、導電性の銅(又はその他の金属又は金属混合物)の配合物が上に印刷された硬質又は軟質の基材が置かれている。適切な電圧がカソードに印加されると、カソードから低エネルギー電子が発生されて、印刷を施された基材へ向かって電場の力を借りて移動する。このとき分子水素がこれらの電子に衝突して、中性及び負に帯電した原子水素を生成する。負に帯電した原子水素イオンは電場に沿って基材に向かい移動し、その結果基材表面上で活性種が優先的に吸着する。金属前駆体から金属が放出され、金属粒子表面上の酸化物が還元されて、この混合物が融合して基材上に焼結した導電体を形成する。基材表面では、カソードから放出された又は基材上での化学反応の副生物として生成された自由電子が、基材のZ軸に沿って又は基材の接地されたコーティング層を通してアース端子に排出される。
【0045】
低温の銅焼結のためにEAを応用するには、基材の表面より上で均等に低エネルギー電子を発生することができ且つH2とN2を含有する周囲圧力のガス雰囲気下で長い作業寿命を有することができるカソードを得ることが望ましい。放射チップが分散した金属プレートから構成されるカソードが好ましいことが見いだされた。電場を最大限にするために、おのおのの放射チップを直径0.025インチのNi/Crワイヤから製作し、金属プレートの表面から1.5cm突出した10度の角度の鋭いチップとするように機械加工した。放射チップと処理表面の間の1cmの所定の距離について、チップの間隔は、隣接チップの間での電場の干渉の最小化と電子放出の表面カバレッジの最大化との兼ね合いに基づいて、1cm前後となるように最適化された。
【実施例】
【0046】
以下の例は、本発明のさまざまな態様を例示しようとするものであり、その範囲を制限しようとするものではない。
【0047】
〔例1〕
金属粉末混合物由来の導電体
【0048】
この例は、還元性ガスとしてN2中4体積%のH2の雰囲気での電子付着のもとで銅粉末を用いて導電体を作製するのを説明する。
【0049】
1:2の重量比でα−テルピネオールとナノメートル銅粉末を含有する銅ペーストのバッチを、グローブボックス内で混合し、実験室規模の摩砕機で摩砕した。次に、この摩砕したペーストをアルミホイル上にスクリーン印刷した(EA中にペーストを接地する目的で)。ホイルを金属アノードの上面に載置することで接地した。長いピンを有するカソードをホイルの上にセットした。放射ピンの先端とホイルとの空隙は1cm前後であった。3.5kV前後の電圧を印加すると、0.25mA/ピン先端(チップ)の電流の電子放射が得られた。印刷された表面図形を、N2中4体積%のH2中で120℃まで加熱し10分間保持することによって焼結させた。これを、保持している間にEAを利用して及び利用せずに行なった。次に、焼結された銅の表面図形を電気絶縁テープに転写してその電気抵抗を測定した。結果から、EAを用いて作製された銅パターンは低い導電率を有し、明るい銅色を呈することが示され、酸化物を含まない部分的に焼結された標準的な銅フィルムであることが実証された。これとは対照的に、EAを適用しなかった銅パターンの色は、印刷されたままのパターンのものと類似した暗褐色であり、導電率はゼロであって、ナノ粉末表面上の表面酸化物が焼結していないことが示された。粒子を一緒に結合させるための銅化合物を添加せずに得られた銅パターンは、どちらの場合とも脆いものであった。
【0050】
〔例2〕
銅ケトイミン化合物から銅導体を作製する上での電子付着(EA)の効果
【0051】
導電体の作製におけるEAの効果を実証するために、以下の実験を行なった。Cu(MeC(O)CHC(NEt)Me)2という式の液体Cu(II)ケトイミン、ミクロンサイズの銅粉末、及びナノ微粒子銅粉末を、それぞれ0.128、0.698及び0.181の重量比で含有する銅ペーストを、N2でパージしたグローブボックス中で混合し、3本ロール摩砕機で摩砕した。次に、この摩砕したペーストをアルミホイル基材上にスクリーン印刷した。次いで、印刷した表面図形をN2中4体積%のH2中で200℃に至るまで焼結させて10分間200℃に保持し、これを一方はEAを適用しながら、他方は保持期間中EAなしで行った。次に、焼結した銅の表面図形を電気絶縁テープに転写してその電気抵抗を測定した。
【0052】
EAを適用して焼結した試料は低い導電率を有し、一方EAを適用しなかった試料は完全に非導電性であることが分かった。EAを適用することで作製された試料の焼結パターンの色はEAを利用しなかったものよりも有意に明るいことも観察され、銅前駆体から金属銅を放出するのを助けCu粉末上の表面酸化物を還元して銅の焼結を行う上でのEAの効果が示された。従って、EAに支援された200℃での導電体の作製は、EAなしで作製された導電体に比べ、銅の焼結及び導電率の面で有意に優れていた。
【0053】
〔例3〕
銅ケトイミンからの導体作製における電子付着(EA)の効果
【0054】
2中4体積%のH2中で単独の金属前駆体としてのCu(II)ケトイミンの低温での還元を容易にする上でのEAの効果を定量的に実証するために、以下の実験を実施した。アルミホイル上に例2の液体Cu(II)ケトイミンをおのおの数滴含む2つの試料を作製した。試料3−1はEAを使用して200℃まで加熱して10分間保持し、試料3−2はEAなしであった。
【0055】
EAを使用した及びEAを使用しない熱処理の後、空気パージしたTGA/DSC装置内でその場においてそれらを酸化することにより2つの試料を分析した。このようにして、TGA装置で加熱するにつれ有機残留物を空気酸化させた。炭素、水素及び窒素を含有する化合物をそれらの揮発性酸化物(CO2、H2O、NOxなど)へ酸化する結果として得られる試料の重量損失を測定することにより、熱処理後に残っている有機残留物の相対質量の推定値が得られた。同様にして、揮発性酸化物の量もFTIRにより測定した。
【0056】
結果から、試料3−1についての有機残留物はEAを適用しなかった場合の試料3−2のそれよりもはるかに少ないことが示された。かくして、EAを使用することにより、前駆体から金属銅を放出するのに必要とされる温度を低下させることができ、ひいては金属銅の焼結温度を低下させることができる。
【0057】
〔例4〕
ネオデカン酸銅からの銅導体作製における電子付着(EA)の効果
【0058】
銅前駆体化合物のみを用いて導電体を作る上でのEAの効果を実証するために、以下の実験を実施した。60wt%のネオデカン酸銅(II)と40wt%のトルエンを含有し鮮やかな青色を有する溶液をおのおの数滴有する2つの試料をアルミホイルに塗布した。その後、EAを適用して及び適用せずに、2つの試料を4%H2/N2下で200℃まで加熱して10分間保持した。
【0059】
EAを適用した場合、加熱サイクルの後の液滴は、褐色の銅色をもつフィルムへと変化し、ネオデカン酸銅から銅への変換が示された。しかしながら、EAを適用しなかった場合は、溶液は非常に暗い色の固相へと変化し、ネオデカン酸銅が金属銅に変換されなかったことが示された。
【0060】
〔例5〕
ギ酸銅からの導体作製における電子付着(EA)の効果
【0061】
2中4体積%のH2中でEA下でのギ酸銅(銅前駆体)を用いた銅導体の作製を実証するために、以下の実験を行なった。ギ酸銅の飽和水溶液(12.5g/100cc)をアルミホイル上に滴下し、EA条件下及び非EA条件下でN2中4%のH2中で150℃まで加熱して10分間保持した。
【0062】
EAを適用した場合、銅色のフィルムが作製されたことが分かった。作製したフィルムについてXPS分析を行って、そのフィルムが表面酸化物及び微量の有機及び無機残留物を伴う銅であることを確認した。150℃でEAを適用しない場合、処理した試料は緑/青色を有し、ギ酸銅が変化していないことと金属前駆体を還元して銅導体を作ることができなかったことが示された。
【0063】
〔例6〕
有機表面官能基をもつ銅粉末の混合物からの導体作製
【0064】
焼結した銅フィルムの電気的性能を改善する上でのEAの利点を実証するために、ネオデカン酸、銅のミクロン粉末、及び銅のナノ粉末をN2パージしたグローブボックス内においてそれぞれ0.128、0.698及び0.181の重量比で混合することにより、銅ペーストのバッチを作った。混合後、配合物を実験室規模の摩砕機で摩砕した。次に、この摩砕したペーストをアルミホイル上に印刷した(EAを適用するときの放電の問題を一時的に回避するため)。アルミホイル上の印刷した銅前駆体配合物の各試料を所定のガス雰囲気下に、EAを用いるか又は用いずに、10分間ピーク温度で焼結させた。次いで、焼結した銅の表面図形を電気絶縁テープに転写してその電気抵抗を測定した。結果を表1に提示する。
【0065】
【表1】

【0066】
表1に示されているとおり、N2中4体積%のH2を用いてEAを適用した場合、導電性の銅のピーク焼結温度は350℃から200℃まで低下した一方、EAを適用しなかった場合よりも著しく低い抵抗率を有する導電体が得られた。更に、EAを適用した場合の焼結された表面図形の機械的強度はEAを適用しなかった場合よりも著しく高かった。
【0067】
焼結中に、添加したネオデカン酸は銅粉末の表面酸化物と反応して、一時的な銅前駆体を生成するものと考えられる。焼結温度が比較的高い(例えば350℃)場合、その場で生成された銅前駆体は熱分解して銅を生成し、粉末混合物を焼結させることができる。N2中4体積%のH2中での焼結中にEAを適用した場合、H2による銅前駆体の還元は200℃で大幅に促進することができる。
【0068】
〔例7〕
電子付着を使用した曝露時間の効果
【0069】
銅配合物を焼結して導電体にするためのEA曝露時間の効果を調べるために、以下の実験を行なった。実施例6の場合と同様、ネオデカン酸、銅のミクロン粉末、及び銅のナノ粉末をN2パージしたグローブボックス内でそれぞれ0.128、0.698、及び0.181の各成分重量比で混合することにより、銅ペーストバッチを作った。混合後、混合物を実験室規模の摩砕機で摩砕した。次に、摩砕したペーストを、EA適用中の放電の問題を一時的に回避するため及び焼結した導体の電気抵抗の直接の測定を可能にするために、1枚のシリコンウェーハ上にスクリーン印刷した。
【0070】
シリコン上の印刷した銅ペーストの2つの試料を、N2中4体積%のH2を含有する還元性ガス中で焼結した。第1の試料の焼結のためには、150℃から200℃への加熱中にEAを適用し、200℃の時点でEAを中止した。第2の試料を焼結するためには、150℃から200℃への加熱中と200℃で2分間保持している間、EAを適用した。
【0071】
2つの試料の抵抗率は同じであることが分かり、EAに支援される化学的還元を加熱中に達成できたこと、そして追加のEA曝露のための200℃での保持時間は不要であったことが示された。
【0072】
〔例8〕
多孔質紙基材を用いた電荷の消散
【0073】
この例の目的は、銅配合物の焼結を容易にするためEAを適用する場合に基材として多孔質の紙を使用できるかどうかを判定することであった。
【0074】
優れたペースト印刷適性をもつ軟質基材として特に使用される多孔質紙を、Stora Ensoから購入した。この紙は、酸化による損傷なしに空気中で200℃に耐えることができる。紙を金属アノードの上面に置いた。長いピンを有するカソードを紙の上にセットした。放射ピンの先端と紙の間の空隙は1cm前後であった。3.5kV前後の電圧を印加すると、0.25mA/ピン先端の電流を有する電子放射が得られた。N2中4体積%のH2を用いて200℃で5分間のEAを適用した。このEA曝露後、紙に目に見える変色は見いだされず、電子放電中の過熱又は過電流による熱的な損傷がないことが示された。
【0075】
この結果はまた、多孔質紙がZ軸を通して電荷を紙から消散させる能力をもち、かくして非導電性の基材でのEAを可能にすることを示している。
【0076】
〔例9〕
多孔質紙上での銅粉末導体配合物の焼結
【0077】
この例は、紙上に銅粉末から導電体を作製するために電子付着(AE)に支援されるN2中4体積%のH2を用いることの利点を説明する。
【0078】
1:2の重量比でα−テルピネオールとナノメートルの銅粉末を含有する銅ペーストのバッチをグローブボックス内で混合し、実験室規模の摩砕機で摩砕した。その後、この摩砕したペーストを、表面コーティングした多孔質紙(Stora Enso製)上にスクリーン印刷した。印刷した表面図形を、N2中4体積%のH2中で120℃まで加熱し5分間保持することにより焼結した。2つの焼結事例の一方においては、100から120℃までの加熱中及び5分の保持時間の間、EAを適用した。もう1つの焼結事例では、EAを適用しなかった。
【0079】
結果から、EAを使用せずに作製された導体パターンは印刷されたとおりのパターンの色と類似した暗褐色を有することが示され、未焼結フィルムであることが実証された。これとは対照的に、EAを適用した場合に作製された銅パターンの色はより明るい銅色であり、粉末表面上の酸化物の除去及びフィルムの部分的焼結が示された。導体配合物は銅前駆体を含有せず、かくして焼結中に銅粉末を融合させるための新たな銅の生成がなかったことから、EA下で焼結されたフィルムの導電率は不十分であった。
【0080】
〔例10〕
多孔質紙上の銅粉末及び銅前駆体で作られた導体配合物の焼結
【0081】
この例は、紙上の銅粉末及び銅前駆体で作られた導体配合物の焼結のために電子付着(EA)に支援されるN2中4体積%のH2を用いることの利点を実証する。
【0082】
α−テルピネオール、ミクロン銅粉末及びギ酸銅を11wt%、71wt%、及び18wt%の重量百分率で含有する銅ペーストバッチをグローブボックス内で混合し、実験室規模の摩砕機で摩砕した。その後、この摩砕したペーストを、表面コーティングした多孔質紙(Stora Enso製)上にスクリーン印刷した。この印刷した表面図形を、N2中4体積%のH2中で150℃まで加熱し5分間保持することにより焼結した。2つの焼結事例の一方においては、100から150℃までの加熱中及び5分の保持時間の間、EAを適用した。もう1つの焼結事例では、EAを適用しなかった。
【0083】
この結果から、EAを使用せずに作製された導体パターンは印刷されたままのパターンのものと同様の暗褐色であることが示され、焼結していないフィルムであることが実証された。これとは対照的に、EAを適用した場合の銅パターンの色は極めて明るい銅色であり、焼結されたフィルムの作製が示された。この焼結フィルムの抵抗及び厚みを測定することにより、焼結フィルムの抵抗率は232μΩ・cm前後であることが分かった。この抵抗率レベルは比較的高いものの、この実験は、EAに支援されるN2中4体積%のH2の下で150℃で多孔質紙上に導電性パターンが作製できることを実証している。
【0084】
〔例11〕
多孔質紙上の銅フレークと銅前駆体で作られた導体配合物の焼結
【0085】
この例は、紙上の銅フレーク及び銅前駆体で作られた導体配合物の焼結のために電子付着(EA)に支援されるN2中4体積%のH2を用いることの利点を実証する。
【0086】
α−テルピネオール、銅フレーク及びギ酸銅を11wt%、71wt%、及び18wt%の重量百分率で含有する銅ペーストのバッチを作った。より良く混合するために、ギ酸銅をまずα−テルピノールと混合して摩砕し、次にこの混合物に銅フレークを添加して再び混合/摩砕した。その後、ペーストを、表面コーティングした多孔質紙(Stora Enso製)上にスクリーン印刷した。印刷した表面図形を、N2中4体積%のH2中で150℃まで加熱し5分間保持することにより焼結した。2つの焼結事例の一方においては、100から150℃までの加熱中及び5分の保持時間の間、EAを適用した。もう1つの焼結事例では、EAを適用しなかった。
【0087】
結果から、EAを使用せずに作製された導体パターンは印刷されたままのパターンの色と同様の暗褐色であることが示され、焼結していないフィルムであることが実証された。これとは対照的に、EAを適用した場合の銅パターンの色は極めて明るい銅色であり、還元され且つ焼結されたフィルムの作製が示された。この焼結フィルムの抵抗及び厚みを測定することにより、焼結フィルムの抵抗率は97μΩ・cm前後であり、ペーストにおいてミクロン銅粉末を使用した場合(例10)よりも極めて良好であることが分かった。この実験は更に、ミクロン銅粉末の代わりに銅フレークを使用した場合、EAに支援されるN2中4体積%のH2の下で150℃で多孔質紙上に導電性パターンを作製でき、そして導電率を改善できるということを実証している。
【0088】
〔例12〕
シリコンウェーハ上の銅粉末及び結晶性銅前駆体で作られた導体配合物の焼結
【0089】
この例は、シリコンウェーハ上の銅粉末及び結晶性銅前駆体で作られた導体配合物の焼結のために電子付着(EA)に支援されるN2中4体積%のH2を用いることの利点を実証する。
【0090】
α−テルピネオール、ミクロン銅粉末及びギ酸銅を11wt%、71wt%、及び18wt%の重量百分率で含有する銅ペーストのバッチをグローブボックス内で混合し、実験室規模の摩砕機で摩砕した。その後、この摩砕したペーストをシリコンウェーハ上にスクリーン印刷した。印刷した図形を、N2中4体積%のH2中で150℃まで加熱し5分間保持することにより焼結した。2つの焼結事例の一方においては、100から150℃までの加熱中及び5分の保持時間の間、EAを適用した。もう1つの焼結事例では、EAを適用しなかった。
【0091】
結果から、EAを使用せずに作製された導体パターンは印刷されたままのパターンの色と同様の暗褐色であることが示され、焼結していないフィルムであることが実証された。これとは対照的に、EAを適用した場合の銅パターンの色は極めて明るい銅色であり、焼結されたフィルムの作製が示された。焼結フィルムの抵抗及び厚みを測定することにより、焼結フィルムの抵抗率は29μΩ・cm前後であることが分かった。この実験は、EAに支援されるN2中4体積%のH2の下で150℃で半導体基材上に導電性パターンを作製できることを実証している。
【0092】
〔例13〕
シリコンウェーハ上の銅粉末及び溶解した銅前駆体で作られた導体配合物の焼結
【0093】
この例は、実施例12と対照的に、シリコンウェーハ上の銅粉末及び溶解した銅前駆体で作られた導体配合物の焼結のために電子付着(EA)に支援されるN2中4体積%のH2を用いることの利点を実証する。
【0094】
水酸化アンモニウム(水中に30wt%)及びギ酸銅を1対1の重量比で含有する溶液を作り、このギ酸銅粉末は完全に溶解させた。12wt%の溶液と88wtのミクロン粉末を含有する銅ペーストをグローブボックス内で混合し、実験室規模の摩砕機で摩砕した。その後、この摩砕したペーストをシリコンウェーハ上にスクリーン印刷した。印刷したペーストを、N2中4体積%のH2中で150℃まで加熱し5分間保持することにより焼結した。2つの焼結事例の一方においては、100から150℃までの加熱中及び5分の保持時間の間、EAを適用した。もう1つの焼結事例では、EAを適用しなかった。
【0095】
結果から、EAを適用せずに作製された導体パターンは暗褐色であり、無限大の抵抗率を有することが示された。これとは対照的に、EAを適用した場合の銅パターンの色は極めて明るい銅色であり、焼結されたフィルムの作製が示された。焼結フィルムの抵抗率は7μΩ・cmであることが分かった。この実験は更に、EAに支援されるN2中4体積%のH2の下で150℃で導電性パターンを作製できることを実証している。
【0096】
〔例14〕
ネオデカン酸銀からの銀導体作製における電子付着(EA)の効果
【0097】
ネオデカン酸銀粉末をアルミホイル上に置き、EA及び非EA条件下でN2中に4%H2の還元性ガス中で150℃まで加熱し、10分間保持した。
【0098】
EAを適用した場合、銀色のフィルムが作製されることが分かった。EAを使用しなかった試料では、試料は灰青色であった。ネオデカン酸銀が加熱中に融解し、そして冷却時に銀への変化なしに再凝固したように思われた。
【0099】
〔例15〕
市販の銀ペーストからの銀導体作製における電子付着(EA)の効果
【0100】
市販の銀ペーストをParelec, Inc.から購入し、カプトン(登録商標)ポリイミドフィルム上に印刷した。この銀ペーストを焼結させるための推奨温度は5〜10分間空気又はN2中において150℃である。印刷した図形を、N2中4体積%のH2中で120℃まで加熱し5分間保持することにより焼結した。2つの焼結事例の一方においては、100から150℃までの加熱中及び5分の保持時間の間、EAを適用した。もう1つの焼結事例では、EAを適用しなかった。
【0101】
結果から、EAを使用せずに作製されたパターンは導電性でないことが示された。これとは対照的に、EAを適用した場合のパターンは18(μΩ・cm)の抵抗率であった。この実験は、EAに支援されるN2中4体積%のH2下で120℃程度の低い温度でカプトン上に銀の導電性パターンを作製できることを実証している。
【0102】
〔例16〕
シリコンウェーハ上のITO粉末及び銅前駆体で作られたITOフィルムの焼結
【0103】
この例は、シリコンウェーハ上でITO粉末及び金属前駆体で作られたインジウム/スズ酸化物(ITO)フィルムを焼結させるために電子付着(EA)に支援されるN2中4体積%のH2を使用することの利点を実証する。
【0104】
α−テルピネオール、ITO粉末及びギ酸銅を11wt%、71wt%、及び18wt%の重量百分率で含有するITOペースト配合物のバッチをグローブボックス内で混合し、実験室規模の摩砕機で摩砕した。その後、この摩砕したペーストをシリコンウェーハ上にスクリーン印刷した。印刷した表面図形を、N2中4体積%のH2中で150℃まで加熱し5分間保持することにより焼結した。2つの焼結事例の一方においては、100から150℃までの加熱中及び5分の保持時間の間、EAを適用した。もう1つの焼結事例では、EAを適用しなかった。
【0105】
結果から、EAを使用せずに作製されたパターンは効果的に焼結されなかったことが示される。これとは対照的に、EAを適用した場合は、焼結したフィルムが作製された。この実験は、EAに支援されるN2中4体積%のH2の下で150℃で半導体基材上に焼結したITOフィルムを作製できることを実証している。
【0106】
手短に言えば、これらの例は、電子付着を使用して金属粉末の表面酸化物を還元しそして金属前駆体を金属に変化させて焼結が起こるようにした場合に、温度に敏感な基材、例えば紙、を含めたさまざまな基材上に低温で導電体を提供することができるということを示している。これらの例は更に、そのような導電性フィルムを、導電体を作製するのによく使用される市販の粉末及び金属前駆体からこれまで利用されてきたよりもはるかに低い温度で処理時間を延長させることなく作製できる、ということを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に導電体を作製する方法であって、
・金属粒子、金属前駆体及びそれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1種の成分で構成された導体配合物を基材上に塗布する工程、
・該導体配合物を電気的に活性化された還元性ガスに曝露する工程、及び
・該成分を金属に変えそして導電体を作製する工程、
を含む導電体作製方法。
【請求項2】
前記電気的に活性化された還元性ガスを、
・第1の電極と第2の電極の間に前記導体配合物を配置する工程、及び
・前記第1及び第2の電極の間に直流(DC)電圧を確立して、当該電気的に活性化された還元性ガスを作る工程、
によって生じさせる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電気的に活性化された還元性ガスが負に帯電したイオン性還元性ガスである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記還元性ガスが、水素、アンモニア、一酸化炭素及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ガス混合物が0.1〜100体積%の水素とキャリヤガスである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ガス混合物が1〜4体積%の水素とキャリヤガスである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記キャリヤガスが、窒素、ヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトン、キセノン及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記導体配合物が前記成分及びインジウムスズ酸化物で構成される、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記導体配合物が、金属粒子、式M(+a)y(-b)wz(式中、Mは導電体を生成する上で用いるのに適した金属であり、Xは負に帯電した配位子であり、Lは中性配位子であり、そしてay=bwであり、aは1〜5、bは1〜3、Zは0〜5である)をもつ金属前駆体、及び前記粒子及び金属前駆体の混合物からなる群から選択された少なくとも1種の成分で構成される、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記成分において使用される金属が、銅、銀、金、亜鉛、カドミウム、パラジウム、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、ロジウム、白金、鉄、コバルト、ニッケル、マンガン、インジウム、スズ、アンチモン、鉛、ビスマス、バナジウム、クロム、チタン、タンタル、アルミニウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、カドミウム、ガリウム、ビスマス、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記成分において使用される金属が、パラジウム、ロジウム、白金、コバルト、ニッケル、マンガン、インジウム、スズ、アンチモン、鉛、ビスマス、アルミニウム及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記成分において使用される金属が、銅、銀、白金、金及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記配位子Xが、カルボキシレート、ハロカルボキシレート、アミド、ハロアミド、アミド、イミノ、ハロイミノ、β−ジケトン、ハロ(β−ジケトン)、β−ケトイミン、ハロ−(β−ケトイミン)、β−ジイミン、ハロ(β−ジイミン)、β−ケトエステル、ハロ−(β−ケトエステル)、β−ケトアミド、ハロ−(β−ケトアミド)、アルコキシ、ハロアルコキシ、アミノアルコキシ、フェノキシ、ハロフェノキシ、アルキル、フルオロアルキル、アリール、ハロアリール、アルケニル、ハロアルケニル、ハロアルキン、トリフルオロメチルスルホネート、βーケトネートオレフィン、β−ケトイミンオレフィン、β−ジイミンオレフィン、ハライド、ナイトライド、ハイドロキサイド、サルフェート、サルファイト、ナイトレート、ナイトライト、カーボネート、バイカーボネート、及びそれらの混合物からなる群から選択され、そして前記配位子Lが、アンモニア、置換アミン、ジアミン、トリアミン、イミン、ニトリル、アルケン、アルキン、一酸化炭素又はアルキルもしくはフェニル置換ホスフィン錯体、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記配位子Xが、カルボキシレート、β−ジケトン、β−ケトイミン、β−ジイミン、β−ケトエステル、及びそれらの混合物からなる群から選択され、zが0である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記導体配合物が、(a)式M(+a)y(-b)wzの金属前駆体、(b)1〜10ミクロンの粒度を有する第1の金属粉末、(c)5〜80ナノメートルの粒度からなる第2の金属粉末、及び(d)有機液体の混合物で構成される、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記成分において使用される前記金属が、銅、銀及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記基材が、多孔質紙と、ポリエチレンテレフタラート、ポリイミド、ポリエチレンナフテネート、ポリスルホン及びポリエーテルイミドからなる群から選択される多孔質ポリマーと、それらの混合体とからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記基材が半導体材料で表面コーティングされている、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
金属粒子、金属前駆体及びそれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1種の成分で構成された導体配合物からフィルムを作製し、該成分を焼結金属へと変えるための方法であって、該導体配合物を負に帯電したイオン性還元性ガスに曝露して前記成分を金属に変え、こうして生成された金属を焼結することを含む方法。
【請求項20】
前記導体配合物の成分が、金属粒子、式M(+a)y(-b)wzの金属前駆体(式中、Mは、銅、銀及びそれらの混合物からなる群から選択され、Xは負に帯電した配位子であり、Lは中性の配位子であり、そしてay=bwであり、aは1〜5、bは1〜3、zは0である)、及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記導体配合物が、ギ酸銅、酢酸銅、トリフルオロ酢酸銅、硝酸銅、銅メトキシド、ネオデカン酸銅、銅ケトイミン、2−エチルヘキサン酸銅、チオ硫酸銅、ペンタフルオロプロピオン酸銅、オクタン酸銅、かかる銅化合物の対応する銀誘導体、及びそれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1種の金属前駆体で構成される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記負に帯電した還元性ガスへの前記曝露の際に用いられる温度が25〜350℃である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記負に帯電した還元性ガスへの前記曝露の際に用いられる温度が25〜200℃である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記負に帯電した還元性ガスへの前記曝露の際に用いられる温度が100〜150℃である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記負に帯電した還元性ガスへの前記曝露の際に用いられる圧力が10〜50psiaである、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記配合物がインジウムスズ酸化物で構成される、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
導電体を作製するための方法であって、
(a)金属粒子、金属前駆体及びそれらの混合物からなる群から選択された少なくとも1種の成分で構成された配合物を基材上に塗布する工程であって、前記金属粒子又は金属前駆体における当該金属が銅、銀及びそれらの混合物の群から選択される、配合物塗布工程、
(b)前記配合物を、不活性ガスと水素で構成される電気的に活性化された還元性ガスと接触させる工程であって、前記水素が前記還元性ガス中に1〜4体積%の量で存在する、接触工程、及び
(c)前記成分を金属に変化させ、こうして生成された金属を焼結する工程、
を含む導電体作製方法。
【請求項28】
前記金属前駆体が、ギ酸銅、ネオデカン酸銅、ネオデカン酸銀及びそれらの混合物からなる群から選択される、請求項27に記載の方法。

【公開番号】特開2007−314866(P2007−314866A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−42755(P2007−42755)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【出願人】(591035368)エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド (452)
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】7201 Hamilton Boulevard, Allentown, Pennsylvania 18195−1501, USA
【Fターム(参考)】