説明

導電性ゴムローラの製造方法、電子写真装置用ローラ及び転写ローラ

【課題】マイクロ波加硫を応用した、ゴム層のCセット性がよく、及びセル分布が均一で、かつ、硬度や抵抗のムラの無い、転写ローラ、帯電ローラ、現像ローラ等の電子写真装置用ローラとして有用な導電性ゴムローラの製造方法を提供する。
【解決手段】ゴム成分として、アリルグリシジルエーテルが共重合されているエピクロルヒドリン系ゴムを用い、該ゴム成分100質量部に対し、加硫剤としてジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド1質量部以上3質量部以下、チウラムジスルフィド化合物1質量部以上3質量部以下及びモルホリノジチオ化合物0.5質量部以上1.5質量部以下を用い、硫黄の添加量を0.2質量部以下とし、化学発泡剤を含ませ、該ゴム組成物を発泡体とする際マイクロ波を用い、該マイクロ波を照射区間長1.8m以上2.0m以下、マイクロ波発信機出力0.1kW以上1.5kW以下に調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写装置、プリンタ、静電記録装置等の画像形成装置において使用される導電性ゴムローラの製造方法、更には、感光体等の像担持体に電子写真プロセス、静電記録プロセス等の作像手段で形成担持させたトナー像による可転写画像を紙等の記録媒体、転写材に転写させる転写装置の転写ローラ等の電子写真装置用ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタなど、電子写真方式の画像形成装置(以下、電子写真装置)の多くに帯電ローラ、転写ローラ、現像ローラ等の導電性ゴムローラが用いられている。
【0003】
従来、これらの導電性ゴムローラは、導電性の発泡ゴムチューブに導電性芯材を挿入したり、導電性芯材の周りで導電性ゴム原料を発泡させたりして製造される。発泡ゴムチューブに芯材を挿入する方法は、簡便であり、精度良くゴムローラを製造することができるので好ましいものである。
【0004】
発泡ゴムチューブの製造方法として、高圧蒸気による加硫缶加硫(特許文献1)、筒型等による金型加硫(特許文献2)、マイクロ波照射によるマイクロ波加硫(特許文献3)が知られている。
【0005】
例えば、加硫缶加硫では、発泡体のセルが不均一となるため、所望のセルを表面に出すために多量の研磨を行わなくてはならない。
【0006】
金型加硫においては、段取りに時間がかかり、かつ、金型洗浄を行う必要があるため、数多く作るのには不向きであった。
【0007】
一方、マイクロ波加硫は、段取りが良く、セルも均一となるが、ゴムが軟化した時にチューブが潰れてしまい、チューブ内外径の縦横比が不均一となってしまうことがある。更に、この不均一に起因して、得られる導電性ゴムローラでは周方向の硬度や抵抗のムラの原因となっていた。
【0008】
すなわち、マイクロ波加硫における発泡ゴムチューブの製造において、これからの複写機、プリンタに使用される導電性ゴムローラでは、発泡体のセルやチューブ内外径の縦横比が均一で、周方向の硬度や抵抗のムラが無い、段取り性や生産性の良い製造方法が求められている。
【特許文献1】特開平11−114978号公報
【特許文献2】特開2002−221859号公報
【特許文献3】特開平11−201140号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の課題は、マイクロ波加硫を応用した、ゴム層のCセット性がよく、及びセル分布が均一で、かつ、硬度や抵抗のムラの無い、転写ローラ、帯電ローラ、現像ローラ等の電子写真装置用ローラとして有用な導電性ゴムローラの製造方法を提供すること、及び、該製造方法により製造された、周方向の硬度や抵抗のムラの無い、電子写真装置用ローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために、ゴム原料及びマイクロ波加硫条件等を鋭意検討し、ついに本発明に至った。
【0011】
すなわち、本発明は、導電性芯材上にゴム組成物からなる発泡体ゴム層が形成されている導電性ゴムローラの製造方法において、該ゴム組成物は、ゴム成分としてアリルグリシジルエーテルが共重合されているエピクロルヒドリン系ゴムを用い、該ゴム成分100質量部に対し、加硫剤としてジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド1質量部以上3質量部以下、チウラムジスルフィド化合物1質量部以上3質量部以下及びモルホリノジチオ化合物0.5質量部以上1.5質量部以下を含有し、硫黄の添加量が0.2質量部以下であり、さらに化学発泡剤を含み、該ゴム組成物にマイクロ波発信機出力を0.1kW以上1.5kW以下とし、照射区間長1.8m以上2.0m以下でマイクロ波を照射して、発泡体とすることを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法である。
【0012】
また、本発明は、2台のマイクロ波発信機を使用し、マイクロ波照射量を0.2kW以上3.0kW以下とすることを特徴とする上記の導電性ゴムローラの製造方法である。
【0013】
さらに、本発明は、化学発泡剤が、p,p’‐オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド又はアゾジカルボンアミドであることを特徴とする上記の導電性ゴムローラの製造方法である。
【0014】
また、本発明は、エピクロルヒドリン系ゴムが、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体を含むものであることを特徴とする上記導電性ゴムローラの製造方法である。
【0015】
そして、また、本発明は、上記導電性ゴムローラの製造方法により形成した導電性ゴムローラであることを特徴とする電子写真装置用ローラである。
【0016】
また、本発明は、23℃×55%RH環境下で測定した抵抗値が5×105Ω以上5×109Ω以下であることを特徴とする上記電子写真装置用ゴムローラである。
【0017】
さらに、本発明は、さらに表面層が形成されていることを特徴とする上記の電子写真装置用ローラである。
【0018】
そして、本発明は、上記電子写真装置用ローラであることを特徴とする転写ローラである。
【発明の効果】
【0019】
本発明の導電性ゴムローラの製造方法は、該発泡体ゴム層のCセット性がよく、セル分布が均一でかつ、硬度や抵抗のムラの無い導電性ゴムローラを提供することができる。また、該導電性ゴムローラの製造方法により製造された導電性ゴムローラは、電子写真装置用ローラとして、特に、転写ローラとして好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明は、導電性芯材上にゴム組成物からなる発泡体ゴム層が形成されている導電性ゴムローラの製造方法であり、該ゴム組成物は、ゴム成分としてアリルグリシジルエーテルが共重合されているエピクロルヒドリン系ゴムを使用し、さらに、該ゴム成分100質量部に対し、加硫剤としてジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド1質量部以上3質量部以下、チウラムジスルフィド化合物1質量部以上3質量部以下及びモルホリノジチオ化合物0.5質量部以上1.5質量部以下を使用し、硫黄の含有量を0.2質量部以下とし、かつ、化学発泡剤を含むものであり、該ゴム組成物を発泡体とする際の加熱手段がマイクロ波であり、マイクロ波照射装置内には、少なくとも1台のマイクロ波発信機が備えられており、マイクロ波を照射する領域の長さ(照射区間長)が1.8m以上2.0m以下であって、かつ、マイクロ波発信機出力を0.1kW以上1.5kW以下とすることを特徴とするものである。
【0021】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0022】
図2に、本発明に係る導電性ゴムローラを電子写真装置に利用した一例を示す。
【0023】
図2に示す電子写真装置は、電子写真方式の、プロセスカートリッジを使用したレーザープリンタであり、同図はその概略構成を示す図である。
【0024】
この電子写真装置は、像担持体として、ドラム型の電子写真感光体(以下「感光ドラム」という。)1を備えている。感光ドラム1は、接地された円筒アルミニウム基体の外周面に、有機光導電体(OPC)からなる感光層を設けたものである。この感光ドラム1は、駆動手段(不図示)により、矢印R1方向に所定のプロセススピード(周速度)、例えば、50mm/secで回転駆動される。
【0025】
感光ドラム1の表面は、接触帯電部材である帯電ローラ2によって均一に帯電される。帯電ローラ2は、感光ドラム1に接触配置されており、感光ドラム1の矢印R1方向の回転に伴って矢印R2方向に従動回転する。帯電ローラ2には、帯電バイアス印加電源(高圧電源)により振動電圧(交流電圧VAC+直流電圧VDC)が印加され、これにより感光ドラム1の表面は、−600V(暗部電位Vd)に一様に帯電処理される。帯電後の感光ドラム1の表面は、レーザスキャナから出力されてミラーによって反射されたレーザ光3、すなわち、目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して変調されたレーザ光により走査露光を受ける。これにより、感光ドラム1の表面には、目的の画像情報に対応した静電潜像(明電部位Vl=−150V)が形成される。
【0026】
その静電潜像は、現像装置4の現像スリーブに印加された現像バイアスによって、負に帯電されたトナーが付着され、トナー像として反転現像される。
【0027】
一方、給紙部(不図示)から給搬送された紙等の転写材7が、転写ガイドにガイドされて、感光ドラム1と転写ローラ6との間の転写部(転写ニップ部)Tに、感光ドラム1上のトナー像とタイミングを合わせるようにして供給される。転写部Tに供給された転写材7は、転写バイアス印加電源により転写ローラ6に印加された転写バイアスによって、表面に感光ドラム1上のトナー像が転写される。このとき、転写材7に転写されないで感光ドラム1表面に残ったトナー(残留トナー)は、クリーニング装置9によって除去される。
【0028】
転写部Tを通った転写材7は、感光ドラム1から分離されて定着装置10へ導入され、ここでトナー像の定着処理を受け、画像形成物(プリント)として電子写真装置本体(不図示)外部に排出される。
【0029】
なお、ここで、本発明の製造方法で製造された導電性ゴムローラは、必要により、表面層が設けられて、帯電ローラ2、現像スリーブ、転写ローラ6等として使用される。特に、転写ローラとして有用である。
【0030】
(導電性ゴムローラの製造)
本発明の発泡体ゴム層のゴム成分は、アリルグリシジルエーテルが共重合されているエピクロルヒドリン系ゴムを用いる。なお、このエピクロルヒドリン系ゴムとして、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体が好ましい。
【0031】
本発明では、このゴム成分に対して、少なくとも化学発泡剤及び加硫剤として、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、チウラムジスルフィド化合物及びモルホリノジチオ化合物を配合して発泡体ゴム層用原料ゴム組成物とする。なお、通常エピクロルヒドリン系ゴムの加硫剤である硫黄の含有量はできるだけ少なくする。
【0032】
なお、本発明では、ゴム成分100質量部に対して、加硫剤であるジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド1質量部以上3質量部以下、チウラムジスルフィド化合物1質量部以上3質量部以下及びモルホリノジチオ化合物0.5質量部以上1.5質量部以下を含有させ、硫黄は0.2質量部以下とする。このようにする理由は、加硫剤として用いるジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、チウラムジスルフィド化合物及びモルホリノジチオ化合物は、加熱により分解してスルフィドラジカルを発生し、このラジカル硫黄がモノスルフィド架橋し、セット性が向上するからである。硫黄の含有量が0.2質量部超であると、モノスルフィド架橋の比率が低下し、セット性が低下する為、好ましくないからである。なお、本発明では、硫黄の含有量が0質量部である場合を含むものとする。
【0033】
本発明では、化学発泡剤として、発泡ゴムの製造に使用されるものならばいずれでも使用可能であるが、中では、発泡の容易さ、発泡セルの均一性等からアゾジカルボンアミド
やp,p’‐オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジドが好ましい。なお、尿素等の発泡助剤を使用しても良い。化学発泡剤の使用量は、ゴム成分100質量部に対して、1質量部から10質量部とするのが適当である。
【0034】
本発明では、さらに、カーボンブラック等の導電材、炭酸カルシウム等の充填材、他の助剤を混合して、使用しても良い。
【0035】
以上のような原料を混合したゴム組成物は、押出機から押し出された後に、マイクロ波発信機の出力が0.1kWから1.5kWの間に調整され、かつ、照射区間長1.8mから2.0mの間であるマイクロ波照射装置内でマイクロ波発泡加硫される。なお、マイクロ波照射量は0.2kW以上3.0kW以下であることが好ましい。そのため、マイクロ波発信機は2台を用いることが好ましく、マイクロ波の照射区間長が1.8mから2.0mになるように適宜マイクロ波発信機を配置する。
【0036】
図3に、導電性ゴムローラを製造するのに適したマイクロ波による連続加硫の製造装置を示す。
【0037】
図3において、11は押出機、12はマイクロ波照射装置(UHF)、13は熱風加硫装置(HAV)、14は引取機、15は定尺切断機である。
【0038】
上記ゴム組成物を、バンバリーミキサー又はニーダー等の密閉式混練機を用い混練し、次いで、オープンロールとリボン成形分出し機によりリボン状に成形した後、上記押出機11に投入する。該押出機11からチューブ状に押し出されたゴム組成物は、フッ素樹脂コーティングされたメッシュ状ベルト、又はフッ素樹脂被覆コロにてUHF12に搬送され、発泡加硫される。UHF12で加硫されたゴム組成物はフッ素樹脂被覆コロでHAV13に搬送され、発泡加硫が完結される。なお、UHF12とHAV13間は、フッ素樹脂被覆コロで連結されている。
【0039】
なお、UHF12、HAV13及び引取機14の長さは、例えば、順に、4m、6m、1mとすることができる。また、UHF12とHAV13間、及びHAV13と引取機14間は、通常0.1m以上1.0m以下とする。このような構成であると、UHFから引取機までの距離を13m程度と極めて短いものすることが可能となっている。
【0040】
上記マイクロ波を用いた製造装置において、押出機11よりチューブ状に押出されたゴム組成物は、押し出された直後にUHF12内に搬送され、1.5min以上2.5min以下間に100℃以上250℃以下昇温した時のガス発生量が2.0ml/g以上20.0ml/g以下になるように加熱され、加硫、発泡し、つづいて、HAV13に送られて、加硫が完結される。
【0041】
なお、UHF12内では、マイクロ波の照射区間長が1.8mから2.0mで、照射強度が合計で0.2kWから3.0kWとすることが好ましい。さらに、UHF12内のマイクロ波発信機の出力は0.1kW/台以上1.5kW/台以下としておくことが、ゴム組成物に過度にマイクロ波が集中することが無いので好ましい。また、ゴム組成物の発泡のためにマイクロ波の照射区間長はマイクロ波照射装置中では1.8mから2.0mにしておく。そのために出力0.1kWから1.5kWに調整可能なマイクロ波発信機を複数台使用し、それぞれのマイクロ波発信機の出力を上記範囲で調整して、発泡加硫を制御することが好ましい。
【0042】
加硫、発泡後に引取機14より排出された直後に、定尺切断機15により所定の寸法に切断する。
【0043】
この切断された発泡ゴムチューブに、必要により、歪みを除いた後に、ホットメルト接着剤又は加硫接着剤を所定の領域に塗布したφ4mm以上10mm以下の導電性芯材を内径部に圧入し、ローラ状成形体を得る。この成形体を、研磨砥石GC80を取り付けた研磨機(不図示)にセットし、研磨条件として回転速度2000rpm、送り速度500mm/分で外径が例えば17mmになるように研磨し、導電性ゴムローラを作成する。
【0044】
このようにして製造される導電性ゴムローラは、例えば、図1の斜視図に示すようなものである。図1において、61は導電性芯材であり、その周りに発泡体ゴム層62が形成されている。なお、本発明では、さらに、この発泡体ゴム層62の表面が紫外線、電子線等のエネルギー線で処理されていても良く、また、表面に機能性の表面層が形成されていても構わない。また、該導電性ゴムローラとしては、ローラは23℃×55%RH環境下で測定した抵抗値が5×105Ω以上5×109Ω以下であることが、電子写真用ローラとして望ましい。
【0045】
このようにして製造した導電性ゴムローラは、そのままで、また、表面処理後に、電子写真装置用ローラとして使用可能である。
【実施例】
【0046】
以下、実施例により本発明を説明する。
【0047】
以下の実施例、比較例において使用した資材は以下の通りである。
【0048】
1)ゴム成分
・CHR:エピクロルヒドリンゴム「ハイドリンT3106」(商品名)、日本ゼオン株式会社製、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体のエピクロルヒドリン系ゴム
【0049】
2)化学発泡剤
・OBSH:p,p'‐オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド「ネオセルボンN」(商品名)、永和化成工業株式会社製
・ADAC:アゾジカルボンアミド「ビニホールAC」(商品名)、永和化成工業株式会社製
【0050】
3)加硫剤(加硫促進剤)
・TPTT:ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド「ノクセラーTRA」(商品名)、大内新興化学工業株式会社製
・TETD:テトラエチルチウラムジスルフィド「ノクセラーTET−G」(商品名)、大内新興化学工業株式会社製、チウラムジスルフィド化合物
・MDB:2−(4−モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール「ノクセラーMDB」(商品名)、大内新興化学工業株式会社製、モルホリノジチオ化合物
・DTDM:4,4’−ジチオジモルホリン「バルノックR」(商品名)、大内新興化学工業株式会社製、モルホリノジチオ化合物
・MBTS:ジベンゾチアジルジスルフィド「ノクセラーDM」(商品名)、大内新興化学工業株式会社製、その他化合物
・DPG:1,3−ジフェニルグアジニン「ノクセラーD」(商品名)、大内新興化学工業株式会社製、その他化合物
・TTCA:2,4,6−トリメルカプトトリアジン「ジスネットF」(商品名)、三協化成株式会社製、その他化合物
・硫黄:硫黄「Sulfax PMC」(商品名)、鶴見化学工業株式会社製
【0051】
実施例、比較例での各種データの測定法、評価法を下記に示す。
【0052】
(チューブ内外径の縦横比測定方法)
発泡ゴムチューブを任意の場所で切断し、その断面を投影機「ニコン プロファイルプロジェクターV−12B」(商品名、ニコン株式会社製)にて、内外径各々の最大部(a)と最小部(b)を測定した。得られた測定値から、その比を算出し、縦横比とした。このときa/bがより1に近いことが好ましい。
【0053】
(ローラ硬度ムラの測定方法)
ゴム硬さ計「アスカーゴム硬度計C型」(商品名、高分子計器株式会社製)を用い、導電性ゴムローラの任意の場所を周方向に90°毎に4箇所のアスカーC硬さを測定した。その最大値と最小値の差をローラ硬度ムラと表した。なお、この値は0°が好ましい。
【0054】
(ローラの電気抵抗ムラの測定方法)
N/N(23℃×55%RH)環境下において48時間放置した導電性ゴムローラの芯材に片側4.9Nの荷重が両方にかかるようにし、外径30mmのアルミニウム製のドラムに圧着し、回転させた状態で、芯材とアルミドラムとの間に2kVの電圧を印加して抵抗値を測定した。この時の抵抗値の最大値と最小値の比の対数を抵抗ムラとした。なお、抵抗ムラは1.2未満が好ましい。
【0055】
(セル径分布の確認方法)
発泡ゴムチューブを任意の場所で切断し、その断面をビデオマイクロ顕微鏡「デジタルマイクロスコープVH―8000」(商品名、株式会社キーエンス製)にてセル径を観察し、外径側のセル径と内径側のセル径の大きさの違いを確認した。その状態を下記基準で評価した。なお、外径側のセル径と内径側のセル径に差が無いことが好ましい。
○:ほとんど差が見られない
△:少し差が見られる
×:明らかに差が見られる
【0056】
(Cセット性)
導電性ゴムローラを転写ローラとしてキヤノン株式会社製のレーザープリンタ「LBP−1310」(商品名)に組み込み、23℃×55%RH(N/N環境)に1週間置いた後、ハーフトーン画像を連続30枚出力した。得られたハーフトーン画像を目視により観察し、下記基準でCセット性を評価した。なお、評価A、BをCセット性良好とみなした。
A:接触跡の白すじが無かった。
B:初期に白すじがあるが途中で無くなった。
C:最後まで白すじが消えなかった。
【0057】
以下の実施例、比較例において、特に断らない限り、発泡加硫は下記のようにした。すなわち、図3に示す製造装置を用いた。なお、押出機11を除く全長は約13mであり、UHF12は4mで、HAV13は6mで、引取機14は1mとなっている。そして、各装置間は0.1mから1mの間で調整でき、定尺切断機15は引取機14に当接して設けられている。押出機11とUHF12の間で、押出機11から円筒状押し出されたゴム組成物をフッ素樹脂で被覆されたメッシュ状ベルトに受け、UHF12内に送られるようになっている。また、UHF12とHAV13の間には、表面をフッ素樹脂でコートしたコロを設け、UHF12内で加硫発泡されたゴム組成物はこのコロの上を搬送される。ここで、UHF12は最大出力2.0kWのマイクロ波発信機2台が設置され、照射区間長約2m(これはマイクロ波発信機の位置調整により適宜変えることが可能となっている)とされている。また、HAV13内には加熱空気が送り込まれ、200℃になるよう保たれている。
【0058】
実施例1〜5、比較例1〜5
ゴム成分として、CHR100質量部を用い、これに表1、表2に示す加硫剤を表1、表2に示す割合で、発泡剤と共に加え、バンバリーミキサーで混練した。その後、オープンロールとリボン成形分出し機によりリボン状に成形してゴム組成物を得た。次いでこのゴム組成物を、押出機11に投入し、押出機11から加硫発泡後の外径が20mm、内径5mmになるように円筒状に押し出した。次いで、マイクロ波照射量が0.1kWから3.5kWになるようにマイクロ波発信機を調整したUHF12内へ円筒状のゴム組成物を搬入し、加硫発泡させた。次いで、200℃に調整されたHAV13内で加硫発泡を完結して、発泡ゴムチューブとした。その後、発泡ゴムチューブを引取機14で引き取り、定尺切断機15により長さ230mmに切断した。
【0059】
切断した発泡ゴムチューブに外径6mm、長さ250mmの表面に化学ニッケルメッキをした鉄製の棒にホットメルト接着剤を塗布した導電性芯材を圧入した。その後、ホットメルト接着剤が溶解する温度に置き、さらに室温まで冷却して、ローラ状成形体を得た。この成形体の発泡体ゴム層の両端を発泡体ゴム層の長さが220mmになるように突き切り、次いで表面を、研磨砥石GC80を取り付けた研磨機にて、ワークの回転速度400rpm、砥石の回転速度2000rpm及び送り速度500mm/分として研磨して、外径17mmの導電性ゴムローラを得た。
【0060】
実施例1〜5及び比較例1〜5において、製造された発泡ゴムチューブの内径、外径の縦横比、セル径分布、及び得られた導電性ゴムローラの硬度ムラ、抵抗値、抵抗ムラ、Cセット性について上記により調べた。結果を表1、表2に示す。

【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【0063】
実施例1〜5に見られるように、チューブ内外径の縦横比が1に限りなく近く、またセル径分布が均一である。更に周方向の硬度ムラも小さく、周方向の抵抗ムラも1.2以下になる。一方、比較例では、チューブ内外径の縦横比、セル径分布、周方向の硬度ムラ、周方向の抵抗ムラがいずれも実施例よりも大きくなる。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明に係る導電性ゴムローラの一例の斜視図である。
【図2】本発明に係る電子写真装置の一例の説明図である。
【図3】本発明に係るマイクロ波を用いる製造装置の一例の説明図である。
【符号の説明】
【0065】
1 感光ドラム
2 帯電装置
3 露光手段
4 現像装置
5 トナー
6 転写ローラ
7 記録媒体
8 クリーニングブレード
9 廃トナー容器
10 定着装置
11 押出機
12 マイクロ波照射装置(UHF)
13 熱風加硫装置(HAV)
14 引取機
15 定尺切断機
61 芯材
62 弾性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性芯材上にゴム組成物からなる発泡体ゴム層が形成されている導電性ゴムローラの製造方法において、
該ゴム組成物は、ゴム成分としてアリルグリシジルエーテルが共重合されているエピクロルヒドリン系ゴムを用い、該ゴム成分100質量部に対し、加硫剤としてジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド1質量部以上3質量部以下、チウラムジスルフィド化合物1質量部以上3質量部以下及びモルホリノジチオ化合物0.5質量部以上1.5質量部以下を含有し、硫黄の添加量が0.2質量部以下であり、さらに化学発泡剤を含み、
該ゴム組成物にマイクロ波発信機出力を0.1kW以上1.5kW以下とし、照射区間長1.8m以上2.0m以下でマイクロ波を照射して、発泡体とする
ことを特徴とする導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項2】
マイクロ波照射が、2台のマイクロ波発信機を使用し、マイクロ波照射量を0.2kW以上3.0kW以下とすることを特徴とする請求項1に記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項3】
化学発泡剤が、p,p’‐オキシビスベンゼンスルホニルヒドラジド又はアゾジカルボンアミドであることを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項4】
エピクロルヒドリン系ゴムが、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル3元共重合体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ゴムローラの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかの導電性ゴムローラの製造方法により形成した導電性ゴムローラであることを特徴とする電子写真装置用ローラ。
【請求項6】
抵抗値が23℃×55%RH環境下で5×105Ω以上5×109Ω以下であることを特徴とする請求項5に記載の電子写真装置用ローラ。
【請求項7】
さらに、表面層が設けられていることを特徴とする請求項5又は6に記載の電子写真装置用ローラ。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかに記載の電子写真装置用ローラであることを特徴とする転写ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−176028(P2008−176028A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−9091(P2007−9091)
【出願日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】