説明

導電性ローラの製造方法およびこの方法により製造された導電性ローラ

【課題】基体部の周上に、高精度の膜厚を有する被覆層を、塗料を汚染させることなく形成することのできる、導電性ローラの製造方法およびこの方法によって形成された導電性ローラを提供する。
【解決手段】基体部6の長さより短いスリット状の開口部12を有し、この開口部12が基体部6と平行な向きで基体部6の周面に対向するよう配置されたウルトラダイ11に所定流量の塗料を供給しつつ、基体部6を回転させながら、ウルトラダイ11および基体部6の少なくとも一方を、他方に対して基体部長さ方向に相対変位させて、ウルトラダイ11に供給された塗料を、そのまま、開口部12から基体部6の周面に塗布して被覆層4を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ等の電子写真装置や静電記録装置などの画像形成装置に用いられる導電性ローラの製造方法、および、この方法によって形成された導電性ローラに関し、特に、塗料を塗布して被覆層を高品質に形成することができるものに関する。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等の電子写真装置や静電記録装置などの画像形成装置に装着され、感光ドラムの表面を帯電させる帯電ローラや、感光ドラム表面にトナーを移載する現像ローラ等の導電性ローラは、長さ方向両端部を軸支される軸部の周囲に配設された基層と、基層の半径方向外側に設けられた一以上の被覆層を有する。
【0003】
従来、この被覆層を形成する方法として、主としてディッピング塗装が用いられ(例えば特許文献1参照。)、この方法は、形成しようとする被覆層より内側の層を基体部として、基体部を、垂直にして、塗料を収容するディップ槽に浸漬し、そのあと、所定の速度で引き上げることにより所要の膜厚をもつ被覆層を形成するものであり、一回の浸漬で厚膜を形成できることや、ディップ槽を大きくすることで一度に大量の導電性ローラを処理できるという特長がある。
【特許文献1】特開2003−131474号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ディッピング塗装によって被覆層を形成する方法は、基体部を引き上げる速度を一定に保持できたとしても、環境条件や、塗料の粘度によって膜厚が大きく左右され、特に、大量生産のためディップ槽を大きくした場合には、収容する塗料の粘度を一定に保つことが難しく、膜厚精度を低下させる要因になっていた。
【0005】
また、ディップ槽は、大気に開放しているため、塗料に異物が混ざり長期に使用していると塗料が汚染されてくるという問題もあった。
【0006】
本発明は、このような問題点を鑑みてなされてものであり、高精度の膜厚を有する被覆層を、塗料を汚染させることなく形成することのできる、導電性ローラの製造方法およびこの方法によって形成された導電性ローラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
<1>は、軸部の周囲に配設された基層と、基層の半径方向外側に設けられた一以上の被覆層を有する導電性ローラの少なくとも一の被覆層を、この被覆層より内側の層よりなる基体部の周面に塗料を塗布して形成する導電性ローラの製造方法において、
前記基体部の長さより短いスリット状の開口部を有し、この開口部が基体部と平行な向きで基体部の周面に対向するよう配置されたウルトラダイに所定流量の塗料を供給しつつ、基体部を回転させながら、ウルトラダイおよび基体部の少なくとも一方を、他方に対して基体部長さ方向に相対変位させて、ウルトラダイに供給された塗料を、開口部から基体部の周面に塗布して被覆層を形成する導電性ローラの製造方法である。
【0008】
<2>は、<1>において、ウルトラダイおよび基体部の少なくとも一方を相対変位させる際の変位速度を、導電性ローラが1回転する間、開口部の長さより短い距離だけ相対変位するよう設定する導電性ローラの製造方法である。
【0009】
<3>は、<1>もしくは<2>において、ウルトラダイに供給する塗料の流量を変えることにより、前記被覆層の厚さを制御する導電性ローラの製造方法である。
【0010】
<4>は、<1>〜<3>のいずれかにおいて、前記塗料として、25℃における粘度が200〜100000mPa・Sのものを用いる導電性ローラの製造方法である。
【0011】
<5>は、前記塗料として、<1>〜<5>のいずれかにおいて、電子線硬化型樹脂、もしくは、紫外線重合開始剤が含有された紫外線硬化型樹脂よりなるものを用いる導電性ローラの製造方法である。
【0012】
<6>は、<1>〜<5>のいずれかにおいて、平均粒径が1〜30μmの粒子を含有した塗料をウルトラダイに供給する導電性ローラの製造方法である。
【0013】
<7>は、長さ方向両端で軸支される軸部と、軸部の周囲に配設された基層と、基層の半径方向外側を覆う一以上の被覆層とからなり、少なくとも一つの被覆層は、<1>〜<6>のいずれかにおいて、導電性ローラの製造方法によって形成されてなる導電性ローラである。
【発明の効果】
【0014】
<1>の発明によれば、ウルトラダイを用いて塗布するので、ディップ塗装により被覆層を形成した場合には膜厚を制御するのが難しいのに対比して、高精度定量ポンプ等を用いてウルトラダイに供給する塗料の量を制御することにより、スリット状の形状をした開口部から吐出され基体部の周面に塗布される塗料の量を正確に制御することができ、膜厚を精度の高いものにすることが可能であり、しかも、ウルトラダイに供給された塗料はそのまま開口部から基体部の周面に塗布されるので、塗料が大気に開放されることはなく、このことにより、塗料の汚染を防止することができる。
【0015】
<2>の発明によれば、ウルトラダイおよび基体部の少なくとも一方を相対変位させる際の変位速度を、導電性ローラが1回転する間、開口部の長さより短い距離だけ相対変位するように設定したので、ウルトラダイから吐出され、基体部の周面上で螺旋状に形成された塗膜の帯の厚さを、一以上の回数分、開口部によって規制することができ、被覆層の膜厚を一層均一にすることができる。
【0016】
<3>の発明によれば、ウルトラダイに供給する塗料の流量、および、基体と開口部との間のギャップの少なくとも一方を変えることにより、被覆層の厚さを制御するので、導電性ローラのサイズに応じて変化する被覆層の膜厚を、その精度を低下させることなく、容易に、しかも、短時間で変更することができ、多品種少量生産におけるサイズ切替の時間を短縮することができる。
【0017】
<4>の発明によれば、塗料として、25℃における粘度が200〜100000mPa・Sのものを用いるので、高粘度で流動しにくい塗料の作用により、基体部が空隙セルを分散させた発泡体よりなる基層である場合、基体部表面に露出した空隙セルを被覆層で埋めることなく被覆層を滑らかな形成することができ、一方、基体部が空隙セルのない非発泡体よりなるものである場合にも、塗料が重力により流動して塗膜厚さが変化するのを抑えることができる。
【0018】
<5>の発明によれば、電子線硬化型樹脂、もしくは、紫外線重合開始剤が含有された紫外線硬化型樹脂よりなるものを用いるので、基体部が空隙セルを分散させた発泡体よりなる基層である場合、被覆層を塗布した塗料を電子線硬化もしくは紫外線硬化により瞬時に硬化させて、基体部表面に露出した空隙セルを被覆層で埋めないようにすることができ、その結果、被覆層の表面を滑らかなものにすることができる。一方、基体部が空隙セルのない非発泡体よりなるものである場合にも、塗料を瞬時に硬化させることにより、塗料が重力により流動して塗膜厚さが変化するのを防止することができる。
【0019】
<6>の発明によれば、平均粒径が1〜30μmの粒子を含有した塗料をウルトラダイに供給するので、ウルトラダイに供給された塗料を、その粒径分布を変化させることなく、基体部の周上に、被覆層として確実に塗布することができ、そして、塗料中の粒子の粒度分布を制御することにより、所望の表面粗度を導電性ローラに付与することができる。
【0020】
<7>の発明によれば、長さ方向両端で軸支される軸部と、軸部の周囲に配設された基層と、基層の半径方向外側を覆う一以上の被覆層とからなり、少なくとも一つの被覆層は、上述の方法によって形成されているので、被覆層が高精度な膜厚を有し、汚染のない材料で形成されていることにより、たとえば、導電性ローラが、現像ローラ、もしくは帯電ローラである場合には、これに、均一な現像性能、あるいは帯電性能を担持させることができ、高画質の画像形成装置に供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の実施形態についてさらに詳しく説明する。
図1は、本発明に係る導電性ローラを示す断面図であり、図1(a)はその第一態様を示し、導電性ローラ1は、長さ方向両端で軸支される軸部2と、軸部2の周囲に配設された基層3と、基層3の周面を被覆する被覆層4とからなり、軸部2は、鉄やステンレス等の金属、あるいは、プラスチックよりなり、基層3から長さ方向外側に突出して設けられ、突出した部分が、画像形成装置のローラ軸支手段に軸支されるよう構成される。
【0022】
図1(b)は、導電性ローラの第二態様を示す断面図であり、導電性ローラ1Aは、軸部2A、基層3、および被覆層4よりなり、軸部2の代わりに軸部2Aを用いた点が第一態様と異なり、軸部2Aは、鉄やステンレス等の金属、あるいは、プラスチックよりなる中空のパイプで構成され、基層3を同じ外径にしたままでその断面積の小さくする場合、このような中空の軸部2Aを好適に用いて、導電性ローラを軽量なものにすることができる。
【0023】
また、軸部2Aを基層3の長さ方向外側に突出させて、軸部2と同様にその半径方向外側が支持されるよう構成することもできるが、図1(b)に示すように、パイプの半径方向内側の面が軸支されるようにしてもよく、この場合、軸部2Aを基層3の長さ方向外側に突出させる必要はない。
【0024】
図1(a)、(b)に示した例は、導電性ローラ1は一層の被覆層4を有する場合であるが、被覆層4を複数層有するものでもよく、この場合、被覆層の少なくとも一層が、後述する方法によって形成されていればよい。
【0025】
基層3としては、エラストマー単体又はそれを発泡させた発泡体に導電剤を添加して導電性を付与したものが用いられる。ここで使用し得るエラストマーには、特に制限はなく、ニトリルゴム、エチレン−プロピレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、天然ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリンゴム等が例示され、これらを単独であるいは2種以上組み合わせて用いることができる。本発明においては、これらのうち、エチレン−プロピレンゴム、ブタジエンゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴムが好ましく用いられる。また、これらと他のゴム材料との混合物もまた好ましく用いられる。特に、本発明においては、ウレタン結合を有する樹脂が好ましく用いられる。
【0026】
また、これらエラストマーを、発泡剤を用いて化学的に発泡させ、あるいは、ポリウレタンフォームのように空気を機械的に巻き込んで発泡させた発泡体としたものも用いることができる。本発明では、軸部2と基層3との一体化を行うための成形工程において、いわゆるRIM成形法を用いてもよい。即ち、基層3の原料成分を構成する2種のモノマー成分を筒状型内に混合射出して、重合反応させて、軸部2と基層3とを一体化する。この方法においては、原料の注入から脱型までの成形工程を所要時間60秒程度で行うことができ、生産コストを大幅に削減することができる。
【0027】
基層3に添加される導電剤としては、種々のものを用いることができる。カーボン系導電剤は少量の添加で高い導電性を得ることができ、カーボン系導電剤としては、ケッチェンブラックやアセチレンブラックを用いるのが好ましいが、SAF,ISAF,HAF,FEF,GPF,SRF,FT,MT等のゴム用カーボンブラック、酸化カーボンブラック等のインク用カーボンブラック,熱分解カーボンブラック、グラファイト等も用いることができる。
【0028】
イオン導電剤としては、テトラエチルアンモニウム,テトラブチルアンモニウム,ラウリルトリメチルアンモニウム等のドデシルトリメチルアンモニウム,ヘキサデシルトリメチルアンモニウム,ステアリルトリメチルアンミニウム等のオクタデシルトリメチルアンモニウム,ベンジルトリメチルアンモニウム,変性脂肪族ジメチルエチルアンモニウム等のアンモニウムの過塩素酸塩,塩素酸塩,塩酸塩,臭素酸塩,ヨウ素酸塩,ホウフッ化水素酸塩,硫酸塩,アルキル硫酸塩,カルボン酸塩,スルホン酸塩などの有機イオン導電剤;リチウム,ナトリウム,カルシウム,マグネシウム等のアルカリ金属又はアルカリ土類金属の過塩素酸塩,塩素酸塩,塩酸塩,臭素酸塩,ヨウ素酸塩,ホウフッ化水素酸塩,トリフルオロメチル硫酸塩,スルホン酸塩などの無機イオン導電剤を例示することができる。
【0029】
カーボン系以外の電子導電剤も用いることができ、このような電子導電剤としては、ITO、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物の微粒子;、ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属の酸化物;導電性酸化チタンウイスカー、導電性チタン酸バリウムウイスカーのような透明なウイスカー;などを例示することができる。
【0030】
導電剤として、2種類以上のものを混合して用いてもよく、この場合、印加される電圧の変動や環境の変化に対しても安定して導電性を発現することができる。混合例としては、カーボン系導電剤に、カーボン系以外の電子導電剤やイオン導電剤を混合したものをあげることができる。
【0031】
また、被覆層4は、例えば、導電性ローラ1を帯電ローラとするような場合には、ナイロン、ポリエステル、ウレタン変性アクリル樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、尿素樹脂、フッ素樹脂等、目的に応じて適宜な樹脂で形成することができるが、特に帯電ローラの表面平滑性や感光体等との低密着性などの観点からフッ素樹脂が好ましく用いられる。
【0032】
フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリクロロトリフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン−エチレン共重合体、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルフルオライド、クロロトリフルオロエチレン−ビニルエーテル系共重合体、テトラフルオロエチレン−ビニリデンフルオライド系共重合体、クロロトリフルオロエチレン−ビニルエステル系共重合体、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン−ビニリデンフルオライド系共重合体等が挙げられ、特にこれらの微粒子を水中に分散させたディスパージョンタイプの水系フッ素樹脂が好ましく用いられ、更に好ましくはポリテトラフルオロエチレンの微粒子を水中に分散させたディスパージョンタイプの水系フッ素樹脂が用いられる。また、用いられるフッ素樹脂微粒子の粒径は、特に制限されるものではないが、5μm以下、特に、0.05〜1μmであることが好ましい。
【0033】
また、これらフッ素樹脂に、フッ素樹脂の効果を損なわない範囲で、その他の樹脂を混合して被覆層4を形成することもできる。この場合、フッ素樹脂と混合されるその他の樹脂としては、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ナイロン樹脂、エポキシ樹脂、塩化ビニリデン系共重合体、アクリル−ウレタン共重合体などが挙げられ、これらの1種または2種以上を上記フッ素樹脂と混合して被覆層4を形成することができる。これらの樹脂のうちでも、フッ素樹脂の塗膜化および抵抗均一性の観点からポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニリデン系共重合体が好ましく、特にポリビニルアセタール樹脂が好ましく用いられる。
【0034】
また、かかる被覆層4において、その平滑性を確保したい場合には、水系樹脂が好ましく用いられる。水系樹脂としては、溶媒が水であれば、水溶性タイプ、エマルジョンタイプ、サスペンジョンタイプ等のいずれのタイプでもよいが、特にカルボキシル基、水酸基、アミノ基等の活性水素を持つアクリル系の温水可溶性樹脂が好ましい。アクリル樹脂は、従来、帯電ローラ用樹脂として一般的に用いられてきたウレタンやナイロン等に比べてかなり誘電率が小さいために静電容量も小さくなり、交流電圧印加による帯電ローラ/被帯電体間の電気的引力・反発力が低減化され、帯電音を低減化することができることから、特に好ましく用いられる。
【0035】
更に、この被覆層4には、必要に応じて増粘剤、チクソトロピー性付与剤、構造粘性付与剤等の適宜な添加剤を必要に応じて適量添加することができ、この場合添加剤は無機系、有機系のいずれであってもよい。
【0036】
また、導電性ローラ1を現像ローラとするような場合には、被覆層4を構成する樹脂として、架橋性樹脂が好適に用いられる。架橋性樹脂とは、熱,触媒,空気(酸素),湿気(水),電子線などにより自己架橋する樹脂あるいは架橋剤や他の架橋性樹脂との反応により架橋する樹脂をいう。このような架橋性樹脂の例としては、水酸基,カルボキシル基,酸無水物基,アミノ基,イミノ基,イソシアネート基,メチロール基,アルコキシメチル基,アルデヒド基,メルカプト基,エポキシ基,不飽和基等の反応基を持つフッ素樹脂,ポリアミド樹脂,アクリルウレタン樹脂,アルキッド樹脂,フェノール樹脂,メラミン樹脂,シリコーン樹脂,ウレタン樹脂,ポリエステル樹脂,ポリビニルアセタール樹脂,エポキシ樹脂,ポリエーテル樹脂,アミノ樹脂,アクリル樹脂,尿素樹脂等及びこれらの混合物を挙げることができる。これらの中で、フッ素樹脂,ポリアミド樹脂,アクリルウレタン樹脂,アルキッド樹脂,フェノール樹脂,メラミン樹脂,シリコーン樹脂,ウレタン樹脂,ポリエステル樹脂,ポリビニルアセタール樹脂,エポキシ樹脂,及びそれらの混合物が好ましく、特にアルキッド樹脂,フェノール樹脂,メラミン樹脂及びそれらの混合物が、現像剤の帯電能、現像剤に対する非汚染性、他の部材との摩擦力低減、画像形成体に対する非汚染性などの点から好適である。
【0037】
上記架橋性樹脂には、必要に応じて触媒、架橋剤が用いられるが、触媒としては、例えば過酸化物やアゾ化合物などのラジカル触媒,酸触媒,塩基性触媒などが挙げられる。また、架橋剤は水酸基,カルボキシル基,酸無水物基,アミノ基,イミノ基,イソシアネート基,メチロール基,アルコキシメチル基,アルデヒド基,メルカプト基,エポキシ基,不飽和基等の反応基を1分子中に2個以上もつ化合物、例えば、ポリオール化合物,ポリイソシアナート化合物,ポリアルデヒド化合物,ポリアミン化合物,ポリエポキシ化合物等が挙げられる。この架橋性樹脂には、さらなる現像剤への帯電能の向上、他の部材との摩擦力低減、導電性付与などの目的で、所望により、荷電制御剤,滑剤,導電剤,その他の樹脂など、種々の添加剤を含有させることができる。
【0038】
上述の樹脂のうち、被覆層4を塗布したあと乾燥工程が要らないという点において、電子線硬化型樹脂または紫外線硬化型樹脂を含有するものが好ましく、これらの樹脂は、電子線を照射し、もしくは、紫外線重合開始剤の存在下で紫外線を照射することにより硬化させることができる。
【0039】
電子線硬化型樹脂もしくは紫外線硬化型樹脂としてはポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂などが挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0040】
さらに、これらの樹脂に特定の官能基を導入した変性樹脂を用いることもできる。また、樹脂層4の力学的強度、耐環境特性を改善するため、架橋構造を有するものを導入することが好ましい。
【0041】
上記の電子線硬化型樹脂もしくは紫外線硬化型樹脂のうち、特に、(メタ)アクリレートオリゴマーを含む(メタ)アクリレート系紫外線硬化型樹脂より形成された組成物が好適である。
【0042】
このような(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、例えば、ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマー、エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマー、エーテル系(メタ)アクリレートオリゴマー、エステル系(メタ)アクリレートオリゴマー、ポリカーボネート系(メタ)アクリレートオリゴマー等、また、フッ素系、シリコーン系の(メタ)アクリルオリゴマーなどを挙げることができる。
【0043】
上記(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、多価アルコールとε−カプロラクトンの付加物等の化合物と、(メタ)アクリル酸との反応により、あるいはポリイソシアネート化合物及び水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物をウレタン化することにより合成することができる。
【0044】
ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリオール、イソシアネート化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とをウレタン化することによって得ることができる。
【0045】
エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマーの例としては、グリシジル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成物であればいずれでもよいが、中でもベンゼン環、ナフタレン環、スピロ環、ジシクロペンタジエン、トリシクロデカン等の環状構造を有し、かつグリシジル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸の反応生成物が好ましい。
【0046】
更に、エーテル系(メタ)アクリレートオリゴマー、エステル系(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリカーボネート系(メタ)アクリレートオリゴマーは、各々に対するポリオール(ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオール)と(メタ)アクリル酸との反応によって得ることができる。
【0047】
電子線硬化型もしくは紫外線硬化型の樹脂組成物には、必要に応じて粘度調整のために重合性二重結合を有する反応性希釈剤を配合する。このような反応性希釈剤としては、アミノ酸や水酸基を含む化合物に(メタ)アクリル酸がエステル化反応及びアミド化反応で結合した構造の、例えば、単官能、2官能または多官能の重合性化合物等を使用することができる。これらの希釈剤は、(メタ)アクリレートオリゴマー100重量部当たり、通常10〜200重量部用いることが好ましい。
【0048】
被覆層4を構成する樹脂には、その導電性を制御する目的で導電剤が配合され、この導電材としては、先に述べたような、基層3に含有させる導電剤と同じものを用いることができる。
【0049】
次に、基層3を含む一以上の層よりなる基体部6の外側に、塗料を塗布して、上述のような被覆層4を形成する方法について、図2および図3を参照して説明する。図2は、塗料を塗布する装置を示す平面図、図3は、図2のA−A矢視に対応する断面を示す断面図であり、塗布装置20は、導電性ローラ1を回転させるローラ回転装置21と、基体部6の周面に塗料を塗布するダイコータ10とで構成され、ローラ回転装置21は、基体部6をその長さ方向両端部で軸支するそれぞれの支持部材23、基体部6を所定の回転数で回転させるモータ24、および、これらの支持部材23とモータ24とを搭載する固定ベース25よりなる。
【0050】
ダイコータ10は、スリット状の開口部12を有し、開口部12から基体部6の周面に塗料を吐出して塗布するウルトラダイ11と、ウルトラダイ11を支持し、ウルトラダイ11の基体部6への離隔接近動作を案内するガイド部13と、ガイド部13を搭載する移動ベース14と、ボールねじ16を介して、移動ベース14を基体部6の長さ方向に横行変位させるモータ14と、移動ベース14の横行変位を案内する横行ガイド15と、塗料をウルトラダイ11に供給する塗料供給装置40とを具えて構成され、ウルトラダイ11と塗料供給装置40とは塗料を供給する配管29で連結される。
【0051】
なお、図2に示した装置20においては、ダイコータ10を往復変位させる構成になっているが、この代わりに、ローラ回転装置21を導電性ローラ1の長さ方向に往復変位させてもよく、あるいは両方を相互に変位させてもよい。
【0052】
ここで、ウルトラダイ11は、開口部12が基体部6の長さ方向と平行に向き、かつ、基体部6に接近した位置で、基体部6の周面に所定間隔を空けて対向するよう配置されていて、開口部12の長さは、基体部6の画像形成有効範囲より短く設定されている。そして、異なる長さの基体部6を塗布して被覆層4を形成する場合には、移動ベース14を横行変位する際のストロークを変えるだけで対応することができ、このことにより、基体部6同士のサイズ切り替えを容易に行うことができる。
【0053】
図4は、塗料供給装置40の構成を示す概念図であり、塗料供給装置40は、塗料を収容するストレージタンク44と、ストレージタンク44から塗料を吸引しウルトラダイ11に塗料を圧送する塗料ポンプ41と、圧送された塗料中に含まれる異物等を除去するフィルタ42とを具えて構成され、塗料ポンプ41は、その羽根車をモータ43により回転駆動されて作動する。
【0054】
また、塗布装置20は、制御装置50を具え、制御装置50は、基体部6を回転駆動させるモータ24を一定の速度で回転させる制御をおこなうとともに、ウルトラダイ11の横行変位を駆動するモータ14、および、塗料ポンプを作動させるモータ33を、モータ24の回転に同期させて制御するよう構成されている。なお、図中、45は、塗料の圧力をモニターするための圧力計であり、46は、メンテナンス等のためのバイパス弁である。
【0055】
図5は、基体部6に塗料を塗布する途中の状態を示す、導電性ローラの外形図であり、上記のように構成された塗布装置20を作動させると、基体部6の周面に塗膜の帯31を螺旋状に形成してゆくが、螺旋のピッチP(m)は、基体部6のローラ長さ方向の送り速度v(m/s)をその軸心周りの回転速度ω(s-1)で除したものであり、開口部12の長さ、すなわち、塗膜の帯31の幅Wより、螺旋のピッチPを小さくすることにより、一度形成された塗膜の膜厚を再度規制しながら層形成を行うことを可能にし、被覆層4の厚さを非常に均一なものにすることができ、この点においてピッチPは小さい方が好ましいが、一方、ピッチPを小さくすると生産効率は低下するので、これらの両方を満足するようピッチPを設定することが肝要である。
【0056】
ここで、基体部6上に塗布される塗料としては、先に、被覆層4を構成する樹脂として先に例示した樹脂を溶媒に溶かしこみ、もしくは無溶剤で調合したものを用いることができる。
【0057】
溶媒を用いる場合に、塗工液の調製に用いられる溶媒としては、例えばメタノール,エタノール,イソプロパノール,ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン,メチルエチルケトン,シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、トルエン,キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、ヘキサン等の脂肪族炭化水素系溶媒、シクロヘキサン等の脂環式炭化水素系溶媒、酢酸エチル等のエステル系溶媒、イソプロピルエーテル,テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド等のアミド系溶媒、クロロホルム,シクロロエタン等のハロゲン化炭化水素系溶媒、アクリル塗料等の水系塗料及びこれらの混合溶媒などが挙げられる。
【0058】
ダイコータ10を用いて、導電性ローラ1の被覆層4を形成する本発明の方法は、25℃における粘度が200〜100000mPa・Sの塗料を用いる場合に、特に有効な方法であり、例えば、スプレーにより被覆層4を形成する方法は、このような高粘度の塗料を霧化することが難しく、一方、ディップ槽に収容した塗料を浸漬させて形成した場合に、粘度が高すぎて膜厚が極めて厚くなってしまい、実現がむつかしいからである。
【0059】
そして、このような高粘度の塗料を用いる利点は、塗料が流動しにくいため、図5(a)に基体部表面近傍を断面図で示すように、基体部6が空隙セル34を分散させた発泡体よりなる基層33である場合、基層33の表面に露出した空隙セル34sを被覆層36で埋めることなく均一な厚さの被覆層36を形成して滑らかに基層33を被覆することができ、もし、塗料の粘度が低い場合には、図5(a)に対応させた図5(b)に示すように、塗料が、表面に露出した空隙セル34sの中まで流動してできた被覆層36Aが形成されてしまい、基層33が具備すべき弾性特性や、被覆層36が付与すべき導電特性を所望のものとすることができず、しかも、これらの特性が不均一になってしまう。
【0060】
また、基体部6が非発泡体よりなるものであった場合にも、粘度が高いことにより重力による流動を抑えて硬化までの寸法変化を抑えることができ、均一で高精度の被覆層4を形成するのに寄与させることができる。
【0061】
同様に、紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂を含有した塗料を用いて、被覆層4を形成した場合、塗装直後にこれを瞬時に硬化させることにより、その流動を抑え、高粘度にしたことと同様の効果をもたらすことができる。そして、そもそも、紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂を含有した塗料を用いるのは、もしこれが熱硬化型の樹脂であった場合には必要となる大掛かりな乾燥設備を不要にするためであり、そのため、紫外線硬化型樹脂や電子線硬化型樹脂を含有した塗料を用いる場合は、溶剤の量を極めて低く抑えたものが用いられ、このような場合には、同様な理由により、ダイコータ式の塗布方法を好適に用いることができる。
【0062】
また、ダイコータ10を使って被覆層4を形成する方法は、被覆層4が、粒子を分散してなる層である場合には、ウルトラダイ11に供給された塗料は、入り口側の粒度分布を維持したまま、開口部12から吐出されるので有利に用いることができ、被覆層4の粒度分布が均一になることにより、均一な表面粗度を有する被覆層4を形成することができる。
【0063】
そして、この粒子は、例えば、導電性ローラが現像ローラの場合には、トナーを帯電させる性能を高めるのに寄与するものであり、好ましい表面粗度Raとして、0.5〜1.5μmのものが挙げられ、この場合、この表面粗度を担持させるための粒子としては、ゴム又は合成樹脂製の微粒子やカーボン製の微粒子およびシリカ系微粒子等の無機微粒子が好ましく、シリコーンゴム、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ウレタンエラストマー、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ウレタンアクリレート、メラミン樹脂、フェノール樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ガラス状カーボン製の微粒子およびシリカ微粒子が特に好ましい。これら微粒子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。
【実施例】
【0064】
帯電ローラもしくは現像ローラとして、実施例1〜8および比較例1〜2の導電性ローラを以下に説明する手順で作製し、これらのローラ特性を評価するとともに、それぞれ対応する用途のローラとしてこれらを画像形成装置に組み込んだときの画像を評価した。これらの実施例、比較例についての、導電性ローラ作製における主要諸元ならびに評価結果を、表1にまとめた。
【0065】
(実施例1)
グリセリンにプロピレンオキサイドを付加した3官能で分子量9,000のポリエーテルポリオール100重量部に導電性カーボン1.6部とヂブチル錫ジラウレート0.15部を加え十分に撹拌混合した後、減圧下で撹拌しながら20分間脱泡してこれをポリオール成分とした。ポリオール成分の水酸基価は19mgKOH/gであった。一方、NCO含有率が11%のポリプロピレングリコール変性ポリメリックMDIをイソシアネート成分として減圧下で撹拌しながら20分間脱泡してこれをイソシアネート成分とした。
【0066】
ポリオール成分とイソシアネート成分の比率が101.75/13.70(イソシアネートインデックス:103)の割合になるようにして2成分注型機にてポリオールとイソシアネートを3000rpmで高速撹拌混合し、混合したウレタン原液を外径寸法がφ8mmの芯金をセットした筒形状のモールド金型に注入し、90℃で60分間熱風循環オーブンにて加熱キュアーしウレタンからなる基層を備えたローラ本体を作製した。
【0067】
上記ローラ本体の外周面に表1に示す配合の塗工液を、ウルトラダイを用いて所定の厚さに塗布したあと、110℃で30分間加熱乾燥してローラ外周面に被覆層を形成し、得られた導電性ローラを現像ローラとした。
(実施例2)
サンニックスFA952[三洋化成工業株式会社製ポリエーテルポリオール、OH価=37]100質量部、SRX274C[東レダウコーニングシリコーン株式会社製整泡剤]1質量部、TOYOCAT NP[東ソー株式会社製アミン触媒]2.8質量部、TOYOCAT EP[東ソー株式会社製アミン触媒]1.5質量部及びサンフォームIC-716[三洋化成株式会社トリレンジイソシアネート]59質量部を機械的に撹拌して発泡発泡させ発泡ポリウレタン原料とし、これを外径寸法がφ8mmの芯金をセットした筒形状のモールドに注入した。次に、発泡ポリウレタン原料が注入されたモールドを80℃のオーブン中で20分間加熱した後脱型しウレタンフォームからなる基層を備えたローラ本体を作製した。
【0068】
上記ローラ本体の外周面に、表1に示す配合の塗工液を用いること以外は実施例1と同様にして、被覆層を形成して導電性ローラを作製し、これを現像ローラとした。
【0069】
(実施例3)
ムーニー粘度ML1+4(100℃)が70のNipol IR2200L(日本ゼオン製)100重量部、平均分子量29000のLIR-30(クラレ製)60重量部、カーボンブラックTB#5500(東海カーボン製)28重量部、亜鉛華5重量部、ステアリン酸1重量部、パーヘキサC−40(日本油脂製)9重量部を55Lニーダーを用いて混錬し、ゴム成分を準備した、接着剤を付けた外径寸法φ8mmの芯金にゴム組成物を三葉製作所のクロスヘッド式押し出し機を用いて円筒状に押し出し未加硫ゴム/芯金一体成型物を得た。これを円筒状の金型内にセットし、3.2×10Paの圧力をかけ175℃で20分間、加硫を行った。割り金型の圧力を開放し、ゴムローラを得、さらに180℃のオーブン中で4時間後加硫を行った。得られたローラを回転砥石によりφ20mmの径にプランジ式研磨を行い、ゴムからなる基層を備えたローラ本体を作製した。
【0070】
上記ローラ本体の外周面に、表1に示す配合の塗工液を用いること以外は実施例1と同様にして、被覆層を形成して導電性ローラを作製し、これを現像ローラとした。
【0071】
(実施例4)
液状シリコーンLIM液#2090(東レ・ダウ・コーニングシリコーン製)を攪拌脱泡したのち外径寸法がφ8mmの芯金をセットした筒形状のモールドに注入し、120℃で30分間熱風循環オーブンにて加熱キュアーした。筒形状のモールドから芯金つきローラを取り出し、200℃で4時間熱風循環オーブンにて加熱キュアーしシリコーンゴムからなる基層を備えたローラ本体を得た。
【0072】
上記ローラ本体の外周面に、表1に示す配合の塗工液を用いること以外は実施例1と同様にして、被覆層を形成して導電性ローラを作製し、これを現像ローラとした。
【0073】
(実施例5)
サンニックスFA952[三洋化成工業株式会社製ポリエーテルポリオール、OH価=37]100質量部、SRX274C[東レダウコーニングシリコーン株式会社製整泡剤]1質量部、TOYOCAT NP[東ソー株式会社製アミン触媒]2.8質量部、TOYOCAT EP[東ソー株式会社製アミン触媒]1.5質量部及びサンフォームIC-716[三洋化成株式会社トリレンジイソシアネート]59質量部を機械的に撹拌して発泡させ発泡ポリウレタン原料とし、これを外径寸法がφ6mmの芯金をセットした筒形状のモールドに注入した。次に、発泡ポリウレタン原料が注入されたモールドを80℃のオーブン中で20分間加熱した後脱型しウレタンフォームからなる基層を備えたローラ本体を作製した。
【0074】
上記ローラ本体の外周面に表1に示す配合の塗工液をウルトラダイで塗布し、ウシオ電機(株)製ユニキュアUVH-0252C装置を用いてローラを回転させながら、照射強度400mW、積算光量1000mJ/cm2で紫外線照射し、塗工液を瞬時に硬化させ弾力性のある被覆層を形成し、ローラ本体の外周面に被覆層を備えた導電性ローラを得、これを帯電ローラとした。
【0075】
(実施例6)
サンニックスFA952[三洋化成工業株式会社製ポリエーテルポリオール、OH価=37]100質量部、SRX274C[東レダウコーニングシリコーン株式会社製整泡剤]1質量部、TOYOCAT NP[東ソー株式会社製アミン触媒]2.8質量部、TOYOCAT EP[東ソー株式会社製アミン触媒]1.5質量部及びサンフォームIC-716[三洋化成株式会社トリレンジイソシアネート]59質量部を機械的に撹拌して発泡させ発泡ポリウレタン原料とし、これを外径寸法がφ6mmの芯金をセットした筒形状のモールドに注入した。次に、発泡ポリウレタン原料が注入されたモールドを80℃のオーブン中で20分間加熱した後脱型しウレタンフォームからなる基層を備えたローラ本体を作製した。
【0076】
上記ローラ本体の外周面に表1に示す配合の塗工液をウルトラダイで塗布し、ウシオ電機(株)製Min−EB装置を用いてローラを回転させながら、加速電圧30kV、管電流300μA、照射距離100mm、窒素雰囲気760Torr、照射時間1分の条件で電子線照射し、塗工液が瞬時に硬化させて弾力性のある被覆層を形成し、ローラ本体の外周面に被覆層を備えた導電性ローラを得、これを帯電ローラとした。
【0077】
(実施例7)
グリセリンにプロピレンオキサイドを付加した3官能で分子量9,000のポリエーテルポリオール100重量部に導電性カーボン1.6部とヂブチル錫ジラウレート0.15部を加え十分に撹拌混合した後、減圧下で撹拌しながら20分間脱泡してこれをポリオール成分とした。ポリオール成分の水酸基価は19mgKOH/gであった。一方、NCO含有率が11%のポリプロピレングリコール変性ポリメリックMDIをイソシアネート成分として減圧下で撹拌しながら20分間脱泡してこれをイソシアネート成分とした。ポリオール成分とイソシアネート成分の比率が101.75/13.70(イソシアネートインデックス:103)の割合になるようにして2成分注型機にてポリオールとイソシアネートを3000rpmで高速撹拌混合し、混合したウレタン原液を外径寸法がφ6mmの芯金をセットした筒形状のモールドに注入し、90℃で60分間熱風循環オーブンにて加熱キュアーした。このモールドから芯金つきウレタン・ローラを取り出しローラ本体を得た。
【0078】
上記ローラ本体の外周面に、表1に示す配合の塗工液を用いること以外は実施例1と同様にして、被覆層を形成して導電性ローラを作製し、これを帯電ローラとした。
【0079】
(実施例8)
グリセリンにプロピレンオキサイドを付加した3官能で分子量9,000のポリエーテルポリオール100重量部に導電性カーボン1.6部とヂブチル錫ジラウレート0.15部を加え十分に撹拌混合した後、減圧下で撹拌しながら20分間脱泡してこれをポリオール成分とした。ポリオール成分の水酸基価は19mgKOH/gであった。一方、NCO含有率が11%のポリプロピレングリコール変性ポリメリックMDIをイソシアネート成分として減圧下で撹拌しながら20分間脱泡してこれをイソシアネート成分とした。ポリオール成分とイソシアネート成分の比率が101.75/13.70(イソシアネートインデックス:103)の割合になるようにして2成分注型機にてポリオールとイソシアネートを3000rpmで高速撹拌混合し、混合したウレタン原液を外径寸法がφ8mmの芯金をセットした筒形状のモールドに注入し、90℃で60分間熱風循環オーブンにて加熱キュアーした。このモールドから芯金つきウレタン・ローラを取り出しローラを得た。
【0080】
上記ローラ本体の外周面に、表1に示す配合の塗工液を用いること以外は実施例1と同様にして、被覆層を形成して導電性ローラを作製し、これを現像ローラとした。
【0081】
(比較例1)
上記ローラ本体の外周面に、表1に示す配合の塗工液をディップ法により塗工して被覆層を形成すること以外は実施例1と同様にして、導電性ローラを作製し、これを現像ローラとした。
【0082】
(比較例2)
上記ローラ本体の外周面に、表1に示す配合の塗工液を用いること以外は比較例1と同様にして、被覆層を形成して導電性ローラを作製し、これを帯電ローラとした。
【0083】
【表1】

【0084】
表1から明らかなように、ディップ法によって被覆層を形成した比較例1、2に対比して、実施例の導電性ローラはいずれも、被覆層の膜厚が均一に作製されているため、該導電性ローラを現像ローラあるいは帯電ローラとして組み込んだ画像形成装置においてムラの少ない良好な画像を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明に係る現像ローラは、普通紙複写機、普通紙ファクシミリ機、レーザビームプリンタ、カラーレーザビームプリンタ、トナージェットプリンタなどの画像形成装置に帯電ローラ,現像ローラ,転写ローラ,給紙ローラ、トナー供給ローラ等として装着して好適に用いられる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明に係る導電性ローラを示す断面図である。
【図2】導電性ローラの被覆層を形成する塗装装置を示す平面図である。
【図3】図3のA−A矢視に対応する断面を示す断面図である。
【図4】塗料供給装置の構成を示す概念図である。
【図5】基体部に塗料を塗布する途中の状態を示す導電性ローラの外形図である。
【図6】発泡体よりなる基体部の表面近傍を示す断面図ある。
【符号の説明】
【0087】
1、1A 導電性ローラ
2、2A 軸部
3、3A 基体部
4、4A 被覆層
6 基体部
10 ダイコータ
11 ウルトラダイ
12 開口部
13 ガイド部
14 移動ベース
15 横行ガイド
16 ボールねじ
20 塗布装置
21 ローラ回転装置
23 支持部材
24 モータ
25 固定ベース
29 配管
31 塗膜の帯
33 基体部
34 空隙セル
34s 表面に露出した空隙セル
36、36A 被覆層
40 塗料供給装置
41 塗料ポンプ
42 フィルタ
43 モータ
44 ストレージタンク
45 圧力計
46 バイパス弁
50 制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸部の周囲に配設された基層と、基層の半径方向外側に設けられた一以上の被覆層を有する導電性ローラの少なくとも一の被覆層を、この被覆層より内側の層よりなる基体部の周面に塗料を塗布して形成する導電性ローラの製造方法において、
前記基体部の長さより短いスリット状の開口部を有し、この開口部が基体部と平行な向きで基体部の周面に対向するよう配置されたウルトラダイに所定流量の塗料を供給しつつ、基体部を回転させながら、ウルトラダイおよび基体部の少なくとも一方を、他方に対して基体部長さ方向に相対変位させて、ウルトラダイに供給された塗料を、開口部から基体部の周面に塗布して被覆層を形成する導電性ローラの製造方法。
【請求項2】
ウルトラダイおよび基体部の少なくとも一方を相対変位させる際の変位速度を、導電性ローラが1回転する間、開口部の長さより短い距離だけ相対変位するよう設定する請求項1に記載の導電性ローラの製造方法。
【請求項3】
ウルトラダイに供給する塗料の流量、および、基体と開口部との間のギャップの少なくとも一方を変えることにより、前記被覆層の厚さを制御する請求項1もしくは2に記載の導電性ローラの製造方法。
【請求項4】
前記塗料として、25℃における粘度が200〜100000mPa・Sのものを用いる請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ローラの製造方法。
【請求項5】
前記塗料として、電子線硬化型樹脂、もしくは、紫外線重合開始剤が含有された紫外線硬化型樹脂よりなるものを用いる請求項1〜4のいずれかに記載の導電性ローラの製造方法。
【請求項6】
平均粒径が1〜30μmの粒子を含有した塗料をウルトラダイに供給する請求項1〜5のいずれかに記載の導電性ローラの製造方法。
【請求項7】
長さ方向両端で軸支される軸部と、軸部の周囲に配設された基層と、基層の半径方向外側を覆う一以上の被覆層とからなり、少なくとも一つの被覆層は、請求項1〜6のいずれかに記載の導電性ローラの製造方法によって形成されてなる導電性ローラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−162684(P2006−162684A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−350091(P2004−350091)
【出願日】平成16年12月2日(2004.12.2)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】