説明

導電性ローラ及びそれを用いた画像形成装置

【課題】表層の厚さを規定することなく、ブリードアウトの発生を抑制し、感光体等の隣接部材に対する汚染性を改良することが可能な導電性ローラを提供する。
【解決手段】シャフト部材2と、該シャフト部材2の半径方向外側に配設されたイオン導電剤含有弾性層3と、該イオン導電剤含有弾性層3の半径方向外側に配設された表層4と、該イオン導電剤含有弾性層3と表層4との間に更に中間層5とを備え、イオン導電剤含有弾性層3、表層4及び中間層5が紫外線硬化型樹脂を含み、中間層5の厚さが11μm以上であることを特徴とする導電性ローラ1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ローラ及び該導電性ローラを用いた画像形成装置に関し、特にブリードアウトの発生を抑制し、感光体等の隣接部材に対する汚染性が改良された導電性ローラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機、ファクシミリ、レーザービームプリンタ(LBP)等の電子写真方式の画像形成装置においては、現像ローラ、帯電ローラ、トナー供給ローラ、転写ローラ、給紙ローラ、クリーニングローラ、定着用の加圧ローラ等として、ロール形状の導電性弾性部材、即ち、導電性ローラが多用されており、該導電性ローラは、通常、長さ方向両端部を軸支されて取り付けられるシャフト部材と、該シャフト部材の半径方向外側に配設された弾性層とを備えている。また、トナーに対する帯電性や付着性の制御、弾性層による感光ドラムの汚染の防止等を目的として、上記弾性層の表面に、更に塗膜層を形成する場合がある。
【0003】
上記導電性ローラのシャフト部材には、鉄やステンレス等の金属の他、エンジニアリングプラスチック等の種々の樹脂が用いられる。また、上記導電性ローラの弾性層には、シリコーンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM)、エピクロロヒドリンゴム(ECO)、ポリウレタン等のエラストマーが用いられており、エラストマー原料を所望のキャビティー形状を有するモールドに注入し加熱して、エラストマー原料を加熱硬化させる等して、製造されている。更に、上記塗膜層は、シャフト部材と弾性層とからなるローラ本体を、樹脂を含有する溶剤系若しくは水系の塗工液中にディップ又は該塗工液をローラ本体にスプレーした後に、熱又は熱風で乾燥硬化して形成されている。ここで、塗膜層の形成には、長時間の乾燥が必要なため、量産には長い乾燥ラインが必要であり、また、塗膜層は、その用途から微妙な導電性及び表面状態が要求されるが、乾操ライン内の温度分布及び風量等のバラツキが塗膜層の性能に大きく影響するため、品質上の問題があった。
【0004】
これに対し、長い乾燥ラインを必要とせず、安定した品質の塗膜層を形成する手法として、ローラの弾性層の表面に紫外線硬化性の樹脂原料を塗布し、該樹脂原料を硬化させて、弾性層の表面に紫外線硬化型樹脂からなる塗膜層を形成する技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開2002−310136号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような状況下、本発明者は、弾性層に熱硬化性樹脂ではなく、紫外線硬化型樹脂を用いた導電性ローラについて検討したところ、カーボンブラック等の電子導電剤を紫外線硬化型樹脂に使用した場合、該電子導電剤が紫外線を吸収してしまい、紫外線硬化が困難であることが分かった。一方、カーボンブラック等の電子導電剤の代わりにイオン導電剤を紫外線硬化型樹脂に使用した場合は、該イオン導電剤のブリードアウトが生じ易く、イオン導電剤を含有する弾性層の表面に形成された表層において、一定の膜厚が要求される。
【0007】
しかしながら、弾性層の表面に形成された表層は、上述の通り、その用途から微妙な導電性及び表面状態が要求されており、該表層の性能を確保するため、表層の厚さには、通常、制限が設けられている。
【0008】
そこで、本発明の目的は、表層の厚さを規定することなく、ブリードアウトの発生を抑制し、感光体等の隣接部材に対する汚染性を改良することが可能な導電性ローラを提供することにある。また、本発明の他の目的は、かかる導電性ローラを用いることにより、良好な画像を安定して形成することが可能な画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意検討した結果、紫外線硬化したイオン導電剤含有弾性層の表面に紫外線硬化した表層が形成される導電性ローラにおいて、該イオン導電剤含有弾性層と表層との間に、層の厚さが11μm以上で、紫外線硬化型樹脂を含んだ中間層を配置することで、表層の厚さを規定することなく、ブリードアウトの発生が抑制され、感光体等の隣接部材に対する汚染性が改良されることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
即ち、本発明の導電性ローラは、シャフト部材と、該シャフト部材の半径方向外側に配設されたイオン導電剤含有弾性層と、該イオン導電剤含有弾性層の半径方向外側に配設された表層とを備え、
前記イオン導電剤含有弾性層と表層との間に更に中間層を備え、
前記イオン導電剤含有弾性層、表層及び中間層が紫外線硬化型樹脂を含み、
前記中間層の厚さが11μm以上であることを特徴とする。
【0011】
ここで、該紫外線硬化型樹脂は、紫外線により重合可能な樹脂及び/又は化合物を紫外線照射により硬化させたものである。また、本明細書中で用いる「厚さ」とは、平均厚さを意味する。
【0012】
本発明の導電性ローラは、前記表層の厚さが7〜11μmであることが好ましい。この場合、弾性層中に含まれるイオン導電剤のブリードアウトを十分に抑制することができる。
【0013】
本発明の導電性ローラの好適例においては、前記紫外線硬化型樹脂が、アクリルウレタン樹脂を含む。
【0014】
また、本発明の画像形成装置は、上記の導電性ローラを用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、紫外線硬化したイオン導電剤含有弾性層と紫外線硬化した表層との間に、層の厚さが11μm以上で、紫外線硬化型樹脂を含んだ中間層を配置することで、表層の厚さを規定することなく、ブリードアウトの発生が抑制され、感光体等の隣接部材に対する汚染性が改良された導電性ローラを提供することができる。また、かかる導電性ローラを用いることにより、良好な画像を安定して形成することが可能な画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
<導電性ローラ>
以下に、本発明の導電性ローラを、図1を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の導電性ローラの一例の断面図である。図示例の導電性ローラ1は、長さ方向両端部を軸支されて取り付けられるシャフト部材2と、該シャフト部材2の半径方向外側に配設されたイオン導電剤含有弾性層3と、該イオン導電剤含有弾性層3の半径方向外側に配設された表層4と、該イオン導電剤含有弾性層3と表層4との間に配設された中間層5とを備える。また、図示例の導電性ローラ1において、表層4は微粒子6を含むが、本発明の導電性ローラにおいては、表層4が微粒子を含有することは必須ではない。
【0017】
図1において、シャフト部材2は、金属シャフト2Aと、該金属シャフト2Aの半径方向外側に配設された高剛性の樹脂基材2Bとからなるが、本発明の導電性ローラのシャフト部材は、良好な導電性を有する限り特に制限はなく、金属シャフト2Aのみから構成されていてもよいし、高剛性の樹脂基材のみから構成されていてもよいし、内部を中空にくりぬいた金属製又は高剛性樹脂製の円筒体等であってもよい。なお、シャフト部材2に高剛性の樹脂を使用する場合、高剛性樹脂に導電剤を添加・分散させて、十分に導電性を確保することが好ましい。ここで、高剛性樹脂に分散させる導電剤としては、カーボンブラック粉末、グラファイト粉末、カーボンファイバー、アルミニウム、銅、ニッケル等の金属粉末、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物粉末、導電性ガラス粉末等の粉末状導電剤が好ましい。これら導電剤は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。該導電剤の配合量は、特に制限されるものではないが、高剛性樹脂の全体に対して5〜40質量%の範囲が好ましく、5〜20質量%の範囲が更に好ましい。
【0018】
上記金属シャフト2Aや金属製円筒体の材質としては、鉄、ステンレス、アルミニウム等が挙げられる。また、上記高剛性の樹脂基材2Bの材質としては、ポリアセタール、ポリアミド6、ポリアミド6・6、ポリアミド12、ポリアミド4・6、ポリアミド6・10、ポリアミド6・12、ポリアミド11、ポリアミドMXD6、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエチレンテレフタレート、ポリアリレート、液晶ポリマー、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、メラミン樹脂、フェノール樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。これらの中でも、ポリアセタール、ポリアミド6・6、ポリアミドMXD6、ポリアミド6・12、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、ポリカーボネートが好ましい。これら高剛性樹脂は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0019】
上記シャフト部材が、金属シャフト又は該金属シャフトの外側に高剛性の樹脂基材を配設したシャフトである場合、該金属シャフトの外径は、4.0〜8.0mmの範囲が好ましい。また、上記シャフト部材が、金属シャフトの外側に高剛性の樹脂基材を配設したシャフトである場合、該樹脂基材の外径は、10〜25mmの範囲が好ましい。なお、上記シャフト部材に高剛性樹脂を使用することで、シャフト部材の外径を大きくしても、シャフト部材の質量の増加を抑制することができる。
【0020】
本発明の導電性ローラ1は、イオン導電剤含有弾性層3、表層4及び中間層5が、紫外線硬化型樹脂を含み、該中間層5の厚さが11μm以上であることを特徴とする。導電性ローラが、シャフト部材の外周に弾性層や表層等の多層構造を形成している場合においては、各層を構成する樹脂として紫外線硬化型樹脂を用いることが好ましい。該紫外線硬化型樹脂を用いた場合、従来の熱硬化性樹脂と比較して、長い乾燥ラインを必要とせず、シャフト部材の外周に安定した品質の多層構造を形成することができる。また、各層に紫外線硬化型樹脂を用いた場合、ローラの導電性を十分に確保するためには、弾性層がイオン導電剤を含有することが好ましいが、この場合、イオン導電剤のブリードアウトの問題があった。このような問題に対して、表層の厚さを規定し、イオン導電剤のブリードアウトを抑制する手法が挙げられるが、表層の性能を確保することが困難になる。例えば、導電性ローラの表面に適度な微小凹凸を形成するため、表層に微粒子を配合する場合には、表層の厚さに上限が設けられ、ブリードアウトの抑制に必要とされる表層の厚さが十分に確保できないことになる。しかしながら、本発明の導電性ローラ1は、イオン導電剤含有弾性層3と表層4との間に、層の厚さが11μm以上の中間層5を備えるため、表層の厚さを規定することなく、ブリードアウトの発生が抑制され、感光体等の隣接部材に対する汚染性を改良することができる。なお、本発明の導電性ローラにおいて、中間層5の厚さは、11〜20μmの範囲であることが好ましい。中間層5の厚さが11μm未満では、イオン導電剤がブリードしてきて、感光体等の隣接部材を汚染してしまい、一方、20μmを超えると、ローラ全体抵抗が高くなり、画像にムラが発生してしまう場合がある。
【0021】
本発明の導電性ローラ1は、表層4の厚さが7〜11μmであることが好ましい。上述した通り、本発明の導電性ローラの表層の厚さは、イオン導電剤のブリードアウトに関して特に規定されず、表層の性能を十分に発揮できる厚さにすればよい。しかしながら、表層4の厚さが9μm程度であれば(中間層5と表層4の厚さの合計が20μm以上であれば)、イオン導電剤のブリードアウトを十分に抑制することができる。また、表層4の厚さが7μm未満では、表面粗さが大きくなり過ぎ、画像濃度が濃くなってしまい、一方、11μmを超えると、反対に画像濃度が薄くなってしまう場合がある。
【0022】
本発明の導電性ローラ1は、イオン導電剤含有弾性層3、表層4及び中間層5が、紫外線硬化型樹脂を含む。該紫外線硬化型樹脂を含むイオン導電剤含有弾性層、表層及び中間層は、例えば、紫外線により重合可能な樹脂及び/又は化合物と、各層の性能に応じて必要な公知の添加剤等とを含む塗工液をシャフト部材、イオン導電剤含有弾性層及び中間層の内のいずれかの外表面に塗布した後、紫外線照射して、紫外線により重合可能な樹脂及び/又は化合物を硬化させて形成される。この場合、各層の形成に長い乾燥ラインを準備する必要が無くなり、更に、乾燥工程の諸条件のバラツキに起因する層の特性のバラツキを排除することができる。ここで、上記塗工液は、反応性希釈剤、導電剤、光重合開始剤、光重合促進剤、微粒子等を、本発明の目的を害しない範囲内で適宜選択して含むのが好ましく、その他、必要に応じて公知の添加剤を含んでもよく、また、塗工液の粘度を調整するため微量の溶剤を含んでもよい。なお、塗工液を塗布する方法としては、スプレー法、ロールコーター法、ディッピング法、ダイコート法等が挙げられる。また、紫外線照射に用いる光源としては、水銀灯、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ等が挙げられる。紫外線照射の条件は、紫外線硬化型樹脂の種類や塗布量に応じて適宜選択され、例えば、照射強度100〜700mW/cm2、積算光量200〜3000mJ/cm2の範囲が好ましい。
【0023】
上記表層及び中間層においては、紫外線硬化硬化型樹脂の含有率が、80〜90質量%の範囲が好ましい。各層に含まれる紫外線硬化型樹脂の割合が80質量%未満では、膜厚が薄くなり、塗膜強度が低くなる場合があり、90質量%を超えると、塗膜強度が高くなり過ぎ、目的の性能が発揮されない場合がある。
【0024】
上記イオン導電剤含有弾性層、表層及び中間層に用いる紫外線硬化型樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ビニルエーテル系樹脂、ビニルエステル系樹脂及びこれら樹脂に特定の官能基を導入した変性樹脂等が挙げられ、これらの中でも、アクリルウレタン樹脂が特に好ましい。なお、これら樹脂は、1種単独でも、2種以上を混合して用いてもよい。
【0025】
上記紫外線硬化型樹脂は、紫外線により重合可能な樹脂及び/又は化合物、好ましくは、紫外線により重合可能な炭素原子間二重結合を有する樹脂及び/又は化合物を紫外線照射により硬化させてなる。なお、上記紫外線により重合可能な樹脂及び/又は化合物は、1種単独で使用しても、2種以上を混合して用いてもよい。
【0026】
上記紫外線硬化型樹脂の形成に用いられる重合可能な炭素原子間二重結合を有する樹脂及び/又は化合物としては、(メタ)アクリレートモノマー及びオリゴマーが好ましい。ここで、(メタ)アクリレートモノマー及びオリゴマーとしては、ウレタン系(メタ)アクリレート、エポキシ系(メタ)アクリレート、エーテル系(メタ)アクリレート、エステル系(メタ)アクリレート、ポリカーボネート系(メタ)アクリレート、フッ素系(メタ)アクリレート、シリコーン系(メタ)アクリレート等のモノマー及びオリゴマーが挙げられ、これらの中でも、ウレタン系(メタ)アクリレートモノマー及びオリゴマーが特に好ましい。上記(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、多価アルコールとε-カプロラクトンの付加物等と、(メタ)アクリル酸との反応により、或いはポリイソシアネート化合物及び水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物をウレタン化することにより合成することができる。
【0027】
上記ウレタン系(メタ)アクリレートオリゴマーは、ポリオール、イソシアネート化合物と水酸基を有する(メタ)アクリレート化合物とをウレタン化することによって得られる。また、上記エポキシ系(メタ)アクリレートオリゴマーとしては、グリシジル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成物が好ましく、ベンゼン環、ナフタレン環、スピロ環、ジシクロペンタジエン、トリシクロデカン等の環状構造を有し且つグリシジル基を有する化合物と(メタ)アクリル酸との反応生成物が更に好ましい。更に、上記エーテル系(メタ)アクリレートオリゴマー、エステル系(メタ)アクリレートオリゴマー及びポリカーボネート系(メタ)アクリレートオリゴマーは、各々に対するポリオール(ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール及びポリカーボネートポリオール)と(メタ)アクリル酸との反応によって得られる。
【0028】
また、上記(メタ)アクリレートモノマーは、アクリロイルオキシ基(CH2=CHCOO−)又はメタクリロイルオキシ基(CH2=C(CH3)COO−)の他、嵩高い置換基又は極性基を有するものが好ましい。(メタ)アクリレートモノマーが嵩高い置換基又は極性基を有することで、重合後の高分子鎖は立体的に嵩高くなり、又は高分子鎖内の極性基相互作用が強くなる結果、高分子の結晶性が低下する。一般に、非晶性高分子は、結晶性高分子より伸び特性が良好である傾向があるため、嵩高い置換基又は極性基を有する(メタ)アクリレートモノマーは、伸び特性の付与に有効であると考えられる。該(メタ)アクリレートモノマーとして、具体的には、アクリロイルモルホリン、N,N-ジエチルアミノエチルメタクリレート、イソボルニルアクリレート、フェノキシエチルアクリレート等が好適に挙げられる。なお、(メタ)アクリレートモノマーは、一種単独で用いてもよいし、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0029】
本発明の導電性ローラのイオン導電剤含有弾性層は、上記の紫外線硬化型樹脂の他、イオン導電剤を含むことを要し、必要に応じて公知の添加剤を含んでもよい。該イオン導電剤含有弾性層に用いるイオン導電剤としては、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、ベンジルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸ジメチルエチルアンモニウム等の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エチル硫酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩等のアンモニウム塩;リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム等のアルカリ金属、アルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、トリフルオロメチル硫酸塩、スルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、ノナフルオロブタンスルホン酸塩、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド塩、ヘキサフルオロリン酸塩、ヘキサフルオロ砒酸塩等が挙げられる。これらの中でも、無機酸又は有機酸とのリチウム塩が好ましく、該リチウム塩としては、Li(CF3SO2)2N、Li(C25SO2)2N、LiClO4、LiBF4、LiPF6、LiCF3SO3、LiAsF6、LiC49SO3等が挙げられる。上記イオン導電剤の配合量は、上記紫外線硬化型樹脂100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲が好ましく、0.05〜5質量部の範囲が更に好ましい。上記イオン導電剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、上記イオン導電剤に加えて、透明導電剤を添加することもできる。ここで、透明導電剤としては、ITO、酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の金属酸化物の微粒子;ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属の微粒子;導電性酸化チタンウィスカー、導電性チタン酸バリウムウィスカー等の導電性ウィスカー等が挙げられる。
【0030】
上記イオン導電剤含有弾性層の形成に用いる塗工液には、反応性希釈剤を配合するのが好ましい。塗工液に重合性二重結合を有する反応性希釈剤を配合することで、塗工液の粘度を調整することができる。該反応性希釈剤としては、アミノ酸や水酸基を含む化合物に、(メタ)アクリル酸がエステル化反応及びアミド化反応で結合した構造の単官能、2官能または多官能の重合性化合物等を使用することができる。また、塗工液中に含まれる反応性希釈剤の配合量は、紫外線硬化型樹脂100質量部に対して10〜200質量部の範囲が好ましい。なお、塗工液の粘度を調整するため、反応性希釈剤の他に微量の溶剤を含んでもよい。
【0031】
上記イオン導電剤含有弾性層の形成に用いる塗工液には、光重合開始剤を配合するのが好ましい。該光重合開始剤は、紫外線を照射されることによって、上記の紫外線により重合可能な樹脂及び/又は化合物の重合を開始させる作用を有する。該光重合開始剤としては、4-ジメチルアミノ安息香酸、4-ジメチルアミノ安息香酸エステル、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、アセトフェノンジエチルケタール、アルコキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン及び3,3-ジメチル-4-メトキシベンゾフェノン、4,4-ジメトキシベンゾフェノン、4,4-ジアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、ベンゾイル安息香酸アルキル、ビス(4-ジアルキルアミノフェニル)ケトン、ベンジル及びベンジルメチルケタール等のベンジル誘導体、ベンゾイン及びベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン誘導体、ベンゾインイソプロピルエーテル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、キサントン、チオキサントン及びチオキサントン誘導体、フルオレン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1,2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(モルホリノフェニル)-ブタノン-1等が挙げられる。これら光重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、塗工液中に含まれる光重合開始剤の配合量は、紫外線硬化型樹脂100質量部に対して、0.2〜5.0質量部の範囲が好ましい。光重合開始剤の配合量が0.2質量部以下では、紫外線により重合可能な樹脂及び化合物の紫外線硬化を開始する効果が小さく、一方、5.0質量部を超えると、紫外線硬化を開始させる効果が飽和する一方、コストが高くなる。
【0032】
上記イオン導電剤含有弾性層の形成に用いる塗工液に光重合開始剤を配合する場合、光重合開始剤による重合反応を促進するために、トリエチルアミン、トリエタノールアミン等の第3級アミン系光重合促進剤、トリフェニルホスフィン等のホスフィン系光重合促進剤、チオジグリコール等のチオエーテル系光重合促進剤等を更に添加してもよい。また、塗工液中に含まれる光重合促進剤の添加量は、紫外線硬化型樹脂100質量部に対して0.01〜10質量部の範囲が好ましい。
【0033】
上記イオン導電剤含有弾性層の形成に用いる塗工液には、更に、重合禁止剤を含有してもよい。重合禁止剤を添加することで、紫外線照射前の熱重合を防止することができる。重合禁止剤としては、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエ−テル、p-メトキシフェノール、2,4-ジメチル-6-t-ブチルフェノール、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチルヒドロキシアニソール、3-ヒドロキシチオフェノール、α-ニトロソ-β-ナフトール、p-ベンゾキノン、2,5-ジヒドロキシ-p-キノン等が挙げられる。また、塗工液中に含まれる重合禁止剤の含有量は、紫外線硬化型樹脂100質量部に対して、0.001〜0.2質量部の範囲が好ましい。
【0034】
本発明の導電性ローラの表層は、上記の紫外線硬化型樹脂を含むことを要し、更に微粒子を含むことが好ましく、必要に応じて公知の添加剤を含んでもよい。導電性ローラの表層に微粒子を含ませることで、導電性ローラの表面に適度な微小凹凸が形成され、トナーや他の隣接部材等との接触部の面積を低減できる。該微粒子としては、ゴム又は合成樹脂製の微粒子やカーボン製の微粒子およびシリカ系微粒子等の無機微粒子が好ましく、シリコーンゴム、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ウレタン樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ウレタンアクリレート、メラミン樹脂、フェノール樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ガラス状カーボン製の微粒子およびシリカ微粒子が特に好ましい。これら微粒子は、一種単独で用いてもよいし、二種以上を混合して用いてもよい。これら微粒子の含有量は、紫外線硬化型樹脂100質量部に対して、0.1〜100質量部の範囲が好ましく、5〜80質量部の範囲が更に好ましい。
【0035】
上記表層の形成に用いる塗工液には、更に、反応性希釈剤、光重合開始剤、光重合促進剤、重合禁止剤等を配合することが好ましい。ここで、表層の形成に用いることができる反応性希釈剤、光重合開始剤、光重合促進剤、重合禁止剤としては、上記イオン導電剤含有弾性層に用いる添加剤として例示したものと同様のものを例示することができる。
【0036】
本発明の導電性ローラの中間層は、上記の紫外線硬化型樹脂を含むことを要し、必要に応じて公知の添加剤を含んでもよく、また、微粒子を含まないのが好ましい。該導電性ローラの中間層が微粒子を含まない場合、中間層の表面に微小凹凸が形成されず、イオン導電剤含有弾性層と表層との密着性を向上できる。なお、上記中間層の形成に用いる塗工液には、例えば、反応性希釈剤、光重合開始剤、光重合促進剤、重合禁止剤等を配合することができるが、これらの添加剤についても、上述した添加剤と同様のものを例示することができる。
【0037】
上述した本発明の導電性ローラは、画像形成装置の現像ローラ、帯電ローラ、トナー供給ローラ、転写ローラ、給紙ローラ、クリーニングローラ、定着用の加圧ローラ等として用いることができるが、現像ローラ及び帯電ローラとして特に好適である。
【0038】
<画像形成装置>
本発明の画像形成装置は、上述した導電性ローラを備えることを特徴とし、現像ローラ及び帯電ローラの少なくとも一方として備えることが好ましい。本発明の画像形成装置は、上記導電性ローラを用いる以外、特に制限はなく、公知の方法で製造することができる。
【0039】
以下に、図2を参照して本発明の画像形成装置を詳細に説明する。図2は、本発明の画像形成装置の一例の部分断面図である。図示例の画像形成装置は、静電潜像を保持した感光体7と、感光体7の近傍(図では上方)に位置し感光体7を帯電させるための帯電ローラ8と、トナー9を供給するためのトナー供給ローラ10と、トナー供給ローラ10と感光体7との間に配置された現像ローラ11と、現像ローラ11の近傍(図では上方)に設けられた成層ブレード12と、感光体7の近傍(図では下方)に位置する転写ローラ13と、感光体7に隣接して配置されたクリーニングローラ14とを備える。なお、本発明の画像形成装置は、更に画層形成装置に通常用いられる公知の部品(図示せず)を備えることができる。
【0040】
図示例の画像形成装置においては、感光体7に帯電ローラ8を当接させて、感光体7と帯電ローラ8との間に電圧を印加して、感光体7を一定電位に帯電させた後、露光機(図示せず)により静電潜像を感光体7上に形成する。次に、感光体7と、トナー供給ローラ10と、現像ローラ11とが、図中の矢印方向に回転することで、トナー供給ローラ10上のトナー9が現像ローラ8を経て感光体7に送られる。現像ローラ11上のトナー9は、成層ブレード12により、均一な薄層に整えられ、現像ローラ11と感光体7とが接触しながら回転することにより、トナー9が現像ローラ11から感光体7の静電潜像に付着し、該潜像が可視化する。潜像に付着したトナー7は、転写ローラ13で紙等の記録媒体に転写され、また、転写後に感光体7上に残留するトナー9は、クリーニングローラ14によって除去される。ここで、本発明の画像形成装置においては、帯電ローラ8、トナー供給ローラ10、現像ローラ11、転写ローラ13及びクリーニングローラ14の少なくともいずれかに、好ましくは、帯電ローラ8及び現像ローラ11の少なくとも一方に、上述した本発明の導電性ローラを用いることで、優れた画像を安定的に形成することが可能となる。例えば、本発明の導電性ローラを帯電ローラ8として画像形成装置に用いた場合においては、感光体7を汚染しない上、感光体7の表面を均一に帯電することができる。
【実施例】
【0041】
以下に、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明は下記の実施例に何ら限定されるものではない。
【0042】
(実施例1及び比較例1〜4の導電性ローラ)
2官能で分子量5,500の高純度ポリオール[プレミノールS−4006、旭硝子(株)製、プロピレンオキシド(PO)鎖からなるポリオール、水酸基価=21.1mgKOH/g]100質量部、イソホロンジイソシアネート6.69質量部[イソシアネート基/ポリオールの水酸基=8/5=1.60(モル比)]、及びジブチルスズジラウレート0.01質量部を加温撹拌混合しながら、70℃で2時間反応させて、分子鎖の両末端にイソシアネート基を有するウレタンプレポリマーを合成した。更に、このウレタンプレポリマー100質量部に2-ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)2.62質量部を撹拌混合し、70℃で2時間反応させて、分子量が11,000のウレタンアクリレートオリゴマー(A)を合成した。得られたウレタンアクリレートオリゴマー(A)は、B型粘時計で測定した25℃での粘度が60,000mPasであった。
【0043】
上記ウレタンアクリレートオリゴマー(A)60.0質量部、共栄社化学(株)製のアクリレートモノマー“ライトアクリレートIM−A”30.0質量部、新中村化学工業(株)製のアクリレートモノマー“NKエステル A-SA(β-アクリロイルオキシエチルハイドロジェンサクシネート)”10.0質量部、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製の光重合開始剤“イルガキュアー184D”0.5質量部、三光化学工業(株)製の“サンコノールIM-A-30R[IM−A(イソミリスチルアクリレート、官能基数1、分子量268、希釈剤)70質量%とLi(CF3SO2)2N(イオン導電剤)30質量%との混合物]1.33質量部を攪拌機にて、液温70℃、60回転/分で1時間攪拌混合し、混合液を濾過して弾性層用塗工液を得た。
【0044】
次に、外径6.0mmの金属シャフトを挿入した外径17.0mmのポリブチレンテレフタレート(PBT)樹脂製導電性ローラ基材に上記弾性層用塗工液をダイコーターにより厚さ1500μmで塗布し、塗布しながらスポットUV照射により樹脂原料を硬化させた。このようにして形成したイオン導電剤含有弾性層付ローラを、さらに窒素雰囲気下で回転させながらUV照射強度700mW/cm2で5秒間UV照射した。
【0045】
このようにして得たイオン導電剤含有弾性層付ローラの表面に、表1に示す配合処方の中間層用塗工液をロールコーターにより表2に示す厚さで塗布した。このようにして形成した中間層付ローラを、窒素雰囲気下で回転させながらUV照射強度700mW/cm2で5秒間UV照射した。
【0046】
更に、上記中間層付ローラの表面に、表1に示す配合処方の表層用塗工液をロールコーターにより8μmの厚さで塗布して、窒素雰囲気下で回転させながらUV照射強度700mW/cm2で5秒間UV照射し、導電性ローラを得た。得られた導電性ローラにおいて、感光体汚染試験を下記の方法で評価した。結果を表2に示す。
【0047】
(1)感光体汚染試験
得られた導電性ローラを組み込んだカートリッジを50℃の光を遮蔽した熱風循環式オーブン内に5日間放置した後取り出し、20℃、50%RHの環境下で1時間放置した後、グレー色の画像を50枚印刷し、目視にて下記の基準により評価した。
10枚以内で汚染跡が消失したものを「○」、11〜20枚の範囲内で汚染跡が消失したものを「△」、20枚を超えて印刷しても汚染跡が消失しないものを「×」とした。
【0048】
【表1】

【0049】
*1 ウレタンアクリレートオリゴマー,日本合成化学工業(株)製.
*2 アクリロイルモルホリン,新中村化学工業(株)製.
*3 Irgacure 184,チバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)製.
*4 PMA,関東化学(株)製.
*5 CFB101−40,大日本インキ化学工業(株)製.
【0050】
【表2】

【0051】
表2から、導電性ローラの中間層の厚さが増加するにつれ、感光体に対する汚染が改善されていることが分かる。そして、層の厚さが11μmの中間層を有する実施例1の導電性ローラにおいては、感光体に対する汚染が確認されず、イオン導電剤のブリードアウトの発生が抑制されていることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】本発明の導電性ローラの一例の断面図である。
【図2】本発明の画像形成装置の一例の部分断面図である。
【符号の説明】
【0053】
1 導電性ローラ
2 シャフト部材
2A 金属シャフト
2B 高剛性樹脂基材
3 イオン導電剤含有弾性層
4 表層
5 中間層
6 微粒子
7 感光体
8 帯電ローラ
9 トナー
10 トナー供給ローラ
11 現像ローラ
12 成層ブレード
13 転写ローラ
14 クリーニングローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シャフト部材と、該シャフト部材の半径方向外側に配設されたイオン導電剤含有弾性層と、該イオン導電剤含有弾性層の半径方向外側に配設された表層とを備える導電性ローラにおいて、
前記イオン導電剤含有弾性層と表層との間に更に中間層を備え、
前記イオン導電剤含有弾性層、表層及び中間層が紫外線硬化型樹脂を含み、
前記中間層の厚さが11μm以上であることを特徴とする導電性ローラ。
【請求項2】
前記表層の厚さが7〜11μmであることを特徴とする請求項1に記載の導電性ローラ。
【請求項3】
前記紫外線硬化型樹脂が、アクリルウレタン樹脂を含むことを特徴とする請求項1に記載の導電性ローラ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ローラを用いた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2008−129520(P2008−129520A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−317261(P2006−317261)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】