説明

導電性可変組成物、導電性可変積層体、および導電性パターン形成体

【課題】 本発明は、簡易な工程で効率よく高精細に導電性パターンが形成された導電性パターン形成体や、その導電性パターンの形成に用いられる導電性可変積層体等を提供することを主目的としている。
【解決手段】 上記目的を達成するために、本発明は、導電性無機材料、および前記導電性無機材料の周囲に付着した有機材料を含有する絶縁性粒子と、光触媒とを含有することを特徴とする導電性可変組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば有機エレクトロルミネッセント(以下、ELともいう。)素子や、配線基板の形成に用いられ、高精細な導電性パターンを有する導電性パターン形成体、およびその導電性パターン形成体を容易に形成可能な導電性可変積層体等に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、配線基板等に用いられる導電性パターン形成体の導電性パターン形成には、一般的にフォトリソグラフィー法やマスク蒸着法等が用いられている。しかしながら、上記フォトリソグラフィー法においては、基板上へ金属層を形成する工程や、金属層上にフォトレジスト層を形成する工程、上記フォトレジスト層を露光する工程、上記フォトレジスト層を現像する工程、上記金属層をエッチングする工程等、種々の工程を経る必要があり、製造方法が煩雑であるという問題があった。また、上記金属層の形成は、通常、CVD、スパッタリング等により行われており、真空系の設備や高温処理可能な設備が必要とされ、設備コスト、ランニングコスト等の負荷が非常に大きい、という問題があった。またさらに、現像時に多量に生じる廃液は有害なものであり、外部に排出するためには処理を行う必要がある等の環境面での問題もあった。
【0003】
また、上記マスク蒸着法においては、電極材料等を蒸着する必要があることから、真空系の設備等が必要であり、設備コスト、ランニングコスト等の負荷が大きく、また生産性が低い、という問題があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、簡易な工程で効率よく高精細に導電性パターンが形成された導電性パターン形成体や、その導電性パターンの形成に用いられる導電性可変積層体等の提供が望まれていた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、導電性無機材料、および上記導電性無機材料の周囲に付着した有機材料を含有する絶縁性粒子と、光触媒とを含有することを特徴とする導電性可変組成物を提供する。
【0006】
本発明においては、上記絶縁性粒子は、導電性無機材料の周囲に有機材料が付着していることから、絶縁性を有する粒子とすることができ、導電性可変組成物が導電性を有しないものとすることができる。また、上記導電性可変組成物中には、光触媒が含有されていることから、この導電性可変組成物に対してエネルギーを照射することにより、光触媒の作用によって、上記導電性無機材料の周囲から上記有機材料を除去することができ、導電性可変組成物が導電性を有するものとすることができる。したがって、本発明によれば、エネルギー照射により導電性が容易に変化する導電性可変組成物とすることができるのである。
【0007】
また、本発明は、基材と、上記基材上に形成され、導電性無機材料および上記導電性無機材料の周囲に付着した有機材料を含有する絶縁性粒子を含み、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により導電性を発現する導電性可変層とを有することを特徴とする導電性可変積層体を提供する。
【0008】
本発明においては、上記導電性可変層が上記絶縁性粒子を含有していることから、絶縁性を有する層とすることができる。また、この導電性可変層にエネルギー照射に伴う光触媒の作用を及ぼすことにより、上記絶縁性粒子の導電性無機材料の周囲から上記有機材料を除去することができ、導電性可変層に導電性を発現させることができる。したがって、上記導電性可変層に、パターン状に光触媒の作用を及ぼすことにより、導電性パターンおよび絶縁性パターンを容易に形成することができ、例えば配線基板の配線等を高精細に形成可能なものとすることができる。
【0009】
上記発明においては、上記導電性可変層が、光触媒を含有するものとしてもよい。これにより、上記導電性可変層にエネルギーを照射することにより、導電性可変層中の光触媒の作用によって、導電性可変層の導電性を容易に変化させることが可能となる。
【0010】
また、本発明は、上述した導電性可変積層体の上記導電性可変層が、導電性を有する導電性パターンと、絶縁性の絶縁性パターンとを有することを特徴とする導電性パターン形成体を提供する。
【0011】
本発明によれば、上記導電性可変層が、上記導電性パターンと絶縁性パターンとを有することから、上記導電性パターンおよび絶縁性パターンの導電性および絶縁性を利用して、種々の配線基板や、EL素子等に使用可能なものとすることができる。
【0012】
また、本発明においては、上述した導電性パターン形成体上に形成された有機エレクトロルミネッセント層を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセント素子を提供する。
【0013】
本発明によれば、導電性パターンを有する上記導電性パターン形成体上に有機EL層が形成されていることから、有機EL素子の電気特性が良好なものとすることができる。ここで、一般的に、有機EL素子全面の導電性を向上させた場合には、動画表示を行なう際、指定された画素以外の画素も発光してしまう場合があるが、本発明によれば、上記画素毎に導電性が向上するように導電性パターンが形成されたものとすることができ、高精細なパターン状に発光可能な有機EL素子とすることができる。また、上記導電性可変層中には、光触媒が含有されていることから、導電性可変層が電子または正孔を輸送する機能を有するものとすることができる。したがって、上記導電性可変層を正孔輸送層または電子輸送層として用いることができる、という利点も有する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、エネルギーを照射することにより、導電性を容易に発現させることが可能な導電性可変組成物とすることができるという効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、例えば有機EL素子や、配線基板の形成に用いられ、高精細な導電性パターンを有する導電性パターン形成体、およびその導電性パターン形成体を容易に形成可能な導電性可変積層体等に関するものである。以下、それぞれについてわけて説明する。
【0016】
A.導電性可変組成物
まず、本発明の導電性可変組成物について説明する。本発明の導電性可変組成物は、導電性無機材料、および上記導電性無機材料の周囲に付着した有機材料を含有する絶縁性粒子と、光触媒とを含有することを特徴とするものである。
【0017】
本発明においては、上記導電性無機材料の周囲に、有機材料が付着していることから、絶縁性粒子が導電性を有していないものとすることができ、導電性可変組成物が導電性を有していないものとすることができる。また、上記導電性可変組成物には、光触媒が含有されていることから、上記導電性可変組成物にエネルギーを照射することにより、光触媒の作用によって、導電性無機材料と有機材料との結合等を切断したり、上記有機材料を分解等すること等ができる。これにより、導電性無機材料の周囲に付着した有機材料が除去され、導電性無機材料が露出することとなり、導電性可変組成物に導電性を発現させることが可能となるのである。
【0018】
したがって本発明によれば、エネルギー照射によって、容易に上記導電性可変組成物に導電性を発現させることができ、本発明の導電性可変組成物を、例えば配線基板の製造等、種々の用途に用いることが可能なものとすることができるのである。
【0019】
以下、本発明の導電性可変組成物について各構成ごとに詳しく説明する。
【0020】
1.絶縁性粒子
まず、本発明に用いられる絶縁性粒子について説明する。本発明に用いられる絶縁性粒子は、導電性無機材料、および上記導電性無機材料の周囲に付着した有機材料を含有するものである。ここで本発明において、上記有機材料が、導電性無機材料の周囲に付着しているとは、絶縁性粒子が導電性を有しない程度、導電性無機材料の導電性を阻害するように、有機材料が導電性無機材料の周囲に配置されていることをいう。またこの際、上記有機材料は、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、容易に導電性無機材料の周囲から除去される程度の強度や密度で導電性無機材料の周囲に配置される。このような導電性無機材料と有機材料との結合は、通常、分子間力や、炭素−金属結合、金属−ヘテロ元素結合等によって生じるものとされる。
【0021】
ここで、上記絶縁性粒子は、導電性可変組成物中に50重量%〜95重量%程度、中でも75重量%〜95重量%程度、特に90重量%〜95重量%程度含有されていることが好ましい。上記絶縁性粒子が上記範囲内含有されていることにより、導電性可変組成物にエネルギー照射した際、導電性可変組成物の導電性が変化するものとすることができるからである。
【0022】
また、上記絶縁性粒子の粒径は、導電性可変組成物の用途や後述する導電性無機材料および有機材料の種類等により適宜選択されるものであるが、通常10nm〜100nm程度、中でも10nm〜50nm程度とされることが好ましい。これにより、本発明の導電性可変組成物を用いて、微細な導電性パターンを形成することが可能となるからである。
【0023】
以下、このような絶縁性粒子に含有される導電性無機材料、および有機材料について説明する。
【0024】
a.導電性無機材料
本発明に用いられる導電性無機材料としては、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解等されず、導電性を有する無機物であれば特に限定されるものではない。このような導電性無機材料としては、例えば金属やその酸化物等が挙げられる。具体的には、ニッケル、金、銀、銅、アルミニウム、亜鉛、コバルト、錫やその合金、またこれらの金属酸化物等が挙げられ、中でも高い導電性が得られることから、金、銀、銅を用いることが好ましい。
【0025】
また、上記導電性無機材料は、粒径が通常10nm〜70nm程度、中でも10nm〜50nm程度のものが用いられることが好ましい。これにより、絶縁性粒子の粒径を、上述した範囲とすることが可能となるからである。
【0026】
また、上記導電性無機材料の形状は、特に限定されるものではなく、上記導電性無機材料の種類等に合わせて適宜選択され、例えば球状や短繊維状、柱状等とすることができる。
【0027】
b.有機材料
次に、本発明に用いられる有機材料について説明する。本発明に用いられる有機材料としては、導電性を有しておらず、上記導電性無機材料の周囲に付着することが可能なものであって、エネルギー照射に伴う光触媒の作用および後工程の加熱によって、上記導電性無機材料表面から容易に除去され、かつガスとして離脱するものであれば、特に限定されるものではない。
【0028】
このような有機材料としては、例えばピロ炭酸ジブチルや、トリエチルアミン、アセチルアセトン、ペンタンチオール等の低分子材料や、これらの繰り返し構造を有するオリゴマー、デンドロン、デンドリマー等が挙げられる。また、本発明においては、上記の中でも、高い反応性からピロ炭酸ジブチルが用いられることが好ましい。
【0029】
上記有機材料の絶縁性粒子中のおける含有率は、絶縁性粒子内に含有される上記導電性無機材料に対し、重量で50%以下程度、中でも25%以下程度、特に5%以下程度であることが好ましい。上記有機材料の含有量を上記範囲内とすることにより、絶縁性粒子の絶縁性を高いものとすることができるからである。
【0030】
本発明においては、上記有機材料を導電性無機材料の周囲に付着させる方法としては、例えば一般的に行われる、無機顔料の表面被覆、表面修飾のような方法を用いることもできるが、例えば、配位結合、電気的な相互作用等の弱い結合力により、有機材料を導電性無機材料の周囲に付着させる方法も用いることができる。
【0031】
2.光触媒
次に、本発明に用いられる光触媒について説明する。本発明に用いられる光触媒は、エネルギー照射により励起されて、上記有機材料を上記導電性無機材料の周囲から除去することが可能なものであれば特に限定されるものではない。
【0032】
後述するような二酸化チタンに代表される光触媒による作用機構は必ずしも明確なものではないが、エネルギーの照射によって光触媒が酸化還元反応を引き起こし、スーパーオキシド(O)や水酸ラジカル(・OH)などの活性酸素種を発生し、この発生した活性酸素種が有機物の化学構造に変化を及ぼすものと考えられている。本発明においては、このキャリアが上記導電性無機材料と有機材料との間の結合や、有機材料自体に作用を及ぼすものであると思われる。
【0033】
このような光触媒としては、光半導体として知られている例えば酸化チタン(TiO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化スズ(SnO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、酸化タングステン(WO)、酸化ビスマス(Bi)、酸化鉄(Fe)等のような金属酸化物を挙げることができる。これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。本発明においては、これらの中でも酸化チタンを用いることが特に好ましい。酸化チタンは、バンドギャップエネルギーが高く、化学的に安定であり、毒性もなく、入手も容易である点で有利である。
【0034】
酸化チタンには、正方晶系に属するアナターゼ型およびルチル型と、斜方晶系に属するブルッカイト型とがあり、本発明ではいずれも使用することができ、またこれらを混合して使用することもできる。本発明においてはこれらの中でも、アナターゼ型酸化チタンを用いることが好ましい。アナターゼ型酸化チタンは励起波長が380nm以下にある。このようなアナターゼ型酸化チタンとしては、例えば塩酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(石原産業(株)製STS−02(平均粒径7nm)、石原産業(株)製ST−K01)、硝酸解膠型のアナターゼ型チタニアゾル(日産化学(株)製TA−15(平均粒径12nm))を挙げることができる。
【0035】
また、ブルッカイト型酸化チタンも光触媒活性が高いことが知られており、好適に使用できる。
【0036】
また、上記光触媒の形状は、特に限定されるものではなく、上記光触媒の種類等により適宜選択される。また、上記光触媒の粒径としては、10nm〜100nm程度、中でも10nm〜70nm程度、特に10nm〜50nm程度であることが好ましい。これにより、導電性可変組成物中で、上記絶縁性粒子に対して、効率よく影響を及ぼすことが可能となるからである。
【0037】
本発明においては、上記光触媒が、導電性可変組成物中に5重量%〜95重量%程度、中でも5重量%〜50重量%程度、特に5重量%〜20重量%程度含有されていることが好ましい。これにより、エネルギー照射により、上記有機材料を導電性無機材料周囲から効率よく除去することが可能となり、エネルギー照射された導電性無機材料が導電性を発現するものとすることができるからである。
【0038】
なお、導電性可変組成物中に光触媒が含有されていることは、X線光電子分光法、ラザフォード後方散乱分光法、核磁気共鳴分光法、または質量分析法を用いて、あるいはこれらの方法を組み合わせて確認することができる。
【0039】
3.導電性可変組成物
次に、本発明の導電性可変組成物について説明する。本発明の導電性可変組成物は、上記絶縁性粒子、および上記光触媒を含有するものであり、エネルギー照射されることにより導電性を発現するものである。
【0040】
このような導電性可変組成物は、上記導電性可変組成物は、粉体であってもよく、また上記絶縁性粒子および光触媒が分散された溶液等であってもよい。また、所定の形状に固化されたもの等であってもよい。
【0041】
また、上記導電性可変組成物は、上記絶縁性粒子、および光触媒以外に、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により分解等されないバインダや、pH調整剤、分散剤、溶剤等、必要に応じて適宜他の材料を含有していてもよい。
【0042】
本発明においては、特にバインダを含有していることが好ましい。これにより、上記導電性可変組成物を用いて、例えば後述する導電可変積層体等を形成した際、導電性可変組成物を膜状化した導電性可変層の強度が高いものとすることができるからである。
【0043】
このようなバインダとしては、主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましく、例えばオルガノポリシロキサン等を挙げることができる。また、本発明においては、上記バインダとして、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により、特性が変化するもの等を用いてもよい。これにより、上記導電性可変組成物にエネルギー照射をした際、上記導電性可変組成物が導電性を発現するだけでなく、その特性も変化するものとすることができるからである。このような特性の変化としては、特に限定されるものではなく、例えばエネルギー照射に伴う光触媒の作用により濡れ性が変化するようものであってもよく、また上記光触媒の作用により接着性が変化するようなものであってもよい。
【0044】
本発明においては、上記バインダとして、特に光触媒の作用により濡れ性が変化するものが用いられることが好ましい。これにより、上記導電性可変組成物を用いて導電性可変層を形成し、この導電性可変層にエネルギーを照射することにより、上記導電性可変層の濡れ性も変化させることができる。したがって、エネルギーが照射された領域、すなわち導電性を有するパターン上に、上記濡れ性の差を利用して、種々の機能性部等を形成することも可能となるからである。このように、光触媒の作用により濡れ性が変化するようなバインダとしては、例えば特開2000−249821号公報に記載されているフルオロアルキル基を含有するオルガノポリシロキサン等が挙げられる。
【0045】
また、上記pH調整剤や、分散剤としては、上記光触媒や絶縁性粒子の凝集を防ぐことが可能なものであれば特に限定されるものではなく、一般的に用いられるpH調整剤や分散剤等を用いることができる。
【0046】
なお、本発明においては、上記絶縁性材料が分散剤やバインダ等の機能を果たすものであってもよい。
【0047】
B.導電性可変積層体
次に、本発明の導電性可変積層体について説明する。本発明の導電性可変積層体は、基材と、上記基材上に形成され、導電性無機材料および上記導電性無機材料の周囲に付着した有機材料を含有する絶縁性粒子を含み、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により導電性を発現する導電性可変層とを有することを特徴とするものである。
【0048】
本発明の導電性可変積層体は、例えば図1に示すように、基材1と、その基材1上に形成された導電性可変層2とを有するものであり、上記導電性可変層2は、上記絶縁性粒子を含み、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により特性が変化するものである。
【0049】
本発明によれば、上記導電性可変層は、上記絶縁性粒子を含有していることから、絶縁性を有する層とすることができる。また、この導電性可変層にエネルギー照射に伴う光触媒の作用を及ぼすことにより、上記絶縁性粒子の導電性無機材料の周囲から上記有機材料を除去することができ、容易に導電性可変層が導電性を有するものとすることができる。したがって、本発明によれば、複雑な工程を経ることなく、導電性可変層にパターン状に上記光触媒の作用を及ぼすことにより、導電性領域と絶縁性領域とを形成することができ、高精細な導電性パターンを形成可能な導電性可変積層体とすることができる。
【0050】
以下、本発明の導電性可変積層体の各構成ごとに詳しく説明する。
【0051】
1.導電性可変層
まず、本発明に用いられる導電性可変層について説明する。本発明に用いられる導電性可変層は、後述する基材上に形成されるものであって、導電性無機材料および上記導電性無機材料の周囲に付着した有機材料を含有する絶縁性粒子を含み、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により導電性を発現するものである。
【0052】
本発明においては、上記導電性可変層の体積抵抗が1.0×1011Ωcm以上、中でも1.0×1012Ωcm以上であることが好ましい。これにより、導電性を発現する前の導電性可変層の絶縁性が高いものとすることができ、本発明の導電性可変積層体を種々の用途に用いることが可能となるからである。
【0053】
また、上記導電性可変層は、導電性を発現した後の上記導電性可変層の体積抵抗が、1.0×1010Ωcm以下、中でも1.0×10Ωcm以下となるものであることが好ましい。これにより、導電性が発現した領域の導電性が高いものとすることができ、種々の用途に用いることが可能な導電性可変積層体とすることができるからである。上記体積抵抗の測定は、複数の端子を有する抵抗値測定器を用い、電極を設けた基板上に検体を成膜し、その電極間の電気抵抗値を求めることによって行う。膜厚が薄膜である場合は、表面抵抗値を、体積抵抗値に換算することができる。
【0054】
ここで、本発明において上記導電性可変層は、上記絶縁性粒子を含有していれば特に限定されるものではなく、例えば導電性可変層中に光触媒が含有されていてもよく(第1の態様)、また上記導電性可変層中に光触媒が含有されていなくてもよい(第2の態様)。以下、それぞれの態様における導電性可変層について説明する。
【0055】
(第1の態様)
まず、上記導電性可変層中に光触媒が含有されている場合について説明する。この場合、上記導電性可変層は少なくとも、導電性無機材料および上記導電性無機材料の周囲に付着した有機材料を含有する絶縁性粒子、および光触媒を含有する層とされる。
【0056】
本態様においては、例えば図2に示すように、例えばフォトマスク11等を用いてエネルギー12を照射することにより(図2(a))、導電性可変層2中の光触媒の作用により、上記絶縁性粒子の導電性無機材料の周囲に付着した有機材料を除去することができ、エネルギー12が照射された領域の導電性可変層2に、導電性が発現した導電性パターン3を形成することが可能となる(図2(b))。
【0057】
このような光触媒を含有する導電性可変層としては、上述した「導電性可変組成物」を膜状化したもの等とすることができる。上記導電性可変組成物を膜状化する方法としては、上記導電性可変組成物およびその他の添加物を溶媒に溶解または分散させることにより塗布液を調製し、この塗布液を上記基材上に塗布すること等により形成することができる。
【0058】
塗布はスピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。また、上記導電性可変組成物中にバインダとして紫外線硬化型の成分が含有されている場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより導電性可変層を形成することができる。
【0059】
なお、上記導電性可変層中に含有される絶縁性粒子や、光触媒、バインダ、その他添加剤等については、上述した「A.導電性可変組成物」の項で説明したものと同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0060】
また本態様においては、上記導電性可変層の膜厚が10nm〜10μm程度、中でも10nm〜1μm程度、特に10nm〜100nm程度であることが好ましい。これにより、エネルギー照射によって容易に導電性可変層の導電性が変化するものとすることができるからである。
【0061】
(第2の態様)
次に、上記導電性可変層が光触媒を含有しない場合について説明する。この場合、上記導電性可変層は、導電性無機材料および上記導電性無機材料の周囲に付着した有機材料を含有する絶縁性粒子を含有する層であれば特に限定されるものではない。例えば上述した「A.導電性可変組成物」の項で説明した絶縁性粒子のみからなる層であってもよく、また上記絶縁性粒子とバインダ等とを含有する層等であってもよい。
【0062】
本態様においては、例えば図3に示すように、基体21およびその基体21上に形成され、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層22を有する光触媒含有層側基板23を準備し、この光触媒含有層側基板23の光触媒含有層22と導電性可変層2とを対向させて配置した状態で、例えばフォトマスク11等を用いてエネルギー12を照射する(図3(a))。これにより、光触媒含有層22中の光触媒の作用によって、上記絶縁性粒子の導電性無機材料の周囲に付着した有機材料を除去することができ、エネルギー12が照射された領域の導電性可変層2に、導電性が発現した導電性パターン3を形成することが可能となる(図3(b))。
【0063】
また本態様においては、例えば導電性可変層と基材との間に、少なくとも光触媒を含有する光触媒含有層を形成し、この光触媒含有層中の光触媒の作用により、上記導電性可変層に導電性を発現させてもよい。このような光触媒含有層としては、上述した光触媒含有層側基板に用いられる光触媒含有層と同様とすることができる。
【0064】
ここで、上記導電性可変層中に含有される絶縁性粒子としては、上述した「A.導電性可変組成物」の項で説明したものと同様とすることができる。また上記絶縁性粒子以外に含有されるバインダとしては、例えば主骨格が上記の光触媒の光励起により分解されないような高い結合エネルギーを有するものが好ましく、例えば上述した「A.導電性可変組成物」の項で説明したようなバインダ等を用いることができる。
【0065】
また、上記絶縁性粒子は、導電性可変層中に50重量%以上、中でも75重量%〜95重量%程度、特に90重量%〜95重量%程度含有されていることが好ましい。これにより、上記光触媒含有層と対向させた状態で、導電性可変層にエネルギー照射した際、導電性可変層に導電性を発現させることができるからである。
【0066】
なお、本態様における上記導電性可変層の形成方法としては、上記絶縁性粒子やバインダ、その他の添加物等を溶媒に溶解または分散させることにより塗布液を調製し、この塗布液を上記基材上に塗布すること等により形成することができる。
【0067】
塗布はスピンコート、スプレーコート、ディップコート、ロールコート、ビードコート等の公知の塗布方法により行うことができる。また、上記導電性可変組成物中にバインダとして紫外線硬化型の成分が含有されている場合、紫外線を照射して硬化処理を行うことにより導電性可変層を形成することができる。
【0068】
また本態様においては、上記導電性可変層の膜厚が10nm〜10μm程度、中でも10nm〜1μm程度、特に10nm〜100nm程度であることが好ましい。これにより、エネルギー照射に伴う光触媒の作用によって容易に導電性可変層の導電性が変化するものとすることができるからである。
【0069】
また、上記導電性可変層のパターニングに用いられる光触媒含有層等については、後述する「C.導電性パターン形成体」の項で説明するので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0070】
2.基材
次に、本発明に用いられる基材について説明する。本発明に用いられる基材は、上記導電性可変層を形成可能な層であれば、特に限定されるものではなく、導電性可変積層体の用途等に応じて適宜選択される。このような基材として具体的には、石英ガラス、パイレックス(登録商標)ガラス、合成石英板等の可撓性のないリジット材、あるいは透明樹脂フィルム、光学用樹脂板等の可撓性を有する透明なフレキシブル材等を挙げることができる。また、基材は、必要に応じてアルカリ溶出防止用やガスバリア性付与その他の目的の表面処理を施したものであってもよい。
【0071】
またさらに、基材表面と上記導電性可変層との密着性を向上させるために、基材上にアンカー層が形成されていてもよい。このようなアンカー層としては、例えば、シラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
【0072】
なお、上記基材のエネルギー透過性については、導電性可変層に対して光触媒の作用を及ぼす際の、エネルギー照射方向により適宜選択される。例えば上記導電性可変層側からエネルギーが照射される場合には、基材にエネルギー透過性は必要とされない。一方、上記エネルギー照射が基材側からエネルギー照射が行われる場合には、上記基材にエネルギーに対する透過性が必要とされることとなる。
【0073】
3.導電性可変積層体
次に、本発明の導電性可変積層体について説明する。本発明の導電性可変積層体は、上記基材と、上記導電性可変層とを有するものであれば、特に限定されるものではなく、必要に応じて、例えば基材上に形成された遮光部等、適宜他の部材を有していてもよい。
【0074】
C.導電性パターン形成体
次に、本発明の導電性パターン形成体について説明する。本発明の導電性パターン形成体は、上述した導電性可変積層体の上記導電性可変層が、導電性を有する導電性パターンと、絶縁性の絶縁性パターンとを有することを特徴とするものである。
【0075】
本発明の導電性パターン形成体は、例えば図4に示すように、上述した基材1および導電性可変層2を有する導電性可変積層体の導電性可変層2が、導電性を有する導電性パターン3と、絶縁性を有する絶縁性パターン4とを有することを特徴とするものである。
【0076】
本発明によれば、上記導電性パターンと絶縁性パターンとを有することから、上記導電性パターンおよび絶縁性パターンの導電性および絶縁性を利用して、配線基板や有機EL素子等、種々の用途に使用可能な導電性パターン形成体とすることができる。
【0077】
また、本発明によれば、上記導電性可変層に対してパターン状にエネルギー照射に伴う光触媒の作用を及ぼすことにより、それぞれのパターンが形成されたものとすることができる。すなわち、導電性可変層に光触媒の作用が及ぼされ、導電性が発現した領域が導電性パターン、導電性可変層に光触媒の作用が及ぼされておらず、導電性が変化していない領域が絶縁性パターンとすることができるのである。したがって、本発明によれば、上記導電性パターンおよび絶縁性パターンが、特別な装置や工程等を必要とすることなく、簡易な工程で高精細に形成されたものとすることができ、製造効率やコスト等の面からも好ましい導電性パターン形成体とすることができる。
【0078】
以下、本発明の導電性パターン形成体の導電性パターンおよび絶縁性パターンについて説明する。なお、本発明に用いられる基材、および導電性可変層については、上述した「B.導電性可変積層体」の項で説明したものと同様であるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0079】
1.導電性パターン
まず、本発明において、導電性可変層に形成されている導電性パターンについて説明する。上記導電性パターンは、導電性可変層が導電性を有している領域であり、体積抵抗が1.0×1010Ωcm以下、中でも1.0×10Ωcm以下とされた領域であることが好ましい。これにより、導電性パターンを、例えば配線基板の配線等として用いることが可能となり、本発明の導電性パターン積層体を種々の用途に用いることが可能となるからである。
【0080】
また、上記導電性パターンの形状は、導電性パターン形成体の種類や用途等に応じて適宜選択される。なお、上記体積抵抗は、上述した方法により測定することができる。
【0081】
2.絶縁性パターン
次に、本発明において、導電性可変層に形成されている絶縁性パターンについて説明する。上記絶縁性パターンは、導電性可変層が絶縁性を有している領域であり、通常体積抵抗が1.0×1011Ωcm以上、中でも1.0×1012Ωcm以上とされた領域であることが好ましい。これにより、絶縁性パターンの絶縁性が高い、高品質な導電性パターン積層体とすることができるからである。上記体積抵抗は、上述した方法により測定される値である。
【0082】
なお、このような絶縁性パターンは、上記導電性可変層のうち、上記導電性パターンが形成されていない領域とされる。
【0083】
3.導電性パターン形成体
本発明の導電性パターン形成体は、上述した導電性可変積層体の導電性可変層が上記導電性パターンおよび絶縁性パターンを有するものであれば、特に限定されるものではなく、必要に応じて、例えば遮光部等、他の部材が形成されているもの等であってもよい。また、本発明の導電性パターン形成体は、例えば上記導電性パターンを配線として用いる配線基板や、上記導電性パターン上に有機EL層を形成する有機EL素子等に用いられる。
【0084】
以下、本発明における上記導電性パターンおよび絶縁性パターンの形成方法について説明する。
【0085】
(導電性パターンおよび絶縁性パターンの形成方法)
本発明における導電性パターンおよび絶縁性パターンの形成方法は、2つの態様がある。第1の態様としては、上述した導電性可変積層体中に光触媒が含有されている場合であり、第2の態様としては、上記導電性可変積層体中に光触媒が含有されていない場合である。以下、それぞれの態様ごとにわけて説明する。
【0086】
(1)第1の態様
まず、上記導電性可変積層体中に、光触媒が含有されている場合の導電性パターンおよび絶縁性パターンの形成方法について説明する。上記導電性可変積層体中に、光触媒が含有されている場合、すなわち上記導電性可変層中に光触媒が含有されている場合、または上記導電性可変層と基材との間に光触媒含有層が形成されている場合等には、導電性可変積層体の導電性可変層に、パターン状にエネルギーを照射することにより、導電性パターンおよび絶縁性パターンを形成することができる。
【0087】
この際、照射されるエネルギーは、上記光触媒を励起させて、上記導電性無機材料の周囲に付着した有機材料を除去することが可能なものであればいかなるエネルギー線の照射をも含む概念であり、可視光の照射に限定されるものではない。
【0088】
通常このようなエネルギー照射に用いられる光の波長は、400nm以下、好ましくは150nm〜380nmの範囲から設定される。これは、導電性可変層に用いられる好ましい光触媒が二酸化チタンであり、この二酸化チタンにより光触媒作用を活性化させるエネルギーとして、上述した波長の光が好ましいからである。
【0089】
このようなエネルギー照射に用いることができる光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、キセノンランプ、エキシマランプ、その他種々の光源を挙げることができる。また、上述したような光源を用い、フォトマスクを介したパターン照射により行う方法の他、エキシマ、YAG等のレーザを用いてパターン状に描画照射する方法を用いることも可能である。
【0090】
また、エネルギー照射に際してのエネルギーの照射量は、導電性無機材料に付着した有機材料が光触媒の作用により除去されるのに必要な照射量とする。この際、導電性可変層を加熱しながらエネルギー照射することにより、酸化分解力を上昇させることが可能となり、効率的に導電性を変化させることができる点で好ましい。具体的には30℃〜80℃の範囲内で加熱することが好ましい。
【0091】
また、上記エネルギーの照射方向は特に限定されるものではなく、例えば基材側からであってもよく、また導電性可変層側からであってもよい。
【0092】
(2)第2の態様
次に、上記導電性可変積層体中に、光触媒が含有されていない場合の導電性パターンおよび絶縁性パターンの形成方法について説明する。上記導電性可変積層体中に光触媒が含有されていない場合には、上述したように、光触媒を含有する光触媒含有層と、上記導電性可変層とを対向させて配置し、エネルギーを照射することにより、上記導電性パターンおよび絶縁性パターンを形成することができる。
【0093】
このような導電性パターンおよび絶縁性パターンの形成に用いられる光触媒含有層を有する光触媒含有層側基板としては、通常、基体と、その基体上に光触媒含有層が形成されているものとすることができる。なお、上記光触媒含有層上、または基体上に遮光部が形成されていてもよい。この場合、光触媒含有層側基板側から全面にエネルギーを照射することにより、フォトマスク等を用いることなく、導電性パターンおよび絶縁性パターンを形成することができる、という利点を有する。以下、このような光触媒含有層側基板に用いられる基体や光触媒含有層、および光触媒含有層側基板を用いたエネルギー照射方法について説明する。
【0094】
a.光触媒含有層
まず、光触媒含有層側基板に用いられる光触媒含有層について説明する。本態様に用いられる光触媒含有層は、導電性可変層に導電性を発現させることが可能な構成であれば、特に限定されるものではなく、光触媒とバインダとから構成されているものであってもよく、光触媒単体で製膜されたものであってもよい。また、その表面の特性は特に親液性であっても撥液性であってもよい。
【0095】
また例えば図3(a)に示すように、上記光触媒含有層22が基体21上に全面に形成されたものであってもよく、また例えば図5に示すように、基体21上に、光触媒含有層22がパターン状に形成されたものであってもよい。このように光触媒含有層をパターン状に形成することにより、エネルギー照射の際に、フォトマスク等を用いる必要がない、という利点を有する。この光触媒処理層のパターニング方法は、特に限定されるものではなく、例えばフォトリソグラフィー法等により行うことが可能である。
【0096】
また本態様に用いられる光触媒含有層は、光触媒単独で形成されたものであってもよく、バインダと混合して形成されたものであってもよい。また、本態様で用いられる光触媒やバインダとしては、上述した「A.導電性可変組成物」中に含有される光触媒やバインダと同様とすることができる。
【0097】
また上記光触媒含有層の形成方法としては、上記光触媒含有層が光触媒とバインダとを含有する場合には、上述した「B.導電性可変積層体」の導電性可変層の形成方法と同様とすることができる。
【0098】
また光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法としては、例えば、スパッタリング法、CVD法、真空蒸着法等の真空製膜法を用いる方法を挙げることができる。真空製膜法により光触媒含有層を形成することにより、均一な膜でかつ光触媒のみを含有する光触媒含有層とすることが可能であり、これにより導電性可変層の導電性を均一に変化させることが可能であり、またバインダを用いる場合と比較して効率的に導電性可変層の導電性を変化させることが可能となる。
【0099】
また、光触媒のみからなる光触媒含有層の形成方法の他の例としては、例えば光触媒が二酸化チタンの場合は、基材上に無定形チタニアを形成し、次いで焼成により結晶性チタニアに相変化させる方法等が挙げられる。ここで用いられる無定形チタニアとしては、例えば四塩化チタン、硫酸チタン等のチタンの無機塩の加水分解、脱水縮合、テトラエトキシチタン、テトライソプロポキシチタン、テトラ−n−プロポキシチタン、テトラブトキシチタン、テトラメトキシチタン等の有機チタン化合物を酸存在下において加水分解、脱水縮合によって得ることができる。次いで、400℃〜500℃における焼成によってアナターゼ型チタニアに変性し、600℃〜700℃の焼成によってルチル型チタニアに変性することができる。
【0100】
b.基体
次に、光触媒含有層側基板に用いられる基体について説明する。本態様に用いられる基体を構成する材料は、エネルギーの照射方向等により適宜選択される。このような基体としては、可撓性を有するもの、例えば樹脂製フィルム等であってもよいし、可撓性を有さないもの、例えばガラス基板等であってもよい。これは、エネルギー照射方法により適宜選択されるものである。
【0101】
なお、基体表面と光触媒含有層との密着性を向上させるために、基体上にアンカー層を形成するようにしてもよい。このようなアンカー層としては、例えば、シラン系、チタン系のカップリング剤等を挙げることができる。
【0102】
c.エネルギー照射
次に、本態様におけるエネルギー照射について説明する。本態様においては、上記導電性可変層と、上記光触媒含有層とを所定の間隙をおいて配置し、所定の方向からエネルギーを照射することにより、導電性可変層上に導電性パターンおよび絶縁性パターンを形成することができる。
【0103】
上記の配置とは、実質的に光触媒の作用が導電性可変層表面に及ぶような状態で配置された状態をいうこととし、実際に物理的に接触している状態の他、所定の間隔を隔てて上記光触媒含有層と導電性可変層とが配置された状態とする。この間隙は、200μm以下であることが好ましい。
【0104】
本態様において上記間隙は、パターン精度が極めて良好であり、光触媒の感度も高く、したがって導電性可変層の導電性変化の効率が良好である点を考慮すると特に0.2μm〜10μmの範囲内、好ましくは1μm〜5μmの範囲内とすることが好ましい。このような間隙の範囲は、特に間隙を高い精度で制御することが可能である小面積の導電性可変層に対して特に有効である。
【0105】
一方、例えば300mm×300mm以上といった大面積の導電性可変層に対して処理を行う場合は、接触することなく、かつ上述したような微細な間隙を光触媒含有層側基板と導電性可変層との間に形成することは極めて困難である。したがって、導電性可変層が比較的大面積である場合は、上記間隙は、10〜100μmの範囲内、特に50〜75μmの範囲内とすることが好ましい。間隙をこのような範囲内とすることにより、パターンがぼやける等のパターン精度の低下の問題や、光触媒の感度が悪化して導電性変化の効率が悪化する等の問題が生じることなく、さらに導電性可変層上の導電性変化にムラが発生しないといった効果を有するからである。
【0106】
このように比較的大面積の導電性可変層をエネルギー照射する際には、エネルギー照射装置内の光触媒含有層側基板と導電性可変層との位置決め装置における間隙の設定を、10μm〜200μmの範囲内、特に25μm〜75μmの範囲内に設定することが好ましい。設定値をこのような範囲内とすることにより、パターン精度の大幅な低下や光触媒の感度の大幅な悪化を招くことなく、かつ光触媒含有層側基板と導電性可変層とが接触することなく配置することが可能となるからである。
【0107】
このように光触媒含有層と導電性可変層表面とを所定の間隔で離して配置することにより、酸素と水および光触媒作用により生じた活性酸素種が脱着しやすくなる。すなわち、上記範囲より光触媒含有層と導電性可変層との間隔を狭くした場合は、上記活性酸素種の脱着がしにくくなり、結果的に導電性変化速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。また、上記範囲より間隔を離して配置した場合は、生じた活性酸素種が導電性可変層に届き難くなり、この場合も導電性変化の速度を遅くしてしまう可能性があることから好ましくない。
【0108】
本態様においては、このような配置状態は、少なくともエネルギー照射の間だけ維持されればよい。また、本態様における導電性パターンおよび絶縁性パターンの形成の際に用いられるエネルギー等については、上記第1の態様と同様とすることができるので、ここでの詳しい説明は省略する。
【0109】
D.有機EL素子
次に、本発明の有機EL素子について説明する。本発明の有機EL素子は、上述した導電性パターン形成体上に形成された有機EL層を有することを特徴とするものである。
【0110】
本発明の有機EL素子は、例えば図6に示すように、上述した導電性パターン3および絶縁性パターン4が形成された導電性パターン形成体上に有機EL層5が形成されたものである。ここで、上記基材1は、通常、電極層7および絶縁層8を有するものとされる。また通常、上記有機EL層5上には、対向電極層9が形成されることとなる。
【0111】
本発明によれば、上記導電性パターン上に発光層が形成されていることから、有機EL素子の電気特性を向上させることが可能となる。ここで、有機EL素子全面の電気特性を向上させた場合には、動画表示を行なう際、指定された画素以外の画素も発光してしまう場合がある。しかしながら、本発明によれば、上記画素毎に導電性が高いものとすることができることから、指定された画素以外の画素も発光してしまうことを防止することができ、高品質な有機EL素子とすることができるのである。
【0112】
また、本発明においては、上記導電性可変層中に上述したような光触媒が含有されていることから、上記導電性可変層が電子または正孔を輸送する機能を有するものとすることができる。したがって、上記導電性可変層を正孔輸送層または電子輸送層として用いることが可能となるという利点を有する。
【0113】
以下、本発明の有機EL素子の各構成について説明する。
【0114】
1.導電性可変層
本発明の有機EL素子に用いられる導電性可変層としては、上述した導電性可変組成物を膜状化したものであって、上記導電性パターンおよび絶縁性パターンを有するものである。このような導電性可変層としては、上述した「B.導電性可変積層体」および「C.導電性パターン形成体」で説明したような導電性可変層、導電性パターン、および絶縁性パターンと同様とすることができる。
【0115】
ここで、本発明においては、上記導電性可変層が、上述したようにバインダとして、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により液体との接触角が低下するようなものを含有していることが好ましい。これにより、上記導電性パターンは、絶縁性パターンと比較して濡れ性が低下しているものとすることができ、この濡れ性の差を利用して、導電性パターン上に、高精細に後述する有機EL層を形成することが可能となるからである。
【0116】
このような導電性可変層の導電性パターンは、表面張力40mN/mの液体との接触角が9°以下、好ましくは表面張力50mN/mの液体との接触角が10°以下、特に表面張力60mN/mの液体との接触角が10°以下の濡れ性を示すことが好ましい。導電性パターン、すなわち親液性領域における液体との接触角が高いと、後述する有機EL層を形成する際に、この部分での有機EL層形成用塗工液の広がりが劣る可能性があり、有機EL層、特に発光層の欠け等の問題が生じる可能性があるからである。
【0117】
一方、絶縁性パターン、すなわち撥水性領域においては、表面張力40mN/mの液体との接触角が10°以上、好ましくは表面張力30mN/mの液体との接触角が10°以上、特に表面張力20mN/mの液体との接触角が10°以上の濡れ性を示すことが好ましい。絶縁性パターンは、撥液性が要求される部分であることから、液体との接触角が小さい場合は、撥液性が十分でなく、有機EL層を形成する際に、パターニング特性が低下する可能性があるからである。
【0118】
なお、ここでいう液体との接触角は、種々の表面張力を有する液体との接触角を接触角測定器(協和界面科学(株)製CA−Z型)を用いて測定(マイクロシリンジから液滴を滴下して30秒後)し、その結果から、もしくはその結果をグラフにして得たものである。また、この測定に際して、種々の表面張力を有する液体としては、純正化学株式会社製のぬれ指数標準液を用いた。
【0119】
また、このような導電性可変層の厚みは、10nm〜1000nmであることが好ましく、中でも10nm〜500nm、特に10nm〜200nmの範囲内であることが好ましい。導電性可変層が薄すぎると、上記導電性パターンに導電性を発現させたり、濡れ性を変化させることが困難になる場合があるからである。逆に、導電性可変層が厚すぎると正孔または電子の輸送を阻害し、有機EL素子の電気特性に悪影響を及ぼす可能性があるからである。
【0120】
2.有機EL層
本発明に用いられる有機EL層は、少なくとも発光層を含む1層もしくは複数層の有機層から構成されるものである。すなわち、有機EL層とは、少なくとも発光層を含む層であり、その層構成が有機層1層以上の層をいう。通常、塗布によるウェットプロセスで有機EL層を形成する場合は、溶媒との関係で多数の層を積層することが困難であることから、1層もしくは2層の有機層で形成される場合が多いが、有機材料を工夫したり、真空蒸着法を組み合わせたりすることにより、さらに多数層とすることも可能である。
【0121】
発光層以外に有機EL層内に形成される有機層としては、正孔注入層や電子注入層といった電荷注入層を挙げることができる。さらに、その他の有機層としては、発光層に正孔を輸送する正孔輸送層、発光層に電子を輸送する電子輸送層といった電荷輸送層を挙げることができるが、通常これらは上記電荷注入層に電荷輸送の機能を付与することにより、電荷注入層と一体化される場合が多い。その他、有機EL層内に形成される有機層としては、キャリアブロック層のような正孔あるいは電子の突き抜けを防止し、再結合効率を高めるための層等を挙げることができる。
【0122】
本発明において、上述したように上記導電性可変層が正孔注入性もしくは正孔輸送性を有していることから、導電性可変層が例えば正孔注入層もしくは正孔輸送層、または正孔注入機能および正孔輸送機能の両機能を有する単一の層からなる正孔注入輸送層としての役割を兼ねることができる。したがって、有機EL層として、正孔注入層、正孔輸送層、または正孔注入機能および正孔輸送機能を有する単一の正孔注入輸送層を設けなくてもよい。
【0123】
以下、このような有機EL層の各構成について説明する。
【0124】
(1)発光層
本発明における有機EL層の必須構成である発光層としては、例えば色素系発光材料、金属錯体系発光材料、高分子系発光材料等の発光材料を用いることができる。
【0125】
色素系発光材料としては、シクロペンタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、トリフェニルアミン誘導体、オキサジアゾール誘導体、ピラゾロキノリン誘導体、ジスチリルベンゼン誘導体、ジスチリルアリーレン誘導体、シロール誘導体、チオフェン環化合物、ピリジン環化合物、ペリノン誘導体、ペリレン誘導体、オリゴチオフェン誘導体、トリフマニルアミン誘導体、オキサジアゾールダイマー、ピラゾリンダイマーなどを挙げることができる。
【0126】
また、金属錯体系発光材料としては、アルミキノリノール錯体、ベンゾキノリノールベリリウム錯体、ベンゾオキサゾール亜鉛錯体、ベンゾチアゾール亜鉛錯体、アゾメチル亜鉛錯体、ポルフィリン亜鉛錯体、ユーロビウム錯体等、中心金属にAl、Zn、Be等または、Tb、Eu、Dy等の希土類金属を有し、配位子にオキサジアゾール、チアジアゾール、フェニルピリジン、フェニルベンゾイミダゾール、キノリン構造等を有する金属錯体を挙げることができる。
【0127】
さらに、高分子系発光材料としては、ポリパラフェニレンビニレン誘導体、ポリチオフェン誘導体、ポリパラフェニレン誘導体、ポリシラン誘導体、ポリアセチレン誘導体、ポリビニルカルバゾール等、ポリフルオレン誘導体、ポリキノキサリン誘導体、およびそれらの共重合体等を挙げることができる。
【0128】
上記発光層中には、発光効率の向上、発光波長を変化させる等の目的でドーピング剤を添加してもよい。このようなドーピング剤としては、例えば、ペリレン誘導体、クマリン誘導体、ルブレン誘導体、キナクリドン誘導体、スクアリウム誘導体、ポルフィリン誘導体、スチリル系色素、テトラセン誘導体、ピラゾリン誘導体、デカシクレン、フェノキサゾン、キノキサリン誘導体、カルバゾール誘導体、フルオレン誘導体を挙げることができる。
【0129】
発光層の厚みとしては、電子と正孔との再結合の場を提供して発光する機能を発現することができる厚みであれば特に限定されるものではなく、例えば1nm〜500nm程度とすることができる。
【0130】
上記発光層の形成方法としては、特に限定されるものではなく、一般的な発光層の形成方法、例えばフォトリソグラフィー法や印刷法等により行われるものであってもよい。また上述したように、上記導電性パターンの液体との接触角が、絶縁性パターンの液体との接触角と比較して低下している場合には、上記材料を含有する発光層形成用塗工液を導電性パターン上に塗布することにより、形成することができる。このような発光層形成用塗工液の塗布方法としては、上述した特性変化パターン層上に塗布することが可能な方法であれば特に限定されるものではないが、発光層を均一かつ高精細に形成することが可能な方法であることが好ましい。このような塗布方法としては、例えばディップコート法、ロールコート法、ブレードコート法、スピンコート法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ワイヤーバーコート法、キャスト法、インクジェット法、LB法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法等を挙げることができる。
【0131】
本発明においては、上述したように、導電性可変層が例えば正孔注入層、正孔輸送層、または正孔注入機能および正孔輸送機能を有する単一の層からなる正孔注入輸送層としての役割を兼ねている場合には、導電性可変層上に、有機EL層として発光層がパターン状に形成されていることが好ましい。発光層が赤・緑・青の3色の発光層となるようにパターン状に形成されていることにより、カラー表示が可能な有機EL素子とすることができるからである。
【0132】
(2)電荷注入輸送層
本発明においては、上記電極層または対向電極層と発光層との間に電荷注入輸送層が形成されていてもよい。ここでいう電荷注入輸送層とは、上記発光層に電極層または対向電極層からの電荷を安定に輸送する機能を有するものであり、このような電荷注入輸送層を発光層と電極層または対向電極層との間に設けることにより、発光層への電荷の注入が安定化し、発光効率を高めることができる。
【0133】
このような電荷注入輸送層としては、陽極から注入された正孔を発光層内へ輸送する正孔注入輸送層、陰極から注入された電子を発光層内へ輸送する電子注入輸送層とがある。以下、正孔注入輸送層および電子注入輸送層について説明する。
【0134】
(i)正孔注入輸送層
本発明に用いられる正孔注入輸送層としては、発光層に正孔を注入する正孔注入層、および正孔を輸送する正孔輸送層のいずれか一方であってもよく、正孔注入層および正孔輸送層が積層されたものであってもよく、または、正孔注入機能および正孔輸送機能の両機能を有する単一の層であってもよい。
【0135】
本発明においては、通常、基材が有する電極層が陽極となることから、正孔注入輸送層は発光層と電極層との間に形成される。
【0136】
正孔注入輸送層に用いられる材料としては、陽極から注入された正孔を安定に発光層内へ輸送することができる材料であれば特に限定されるものではなく、上記発光層の発光材料に例示した化合物の他、フェニルアミン系、スターバースト型アミン系、フタロシアニン系、酸化バナジウム、酸化モリブデン、酸化ルテニウム、酸化アルミニウム、酸化チタン等の酸化物、アモルファスカーボン、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリフェニレンビニレン誘導体等を用いることができる。具体的には、ビス(N−(1−ナフチル−N−フェニル)ベンジジン(α−NPD)、4,4,4−トリス(3−メチルフェニルフェニルアミノ)トリフェニルアミン(MTDATA)、ポリ3,4エチレンジオキシチオフェン−ポリスチレンスルホン酸(PEDOT−PSS)、ポリビニルカルバゾール(PVCz)等が挙げられる。
【0137】
また、正孔注入輸送層の厚みとしては、陽極から正孔を注入し、発光層へ正孔を輸送する機能が十分に発揮される厚みであれば特に限定されないが、具体的には0.5nm〜1000nmの範囲内、中でも10nm〜500nmの範囲内であることが好ましい。
【0138】
(ii)電子注入輸送層
本発明に用いられる電子注入輸送層としては、発光層に電子を注入する電子注入層、および電子を輸送する電子輸送層のいずれか一方であってもよく、電子注入層および電子輸送層が積層されたものであってもよく、または、電子注入機能および電子輸送機能の両機能を有する単一の層であってもよい。
【0139】
本発明においては、通常、対向電極層が陰極とされることから、電子注入輸送層は発光層と対向電極層との間に形成される。
【0140】
電子注入層に用いられる材料としては、発光層内への電子の注入を安定化させることができる材料であれば特に限定されるものではなく、上記発光層の発光材料に例示した化合物の他、アルミリチウム合金、フッ化リチウム、ストロンチウム、酸化マグネシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ストロンチウム、フッ化カルシウム、フッ化バリウム、酸化アルミニウム、酸化ストロンチウム、カルシウム、ポリメチルメタクリレート、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、リチウム、セシウム、フッ化セシウム等のようにアルカリ金属類、およびアルカリ金属類のハロゲン化物、アルカリ金属の有機錯体等を用いることができる。
【0141】
上記電子注入層の厚みとしては、電子注入機能が十分に発揮される厚みであれば特に限定されない。
【0142】
また、電子輸送層に用いられる材料としては、電極層もしくは対向電極層から注入された電子を発光層内へ輸送することが可能な材料であれば特に限定されるものではなく、例えばバソキュプロイン、バソフェナントロリン、フェナントロリン誘導体、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、またはトリス(8−キノリノラト)アルミニウム錯体(Alq)等を挙げることができる。
【0143】
上記電子輸送層の厚みとしては、電子輸送機能が十分に発揮される厚みであれば特に限定されない。
【0144】
さらに、電子注入機能および電子輸送機能の両機能を有する単一の層からなる電子注入輸送層としては、電子輸送性の有機材料にアルカリ金属あるいはアルカリ土類金属をドープした金属ドープ層を形成し、これを電子注入輸送層とすることができる。上記電子輸送性の有機材料としては、例えばバソキュプロイン、バソフェナントロリン、フェナントロリン誘導体等を挙げることができ、ドープする金属としては、Li、Cs、Ba、Sr等が挙げられる。
【0145】
上記の単一の層からなる電子注入輸送層の厚みとしては、電子注入機能および電子輸送機能が十分に発揮される厚みであれば特に限定されない。
【0146】
3.基材
次に、本発明の有機EL素子に用いられる基材について説明する。本発明に用いられる基材は、上述した「B.導電性可変積層体」の基材の項で説明したような基材上に電極層や絶縁層が形成されたものとされる。このような基材に形成される電極層は、陽極であっても陰極であってもよいが、通常は陽極として形成される。
【0147】
また、上記電極層は透明性を有していても有していなくてもよく、光の取出し面あるいは受取り面等によって適宜選択される。本発明の有機EL素子の例えば電極層側から光を取り出す場合は、電極層は透明または半透明である必要がある。
【0148】
陽極としては、正孔が注入し易いように仕事関数の大きい導電性材料を用いることが好ましく、具体的にはITO、酸化インジウム、金のような仕事関数の大きい金属、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリアルキルチオフェン誘導体、ポリシラン誘導体のような導電性高分子等を挙げることができる。
【0149】
また、電極層は抵抗が小さいことが好ましく、一般には金属材料が用いられるが、有機化合物または無機化合物を用いてもよい。
【0150】
このような電極層の形成方法としては、一般的な電極の形成方法を用いることができ、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD法や、CVD法などを挙げることができる。また、電極層のパターニング方法としては、所望のパターンに精度よく形成することができる方法であれば特に限定されないが、具体的にはフォトリソグラフィー法等を挙げることができる。
【0151】
また、上記絶縁層としては、パターン状に形成された電極層間に形成されるものである。一般的には、絶縁層は電極層の端部を覆うように形成される。
【0152】
この絶縁層は、電極層から有機EL層への電荷の供給を止めるために設けられるものである。また、絶縁層が形成された部分は、発光しないものとすることができる。
【0153】
このような絶縁層としては、感光性ポリイミド樹脂、アクリル系樹脂等の光硬化型樹脂、または熱硬化型樹脂、および無機材料等を用いることができる。
【0154】
また、絶縁層の形成方法としては、フォトリソグラフィー法、印刷法等の一般的な方法を用いることができる。
【0155】
4.有機EL素子
本発明の有機EL素子は、上記基材、導電性パターンおよび絶縁性パターンを有する導電性可変層、および上記有機EL層を有するものであれば、特に限定されるものではなく、必要に応じて適宜他の層を有していてもよい。本発明においては、通常、上記有機EL層上に対向電極層が形成されることとなる。以下、このような対向電極層について説明する。
【0156】
(対向電極層)
本発明に用いられる対向電極層は、有機EL層上に形成されるものであり、上記電極層に対向する電極である。本発明に用いられる対向電極層は、陽極であっても陰極であってもよいが、通常は陰極として形成される。
【0157】
また、対向電極層は、透明性を有していても有していなくてもよく、光の取出し面あるいは受取り面等によって適宜選択される。例えば対向電極層側から光を取り出す場合は、対向電極層は透明または半透明である必要がある。
【0158】
陰極としては、電子が注入しやすいように仕事関数の小さい導電性材料を用いることが好ましく、例えばMgAg等のマグネシウム合金、AlLi、AlCa、AlMg等のアルミニウム合金、Li、Caをはじめとするアルカリ金属類およびアルカリ土類金属類、または、アルカリ金属類およびアルカリ土類金属類の合金などが挙げられる。
【0159】
また、対向電極層は抵抗が小さいことが好ましく、一般には金属材料が用いられるが、有機化合物または無機化合物を用いてもよい。
【0160】
なお、対向電極層のその他の点については、上述した基材上に形成される電極層と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0161】
また、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0162】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
【0163】
微量の関東化学(株)製テトラヒドロフランに溶解させた東京化成工業(株)製ピロ炭酸ジブチル5重量部と、日本ペイント(株)製銀コロイド、固形分95重量部とを、12時間室温で攪拌した。その後、不要な微量の沈殿物や凝集物を、減圧濾過により除去し、ジブトキシカルボニル化処理された銀分散液を得た。
【0164】
この銀分散液と石原産業(株)製酸化チタン塗布液(TKS−201)とが、固形分比で、2:8重量比となるように、銀分散液を攪拌しながら徐々に加え、さらに、不要な微量の沈殿物や凝集物を、減圧濾過により除去し、求める導電性可変材料溶液を得た。
【0165】
上記溶液を、洗浄したガラス基板上に、スピンコート法により塗布、成膜し、130℃のホットプレート上で30分間乾燥させ、膜厚80nmの導電性可変層とした。
【0166】
この露光前の導電性可変層に対し、三菱油化(株)製Hiresta HT-210を用い、印加電圧10Vにて表面抵抗測定を行ったところ、測定限界以上(1.0×1013Ω以上)の高抵抗値が確認された。
【0167】
上記導電性可変層に対し、UV照射装置により、紫外線を2.5J/m照射した後、同様に表面抵抗値を測定した結果、1.8×10Ωの抵抗値が得られ、紫外線照射により、抵抗値が低下(導電性が向上)したことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0168】
【図1】本発明の導電性可変積層体の一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の導電性可変積層体のパターニング方法の一例を説明する説明図である。
【図3】本発明の導電性可変積層体のパターニング方法の他の例を説明する説明図である。
【図4】本発明の導電性パターン形成体の一例を示す概略断面図である。
【図5】本発明の導電性パターン形成体の形成に用いられる光触媒含有層側基板の一例を示す概略断面図である。
【図6】本発明の有機EL素子の一例を示す概略断面図である。
【符号の説明】
【0169】
1 …基材
2 …導電性可変層
3 …導電性パターン
4 …絶縁性パターン
5 …有機EL層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性無機材料、および前記導電性無機材料の周囲に付着した有機材料を含有する絶縁性粒子と、光触媒とを含有することを特徴とする導電性可変組成物。
【請求項2】
基材と、前記基材上に形成され、導電性無機材料および前記導電性無機材料の周囲に付着した有機材料を含有する絶縁性粒子を含み、エネルギー照射に伴う光触媒の作用により導電性を発現する導電性可変層とを有することを特徴とする導電性可変積層体。
【請求項3】
前記導電性可変層が、光触媒を含有していることを特徴とする請求項2に記載の導電性可変積層体。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載の導電性可変積層体の前記導電性可変層が、導電性を有する導電性パターンと、絶縁性の絶縁性パターンとを有することを特徴とする導電性パターン形成体。
【請求項5】
請求項4に記載の導電性パターン形成体上に形成された有機エレクトロルミネッセント層を有することを特徴とする有機エレクトロルミネッセント素子。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−278744(P2006−278744A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−95901(P2005−95901)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】