説明

導電性接着剤およびそれを備える半導体装置

【課題】導電性接着剤の熱伝導率の向上を図り、放熱性に優れた導電性接着剤を提供する。
【解決手段】導電性接着剤30は、樹脂33として、エポキシ樹脂よりなる主剤とアミン系樹脂よりなる硬化剤と、これら主剤および硬化剤を混合させるための希釈剤と、さらに8−キノリノールを含み、導電フィラーとしてAgよりなるブロック状もしくはフレーク状の第1のフィラー31と、Agよりなるブロック状もしくはフレーク状をなし第1のフィラー31よりも薄く且つ比表面積の大きな第2のフィラー32とにより構成されるものを含み、導電フィラー31、32の含有率は84wt%以上90wt%以下である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂成分にAgよりなる導電フィラーを含んでなる導電性接着剤、および、そのような導電性接着剤を介して半導体チップをリードフレーム上に接合してなる半導体装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種の半導体装置は、一般にリードフレーム上に、導電性接着剤を介して半導体チップを搭載し、導電性接着剤により半導体チップとリードフレームとを接合してなる。そして、このような導電性接着剤としては下記の特許文献1〜特許文献4に記載のものが提案されている。
【0003】
このものは、回路基板上に電子部品を実装するために使用する導電性接着剤であり、はんだの代替となりうるような良好な接合強度及び接続抵抗特性、優れた印刷性を実現するものである。
【0004】
具体的には、ビスフェノール型エポキシ樹脂に対してビフェニル型エポキシ樹脂と3官能フェノール型エポキシ樹脂とを含有した樹脂よりなる主剤と、アミン系樹脂よりなる硬化剤と、希釈剤と、りん片状のAg粒子よりなる導電フィラーとからなる。
【特許文献1】特開2000−319622号公報
【特許文献2】特開2003−206469号公報
【特許文献3】特開2003−221573号公報
【特許文献4】特開2003−335924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような導電性接着剤を用いて半導体チップをリードフレーム上に接合するにあたって、半導体チップとしてパワー素子などを用いた場合には、半導体チップの熱をリードフレームから放熱する必要がある。この場合、導電性接着剤は、さらなる高放熱性(たとえば5W/mk以上)を満たすことが要求されるが、従来のものでは、不十分である。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、導電性接着剤の熱伝導率の向上を図り、放熱性に優れた導電性接着剤、および、そのような導電性接着剤を備えた半導体装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明者は、上記特許文献1〜4に記載されている導電性接着剤に基づき、鋭意検討を行った。
【0008】
まず、導電性接着剤の樹脂成分としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂よりなる主剤とアミン系またはフェノール系樹脂よりなる硬化剤と、これら主剤および硬化剤を混合させるための希釈剤とを含むものとした。
【0009】
ここで、導電フィラーとしては、従来の鱗片状のものに代えてブロック状もしくはフレーク状のものとした。さらに、導電フィラーを、第1のフィラーとこれよりも薄く且つ比表面積の大きい第2のフィラーとを混合してなるものとした。これは、比較的厚みの大きい第1のフィラーによって熱伝導率を確保し、比表面積の大きい第2のフィラーによってフィラー間の接触面積を増加させることを目的としたものである。
【0010】
そして、熱伝導性を向上させるべく、この樹脂成分に対して、Agよりなる導電フィラーの量を84〜90wt%と多くした。そうしたところ、導電性接着剤の熱伝導率は大きくなり放熱性は向上したが、導電フィラーが多すぎて、ペースト段階での印刷性や硬化後の機械的接着性が低下した。
【0011】
そこで、これら印刷性や接着性を確保するレベルまで希釈剤を添加したところ、今度は、希釈剤が多すぎて、導電フィラーの増加に見合う放熱性が得られないことが、実験的にわかった(後述の図4参照)。
【0012】
このことについて、鋭意検討した結果、8ーキノリノールを添加すれば、希釈剤の量を減らしても、上記印刷性や接着性を確保しつつ導電フィラーの増加に見合った放熱性が得られることが実験的にわかった(後述の図4参照)。これは、8−キノリノール自身が、希釈剤の機能および放熱機能を補填するためと考えられる。本発明は、このような検討の結果、実験的に得られたものである。
【0013】
すなわち本発明では、樹脂(33)は、さらに8−キノリノールを含み、導電フィラーは、Agよりなるブロック状もしくはフレーク状の第1のフィラー(31)と、Agよりなるブロック状もしくはフレーク状をなし第1のフィラー(31)よりも薄く且つ比表面積の大きな第2のフィラー(32)とにより構成されるものであり、導電フィラー(31、32)の含有率が84wt%以上90wt%以下であることを特徴とする。
【0014】
それによれば、導電性接着剤(30)の熱伝導率の向上を図り、放熱性に優れた導電性接着剤(30)を提供することができる。
【0015】
ここで、導電フィラー(31、32)の含有率は、84wt%以上88wt%以下であることが好ましい。
【0016】
また、主剤は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂またはビスフェノールA型エポキシ樹脂であることが好ましい。また、硬化剤は、イミダゾールまたは二核体以上のノボラック型フェノール樹脂であることが好ましい。
【0017】
また、希釈剤は、パラ位のtert−ブチル基を持ったフェニルグリシジルエーテルであることが好ましい。
【0018】
このものは、硬化時にて主剤であるエポキシ樹脂等の反応系材料と反応しこの反応系材料に取り込まれやすいので、通常のPbフリーはんだのはんだリフロー温度である250〜255℃にて揮発しにくく当該温度での重量減少率が小さい。そのため、本導電性接着剤を用いた半導体装置をはんだリフローして、他の部材に接続する時に、希釈剤の揮発による導電性接着剤の破裂を極力防止できる。
【0019】
また、当該導電性接着剤中の第1フィラー(31)の重量をx、第2フィラー(32)の重量をyとすると、第1のフィラー(31)と第2のフィラー(32)との混合比x:yは、80:20〜95:5であることが好ましい。
【0020】
また、第1のフィラー(31)は、平均粒径が1〜20μmであり、比表面積が0.10〜0.50m2/g、タップ密度が5.0〜7.5g/mlであることが好ましい。
【0021】
また、第2のフィラー(32)は、比表面積が0.50〜1.20m2/g、タップ密度が4.0〜6.5g/mlであることが好ましい。
【0022】
また、本発明では、リードフレーム(10)上に、上記特徴を有する導電性接着剤(30)を介して半導体チップ(20)を搭載し、導電性接着剤(30)により半導体チップ(20)とリードフレーム(10)とを接合してなる半導体装置(100)を提供する。それによれば、導電性接着剤(30)の放熱性向上が図られ、半導体チップ(20)からリードフレーム(10)への放熱を促進させることができる。
【0023】
なお、特許請求の範囲およびこの欄で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る半導体装置100の概略断面構成を示す図であり、図2は、図1中の導電性接着剤30の拡大構成を示す図である。
【0025】
この半導体装置100は、アウターリードを持たないQFN(Quad Flat Nonleaded)パッケージの様な小型のモールドパッケージとして構成されており、リードフレーム10のアイランド11上に導電性接着剤30を介して、半導体チップ20が搭載されてなる。
【0026】
リードフレーム10は、半導体チップ20を搭載するアイランド11と、半導体装置100における外部との電気的接続を行うためのリード12とを備えている。リードフレーム10は、たとえば、Cuや42アロイなどの通常のリードフレーム材料よりなり、板材をエッチングやプレスなどによりパターニングしてなる。また、ここでは、リードフレーム10の表面には、Ni粗化Pd−PPFめっきが施されており、その比表面積は1.3〜1.5である。
【0027】
半導体チップ20は、一般的な半導体プロセスにより形成されたもので、たとえば、シリコン半導体よりなるチップに、トランジスタ素子などを形成してなるICチップなどである。
【0028】
ここで、半導体チップ20の裏面とアイランド11とが導電性接着剤30を介して接続されているが、半導体チップ20の裏面には、電極は形成されていなくてもよいし、Au等の電極が形成されていてもよい。
【0029】
また、図1に示されるように、半導体チップ20の表面には、図示しないAlなどの電極が設けられており、この電極とリードフレーム10のリード12とは、AuやAlなどよりなるワイヤ40により結線され、電気的に接続されている。このワイヤ40は、通常のワイヤボンディングなどにより形成されるものである。
【0030】
そして、これらリードフレーム10、半導体チップ20、ワイヤ40は、モールド樹脂50により封止されている。このモールド樹脂50は、エポキシ樹脂などの通常のモールド材料よりなる。
【0031】
ここでは、アイランド11における半導体チップ20側とは反対側の面、および、リード12におけるワイヤ40の接続側とは反対側の面は、モールド樹脂50から露出している。これにより、半導体チップ20の熱が、導電性接着剤30を介してアイランド11の当該反対側の面にて放熱され、また、リード12の当該反対側の面にて、半導体装置100と外部との接続が可能となっている。
【0032】
導電性接着剤30は、図2に示されるように、エポキシ樹脂よりなる主剤と、アミン系またはフェノール系樹脂よりなる硬化剤と、これら主剤および硬化剤を混合させるための希釈剤と、その他、硬化触媒およびカップリング剤とを含有する樹脂33と、この樹脂33に混合された導電フィラー31、32とからなる。
【0033】
これら樹脂33や導電フィラー31、32といった導電性接着剤30の使用材料は、導電フィラー31、32と樹脂33との濡れ性が向上する機能を有すること、高純度で低吸水率となる硬化物となること、耐熱性のある硬化物となること等の特徴を発現するもので、高い接続信頼性を得るようにしたものである。また、作業性、ペースト適性も考慮し選択したものである。
【0034】
このような半導体装置100は、リードフレーム10のアイランド11上に、ペースト状の導電性接着剤30を介して半導体チップ20を搭載し、導電性接着剤30を加熱・硬化して接着を行った後、半導体チップ20とリード12との間で、ワイヤボンディングを行ってワイヤ40による接続を行い、その後、このものを図示しない金型に投入してモールド樹脂50による封止を行うことにより、製造される。
【0035】
次に、本半導体装置100における導電性接着剤30について、さらに述べる。本実施形態の導電性接着剤30は、主剤としてのエポキシ樹脂と、硬化剤としてのアミン系樹脂と、硬化触媒、希釈剤、導電フィラー31、32とを含んでいる。
【0036】
導電フィラー31、32はAgから成るものであり、樹脂33との配合比率は、90/10〜96/4である。特に好ましいものとして、92/8〜94/6としている。これは、硬化物中のAgフィラー含有率を狙い値にするのに最適であるからである。
【0037】
ここで、主剤として使用されるエポキシ樹脂としては、作業性を考慮し液状のビスフェノール型エポキシ樹脂をはじめ、耐熱性を持たすためにビスフェノール樹脂中に固形のビフェニル型エポキシ樹脂および3官能フェノール型エポキシ樹脂を含む液状エポキシ樹脂や、ナフタレン骨格を持つ液状エポキシ樹脂、水添型エポキシ樹脂、脂肪族エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂などを採用することができる。
【0038】
本例では、主剤として、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、または、ビスフェノールA型エポキシ樹脂を採用している。これら両者はどちらを用いてもよい。また、硬化剤としては、イミダゾールまたはフェノール樹脂を用いており、これら両者もどちらを用いてもよい。なお、硬化剤として使用されるフェノール樹脂としては、ビスフェノールF型フェノール樹脂、アリルフェノール樹脂、ノボラック型フェノール樹脂などを採用することができる。
【0039】
また、希釈剤としては、250〜255℃での重量減少率が、たとえば80%以下であるものが好ましい。本例では、希釈剤は、パラ位のtert−ブチル基を持ったフェニルグリシジルエーテル(p−t−butyl phenyl glycidyl ether)を採用している。図3は、このフェニルグリシジルエーテルの化学構造式を示す図である。
【0040】
このパラ位にtert−butylが付いたフェニルグリシジルエーテルは、図3に示されるように、構造的に反応基に立体的阻害がないことから反応性が高く、硬化時に主剤であるエポキシ樹脂等の反応系材料と反応して主剤に取り込まれやすく、未反応の残存稀釈剤が少ない。そのため、通常のPbフリーはんだのはんだリフロー温度である250〜255℃にて、揮発しにくく当該温度での重量減少率が小さい。
【0041】
このことから、本実施形態では、本半導体装置100を上記リード12にてはんだリフローして、他の部材に接続する時に、希釈剤の揮発による導電性接着剤30の破裂、いわゆるポップコーン現象を極力防止できる。
【0042】
また、導電フィラー31、32については、図2に示されるように、ともにAgよりなるブロック状もしくは例えば厚さ1μm以上のフレーク状の第1のフィラー31および第2のフィラー32よりなり、第2のフィラー32は、第1のフィラー31よりも薄く且つ比表面積が大きいものである。比較的厚みの大きい第1のフィラー31は熱伝導率を確保し、比表面積の大きい第2のフィラー32はフィラー間の接触面積を増加させる。
【0043】
また、硬化前の導電性接着剤30、すなわちペーストとしての導電性接着剤30において、当該導電性接着剤30の全体中の導電フィラー31、32の含有率は、84wt%以上90wt%以下であり、84wt%以上88wt%以下が望ましい。特に、熱伝導率5W/m・Kを確保し、高信頼性で接続するためには、86wt%以上88wt%以下が好ましい。
【0044】
また、導電性接着剤30中の第1フィラー31の重量をx、第2フィラー32の重量をyとすると、第1のフィラー31と第2のフィラー32との混合重量比x:yは、80:20〜95:5である。特に、x:y=85:15〜90:10が好ましい。この割合であれば、塗布特性、ディスペンス性を保持しながら、フィラー同士の接触点数が多く、高熱伝導率を実現することができる。
【0045】
また、本実施形態では、第1のフィラー31は、平均粒径が1〜20μmであり、比表面積が0.10〜0.50m2/g、タップ密度が5.0〜7.5g/mlである。好ましくは、比表面積が0.20〜0.40m2/g、タップ密度が5.5〜6.9g/mlである。これは、熱伝導率を確保するためである。
【0046】
また、本実施形態の第2のフィラー32は、比表面積が0.50〜1.20m2/g、タップ密度が4.0〜6.5g/mlである。好ましくは、比表面積が0.60〜0.80m2/g、タップ密度が4.2〜5.8g/mlである。これは、接触点数を多くするためである。
【0047】
そして、本実施形態の導電性接着剤30は、樹脂33として、さらに8−キノリノールを含む。たとえば、8−キノリノールは、硬化前の導電性接着剤30全体中の1wt%程度添加する。この8−キノリノールは、導電フィラー31、32と樹脂33との濡れ性を向上させることにより、ダイマウント時に、フィラー31、32と樹脂33とがはじくことによる流動性不良を防止する。
【0048】
また、フィラー31、32と樹脂33とのなじみが良くなったことにより、ペースト特性にとっては良くない希釈剤の量を0.5wt%〜1wt%程度減らすことが可能となり、熱伝導率の余裕度が上がる。
【0049】
つまり、熱伝導率を向上させるべく導電フィラー31、32を従来よりも増加した導電性接着剤30では、導電フィラーが多すぎることによってペースト印刷性や機械的接着性が低下するが、8−キノリノールは、これら特性の低下を抑制するものである。
【0050】
図4は、本実施形態の導電性接着剤30における8−キノリノールの添加効果について実験調査した結果を示す図である。横軸に導電フィラー31、32の含有量(単位:wt%)、縦軸に硬化後の導電性接着剤30の熱伝導率(単位:W/m・K)を示す。
【0051】
ここで、この調査における主剤、硬化剤、希釈剤、導電フィラー31、32の構成は、上述の範囲のものとし、8−キノリノールを添加したものと、添加しないものとについて、導電フィラー31、32の含有量を変え、熱伝導率を調べた。8−キノリノールの添加量は1wt%とした。また、この図4に示されるサンプルは、印刷性や接着性を適切に確保するだけの量の希釈剤を添加したものである。
【0052】
図4に示されるように、8−キノリノールを添加しないものの場合(8−キノリノール添加無)には、フィラー含有量が84wt%〜88wt%の間にて、導電フィラー31、32の増加に見合う放熱性が得られにくい。これは、希釈剤の量が多すぎるためと考えられる。
【0053】
それに対して、8−キノリノールを添加したものの場合(8−キノリノール添加有)には、フィラー含有量が84wt%〜88wt%の間にて、導電フィラー31、32の増加に伴い直線的に熱伝導率が増加している。つまり、フィラー増加に見合う放熱性が得られている。これは、8−キノリノールの添加により、希釈剤の量を、たとえば6.8wt%から6.3wt%へ減らすことができたためと考えられる。
【0054】
なお、この図4に示されるものと同様の傾向は、上述した主剤、硬化剤、希釈剤、導電フィラー31、32の構成の範囲にて得られる。つまり、本実施形態によれば、導電性接着剤30の熱伝導率の向上を図り、放熱性に優れた導電性接着剤30を提供することができる。
【0055】
また、本実施形態の導電性接着剤30の硬化前または硬化後の物性について、さらに述べる。たとえば、硬化後の導電性接着剤30のガラス転移温度は70〜130℃である。特に、100〜120℃が好ましい。
【0056】
硬化前の導電性接着剤30の粘度は、15〜30Pa・sである。特に、20〜25Pa・sが作業性的にも好ましい。また、硬化前の導電性接着剤30のチクソ指数は、4〜6.5である。特に、5〜6が作業性的にも好ましい。また、硬化前の導電性接着剤30の揮発成分は、リフロー後のポップコーン現象抑制から、7.5%以下であることが好ましい。
【0057】
また、硬化後の導電性接着剤30の弾性率は、25℃で8〜15GPa、200℃で0.4〜1.0GPaである。そうすれば、接着強度良く接続することができる。さらに、25℃で9〜13GPa、200℃で0.6〜0.8GPaが好ましい。また、硬化後の導電性接着剤30の比抵抗は、1×10-4Ω・cm以下である。そうすれば、電気的接続が良好になる。
【0058】
また、硬化前の導電性接着剤30のブリード量は、付近のボンディングパッド汚染等の理由からも、200μm以下であることが好ましい。そうすれば、微細なピッチのパッケージや部品接続の場合でも、隣接するボンディング接続部等を汚染することなく接続することが可能となる。
【0059】
また、硬化前の導電性接着剤30の不純物含有量は、Clイオンが20ppm以下、Naイオンが10ppm以下である。そうすれば、硬化後の樹脂の高純度化が図れ、高信頼性の接続が可能となる。
【0060】
また、硬化後の導電性接着剤30の曲げ強度は、35N/mm2以上である。そうすれば、導電性接着剤の膜強度を高くすることができ、高信頼性の接続が可能となる。また、硬化後の導電性接着剤30の常温せん断強度は10N/mm2以上、高温せん断強度が1N/mm2以上である。そうすれば、常温または高温下でも、高い接続強度を得ることができる。
【0061】
また、硬化後の導電性接着剤30の線膨張係数は、ガラス転移点以下で30〜50ppm、ガラス転移点以上で45〜125ppmである。そうすれば、高い接続信頼性を得ることができる。特に、ガラス転移点以下で35〜45ppm、ガラス転移点以上で65〜90ppmが好ましい。
【0062】
また、導電性接着剤30の硬化条件は、135〜155℃で60〜70分である。特に推奨条件としては、145℃で60分が好ましい。また、上記図1に示される硬化後の導電性接着剤30においては、その厚さはたとえば25μm以上である。
【0063】
また、上記図4にも示したように、本導電性接着剤30の熱伝導率は、2W/m・K以上、特にフィラー含有量:86wt%以上で5W/m・K以上であり、実製品構造で熱抵抗を確認すると、従来の導電性接着剤よりも1℃/Wの低減効果がある。
【0064】
また、導電性接着剤30には、導電フィラー31、32と樹脂33との濡れ性を向上する添加剤を加えてもよい。たとえば、シリコーン系やフッ素系のレベリング剤を添加することにより、硬化時の低粘度域が長くなり、導電性接着剤30の流動性を向上させて信頼性の高い接続が可能となる。
【0065】
なお、本実施形態の半導体装置100は、リードフレーム10上に、導電性接着剤30を介して半導体チップ20を搭載し、導電性接着剤30により半導体チップ20とリードフレーム10とを接合してなり、導電性接着剤30は、樹脂33として、エポキシ樹脂よりなる主剤とアミン系樹脂よりなる硬化剤と、これら主剤および硬化剤を混合させるための希釈剤とを含み、導電フィラー31、32としてAgよりなる粒子を含むものとして構成されている。
【0066】
そして、本実施形態ではこのような半導体装置100において、用いる硬化前の導電性接着剤30の樹脂33は、さらに8−キノリノールを含み、導電フィラーは、Agよりなるフレーク状の第1のフィラー31と、Agよりなるフレーク状をなし第1のフィラー31よりも薄く且つ比表面積の大きな第2のフィラー32とにより構成され、導電フィラーの含有率が84〜90wt%である。
【0067】
そして、導電性接着剤30の放熱性向上が図られるため、半導体チップ20からリードフレーム10への放熱が促進される。なお、上記導電性接着剤30を硬化させた本半導体装置100における硬化後の導電性接着剤30では、導電フィラーの含有率は90wt%以上96wt%以下である。
【0068】
(他の実施形態)
また、上記実施形態は、QFNの様な小型ICパッケージについて導電性接着剤30を適用した例を述べたが、それ以外にも、導電性接着剤30を介して2つの部材を接着するものであればよく、たとえば、他のハイブリッドICやモールドIC等にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】本発明の実施形態に係る半導体装置の概略断面図である。
【図2】図1中の導電性接着剤の拡大図である。
【図3】p−t−butyl phenyl glycidyl etherの化学構造式を示す図である。
【図4】上記実施形態における8−キノリノールの添加効果の調査結果を示す図である。
【符号の説明】
【0070】
10…リードフレーム、20…半導体チップ、30…導電性接着剤、
31…導電性接着剤の第1のフィラー、32…導電性接着剤の第2のフィラー、
33…導電性接着剤の樹脂、100…半導体装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂(33)として、エポキシ樹脂よりなる主剤とアミン系またはフェノール系樹脂よりなる硬化剤と、これら主剤および硬化剤を混合させるための希釈剤とを含み、導電フィラーとしてAgよりなる粒子(31、32)を含む導電性接着剤において、
前記樹脂(33)は、さらに8−キノリノールを含み、
前記導電フィラーは、Agよりなるブロック状もしくはフレーク状の第1のフィラー(31)と、Agよりなるブロック状もしくはフレーク状をなし前記第1のフィラー(31)よりも薄く且つ比表面積の大きな第2のフィラー(32)とにより構成されるものであり、
前記導電フィラー(31、32)の含有率が84wt%以上90wt%以下であることを特徴とする導電性接着剤。
【請求項2】
前記導電フィラー(31、32)の含有率は84wt%以上88wt%以下であることを特徴とする請求項1に記載の導電性接着剤。
【請求項3】
前記主剤は、ビスフェノールF型エポキシ樹脂またはビスフェノールA型エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性接着剤。
【請求項4】
硬化剤は、イミダゾールまたは二核体以上のノボラック型フェノール樹脂であることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1つに記載の導電性接着剤。
【請求項5】
前記希釈剤は、パラ位のtert−ブチル基を持ったフェニルグリシジルエーテルであることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1つに記載の導電性接着剤。
【請求項6】
当該導電性接着剤中の前記第1フィラー(31)の重量をx、前記第2フィラー(32)の重量をyとすると、前記第1のフィラー(31)と前記第2のフィラー(32)との混合比x:yは、80:20〜95:5であることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1つに記載の導電性接着剤。
【請求項7】
前記第1のフィラー(31)は、平均粒径が1〜20μmであり、比表面積が0.10〜0.50m2/g、タップ密度が5.0〜7.5g/mlであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1つに記載の導電性接着剤。
【請求項8】
前記第2のフィラー(32)は、比表面積が0.50〜1.20m2/g、タップ密度が4.0〜6.5g/mlであることを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1つに記載の導電性接着剤。
【請求項9】
リードフレーム(10)上に、請求項1ないし8のいずれか1つに記載の導電性接着剤(30)を介して半導体チップ(20)を搭載し、前記導電性接着剤(30)により前記半導体チップ(20)と前記リードフレーム(10)とを接合してなることを特徴とする半導体装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−185112(P2009−185112A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23720(P2008−23720)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【出願人】(591252862)ナミックス株式会社 (133)
【Fターム(参考)】