説明

導電膜形成のための銀ペースト

本発明は導電膜形成のための銀ペーストに関するものであって、炭素数0〜12の脂肪酸銀0.1〜60重量%;銀粉末1〜80重量%;バインダー0.1〜15重量%;及び有機溶媒残量で構成される導電膜形成用ペーストを提供する。
本発明の銀ペースト組成物を用いると、従来のペーストで形成された伝導性パターンと比較して相対的に薄い厚さ、または狭い線幅でもはるかに低い電気抵抗の特性を示し、高価なナノスケールの銀粒子を用いなくても非常に低い温度で熱処理が可能である、良好な微細構造を有する導電膜を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電膜形成のための銀ペーストに関する。LCD(液晶ディスプレイ)とPDP(プラズマディスプレイパネル)のような平板ディスプレイの導電線パターン形成、及びタッチスクリーンの電極部、面発光バックライト(FFL)のPAD部電極、フレキシブルPCBとRFIDのアンテナ等に導電膜が用いられる。
【背景技術】
【0002】
ディスプレイに適用される導電性パターンの形成は主に加法であって接触または非接触印刷方式によって基板の種類と使用目的によって適切なインクまたはペーストを連続的なパターンで形成して後処理して基板上に固定する過程を経る。場合によって、エッチングを付加する加減法が採用されることもある。
【0003】
ベスト(Vest,R.W.)がMOD物質を用いてインクの製造可能性を試験して以来(IEEE Transactions on Components、Hybrids and Mamufacturing Technology、12(4)、545−549、1987)、MOD物質を用いるパターン形成用インクに対して多くの研究がなされた。
【0004】
ここでMOD(metallo−organic decompositon)物質とは有機金属化合物で金属溶融温度より低い温度で分解されて金属化される化合物をいう。
【0005】
コビオ社(Kovio,Inc)の米国特許6878184号にMODと還元剤(例えば、アルデヒド)を用いてナノパーティクル状のインクを形成する技術を開示している。しかしこの技術は、反応条件が難しく、高価なMOD物質を大量に用いなければならない。また、形成されたナノパーティクル状の粒子からは十分な電気伝導性を得ることができない。
【0006】
前記MODインクとナノパーティクルを懸濁して用いるインクは比較的低い金属化温度を達成することはできるが、高価で、バルク金属に比べて電気伝導性が著しく低下する問題点がある。
【0007】
バルク金属が有する高い電気伝導性と低温金属化が可能なMODの長所を組み合わせて、キド(Kydd)その他の国際公開WO98−37133は、MOD物質と粒子性金属の複合組成物をスクリーン印刷用インクで用いることを開示している。しかし前記特許では、プラスチック基板に用いることができるように十分低い温度で金属化する印刷用インクを提示できなくなっている。また、MOD物質と粒子性金属は粒子状態であるため、インクを製造するためにはこれらと共にビヒクルをボールミルによって微細に粉砕して混合しなければならない別途の製造工程が必要である。またこのようなインクの製造は現場適応性が非常に低く、製造社であらかじめ製造されたとおり用いなければならない等の問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許6878184号
【特許文献2】国際公開WO98−37133
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】IEEE Transactions on Components、Hybrids and Mamufacturing Technology、12(4)、545−549、1987
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、電気伝導性が優秀な導電膜形成のための銀ペーストを提供することである。
【0011】
また、本発明の目的は、経済性が高くて現場適応性が高い銀ペーストを提供するためである。
【0012】
また、本発明の目的は、非常に低い低温焼成条件すなわち金属化条件を有して、非常に低い温度で導電膜を形成する銀ペーストを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明によって、炭素数0〜12の脂肪酸銀0.1〜60重量%;銀粉末1〜80重量%;バインダー0.1〜15重量%;及び有機溶媒残量で構成される導電膜形成用銀ペーストが提供される。前記脂肪酸銀は直鎖または分枝状でアミノ基、ニトロ基またはヒドロキシ基に置換されることができる。
【0014】
前記脂肪酸銀は好ましくは0.1〜10重量%、最も好ましくは0.1〜4重量%である。前記脂肪酸銀の量があまりに多ければ、費用が多く掛かり、また全体ペーストの溶融流れ指数が低くなって塗布性に問題が生じることになり、脂肪酸銀の量があまりに少なければ、伝導性は低くなって流れ指数が高くなり、塗布や金属化に問題が生じることになる。前記脂肪酸銀は、好ましくは飽和されたり二重結合を一個または二個を有する脂肪酸銀である。例えば、マレイン酸銀、マロン酸銀、コハク酸銀、酢酸銀、リンゴ酸銀、メタクリル酸銀、プロピオン酸銀、ソルビン酸銀、クエン酸銀、ウンデシレン酸銀、ネオデカン酸銀、オレイン酸銀、シュウ酸銀、ギ酸銀またはグルコン酸銀またはこれらの混合物であって、好ましくはクエン酸銀、シュウ酸銀、ギ酸銀またはマレイン酸銀またはこれらの混合物である。
【0015】
本発明の銀ペーストは非常に低い温度である280°C以下、好ましくは80〜280°Cの温度で金属化または熱処理されて、プラスチック基板を用いる、または低い熱処理を要求する工程に適用できる。
【0016】
前記バインダーは広くは天然、合成高分子またはこれらの混合物である。例えば、ウレタン系、アクリル系とエポキシ樹脂系列の熱硬化性バインダー等が用いられることができるが、一般的に0.1〜15重量%、好ましくは1〜13重量%用いられる。あまりに多く使われると伝導性が不良になり、あまりに少なく使われると結合力が低下する。エポキシ系とウレタン系は一液型または二液型が用いられる。
【0017】
前記有機溶媒は粘度調節用ビヒクル、反応性有機溶媒とこれらの混合物で構成される群から選択される。
【0018】
前記粘度調節用ビヒクルは1ないし3価のヒドロキシ基を有する炭素数1ないし4の脂肪族アルコール、前記アルコールとの炭素数2ないし8のアルキルエーテルまたは前記アルコールとの炭素数2ないし8のアルキルエステルで、例えば、ブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、テルピネオール、テキサノール、メントール、イソアミルアセテート、メタノール、エタノールとこれらの混合物で構成される群から選択される。
【0019】
前記反応性有機溶媒とは単純な不活性ビヒクルではなく、銀または脂肪酸銀と錯体またはキレートを形成するヘテロ原子P、S、OとNを有する溶媒で、ケトン基、メルカプト基、カルボキシル基、アニリン基、エーテル基または亜硫酸基を有する有機溶媒である。前記反応性有機溶媒は、炭素数1〜6の脂肪族またはヒドロキシ基を有する脂肪族で一つ以上置換されたアミンと、炭素数1〜16の直鎖または分枝状の脂肪族チオールで構成される群から選択される。前記反応性有機溶媒は、好ましくはメチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンまたは炭素数5ないし14の直鎖状の飽和脂肪族チオールであって、最も好ましくはエチルアミンである。
【0020】
本発明の銀ペーストは、銀が溶液に懸濁されていることを意味して、多様な粘度を使用目的によって選定することができる。このような銀ペーストは、粘度を調節し、適切なバインダーを添加して、多様な印刷方法、例えば、グラビア、フレキソ印刷、スクリーン、ロータリー、ディスペンサー、オフセットに適用されることができる。コーティング可能な粘度は1〜70,000cPsである。シルクスクリーン印刷の場合10,000〜35,000cPsであって、好ましくは10,000〜20,000cPsである。
【0021】
前記銀粉末の量は、好ましくは1〜60重量%である。前記銀粉末の平均粒径は、好ましくはマイクロメーター単位で、例えば、0.1ないし10マイクロメーターの範囲で、最も好ましくは1ないし5マイクロメーター範囲である。前記銀粉末の形態は好ましくは板状である。
【発明の効果】
【0022】
本発明による銀ペースト組成物は、既存の銀ペーストと比較してはるかに緻密な微細構造を有していて、既存のペーストで形成された伝導性パターンと比較して相対的に薄い厚さまたは狭い線幅でもはるかに低い電気抵抗の特性を示し、高価なナノスケールの銀粒子を用いなくても非常に低い温度で熱処理が可能であるという長所を提供する。また本発明の銀ペーストは、ガラス基板、PETのようなプラスチック基板、特にフレキシブルPCBの基板で用いられるポリイミド基板に適用可能であって、次世代フレキシブルディスプレイ、タッチパネル、フレキシブルPCB、RFID等に応用されて、これらの生産工程と費用を減らすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来の銀粉末+ビヒクルでなった銀ペーストのガラス基板上導電膜SEM写真である。
【図2】は本発明の銀ペースト組成物のガラス基板上導電膜SEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下本発明を実施例によって詳細に説明する。このような実施例は本発明を例示するためのもので本発明の保護範囲を制限するものと解釈されてはならない。これら実施例で、銀粉末は直径が厚さの50倍であって、平均粒径が3マイクロメーターである板状銀粉末を用いる。また、熱硬化性バインダーとして二液型エポキシ系列のレジン成分でKumhoP&B化学のKER3001(商品名)を、硬化剤としてアルドリッチ社の2−エチルイミダゾールを95:5容量配合比で用いた。実施例でギ酸銀とシュウ酸銀の場合を基準にして大体純粋銀量が銀総量(60g)のそれぞれ0.5、1、2と4重量%になるようにそれぞれ0.4g、0.9g、1.7gと3.4gを添加した。ここで銀インクとは銀溶液と同じ意味で用いられる。
【0025】
〔比較例1〕
板状銀粉末(直径が厚さの50倍であって平均粒径が3マイクロメーター)60gと、ノーマルテルピネオール14.38gと、ブチルカルビトールアセテート2.5gと、エタノール残量で構成された100gペースト組成物を完全に混合してペースト組成物を作った。前記ペースト組成物をガラス基板上にコーティングして、130°C、200°C、250°Cで熱処理し、2−プローブ装置で線抵抗を測定して表1に表示した。200°Cでガラス基板上にコーティングされた銀膜は、既存のペーストと比較するために切断し、 断面及び表面をSEMで観察してそのイメージを図1に表示した。
【実施例1】
【0026】
50mmolのギ酸を50mLのメタノールに解離させる。撹はんされているこの溶液に、50mmolのNaOHが解離されている50mLの水をゆっくり添加して、ギ酸ナトリウムを形成させる。この溶液に50mmolの硝酸銀が解離されている50mLの水を添加すれば、白色沈殿が迅速に形成される。この沈殿物を水で十分に洗浄した後に濾過して、再びメタノールで十分に洗浄し、常温で乾燥してギ酸銀を製造する。
【0027】
前記製造されたギ酸銀粉末0.4gを、平均粒子サイズが3μmである板型(直径が厚さの50倍)銀粉末59.7gと、ノーマルテルピネオール14.4gと、ブチルカルビトールアセテート2.5g、エポキシ樹脂バインダー4gと、エタノール残量で構成された100gペースト組成物に入れて、完全に混合してペースト組成物を作り、ガラス基板、PET基板、またはポリイミド基板上にスクリーンプリンティングして、それぞれ130°C、200°C、250°Cで熱処理し、2−プローブ装置で線抵抗を測定して特性化した。別途にガラス基板上にコーティングされた銀膜は、既存のペーストと比較するために、切断して断面及び表面をSEMで観察した。塗膜の粘度、熱処理された塗膜の接着力と電気抵抗は表1に整理した。
【実施例2】
【0028】
実施例1で製造されたギ酸銀を用いた。ギ酸銀粉末0.8gと板状銀粉末59.4gを用いることを除いては、実施例1と同じく実施した。塗膜の粘度、熱処理された塗膜の接着力と電気抵抗は表1に整理した。
【実施例3】
【0029】
実施例1で製造されたギ酸銀を用いた。ギ酸銀粉末1.7gと板状銀粉末58.8gを用いることを除いては、実施例1と同じく実施した。塗膜の粘度、熱処理された塗膜の接着力と電気抵抗は表1に整理した。
【実施例4】
【0030】
実施例1で製造されたギ酸銀を用いた。ギ酸銀粉末3.4gと板状銀粉末57.6gを用いることを除いては、実施例1と同じく実施した。塗膜の粘度、熱処理された塗膜の接着力と電気抵抗は表1に整理した。
【実施例5】
【0031】
ギ酸の代わりにシュウ酸を用いることを除いて実施例1と同じ方法でシュウ酸銀を製造する。前記製造されたシュウ酸銀粉末0.4gと板状銀粉末59.7gを用いることを除いては、実施例1と同じく実施した。塗膜の粘度、熱処理された塗膜の接着力と電気抵抗は表1に整理した。
【実施例6】
【0032】
シュウ酸銀粉末0.8gと板状銀粉末59.4gを用いることを除いては、実施例1と同じく実施した。
【実施例7】
【0033】
シュウ酸銀粉末1.7gと板状銀粉末58.8gを用いることを除いては、実施例5と同じく実施した。特に200°Cで熱処理されたガラス基板上塗膜の断面及び表面のSEMイメージを図2に例示した。図1よりはるかに緻密な構造を有していることを示す。
【実施例8】
【0034】
シュウ酸銀粉末3.4gと板状銀粉末57.6gを用いることを除いては、実施例5と同じく実施した。
【実施例9】
【0035】
ギ酸の代わりにクエン酸を用いることを除いて、実施例1と同じ方法でクエン酸銀を製造する。前記製造されたクエン酸銀粉末0.4gと板状銀粉末59.7gを用いることを除いては、実施例1と同じく実施した。塗膜の粘度、熱処理された塗膜の接着力と電気抵抗は表2に整理した。
【実施例10】
【0036】
クエン酸銀粉末0.8gと板状銀粉末59.4gを用いることを除いては、実施例1と同じく実施した。
【実施例11】
【0037】
クエン酸銀粉末1.7gと板状銀粉末58.8gを用いることを除いては、実施例1と同じく実施した。
【実施例12】
【0038】
クエン酸銀粉末3.4gと板状銀粉末57.6gを用いることを除いては、実施例1と同じく実施した。
【実施例13】
【0039】
ギ酸の代わりにリンゴ酸を用いることを除いて、実施例1と同じ方法でリンゴ酸銀を製造する。前記製造されたリンゴ酸銀粉末0.4gと板状銀粉末59.7gを用いることを除いては、実施例1と同じく実施した。塗膜の粘度、熱処理された塗膜の接着力と電気抵抗は表2に整理した。
【実施例14】
【0040】
リンゴ酸銀粉末0.8gと板状銀粉末59.4gを用いることを除いては、実施例1と同じく実施した。
【実施例15】
【0041】
リンゴ酸銀粉末1.7gと板状銀粉末58.8gを用いることを除いては、実施例1と同じく実施した。
【実施例16】
【0042】
リンゴ酸銀粉末3.4gと板状銀粉末57.6gを用いることを除いては、実施例1と同じく実施した。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭素数0〜12の脂肪酸銀0.1〜60重量%;銀粉末1〜80重量%;バインダー0.1〜15重量%;及び有機溶媒残量で構成される導電膜形成用銀ペースト。
【請求項2】
前記銀粉末の平均粒径が0.1ないし10マイクロメーター範囲であって前記脂肪酸銀がクエン酸銀、シュウ酸銀、ギ酸銀とマレイン酸銀で構成される群から選択される請求項1記載の導電膜形成用銀ペースト。
【請求項3】
前記有機溶媒は粘度調節用ビヒクル、反応性有機溶媒とこれらの混合物で構成される群から選択される請求項1または2に記載の導電膜形成用銀ペースト。
【請求項4】
前記粘度調節用ビヒクルは1ないし3価のヒドロキシ基を有する炭素数1ないし4の脂肪族アルコール、前記アルコールとの炭素数2ないし8のアルキルエーテルまたは前記アルコールとの炭素数2ないし8のアルキルエステルである請求項3に記載の導電膜形成用銀ペースト。
【請求項5】
前記反応性有機溶媒は炭素数1〜6の脂肪族またはヒドロキシ基を有する脂肪族で一つ以上置換されたアミンと炭素数1〜16の直鎖または分枝状の脂肪族チオールで構成される群から選択される請求項3に記載の導電膜形成用銀ペースト。
【請求項6】
前記反応性有機溶媒はメチルアミン、エチルアミン、イソプロピルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミンとこれらの混合物で構成される群から選択されて前記粘度調節用ビヒクルはブチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトール、エチルカルビトール、エチルカルビトールアセテート、テルピネオール、テキサノール、メントール、イソアミルアセテート、メタノール、エタノールとこれらの混合物で構成される群から選択される請求項3に記載の導電膜形成用銀ペースト。
【請求項7】
前記バインダー成分は熱硬化性で1〜13重量%である請求項6記載の導電膜形成用銀ペースト。
【請求項8】
金属化温度が80ないし280°Cである請求項7記載の導電膜形成用銀ペースト。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−504612(P2010−504612A)
【公表日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−529096(P2009−529096)
【出願日】平成19年5月25日(2007.5.25)
【国際出願番号】PCT/KR2007/002533
【国際公開番号】WO2008/093913
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(508051872)イグザクス インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】