説明

少なくとも1つのナフトエ酸誘導体および少なくとも1つのポリウレタンポリマータイプの化合物またはその誘導体を含む組成物、その調製方法、およびその使用

【課題】本願発明は、ナフトエ酸誘導体などの医薬組成物に分散または懸濁している不溶性化合物の局所的浸透を促進することを目的とする。
【解決手段】本願発明は、分散形態の少なくとも1つのナフトエ酸誘導体、および、ポリウレタンポリマータイプの化合物またはその誘導体を含む従来技術よりも刺激性が少ない安定な組成物であって、分散形態の活性化剤の局所的浸透を促進すべき組成物を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に座瘡を治療するための局所適用用組成物、このような組成物の調製方法、および化粧品または医薬製品としての使用に関する。
【背景技術】
【0002】
座瘡は、皮脂腺が豊富な皮膚(顔、肩部分、腕部分)を攻撃する一般的な多要素病変である。皮膚病の形態で、最も一般的に生じる。以下の5つの病変要素は、座瘡の形成に決定的な役割を担っている:
1.遺伝的素因;
2.皮脂の過剰産生(脂漏症);
3.アンドロゲン;
4.濾胞性角化症(comedogenesis);
5.細菌のコロニー形成および炎症因子。
【0003】
座瘡には幾つかの形態が存在し、全てに共通の要素は、毛嚢脂腺小胞の攻撃が挙げられる。特に、集簇性座瘡、うなじのケロイド座瘡(cheloid acne)、投薬関連座瘡(medication-related acne)、再発性粟粒座瘡(recurrent military acne)、壊死性座瘡(necrotic acne)、新生児座瘡、月経前座瘡、職業性座瘡(occupational acne)、酒さ、老年性座瘡(senile acne)、太陽光線性座瘡(solar acne)および単純座瘡(simple acne)を挙げることができる。
【0004】
多様な若年性座瘡(polymorphic juvenile acne)としても知られている単純座瘡が、最も一般的である。この座瘡は、以下の4つの工程を含むが、全ての工程を経過することは必須ではない:
- 工程1は、多くの数の開いたおよび/または閉じた面皰(comedone)ならびに小嚢胞(microcyst)によって特徴づけられる面皰性座瘡に対応する;
- 工程2は、すなわち丘疹膿疱性座瘡(papulopustular acne)は、軽度から中程度の重篤性を示す。この座瘡は、開いたおよび/または閉じた面皰、小嚢胞、そして赤色丘疹および吹き出物によって特徴づけられる。この座瘡は、おもに、顔に影響を与え、幾つかの傷を残す;
- 工程3、すなわちパプロコメドニック座瘡(papulocomedonic acne)は、より重篤で、背中、胸および肩に広がる。この座瘡は、多くの傷を伴う;
- 工程4、すなわち嚢胞性座瘡(nodulocystic acne)は、多くの傷を伴う。この座瘡は、小さな瘤および痛みを伴う多量の深紅色の吹き出物を示す。
【0005】
前記した様々な形態の座瘡は、抗-脂漏剤および抗-感染剤(例えばベンゾイルペルオキシド(特に、Pierre Fabre社によって販売されている製品Eclaran(登録商標)))などの活性化剤、トレチノイン(特に、Garderma社によって販売されている製品Retacnyl(登録商標))またはイソトレチノイン(Laboratoires Rocheによって販売されている製品Roaccutane(登録商標))などのレチノイド、またはナフトエ酸誘導体を用いて、治療することができる。特に、アダパレンとして一般的に知られている6-[3-(1-アダマンチル)-4-メトキシフェニル]-2-ナフトエ酸(Galdermaによって販売されている製品Differine(登録商標))などのナフトエ酸誘導体は、座瘡の治療のために、トレチノインと同様の効果しか有さない活性剤として広く開示され、認識されている。アダパレンは、また、前記した他の活性化剤に比べて、炎症現象、皮膚の乾燥または過敏症などの副作用をほとんどもたらさないという有用性を有し、このことは、製品の選択の目安となる。
言うまでもなく、組成物中にポリウレタンポリマータイプの化合物またはその誘導体を含むことによって、特定の活性化剤の局所的浸透を増大するための組成物の開発がなされている(欧州特許第0 299 758号明細書)。Bertek Pharmaceuticals Inc.によって販売されている製品Avita(登録商標)は、その例の1つである。この製品は、特に、落屑、炎症および皮膚の乾燥を制限するために、ポリウレタンポリマー(Bertek Pharmaceuticals社によって販売されているタイプ2のポリオールプレポリマー)を含むクリームまたはゲルタイプの組成物に溶解した、組成物の全重量に対して0.025重量%のトレチノインを含む。
米国特許出願公開第US2002/01555180号明細書には、活性化剤として、ソーパルメットベリーズ(Saw Palmetto Berries)の抽出物(SPBE)を含む組成物が開示されており、その中で、アダパレンは、活性化剤SPBEを小胞および皮脂腺への浸透を改善する剤として使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】欧州特許第0 299 758号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第US2002/01555180号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
出願人は、驚くべきことに、特定の溶解した活性化剤(顕微鏡で観察した場合に、結晶が存在していない活性化剤)のみの局所的浸透を増加させることが知られているポリウレタンポリマーが、医薬組成物に分散または懸濁している不溶性化合物、特にナフトエ酸誘導体などの不溶性化合物の局所的浸透をも促進できることを実証した。
【0008】
しかしながら、従来技術において、ポリウレタンポリマーの抗-刺激効果が、分散および不溶形態の活性化剤を用いて得ることができることを示唆されていなかった。
【0009】
前述のことを考慮に入れると、本発明が解決を提案する課題は、分散形態の少なくとも1つのナフトエ酸誘導体、および、ポリウレタンポリマータイプの化合物またはその誘導体を含む従来技術よりも刺激性が少ない安定な組成物であって、分散形態の活性化剤の局所的浸透を促進すべき組成物を調製することであり、更には、このような組成物を調製する方法である。
【0010】
それゆえ、本発明の第一の態様は、生理学的に許容可能な媒体中に、少なくとも1つのナフトエ酸誘導体および少なくとも1つのポリウレタンポリマータイプの化合物またはその誘導体を含み、前記ナフトエ酸誘導体が前記組成物中で分散形態である、局所適用用組成物であって、如何なるソーパルメットベリーズの抽出物も含まない組成物である。
【0011】
本発明によれば、用語「分散形態の活性化剤」は、ベヒクルに懸濁した、固体粒子の形態の活性化剤を意味する。このような粒子は、特に、10μmより大きい。
【0012】
本発明の第二の態様は、少なくとも1つのナフトエ酸誘導体を含む生理学的に許容可能なベヒクルを、少なくとも1つのポリウレタンポリマータイプの化合物またはその誘導体と混合する工程であって、前記ナフトエ酸誘導体が、前記組成物中で分散形態である工程を含むことを特徴とする、局所適用用組成物を調製するための方法である。
【0013】
最後に、本発明の第三の態様は、細胞の分化および増殖に関係する角化症と関連した皮膚疾患を治療および/または予防するための、特に、面皰性座瘡、単純座瘡、パプロコメドニック座瘡、嚢胞性座瘡、多型性座瘡、酒さ性座瘡、集簇性座瘡、老年性座瘡、太陽光線性座瘡などの二次的座瘡、投薬関連座瘡または職業性座瘡を治療するための、医薬組成物の調製のための、前記の組成物の使用である。
組成物が、生理学的に許容可能な媒体に、少なくとも1つのナフトエ酸誘導体(前記組成物中で分散形態である)および少なくとも1つのポリウレタンポリマータイプの化合物またはその誘導体を含む場合、良好な化学的安定性、高い抗-にきび有効性および良好な許容性を示す。
【0014】
本発明は、添付の図面(以下参照)に関して記載された、以下に続く非制限的な記載を読むことにより、より明確に理解されよう。
- 図1から4は、6日間にわたる局所的塗布の繰返し後における、BALB/cマウスの耳の皮膚上での、0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲルの炎症作用を、様々な濃度でポリウレタンポリマーを含むゲル形態の3つの0.1%アダパレン調合物の炎症作用およびプラセボの炎症作用と比較することを意図した試験の結果を示す。
- 図5から8は、18日間にわたる局所的塗布の繰返し後における、RHINO FVB/N RJ-hrrhマウス(Rhino)の背面皮膚上での、0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲル、および様々な濃度でポリウレタンポリマーを有するゲル形態の2つの0.1%アダパレン調合物、およびプラセボの面皰活性を評価することを意図した試験の結果を示す。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、以下の様々な試験サンプルについての、2日目から19日目のマウスの耳の平均の厚さのカイネティクスを示す:・アセトン(曲線(1A))・プラセボリファレンスゲル(曲線(1B))・実施例2のプラセボ(1% PP-2)(曲線(1C))・実施例3のプラセボ(3% PP-2)(曲線(1D))・実施例4のプラセボ(10% PP-2)(曲線(1E))
【図2】図2は、以下の様々な試験サンプルについての、2日目から19日目のマウスの耳の平均の厚さのカイネティクスを示す:・アセトン(曲線(2A))・アセトン+0.1%アダパレン(曲線(2B))・プラセボリファレンスゲル(曲線(2C))・0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲル(曲線(2D))・実施例2のプラセボ(1% PP-2)(曲線(2E))・実施例2(1% PP-2)(曲線(2F))
【図3】図3は、以下の様々な試験サンプルについての、2日目から19日目のマウスの耳の平均の厚さのカイネティクスを示す:・アセトン(曲線(3A))・アセトン+0.1%アダパレン(曲線(3B))・プラセボリファレンスゲル(曲線(3C))・0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲル(曲線(3D))・実施例3のプラセボ(3% PP-2)(曲線(3E))・実施例3(3% PP-2)(曲線(3F))
【図4】図4は、以下の様々な試験サンプルについての、2日目から19日目のマウスの耳の平均の厚さのカイネティクスを示す:・アセトン(曲線(4A))・アセトン+0.1%アダパレン(曲線(4B))・プラセボリファレンスゲル(曲線(4C))・0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲル(曲線(4D))・実施例4のプラセボ(10% PP-2)(曲線(4E))・実施例4(10% PP-2)(曲線(4F))
【図5】図5は、以下の様々な試験サンプルについての、1日目から19日目の許容性評価の曲線下面積の結果を示す:・アセトン(コントロールベヒクル)(曲線(5A))・0.1%のアダパレンを含まない実施例3の(3% PP-2)の調合物(コントロールベヒクル)(曲線(5B))・アセトン+0.01%(m/m)2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)ベンゾ[b]チオフェン-6-カルボン酸(ポジティブコントロール)(曲線(5C))・アセトン+0.1%(m/m)アダパレン(曲線(5D))・0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲル(曲線(5E))・実施例2の調合物(1% PP-2)(曲線(5F))・実施例3の調合物(3% PP-2)(曲線(5G))
【図6】図6は、以下の様々な試験サンプルについての、18日間の局所的処理後の経表皮水分喪失(TWL)の曲線下面積(AUC)の結果を示す:・アセトン(コントロールベヒクル)(曲線(6A))・0.1%のアダパレンを含まない実施例3の(3% PP-2)の調合物(コントロールベヒクル)(曲線(6B))・アセトン+0.01%(m/m)2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)ベンゾ[b]チオフェン-6-カルボン酸(ポジティブコントロール)(曲線(6C))・アセトン+0.1%(m/m)アダパレン(曲線(6D))・0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲル(曲線(6E))・実施例2の調合物(1% PP-2)(曲線(6F))・実施例3の調合物(3% PP-2)(曲線(6G))
【図7】図7は、以下の様々な試験サンプルについての、18日間の局所的処理後の表皮の厚さの測定結果を示す:・アセトン(コントロールベヒクル)(曲線(7A))・0.1%のアダパレンを含まない実施例3の(3% PP-2)の調合物(コントロールベヒクル)(曲線(7B))・アセトン+0.01%(m/m)2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)ベンゾ[b]チオフェン-6-カルボン酸(ポジティブコントロール)(曲線(7C))・アセトン+0.1%(m/m)アダパレン(曲線(7D))・0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲル(曲線(7E))・実施例2の調合物(1% PP-2)(曲線(7F))・実施例3の調合物(3% PP-2)(曲線(7G))
【図8】図8は、以下の様々な試験サンプルについての、18日間の局所的処理後のRhinoマウスの背中のセンチメートル(cm)当りの面皰の数のカウントの結果を示す:・アセトン(コントロールベヒクル)(曲線(8A))・0.1%のアダパレンを含まない実施例3の(3% PP-2)の調合物(コントロールベヒクル)(曲線(8B))・アセトン+0.01%(m/m)2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)ベンゾ[b]チオフェン-6-カルボン酸(ポジティブコントロール)(曲線(8C))・アセトン+0.1%(m/m)アダパレン(曲線(8D))・0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲル(曲線(8E))・実施例2の調合物(1% PP-2)(曲線(8F))・実施例3の調合物(3% PP-2)(曲線(8G))
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明による組成物は、少なくとも1つのナフトエ酸誘導体および少なくとも1つのポリウレタンポリマータイプの化合物またはその誘導体を含む。
【0017】
ナフトエ酸は、以下の式の化合物である。
【0018】
【化1】

【0019】
用語「ナフトエ酸誘導体」は、以下の式(I)の化合物を意味する。
【0020】
【化2】

【0021】
(式中、Rは、水素原子、ヒドロキシル基、1から4の炭素原子を含む分枝鎖もしくは非分枝鎖のアルキル基、1から10の炭素原子を含むアルコキシ基、または飽和もしくは不飽和の脂環式基を表す)
【0022】
用語「1から4の炭素原子を含む直鎖または分枝鎖のアルキル基」は、好ましくは、メチル、エチル、プロピルおよびブチル基を意味する。
【0023】
用語「1から10の炭素原子を含むアルコキシ基」は、好ましくは、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキシルオキシ基およびデシルオキシ基を意味する。
【0024】
用語「脂環式基」は、好ましくは、1-メチル-シクロヘキシル基または1-アダマンチル基などの単環式または多環式基を意味する。
【0025】
本発明による組成物に含みうるナフトエ酸誘導体には、6-[3-(1-アダマンチル)-4-メトキシフェニル]-2-ナフトエ酸(アダパレン)、6-[3-(1-アダマンチル)-4-ヒドロキシフェニル]-2-ナフトエ酸、6-[3-(1-アダマンチル)-4-デシルオキシフェニル]-2-ナフトエ酸、および6-[3-(1-アダマンチル)-4-ヘキシルオキシフェニル]-2-ナフトエ酸が、有利には、選択される。
【0026】
前記したナフトエ酸誘導体は、一般的に、本発明による組成物中に分散した形態である。それ故、不溶性のナフトエ酸誘導体は、本発明による組成物中に、均一に分散している。
【0027】
本発明による組成物においては、ナフトエ酸誘導体は、組成物の総重量に対して、10重量%以下、好ましくは、組成物の総重量に対して、0.001重量%から10重量%の間、組成物の総重量に対して、優先的には、0.01重量%から5重量%の間、より優先的には、0.05重量%から2重量%、最も優先的には、0.1重量%から0.3重量%の間の濃度で使用される。本明細書をとおして、特に指定しない限り、濃度の範囲が与えられている場合、前記範囲の上限および下限は、含まれる。
【0028】
有利には、本発明による組成物に使用されるナフトエ酸誘導体は、アダパレンである。本発明による組成物に使用されるアダパレンの濃度は、0.01%から0.5%の間、優先的には、0.03%、より優先的には、0.1%から0.3%の間、特には、0.1%および0.3%である。
【0029】
好ましくは、ナフトエ酸誘導体は、本発明による組成物に存在する唯一の活性化剤である。優先的には、アダパレンは、組成物の唯一の活性化剤である。
【0030】
本発明による組成物は、また、ポリウレタンポリマータイプの化合物またはその誘導体を含む。用語「ポリウレタンポリマー」とは、欧州特許第0 299 758号明細書に開示されており、Bertek Pharmaceuticals Inc.によって販売されているポリアルキレングリコールを意味する。本発明によるポリウレタンポリマーは、化粧品および医薬への適用についての有利な特性を付与するという特徴的な特性を有する。具体的には、ポリウレタンポリマーは、その高い分子量によって、顕著に、皮膚上へのおよび皮膚内部への薬剤の堆積に影響を与える。更にその上、ポリウレタンポリマーは、優先的には、皮膚の上層にとどまる。
【0031】
本発明による組成物に含みうるポリウレタンポリマーとしては、以下の一般式のポリウレタンポリマーを挙げることができる:
【0032】
【化3】

【0033】
(式中、
Rは、CH3またはHであり;
nは、ポリウレタンポリマーが少なくとも1000の分子量を有するように選択される整数であり、nは、有利には、5から55の間であり;
mは、1から6の間の数字である)
【0034】
本発明による組成物に含みうるポリウレタンポリマーの非制限的な例としては、ポリオールプレポリマー-2(PP-2)およびポリオールプレポリマー-14(PP-14)(ポリ[オキシ(メチル-1,2-エタンジイル)]、α-ヒドロ-ω-ヒドロキシ-、1,1'-メチレンビス[4-イソシアナトシクロヘキサン]とのポリマーと呼ばれている)、ならびにポリオールプレポリマー-15(ポリ(オキシ-1,2-エタンジイル)、α-ヒドロ-ω-ヒドロキシ-、1,1'-メチレンビス[4-イソシアナトシクロヘキサン]とのポリマーと呼ばれている)を単独または混合物として挙げることができる。これらの3つのポリマーは、Bertek Pharmaceuticals社によって販売されており、mが1から4の範囲で、それぞれPP-2についてはn=12、PP-14についてはn=51およびPP-15についてはn=8である前記の一般式に対応する。
【0035】
本発明による組成物に含みうるポリウレタンポリマーとしては、ポリオールプレポリマー-2(PP-2)が、有利に選択される。
【0036】
本発明による組成物においては、ポリウレタンポリマータイプの化合物またはその誘導体は、組成物の総重量に対して、20重量%以下、好ましくは、0.5重量%から20重量%の間、より優先的には、1重量%から10重量%の間、特には、1重量%、3重量%、7重量%または10重量%の濃度で、優先的には、7%以下の濃度で使用される。ポリウレタンポリマーのこのような低濃度によって、毒性を低減することができ、本発明による組成物の一般的な刺激性を低減することができる。
【0037】
角質層に堆積している、本発明による組成物中のポリウレタンポリマーの存在により、皮膚の上層にリザーバー(reservoir)の形成が可能となる。このリザーバーにより、ナフトエ酸誘導体が、表皮のより深い層へと徐々に放出されることが可能となる。加えて、驚くべきことに、本発明による組成物に含まれるポリウレタンポリマーは、特にアダパレン調合物の場合に有用である抗-炎症性および保湿特性を有することがわかった。このことが有利である理由は、ナフトエ酸誘導体が刺激性であり、皮膚に対して脱水作用を有するからである。それ故、投与量を増やすことができるためには、誘導される刺激性を低減することが有用である。
【0038】
本発明の組成物は、局所適用に通常使用される任意の製剤形態、特には、水性、水-アルコールもしくは油性分散物、ローションタイプの分散物、水性、無水もしくは脂溶性ゲル、水相中に脂肪相を分散させることによって得られる(O/W)もしくはその逆(W/O)の、液体もしくは半液体のコンシステンシーの乳液タイプのエマルジョン、または、柔らかな、半液体のもしくは固体のコンシステンシーのクリーム、クリーム-ゲルもしくはポマードタイプの懸濁物もしくはエマルジョン、または、代替的には、ミクロエマルジョン、ミクロカプセル、ミクロ粒子もしくはイオン性および/もしくは非イオン性タイプのベシキュラー分散物(vesicular dispersion)の形態とすることができる。
【0039】
好ましくは、本発明による組成物は、ローション、クリーム-ゲル、ゲルまたはクリームの形態である。
【0040】
当業者は、望む製剤形態の機能として、そして、本発明による組成物の有利な特性を留意するように、本発明による組成物を構成する賦形剤を注意して選択するであろう。
【0041】
本発明による組成物は、また、特に、1つまたは複数の以下の成分を含みうる:
a) 1つまたは複数のゲル化剤または懸濁剤、
b) 1つまたは複数のキレート化剤、
c) 1つまたは複数の湿潤剤、
d) 1つまたは複数の防腐剤。
【0042】
本発明による組成物に含みうるゲル化剤または懸濁化剤の非制限な例としては、一般名Carbopol(登録商標)で販売されているカルボマー、BF Goodrich社によって名称Ultrez 10(登録商標)またはCarbopol ETD(登録商標)で販売されている「電解液-非感応性」カルボマー、多糖(その非制限な例として、Kelco社によって販売されているKeltrol T(登録商標)などのキサンタンガム、グアーガム、キトサン、セルロースおよびヒドロキシエチルセルロースなどのその誘導体、特にAqualon社によって名称Natrosol HHX 250(登録商標)で販売されている製品)、ならびに、イソヘキサデカン中の40%分散物としてのアクリルアミドとアクリルアミノ-2-メチルプロパン硫酸ナトリウムとのコポリマー、およびSEPPIC社によって名称Simulgel 600(登録商標)で販売されているポリソルベート80を挙げることができる。
【0043】
挙げることができる好ましいゲル化剤は、名称Carbopol 974P NFおよびCarbopol 980 NFで特に販売されているカルボマーである。
【0044】
キレート化剤としては、挙げることができる非制限な例は、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミンビス(O-ヒドロキシフェニル酢酸)(EDBHA)、ヒドロキシ-2-エチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、エチレンジアミンビス(O-ヒドロキ-p-メチルフェニル)酢酸(EDBHMA)およびエチレンジアミンビス(5-カルボキシ-2-ヒドロキフェニル)酢酸(EDBCHA)を含む。
【0045】
挙げることができる好ましいキレート化剤は、名称Titriples III(登録商標)で特に販売されているエチレンジアミン三酢酸(EDTA)である。
【0046】
表面の張りを減少させ、液体のより多量に広げることを可能とする役割を有する湿潤剤としては、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、プロピレングリコールジペラルゴネート、ラウログリコールおよびエトキシジグリコールが、単独または混合物として、前記の化合物に制限されることなく、優先的に使用される。
【0047】
挙げることができる好ましい湿潤剤は、プロピレングリコールである。
【0048】
防腐剤として、挙げることができる非制限な例は、単独または混合物としての、安息香酸およびベンジルアルコールとのその誘導体、塩化ベンズアルコニウム、安息香酸ナトリウム、ブロノポール、クロルヘキジン、クロロクレゾールおよびその誘導体、エチルアルコール、ペンチルアルコール、フェノキシエタノール、ソルビン酸ナトリウム、ジアゾリジニルウレア、プロピルパラベンまたはメチルパラベンなどのパラベンを含む。
【0049】
挙げることができる好ましい防腐剤は、単独または混合物としての、パラベンおよびフェノキシエタノールまたは塩化ベンズアルコニウムを含む。
【0050】
本発明による組成物は、1つまたは複数の乳化剤を含んでもよい。
【0051】
界面活性乳化剤は、油に対して親和性を有する疎水性部分および水に対して親和性を有する親水性部分を含み、それにより、二相のつなぎを生み出す両性化合物である。イオン性または非イオン性乳化剤は、それ故、界面で吸着化させ、層状の液体結晶層を形成することによって、油/水エマルジョンを安定化させる。
【0052】
非イオン性界面活性剤の乳化力は、分子の極性に密接に関連している。この極性は、HLB(親水性/親油性バランス)によって定義される。
【0053】
高いHLBは、親水性部分が支配的であることを意味し、逆に、低いHLBは、親油性部分が支配的であることを意味する。例えば、10より大きなHLB値は、親水性界面活性剤に対応する。
【0054】
界面活性剤は、その構造によって、一般的名称「イオン性」(アニオン性、カチオン性もしくは両性)または「非イオン性」で、分類することができる。非イオン性界面活性剤は、水中でイオンへと解離しない界面活性剤であり、それ故、pHの変化に感応しない。
【0055】
非イオン性界面活性剤は、特に、本発明の対象である水中油型のエマルジョンを調製するのに適する。それ故、本発明のエマルジョンが構成する乳化系は、支配的な親水性部分を有する、すなわち約10より大きな高いHLB値を有する少なくとも1つの非イオン性界面活性剤を含む。
【0056】
挙げることができる高いHLB値を有する非イオン性界面活性剤の例は、名称「Tween 80」(HLB=15)で販売されているPOE(20)ソルビタンモノオレエート;名称「Tween 60」(HLOB=14.9)で販売されているPOE(20)ソルビタンモノステアレートなどのソルビタンエステル;POE(21)ステアリルエーテル(HLB=15.5)またはCognisによって名称「Eumulgin B2」(HLB=15.5)で販売されているセテアレス20などの脂肪アルコールエーテル;Synperonic PE/L44などのポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマーを含む。
【0057】
好ましくは、前記の高いHLBの非イオン性界面活性剤は、10と18の間のHLBを有する。
【0058】
挙げることができる低いHLBの(親油性の)非イオン性界面活性剤の例は、(Unichemaによって名称Span 60で販売されている)ソルビタンモノステアレートなどのソルビタンエステル、グリセリルモノステアレート(CognisのCutina GMS)などの(Cognisによって名称Cutina GMSVPHで販売されている)グリセロールエステル、Spezion C18 pharma、(gatefosseの)オリパルイソステアリック(olipal isostearic)および低いHLBのスクロースエステル、例えばスクロースジステアレートを含む。
【0059】
好ましくは、前記の低いHLBの非イオン性界面活性剤は、10未満のHLBを有する。
【0060】
非イオン性界面活性剤は、本発明のエマルジョンが構成する乳化系を形成するために、単独、または、2つ以上の混合物として使用することができる。
【0061】
好ましくは、1つまたは複数の高いHLBの非イオン性界面活性剤/低いHLBの非イオン性界面活性剤のペアは、乳化系として使用できる:特に、約10より大きなHLBを有する少なくとも1つの非イオン性界面活性剤および約10未満のHLBを有する少なくとも1つの非イオン性界面活性剤を含む非イオン性乳化系とすることができる。
【0062】
前記のペアを形成する2つの界面活性剤のそれぞれの比率は、通常、使用した脂肪相の必要なHLBを計算することによって、求まる。
【0063】
挙げることができる好ましい乳化剤は、Tween 80、Uniqema社によって名称Arlacel 165FL(登録商標)で販売されているglyceryl stearate & PEG-100 stearate;Gattefosseによって名称Tefose 1500で販売されているPEG6ステアレートおよびPEG32ステアレートなどの親水性乳化剤、Amercholによって販売されているGlucate SS(メチルグルコースセスキステアレート)およびGlucamate SSE 20(PEG 20メチルグルコースセスキステアレート)、Uniqema社によって名称Brij721(登録商標)で販売されているポリオキシエチレン(21)ステアリルエーテル、Eumulgin B2PH、ならびにNoveonによって名称Pemulen TR1で販売されているアクリレート/C10-30アルキルアクリレートクロスポリマーなどの親油性乳化剤を含む。
【0064】
本発明による組成物は、また、脂肪相を含みうる。この脂肪相は、例えば、植物油、無機油、動物油、合成油またはシリコーン油、およびその混合物を含みうる。
【0065】
挙げることができる無機油の例は、Esso社から販売されているPrimol 352(登録商標)、Marcol 82(登録商標)およびMarcol 152(登録商標)などの様々な粘度の液体パラフィンを含む。
【0066】
挙げることができる植物油は、スィートアーモンド油、パーム油、ダイズ油、ゴマ油およびヒマワリ油を含む。
【0067】
挙げることができる動物油は、ラノリン、スクアレン、魚油、および、Laserson社によって名称Cosbiol(登録商標)で販売されている、誘導体としての、スクアレンを有するミンク油を含む。
【0068】
挙げることができる合成油は、イソノナン酸セテアリル(例えばCognis Franceによって名称Cetiol SN(登録商標)で販売されている製品)、アジピン酸ジイソプロピル(例えばISFによって名称Ceraphyl 230(登録商標)で販売されている製品)、パルミチン酸イソプロピル(例えばCrodaによって名称Crodamol IPP(登録商標))、アジピン酸イソプロピル(例えばCrodaによって名称Crodamol DAで販売されている製品)、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド(例えばHuls/Lambert Riviereによって販売されているMiglyol 812(登録商標))などのエステルを含む。
【0069】
挙げることができるシリコーン油は、ジメチコン、例えば名称Dow Corning 200 Fluid(登録商標)で販売されている製品、シクロメチコン、例えばDow Corningによって名称Dow Corning 244 Fluid(登録商標)で販売されている製品またはSACI-CFPAによって名称Mirasil CM5(登録商標)で販売されている製品を含む。
【0070】
天然または合成ワックスなどの固体脂肪物質も使用することができる。この場合、当業者は、これら固体の存在または不在に応じて、調製物の加熱温度を調整するであろう。
【0071】
本発明による組成物については、液体パラフィン、より具体的にはMarcol 152(登録商標)およびMiglyol 812(登録商標)が好ましい。
【0072】
本発明の組成物は、また、化粧品または医薬に通常使用されている任意の添加剤、例えば界面活性剤、中和剤、サンスクリーニン、抗酸化剤、フィラー、電解液、色素、一般的な無機酸もしくは有機酸もしくは塩基、香料、エッセンシャルオイル、美容活性化剤、保湿剤、ビタミン、スフィンゴリピド、DHAなどのセルフタンニング化合物、鎮静剤およびアラントインなどの皮膚保護剤、ならびにプロ浸透剤、またはこれらの混合物を含みうる。特に、本発明による組成物は、以下の活性化剤のいずれも含まない:グリコール酸、サリチル酸、レチノール、トレチノイン、レチンアルデヒド、アゼライン酸およびタザロテン。言うまでもなく、当業者は、このもしくはこれらの任意の添加化合物、および/またはその量を、本発明による組成物の有利な特性に悪影響を及ぼさないように、または実質的に及ぼさないように、注意深く選択するであろう。
【0073】
これらの添加剤は、組成物の総重量に対して、0.001重量%から20重量%の割合で、組成物中に含みうる。
【0074】
本発明の1つの特定の実施態様においては、組成物は、水中油型(O/W)エマルジョンのローション、クリームまたはクリーム-ゲルタイプの形態であり、以下を含む:
- 0.1%から0.3%のナフトエ酸誘導体;
- 1%から10%の1つまたは複数のポリウレタンポリマーまたは誘導体;
- 0.1%から3%のゲル化剤または懸濁化剤;
- 0.01%から1.5%のキレート化剤;
- 0.1%から10%の湿潤剤;
- 0.1%から20%のエモリエント;
- 0.1%から30%の脂肪相;
- 0.01%から3%の防腐剤;
- 0から10%の乳化剤。
【0075】
本発明の1つの特定の実施態様においては、組成物はゲルの形態で、以下を含む:
- 0.1%から0.3%のナフトエ酸誘導体;
- 1%から10%の1つまたは複数のポリウレタンポリマーまたは誘導体;
- 0.1%から3%のゲル化剤;
- 0.01%から1.5%のキレート化剤;
- 0.1%から10%の湿潤剤;
- 0.01%から3%の防腐剤。
【0076】
本発明の他の特定の実施形態においては、組成物はローションの形態であり、水中に、以下を含む:
- 0.1%から0.3%のナフトエ酸誘導体;
- 3%の1つまたは複数のポリウレタンポリマーまたは誘導体、優先的にはタイプ2のポリオールプレポリマー;
- 0.2%のゲル化剤または懸濁化剤;
- 0.1%のキレート化剤;
- 2%から6%の、優先的には4%の湿潤剤;
- 0.1%から20%のエモリエント;
- 7%の脂肪相;
- 1%から1.5%の防腐剤;
- 4%から6%の乳化剤。
【0077】
本発明の対象は、また、医薬としての、前記の組成物である。
【0078】
本発明の対象は、また、前記の組成物を調製する方法である。この方法は、少なくとも1つのナフトエ酸誘導体を含む生理学的に許容可能なベヒクルを、少なくとも1つのポリウレタンポリマータイプの化合物またはその誘導体と混合する工程を含み、前記ナフトエ酸誘導体が、前記組成物中に分散していることを特徴とする。
【0079】
他の可能な賦形剤および添加剤を、化合物の化学的特性および選択した製剤形態に応じて導入しうる。
【0080】
本発明による組成物の調製は、選択した製剤形態によって2または4工程で実施し、追加の2工程を、クリーム、ローションまたはクリーム-ゲルなどのエマルジョンタイプの形態の調製のためだけに実施する。
【0081】
1つまたは他の工程へのポリオールプレポリマーの導入は、ポリオールプレポリマーの親油性または親水性特性に依存する。それ故、親油性特性のPP-2タイプのポリオールプレポリマーを、エマルジョンの脂肪相へ、ゲルのための中和工程後に、導入する。親水性であるPP-15タイプのポリオールプレポリマーを、ゲル化剤の分散後に、活性な水相へと導入する。
【0082】
本発明による組成物の調製は、それ故、以下の工程にしたがって実施する:
a) 活性な水相を得るために、ナフトエ酸誘導体を、少なくとも1つの湿潤剤、少なくとも1つのキレート化剤、少なくとも1つのゲル化剤と、場合によっては親水性乳化剤およびエモリエントと、水中で、前記ナフトエ酸誘導体が完全に分散するまで混合する;
b) 場合によっては、脂肪相を得るために、少なくとも親油性乳化剤、油および/または固体脂肪物質を防腐剤と混合して、エマルジョンを産生する;
c) 場合によっては、エマルジョンを得るために、b)で得られた前記脂肪相を、a)で得られた活性な水相へと導入する;
d) 必要であれば、望むpHを得るために、ゲル化剤中和剤を、c)で得られたエマルジョンまたはa)で得られた水相へと導入し、水の残りの量を加える;ポリウレタンポリマータイプの化合物またはその誘導体を、その親油性もしくは親水性特性に応じて、a)で得られた活性な水相もしくはb)で得られた脂肪相へと、または、d)の間に導入する。
【0083】
より具体的には、本発明による組成物を調製する方法は、以下の工程を含む:
(工程a:活性な水相の調製)
精製水、活性成分(アダパレン)、水中油型エマルジョンを調製する時は場合によっては親水性乳化剤(例えばArlacel 165FLまたはTween 80)、エモリエント(例えばグリセロールまたはプロピレングリコール)、湿潤剤(例えばSynperonic PE/L62またはSynperonic PE/L44)、キレート化剤(例えばEDTA)、ゲル化剤(例えばCarbopol、Pemulen TR1、Xantural、MethocelまたはSimulgel 600)を、デフロキュレイター(deflocculator)を使用して攪拌しながら、最終的な製品のためのリザーバーとして働くビーカーへと導入する。混合物を、完全に分散するまで加熱することなしに攪拌する。混合物が均一である場合、水相を、ウォーターバス上で60℃にし、防腐剤(例えばメチルパラベン)を導入する。
(工程b(任意):脂肪相の調製)
親油性乳化剤(例えばGlucate SS、Glucamate SSE 20またはBrij 721、Tefose 1500、Eumulgin B2 PH)、油性化合物(例えばisostearic olepal、Cetiol SN、Crodamol DA、Speziol C18、Miglyol 812またはCosbiol)および防腐剤(例えばフェノキシエタノールおよびプロピルパラベン)を、デフロキュレイターを使用して攪拌しながら、更なるビーカーへと導入する。混合物を、ウォーターバス上で60℃にし、均一化後、存在するならば、揮発性シリコーンを組成物に導入する。
(工程c(任意):乳化)
乳化を実施するために、脂肪相を、水相へと、60℃の温度で、デフロキュレイターを使用して攪拌しながら穏やかに導入する。加熱を5分間維持し、その後、ホットプレートを取り除き、穏やかに製品を冷却させる。攪拌を、粘度に応じて調整する。
工程bおよびcは任意であり、クリーム、ローションまたはクリーム-ゲルなどのエマルジョンタイプの形態の調製のためだけに実施する。
(工程d:中和)
ゲル化剤中和剤(例えばトリエタノールアミンまたは10%の水酸化ナトリウム溶液)を、必要であれば、40℃で、5.5±0.5のpHまで、導入する。その後、製品は、より濃いコンシステンシーを有する。製造の終了時に、pHを再度調べる。標準の範囲であれば、十分な量の水を加える。アダパレン活性成分の良好な分散物を確実にするために、製品を、最終的に、均一化し(顕微鏡による観察によって、凝集が存在しない均一な分散物を明らかにする)、その後、製品をパッケージングする。
【0084】
ポリウレタンポリマータイプの化合物は、好ましくは、工程a)の間に(親水性ポリマーを含むゲルもしくはエマルジョン調合物について)または工程b)の間に(親油性ポリマーを含むエマルジョン調合物について)または工程d)の間に(親油性ポリマーを含むゲル調合物について)、親油性または親水性特性に応じて導入するポリオールプレポリマーである。
【0085】
本発明は、また、化粧品および皮膚科学における、前記の新規の化合物の使用に関する。
【0086】
特に、本発明は、細胞の分化および増殖に関係する角化症と関連した皮膚疾患、特に、単純座瘡、面皰性座瘡、丘疹膿疱性座瘡、パプロコメドニック座瘡、嚢胞性座瘡、集簇性座瘡、うなじのケロイド座瘡、再発性粟状座瘡、壊死性座瘡、新生児座瘡、職業性座瘡、酒さ、老年性座瘡、太陽光線性座瘡および投薬関連座瘡を治療および/または予防するための医薬組成物の製造のための、前記の組成物の使用に関する。
【0087】
より特には、本発明は、単純座瘡を予防または治療するための医薬組成物の製造のための、前記の組成物の使用に関する。
【0088】
本発明による前記組成物は、優先的には、局所的に投与する。
【0089】
加えて、本発明は、また、日光の有害な態様に対する防護において、もしくは生理学的に脂っぽい皮膚の治療において、座瘡の傾向のある皮膚の治療のための、皮膚もしくは毛髪の脂っぽい外観を対処するための、または、光-誘導性もしくは加齢による老化を予防および/もしくは対処するための、本発明による組成物の美容的使用に関する。
【0090】
本発明は、ここで、以下の実施例によって例証する。
【実施例】
【0091】
(実施例1:アダパレンおよびポリウレタンポリマーを含むゲルタイプの調合物の製造)
製造を、以下の4つの工程で実施する:
[工程1:水相の調製]
精製水、EDTAおよびメチルパラベンをビーカーに入れる。その後、溶液を80℃±5℃へと上げるために、ビーカーを、ウォーターバス上に(またはホットプレート上に)静置し、パラベンを溶解させる。次に、ビーカーを、デフロキュレーティングパドル(deflocculating paddle)を備えたRayneriブレンダーで、全体が分散するまで攪拌する。その後、Carbopol 980 NFを、シャワーとして加え、混合物を完全に分散するまで攪拌する。
[工程2:活性相の調製]
プロピレングリコールおよびSynperonic PE/L62を、更なるビーカーに入れる。その後、アダパレンを導入し、ビーカーを、Ultra-Turraxブレンダー(パドル:540rpm;ターボミキサー:20500rpm)を使用して攪拌する。アダパレンが完全に分散した時に(顕微鏡による観察によって、凝集が存在しない均一な分散物を明らかにする)、その後、この相を、残りの調合物に添加する。
[工程3:中和]
調合物をpH5.5±0.5にするために、十分な量の水酸化ナトリウム水溶液10%(m/m)を、調合物に加える。
[工程4]
ポリウレタンポリマー(ポリオールプレポリマー-2)を導入する。
【0092】
混合物を、十分量の水を用いて、必要な容量にする。
【0093】
(実施例2:0.1%のアダパレンおよびポリオールプレポリマー-2を含むゲルタイプの調合物)
調合物を、実施例1に記載の方法に従って、調製する。
【0094】
【表1】

【0095】
(実施例3:0.1%のアダパレンおよびポリオールプレポリマー-2を含むゲルタイプの調合物)
調合物を、実施例1に記載の方法に従って、調製する。
【0096】
【表2】

【0097】
(実施例4:0.1%のアダパレンおよびポリオールプレポリマー-2を含むゲルタイプの調合物)
調合物を、実施例1に記載の方法に従って、調製する。
【0098】
【表3】

【0099】
(実施例5:実施例2の調合物の化学的安定性)
【0100】
【表4】

【0101】
実施例2で記載のゲル調合物の化学的安定性は、室温で(RT)、6ヶ月間にわたって、HPLCによって測定する。この結果によって、この組成物は、室温で、6ヶ月間、化学的に安定であることが示される。
【0102】
(実施例6:実施例3の調合物の化学的安定性)
【0103】
【表5】

【0104】
実施例3で記載のゲル調合物の化学的安定性は、室温で(RT)、6ヶ月間にわたって、HPLCによって測定する。この結果によって、この組成物は、室温で、6ヶ月間、そして一定のpHで、化学的に安定であることが示される。
【0105】
更にその上、組成物のpHを測定し、良好な安定性を示す。
【0106】
(実施例7:本発明によるクリーム-ゲル、クリームまたはローションタイプの水中油型エマルジョン調合物を製造するための一般的な方法)
製造方法は、以下の4つの工程で実施する:
[工程1:活性な水相の調製]
精製水、活性成分(アダパレン)、Arlacel 165FLおよびTween 80などの親水性乳化剤、グリセロールおよびプロピレングリコールなどのエモリエント、Synperonic PE/L44などの湿潤剤、EDTAなどのキレート化剤、ならびにCarbopol、Pemulen TR1、Xantural、MethocelまたはSimulgel 600などのゲル化剤を、デフロキュレイターを使用して攪拌しながら、最終的な製品のためのリザーバーとして働くビーカーへと導入する。混合物を、完全に分散するまで加熱することなしに攪拌する。混合物が均一である場合、水相を、ウォーターバス上で60℃にし、メチルパラベンを導入する。
[工程2:脂肪相の調製]
Glucate SS/Glucamate SSE 20またはBrij 721、Tefose 1500、Eumulgin B2 PHなどの親油性乳化剤、isostearic olepal、Cetiol SN、Crodamol DA、Speziol C18、Miglyol 812またはCosbiolなどの油性化合物、ならびにフェノキシエタノールおよびプロピルパラベンなどの防腐剤を、デフロキュレイターを使用して攪拌しながら、更なるビーカーへと導入する。混合物を、ウォーターバス上で60℃にし、均一化後、存在するならば、揮発性シリコーンを組成物に導入する。
[工程3:ポリオールプレポリマーの導入]
ポリオールプレポリマーが、親油性であるポリオールプレポリマー-2である場合、秤量してから、脂肪相へと導入する。一方、親水性であるポリオールプレポリマー-15である場合、ゲル化剤の分散後、水相へと導入する。
[工程4:乳化]
乳化を実施するために、脂肪相を、水相へと、60℃の温度で、デフロキュレイターを使用して攪拌しながら穏やかに導入する。
加熱を5分間維持し、その後、ホットプレートを取り除き、穏やかに製品を冷却させる。
攪拌を、粘度に応じて調整する。40℃で、ゲル化剤中和剤(例えばトリエタノールアミンまたは10%水酸化ナトリウム溶液)を、必要であれば、pH5.5±0.5まで導入する。その後、製品は、より濃いコンシステンシーを有する。製造の終了時に、pHを再度調べる。標準の範囲であれば、十分な量の水を加える。活性ナアダパレン成分の良好な分散物を確実にするために、製品を、最終的に、均一化し(顕微鏡による観察によって、凝集が存在しない均一な分散物を明らかにする)、その後、製品をパッケージングする。
【0107】
(実施例8:0.1%のアダパレンおよびポリオールプレポリマー-2を含むクリームタイプの調合物)
調合物を、実施例7に記載の方法に従って、調製する。
【0108】
【表6】

【0109】
(実施例9:0.1%のアダパレンおよびポリオールプレポリマー-2を含むクリームタイプの調合物)
調合物を、実施例7に記載の方法に従って、調製する。
【0110】
【表7】

【0111】
(実施例10:0.1%のアダパレンおよびポリオールプレポリマー-15を含むクリームタイプの調合物)
調合物を、実施例7に記載の方法に従って、調製する。
【0112】
【表8】

【0113】
(実施例11:0.1%のアダパレンおよびポリオールプレポリマー-15を含むクリームタイプの調合物)
調合物を、実施例7に記載の方法に従って、調製する。
【0114】
【表9】

【0115】
(実施例12:0.1%のアダパレンおよびポリオールプレポリマー-2を含むローションタイプの調合物)
調合物を、実施例7に記載の方法に従って、調製する。
【0116】
【表10】

【0117】
(実施例13:0.1%のアダパレンおよびポリオールプレポリマー-2を含むローションタイプの調合物)
調合物を、実施例7に記載の方法に従って、調製する。
【0118】
【表11】

【0119】
(実施例14:0.1%のアダパレンおよびポリオールプレポリマー-2を含むローションタイプの調合物)
調合物を、実施例7に記載の方法に従って、調製する。
【0120】
【表12】

【0121】
(実施例15:0.1%のアダパレンおよびポリオールプレポリマー-2を含むローションタイプの調合物)
調合物を、実施例7に記載の方法に従って、調製する。
【0122】
【表13】

【0123】
(実施例16:0.1%のアダパレンおよびポリオールプレポリマー-2を含むローションタイプの調合物)
調合物を、実施例7に記載の方法に従って、調製する。
【0124】
【表14】

【0125】
(実施例17:0.1%のアダパレンおよびポリオールプレポリマー-2を含むローションタイプの調合物)
調合物を、実施例7に記載の方法に従って、調製する。
【0126】
【表15】

【0127】
(実施例18:0.3%のアダパレンおよびポリオールプレポリマー-2を含むローションタイプの調合物)
調合物を、実施例7に記載の方法に従って、調製する。
【0128】
【表16】

【0129】
(実施例19:0.3%のアダパレンおよびポリオールプレポリマー-2を含むクリームタイプの調合物)
調合物を、実施例7に記載の方法に従って、調製する。
【0130】
【表17】

【0131】
(実施例20:0.3%のアダパレンおよびポリオールプレポリマー-2を含むクリーム-ゲルタイプの調合物)
調合物を、実施例7に記載の方法に従って、調製する。
【0132】
【表18】

【0133】
(実施例21:0.3%のアダパレンおよびポリオールプレポリマー-2を含むクリーム-ゲルタイプの調合物)
調合物を、実施例7に記載の方法に従って、調製する。
【0134】
【表19】

【0135】
(実施例22:0.1%のアダパレンおよび3%のPP-2を含むローションタイプの調合物)
調合物を、実施例7に記載の方法に従って、調製する。
【0136】
【表20】

【0137】
(実施例23:0.3%のアダパレンおよび3%のPP-2を含むローションタイプの調合物)
調合物を、実施例7に記載の方法に従って、調製する。
【0138】
【表21】

【0139】
ゼロ時間での仕様:
【0140】
【表22】

【0141】
この組成物の物理的および化学的安定性を測定した。結果を以下に示す。
【0142】
【表23】

【0143】
それ故、組成物は、物理的および化学的に安定である。
【0144】
(実施例24:0.3%のアダパレンおよび3%のPP-2を含むクリーム-ゲルタイプの調合物)
調合物を、実施例7に記載の方法に従って、調製する。
【0145】
【表24】

【0146】
ゼロ時間での仕様:
【0147】
【表25】

【0148】
この組成物の物理的および化学的安定性を測定した。結果を以下に示す。
【0149】
【表26】

【0150】
それ故、組成物は、物理的および化学的に安定である。
【0151】
(実施例25:0.3%のアダパレンおよび3%のPP-2を含むローションタイプの調合物)
調合物を、実施例7に記載の方法に従って、調製する。
【0152】
【表27】

【0153】
ゼロ時間での仕様:
【0154】
【表28】

【0155】
この組成物の物理的および化学的安定性を測定した。結果を以下に示す。
【0156】
【表29】

【0157】
それ故、組成物は、物理的および化学的に安定である。
【0158】
(実施例26:0.3%のアダパレンおよび3%のPP-2を含むクリーム-ゲルタイプの調合物)
調合物を、実施例7に記載の方法に従って、調製する。
【0159】
【表30】

【0160】
ゼロ時間での仕様:
【0161】
【表31】

【0162】
この組成物の物理的および化学的安定性を測定した。結果を以下に示す。
【0163】
【表32】

【0164】
それ故、組成物は、物理的および化学的に安定である。
【0165】
(実施例27:0.3%のアダパレンおよび3%のPP-2を含むローションタイプの調合物)
調合物を、実施例7に記載の方法に従って、調製する。
【0166】
【表33】

【0167】
ゼロ時間での仕様:
【0168】
【表34】

【0169】
この組成物の物理的および化学的安定性を測定した。結果を以下に示す。
【0170】
【表35】

【0171】
それ故、組成物は、物理的および化学的に安定である。
【0172】
(実施例28:in vitro放出-浸透の試験)
本試験は、1% PP-2を含むゲル中で0.1%(m/m)で調合したアダパレン(実施例2の調合物)、3% PP-2を含むゲル中で0.1%(m/m)で調合したアダパレン(実施例3の調合物)および0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲル中のアダパレンの、in vitroでの、閉塞なしの皮膚への放出-浸透を比較することを意図する。
【0173】
吸着試験は、16時間、静止状態で増加させた、摘出したヒトの皮膚を使用して実施した。女性(68歳)から得られた皮膚の3つのサンプルを使用した。各調合物(10μgのアダパレン)の10mgを、皮膚の1cm2の領域に塗布した。時間経過後に回収した液体画分のアダパレン濃度と、試験の終了時に皮膚に残ったアダパレン濃度を、蛍光検出を用いたHPLCを使用して評価した(有効な方法に基づく。定量限界:1ng.mL-1)。
【0174】
実験結果を、以下の表に示す。
【0175】
【表36】

【0176】
これらの結果は、試験した調合物に関係なく、アダパレンが主に表皮(角質層を含む)に分布し、より少ない程度に、真皮に分布していることを示している。実施例2および3の調合物の表皮/真皮の比率は、0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲルの表皮/真皮の比率よりも顕著に高い。これらの結果は、本発明の調合物中のPP-2の存在は、皮膚中のアダパレンの分布を、角質層および表皮のより上層に主にアダパレンを保持することによって、大幅に変更することを示唆している。それ故、この実施例によって、本発明による調合物の「リザーバー効果」が実証される。
【0177】
(実施例29:BALB/cマウスにおける許容性試験)
本試験は、0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲルの刺激作用と、様々な濃度でポリウレタンポリマーを含むゲル形態の3つの0.1%アダパレン調合物の刺激作用とを、更にはプラセボの刺激作用とを、6日間にわたる局所的塗布を繰り返した後に、BALB/cマウスの耳の皮膚上で、比較することを意図する。
【0178】
試験サンプルの毎日の局所的塗布(20μl)を、10のグループに分けたBALB/cマウス(約8週齢のメスマウス)の耳の内面に、6日間にわたって一日当たり一回の割合で、実施する。試験サンプルを以下に示す:
グループ1:アセトン(コントロールベヒクル)
グループ2:プラセボリファレンスゲル(コントロールベヒクル)
グループ3:実施例2(1% PP-2)のプラセボ調合物(0.1%のアダパレンを含まず)(コントロールベヒクル)
グループ4:実施例3の(3% PP-2)のプラセボ調合物(0.1%のアダパレンを含まず)(コントロールベヒクル)
グループ5:実施例4の(10% PP-2)のプラセボ調合物(0.1%のアダパレンを含まず)(コントロールベヒクル)
グループ6:0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲル
グループ7:実施例2の調合物(1% PP-2)
グループ8:実施例3の調合物(3% PP-2)
グループ9:実施例4のプラセボ調合物(10% PP-2)
グループ10:アセトン+0.1%(m/m)アダパレン
【0179】
評価は、Oditestの手法によって、および、2日目から19日目の動物の臨床的観察によって、耳の厚さを測定することによって実施する。
【0180】
結果を以下の表および図1から4に示す。
【0181】
図1は、以下の様々な試験サンプルについての、2日目から19日目のマウスの耳の平均の厚さのカイネティクスを示す:
・アセトン(曲線(1A))
・プラセボリファレンスゲル(曲線(1B))
・実施例2のプラセボ(1% PP-2)(曲線(1C))
・実施例3のプラセボ(3% PP-2)(曲線(1D))
・実施例4のプラセボ(10% PP-2)(曲線(1E))
【0182】
これらのプラセボカイネティクスは、使用した様々なプラセボ調製物が刺激性を有さず、アセトンのように作用することを示す。
【0183】
図2は、以下の様々な試験サンプルについての、2日目から19日目のマウスの耳の平均の厚さのカイネティクスを示す:
・アセトン(曲線(2A))
・アセトン+0.1%アダパレン(曲線(2B))
・プラセボリファレンスゲル(曲線(2C))
・0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲル(曲線(2D))
・実施例2のプラセボ(1% PP-2)(曲線(2E))
・実施例2(1% PP-2)(曲線(2F))
【0184】
これらのカイネティクスは、0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲルが、プラセボ(プラセボリファレンスゲル)に対する曲線下面積の31%の増加を伴いながら、6日目から刺激性を有することを示す。同じように、アセトン+0.1%アダパレンサンプルも、刺激性を有し、プラセボ(アセトン)に対する曲線下面積が30%増加することを示す。驚くべきことに、実施例2の調合物(1% PP-2)は、0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲルの半分の刺激性しか有さず、プラセボ(実施例2のプラセボ(1% PP-2))に対する曲線下面積が15%しか増加しない。
【0185】
図3は、以下の様々な試験サンプルについての、2日目から19日目のマウスの耳の平均の厚さのカイネティクスを示す:
・アセトン(曲線(3A))
・アセトン+0.1%アダパレン(曲線(3B))
・プラセボリファレンスゲル(曲線(3C))
・0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲル(曲線(3D))
・実施例3のプラセボ(3% PP-2)(曲線(3E))
・実施例3(3% PP-2)(曲線(3F))
【0186】
驚くべきことに、これらのカイネティクスも、実施例3の調合物が、0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲルよりも弱い刺激性を有することを示す。実施例3の調合物は、また、プラセボ(実施例2のプラセボ(3% PP-2))に対する曲線下面積が19%しか増加しない。
【0187】
図4は、以下の様々な試験サンプルについての、2日目から19日目のマウスの耳の平均の厚さのカイネティクスを示す:
・アセトン(曲線(4A))
・アセトン+0.1%アダパレン(曲線(4B))
・プラセボリファレンスゲル(曲線(4C))
・0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲル(曲線(4D))
・実施例4のプラセボ(10% PP-2)(曲線(4E))
・実施例4(10% PP-2)(曲線(4F))
【0188】
これらのカイネティクスは、実施例4の調合物が、0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲルよりも弱い刺激性を有すること示す。実施例3の調合物(3% PP-2)は、同じように、プラセボ(実施例4のプラセボ(3% PP-2))に対する曲線下面積が22%増加する。
【0189】
実施例2から4に記載の様々な調合物のカイネティクスの比較を行ったところ、これらの3つの調合物は、非常に類似のカイネティクスを有することが示される。これらを区別することは不可能である。驚くべきことに、これらの3つの調合物は、全て、0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲルおよびアセトン中の0.1%(m/m)のアダパレンよりも弱い刺激性を有する。
【0190】
【表37】

【0191】
試験結果によって、D1からD6において、BALB/cマウスの耳へ、20μlの試験サンプルの局所的塗布を繰り返した後、以下のことが示される。
- 試験に用いたプラセボ(それぞれ「プラセボリファレンスゲル」、「実施例2のプラセボ」、「実施例3のプラセボ」および「実施例4のプラセボ」)は、刺激性を有さず、完全に重ねることができるカイネティクスを示す;
- 試験に用いた実施例2、3および4の調合物は、それぞれ、各プラセボに対して、15%、19%および22%の耳の厚さの増加をもたらす。これらは、全て、「0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲル」よりも弱い刺激性を有し、お互いを区別することが困難である。
【0192】
この実施例は、本発明による調合物が、「0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲル」よりも良好なin vivo許容性を示すことを実証する。
【0193】
以下の表は、0.1%のアダパレンを含む様々な調合物を非処理のプラセボと比較し、許容性に対するポリウレタンポリマーの効果を実証するものである。
【0194】
【表38】

【0195】
それ故、ポリウレタンポリマーの含量:1%、3%または10%にかかわらず、調合物は、ポリウレタンポリマーを有さない場合よりも2倍良好な許容性を有する。
【0196】
(実施例30:Rhinoマウスに対する面皰活性(comedolytic activity)の試験)
本試験は、0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲルの面皰活性と、様々な濃度でポリウレタンポリマーを含むゲル形態の2つの0.1%アダパレン調合物の面皰作用とを、更にはプラセボの面皰作用とを、18日間にわたる局所的塗布を繰り返した後に、RHINO FVB/N RJ-hrrhマウス(Rhino)の背中の皮膚上で、比較することを意図する。
【0197】
試験サンプルの毎日の局所的塗布(50μl)を、7のグループに分けたRhinoマウス(約7週齢のマウス)の背中の皮膚に、18日間にわたって一日当たり一回の割合で、実施する。試験サンプルを以下に示す:
グループ1:アセトン(コントロールベヒクル)
グループ2:実施例3の(3% PP-2)のプラセボ調合物(0.1%のアダパレンを含まず)(コントロールベヒクル)
グループ3:アセトン+0.01%(m/m)2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)ベンゾ[b]チオフェン-6-カルボン酸(ポジティブコントロール)
グループ4:アセトン+0.1%(m/m)アダパレン
グループ5:0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲル
グループ6:実施例2の調合物(1% PP-2)
グループ7:実施例3の調合物(3% PP-2)
【0198】
許容性評価を、19日間にわたって一週間に3回、以下の観察パラメーター:浮腫、紅斑および鱗片を用いた、背中の表皮の臨床的観察によって実施する。
【0199】
面皰活性を、D4、D11およびD19で経表皮水分喪失(TWL)を測定することによって、表皮の厚さを測定することによって、面皰/cmの数をカウントすることによって、および、D1、D4、D11およびD19に動物の体重を測定することによって、評価する。
【0200】
図5は、以下の様々な試験サンプルについての、1日目から19日目の許容性評価の曲線下面積の結果を示す:
・アセトン(コントロールベヒクル)(曲線(5A))
・0.1%のアダパレンを含まない実施例3の(3% PP-2)の調合物(コントロールベヒクル)(曲線(5B))
・アセトン+0.01%(m/m)2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)ベンゾ[b]チオフェン-6-カルボン酸(ポジティブコントロール)(曲線(5C))
・アセトン+0.1%(m/m)アダパレン(曲線(5D))
・0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲル(曲線(5E))
・実施例2の調合物(1% PP-2)(曲線(5F))
・実施例3の調合物(3% PP-2)(曲線(5G))
【0201】
この試験の結果は、実施例2および3の調合物が、0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲルよりも弱い刺激を有することを示す。実施例2(1% PP-2)および実施例3(3% PP-2)のこれらの調合物は、それぞれ、0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲルに対する曲線下面積が45%および22%減少する。
【0202】
図6は、以下の様々な試験サンプルについての、18日間の局所的処理後の経表皮水分喪失(TWL)の曲線下面積(AUC)の結果を示す:
・アセトン(コントロールベヒクル)(曲線(6A))
・0.1%のアダパレンを含まない実施例3の(3% PP-2)の調合物(コントロールベヒクル)(曲線(6B))
・アセトン+0.01%(m/m)2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)ベンゾ[b]チオフェン-6-カルボン酸(ポジティブコントロール)(曲線(6C))
・アセトン+0.1%(m/m)アダパレン(曲線(6D))
・0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲル(曲線(6E))
・実施例2の調合物(1% PP-2)(曲線(6F))
・実施例3の調合物(3% PP-2)(曲線(6G))
【0203】
TWLは、皮膚の表面上の厚さ10mmの層に確立した水蒸気勾配を測定することによって、皮膚バリアの機能障害を定量する。
【0204】
この試験の結果は、実施例2および3の調合物が、それぞれ、TWLを129%および118%増加することを示す。これらの値は、アセトン+0.01%(m/m)2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)ベンゾ[b]チオフェン-6-カルボン酸調合物(332%)およびアセトン+0.1%(m/m)アダパレン調合物(299%)について観察されたTWLの増加よりも極めて小さく、そして、0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲル(152%)について観察されたTWLの増加よりも小さい。それ故、図6は、本発明の調合物が、0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲルよりも皮膚バリアーの良好な保護をもたらすことを示す。
【0205】
図7は、以下の様々な試験サンプルについての、18日間の局所的処理後の表皮の厚さの測定結果を示す:
・アセトン(コントロールベヒクル)(曲線(7A))
・0.1%のアダパレンを含まない実施例3の(3% PP-2)の調合物(コントロールベヒクル)(曲線(7B))
・アセトン+0.01%(m/m)2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)ベンゾ[b]チオフェン-6-カルボン酸(ポジティブコントロール)(曲線(7C))
・アセトン+0.1%(m/m)アダパレン(曲線(7D))
・0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲル(曲線(7E))
・実施例2の調合物(1% PP-2)(曲線(7F))
・実施例3の調合物(3% PP-2)(曲線(7G))
【0206】
この試験の結果は、表皮の厚さの同等な増加が、アダパレンを含む全ての調合物について観察されることを示す。
【0207】
図8は、以下の様々な試験サンプルについての、18日間の局所的処理後のRhinoマウスの背中のセンチメートル(cm)当りの面皰の数のカウントの結果を示す:
・アセトン(コントロールベヒクル)(曲線(8A))
・0.1%のアダパレンを含まない実施例3の(3% PP-2)の調合物(コントロールベヒクル)(曲線(8B))
・アセトン+0.01%(m/m)2-(5,5,8,8-テトラメチル-5,6,7,8-テトラヒドロナフタレン-2-イル)ベンゾ[b]チオフェン-6-カルボン酸(ポジティブコントロール)(曲線(8C))
・アセトン+0.1%(m/m)アダパレン(曲線(8D))
・0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲル(曲線(8E))
・実施例2の調合物(1% PP-2)(曲線(8F))
・実施例3の調合物(3% PP-2)(曲線(8G))
【0208】
この試験の結果は、プラセボ(アセトンまたは0.1%のアダパレンを含まない実施例3の(3% PP-2)の調合物)を用いて処理した皮膚が、58から60の、よく似た高い数のセンチメートル当りの面皰を示すことを表している。一方、活性成分アダパレンを含む調合物(アセトン+0.1%(m/m)アダパレン、0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲル、実施例2および3の調合物)で処理した皮膚は、25から27の、同程度の低い数のセンチメートル当りの面皰を示す。図8により、本発明による調合物は、0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲルに匹敵する面皰活性を有することは明らかである。
【0209】
以下の表は、1日目から19日目の、試験に用いた7つのグループのマウスの体重の変化を示す:
【0210】
【表39】

【0211】
この試験の結果は、18日間の局所的処理後に、動物がいかなる体重減少を示さないことを表す。更にその上、上記の表は、コントロールで処理した動物および様々なアダパレン調合物で処理した動物の間で顕著な差異は存在しないことを示す。
【0212】
この実施例および上記の試験は、本発明による調合物が、0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲルと同等の面皰活性を有するのに対して、0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲルよりも良好なin vivo許容性を示すことを実証する。
【0213】
(実施例31:in vitro放出-浸透の試験)
本試験は、3% PP-2を含むローション中で0.3%(m/m)で調合したアダパレン(実施例23の調合物)、3% PP-2を含むローション中で0.3%(m/m)で調合したアダパレン(実施例25の調合物)および0.1%のアダパレンを含むリファレンスゲル中のアダパレンの、in vitroでの、閉塞なしの皮膚への放出-浸透を比較することを意図する。
【0214】
吸着試験は、16時間、静止状態で増加させた、摘出したヒトの皮膚を使用して実施した。女性(68歳)から得られた皮膚の3つのサンプルを使用した。各調合物(30μgのアダパレン)の30mgを、皮膚の1cm2の領域に塗布した。時間経過後に回収した液体画分のアダパレン濃度と、試験の終了時に皮膚に残ったアダパレン濃度を、蛍光検出を用いたHPLCを使用して評価した(有効な方法に基づく。定量限界:1ng.mL-1)。
【0215】
実験結果を以下の表に示す:
【0216】
【表40】

【0217】
これらの結果は、試験した発明調合物において、アダパレンは、おもに角質層に分布することを示す。これらの結果は、本発明による調合物中のPP-2の存在が、活性成分の浸透を妨げないことを示唆する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理学的に許容可能な媒体中に、少なくとも1つのナフトエ酸誘導体および少なくとも1つのポリウレタンポリマータイプの化合物またはその誘導体を含み、前記ナフトエ酸誘導体が前記組成物中で分散形態である、組成物であって、ソーパルメットベリーズの抽出物を含まない組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−184258(P2012−184258A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−138489(P2012−138489)
【出願日】平成24年6月20日(2012.6.20)
【分割の表示】特願2008−530661(P2008−530661)の分割
【原出願日】平成18年9月15日(2006.9.15)
【出願人】(599045604)ガルデルマ・リサーチ・アンド・デヴェロップメント (117)
【Fターム(参考)】