局部発振器
【課題】デジタル制御発振器の出力と参照信号とが非同期であっても、安定したPLL動作を確立できる局部発振器を提供することを目的とする。
【解決手段】デジタル制御発振器の発振信号と前記参照信号との位相差を発振器分数位相として出力し、また、前記発振信号の位相が、前記参照信号の位相に対して、前記発振信号の半周期よりも位相が遅れている場合に「−1」、遅れていない場合に「+1」の補整情報を出力する時間デジタル変換器と、|前記補整情報−予測位相情報|>|前記補整情報+前記第1位相情報−前記予測位相情報|の場合に、前記第1位相情報に前記補整情報を加算したものを第2位相情報として出力し、|補整情報−発振器予測位相|>|補整情報+第1位相情報−発振器予測位相|でない場合に、前記第1位相情報を第2位相情報として出力する補正部と、を備えている。
【解決手段】デジタル制御発振器の発振信号と前記参照信号との位相差を発振器分数位相として出力し、また、前記発振信号の位相が、前記参照信号の位相に対して、前記発振信号の半周期よりも位相が遅れている場合に「−1」、遅れていない場合に「+1」の補整情報を出力する時間デジタル変換器と、|前記補整情報−予測位相情報|>|前記補整情報+前記第1位相情報−前記予測位相情報|の場合に、前記第1位相情報に前記補整情報を加算したものを第2位相情報として出力し、|補整情報−発振器予測位相|>|補整情報+第1位相情報−発振器予測位相|でない場合に、前記第1位相情報を第2位相情報として出力する補正部と、を備えている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局部発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無線LAN機器等の無線通信装置では、PLL(Phase Locked Loop)回路の制御信号をすべてデジタル化したADPLL(All Digital PLL)回路が用いられている(例えば特許文献1参照)。ADPLL回路は、アナログ回路をデジタル回路に置換しているため、プロセスの進歩により省スペース化、省電力化が可能となる。
【0003】
ADPLL回路は、デジタルループフィルタ、デジタル制御発振器(DCO:Digitally-Controlled Oscillator)、カウンタ、及び時間デジタル変換器(TDC:Time-to-Digital Converter)を備える。カウンタはDCOの出力CKVをカウントし、DCOの出力CKVで同期化した参照信号に基づいてカウント値を出力する。TDCは、参照信号REFに同期して、DCOの出力CKVの1周期以下の位相差を取り出す。カウント値と位相差dとを加算した値と、位相制御信号との比較結果(差分)がデジタルループフィルタに与えられる。DCOの発振周波数は、デジタルループフィルタの出力に基づいて制御される。
【0004】
DCOの出力CKVと、参照信号REFとは非同期である。すなわち、ADPLL回路では、同じ回路内に、非同期のクロックで動作する2つの回路(カウンタ及びTDC)の出力が加算されていることになる。そのため、カウンタの読み出し値がずれて、PLL動作が不安定になるおそれがあった。
【0005】
特に問題となるのは、(1)DCOの出力CKVから位相情報を得るための回路が機能の異なる2つの回路(カウンタおよびTDC)から構成されている点と、(2)カウンタの出力がDCOの出力CKVで同期化された参照信号REFである点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−21954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、デジタル制御発振器の出力と参照信号とが非同期であっても、安定したPLL動作を確立できる局部発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、発振器制御ワードに応じた発振周波数の発振信号を出力するデジタル制御発振器と、前記発振信号をカウントし、前記発振信号で同期化された参照信号に基づいてカウント値を発振器整数位相として出力するカウンタと、前記発振信号と前記参照信号との位相差を発振器分数位相として出力し、また、前記発振信号の位相が、前記参照信号の位相に対して、前記発振信号の半周期よりも位相が遅れている場合に「−1」、遅れていない場合に「+1」の補整情報を出力する時間デジタル変換器と、前記発振器整数位相と前記発振器分数位相とを加算し、加算値を第1位相情報として出力する加算器と、1クロック前の周波数制御ワードと第2位相情報との加算出力を発振器予測位相として出力する遅延器と、|前記第1位相情報−発振器予測位相|>|前記第1位相情報+補整情報−前記発振器予測位相|の場合に、前記第1位相情報に前記補整情報を加算したものを第2位相情報として出力し、|前記第1位相情報−発振器予測位相|>|前記第1位相情報+前記補整情報−発振器予測位相|でない場合に、前記第1位相情報を第2位相情報として出力する補正部と、参照位相と前記第2位相情報との差分を平滑化して、前記発振器制御ワードを出力するフィルタと、を備えた局部発振器が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、デジタル制御発振器の出力と参照信号とが非同期であっても、安定したPLL動作を確立することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本実施の形態に係るADPLL(All Digital Phased Locked Loop)の概略構成を示す図である。
【図2】図2は、カウンタの期待値ズレを説明するためのタイミングチャートである。
【図3】図3は、TDCの構成例を示す図である。
【図4】図4は、TDCコアの構成例を示す図である。
【図5】図5は、TDCコアの各信号のタイミングチャートの一例を示す図である。
【図6】図6は、実施の形態2に係るTDCの構成例を示す図である。
【図7】図7は、実施の形態2のTDCで誤動作の検出精度を上げることが可能となる理由を説明するための図である。
【図8】図8は、実施の形態3に係るTDCの構成例を示す図である。
【図9】図9は、TDCコアの構成例を示す図である。
【図10】図10は、TDCコアの各信号のタイミングチャートの一例を示す図である。
【図11】図11は、変形例に係るTDCの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものまたは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態に係るADPLL(All Digital Phased Locked Loop)の概略構成例を示す図である。図2は、カウンタの期待値ズレを説明するためのタイミングチャートである。
【0013】
図2を参照して、従来の問題であるカウンタの期待値ズレを説明する。上述したように、DCOの発振信号CKVと、参照信号REFとは非同期であるため、カウンタの読出し値が期待値とずれる可能性がある。図2に示すように、カウンタの期待値ズレは、参照信号REFとDCOの発振信号CKVのエッジが近い時に生じやすい。TDCから出力される位相差Δφは、カウンタから出力される値Nと加算されるべきである。しかし、参照信号REFの立ち上がりが、発振信号CKVの立ち上がりに近い場合、例えば、(a)に示すように、参照信号REFが発振信号CKVよりわずかに早く立ち上がっている場合は、カウンタ2の出力CNTVがずれて、位相差Δφと、値N+1が加算されるおそれがある(正しいデータ:N+1+Δφ、エラーデータN+2+Δφ)。また、(b)に示すように、参照信号REFが発振信号CKVよりわずかに遅く立ち上がっている場合は、カウンタの出力値CNTVがずれて、位相差Δφと、値Nが加算されないおそれがある(正しいデータ:N+2+Δφ、エラーデータN+1+Δφ)。
【0014】
本実施の形態では、DCO1の位相情報そのものと予測値とを複合的に比較することで、位相情報の非同期読み出しにおける誤り率を低減させている。
【0015】
本実施の形態に係るADPLLは、図1に示すように、DCO1、カウンタ2と、フリップフロップ3と、TDC4と、アキュムレータ(累算器)5、加算器6と、減算器7と、デジタルフィルタ8と、ゲイン補正器9と、補正部10と、加算器11と、遅延器12とを備えている。
【0016】
DCO1は、発振器制御ワードOTW(Oscillator Tuning Word)により離散的に発振周波数が制御可能な発振器であり、発振器制御ワードOTWに応じた発振信号CKV(Oscillator Output Signal)を出力する。DCO1は、例えば複数の(MOS)バラクタを2値制御することによって実現される。
【0017】
フリップフロップ3は、DCO1の発振信号CKV(Oscillator Output Signal)をクロック入力として、参照信号REFの値をラッチして出力する。すなわち、フリップフロップ110の出力信号は、DCO1の発振信号CKVで同期化された参照信号REFとなる。
【0018】
カウンタ2は、DCO1の発振信号CKVがクロックとして与えられるアキュムレータ2aを有する。カウンタ2は、フリップフロップ3の出力信号がクロックとして与えられ、このクロックに同期して、アキュムレータ2aのカウント値を発振器整数位相φRFiとして、加算器6に出力する。つまり、カウンタ2は、DCO1の発振信号CKVに同期して動作する回路となる。
【0019】
TDC4は、DCO1の発振信号CKVと参照信号REFとの位相差を、DCO1の発振信号CKVの1周期より細かい精度で、デジタル表現できる時間計測デバイスである。TDC4は参照信号REFに同期して動作する回路である。すなわち、TDC4は、カウンタ2と非同期のクロックで動作する。TDC4は、発振信号CKVと参照信号REFとの位相差を発振器分数位相φRFfとして加算器6に出力する。また、発振信号CKVの位相が、参照信号REFの位相に対して、発振信号CKVの半周期よりも位相が遅れている場合に「−1」、遅れていない場合に「+1」の補整情報φRF0を補正部6に出力する。
【0020】
加算器6は、カウンタ2から出力されるφRFiと、TDC3から出力されるφRFfとを加算して、発振器位相(第1位相情報)φRF(Oscillator Phase Data)として補正部10に出力する。加算器11は、周波数制御ワードFCW(Frequency Command Word)と誤差補正発振器位相(第2位相情報)φRFc(Error Compensated Oscillator Phase Data)を加算して出力する。遅延器12は、1クロック前のFCWとφRFcの加算出力を、発振器予測位相φRFest(Estimated Oscillator Phase Data)として補正部10に出力する。
【0021】
補正部6は、φRF0、φRF、φRFestが入力され、|φRF−φRFest|>|φRF+φRF0−φRFest|の場合に、φRFc=φRF+φRF0を、|φRF−φRFest|>|φRF+φRF0−φRFest|でない場合に、φRFc=φRFを減算器7および加算器11に出力する。
【0022】
アキュムレータ5は、FCWを参照信号REFで規格化した値を積分し、積分値を参照位相φREF(Reference Phase Data)として減算器7に出力する。減算器7は、参照位相φREFと、補正部160から出力される誤差補正発振器位相φRFcとの差分を算出し、位相誤差φe(Phase error data)としてデジタルフィルタ8へ出力する。
【0023】
デジタルフィルタ8はローパスフィルタとして動作し、与えられた位相誤差φeを平滑化して、規格化された発振器制御ワードNTW(Normalized Tuning Word)としてゲイン補正器9に出力する。
【0024】
ゲイン補正器9は、デジタルフィルタ8の出力値に、係数Kを乗算して発振器調整ワードOTW(Oscillator Tuning Word)を出力する。係数Kを乗算することで、DCO1が持つ制御値に対する周波数利得分が補正される。
【0025】
DCO1の発振周波数がFCWで設定される値より高く(又は低く)なった場合、減算器7で算出された位相誤差φeに基づき、デジタルフィルタ8及びゲイン補正器9により、発振周波数を下げる(上げる)よう制御する発振器調整ワードOTWが出力される。このようにしてDCO1の発振周波数が一定となるような制御が行われる。
【0026】
カウンタ2とTDC4が非同期で動作することによって位相差に加算されるカウント値CNTVがずれても、補正部10においてそのずれを補正することができるので、誤動作を防止し、PLL動作の安定性を向上できる。また、発振器位相情報(積分値)に対して補整を掛けることで、誤差補整の誤りに対する影響を最小限に抑えることが可能となる。
【0027】
図3は、TDC4の具体的な構成例を示す図である。TDC4は、図3に示すように、TDCコア21と、入力を2倍出力する乗算器22と、LPF23と、除算器25と、判定部24とを備えている。TDCコア21は、参照信号REFを使用して、DCO1から入力される発振信号CKVの立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジで検出してカウントし、発振信号CKVの1周期単位で、R値(Rise Edge)を判定部24および除算器25に出力し、また、D値(|Rise Edge−Fall Edge|)を判定部24および乗算器22に出力する。
【0028】
乗算器22は、D値の周波数を2倍にして、D*2をLPF23に出力する。LPF23は、D*2の高周波成分をカットして除算器25に出力する。除算器25は、R/AVE(D*2)を演算して、CKV間隔で規格化されたφRFfを加算器6に出力する。判定部24は、R>Dの場合にφRF0=−1を、R>Dでない場合に、φRF0=1を、補正部10に出力する。
【0029】
図4は、TDCコア21の構成例を示す図である。TDCコア21は、直列に接続された複数の遅延回路31−1〜31−nと、複数の可変遅延回路31−1〜31−nと1対1で設けられる複数のフリップフロップ32−1〜32−nと、疑似サーモメータコードエッジ検出部33と、出力部32とを備えている。
【0030】
DCO1の発振信号CKVは、遅延回路31−1〜31−nの初段遅延回路31−1に入力される。遅延回路31−1〜31−nは、DCO1の発振信号CKVを順次遅延させて出力する。遅延回路31−1〜31−nの遅延時間はそれぞれΔTである。
【0031】
フリップフロップ32−1〜32−nは、それぞれのクロック入力端子に共通に入力される参照信号REFに応答して遅延回路32−1〜32−nの各遅延段の出力を取り込み、Q[1]〜Q[N」を疑似サーモメータコードエッジ検出回路33に出力する。
【0032】
疑似サーモメータコードエッジ検出回路33は、フリップフロップ32−1〜32−nの各出力信号Q[1]〜Q[N」の立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジを検出して、カウントして、カウント値を出力部34に出力する。出力部34は、R値(Rise Edgeのカウント値)を判定部24および除算器25に出力し、また、D値(|Rise Edgeのカウント値−Fall Edgeのカウント値|)を判定部24および乗算器22に出力する。
【0033】
図5は、TDCコア21の各信号のタイミングチャートの一例を示す図である。同図に示す例では、R=2,F=6,D=|2−6|=4となっている。
【0034】
以上説明したように、実施の形態1によれば、発振器制御ワードOTWに応じた発振周波数の発振信号CKVを出力するDCO1と、発振信号CKVをカウントし、発振信号CKVで同期化された参照信号REFに基づいてカウント値を発振器整数位相φRFiとして出力するカウンタ2と、発振信号CKVと参照信号REFとの位相差である発振器分数位相φRFfを出力し、また、発振信号CKVの位相が、参照信号REFの位相に対して、発振信号CKVの半周期よりも位相が遅れている場合に「−1」、遅れていない場合に「+1」の補整情報φRF0を出力するTDC4と、発振器整数位相φRFiと発振器分数位相φRFfとを加算し、加算値を発振器位相(第1位相情報)φRFとして出力する加算器6と、1クロック前のFCWと誤差補正発振器位相(第2位相情報)φRFcの加算出力を発振器予測位相φRFestとして出力する遅延器12と、|φRF−φRFest|>|φRF+φRF0−φRFest|の場合に、φRFc=φRF+φRF0を、|φRF−φRFest|>|φRF+φRF0φ−φRFest|でない場合に、φRFc=φRFを減算器7および加算器11に出力する補正部10と、φREFとφRFcの差分を平滑化してNTWを出力するフィルタ8とを備えているので、DCOの出力と参照信号REFとが非同期であっても、すなわち、カウンタの読み出し値がずれてもPLL動作を安定化させることが可能となる。
【0035】
(実施の形態2)
図6は、実施の形態2に係るTDCの構成例を示す図である。実施の形態2のTDC4では、TDC4のφRFfに対して外部より誤差情報(オフセット)を加えて、TDC4とカウンタ2の参照信号REFに対する回路間の動作タイミングのズレを補整することで、より高精度に誤差を補正する構成である。
【0036】
図6において、図3と同等機能を有する部位には同一の符号を付し、異なる点についてのみ説明する。実施の形態2に係るTDC4は、実施の形態1(図3参照)において、ピーク検出器42、第2判定部43をさらに備えた構成となっている。
【0037】
同じCKVで動作するカウンタ2とTDC4であるが、別系統の回路であるため、回路間で遅延が発生することがある。同図に示す例では、CKVに遅延がある場合を示している。実施の形態2に係るTDC4は、CKVの立ち上がりエッジの情報に、外部から誤差情報(オフセット)R0を加えることが可能な構成となっている。これにより、TDC4の実効的な位相検出位置を変更することが可能となり、異なる位置にある2つの回路、つまりカウンタ2を制御している参照信号REFの位相とTDC4を制御している参照信号REFの位相を近づけることができる。これにより実施の形態1よりも誤動作の検出精度を上げることが可能となる。
【0038】
オフセットを乗せる方式では、オフセット分以下の数字を表現するために、1周期を超えたデータを受け取ったというピーク検出部42が必要となる。
【0039】
図6において、ピーク検出部42は、1周期を超えたデータを受け取ったことを判定するためのものであり、TDCコア21から入力されるR値のピークを検出して、ピーク値Rmaxを第2判定部43に出力する。第2判定部43は、R値、Rmax、R0(Rise Edge Offset:誤差情報)が入力される。第2判定部43は、(R+R0≧Rmax)の場合に、Rn=R+R0−Rmaxを、(R+R0<0)の場合に、Rn=R+R0+Rmax、それ以外の場合にRn=Rを、判定部24および除算器25に出力する。
【0040】
図7は、実施の形態2のTDCで誤動作の検出精度を上げることが可能となる理由を説明するための図であり、(a)は、CKVに遅延がない場合、(b)は、CKVに遅延があるが正しく検出できる場合、(c)はCKVに遅延があり、実施の形態1では、エラーとなり、実施の形態2ではエラーとならない場合を示している。ここでは、誤差情報R0=1、Rmax=8としている。
【0041】
(a)に示す例では、CKVに遅延がなく、R=2,F=6,D=|2−6|=4となっている。(b)に示す例では、CKVに遅延があるが、Rn=R+R0=2,D=|1−5|=4となり、正しく検出できる。(c)に示す例では、Rn=R+R0=で本来ならエラーとなるが、判定部43は、(R+R0≧Rmax)の場合には、Rn=R+R0−Rmax=0を出力するので、誤検出を防止できる。
【0042】
実施の形態2によれば、TDC4のφRFfに対して外部より誤差情報(オフセット)を加えているので、TDC4とカウンタ2の参照信号REFに対する回路間の動作タイミングのズレを補整することで、より高精度に誤差を補正することが可能となる。
【0043】
(実施の形態3)
図8は、実施の形態3に係るTDCの構成例を示す図である。実施の形態3のTDC4では、TDCでCKVの遅延量を制御することで、CKVの周期に対して、あるNという間隔でR値を出力する。これにより、周期データを算出して判定する必要がなくなる。
【0044】
図6において、図3と同等機能を有する部位には同一の符号を付し、異なる点についてのみ説明する。実施の形態2に係るTDC4は、TDCコア51と、判定部52と、除算器53とを備えている。TDCコア51は、DCO1から入力される発振信号CKVを、参照信号REFの立ち上がりエッジで検出してカウントし、CKVの周期に対して、あるNという間隔でR値を出力する。判定部52は、R>N/2の場合にφRF0=−1を、R>N/2でない場合に、φRF0=1を、補正部10に出力する。除算器25は、R/Nを演算して、φRFfを加算器6に出力する。
【0045】
図9は、TDCコア51の構成例を示す図である。図10は、TDCコア51の各信号のタイミングチャートの一例を示す図である。TDCコア51は、直列に接続された複数の可変遅延回路61−1〜61−nと、複数の可変遅延回路61−1〜61−nと1対1で設けられる複数のフリップフロップ62−1〜62−nと、疑似サーモメータコードエッジ検出部63と、出力部64とを備えている。
【0046】
DCO1の発振信号CKVは、可変遅延回路61−1〜61−nの初段遅延回路61−1に入力される。可変遅延回路61−1〜61−nは、DCO1の発振信号CKVを順次遅延させて出力する。可変遅延回路61−1〜61−nの遅延時間ΔTは、疑似サーモメータコードエッジ検出部63により設定される。CKVの周波数FCKV=1/(N×ΔT)となるように、遅延量ΔTが設定される。
【0047】
フリップフロップ62−1〜62−nは、それぞれのクロック入力端子に共通に入力される参照信号REFに応答して可変遅延回路61−1〜61−nの各遅延段の出力を取り込み、Q[1]〜Q[N」を疑似サーモメータコードエッジ検出部63に出力する。
【0048】
疑似サーモメータコードエッジ検出回路63は、フリップフロップ62−1〜62−nの各出力信号Q[1]〜Q[N」の立ち上がりエッジを検出して、カウントし、カウント値を出力部64に出力する。出力部64は、R値(Rise Edgeのカウント値)を判定部52および除算器53に出力する。
【0049】
図10は、TDCコア51の各信号のタイミングチャートの一例を示す図である。同図に示す例では、CKVの周期に対して、あるNという間隔でR値が出力され、R=3となっている。
【0050】
上記実施の形態では、位相状態がπより大きいか小さいかで判定しているが、位相変化点付近の任意の値±π/a(aは1以上の任意の数)で判定することにしてもよい。図11は、図8の変形例に係るTDC4の構成例を示す図である。図11において、図8と同等機能を有する部位には同一の符号を付し、異なる点についてのみ説明する。図11において、判定部71は、R>N−αの場合にφRF0=−1を、R>N−αでない場合において、R<αの場合は、φRF0=1を補正部10に出力する。
【符号の説明】
【0051】
1 デジタル制御発振器(DCO)、2 カウンタ、3 フリップフロップ(リタイミング回路)、4 時間デジタル変換器(TDC)、5 アキュムレータ、6,7 加算器(デジタル位相比較器)、8 デジタルフィルタ(ループフィルタ)、9 ゲイン補正器、21 TDCコア、22 2分周器、23 LPF、24 判定部 25 除算器 31−1〜31−n 遅延回路、32−1〜32−n フリップフロップ、32 疑似サーモメータコードエッジ検出部、33 出力部
【技術分野】
【0001】
本発明は、局部発振器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、無線LAN機器等の無線通信装置では、PLL(Phase Locked Loop)回路の制御信号をすべてデジタル化したADPLL(All Digital PLL)回路が用いられている(例えば特許文献1参照)。ADPLL回路は、アナログ回路をデジタル回路に置換しているため、プロセスの進歩により省スペース化、省電力化が可能となる。
【0003】
ADPLL回路は、デジタルループフィルタ、デジタル制御発振器(DCO:Digitally-Controlled Oscillator)、カウンタ、及び時間デジタル変換器(TDC:Time-to-Digital Converter)を備える。カウンタはDCOの出力CKVをカウントし、DCOの出力CKVで同期化した参照信号に基づいてカウント値を出力する。TDCは、参照信号REFに同期して、DCOの出力CKVの1周期以下の位相差を取り出す。カウント値と位相差dとを加算した値と、位相制御信号との比較結果(差分)がデジタルループフィルタに与えられる。DCOの発振周波数は、デジタルループフィルタの出力に基づいて制御される。
【0004】
DCOの出力CKVと、参照信号REFとは非同期である。すなわち、ADPLL回路では、同じ回路内に、非同期のクロックで動作する2つの回路(カウンタ及びTDC)の出力が加算されていることになる。そのため、カウンタの読み出し値がずれて、PLL動作が不安定になるおそれがあった。
【0005】
特に問題となるのは、(1)DCOの出力CKVから位相情報を得るための回路が機能の異なる2つの回路(カウンタおよびTDC)から構成されている点と、(2)カウンタの出力がDCOの出力CKVで同期化された参照信号REFである点である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−21954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、デジタル制御発振器の出力と参照信号とが非同期であっても、安定したPLL動作を確立できる局部発振器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、発振器制御ワードに応じた発振周波数の発振信号を出力するデジタル制御発振器と、前記発振信号をカウントし、前記発振信号で同期化された参照信号に基づいてカウント値を発振器整数位相として出力するカウンタと、前記発振信号と前記参照信号との位相差を発振器分数位相として出力し、また、前記発振信号の位相が、前記参照信号の位相に対して、前記発振信号の半周期よりも位相が遅れている場合に「−1」、遅れていない場合に「+1」の補整情報を出力する時間デジタル変換器と、前記発振器整数位相と前記発振器分数位相とを加算し、加算値を第1位相情報として出力する加算器と、1クロック前の周波数制御ワードと第2位相情報との加算出力を発振器予測位相として出力する遅延器と、|前記第1位相情報−発振器予測位相|>|前記第1位相情報+補整情報−前記発振器予測位相|の場合に、前記第1位相情報に前記補整情報を加算したものを第2位相情報として出力し、|前記第1位相情報−発振器予測位相|>|前記第1位相情報+前記補整情報−発振器予測位相|でない場合に、前記第1位相情報を第2位相情報として出力する補正部と、参照位相と前記第2位相情報との差分を平滑化して、前記発振器制御ワードを出力するフィルタと、を備えた局部発振器が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、デジタル制御発振器の出力と参照信号とが非同期であっても、安定したPLL動作を確立することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本実施の形態に係るADPLL(All Digital Phased Locked Loop)の概略構成を示す図である。
【図2】図2は、カウンタの期待値ズレを説明するためのタイミングチャートである。
【図3】図3は、TDCの構成例を示す図である。
【図4】図4は、TDCコアの構成例を示す図である。
【図5】図5は、TDCコアの各信号のタイミングチャートの一例を示す図である。
【図6】図6は、実施の形態2に係るTDCの構成例を示す図である。
【図7】図7は、実施の形態2のTDCで誤動作の検出精度を上げることが可能となる理由を説明するための図である。
【図8】図8は、実施の形態3に係るTDCの構成例を示す図である。
【図9】図9は、TDCコアの構成例を示す図である。
【図10】図10は、TDCコアの各信号のタイミングチャートの一例を示す図である。
【図11】図11は、変形例に係るTDCの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、この発明につき図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施の形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるものまたは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態に係るADPLL(All Digital Phased Locked Loop)の概略構成例を示す図である。図2は、カウンタの期待値ズレを説明するためのタイミングチャートである。
【0013】
図2を参照して、従来の問題であるカウンタの期待値ズレを説明する。上述したように、DCOの発振信号CKVと、参照信号REFとは非同期であるため、カウンタの読出し値が期待値とずれる可能性がある。図2に示すように、カウンタの期待値ズレは、参照信号REFとDCOの発振信号CKVのエッジが近い時に生じやすい。TDCから出力される位相差Δφは、カウンタから出力される値Nと加算されるべきである。しかし、参照信号REFの立ち上がりが、発振信号CKVの立ち上がりに近い場合、例えば、(a)に示すように、参照信号REFが発振信号CKVよりわずかに早く立ち上がっている場合は、カウンタ2の出力CNTVがずれて、位相差Δφと、値N+1が加算されるおそれがある(正しいデータ:N+1+Δφ、エラーデータN+2+Δφ)。また、(b)に示すように、参照信号REFが発振信号CKVよりわずかに遅く立ち上がっている場合は、カウンタの出力値CNTVがずれて、位相差Δφと、値Nが加算されないおそれがある(正しいデータ:N+2+Δφ、エラーデータN+1+Δφ)。
【0014】
本実施の形態では、DCO1の位相情報そのものと予測値とを複合的に比較することで、位相情報の非同期読み出しにおける誤り率を低減させている。
【0015】
本実施の形態に係るADPLLは、図1に示すように、DCO1、カウンタ2と、フリップフロップ3と、TDC4と、アキュムレータ(累算器)5、加算器6と、減算器7と、デジタルフィルタ8と、ゲイン補正器9と、補正部10と、加算器11と、遅延器12とを備えている。
【0016】
DCO1は、発振器制御ワードOTW(Oscillator Tuning Word)により離散的に発振周波数が制御可能な発振器であり、発振器制御ワードOTWに応じた発振信号CKV(Oscillator Output Signal)を出力する。DCO1は、例えば複数の(MOS)バラクタを2値制御することによって実現される。
【0017】
フリップフロップ3は、DCO1の発振信号CKV(Oscillator Output Signal)をクロック入力として、参照信号REFの値をラッチして出力する。すなわち、フリップフロップ110の出力信号は、DCO1の発振信号CKVで同期化された参照信号REFとなる。
【0018】
カウンタ2は、DCO1の発振信号CKVがクロックとして与えられるアキュムレータ2aを有する。カウンタ2は、フリップフロップ3の出力信号がクロックとして与えられ、このクロックに同期して、アキュムレータ2aのカウント値を発振器整数位相φRFiとして、加算器6に出力する。つまり、カウンタ2は、DCO1の発振信号CKVに同期して動作する回路となる。
【0019】
TDC4は、DCO1の発振信号CKVと参照信号REFとの位相差を、DCO1の発振信号CKVの1周期より細かい精度で、デジタル表現できる時間計測デバイスである。TDC4は参照信号REFに同期して動作する回路である。すなわち、TDC4は、カウンタ2と非同期のクロックで動作する。TDC4は、発振信号CKVと参照信号REFとの位相差を発振器分数位相φRFfとして加算器6に出力する。また、発振信号CKVの位相が、参照信号REFの位相に対して、発振信号CKVの半周期よりも位相が遅れている場合に「−1」、遅れていない場合に「+1」の補整情報φRF0を補正部6に出力する。
【0020】
加算器6は、カウンタ2から出力されるφRFiと、TDC3から出力されるφRFfとを加算して、発振器位相(第1位相情報)φRF(Oscillator Phase Data)として補正部10に出力する。加算器11は、周波数制御ワードFCW(Frequency Command Word)と誤差補正発振器位相(第2位相情報)φRFc(Error Compensated Oscillator Phase Data)を加算して出力する。遅延器12は、1クロック前のFCWとφRFcの加算出力を、発振器予測位相φRFest(Estimated Oscillator Phase Data)として補正部10に出力する。
【0021】
補正部6は、φRF0、φRF、φRFestが入力され、|φRF−φRFest|>|φRF+φRF0−φRFest|の場合に、φRFc=φRF+φRF0を、|φRF−φRFest|>|φRF+φRF0−φRFest|でない場合に、φRFc=φRFを減算器7および加算器11に出力する。
【0022】
アキュムレータ5は、FCWを参照信号REFで規格化した値を積分し、積分値を参照位相φREF(Reference Phase Data)として減算器7に出力する。減算器7は、参照位相φREFと、補正部160から出力される誤差補正発振器位相φRFcとの差分を算出し、位相誤差φe(Phase error data)としてデジタルフィルタ8へ出力する。
【0023】
デジタルフィルタ8はローパスフィルタとして動作し、与えられた位相誤差φeを平滑化して、規格化された発振器制御ワードNTW(Normalized Tuning Word)としてゲイン補正器9に出力する。
【0024】
ゲイン補正器9は、デジタルフィルタ8の出力値に、係数Kを乗算して発振器調整ワードOTW(Oscillator Tuning Word)を出力する。係数Kを乗算することで、DCO1が持つ制御値に対する周波数利得分が補正される。
【0025】
DCO1の発振周波数がFCWで設定される値より高く(又は低く)なった場合、減算器7で算出された位相誤差φeに基づき、デジタルフィルタ8及びゲイン補正器9により、発振周波数を下げる(上げる)よう制御する発振器調整ワードOTWが出力される。このようにしてDCO1の発振周波数が一定となるような制御が行われる。
【0026】
カウンタ2とTDC4が非同期で動作することによって位相差に加算されるカウント値CNTVがずれても、補正部10においてそのずれを補正することができるので、誤動作を防止し、PLL動作の安定性を向上できる。また、発振器位相情報(積分値)に対して補整を掛けることで、誤差補整の誤りに対する影響を最小限に抑えることが可能となる。
【0027】
図3は、TDC4の具体的な構成例を示す図である。TDC4は、図3に示すように、TDCコア21と、入力を2倍出力する乗算器22と、LPF23と、除算器25と、判定部24とを備えている。TDCコア21は、参照信号REFを使用して、DCO1から入力される発振信号CKVの立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジで検出してカウントし、発振信号CKVの1周期単位で、R値(Rise Edge)を判定部24および除算器25に出力し、また、D値(|Rise Edge−Fall Edge|)を判定部24および乗算器22に出力する。
【0028】
乗算器22は、D値の周波数を2倍にして、D*2をLPF23に出力する。LPF23は、D*2の高周波成分をカットして除算器25に出力する。除算器25は、R/AVE(D*2)を演算して、CKV間隔で規格化されたφRFfを加算器6に出力する。判定部24は、R>Dの場合にφRF0=−1を、R>Dでない場合に、φRF0=1を、補正部10に出力する。
【0029】
図4は、TDCコア21の構成例を示す図である。TDCコア21は、直列に接続された複数の遅延回路31−1〜31−nと、複数の可変遅延回路31−1〜31−nと1対1で設けられる複数のフリップフロップ32−1〜32−nと、疑似サーモメータコードエッジ検出部33と、出力部32とを備えている。
【0030】
DCO1の発振信号CKVは、遅延回路31−1〜31−nの初段遅延回路31−1に入力される。遅延回路31−1〜31−nは、DCO1の発振信号CKVを順次遅延させて出力する。遅延回路31−1〜31−nの遅延時間はそれぞれΔTである。
【0031】
フリップフロップ32−1〜32−nは、それぞれのクロック入力端子に共通に入力される参照信号REFに応答して遅延回路32−1〜32−nの各遅延段の出力を取り込み、Q[1]〜Q[N」を疑似サーモメータコードエッジ検出回路33に出力する。
【0032】
疑似サーモメータコードエッジ検出回路33は、フリップフロップ32−1〜32−nの各出力信号Q[1]〜Q[N」の立ち上がりエッジおよび立ち下がりエッジを検出して、カウントして、カウント値を出力部34に出力する。出力部34は、R値(Rise Edgeのカウント値)を判定部24および除算器25に出力し、また、D値(|Rise Edgeのカウント値−Fall Edgeのカウント値|)を判定部24および乗算器22に出力する。
【0033】
図5は、TDCコア21の各信号のタイミングチャートの一例を示す図である。同図に示す例では、R=2,F=6,D=|2−6|=4となっている。
【0034】
以上説明したように、実施の形態1によれば、発振器制御ワードOTWに応じた発振周波数の発振信号CKVを出力するDCO1と、発振信号CKVをカウントし、発振信号CKVで同期化された参照信号REFに基づいてカウント値を発振器整数位相φRFiとして出力するカウンタ2と、発振信号CKVと参照信号REFとの位相差である発振器分数位相φRFfを出力し、また、発振信号CKVの位相が、参照信号REFの位相に対して、発振信号CKVの半周期よりも位相が遅れている場合に「−1」、遅れていない場合に「+1」の補整情報φRF0を出力するTDC4と、発振器整数位相φRFiと発振器分数位相φRFfとを加算し、加算値を発振器位相(第1位相情報)φRFとして出力する加算器6と、1クロック前のFCWと誤差補正発振器位相(第2位相情報)φRFcの加算出力を発振器予測位相φRFestとして出力する遅延器12と、|φRF−φRFest|>|φRF+φRF0−φRFest|の場合に、φRFc=φRF+φRF0を、|φRF−φRFest|>|φRF+φRF0φ−φRFest|でない場合に、φRFc=φRFを減算器7および加算器11に出力する補正部10と、φREFとφRFcの差分を平滑化してNTWを出力するフィルタ8とを備えているので、DCOの出力と参照信号REFとが非同期であっても、すなわち、カウンタの読み出し値がずれてもPLL動作を安定化させることが可能となる。
【0035】
(実施の形態2)
図6は、実施の形態2に係るTDCの構成例を示す図である。実施の形態2のTDC4では、TDC4のφRFfに対して外部より誤差情報(オフセット)を加えて、TDC4とカウンタ2の参照信号REFに対する回路間の動作タイミングのズレを補整することで、より高精度に誤差を補正する構成である。
【0036】
図6において、図3と同等機能を有する部位には同一の符号を付し、異なる点についてのみ説明する。実施の形態2に係るTDC4は、実施の形態1(図3参照)において、ピーク検出器42、第2判定部43をさらに備えた構成となっている。
【0037】
同じCKVで動作するカウンタ2とTDC4であるが、別系統の回路であるため、回路間で遅延が発生することがある。同図に示す例では、CKVに遅延がある場合を示している。実施の形態2に係るTDC4は、CKVの立ち上がりエッジの情報に、外部から誤差情報(オフセット)R0を加えることが可能な構成となっている。これにより、TDC4の実効的な位相検出位置を変更することが可能となり、異なる位置にある2つの回路、つまりカウンタ2を制御している参照信号REFの位相とTDC4を制御している参照信号REFの位相を近づけることができる。これにより実施の形態1よりも誤動作の検出精度を上げることが可能となる。
【0038】
オフセットを乗せる方式では、オフセット分以下の数字を表現するために、1周期を超えたデータを受け取ったというピーク検出部42が必要となる。
【0039】
図6において、ピーク検出部42は、1周期を超えたデータを受け取ったことを判定するためのものであり、TDCコア21から入力されるR値のピークを検出して、ピーク値Rmaxを第2判定部43に出力する。第2判定部43は、R値、Rmax、R0(Rise Edge Offset:誤差情報)が入力される。第2判定部43は、(R+R0≧Rmax)の場合に、Rn=R+R0−Rmaxを、(R+R0<0)の場合に、Rn=R+R0+Rmax、それ以外の場合にRn=Rを、判定部24および除算器25に出力する。
【0040】
図7は、実施の形態2のTDCで誤動作の検出精度を上げることが可能となる理由を説明するための図であり、(a)は、CKVに遅延がない場合、(b)は、CKVに遅延があるが正しく検出できる場合、(c)はCKVに遅延があり、実施の形態1では、エラーとなり、実施の形態2ではエラーとならない場合を示している。ここでは、誤差情報R0=1、Rmax=8としている。
【0041】
(a)に示す例では、CKVに遅延がなく、R=2,F=6,D=|2−6|=4となっている。(b)に示す例では、CKVに遅延があるが、Rn=R+R0=2,D=|1−5|=4となり、正しく検出できる。(c)に示す例では、Rn=R+R0=で本来ならエラーとなるが、判定部43は、(R+R0≧Rmax)の場合には、Rn=R+R0−Rmax=0を出力するので、誤検出を防止できる。
【0042】
実施の形態2によれば、TDC4のφRFfに対して外部より誤差情報(オフセット)を加えているので、TDC4とカウンタ2の参照信号REFに対する回路間の動作タイミングのズレを補整することで、より高精度に誤差を補正することが可能となる。
【0043】
(実施の形態3)
図8は、実施の形態3に係るTDCの構成例を示す図である。実施の形態3のTDC4では、TDCでCKVの遅延量を制御することで、CKVの周期に対して、あるNという間隔でR値を出力する。これにより、周期データを算出して判定する必要がなくなる。
【0044】
図6において、図3と同等機能を有する部位には同一の符号を付し、異なる点についてのみ説明する。実施の形態2に係るTDC4は、TDCコア51と、判定部52と、除算器53とを備えている。TDCコア51は、DCO1から入力される発振信号CKVを、参照信号REFの立ち上がりエッジで検出してカウントし、CKVの周期に対して、あるNという間隔でR値を出力する。判定部52は、R>N/2の場合にφRF0=−1を、R>N/2でない場合に、φRF0=1を、補正部10に出力する。除算器25は、R/Nを演算して、φRFfを加算器6に出力する。
【0045】
図9は、TDCコア51の構成例を示す図である。図10は、TDCコア51の各信号のタイミングチャートの一例を示す図である。TDCコア51は、直列に接続された複数の可変遅延回路61−1〜61−nと、複数の可変遅延回路61−1〜61−nと1対1で設けられる複数のフリップフロップ62−1〜62−nと、疑似サーモメータコードエッジ検出部63と、出力部64とを備えている。
【0046】
DCO1の発振信号CKVは、可変遅延回路61−1〜61−nの初段遅延回路61−1に入力される。可変遅延回路61−1〜61−nは、DCO1の発振信号CKVを順次遅延させて出力する。可変遅延回路61−1〜61−nの遅延時間ΔTは、疑似サーモメータコードエッジ検出部63により設定される。CKVの周波数FCKV=1/(N×ΔT)となるように、遅延量ΔTが設定される。
【0047】
フリップフロップ62−1〜62−nは、それぞれのクロック入力端子に共通に入力される参照信号REFに応答して可変遅延回路61−1〜61−nの各遅延段の出力を取り込み、Q[1]〜Q[N」を疑似サーモメータコードエッジ検出部63に出力する。
【0048】
疑似サーモメータコードエッジ検出回路63は、フリップフロップ62−1〜62−nの各出力信号Q[1]〜Q[N」の立ち上がりエッジを検出して、カウントし、カウント値を出力部64に出力する。出力部64は、R値(Rise Edgeのカウント値)を判定部52および除算器53に出力する。
【0049】
図10は、TDCコア51の各信号のタイミングチャートの一例を示す図である。同図に示す例では、CKVの周期に対して、あるNという間隔でR値が出力され、R=3となっている。
【0050】
上記実施の形態では、位相状態がπより大きいか小さいかで判定しているが、位相変化点付近の任意の値±π/a(aは1以上の任意の数)で判定することにしてもよい。図11は、図8の変形例に係るTDC4の構成例を示す図である。図11において、図8と同等機能を有する部位には同一の符号を付し、異なる点についてのみ説明する。図11において、判定部71は、R>N−αの場合にφRF0=−1を、R>N−αでない場合において、R<αの場合は、φRF0=1を補正部10に出力する。
【符号の説明】
【0051】
1 デジタル制御発振器(DCO)、2 カウンタ、3 フリップフロップ(リタイミング回路)、4 時間デジタル変換器(TDC)、5 アキュムレータ、6,7 加算器(デジタル位相比較器)、8 デジタルフィルタ(ループフィルタ)、9 ゲイン補正器、21 TDCコア、22 2分周器、23 LPF、24 判定部 25 除算器 31−1〜31−n 遅延回路、32−1〜32−n フリップフロップ、32 疑似サーモメータコードエッジ検出部、33 出力部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発振器制御ワードに応じた発振周波数の発振信号を出力するデジタル制御発振器と、
前記発振信号をカウントし、前記発振信号で同期化された参照信号に基づいてカウント値を発振器整数位相として出力するカウンタと、
前記発振信号と前記参照信号との位相差を発振器分数位相として出力し、また、前記発振信号の位相が、前記参照信号の位相に対して、前記発振信号の半周期よりも位相が遅れている場合に「−1」、遅れていない場合に「+1」の補整情報を出力する時間デジタル変換器と、
前記発振器整数位相と前記発振器分数位相とを加算し、加算値を第1位相情報として出力する加算器と、
1クロック前の周波数制御ワードと第2位相情報との加算出力を発振器予測位相として出力する遅延器と、
|前記第1位相情報−前記発振器予測位相|>|前記第1位相情報+前記補整情報−前記発振器予測位相|の場合に、前記第1位相情報に前記補整情報を加算したものを前記第2位相情報として出力し、|前記第1位相情報−前記発振器予測位相|>|前記第1位相情報+前記補整情報−前記発振器予測位相|でない場合に、前記第1位相情報を前記第2位相情報として出力する補正部と、
前記デジタル制御発振器の発振周波数を設定するための参照位相と前記第2位相情報との差分を平滑化して、前記発振器制御ワードを出力するフィルタと、
を備えたことを特徴とする局部発振器。
【請求項2】
前記時間デジタル変換器から出力される前記発振器分数位相に外部からオフセットを加えたことを特徴とする請求項1に記載の局部発振器。
【請求項1】
発振器制御ワードに応じた発振周波数の発振信号を出力するデジタル制御発振器と、
前記発振信号をカウントし、前記発振信号で同期化された参照信号に基づいてカウント値を発振器整数位相として出力するカウンタと、
前記発振信号と前記参照信号との位相差を発振器分数位相として出力し、また、前記発振信号の位相が、前記参照信号の位相に対して、前記発振信号の半周期よりも位相が遅れている場合に「−1」、遅れていない場合に「+1」の補整情報を出力する時間デジタル変換器と、
前記発振器整数位相と前記発振器分数位相とを加算し、加算値を第1位相情報として出力する加算器と、
1クロック前の周波数制御ワードと第2位相情報との加算出力を発振器予測位相として出力する遅延器と、
|前記第1位相情報−前記発振器予測位相|>|前記第1位相情報+前記補整情報−前記発振器予測位相|の場合に、前記第1位相情報に前記補整情報を加算したものを前記第2位相情報として出力し、|前記第1位相情報−前記発振器予測位相|>|前記第1位相情報+前記補整情報−前記発振器予測位相|でない場合に、前記第1位相情報を前記第2位相情報として出力する補正部と、
前記デジタル制御発振器の発振周波数を設定するための参照位相と前記第2位相情報との差分を平滑化して、前記発振器制御ワードを出力するフィルタと、
を備えたことを特徴とする局部発振器。
【請求項2】
前記時間デジタル変換器から出力される前記発振器分数位相に外部からオフセットを加えたことを特徴とする請求項1に記載の局部発振器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−205338(P2011−205338A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69846(P2010−69846)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]