説明

工具経路算出装置、工具経路算出方法、及び加工装置

【課題】研削工具(砥石)を持つ加工装置の制御に係わり、工具の磨耗に対処して好適な経路を算出し、費用等を抑える。
【解決手段】本工具経路算出装置10は、加工装置20での研削中に工具に生じる磨耗を考慮した経路を算出する機能を有する。処理部201は、被削材と工具との組合せについて、(1)第1の研削加工(試加工)の結果データに基づき、研削諸元値と工具磨耗量との関係情報を含むデータをDB50に格納する処理と、(2)第2の研削加工(実加工)を行うためのNCデータ52を生成する際に、当該研削諸元値と、DB50とをもとに、第2の研削加工の工具磨耗量を算出する処理と、(3)工具の磨耗を考慮しない経路に対し、上記第2の研削加工の工具磨耗量を反映して補正した工具の経路を算出する処理とを行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータ支援製造(CAM:Computer Aided Manufacturing)や加工装置の数値制御(NC:Numerical Control)等の技術に関する。特に、研削工具(砥石等)で材料(被削材)を研削する工程を含む加工装置に対するCAM及びNCデータ生成の情報処理に関する。特に、研削中に工具(砥石)に生じる磨耗に対処するための技術、工具(砥石)の移動の経路を算出・補正する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
CAM等に係わる先行技術例として、特開平2−65971号公報(特許文献1)、特開2003−311592号公報(特許文献2)、特開平10−15800号公報(特許文献3)等がある。
【0003】
特許文献1では、以下のような記載がある。従来の技術として、研削加工では砥石(工具)が磨耗するが、この際、研削加工を停止して、砥石の成形・目立てツールであるダイヤモンドを埋め込んだドレッサにより砥石をドレッシングして、その後に再度研削加工する。課題として、この方法では、砥石が磨耗する度に研削加工を中断してドレッシングを行うために効率の良い研削加工ができない。これに対し、特許文献1では、上記ドレッサを砥石の加工点の反対側に配置して、砥石をドレッシングしながら研削加工する。砥石をドレッシングすると砥石の直径が小さくなるので、その減少分、被削材に対する砥石とドレッサの位置を補正しながら研削加工する。砥石が直線的に移動して研削加工を行う平面研削加工では、砥石が磨耗して減少する砥石直径を予め把握しておき、砥石直径減少に伴いその減少分を被削材に近接させながら研削加工する。それと共に、ドレッサについては砥石の軌跡(経路)を補正したのと同じ量を砥石に近接させるようにしている。これにより、機械を停止せずに研削加工しながらドレッシングを行うことで、効率良く、精度の良好な研削加工が達成できることが示されている。
【0004】
また、特許文献2には、以下のような記載がある。従来の技術では、軸方向に長いロール材(円筒形状)を研削加工する場合、1回のパス(経路)の中で砥石(工具)の磨耗が進行するので、研削加工開始側のロール径と研削加工終了側のロール径とに仕上がり寸法が異なる。このため研削パスを増やして経験的に寸法を確保しなければならない。これに対し、特許文献2では、砥石駆動モータ負荷電流値と砥石実切込み量の関係を予め求めて数式化しておき、また一方でロールの長手方向の必要除去量を加工位置ごとに求め、研削加工する加工位置に必要な除去量すなわち砥石切込み量を上記の数式に合致するように制御して、研削加工中に被削材であるロールに対する砥石実切込み量を補正していく。これにより、研削加工の過程でロールの寸法を測定せずとも精度良く加工できることが示されている。
【0005】
さらに、特許文献3では、以下のような記載がある。非球面レンズ用金型を砥石によって製作するにあたり、ある工程後の砥石の磨耗量を実験により求めて予め加工機の制御装置のメモリに格納しておき、この砥石磨耗量分を加工工程内で補正して精度良く加工する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−65971号公報
【特許文献2】特開2003−311592号公報
【特許文献3】特開平10−15800号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
背景技術(特許文献1,2,3等)に示される手法は、研削加工中の工具(砥石)の磨耗に対処するための補正を行う手法であるが、いずれも、以下のような技術と捉えることができる。即ち、砥石(工具)が加工対象とする材料(被削材)と砥石(工具)を用いた実際の工作物(製品)の製作・加工の工程に対し、当該製品(被削材)と同じ材質の物を用いて同じ加工装置あるいはこの装置とほぼ同等の仕様の加工装置により、製品の製作・加工と同じ加工手順、すなわち同じ加工工程で加工した際の砥石(工具)の磨耗量のデータを得て、このデータを実際の加工にあたって工具(砥石)の位置などの補正量として使用する技術である。言い換えると、補正用のデータを得る加工のための使用工具(砥石)の順序、工具の軌跡、工具の回転数(研削速度)、工具の送り速度、工具の切込み量などである工程(条件)と、補正用のデータを反映して製品を加工する工程(条件)とを同じとする技術である。製品を用いずにデータ取得のためだけに準備した材料を用いて行う加工である試験(試加工)と製品の加工(実加工)とに分けて繰り返す場合を含む。このような技術について、以下の課題(問題)がある。
【0008】
(1)第一の問題として、補正用データを得るための試験(試加工)において、製品の加工(実加工)の際と同じ加工装置、研削工具(砥石)の材料・形状など、被削材の材料・形状など、研削工程(パート:刃物による切削と砥石による研削の両方が可能な装置によるいずれかの加工で本例では研削)、及び砥石回転数・送り速度や砥石ドレス間隔などの諸加工条件(以下「条件」と総称する)により、製品と同じ形状の試験品を製作しないと、工具(砥石)の位置等の補正に必要なデータが得られない。試験品の被削材が比較的小さくて安価な場合は、このような手法も可能であるが、実際に製作しようとする物が大きくて高価な場合には、それに応じて費用と時間がかかり、実現困難である。
【0009】
(2)第二の問題として、実際に製作(実加工)する製品の形状に変更が加えられると、当該変更後の形状による試験片(被削材)を対象として再度試験(試加工)を実行して補正用データを取得する必要が生じる。製品の設計変更が発生する度に試験(試加工)が必要になるので、材料費、工数、及び生産開始までの時間などが多くかかる。
【0010】
(3)第三の課題として、特許文献1に記載があるような、ドレッサを砥石の加工点の反対側に配置して砥石をドレッシングしながら研削加工する方法(インプロセスドレスと称される方法)においては、砥石が研削加工によって自然に磨耗する量よりも多くの量をドレッサによって除去させながら加工する必要があり(そうしないとドレッサが砥石に接触しない状態が発生してしまう)、砥石を必要以上に減少させる無駄が生じる。
【0011】
まとめると以下のような課題(問題)がある:
(1)試加工と実加工の条件を同じにする制約による費用等の問題、
(2)製品の設計変更の度の試験による費用や時間等の問題、
(3)インプロセスドレスによる工具(砥石)の必要以上の減少の問題。
【0012】
以上を鑑み、本発明の主な目的は、上述の研削工具(砥石等)を使用する加工装置に関するCAM,NC等において、上述の問題(1)〜(3)等を解決することができる技術、即ち以下のような点を実現できる技術を提供することである:
(1)試加工と実加工の条件を同じにする制約を緩和し、費用等を抑える、
(2)製品の設計変更の度の試験を不必要化または低減し、費用や時間等を抑える、
(3)工具(砥石)を必要以上に減少させないで済み、費用等を抑える。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明のうち代表的な形態は、上述の研削工具(砥石等)を使用する加工装置に関するCAM,NC等において、研削加工中に工具に生じる磨耗に対処するために工具の移動の位置・経路等を算出・補正する情報処理を行う方法・装置、等であって、以下に示す構成を有することを特徴とする。
【0014】
本発明は、加工装置の研削加工を制御するためのNCデータを生成するにあたり、研削中に砥石に生じる磨耗を考慮して砥石が移動する経路を補正・算出する機能(補正後の経路を含むNCデータを生成する機能)を備える装置及び対応方法などを提供する。本装置では、被削材に対して使用する砥石(工具)により試加工(簡単な直線溝加工の試験など)を行うことによって得たデータ(砥石磨耗量)及びそれをもとに作成したデータ(予測式や対応表)を用いて、試加工とは条件(形状やサイズなど)が異なる研削加工(実加工)に対応した砥石磨耗量(半径など)を予測により算出する。これにより、研削中の砥石の磨耗を考慮した好適な経路になるように補正し、当該補正後の経路を含むNCデータを生成・出力し、当該NCデータにより加工装置を好適に制御する。
【0015】
本形態の装置は、例えば、被削材に対して研削加工する工具(砥石)を備える加工装置の動作を制御するための前記工具の経路を含むNCデータ(加工データ)を生成する情報処理を行う工具経路算出装置であって、研削中に工具に生じる磨耗を考慮した経路を算出する機能を実現する処理部を有する。前記処理部は、被削材(特定の材料種類)と工具(特定の材料種類)との組合せについて、(1)第1の形状及びサイズを持つ被削材に対する第1の条件(加工形態)による第1の研削加工(試加工)を行った結果のデータに基づき、当該第1の研削加工の研削諸元値と工具磨耗量(減少量)との関係情報を含むデータをデータベースに格納する処理と、(2)第2の形状及びサイズを持つ被削材に対する第2の条件(加工形態)による第2の研削加工(実加工)を行うためのNCデータを生成する際に、当該第2の研削加工の研削諸元値と、前記データベースの関係情報とをもとに、当該第2の研削加工の工具磨耗量を算出する処理と、(3)上記第2の研削加工の工具の磨耗を考慮しない経路に対し、上記算出した第2の研削加工の工具磨耗量を反映して、当該工具磨耗量による加工誤差をキャンセルするように補正した当該工具の経路または径を算出し、当該補正後の経路または径を含む加工データに応じたNCデータを生成する処理とを行う。
【発明の効果】
【0016】
本発明のうち代表的な形態によれば、前述の従来の課題(1)〜(3)等に対応した以下のような効果を有する:
(1)試加工と実加工の条件を同じにする制約を緩和し、費用等を抑える、
(2)製品の設計変更の度の試験を不必要化または低減し、費用や時間等を抑える、
(3)工具(砥石)を必要以上に減少させないで済み、費用等を抑える。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施の形態のシステム(工具経路算出システム)の全体の概要構成を示す図である。
【図2】本実施の形態で、CAMシステム(工具経路算出装置)の構成を示す図である。
【図3】本実施の形態で、CAMシステム(工具経路算出装置)のハードウェア構成を示す図である。
【図4】本実施の形態で、加工装置(マシニングセンタ)(I/F接続先(NC制御対象)の加工装置の例)のハードウェア構成を示す図である。
【図5】本実施の形態で、CAMシステム(処理部)による工具経路算出処理のフローを示す図である。
【図6】(a)〜(c)は、本実施の形態で、砥石と被削材との接触状態を含む加工形態について示す説明図であり、(a)は第1の加工形態(直線)、(b)は第2の加工形態(円弧外側)、(c)は第3の加工形態(円弧内側)を示す。
【図7】(a),(b)は、従来技術に従う方式での、試加工の方法と結果の一例を示す説明図であり、(a)は加工形態(直線)、(b)は(a)による結果(研削諸元値(ψ)と砥石半径減少量(W)との関係)を示す。
【図8】(a),(b)は、従来技術に従う方式での、砥石半径減少量(W)の予測結果の一例を示す説明図であり、(a)は加工形態(円弧外側)及び研削条件(砥石仕様、周速度、送り速度、切込み量、被削材のサイズなど)、(b)は(a)による結果(切込み量(Δ)と砥石磨耗半径(W)との関係)を示す。
【図9】(a),(b)は、本実施の形態での、砥石半径減少量(W)を予測する第2の方式を示す説明図であり、(a)は砥石と被削材との接触弧長さ比率、(b)は(a)に基づく予測の結果(切込み量(Δ)と砥石半径減少量(W1)との関係)を示す。
【図10】(a)〜(d)は、使用する砥石の半径(R)が砥石半径減少量(W)に与える影響について示す説明図である。
【図11】(a),(b)は、本実施の形態での、砥石半径減少量(W)を予測する第1の方式を示す説明図であり、(a)は砥石単位幅あたり体積減少量(ψとMの関係)、(b)は(a)に基づく予測の結果(切込み量(Δ)と砥石磨耗半径(W2)との関係)を示す。
【図12】本実施の形態での、経路(P)や砥石半径減少量(W)等を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、実施の形態を説明するための全図において、同一部には原則として同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。なお説明上、適宜、W:半径、M:体積、といった記号を使用する。
【0019】
[概要等]
本実施の形態のシステム(図1,図2等)の工具経路算出装置(CADシステム)は、加工装置の研削工具(砥石)の研削加工中の磨耗を考慮した経路を含む、加工装置の制御用の加工データ(NCデータ)を自動的に算出・補正する機能を有する。補正用データを得るための試加工と、補正用データを反映する実加工とで異なる条件(材料の形状やサイズなど)にすることができる。本機能は、試加工のデータ(砥石磨耗体積等)をもとに実加工のデータ(砥石磨耗半径等)を算出(予測)する。
【0020】
試加工時、被削材−研削工具(砥石)の組合せで、第1の条件で、第1のNCデータにより、加工装置で試加工を実行する。試加工(第1の条件)は、例えば小サイズの平板の直線溝加工などの簡易な試験にすることができる。そして試加工の結果データを得て、例えば研削諸元値と砥石磨耗体積との関係を示す関係情報を含むデータをデータベースに格納する。
【0021】
実加工時、上記データベースの格納データ(関係情報)をもとに、工具の磨耗を考慮した好適な経路を算出し、当該経路を含む対応する加工データを補正し、対応するNCデータを生成・出力する。実加工時、試加工時と同じ材料による、被削材−研削工具(砥石)の組合せで、第2の条件で、第2のNCデータにより、加工装置で実加工を実行する。実加工(第2の条件)は、大サイズの製品の円弧形状の加工などが可能である。
【0022】
また特に、補正(予測)に用いるデータ(関係情報)に関する、第1の方式として、被削材−研削工具(砥石)の砥石減少体積を用いる(図11,図1のDB50等)。これにより従来技術よりも砥石磨耗の予測誤差を大幅に低減する。
【0023】
また特に、補正(予測)に用いるデータ(関係情報)に関する、第2の方式として、被削材−研削工具(砥石)の接触弧長さ比率を用いる(図9)。これにより従来技術よりも砥石磨耗の予測誤差を大幅に低減する。
【0024】
なお第1の方式の方が第2の方式よりも効果が高い(予測誤差が小さい)ため、代表的な形態(図1等)として説明する。
【0025】
[システム]
図1において、本実施の形態のシステム(工具経路算出システム)100の全体、及び主要部であるCADシステム30の概要構成について示す。本システム100は、設計・加工データ作成システム101を構成する情報処理装置(コンピュータシステム)、及びそれによる制御対象の加工装置20を含んでいる。本システム100は、CADシステム30(形状設計装置)と、設計データ(設計データ記憶装置)51と、CAMシステム10(工具経路算出装置)と、NCデータ(NCデータ記憶装置)52と、NCシミュレータ40と、NCデータ52で制御されるマシニングセンタ(加工装置)20とを有し、これらが通信接続される構成である。51,52は、データまたはそのデータの記憶装置を示す。
【0026】
設計・加工の一般的な流れとしては、まずユーザの操作によりCADシステム30の処理を用いて、入手したい任意の部品(対象製品)の形状などが設計され、設計が完了すると、対応する設計データ51が記憶、出力される。次に、ユーザの操作により、CAMシステム10の処理を用いて、設計データ51をもとに、対象製品を加工(製造)するためのNCデータ52が生成され、記憶され、加工装置20へ出力される。加工装置20ではNCデータ52に従って自動的に加工の動作が制御される。
【0027】
(30) CADシステム30は、形状設計装置であり、CAD(Computer Aided Design)による形状設計機能を含む情報処理を実現する例えばPC等の装置である。CADシステム30は、ユーザ(CADオペレータ等)の操作に基づき、設計データ51を作成し保持し出力する。
【0028】
(51) 設計データ51は、CADデータであり、製作(加工)対象の製品の形状、材質などのデータを含む。設計データ51は、CADシステム30及びCAMシステム10内のメモリに保持され、また他の記憶装置に保持されてもよい。
【0029】
(10) CAMシステム10は、工具経路算出装置であり、CAMによる工具経路算出機能を含む情報処理を実現する例えばPC等の装置である。CAMシステム10は、ユーザ(CAMオペレータ等)の操作に基づき、設計データ51からNCデータ52を作成し保持し出力する。
【0030】
CAMシステム10は、処理部201、記憶部202、I/F部203、試加工部204A、実加工部204Bなどを備える。
【0031】
(52) NCデータ52は、対象の加工装置20を制御するためのNCプログラムを含んで成るNCデータである。NCデータ52は、CAMシステム10及び加工装置20内のメモリに保持され、また他の記憶装置に保持されてもよい。
【0032】
(40) NCシミュレータ40は、CAMシステム10から加工装置20へNCデータ52を出力する前に、NCデータ52を動作検証する処理を行い、検証が終了したNCデータ52が加工装置20に転送される。なお当該検証(NCシミュレータ40)は省略も可能である。
【0033】
なお図1のCADシステム30とCAMシステム10を1つに統合した形態や、各機能を別の装置へ分離した形態などが適宜可能である。例えばCAMシステム10にCAD機能を備える場合、CAMシステム10で設計データ51を作成してもよい。
【0034】
(201) 処理部201は、概略、図示するステップS1〜S6のような情報処理を行う(後述)。特にS3,S4は特徴的な処理である。
【0035】
(202) 記憶部202は、必要なデータ情報を保持する。本実施の形態では、設計データ51、条件情報53、DB50、NCデータ52などを保持する。
【0036】
(203) I/F部203は、外部(特に加工装置20を含む)との接続の通信インタフェース処理を行う部分である(図3の通信I/F装置308などを用いる)。I/F部203は、試加工部204Aや実加工部204Bからの指示に基づき、通信ネットワークを通じて、加工装置20やNCシミュレータ40などに対しNCデータ52や指示情報を送信する等の通信処理を行う。
【0037】
なお本実施の形態では、CAMシステム10から加工装置20へNCデータ52を送信すると、自動的に加工装置20がNCデータ52に従って加工動作する。またNCデータ52に従って計測装置4を用いて加工中または加工結果の状態の計測も可能とする(手動での計測も可能)。これにより少なくとも砥石磨耗データ等を含む試加工や実加工の結果データ(図2のk1,k2)が得られる。なお、加工装置20やシステムの形態に応じて、加工装置20からCAMシステム10等へデータ情報(例えば加工状態や加工結果等のデータ)を送信する形態としてもよい。
【0038】
(204A) 試加工部204Aは、処理部201、I/F部203等を用いて、試加工の際の処理を行う。また試加工のための所定のユーザインタフェース(画面等)を提供する。
【0039】
(204B) 実加工部204Bは、処理部201、I/F部203等を用いて、実加工の際の処理を行う。また実加工のための所定のユーザインタフェース(画面等)を提供する。
【0040】
なお、試加工部204A、実加工部204Bのいずれも基本的な処理の流れは処理部201を用いて同様に実現される。加工の条件や処理詳細などは異なる。
【0041】
(50) DB50は、CAMシステム10(処理部201)が工具経路算出処理などを行うにあたって必要なデータ(砥石磨耗量、関係情報211など)を格納するデータベースである。特に第1の方式では、砥石磨耗体積データなどを格納する砥石磨耗体積DB50である(第2の方式では接触円弧長さ比率情報を含むDB50)。関係情報211となる砥石磨耗体積データは、関数(予測式)や対応表(テーブル)などの形式で作成され格納される(後述)。
【0042】
DB50は、加工装置20での試加工の結果データk1(図2)をもとに作成される。なお結果データk1全体をDB50に格納してもよいし、関係情報211に係わる一部の情報のみを格納してもよい。例えば加工装置20での測定装置4(図2)による測定結果を含む試加工の結果データk1がCAMシステム10に入力・取得され、DB50に格納される。そしてユーザまたは一部計算により、関係情報211となる関数(予測式)または対応表が作成(設定)されDB50に格納される。
【0043】
[試加工・実加工]
図2において、図1の本実施の形態のシステムにおける、試加工と実加工に関する、CAMシステム10と加工装置20との接続構成などを示す。CAMシステム10と加工装置20とが例えばLAN90で接続される。
【0044】
試加工部204Aを用いる試加工では、加工装置20での研削工具(砥石)1Aと被削材(部位)2Aとの組合せを用いて、第1の条件、NCデータd1により試加工を行い、その結果データk1を得る。試加工(第1の条件)では、例えば小さいサイズの平板のような単純な形状の被削材2Aを使用して簡易な試験にすることができる。結果データk1は、測定装置4により加工状態や加工結果を測定すること等により得られる。なお加工装置20(測定装置4)とは別の装置(手段)やユーザの作業によって結果データk1を取得してもよい。試加工では、異なる研削諸元値(ψ)を用いて2回以上の試験を実行する。これにより、結果データk1からDB50に格納するための関係情報211などを得る。関係情報211は、例えば研削諸元値(ψ)と砥石磨耗体積(Mとする)との関係を示す情報である(第1の方式の場合)。
【0045】
実加工部204Bを用いる実加工では、加工装置20での研削工具(砥石)1Bと被削材(部位)2Bとの組合せを用いて、第2の条件、NCデータd2により実加工を行い、その結果データk2を得る。結果データk2は、同様に測定装置4等により得られる。実加工では、研削工具1Bと被削材2Bの組合せの材質(種別)を試加工の組合せ(1A,2A)と同じとした上で、試加工とは異なる形状(例えば円弧)やサイズ(例えば大きいサイズ)の被削材2Bを使用し、異なる加工形態とすることができる。NCデータd2は、処理部201で生成したNCデータ52に対応する。
【0046】
加工装置20での結果データ(k1,k2)は、CAMシステム10に入力され、DB50等に格納される。結果データ(k1,k2)の入力は、I/F部203等を介した自動的な通信処理によるものとしてもよいし、ユーザ入力としてもよい。
【0047】
なお本実施の形態では、加工装置20で試加工と実加工の両方を実行する。これに限らず、試加工は、DB50に格納する必要なデータを得ることができるのであれば、別の装置(手段)で実行してもよい。試加工は、組合せの材質などの基本的な条件を同じにした上で、実加工の条件とは異なる簡易な試験にできるので、簡易な構成の加工装置でも可能である。
【0048】
[処理部201]
図1の処理部201での処理フローは以下である(S1等は処理ステップを表す)。また図2では、図1の処理部201(処理フロー)に対応する各処理部として、データ入力部11(S1対応),条件選定部12(S2対応),演算部13(S3,S4対応),NCデータ設定部14(S5対応)を有する構成を示している。
【0049】
(S1) S1では、データ入力部11によるデータ入力処理として、CADシステム30からの設計データ51等をもとに、設計データ(対象製品形状などのデータ)、材料データ(被削材の材料などのデータ)、素材形状データ(被削材の形状などのデータ)などの必要なデータ情報を入力/取得する。なお材料データと素材形状データに関してはCAMシステム10でユーザ(CAMオペレータ)が作成する場合もある。
【0050】
またS1では、併せて、必要な加工装置20や工具(砥石)等に関するデータを入力してもよい(S2で入力してもよい)。
【0051】
(S2) S2は、条件選定部12による条件選定処理として、S1の入力データを用いた加工(製作)に係わる全般的な条件を選定(設定)する処理を行う。特に、加工部位(被削材)、使用する研削工具(砥石)、加工条件(ここでは対象の研削工程(パート)に関する諸条件)などを選定する。S2で、一部の情報の選定についてはユーザ入力により行う。S2の選定は、ユーザがその都度入力してもよいし、外部からの情報や予め設定された情報を用いて自動的に行ってもよい。S2で選定した各情報は条件情報53として記憶部202に保持され以後の演算で使用される。
【0052】
またS2では、条件の1つとして加工形態を選定してもよい。ここでの加工形態とは、被削材の形状(平板、円弧等)に応じた、工具(砥石)の移動の形態(軸の軌跡が直線か円弧か等)を含む(後述、図6等)。
【0053】
(S3) S3では、演算部13により、実加工の加工装置20の工具が砥石であるパート(工程)について、S2の選定条件に基づき、磨耗を考慮しない工具(砥石)の経路の算出を行う。また、求めた工具(砥石)の経路から、一種類の加工の形態が継続している間に対応した工具(砥石)の加工距離(研削距離)(図12)を、加工形態が変わるごとに算出する。なおS3では、算出の前提として、加工形態(直線/円弧外側/円弧内側などの違い)に関する決定も含む(S2までで済んでいる場合は不要)。
【0054】
(S4) S4では、演算部13により、S3の結果をもとに、砥石加工データ補正処理を行う。即ち、DB50の関係情報211等を参照しながら、試加工時の砥石磨耗の関係情報(ψ,M)と、実加工の研削諸元値(ψ)とをもとに、実加工時の砥石磨耗の体積(M)等を予測する計算をする。これにより、S3で求めた補正前の磨耗を考慮しない工具経路を含む加工データを、磨耗を考慮した工具経路を含む内容となるように補正する。
【0055】
(S5) S5では、NCデータ設定部14により、S4までの結果をもとに、NCプログラムを生成し、NCデータ52を設定する処理を行う。尚ここでの設定とは、加工装置20に対して設定(反映)するためのNCデータ52を生成して記憶部202に一旦格納してから加工装置20へ出力することを指す。
【0056】
(S6) S6では、処理部201は、対象製品の加工(制御)のために必要な一連の全てのNCデータ52が生成及び設定されたかどうかを判定する。別の加工部位や工程がある場合(N)、S2に戻ってS2〜S5の処理を繰り返す。全てのNCデータ52の生成及び設定を終えた時点で(Y)、記憶部202のNCデータ52は、I/F部203の処理、及びLAN90を介して、加工装置20へ出力(転送)される。そして加工装置20でI/F部5を通じて当該NCデータ52を受け取り、当該NCデータ52に従って自動的に加工の動作が制御される。即ち、実加工の際、NCデータd2により、対象部位(被削材)2Bが研削工具(砥石)1Bにより設計データ51に基づく所望の形状に加工される。
【0057】
なお上記処理例に限らず、研削工具(砥石)を用いるパート(工程)のみに対応した部分的なNCデータ52を生成して加工装置20へ設定する形態としてもよい。
【0058】
[CAMシステム]
図3で、CAMシステム10のハードウェア構成として、CPU301、ROM302、RAM303、磁気ディスクドライブ304、磁気ディスク305、光ディスクドライブ306、光ディスク307、通信I/F装置308、プリンタ309、キーボード310、マウス311、ディスプレイ312、及びバスなどを備える構成である。
【0059】
図2の処理部201等は、CPU301が磁気ディスク305や光ディスク307やROM302からデータをRAM303へロードしてプログラム処理を実行することにより実現される。記憶部202は、ROM302やRAM303や磁気ディスク305や光ディスク307など及びその制御処理により実現される。例えば磁気ディスク305の一部に、CAM機能(従来技術)や処理部201の機能などを実現するプログラム321や、DB50を含む各データ322が記憶される。
【0060】
通信I/F装置308は、通信ネットワーク(LAN)90を通じて他の装置とデータ通信する処理を行う公知の要素である。マウス311やキーボード310は、ユーザがデータや指示の入力に用いる。ディスプレイ312やプリンタ309は、試加工部204Aや実加工部204Bの処理に基づき、画面/紙面に各種データ(50〜52)やユーザインタフェース情報を表示/印刷出力する。ユーザインタフェース情報としては、例えばS1,S2等の各処理のデータ情報や指示の入出力や、DB50の格納データの入出力などを含む。例えばユーザによる関係情報211の式や表の設定も可能とする。
【0061】
[加工装置]
図4で、加工装置であるマシニングセンタ20について説明する。CAMシステム10のI/F部203(通信I/F装置308)から、通信ネットワーク(LAN)90を経由して、加工装置20のI/F部5と接続される。I/F部5は、通信ネットワーク(LAN)90との接続・通信処理を行い、外部からNCデータ52を受信し、記憶し、処理する。加工装置20は、CAMシステム10から受信したNCデータ52の処理に従って自動的に動作する。加工装置20は、研削工具1や切削工具3を含む各部を、NCデータ52による経路に従って動かす。なお加工装置20におけるNCデータ52を処理して動作する機構は公知技術を適用可能であるため説明は省略する。
【0062】
加工装置20は、研削、切削、測定などを含む各種の工程のための機構として、研削工具1、切削工具3、計測装置4などを備える。研削工具1は、図1の1A,1Bに対応する。本実施の形態では、特徴的な処理を行う対象は、研削工具(砥石)1を用いた研削の工程(パート)である。なお当然ながら切削工具3を用いた加工もNCデータ52の指示により同様に可能となっている。
【0063】
研削工具1は、被削材(2A,2B)を研削加工するための工具であり、例えば円筒形状の砥石である。砥石の形状や動作については図6等に示される。
【0064】
加工装置20に備える測定装置4は、研削工具(砥石)1等を用いた加工結果における研削工具(砥石)1の長さや径などの寸法を計測する。同様に、被削材の長さや径などの寸法を計測する測定装置を設けてもよい。測定装置3で計測した結果を含む結果データがCAMシステム10に入力・取得される。なお上記計測は、別の装置やシステムで実現し、当該計測結果をCAMシステム10等に入力する形としてもよい。
【0065】
また他の実施の形態として、CAMシステム30の機能(処理部201相当)を加工装置20に一体化した形態も可能である。即ちこの形態では、既存の工具経路(砥石の磨耗を考慮しない経路)を含むNCデータを、加工装置20の備える機能(処理部201相当)により、砥石の磨耗を考慮した経路を含むNCデータとなるように補正する。
【0066】
[処理]
図5では、CAMシステム10の処理部201における図1のS3,S4を含む処理に関する詳細処理例について説明する。前提として試加工によるデータ(関係情報211)がDB50に格納済みであり、実加工のためのNCデータ51(d2)を得るために本処理を実行する。
【0067】
(S101) まずS101では、データ入力部11や条件選定部12を用いて、設計データ51や条件情報53等を入力/取得する。ここでは、加工前の被削材の形状、加工後の被削材(製品)の形状、及び加工に使用する研削工具1の形状、等の情報を含む。
【0068】
(S102) S102では、処理部201は、対象製品の製作工程全体(複数の工程から成る)のうちの該当工程が、使用する工具が砥石(研削工具1)であるパートかどうかを判定する。工具が砥石でない場合(例えば切削工具3によるパートの場合)、本特徴的な処理(演算部13によるS103〜S105等の処理)は行わないため、S106に進み、S106で一般のCAMがNCデータを生成するのと同様の内容の処理を行う。
【0069】
(S103) S103では、演算部13を用いて、設計データ51や条件情報53をもとに、実加工における工具(砥石)の磨耗を考慮しない経路(基本的な経路、補正前の経路)を算出する。またこの算出の際、関連する加工形態(直線/円弧外側/円弧内側など)や加工距離の決定も含む。
【0070】
(S104) S104では、演算部13を用いて、まず実加工の研削諸元値ψ(プサイ)を算出する。ψについては後述の図7等で示される。また、演算部13を用いて、DB50の格納データ(関係情報211)を参照し、上記実加工の研削諸元値ψから、実加工の砥石磨耗体積(M)を予測(算出)する。そして、演算部13を用いて、その結果の体積(M)を砥石半径減少量(Wとする)に換算する。DB50の関係情報211は、砥石半径減少量(W)を計算するために必要なデータとして、試加工時の研削諸元値ψと砥石磨耗体積(M)との関係が関数または対応表の形式で記述されている(例えば図11(a)に示すψとW2の指数関数)。
【0071】
(S105) S105では、演算部13を用いて、S103の補正前の工具の経路(または対応する径)を、S104の結果(W)を用いて、磨耗を考慮した経路(または対応する径)となるように補正する。即ち、経路上の工具(砥石)の位置を、砥石半径減少量(W)の分、被削材の方へ近付けるように修正する。なおNCデータ52に係わる工具(砥石)の経路と径は、簡単な計算で換算可能である。
【0072】
またS105での補正後の経路を定めるに際しては、時間軸に沿って全体的になめらかな経路となるようにする(階段状の経路にはしないようにする)。設計データ51に基づく基本の経路における一点から次の移動点への経路(例えば図12の点pからqに対応する経路)に対して、上記の砥石半径減少量(W)の分を、移動距離(加工距離)に比例して配分して、なめらかな(連続的に変化する)経路となるように補正する。例えば図12の補正前の経路P1から補正後の経路P2となる(平板の場合)。
【0073】
(S106) S106では、演算部13を用いて、上記S105までの結果をもとに、補正後の工具経路を含む補正後の加工データに対応するNCプログラムを生成する処理を行う。そして生成されたNCプログラムを含むNCデータ52として記憶する。
【0074】
(S107) S107では、処理部201は、次の加工部位の有無を判定し、有る場合(N)はS101へ戻って同様に処理を繰り返し、無い場合(Y)は終了する。
【0075】
[研削諸元値ψ]
前記S104の研削諸元値ψを算出する処理に関して、研削諸元値ψは、加工形態に応じて、以下の数式1〜数式3によって算出される:
(1)直線の加工の場合(第1の加工形態):
ψ=(v/V)(Δ/2R) ・・・(数式1)
(2)円弧外側の加工の場合(第2の加工形態):
ψ=(v/V)[Δ{(1/2R)+(1/2r)} ・・・(数式2)
(3)円弧内側の加工の場合(第3の加工形態):
ψ=(v/V)[Δ{(1/2R)−(1/2r)} ・・・(数式3)。
【0076】
上記数式における記号の意味については下記の図6等で説明する。
【0077】
[加工形態]
図6は、各種の加工形態や条件などについて模式的に示している。本システムの特徴の1つとして、図6(a)のような直線(平板)の形態の試加工のデータ(関係情報211)から、図6(b),(c)のような円弧(外側/内側)の形態の実加工のデータを予測する。
【0078】
図6(a)は、第1の加工形態として、平板(直線の溝の加工)の場合である(図7(a)とも対応する)。1aは、円筒(ないし円盤等)の形状の砥石(研削工具1)を示す。2aは、平板形状の被削材(加工部位)を示す。特に試加工でこの加工形態を用いるので前述の1A,2Aと対応する。図6(a),(b),(c)の砥石1aは同じである。
【0079】
図6(a)で、数式1に対応する記号として、R:半径、Δ(デルタ):切込み量、V:周速度、v:送り速度(移動速度)を示す。半径Rの砥石1aが周速度Vで回転しながら、被削材2aに対してΔの切込みを与え、移動速度vで直線運動している状態を示している。
【0080】
図6(b)は、第2の加工形態として、円弧外側(凸面)の加工の場合である(図8(a)とも対応する)。2bは、円弧外側(凸面)形状の円筒の被削材を示す。特に実加工でこの加工形態を用いることができるので、前述の1B,2Bと対応する。
【0081】
図6(c)は、第3の加工形態として、円弧内側(凹面)の加工の場合である。2cは、円弧内側(凹面)形状の被削材を示す。特に実加工でこの加工形態を用いることができるので、前述の1B,2Bと対応する。
【0082】
図6(b)では、rは被削材2b側の半径である。半径Rの砥石1aが周速度Vで回転しながら、半径rの被削材2bに対して、Δの切込みを与え、移動速度vで円弧軌跡を描きながら運動している状態を示している。本状態では、円筒形状の被削材2bの中心と砥石1aの円弧軌跡の中心とが一致している。図6(b)に示す記号が数式2と対応する。
【0083】
図6(c)では、図6(b)と逆で、円弧内側形状の被削材2cに対して、半径Rの砥石1aが周速度Vで回転しながらΔの切込みを与え移動速度vで円弧軌跡を描きながら運動している状態を示している。本状態では、円弧内側形状の被削材2cの中心と砥石1aの円弧軌跡の中心とが一致している。図6(c)に示す記号が数式3と対応する。
【0084】
なお簡単のために、図6(b),(c)では、砥石1aの円弧状の軌跡(経路)の中心と、被削材2b,2cの研削前の円弧形状の中心とが一致の場合を示しているが、両者の中心が一致していない場合も可能である。
【0085】
研削諸元値ψは、被削材の切り屑の厚さを求める近似式の一部である。同じ砥石の場合、ψが大きくなるほど砥石に作用する抵抗が大きくなり、よって砥石の磨耗が大きくなる傾向を示す(図7(b)等)。
【0086】
ここで、図6(a)の平板(直線)の加工形態で、条件(研削諸元値ψ)を変えて数回(少なくとも2回)の試験(試加工)を行う。すると、研削諸元値ψと砥石1aの磨耗量との関係を得ることができる。また、このψと砥石磨耗量との関係は、指数関数として整理することができる(図7(b)等)。よって、ある工具(砥石)1Aと被削材2Aとの組合せで、図6(a)の例のような試加工を行い、その結果データ(k1)による、指数関数の式(予測式)を、DB50に関係情報211として格納しておく。これにより、別の加工(実加工)に際し、この式(関係情報211)を用いて、砥石1aの磨耗量を予測することができる(前記S104)。特に、図6(b),(c)のように円弧状の軌跡(経路)で砥石1aが移動する形態の場合にも、数式2や数式3から計算されるψに対応する砥石1aの磨耗量を、上記直線の試加工による式(関係情報211)によって予測することができる。第1の方式では上記磨耗量として体積(M)の形式である。関係情報211をDB50に格納する形式は、上記の指数関数の式を対応表(テーブル)にした形式としてもよい。
【0087】
[課題(従来方式)]
ここで、従来技術に従い、被削材として「インコネル718」(図7、研削条件)に代表されるような耐熱合金に上述の方式、すなわち、図7に示す平板形状の加工データから得た、研削諸元値ψと砥石半径減少量Wの関係の実験式に、円弧形状の加工に適用するψの値を数式2あるいは数式3から求めて単純に代入する方式、を適用する試みを行ったところ、以下のような課題があった。以下図7,図8を用いてこの従来方式の課題について詳述する。
【0088】
図7(a)は、図6(a)のような平板の被削材2aに対して円筒状の砥石1aにより直線溝加工(試加工)を行う場合を示す。図7(b)は、その研削条件と、結果(ψとWの関係)を示す線図である。ψは数式1による。Wは砥石半径減少量(砥石磨耗半径)である。
【0089】
図7(b)に示すように、研削条件として、砥石(研削工具1)は、粒度が46、硬さがH、組織が10で、サイズは半径が60mm、厚さが6mmのセラミック砥石を用いる。そして、砥石の周速度Vが30m/sec、送り速度vが210〜630mm/min、切込み量Δが0.2〜6.0mmといった条件としてデータを得た。研削距離は70mmである。被削材2aはインコネル718AG材(時効処理材)である。そして、次の数式4(指数関数)による、砥石半径減少量W[mm]の値を得て、データベースとした。
【0090】
W=0.0069e0.698ψ ・・・(数式4)
砥石半径減少量Wは、例えば図10(a)から図10(b)への変化のような磨耗による砥石1aの半径Rの減少量を示す。あるいは同様に図12のような砥石1aの半径Rの減少量を示す。
【0091】
ここで、数式2から図6(b)のような円弧外側を加工する場合のψを求め、数式4に代入することで、砥石磨耗半径(W)を求めた。また、対応して実際に砥石1aと被削材2bを図8(a)に示す研削条件内の物として、円筒形状の被削材2bを加工した場合の結果が図8(b)である。
【0092】
図8で用いた砥石1aは、図7(a)で用いたのと同じセラミック砥石である。研削諸元(ψ)は、周速度Vが30m/sec、送り速度vが砥石1aと被削材2bとの接触点で420mm/minである。被削材2bは、図7(2a)で使用したのと同じインコネル718AG材である。
【0093】
図8(b)の結果に示すように、切込み量Δが例えば2.0mmの箇所において、予測誤差が107%と大きくなった。この結果をもとに工具経路を補正すると、切込み過大となってしまう。なお[予測誤差]=([予測値]−[実験値])/[実験値]である。
【0094】
上述のように、従来技術に従い、平板形状の場合の加工データをもとに、円弧形状の場合の加工データを単純に予測する方式では、予測誤差が大きく、適切な工具経路の補正ができない。
【0095】
[第2の方式]
次に、図9以下を用いて、上記の従来技術に従う方式(図7,図8)による過大な予測誤差を縮小する(言い換えると砥石半径減少量(W)の予測精度を向上する)、本実施の形態の第1、第2の方式について説明する。図9では第2の方式に関して示し、図11ではより効果の大きい第1の方式について示す。
【0096】
図9で、第2の方式として、砥石1aと被削材2(2a,2b)との接触長(接触弧長さ)の比率(L2/L1)を用いて、砥石磨耗半径(W)を計算(予測)する。これにより、図9(b)に示すように、予測誤差を18%に減少させる効果が得られた。
【0097】
図9(a)で、(1)は、前述の図6(a)と同様に、砥石1aが平板の被削材2aを直線移動して研削する状態を示している。一方、(2)は、前述の図6(b)と同様に、砥石1aが円弧外側の形状の被削材2bの外周を円軌跡で移動して研削する状態を示している。(1)における砥石1aと被削材2aとの接触弧長さL1は、(2)における砥石1aと被削材2bとの接触長さL2よりも長い(L1>L2)。即ち、接触弧長さ(L1,L2)は、(2)の円弧外側の場合(L2)の方が(1)の直線の場合(L1)よりも短い。
【0098】
研削工具(砥石)1の切れ刃となる砥粒の接触時間は、(1)の直線の研削よりも(2)円弧外周を研削した場合のほうが短くなる。被削性が良い材料(被削材2)の研削にあたっては、この接触弧長さ(L1,L2)は砥石1の磨耗による半径減少量(W)に与える影響が小さいが、難削材であるインコネル718のようにNi基の耐熱合金を研削した場合、この被削材2と砥石1の接触弧長さ(L1,L2)は砥粒の磨耗に大きく影響を与えると考えられる。
【0099】
そこで、第2の方式として、前述の従来の手法(図7,図8)に基づく砥石磨耗半径(W)の算出式に対して、上述の接触弧長さ比率(L2/L1)を導入(掛算)する、以下の数式5により、当該接触弧長さ比率により補正した砥石磨耗半径(W1とする)を計算する。
【0100】
W1=(L2/L1)W ・・・(数式5)
図9(b)は、上記W1による結果(ΔとW1との関係)である。この第2の方式では、上記比率を導入したことにより、切込み量Δが例えば2.0mmの箇所において、予測誤差が107%(従来)から18%まで大きく縮小した。即ち、従来の過大な予測誤差を縮小し、砥石半径減少量(W)の予測精度を向上できた。
【0101】
[第1の方式]
上記の第2の方式によって大きな向上の効果が得られたが、まだ18%の予測誤差がある。この予測誤差をさらに縮小する第1の方式について、以下図11等を用いて説明する。第1の方式は、第2の方式の接触弧長さ比率(L2/L1)を要素として内包した方式であり、砥石減少体積(M)を用いて計算(予測)する方式である。第1の方式により、図11に示すように、更に予測誤差を8%に縮小させる効果が得られた。なお従来の方式の砥石磨耗半径W、第2の方式の補正による砥石磨耗半径W1に対し、第1の方式では、砥石磨耗体積M、補正による砥石磨耗半径W2、で表す。
【0102】
[半径R,砥石磨耗半径W]
まず図10(a)〜(d)は、使用する砥石の半径(R)が砥石半径減少量(W)に与える影響について示す。各記号は図9までと同様である。(a)の砥石1aは前述同様の円筒形状の場合であり、半径R1である。点p−qは、被削材2a(平板)を切込み量Δで研削する際の面(線)を示し、対応する加工距離を示す。砥石1aは、周速度Vで回転し移動速度vで被削材2aに対して切込み量Δで直線運動を行い、p−qの部分を除去しようとしている。
【0103】
(b)は(a)の加工結果である。(b)の砥石1a’は、(a)の砥石1aにより研削した後の状態を示し、研削加工中に砥石1aが磨耗するので、加工開始前の半径R1から加工終了後の半径R2へ減少している。ε(ε1)は磨耗の影響による削り残し厚さ(誤差)を示す。Pは砥石1aの移動の経路を示す。
【0104】
(c)は(a)と同様の配置であるが、(c)の砥石1aは半径R3が(a)の砥石1aの半径R1よりも小さい(R1>R3)。
【0105】
(d)は、(c)の砥石1aで(a)と同様の(c)の配置で研削を開始し、(b)と同様に研削が終了した位置(状態)を示す。(d)の砥石1a’の半径R4は、(c)の砥石1aの半径R3から減少している。誤差はε2であり、ε1よりも大きくなる(ε1<ε2)。
【0106】
上記のように、被削材の同じ部分を除去(研削)しようとする場合、半径Rが小さい砥石を用いた方が半径減少量が大きくなり、削り残し(ε)も大きくなる。これは、半径Rの小さい砥石の方が、砥石の作用面(研削を行う面)に存在する砥粒の数が少なくなるため、1個の砥粒が被削材に接触している長さが大きくなり、砥石の磨耗が大きくなるためである。
【0107】
よって、砥石の磨耗の大きさを予測するために用いるDB50のデータ(関係情報211)としては、研削諸元値ψに対する砥石半径減少量(従来のW)ではなく、砥石体積減少量(M)とした方が、より適切となる。1個の砥粒が研削不能となるまでに除去できる被削材の体積は同じであるから、被削材の除去体積が同じであれば、砥石の半径にかかわらず砥石が減少する体積も同じになると推定できる。
【0108】
[砥石磨耗体積M]
図11(a),(b)は、第1の方式について示す。図11(a)では、前記図7,図8で示した従来方式によるψとWの関係(線図)を、ψと砥石減少体積Mとの関係に換算した線図を示す。ψは前述同様の値、Mは砥石単位幅当たり体積減少量([mm3/mm])である。
【0109】
図11(a)の線図から、以下の数式6に示す近似式を得ることができる。W2は、砥石減少体積Mに基づき補正した砥石減少半径Wを示す。
【0110】
W2=2.587e0.699ψ ・・・(数式6)
図11(b)は、上記の数式6を用いて砥石減少体積Mから砥石半径減少量W2を計算し、図9(b)の実験値と比較して示した線図である。これにより、図11(b)のように、砥石磨耗半径の予測を8%以下の予測誤差で実現することができた。第2の方式に対して更に誤差を縮小できた。
【0111】
前述の図1,図5等の構成では、上記ψとMの関係を示す関係情報211をDB50(砥石磨耗体積DB)の格納データとして適用し、S4(S104)では当該関係情報211を参照して砥石磨耗半径W(W2)を予測(算出)している。このような第1の方式に基づき、図6(b),(c)のような曲面(円弧)の研削(実加工)においても、図11(b)のような小さな予測誤差で、砥石磨耗半径(W2)を得て、対応する工具経路(または工具径)データを補正することができる。第1の方式を用いるCAMシステム10等の構成により、工具(砥石)1の磨耗を考慮して精度良く補正した工具経路を生成・出力し、加工装置20の研削動作を好適に制御し、高品質の加工品を得ることができる。
【0112】
[経路等]
図12は、本実施の形態の補足として、補正前後の工具経路や加工距離や工具径補正量などについて示す。基本的に図10(a),(b)に対応した経路P(P1,P2)などを示している。図10(a)の被削材2a(平板)の加工前、砥石1aの磨耗前(半径R1)の状態から、図10(b)の加工後、砥石1aの磨耗後(半径R2)の状態への変化に対応している。簡単のため、平板(直線)の加工の場合で示すが、円弧の場合も同様である。
【0113】
P1は、図10(a)から(b)への変化に対応した、砥石1aの磨耗を考慮しない経路(補正前の経路)(点aから点bまで)である。図10(b)のように、被削材2aは理想的な切込み量Δを得られず、削り残し(ε1)が生じる。ここでは半径減少量(差分:R1−R2)をXで示す。
【0114】
P2は、本実施の形態(第1の方式)による、上記の砥石1aの磨耗(R1→R2)を考慮した経路(補正後の経路)(点aから点cまで)である。砥石1aの半径減少量Xの分、砥石1aの位置が被削材2aに近付く方向へ寄せられる。被削材2aは理想的な切込み量Δが得られる。半径減少量Xは、当該経路の補正(P1→P2)に対応した、工具径の補正量に対応する。
【0115】
なお加工データ(NCデータ52)の補正の考え方において、補正対象は経路または径で同様となる。経路をP1からP2のように補正することは、砥石の径(R)で考えると、P1のような基本の経路をもとに、半径R1からR2への減少量Xを工具径補正量として、各時点の減少量で砥石の中心軸の位置(点aなど)を被削材側へ近付ける方向(図12では下側)へと修正することに相当する。結果、直線の加工の場合であればP2のような経路になる。円弧の加工の場合であれば曲線の経路になる。
【0116】
[効果等]
以上説明したように、本実施の形態によれば、(1)試加工と実加工の条件を同じにする制約を緩和し、費用等を抑えることができ、(2)製品の設計変更の度の試験を不必要化または低減し、費用や時間等を抑えることができ、(3)工具(砥石)を必要以上に減少させないで済み、費用等を抑えることができる。
【0117】
特に、試加工(簡易な試験)で得たDB50のデータから、実加工時の砥石磨耗量(半径W)を計算(予測)し、工具の経路(または径)の補正に用いる。よって、実加工と同じ条件で補正用データを取得する必要がある従来の方式で必要な工数や材料などが不要になる。
【0118】
また、試加工が困難な大サイズの製品を製作する場合にも、砥石の磨耗を考慮して補正した経路を実サイズの試験片の研削加工をせずに得られるので、加工開始準備時間を大幅に短縮できる。
【0119】
さらに、砥石磨耗補正(工具経路補正)の機能を自動的に実現している。よって、先行技術例のように、研削加工中に加工装置の動作を一旦停止させて、砥石を成形する作業、あるいは、砥石や被削材の寸法を測定して砥石磨耗量を把握して加工データを補正する作業、等の必要が無く、人の手間が減少し、加工能率の低下を招かない。
【0120】
以上、本発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0121】
本発明は、CAMやNC、研削を行う加工装置などのシステムに利用可能である。
【符号の説明】
【0122】
1,1A,1B,1a,1a’…砥石(研削工具)、2,2A,2B,2a,2b,2c…被削材、3…切削工具、4…測定装置、5…I/F部、10…CAMシステム(工具経路算出装置)、11…データ入力部、12…条件選定部、13…制御部、14…NCデータ設定部、20…マシニングセンタ(加工装置)、30…CADシステム(形状設計装置)、40…NCシミュレータ、50…DB(砥石磨耗体積データベース)、51…CADデータ、52…NCデータ、53…条件情報、90…LAN、100…本システム(工具経路算出システム)、101…設計・加工データ作成システム、201…処理部、202…記憶部、203…I/F部、204A…試加工部、204B…実加工部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被削材に対して研削加工する工具を備える加工装置の動作を制御するための前記工具の経路を含むNCデータを生成する情報処理を行う工具経路算出装置であって、
研削中に工具に生じる磨耗を考慮した経路を算出する処理部を有し、
前記処理部は、
被削材と工具との組合せについて、
(1)第1の形状及びサイズを持つ被削材に対する第1の条件による第1の研削加工を行った結果のデータに基づき、当該第1の研削加工の研削諸元値と工具磨耗量との関係情報を含むデータをデータベースに格納する処理と、
(2)第2の形状及びサイズを持つ被削材に対する第2の条件による第2の研削加工を行うためのNCデータを生成する際に、当該第2の研削加工の研削諸元値と、前記データベースの関係情報とをもとに、当該第2の研削加工の工具磨耗量を算出する処理と、
(3)上記第2の研削加工の工具の磨耗を考慮しない経路に対し、上記算出した第2の研削加工の工具磨耗量を反映して、当該工具磨耗量による加工誤差をキャンセルするように補正した当該工具の経路または径を算出し、当該補正後の経路または径を含む加工データに応じたNCデータを生成する処理と、を行うこと、を特徴とする工具経路算出装置。
【請求項2】
請求項1記載の工具経路算出装置において、
前記工具磨耗量は、円筒形状の工具の体積の減少量とし、
前記関係情報は、前記研削諸元値と上記工具体積減少量との関係を示す情報であり、
前記処理部は、前記第2の研削加工の際、研削距離に応じた工具体積減少量を算出し、当該工具体積減少量から工具半径減少量へ換算し、当該工具半径減少量に応じて前記工具経路または径を補正すること、を特徴とする工具経路算出装置。
【請求項3】
請求項1記載の工具経路算出装置において、
前記工具磨耗量は、円筒形状の工具の半径の減少量とし、
前記関係情報は、前記研削諸元値と上記工具半径減少量との関係を示す情報であり、
前記処理部は、前記第2の研削加工の際、研削距離に応じた工具半径減少量を算出し、当該工具半径減少量に対して、前記第1の研削加工の工具と第1の被削剤との接触弧長さと前記第2の研削加工の工具と第2の被削剤との接触弧長さとの比率を掛算することにより、補正した工具半径減少量を得て、当該補正した工具半径減少量に応じて前記工具経路または径を補正すること、を特徴とする工具経路算出装置。
【請求項4】
請求項1記載の工具経路算出装置において、
前記第1の研削加工は、研削諸元値の異なる2回以上の簡易な試験とし、前記第1の被削材は平板の形状であり、当該平板に対する直線溝加工を行うこと、を特徴とする工具経路算出装置。
【請求項5】
請求項1記載の工具経路算出装置において、
前記第2の研削加工は、前記第2の被削材は円弧外側の曲面を持つ形状であり、当該曲面に対する円弧状の経路での加工を行うこと、を特徴とする工具経路算出装置。
【請求項6】
請求項1記載の工具経路算出装置において、
前記第2の研削加工は、前記第2の被削材は円弧内側の曲面を持つ形状であり、当該曲面に対する円弧状の経路での加工を行うこと、を特徴とする工具経路算出装置。
【請求項7】
請求項1記載の工具経路算出装置において、
前記データベースに格納される関係情報は、前記研削諸元値と工具磨耗量との関係を関数または対応表の形式で表すデータであること、を特徴とする工具経路算出装置。
【請求項8】
請求項1記載の工具経路算出装置において、
前記処理部は、前記工具磨耗量による加工誤差をキャンセルするように補正した当該工具の経路または径を算出する際、前記工具の磨耗を考慮しない経路における第1の点から第2の点への加工距離において、前記工具磨耗量に対応した工具半径減少量を、時点毎に比例的に配分してなめらかな経路となるように補正すること、を特徴とする工具経路算出装置。
【請求項9】
被削材に対して研削加工する工具を備える加工装置の動作を制御するための前記工具の経路を含むNCデータを生成する情報処理をコンピュータを用いて行う工具経路算出方法であって、
研削中に工具に生じる磨耗を考慮した経路を算出する機能を実現する処理において、
被削材と工具との組合せについて、
(1)第1の形状及びサイズを持つ被削材に対する第1の条件による第1の研削加工を行った結果のデータに基づき、当該第1の研削加工の研削諸元値と工具磨耗量との関係情報を含むデータをデータベースに格納する第1の処理ステップと、
(2)第2の形状及びサイズを持つ被削材に対する第2の条件による第2の研削加工を行うためのNCデータを生成する際に、当該第2の研削加工の研削諸元値と、前記データベースの関係情報とをもとに、当該第2の研削加工の工具磨耗量を算出する第2の処理ステップと、
(3)上記第2の研削加工の工具の磨耗を考慮しない経路に対し、上記算出した第2の研削加工の工具磨耗量を反映して、当該工具磨耗量による加工誤差をキャンセルするように補正した当該工具の経路または径を算出し、当該補正後の経路または径を含む加工データに応じたNCデータを生成する第3の処理ステップと、を有すること、を特徴とする工具経路算出方法。
【請求項10】
請求項9記載の工具経路算出方法において、
前記研削中に工具に生じる磨耗を考慮した経路を算出する機能を実現する処理において、
前記研削加工に係わる設計データを入力する処理ステップと、
前記研削加工に係わる条件を選定する処理ステップと、
前記第1の研削加工を行う前記第1の処理ステップと、
前記第2の研削加工を行うための前記第2の処理ステップと、
前記第2の研削加工を行うための前記第3の処理ステップと、
前記第3の処理ステップで生成したNCデータを設定し、前記第2の研削加工を行うために前記加工装置へ出力する処理ステップと、
を有すること、を特徴とする工具経路算出方法。
【請求項11】
被削材に対して研削加工する工具を備える加工装置であって、
当該加工装置の動作を制御するための前記工具の経路を含むNCデータを生成する情報処理を行う処理部を備え、
前記処理部は、研削中に工具に生じる磨耗を考慮した経路を算出する機能を有し、
前記処理部は、被削材と工具との組合せについて、
(1)第1の形状及びサイズを持つ被削材に対する第1の条件による第1の研削加工を行った結果のデータに基づき、当該第1の研削加工の研削諸元値と工具磨耗量との関係情報を含むデータをデータベースに格納する処理と、
(2)第2の形状及びサイズを持つ被削材に対する第2の条件による第2の研削加工を行うためのNCデータを生成する際に、当該第2の研削加工の研削諸元値と、前記データベースの関係情報とをもとに、当該第2の研削加工の工具磨耗量を算出する処理と、
(3)上記第2の研削加工の工具の磨耗を考慮しない経路に対し、上記算出した第2の研削加工の工具磨耗量を反映して、当該工具磨耗量による加工誤差をキャンセルするように補正した当該工具の経路または径を算出し、当該補正後の経路または径を含む加工データに応じたNCデータを生成する処理と、を行うこと、を特徴とする加工装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−71187(P2013−71187A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−209891(P2011−209891)
【出願日】平成23年9月26日(2011.9.26)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】