説明

左右連動操作装置

【課題】左右のグリップ間に操作ガタを生じ難くすることができる左右連動操作装置を提供する。
【解決手段】左右のグリップは、ボールジョイント4と4本のワイヤーケーブルとを介して連結される。グリップは、一方の操作がワイヤーケーブルを介して他方に伝達されることにより、左右のグリップが連動する。グリップは、ボールジョイント4を介してグリップ支持部に接続される。ボールジョイント4の球頭部8は、一対の挟持板41,42によって挟持されて、これら挟持板41,42のガタ調整ねじ締結部46,47を複数のガタ調整ねじ45によって締付量を調整して締結させる。そして、過荷重操作されたときには、過荷重による負荷をガタ調整ねじ締結部46,47に分散させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、左右のグリップが連動して動く左右連動操作装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両等の乗り物の入力操作装置として、例えば図12に示す左右連動操作装置81が考案されている(特許文献1,2等参照)。左右連動操作装置81には、左右に一対のグリップ82,82が設けられている。グリップ82,82は、それぞれのグリップ支持部83にユニバーサルジョイント84を介して連結されている。このため、グリップ82,82は、左右方向の回動操作と、上下方向の傾倒操作とが可能である。本例の場合、グリップ82,82の左右回動操作が操舵操作に、グリップ82,82の上下傾倒操作が加減速操作に割り当てられている。
【0003】
左右のグリップ82,82は、4本のワイヤーケーブル85a〜85dによって連結されている。これら4本のワイヤーケーブル85a〜85dのうち、一対の85a,85bが操舵伝達用であり、一対の85c,85dが加減速伝達用となっている。例えば、右グリップ82aが中立位置から右操舵されると、一対のワイヤーケーブル85a,85bのうち一方が引き込まれるとともに他方が押し出されることにより、右方向の回転力が左グリップ82bに伝達される。よって、左グリップ82bが右グリップ82aに追従して右回転する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−93415号公報
【特許文献2】特開2009−93416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、左右連動操作装置81では、グリップ82a,82bの回動操作のとき、例えば図13(a)に示すように、グリップ82a,82bを互いに逆方向に操作したり、或いは図13(b)に示すように、グリップ82a,82bの一方を固定した状態で他方を操作したりすると、グリップ82a,82bに過荷重が加わってしまう。この過荷重は、部品として耐久性の高くないユニバーサルジョイント84に集中するため、ユニバーサルジョイント84が変形する可能性がある。こうなると、ユニバーサルジョイント84にガタが発生し、左右のグリップ82a,82bが連動しない問題に繋がる。
【0006】
なお、この問題は、左右のグリップ82a,82bが4本のワイヤーケーブル85a〜85dで繋がる型に限らず、種々の型のものにも同様に言えることである。
本発明の目的は、左右のグリップ間に操作ガタを生じ難くすることができる左右連動操作装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について説明する。
請求項1に記載の発明は、左右のグリップの一方が操作されたとき、他方のグリップが一方の前記グリップの動きに追従することにより、左右の前記グリップが連動する左右連動操作装置において、前記グリップの連結部を一対の挟持板によって挟み込んだ状態で本体側の回動軸に固定することにより、前記グリップの前記回動軸回りの回動操作と、軸交差方向への傾倒操作とが可能であり、前記挟持板の締結量を複数のガタ調整ねじによって調整可能なボールジョイント機構を備えたことをその要旨としている。
【0008】
同構成によれば、グリップを回動軸に連結するときには、グリップの連結部と回動軸とを一対の挟持板により挟み込み、一対の挟持板を複数のガタ調整ねじでガタの無いように組み付ける。このため、左右のグリップの連動性を確保することが可能となる。また、グリップが過荷重操作されたときには、複数のガタ調整ねじの締結部にて荷重を受けるので、過荷重による負荷が分散される。よって、左右のグリップ間に操作ガタを生じ難くすることが可能となる。さらに、例えばグリップが過荷重操作されてグリップと挟持板との間にガタが発生したとしても、ガタ調整ねじを再度締め付けることによって、グリップと挟持板とをガタなしに再度組み付けることも可能となる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の左右連動操作装置において、前記ボールジョイント機構は、該挟持板に形成された長孔に対する位置調整ねじの螺合位置を変更することにより、ガタの調整が可能な位置調整手段を備えたことをその要旨としている。
【0010】
同構成によれば、仮にグリップにガタが発生したとしても、長孔を調整代として位置調整ねじを再締め付けすることにより、ガタがないようにグリップを回動軸に再度組み付けることが可能となる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の左右連動操作装置において、前記連結部は、形状が球をなす球頭部であり、当該球頭部には、一対の前記挟持板に挟み込まれた凸部が形成され、前記ボールジョイント機構は、前記グリップが回動操作されたとき、前記凸部が前記挟持板を押すことにより、前記グリップと前記挟持板とが一体となった回動操作を許容し、前記グリップが傾倒操作されたとき、一対の前記挟持板の隙間を前記凸部が通過することにより、前記挟持板に対する前記グリップのみの傾倒操作を許容することをその要旨としている。
【0012】
同構成によれば、連結部を球頭部としたので、広い接触面積でグリップを挟持板に支持することが可能となる。よって、グリップの操作荷重の受け面を広くとることが可能となるので、部品破損が生じ難くなる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一項に記載の左右連動操作装置において、左右の前記グリップの一方が操作されたとき、その操作力がケーブル線を介して他方の前記グリップに伝達されて、当該他方のグリップが前記一方のグリップに追従する動きをとることをその要旨としている。
【0014】
同構成によれば、一方のグリップの操作力をケーブル線にて機械的に他方のグリップに伝達するので、複雑な機構を用いることなく、左右のグリップを連動させることが可能となる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項4のいずれか一項に記載の左右連動操作装置において、左右の前記グリップは、操作力の伝達時において互いに逆方向に動く2本のケーブル線を、前記回動操作と前記傾倒操作との各々に設けることにより、合計4本の前記ケーブル線にて連結されていることをその要旨としている。
【0016】
同構成によれば、一方のグリップに加えられた操作力を、2本(一対)のケーブル線の一方の引き動作と他方の押し動作とによって他方のグリップに伝達することにより、左右のグリップの一方を他方に追従させるので、応答性よく左右のグリップを連動させることが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、左右のグリップが連動する左右連動操作装置において、左右のグリップ間に操作ガタを生じ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】左右連動操作装置の斜視図。
【図2】左グリップを斜め前方から見た拡大斜視図。
【図3】左グリップを斜め後方から見た拡大斜視図。
【図4】ボールジョイント機構の概略構成を示す斜視図。
【図5】ボールジョイント機構の概略構成を示す分解斜視図。
【図6】ボールジョイント機構の概略構成を示す上面図。
【図7】グリップのかさ歯車付近の拡大斜視図。
【図8】グリップ回転操作時の左右連動操作装置の動作状態を示し、(a)は右グリップの側面図、(b)は左グリップの側面図。
【図9】グリップ傾倒操作時の左右連動操作装置の動作状態を示し、(a)は右グリップの側面図、(b)は左グリップの側面図。
【図10】傾倒操作戻し機構の構成を示し、(a)はグリップが中立位置のときの側面図、(b)はグリップを下方向に倒し操作したときの側面図。
【図11】左右連動操作装置の電気的構成を示すブロック図。
【図12】従来の左右連動操作装置の斜視図。
【図13】(a)はグリップが逆操作されたときの状態を示す背面図、(b)はグリップが片側操作されたときの状態を示す背面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を車両に具体化した左右連動操作装置の一実施形態を図1〜図11に従って説明する。
図1〜図3に示すように、左右連動操作装置1には、ワイヤーケーブル2(本例は4本の2a〜2d)の両先端にグリップ3,3が取り付けられている。本例の場合、2つのグリップ3,3の一方を右グリップ3aと称し、他方を左グリップ3bと称する。なお、左右のグリップ3a,3bの構造は部品配置が左右対称をとるものの、基本的な構造は同じであるので、ここでは左右をまとめて説明する。また、ワイヤーケーブル2がケーブル線に相当する。
【0020】
図2及び図3に示すように、グリップ3は、ボールジョイント4を介してグリップ支持部5のジョイント連結部6に回動自在に連結されている。ボールジョイント4は、球状の回動部材が保持部材に対して回動可能な玉継手の一種である。ボールジョイント4は、形状が球をなす球頭部8と、これを回動可能に支持する略筒状の挟持部7とを備えるとともに、球頭部8がグリップ3の根元に一体取り付けされ、挟持部7がジョイント連結部6に連結されている。本例のグリップ3は、挟持部7における軸心L1回り(左右方向)の回動操作と、球頭部8における挟持部7とX軸方向に直交する連結軸50の軸心L2回り(上下方向)の傾倒操作が可能となっている。なお、軸心L1回りが軸回りに相当し、これと交わる方向が軸交差方向に相当する。また、ボールジョイント4がボールジョイント機構として機能する。また、球頭部8が連結部に相当する。
【0021】
本例の場合、グリップ3を中立位置から右に回動操作すると、車両が右旋回し、グリップ3を中立位置から左に回動操作すると、車両が左旋回する。また、グリップ3を中立位置から下方に傾倒操作すると、車両が加速し、下方に倒し込んだグリップ3を上方に傾倒操作すると、車両が減速する。
【0022】
ワイヤーケーブル2a〜2dは、一方のグリップ3が中立位置から回動操作(操舵操作)されたとき、その操舵操作力を他方のグリップ3に伝達する操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2a,2bと、一方のグリップ3が中立位置から傾倒操作(加減速操作)されたとき、その加減速操作力を他方のグリップ3に伝達する加減速操作伝達用ワイヤーケーブル2c,2dとからなる。ワイヤーケーブル2a〜2dには、1本のケーブル線で操作側の引き動作及び押し動作の両方を相手側に伝達することが可能なプッシュプルケーブルが使用されている。
【0023】
グリップ支持部5の先端には、グリップ3と一体に上下方向に傾倒するアーム9が枢支されている。アーム9には、ボールジョイント4の挟持部7の軸方向に孔の開いた貫通孔10(図3参照)が形成され、この貫通孔10にボールジョイント4の球頭部8の連結軸50が挿通されている。
【0024】
図4及び図5に示すように、ボールジョイント4の挟持部7は、一対の挟持板41,42を備え、これらの挟持板41,42の間に球頭部8が挟持されている。一対の挟持板41,42は、グリップの左右方向(装置幅方向:図1のX軸方向)から球頭部8を挟持する。第1挟持板41及び第2挟持板42の対向する面の先端側には、球頭部8を収容する半球状の収容凹部43,44が形成されている。
【0025】
また、第1挟持板41及び第2挟持板42には、これらの挟持板41,42を複数のガタ調整ねじ45によって締結するガタ調整ねじ締結部46,47が上下方向に二対それぞれ延出して形成されている。なお、第1挟持板41のガタ調整ねじ締結部46には、ガタ調整ねじ45を挿通可能な貫通孔48が形成されている。また、第2挟持板42のガタ調整ねじ締結部47には、ガタ調整ねじ45と螺合する雌ねじ孔49が形成されている。
【0026】
これら挟持板41,42に回動可能に挟持される球頭部8には、グリップ3と接続された連結軸50が球頭部8と一体に成形されている。また、球頭部8には、その上下方向に突出する円柱状の一対のピン51が設けられている。なお、このピン51の直径Dは、挟持板41,42の隙間Wと略同じ大きさに設定されている。また、ピン51が凸部として機能する。
【0027】
挟持部7は、ジョイント連結部6の出力軸52に接続されることで、本体側であるグリップ支持部5に接続されている。詳しくは、第1挟持板41には、固定ねじ53を側面(X軸)方向において挿通可能な2個の貫通孔54が形成されている。出力軸52の側面には、固定ねじ53を螺合可能な雌ねじ孔55が形成されている。そして、第1挟持板41の貫通孔54に2個の固定ねじ53を挿入して出力軸52の雌ねじ孔55に固定ねじ53を螺合することで第1挟持板41が出力軸52に固定されている。
【0028】
第2挟持板42の出力軸52側には、出力軸52と嵌合可能な直方体状の嵌合凸部56が形成されているとともに、位置調整ねじ57を上側(Z軸)方向から螺合可能な雌ねじ孔58が2個形成されている。一方、出力軸52の側面には、第2挟持板42の嵌合凸部56を嵌合可能な嵌合凹部59が側面、言い換えればX軸の第2挟持板42側に開口して形成されている。また、出力軸52の上面には、位置調整ねじ57を挿通可能な長孔60が2個形成されている。これら長孔60は、側面(X軸)方向に孔が延出しており、X軸方向において第2挟持板42の位置を調整可能である。このため、球頭部8と挟持部7との間にガタが発生した際に、長孔60がガタ調整代として機能する。なお、長孔60が位置調整手段に相当する。
【0029】
そして、出力軸52に第1挟持板41が連結された状態で、嵌合凸部56を嵌合凹部59に嵌合するとともに、球頭部8を第1挟持板41の収容凹部43と第2挟持板42の収容凹部44との間に挟んで、まず4個のガタ調整ねじ45によって第1挟持板41と第2挟持板42とを締結する。次に、位置調整ねじ57を出力軸52の長孔60に挿通して嵌合凸部56の雌ねじ孔58に螺合する。このとき、長孔60によって第2挟持板42の位置を調整可能なので、球頭部8と挟持部7との間にガタがないように第2挟持板42に位置を調整して第2挟持板42と出力軸52とを固定する。
【0030】
図6に示されるように、ボールジョイント4は、挟持部7における軸心L1回り(左右方向)にグリップ3が回動操作されると、球頭部8のピン51,51が第1挟持板41及び第2挟持板42に当接して押すことで球頭部8と挟持部7とが一体に回動し、出力軸52も一体に回動する。また、ボールジョイント4は、連結軸50の軸心L2回り(上下方向)にグリップ3が傾倒操作されると、挟持部7の内面、言い換えれば収容凹部43,44に対して球頭部8の外面が摺動して、ピン51,51が第1挟持板41と第2挟持板42との隙間Wを通過して球頭部8のみが回動する。
【0031】
図7に示すように、ボールジョイント4の基端には、かさ歯車11を介して略円板状の可動片12が連結されている。可動片12は、中心軸13がグリップ3の幅方向(図2のX軸方向)を向き、中心軸13回りに回動可能である。また、かさ歯車11は、ボールジョイント4の出力軸52の端部に形成された駆動歯車14が、可動片12に形成された従動歯車15に噛合されている。かさ歯車11は、ボールジョイント4の図7の矢印A方向の回転力を、略90度向きが異なる可動片12の図7の矢印B方向の回転力に変換して可動片12に伝達する。
【0032】
図8及び図9に示すように、操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2aの一端は、右グリップ3aの可動片12の上部に連結された回動継手16に連結され、左グリップ3bの可動片12の上部に連結された回動継手16に他端が連結されている。操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2bの一端は、右グリップ3aの可動片12の下部に連結された回動継手17に一端が連結され、左グリップ3bの可動片12の下部に連結された回動継手17に他端が連結されている。
【0033】
また、加減速操作伝達用ワイヤーケーブル2cの一端は、右グリップ3aのアーム9の上部に連結された回動継手18に連結され、左グリップ3bのアーム9の下部に連結された回動継手19に他端が連結されている。加減速操作伝達用ワイヤーケーブル2dの一端は、右グリップ3aのアーム9の下部に連結された回動継手19に連結され、左グリップ3bのアーム9の上部に連結された回動継手18に他端が連結されている。つまり、加減速操作伝達用ワイヤーケーブル2c,2dは、左右のグリップ3a,3bに上下が入れ換えて接続されている。
【0034】
図8(a)に示すように、右グリップ3aが例えば右に回転操作されると、ボールジョイント4の球頭部8が同図の矢印C1方向に回転することで、球頭部8のピン51,51が第1挟持板41及び第2挟持板42に当接することで挟持部7が同図の矢印C1方向に回転する。そして、可動片12が同図の矢印D1方向に回転する。よって、右グリップ3aでは、操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2aが奥に押されるとともに、操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2bが手前に引き込まれる。このため、左グリップ3bでは、操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2aが手前に引き込まれるとともに、操舵操作伝達用ワイヤーケーブル2bが奥に押される。従って、可動片12が図8(b)の矢印D2方向に回転するため、左グリップ3bのボールジョイント4の挟持部7が右グリップ3aと同じ矢印C1方向に回転することで第1挟持板41及び第2挟持板42が球頭部8のピン51,51に当接して球頭部8が右グリップ3aと同じ矢印C1方向に回転し、左グリップ3bが右グリップ3aに追従して右回転する。
【0035】
また、図9(a)に示すように、右グリップ3aが例えば下方向に傾倒操作されると、右グリップ3a及びアーム9が一体となって同図の矢印C2方向に傾倒する。このとき、挟持部7の内面に対して球頭部8の外面が摺動して球頭部8のみが回動する。よって、右グリップ3aでは、上の加減速操作伝達用ワイヤーケーブル2cが手前に引き込まれ、下の加減速操作伝達用ワイヤーケーブル2dが奥に押し込まれる。従って、図9(b)に示すように、左グリップ3bでは、加減速操作伝達用ワイヤーケーブル2dによって上部が押されるとともに、加減速操作伝達用ワイヤーケーブル2cによって下部が引き込まれる。このため、左グリップ3bが右グリップ3aに追従して下方に傾倒する。このとき、挟持部7の内面に対して球頭部8の外面が摺動して球頭部8のみが回動する。
【0036】
図2及び図3に示すように、グリップ3とアーム9との間には、グリップ3の回転量を規制するストッパ部20が形成されている。グリップ3が中立位置から目一杯回動操作されると、ストッパ部20がアーム9の規制片21に当接して、それ以上の回動操作が不可となる。なお、規制片21は、右回動操作時及び左回動操作時のそれぞれに対応して一対ある。
【0037】
図3及び図8(b)に示すように、グリップ3とアーム9との間には、左右方向に回動操作されたグリップ3を元の中立位置に復帰させる戻し付勢部材22が設けられている。戻し付勢部材22は、例えばトーションばね等が使用され、両端ともにアーム9とストッパ部20に引っ掛かった状態にある。
【0038】
図10(a),(b)に示すように、グリップ3には、上下方向に傾倒操作されたグリップ3を元の中立位置に復帰させる傾倒操作戻し機構23が設けられている。この場合、グリップ支持部5とアーム9との間には、一対の戻しアーム部材24,25が枢支されている。第1戻しアーム部材24は、中立位置から下方向に傾倒操作されたグリップ3を中立位置に戻すものであり、グリップ幅方向に延びる軸24a回りに回動可能である。第1戻しアーム部材24の下端には、第1戻しアーム部材24に復帰力を付与する戻し付勢部材26が取り付けられている。戻し付勢部材26は、例えばコイルばねが使用される。
【0039】
また、第2戻しアーム部材25は、中立位置から上方向に傾倒操作されたグリップ3を中立位置に戻すものであり、グリップ幅方向に延びる軸25a回りに回動可能である。第2戻しアーム部材25の上端には、第2戻しアーム部材25に復帰力を付与する戻し付勢部材27が取り付けられている。戻し付勢部材27は、例えばコイルばねが使用される。
【0040】
一方、アーム9には、グリップ3の加減速操作時に戻しアーム部材24,25を押し込む係止ピン29が突設されている。係止ピン29は、グリップ3が中立位置のとき、一対の戻しアーム部材24,25に挟まれるように配置される。
【0041】
図10(a)に示す状態のとき、例えばグリップ3が下方に傾倒操作されると、係止ピン29が第1戻しアーム部材24を上方に押し上げることにより、第1戻しアーム部材24が同図の矢印E1方向に回動する。そして、図10(b)に示す下方向の傾倒操作後、グリップ3から手が離されると、第1戻しアーム部材24が戻し付勢部材26の付勢力によって同図の矢印E2方向に回動することにより、第1戻しアーム部材24が係止ピン29を下に押し、グリップ3が元の中立位置に復帰する。
【0042】
図7に示すように、ボールジョイント4の出力軸52には、ジョイント連結部6の内部において操舵側ポテンショメータ30が接続されている。操舵側ポテンショメータ30は、ボールジョイント4の出力軸52の回転量を検出することにより、グリップ3の操舵量を検出する。また、アーム9には、複数のギヤからなるギヤ機構31を介して加減速側ポテンショメータ32が接続されている。加減速側ポテンショメータ32は、グリップ加減速時におけるギヤ機構31のギヤ回転量を検出することにより、グリップ3の加減速操作量を検出する。
【0043】
図11に示すように、左右連動操作装置1には、左右連動操作装置1を統括制御するコントローラ33が設けられている。コントローラ33には、ポテンショメータ30,32が接続されている。コントローラ33は、ポテンショメータ30,32から出力される検出信号を基に左右のグリップ3a,3bの操舵量及び加減速操作量を演算し、これら情報を必要とする他のECUに操舵量及び加減速操作量の情報を出力する。また、コントローラ33は、ポテンショメータ30,32から入力する検出信号を基に、左右のグリップ3a,3bが正しく連動しているか否かを常時監視する。
【0044】
さて、本実施形態では、グリップ3をグリップ支持部5に連結する部材としてユニバーサルジョイントに代えてボールジョイント4を採用し、グリップ3に連結される球頭部8を一対の挟持板41,42で挟持して、4個のガタ調整ねじ45で締結した。よって、ガタ調整ねじ45の締め付けによって、グリップ3をガタ無くグリップ支持部5に取り付けることが可能となる。このため、左右のグリップ3a,3bの連動性を確保することができる。
【0045】
また、過荷重操作されたときには、複数のガタ調整ねじ45のガタ調整ねじ締結部46,47にて荷重を受けるので、過荷重による負荷がガタ調整ねじ締結部46,47で分散される。よって、左右のグリップ3に操作ガタを生じ難くすることができる。さらに、球頭部8と挟持部7との間にガタが発生した際には、ガタ調整ねじ45を締め直すことでガタを緩和させることができる。また、本例のボールジョイント4はユニバーサルジョイントに比べ取り付け取り外しが容易なため、メンテナンス性にも優れる。
【0046】
以上、説明した実施形態によれば、以下の作用効果を奏することができる。
(1)ボールジョイント4を採用して、グリップ3に連結される球頭部8とグリップ支持部5に接続される出力軸52とを一対の挟持板41,42によって接続したので、ガタ調整ねじ45をガタの無いように締め付けることにより、グリップ3をガタ無くグリップ支持部5に取り付けることができる。
【0047】
(2)過荷重操作されたときには、複数のガタ調整ねじ45のガタ調整ねじ締結部46,47にて荷重を受けるので、過荷重による負荷が分散される。よって、左右のグリップ3に操作ガタを生じ難くすることができる。
【0048】
(3)ガタが発生した際、長孔60を調整代として第1挟持板41及び第2挟持板42をグリップ支持部5にガタがないように調整して締め付けることが可能であるので、ガタをより確実に解消することができる。
【0049】
(4)球頭部8にピン51を設けてグリップ3を挟持板41,42に連結したので、グリップ3が回動操作されたときには、ピン51と挟持板41,42とが一体に回動することで、操作ガタを生じ難くしながら、ボールジョイント4を介してグリップ3の回動操作をグリップ支持部5に伝達することができる。
【0050】
(5)左右のグリップ3a,3bの一方の操作力をワイヤーケーブル2にて機械的に他方に伝達するので、複雑な機構を用いることなく、左右のグリップ3a,3bを連動させることができる。
【0051】
(6)グリップ3a,3bの一方の回動操作力(操舵操作力)又は傾倒操作力(加減速操作力)を、2本(一対)の組のワイヤーケーブル2a,2b(2c,2d)の一方の引き動作と他方の押し動作とによって他方に伝達することにより、左右のグリップ3a,3bの一方を他方に追従させる。よって、例えば、単に1本のワイヤーケーブルで操作力を伝達するよりも、高い追従性にて相手が連れ動きするので、応答性よく左右のグリップ3a,3bを連動させることができる。
【0052】
(7)グリップ3の回動操作を制限するストッパ部20をグリップ3の根元に設けたので、グリップ3の回転を適度な位置でストッパ部20により止めることができる。
なお、上記実施形態は、これを適宜変更した以下の形態にて実施することができる。
【0053】
・上記実施形態において、グリップ3は、中立位置から下方向(上方向)にのみ傾倒操作可能としてもよい。
・上記実施形態において、グリップ3の操作態様は、左右方向の回動操作や、上下方向の傾倒操作に限定されず、例えば左右方向の傾倒操作など、他の態様を採用することも可能である。
【0054】
・上記実施形態において、戻し付勢部材22,22は、トーションばねに限定されず、他のばねが使用可能である。
・上記実施形態において、ケーブル線は、プッシュプル式のワイヤーケーブル2に限定されず、他の素材の線が使用可能である。
【0055】
・上記実施形態において、左右連動操作装置1は、ワイヤーケーブル2が合計4本ある構造のものに限定されず、例えばグリップ3の回動操作及び傾倒操作のそれぞれにワイヤーケーブル2が1本のみ存在する計2本のものでもよい。
【0056】
・上記実施形態において、左右連動操作装置1は、グリップ3が回動操作及び傾倒操作の両方が可能なものに限らず、例えば回動操作又は傾倒操作の一方のみが可能なものでもよい。
【0057】
・上記実施形態では、凸部として円柱状のピン51を採用したが、球頭部8の軸心L1の外周面に沿って延出する突条等の他の形状を採用してもよい。
・上記実施形態では、第2挟持板42に長孔60を形成して、第1挟持板41に対する第2挟持板42の位置を調整するようにしたが、ガタ調整ねじ締結部46,47の締め付け量によってガタを調整可能であれば、長孔60を通常の孔としてもよい。
【0058】
・上記実施形態では、連結部を球頭部8としたが、球頭部8に限らず、例えば連結軸50を中心として単に左右に延びる円柱状の軸でもよい。
・上記実施形態では、挟持部7(挟持板41,42)を筒状の形状としたが、筒状に限らず、他の形状を用いてもよい。
【0059】
・上記実施形態において、各ねじの配置位置や挿込方向は、実施形態に記載した例に限らず、他のものに変更可能である。
・上記実施形態において、左右連動操作装置1は、左右のグリップ3a,3bがワイヤーケーブル2にて機械的に連結されたものに限定されない。例えば、左右のグリップ3a,3bがワイヤーケーブル2では連結されておらず、それぞれがモータを備え、このモータの駆動力にて左右のグリップ3a,3bが連動する動きをとるものでもよい。
【0060】
・上記実施形態において、左右連動操作装置1は、車両に適用されることに限定されず、他の乗り物に使用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…左右連動操作装置、2(2a〜2d)…ケーブル線としてのワイヤーケーブル、3(3a,3b)…グリップ、4…ボールジョイント、5…グリップ支持部、6…ジョイント連結部、7…挟持部、8…連結部としての球頭部、9…アーム、10…貫通孔、41…第1挟持板、42…第2挟持板、43,44…収容凹部、45…ガタ調整ねじ、46,47…締結部としてのガタ調整ねじ締結部、48…貫通孔、49…雌ねじ孔、50…連結軸、51…凸部としてのピン、52…出力軸、53…固定ねじ、54…貫通孔、55…雌ねじ孔、56…嵌合凸部、57…位置調整ねじ、58…雌ねじ孔、59…嵌合凹部、60…位置調整手段としての長孔、D…直径、L1,L2…軸心、W…隙間。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右のグリップの一方が操作されたとき、他方のグリップが一方の前記グリップの動きに追従することにより、左右の前記グリップが連動する左右連動操作装置において、
前記グリップの連結部を一対の挟持板によって挟み込んだ状態で本体側の回動軸に固定することにより、前記グリップの前記回動軸回りの回動操作と、軸交差方向への傾倒操作とが可能であり、前記挟持板の締結量を複数のガタ調整ねじによって調整可能なボールジョイント機構を備えた
ことを特徴とする左右連動操作装置。
【請求項2】
請求項1に記載の左右連動操作装置において、
前記ボールジョイント機構は、該挟持板に形成された長孔に対する位置調整ねじの螺合位置を変更することにより、ガタの調整が可能な位置調整手段を備えた
ことを特徴とする左右連動操作装置。
【請求項3】
前記連結部は、形状が球をなす球頭部であり、当該球頭部には、一対の前記挟持板に挟み込まれた凸部が形成され、
前記ボールジョイント機構は、前記グリップが回動操作されたとき、前記凸部が前記挟持板を押すことにより、前記グリップと前記挟持板とが一体となった回動操作を許容し、前記グリップが傾倒操作されたとき、一対の前記挟持板の隙間を前記凸部が通過することにより、前記挟持板に対する前記グリップのみの傾倒操作を許容する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の左右連動操作装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の左右連動操作装置において、
左右の前記グリップの一方が操作されたとき、その操作力がケーブル線を介して他方の前記グリップに伝達されて、当該他方のグリップが前記一方のグリップに追従する動きをとる
ことを特徴とする左右連動操作装置。
【請求項5】
請求項4に記載の左右連動操作装置において、
左右の前記グリップは、操作力の伝達時において互いに逆方向に動く2本のケーブル線を、前記回動操作と前記傾倒操作との各々に設けることにより、合計4本の前記ケーブル線にて連結されている
ことを特徴とする左右連動操作装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−99036(P2012−99036A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248124(P2010−248124)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】