説明

差動受信回路

【課題】差動対を備える差動受信回路であって、出力するデータの立ち上がりと立ち下がりの変化タイミングの遅延差を低減した差動受信回路の実現。
【解決手段】差動対を備え、入力される相補入力信号inp,innを増幅して相補出力信号A,Bを出力する差動アンプ回路1と、直列に接続された2個以上のインバータInvA1,InvA2,InvA3を備え、初段に差動アンプ回路の出力する相補出力信号の一方Aが入力される第1のインバータラインと、差動アンプ回路の出力する相補出力信号の一方Bが入力される少なくとも1個のインバータInvB1,InvB2を備え、2個以上のインバータを備える場合には直列に接続され、初段に相補出力信号の一方が入力される第2のインバータラインと、を備え、第1のインバータラインおよび第2のインバータラインの初段からの段数が1段異なる1組の2個のインバータの出力を接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動信号を受信する差動受信回路に関する。
【背景技術】
【0002】
各種の機器間でデータの伝送が行われる。例えば、デジタルカメラは、撮像信号をデジタル変換した後画像処理して画像データを生成する。この画像データは、通信インターフェースなどを介してパーソナルコンピュータなどに伝送される。
【0003】
また、複数の要素を備える機器では、要素間でのデータ伝送が行われる。例えば、携帯電話は、本体部分に対して開閉可能な開閉要素が設けられ、開閉要素にディスプレイおよびデジタルカメラなどが設けられる。開閉要素はケーブルで本体部分に接続され、ディスプレイで表示する画像データが本体部分から開閉要素に伝送され、デジタルカメラが生成した画像データが開閉部分から本体部分に伝送される。
【0004】
このようなデータ伝送に使用されるインターフェースでは、送信回路から送信データを差動信号として送信し、受信回路で受信した差動信号から受信データを生成する。また、クロック信号も差動信号として送信し、受信した差動信号からクロック信号を再生生成する。
【0005】
図1の(A)は、一般的な受信回路の構成を示す回路図であり、図1の(B)は差動アンプ回路1の回路例を示す図である。図1の(A)に示すように、受信回路は、受信相補信号inpおよびinnが入力される差動アンプ回路1と、直列接続した複数個(ここでは3個)のインバータInv1〜Inv3と、を備える。差動アンプ回路1は、差動部Ampと、定電流回路CSと、を備える。定電流回路CSは、差動部Ampに供給されるDC電流を一定になるように制御する。インバータInv1〜Inv3は、初段インバータInv1に差動アンプ回路1の出力Aが入力され、受信信号である出力OUTが最終段のインバータInv3から出力される。
【0006】
相補信号inpおよびinnは振幅の小さな信号である。差動アンプ回路1は、受信した相補信号inpおよびinnを増幅して出力Aを生成し出力する。インバータInv1〜Inv3は、差動アンプ回路1の出力Aをデジタル信号として安定した出力OUTを生成し、受信信号として出力する。
【0007】
図1の(B)に示すように、差動アンプ回路1は、差動部Ampを備えるCMOS型のアンプ(増幅回路)であり、対応する2個のN型MOSFETのゲートに、相補信号inpおよびinnが入力される。定電流回路CSは、ゲートにバイアス信号biasが印加されるN型MOSFETを備える。図1の(B)の差動アンプ回路1については広く知られているので、詳しい説明は省略する。
【0008】
図1の(B)の差動アンプ回路1では、差動部Ampに流れるDC電流は、信号biasにより制御される。MOSFETは、一般的にオフからオンへの変化とオンからオフへの変化速度が異なる。差動アンプ回路1の製造プロセスのばらつき、動作時の温度、印加電源電圧などの条件が異なることにより、差動部Ampに流れるDC電流が大幅に異なる。これらの条件が異なることにより、差動アンプ回路1の出力Aが立ち上がる時の変化時間と立ち下がる時の変化時間も大きく変動し、立ち上がりと立ち下がりの変化時間の差も変動する。それに応じて、受信回路の出力OUTの立ち上がりおよび立ち下がりのタイミングの遅延も異なる。言い換えれば、受信信号の立ち上がりと立ち下がりでスキューを生じる。
【0009】
図2は、差動アンプ回路1において、受信するデータが立ち上がる場合と立ち下がる場合で出力Aの変化時間に差がある場合に、受信回路の出力OUTでのスキューの発生を説明する図である。
【0010】
inpおよびinnは、差動アンプ回路1への相補入力信号である。相補入力信号inpおよびinnは、極性が逆で、デューティ50%で変化する信号であるとする。実際には、変化エッジがなまった信号であるが、ここでは説明を簡単にするために、変化エッジが急峻であるとして示している。
【0011】
差動アンプ回路1が、相補入力信号の立ち上がりおよび立ち下がりに対して同一の変化特性を有する場合には、差動アンプ回路1の出力Aは図示のように変化し、デューティ50%で変化する信号である。また、出力Aの変化の中心レベルが、Inv1の閾値レベルに一致していれば、受信回路の出力OUTもデューティ50%で変化する信号である。なお、ここでは説明を簡単にするために、インバータの出力は、立ち上がりおよび立ち下がりに対して同一の変化特性を有するとする。
【0012】
しかし、実際には、差動アンプ回路1の出力Aの変化スピードは、立ち上がりと立ち下がりで異なる。例えば、図2に示すように、立ち上がりの変化の方が高速で、立ち下がりの変化の方が遅いとすると、相補入力信号inpおよびinnがデューティ50%で変化する信号であっても、差動アンプ回路1の出力A’は図示のように変化する。そして、出力A’の変化の中心レベルが、Inv1の閾値レベルに一致している場合でも、受信回路の出力OUTはデューティ50%で変化する信号にならない。
【0013】
データ伝送インターフェースにおいては、データ伝送の高速化が求められている。そのため、通信クロック周波数を増加させることに加えて、例えば1クロック周期に2回データを送信するダブルデータレートと呼ばれる方法が使用される。このダブルデータレート法は、クロックの半周期ごとにデータを変化させるが、上記のように、データにより変化タイミングが異なると、一方のデータが有効となる期間が短くなる場合が発生し、データを取り込むタイミングが厳しくなる。この問題は、特にクロック周波数が増加した場合に顕著になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特許第3206737号公報
【特許文献2】特開平10−215153号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
記載の実施形態は、差動対を備える差動受信回路であって、出力するデータの立ち上がりと立ち下がりの変化タイミングの差を低減した差動受信回路を開示する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
実施形態の第1の態様の差動受信回路は、差動対を備え、入力される相補入力信号を増幅して相補出力信号を出力する差動アンプ回路と、直列に接続された2個以上のインバータを備え、初段に差動アンプ回路の出力する相補出力信号の一方が入力される第1のインバータラインと、差動アンプ回路の出力する相補出力信号の一方が入力される少なくとも1個のインバータを備え、2個以上のインバータを備える場合には直列に接続され、初段に相補出力信号の一方が入力される第2のインバータラインと、を備え、第1のインバータラインおよび第2のインバータラインの初段からの段数が1段異なる1組の2個のインバータの出力を接続する。
【発明の効果】
【0017】
実施形態の第1の態様によれば、データの立ち上がりと立ち下がりの変化タイミングの差を低減した差動受信回路が、簡単な回路構成で実現される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1は、一般的な差動受信回路の構成を示す回路図である。
【図2】図2は、図1の差動受信回路での出力の立ち上がりと立ち下がりの遅延時間差(スキュー)の発生を説明する図である。
【図3】図3は、第1実施形態の差動受信回路の構成を示す回路図である。
【図4】図4は、第1実施形態の差動受信回路における出力の立ち上がりと立ち下がりの遅延時間差(スキュー)の低減を説明する図である。
【図5】図5は、実施形態の差動受信回路の変形例の構成を示す回路図である。
【図6】図6は、第2実施形態の差動受信回路の構成を示す回路図である。
【図7】図7は、第3実施形態の差動受信回路の構成を示す回路図である。
【図8】図8は、第4実施形態の差動受信回路の構成を示す回路図である。
【図9】図9は、実施形態の差動受信回路を利用したデータ伝送インターフェースを備えるシステムの構成を示す図である。
【図10】図10は、図9の受信部の詳細な構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図3は、第1実施形態の差動受信回路の構成を示す回路図である。
【0020】
第1実施形態の受信回路は、受信相補信号inpおよびinnが入力される差動アンプ回路1と、直列接続した複数個(ここでは3個)のインバータInvA1〜InvA3と、直列接続した複数個(ここでは2個)のインバータInvB1、InvB2と、を備える。差動アンプ回路1は、差動部Ampと、定電流回路CSと、を備え、反転出力Aおよび非反転出力Bを出力する。インバータInvA1〜InvA3は、初段インバータInv1に差動アンプ回路1の反転出力Aが入力され、受信信号である出力OUTが最終段のインバータInv3から出力される。ここでは、インバータInvA1〜InvA3からなる列を第1インバータラインと称する。インバータInvB1、InvB2は、初段インバータInvB1に差動アンプ回路1の非反転出力Bが入力される。ここでは、インバータInvB1、InvB2からなる列を第2インバータラインと称する。インバータInvA1の出力とインバータInvB2の出力は接続されている。
【0021】
図4は、第1実施形態の差動受信回路において、受信するデータが立ち上がる場合と立ち下がる場合で差動アンプ回路1の出力Aの変化時間に差がある場合に、受信回路の出力OUTの生成を説明する図である。
【0022】
inpおよびinnは、差動アンプ回路1への相補入力信号である。相補入力信号inpおよびinnは、極性が逆で、デューティ50%で変化する信号であるとする。実際には、変化エッジがなまった信号であるが、ここでは説明を簡単にするために、変化エッジが急峻であるとして示している。
【0023】
相補信号inpおよびinnは振幅の小さな信号であり、差動アンプ回路1は、受信した相補信号inpおよびinnを増幅し、反転出力Aおよび非反転出力Bを出力する。差動アンプ回路1の出力Aの変化スピードは、立ち上がりの変化の方が高速で、立ち下がりの変化の方が遅いため、反転出力Aおよび非反転出力Bは、立ち上がりは急峻で、立ち下がりは緩やかに変化する。なお、ここでは説明を簡単にするために、インバータの出力は、立ち上がりおよび立ち下がりに対して同一の変化特性を有するとする。
【0024】
ここで、反転出力Aおよび非反転出力Bの変化の中心レベルが、InvA1およびInvB1の閾値レベルに一致しているとする。InvA1およびInvB1の出力A1およびB1の変化の中心レベルが、InvA2およびInvB2の閾値レベルに一致しており、さらにInvA2の出力A2の変化の中心レベルが、InvA3の閾値レベルに一致しているとする。
【0025】
これに応じて、InvB1の出力B1は、図示のように変化する。さらに、InvB2の出力がInvA1の出力に接続されていない場合には、InvB2の出力B2は図示のように変化する。
【0026】
インバータInvA1の出力A1は、InvA1の出力がInvB2の出力に接続されていない場合には、p1およびp2で示すように変化する。InvA1の出力はInvB2の出力に接続されており、InvB2の出力B2はq1およびq2で示すように変化するので、InvA1の出力はp1とq1およびp2とq2を合わせた実線のように変化する。したがって、実際には、InvB2の出力B2も、実線で示したInvA1の出力A1のように変化する。
【0027】
インバータInvA1の出力A1が実線のように変化するので、インバータInvA2の出力A2は、図示のように変化し、さらにInvA3の出力OUTも図示のように変化する。図示のように、インバータInvA2の出力A2およびInvA3の出力OUTは、デューティ50%で変化する。すなわち、立ち上がりと立ち下がりの変化の遅延時間差は等しい。
【0028】
上記のように、第1実施形態では、差動アンプ回路1の相補出力信号AおよびBを、それぞれ第1および第2インバータラインでデューティばらつきの少ない安定して変化する信号に変換する。第1のインバータラインへの入力が反転出力Aで、第2のインバータラインへの入力が非反転出力Bであるため、第1および第2のインバータラインにおいて初段からの段数が1段異なる2個のインバータの出力は、インバータ1段分の遅延分を除けば同相の信号である。インバータの遅延時間は小さいので、初段からの段数が1段異なる2個のインバータの出力を接続しても貫通電流が流れることは少なく、2個のインバータの出力が平均化される。
【0029】
相補出力信号AおよびBは、立ち下がりが立ち上がりより緩やかに変化するとすると、初段のInvA1およびInvB1の出力A1およびB1が、立ち上がる時の遅延は、立ち下がる時の遅延より大きい。例えば、出力A1およびB1の立ち上がりと立ち下がりの遅延時間をそれぞれTrおよびTfとし、インバータの遅延時間をTinvとする。出力A1が立ち上がる時の遅延時間はTrであり、出力B2が立ち上がる時の遅延時間はTf+Tinvであり、平均化された立ち上がり遅延時間は(Tr+Tf+Tinv)/2になる。同様に、出力A1が立ち下がる時の遅延時間はTfであり、出力B2が立ち上がる時の遅延時間はTr+Tinvであり、平均化された立ち上がり遅延時間は(Tr+Tf+Tinv)/2になり、立ち上がりと同じになる。
【0030】
したがって、InvA2の入力は、立ち上がりと立ち下がりが同じ遅延時間で変化する信号となる。これにより、InvA2の出力A2は、立ち上がりと立ち下がりが同じ遅延時間で変化する。
【0031】
図3に示すように、第1実施形態の差動受信回路は、差動アンプ回路1の非反転出力Bを利用し、図1の回路に2個のインバータを加えただけの簡単な構成で、上記のような立ち上がりと立ち下がりが同じ遅延時間で変化する出力が得られる。
【0032】
第1実施形態では、InvB2の出力をInvA1の出力に接続したが、差動アンプ回路1の出力の立ち上がりと立下りの遅延時間差を平均化すればよいので、第1および第2のインバータラインのどのインバータの出力を接続するかについては各種の変形例がある。図5は、この変形例を示す図である。
【0033】
図5の(A)は、第2のインバータラインが1個のインバータInvB1のみを備え、InvB1の出力を第1のインバータラインのInvA2の出力に接続した例である。これでも図3の構成と同様の効果が得られる。
【0034】
なお、図3の第1実施形態の回路および図5の(A)の変形例では、第1および第2のインバータラインのインバータの個数が異なるが、インバータの負荷を揃えるために、同じ個数のインバータで第1および第2インバータラインを形成してもよい。
【0035】
図5の(B)は、第2のインバータラインが3個のインバータInvB1〜InvB3を備え、InvA3の出力を非反転出力OUTpとして出力し、InvB3の出力を反転出力OUTnとして出力する例である。受信信号第2のインバータラインのInvB1の出力を第1のインバータラインのInvA2の出力に接続し、InvB2の出力をInvA1の出力に接続する。この例では、遅延時間差の平均化が2重に行われる。出力OUTpおよびOUTnは相補信号であり、この例は、受信信号を相補信号として利用する場合に便利である。
【0036】
図5の(C)は、第1のインバータラインの初段のインバータInvA1に差動アンプ回路1の非反転出力を入力し、第2のインバータラインの初段のインバータInvB1に差動アンプ回路1の反転出力を入力する例である。第2のインバータラインのInvB2の出力が、第1のインバータラインのInvA1の出力に接続される。第1のインバータラインの初段の入力が差動アンプ回路1の非反転出力であるから、2段目のInvA2から正の出力OUTが出力される。
【0037】
以上、第1および第2のインバータライン間の接続に関する変形例を説明したが、他にも各種の変形例があり得る。
【0038】
図6の(A)は、第2実施形態の差動受信回路の構成を示す図である。図6の(A)は、第2実施形態の差動受信回路の差動アンプ回路1の構成を詳細に示している。図6の(B)は、図6の(A)で使用される1個のインバータの詳細な構成を示す。
【0039】
図6の(A)に示すように、第2実施形態の差動アンプ回路1は、2個のCMOS型アンプ1Aおよび1Bを備える。CMOS型アンプ1Aおよび1Bは、図1の(B)に示したCMOS型のアンプと同じ構成を有し、同一構造で作られている。したがって、アンプ1Aおよび1Bの特性は同一である。
【0040】
受信信号inpは、アンプ1Aの反転入力in−およびアンプ1Bの非反転入力in+に入力され、受信信号innは、アンプ1Aの非反転入力in+およびアンプ1Bの反転入力in−に入力される。アンプ1Aおよび1Bの出力out1およびout2はアンプ1Aおよび1Bの同じ出力部から出力される。したがって、出力out1とout2は、逆相の相補信号である。
【0041】
アンプ1Aおよび1Bは、差動対を形成する左側の信号経路と右側の信号経路のうち、右側の出力部の電圧は、大きな振幅で変化するが、左側の出力部に対応する位置の電圧変化の振幅は小さいので、この位置から逆相の出力信号を取り出すことはできない。そこで、第2実施形態の差動アンプ回路1は、2個のアンプ1Aおよび1Bを備え、入力部へ入力する受信信号を入れ替えて、上記のように相補出力out1およびout2を得ている。
【0042】
インバータInvA1、InvA2およびInvA3は、直列に接続されて第1インバータラインをなす。インバータInvB1、InvB2およびInvB3は、直列に接続されて第2インバータラインをなす。アンプ1Aの出力out1は、第1インバータラインの初段のInvA1に入力される。アンプ1Bの出力out2は、第2インバータラインの初段のInvB1に入力される。InvA1の出力とInvB2の出力は接続され、InvA2の出力とInvB1の出力は接続される。InvA3の出力は、差動受信回路の出力OUTである。InvA1〜InvA3およびInvB1〜InvB3は、それぞれ図6の(B)に示すようなCMOS型インバータである。
【0043】
以上のように、第2実施形態の差動受信回路の第1および第2インバータライン11、12は、図5の(B)に示した第1および第2インバータラインと類似の構成を有するが、InvB3の出力B3が差動受信回路の出力として利用されないことが異なる。したがって、第2実施形態の差動受信回路の動作および効果は、第1実施形態のものと同じであり、これ以上の説明は省略する。
【0044】
なお、第2実施形態の差動受信回路の第1および第2インバータライン11、12を、図3の第1および第2インバータラインや、図5の(A)および(C)に記載した第1および第2インバータラインにすることも可能である。
【0045】
図7は、第3実施形態の差動受信回路の構成を示す図である。第3実施形態の差動受信回路は、第2インバータライン12の最終段のInvB3を、P型およびN型トランジスタを用いたMOSFETで置き換えたことが、第2実施形態と異なり、ほかの部分は同じである。MOSFETを接続することにより、電源のピーク電流を低減することができる。
【0046】
図8は、第4実施形態の差動受信回路の構成を示す図である。第4実施形態の差動受信回路は、差動アンプ回路1を、並列抵抗R1およびR2を備える差動アンプ回路2で置き換えたことが、第2実施形態と異なり、ほかの部分は同じである。第4実施形態で使用する並列抵抗R1およびR2を備える差動アンプ回路2は、広く知られているので詳しい説明は省略する。
【0047】
上記のように、第2実施形態で使用したCMOS型アンプは、右側の出力部の電圧は、大きな振幅で変化するが、左側の出力部に対応する位置の電圧変化の振幅は小さいので、この位置から逆相の出力信号を取り出すことはできない。そこで、第2実施形態の差動アンプ回路1は、2個のアンプ1Aおよび1Bを備え、入力部へ入力する受信信号を入れ替えて、上記のように相補出力out1およびout2を得ている。これに対して、第4実施形態の差動アンプ回路2は、大きな振幅の出力を得ることはできないが、差動対の両側の信号経路から逆相の相補出力信号を得ることができるので、1個の差動アンプを設けるだけである。
【0048】
図9は、第1から第4実施形態で説明した差動受信回路を利用したデータ伝送インターフェースを備えるシステムの構成を示す図である。
【0049】
図9に示すように、このシステムは、送信側装置(機器または要素)20と、受信側装置(機器または要素)30と、を備え、送信側装置20から受信側装置30へ、nビットデータおよびクロックを、差動信号として、ダブルデータレートで送信する。送信側装置20は、信号生成処理部21と、クロック生成部22と、n個のデータ(D0〜Dn−1)送信部23−0、…、23−n−1と、クロック送信部24と、を有する。送信側装置20がデジタルカメラであれば、信号生成処理部21は、撮像素子で生成したアナログ信号をデジタル信号にA/D変換した後画像処理してデジタル画像信号を生成する一連の処理を行う。
【0050】
受信側装置30は、n個のデータ(D0〜Dn−1)受信部31−0、…、31−n−1と、クロック受信部32と、n個のデータ(D0〜Dn−1)生成部33−0、…、33−n−1と、クロック処理部34と、信号処理部35と、を備える。データ受信部31−0、…、31−n−1は、それぞれダブルデータレートで送信されたデータ信号を受信して受信データ信号を出力する。クロック受信部32は、送信されたクロック信号を受信して受信クロック信号を出力する。クロック処理部34は、受信クロック信号を処理して、データ生成部33−0、…、33−n−1に供給するデータ信号の取り込み用クロック信号や内部クロック信号を発生する。データ生成部33−0、…、33−n−1は、それぞれ受信部31−0、…、31−n−1の出力信号から取り込み用クロック信号に基づいて受信データを生成する。信号処理部35は、データ生成部33−0、…、33−n−1の生成した受信データを処理する。
【0051】
第1から第4実施形態の差動受信回路は、データ受信部31−0、…、31−n−1およびクロック受信部32に使用される。
【0052】
図10は、データ受信部31−0、…、31−n−1の詳細な構成を示す回路図である。クロック受信部32も同様の構成で実現可能である。
【0053】
図10に示すように、データ受信部は、1段目のアンプ41と、2段目のアンプ42と、3段目のアンプ43と、を備える。1段目のアンプ41および2段目のアンプ42は、図8に示した並列抵抗R1およびR2を備える第4実施形態の差動アンプ回路2と同じ構成を備える。3段目のアンプ43は、図6に示した第2実施形態の差動アンプ回路1と同じ構成を備える。
【0054】
送信側装置20から送信される差動データ信号Dp、Dnは振幅が小さい。1段目のアンプ41が小振幅の差動データ信号Dp、Dnを増幅し、2段目のアンプ42に出力する。2段目のアンプ42は、1段目のアンプ41からの差動データ信号Dp、Dnをさらに増幅し、3段目のアンプ43に出力する。3段目のアンプ43は、CMOS型差動アンプであり、前述のように大きな振幅の相補出力信号out1、out2を生成する。相補出力信号out1、out2は、2個のインバータラインに出力され、変化タイミングが平均化されて、立ち上がりと立ち上がりの変化の遅延差を低減した受信データ信号OUTが生成される。
【0055】
ここに記載したすべての例や条件は、発明および技術に適用する発明の概念の理解を助ける目的で記載されたものであり、特に記載された例や条件は発明の範囲を制限することを意図するものではなく、明細書のそのような例の構成は発明の利点および欠点を示すものではない。発明の実施形態を詳細に記載したが、各種の変更、置き換え、変形が発明の精神および範囲を逸脱することなく行えることが理解されるべきである。
【符号の説明】
【0056】
1 差動アンプ回路
1A、1B CMOS型アンプ
11 第1インバータライン
12 第2インバータライン
Amp 差動部
CS 定電流回路
InvA1,InvA2,InvA3 第1インバータラインを形成するインバータ
InvB1,InvB2,InvB3 第2インバータラインを形成するインバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動対を備え、入力される相補入力信号を増幅して相補出力信号を出力する差動アンプ回路と、
直列に接続された2個以上のインバータを備え、初段に前記差動アンプ回路の出力する前記相補出力信号の一方が入力される第1のインバータラインと、
前記差動アンプ回路の出力する前記相補出力信号の一方が入力される少なくとも1個のインバータを備え、2個以上のインバータを備える場合には直列に接続され、初段に前記相補出力信号の一方が入力される第2のインバータラインと、を備え、
前記第1のインバータラインおよび前記第2のインバータラインの初段からの段数が1段異なる1組の2個のインバータの出力を接続したことを特徴とする差動受信回路。
【請求項2】
前記第1のインバータラインおよび前記第2のインバータラインの初段からの段数が1段異なる別の組の2個のインバータの出力も接続され、2組の2個のインバータの出力の接続線がクロスカップル配線される請求項1に記載の差動受信回路。
【請求項3】
前記第1のインバータラインの最終段から、受信信号が出力され、
前記第2のインバータラインの段数は、前記第1のインバータラインの段数より1段少なく、前記第2のインバータラインは、最終段に接続されたMOSFET容量を備える請求項1または2に記載の差動受信回路。
【請求項4】
前記第1のインバータラインの段数と前記第2のインバータラインの段数は、同一である請求項1または2に記載の差動受信回路。
【請求項5】
前記差動アンプ回路は、同一構造の第1の差動アンプと、第2の差動アンプと、を備え、
前記相補入力信号の一方は、前記第1の差動アンプのプラス入力端子および前記第2の差動アンプのマイナス入力端子に入力され、
前記相補入力信号の他方は、前記第1の差動アンプのマイナス入力端子および前記第2の差動アンプのプラス入力端子に入力され、
前記相補出力信号の一方は、前記第1の差動アンプから出力され、
前記相補出力信号の他方は、前記第2の差動アンプから出力される請求項1から4のいずれか1項に記載の差動受信回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−4182(P2011−4182A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145784(P2009−145784)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(308014341)富士通セミコンダクター株式会社 (2,507)
【Fターム(参考)】