布材
【課題】布材に設けられる導電線材と導電性を備える面状体とを互いに接続抵抗が小さくなるように電気的につなげられるようにする。
【解決手段】通電により発熱可能な導電線材11を備える布材10である。導電線材11は、その長さ方向の一部が、布材10から外部に露出した状態で設けられている。この導電線材11の外部に露出した露出部11Aに対し、少なくとも一方に導電性を備える第1の面状体12Aと第2の面状体12Bとが、露出部11Aを間に挟み込んだ状態となって互いに面当接した状態に一体的に接着されて電気的に接続されている。
【解決手段】通電により発熱可能な導電線材11を備える布材10である。導電線材11は、その長さ方向の一部が、布材10から外部に露出した状態で設けられている。この導電線材11の外部に露出した露出部11Aに対し、少なくとも一方に導電性を備える第1の面状体12Aと第2の面状体12Bとが、露出部11Aを間に挟み込んだ状態となって互いに面当接した状態に一体的に接着されて電気的に接続されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、布材に関する。詳しくは、通電により発熱可能な導電線材を備える布材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートの着座面を加熱する手段として、織物から成る表皮材(布材)中に、通電により発熱可能な導電糸(導電線材)が織り込まれたものが知られている(下記特許文献1参照)。この導電糸は、表皮材に対し、シート幅方向に織り込まれており、シート前後方向に複数並べて設けられることで、着座面を広い領域に亘って加熱できるようになっている。上記各導電糸は、これらに跨って接続される導電性を備える面状体により電気的に接続されており、面状体により通電されて発熱するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−227384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来技術では、面状体を熱溶着により布材中の導電糸に電気的に接続する際、布材の主構成である非導電糸と面状体との相性によっては、これらをうまく溶着して電気的に接続することができないことがある。本発明は、上記問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、布材に設けられる導電線材と導電性を備える面状体とを互いの接続抵抗が小さくなるように電気的につなげられるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、通電により発熱可能な導電線材を備える布材である。導電線材は、その長さ方向の一部が、布材から外部に露出した状態で設けられている。この導電線材の外部に露出した露出部に対し、少なくとも一方に導電性を備える二枚の面状体が、露出部を間に挟み込んだ状態となって互いに面当接した状態に一体的に接着されて電気的に接続されている。
【0006】
この第1の発明によれば、二枚の面状体同士は、互いに面当接した状態で一体的に接着される関係となっていることから、互いの接着面が広く確保されて、互いの接着状態が安定しやすくなっている。したがって、上記二枚の面状体同士を、互いの間に導電線材の露出部を挟み込む形で一体的に接着させることにより、導電線材と面状体とを互いに接続抵抗が小さくなるように電気的につなげることができる。
【0007】
第2の発明は、上述した第1の発明において、導電線材が布材の特定の面内方向に複数並んで設けられており、二枚の面状体が各導電線材の外部に露出する各露出部に跨って設けられて、各露出部を間に挟み込んだ状態となって互いに面当接した状態に一体的に接着されて電気的に接続されている。
【0008】
この第2の発明によれば、二枚の面状体が複数の導電線材の各露出部に跨って各露出部を間に挟み込んだ状態となって互いに面当接した状態に一体的に接着されて電気的に接続されることにより、複数の導電線材と面状体とを互いに接続抵抗が小さくなるように電気的につなげることができる。
【0009】
第3の発明は、上述した第1又は第2の発明において、二枚の面状体を互いに熱溶着により一体的に接着可能な同一素材から成る布帛により構成した。
【0010】
この第3の発明によれば、二枚の面状体を互いに熱溶着により一体的に接着可能な同一素材から成る布帛により構成したことにより、二枚の面状体を同じ溶融態様で溶融させて良好な状態に接着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1の布材が適用された車両用シートの斜視図である。
【図2】布材の一部透視平面図である。
【図3】(a)は布材の製造工程を示す一部拡大図であり、(b)は(a)のIII-III線断面図である。
【図4】(a)は布材の別の製造工程を示す一部拡大図であり、(b)は(a)のIV-IV線断面図である。
【図5】(a)は製造された布材の一部拡大図であり、(b)は(a)のV-V線断面図である。
【図6】(a)は実施例2の布材の製造工程を示す一部拡大図であり、(b)は(a)のVI-VI線断面図である。
【図7】(a)は製造された布材の一部拡大図であり、(b)は(a)のVII-VII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
始めに、実施例1の布材10の構成について、図1〜図5を用いて説明する。本実施例の布材10は、図1〜図2に示すように、車両用シート1のシートクッション2の着座面を構成する表皮材として構成されている。この布材10は、その内部に、通電により発熱可能な複数本の導電線材11が埋設されており、各導電線材11を通電させて発熱させることにより、ヒータとして機能させられるようになっている。
【0014】
上記導電線材11は、図2に示すように、それぞれ、布材10の内部において、シート幅方向LRに向かって真っ直ぐに延びるように配設されており、このような導電線材11が布材10の内部にシート前後方向FRに複数本並べられて設けられている。これら導電線材11は、炭素繊維のフィラメント(導電糸)を複数本束状に撚り合わせて構成したものである。なお、導電線材11は、この他にも、金属製又は合金製の導電糸やメッキ線材から成るものであってもよく、これら線材を複数本束状に撚り合わせて構成したものであってもよい。
【0015】
布材10は、ポリエチレンテレフタレート(PET)の仮撚加工糸を織って構成したもの(布帛)である。なお、布材10は、この他にも、各種の絶縁繊維から成る線材によって作製される織物、編物、不織布又は組紐(組物)によって構成したものであってもよい。上記絶縁繊維としては、植物系又は動物系の天然繊維、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる化学繊維、或いはこれらの混紡繊維から成るものが挙げられる。
【0016】
上記導電線材11は、布材10を織り込んで作製する際に、布材10の線材が織り込まれる所定間隔毎に打ち込まれることで、布材10の内部に埋設されている。なお、導電線材11は、布材10の裏面に貼り付けられて設けられるものであってもよい。上記布材10の裏面には、図示しないパッド材及び裏基布が設けられている。上記布材10は、各導電線材11に電気的につなげられた通電手段12によって、各導電線材11を通電させて発熱させることによりヒータとして機能するのであるが、このとき、各導電線材11と通電手段12とを互いの接続抵抗がより小さくなるように電気的につなげることが望まれる。
【0017】
以下、上記各導電線材11と通電手段12とを接続抵抗が小さくなるように電気的につなげる構成について詳しく説明する。ここで、布材10は、図2〜図3に示すように、その本体部と両側の縁部10Aとの間の面部が、レーザ照射により加熱溶融されて除去された構成となっており、この除去された部位に、各導電線材11の一部(露出部11A)がそれぞれ外部に露出した構成となっている。なお、上記布材10の一部を除去する手段としては、上記レーザなどの光学的な加熱手段のほか、パンチやハサミなどの機械的に除去する手段が挙げられる。
【0018】
そして、図3〜図5に示すように、上記各導電線材11の各側の露出した露出部11Aに跨って、これらを上下側から両挟み状に挟み込むように、導電性を備えた帯状の第1の面状体12Aと導電性を備えた帯状の第2の面状体12Bとが設けられて、これらが互いに熱溶着されて一体化されることにより、各導電線材11と互いに電気的に接続された状態となっている。ここで、第1の面状体12Aと第2の面状体12Bが、それぞれ、本発明の面状体に相当する。
【0019】
上記第1及び第2の面状体12A,12Bは、それぞれ、布材10と同じ、ポリエチレンテレフタレート(PET)の仮撚加工糸を織って構成したもの(布帛)に、導電性を備える導電糸を複数本打ち込んで構成したものとなっている。なお、第1及び第2の面状体12A,12Bは、この他にも、各種の絶縁繊維から成る線材によって作製される織物、編物、不織布又は組紐(組物)によって構成したものに対し、導電糸を複数本打ち込んで構成したものであってもよい。これら第1の面状体12Aと第2の面状体12Bは、これらを各導電線材11の露出部11Aに上下側から挟み込んだ状態となるようにセットして、これらを各種の加熱手段により溶融させて各導電糸を各導電線材11の露出部11Aにそれぞれ接触させた状態にして、互いの向かい合う面同士を全面的に溶着させて面接着させた状態とすることにより、各露出部11Aに電気的に接続された状態となって互いに一体的に接着された状態となっている。
【0020】
詳しくは、上記第1及び第2の面状体12A,12Bは、図5に示すように、その左右両側の各縁部が、それぞれ、布材10の本体部と縁部10Aとに乗り掛かった状態として、これらにも一体的に溶着されて固定された状態となっている。これにより、第1及び第2の面状体12A,12Bが、それぞれ、布材10に対しても一体的に固定された状態として、各導電線材11の露出部11Aとの電気的な接続状態がより安定した状態に保持されるようになっている。図2に示すように、上記布材10の本体部と各縁部10Aとの間に配設された各側の第1の面状体12Aには、それぞれ、電源ケーブル12Cが電気的に接続された状態となって設けられている。これら電源ケーブル12Cは、それぞれ、図示しない直流電源の正極又は負極と電気的に接続されており、この接続により、各導電線材11が、上記直流電源に対して並列に並ぶ並列回路を構成するように電気的に接続された状態となっている。これにより、各導電線材11を、比較的低い電圧によって通電させて発熱させられるようになっている。
【0021】
このように、本実施例の布材10によれば、各導電線材11の露出部11Aと電気的に接続される第1及び第2の面状体12A,12Bは、互いに面当接した状態で一体的に接着される関係となっていることから、互いの接着面が広く確保されて、互いの接着状態が安定されやすくなっている。したがって、上記第1の面状体12Aと第2の面状体12Bとを、互いの間に導電線材11の露出部11Aを挟み込む形で一体的に接着させることにより、各導電線材11と第1及び第2の面状体12A,12Bとを互いの接続抵抗が小さくなるように電気的につなげることができる。また、第1の面状体12Aと第2の面状体12Bとを互いに熱溶着により一体的に接着可能な同一素材から成る布帛により構成したことにより、第1の面状体12Aと第2の面状体12Bとを互いに同じ溶融態様で溶融させて良好な状態に接着することができる。
【実施例2】
【0022】
続いて、実施例2の布材10の構成について、図6〜図7を用いて説明する。なお、本実施例では、実施例1で示した布材10と実質的に構成が同じとなる箇所については、それらに同一の符号を付して説明を省略し、構成が異なる箇所について異なる符号を付して詳細に説明することとする。
【0023】
本実施例の布材10は、図6〜図7に示すように、第1の面状体12Aと第2の面状体12Bとの間に、各導電線材11の露出部11Aを上下側から挟み込むように、導電性を備えた帯状の第1の中間部材12Dと第2の中間部材12Eとがそれぞれ設けられた構成となっている。これら第1の中間部材12Dと第2の中間部材12Eは、それらの横幅が、布材10の本体部と各縁部10Aとの間の露出部11Aが露呈する隙間幅に収まる大きさに形成されており、第1の面状体12Aと第2の面状体12Bとの間に挟まれて配置されることで、第1の面状体12Aと第2の面状体12Bとを布材10の厚さ分だけ撓ませることなく面接触させられるように機能するものとなっている。したがって、これら第1の中間部材12Dと第2の中間部材12Eとをそれぞれ弾発力のある素材によって構成することで、かかる弾発力によって、各露出部11Aに対する圧着力と、第1及び第2の面状体12A,12Bに対する各圧着力とをそれぞれ高めた状態にして、各導電線材11と第1及び第2の面状体12A,12Bとを互いの接続抵抗がより小さくなるように電気的につなげることができる。なお、上記弾発力は、第1の中間部材12D又は第2の中間部材12Eのうちの少なくとも一方に備わっていれば足りるが、両方に備わっていることで、より強力な弾発力を発揮させることができるため、好ましい。なお、本実施例では、第1の中間部材12Dと第2の中間部材12Eとがそれぞれ導電性を備える構成となっているため、電源ケーブル12C(図2参照)は、実施例1で示したように第1の面状体12Aに電気的に接続された構成となっていてもよいが、第1の中間部材12D又は第2の中間部材12Eに接続されていてもよい。
【0024】
以上、本発明の実施形態を二つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施できるものである。上記各実施例では、布材10を車両用シート1のシートクッション2の表皮材として用いたものを例示したが、シートバック3やヘッドレストやオットマン等の着座者が接触する部位の表皮材を構成するものとして用いてもよい。また、本発明の布材は、車両用シートの表皮材への適用に限定されず、使用者に温熱感を与えるために使用される種々の布材に適用することができるものである。また、布材に設けられる導電線材は、少なくとも1本あれば良く、その配される本数は特に限定されない。また、導電線材は、その長さ方向の一部が布材から外部に露出した状態で設けられていればよく、布材に対する配索方向やその露出部が露出する箇所については特に限定されることなく、使用目的に応じて自由に設定することができるものである。
【0025】
また、上記各実施例では、第1及び第2の面状体12A,12Bが共に導電性を備えた構成となっているものを示したが、少なくとも電源ケーブル12Cとつながれる一方側の面状体が導電性を備えた構成となっていればよい。また、実施例2でも同様に、第1の中間部材12Dと第2の中間部材12Eとが共に導電性を備えた構成となっているものを示したが、少なくとも電源ケーブル12Cとつながれる一方側の面状体と面接触する側の中間部材が導電性を備えた構成となっていればよい。また、実施例2では、導電線材11の露出部11Aを間に挟むようにして、帯状の第1の中間部材12Dと第2の中間部材12Eとを配設した構成を例示したが、これらの形状は、帯状の形に限定されるものではなく、導電線材等の他の形をしたものであってもよい。また、第1の面状体12A及び第2の面状体12Bとして、互いに熱溶着により一体的に接着可能な同一素材から成る布帛により構成したものを例示したが、これらは互いに異なる素材によって構成されていてもよく、また、導電性を備える側の部材が、全体に導電性を備えて構成されるものでも、一部に導電性を備えて構成されるものでも、どちらでも構わない。
【符号の説明】
【0026】
1 車両用シート
2 シートクッション
3 シートバック
10 布材
10A 縁部
11 導電線材
11A 露出部
12 通電手段
12A 第1の面状体(面状体)
12B 第2の面状体(面状体)
12C 電源ケーブル
12D 第1の中間部材
12E 第2の中間部材
LR シート幅方向
FR シート前後方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、布材に関する。詳しくは、通電により発熱可能な導電線材を備える布材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両用シートの着座面を加熱する手段として、織物から成る表皮材(布材)中に、通電により発熱可能な導電糸(導電線材)が織り込まれたものが知られている(下記特許文献1参照)。この導電糸は、表皮材に対し、シート幅方向に織り込まれており、シート前後方向に複数並べて設けられることで、着座面を広い領域に亘って加熱できるようになっている。上記各導電糸は、これらに跨って接続される導電性を備える面状体により電気的に接続されており、面状体により通電されて発熱するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−227384号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記従来技術では、面状体を熱溶着により布材中の導電糸に電気的に接続する際、布材の主構成である非導電糸と面状体との相性によっては、これらをうまく溶着して電気的に接続することができないことがある。本発明は、上記問題を解決するものとして創案されたものであって、本発明が解決しようとする課題は、布材に設けられる導電線材と導電性を備える面状体とを互いの接続抵抗が小さくなるように電気的につなげられるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明は、通電により発熱可能な導電線材を備える布材である。導電線材は、その長さ方向の一部が、布材から外部に露出した状態で設けられている。この導電線材の外部に露出した露出部に対し、少なくとも一方に導電性を備える二枚の面状体が、露出部を間に挟み込んだ状態となって互いに面当接した状態に一体的に接着されて電気的に接続されている。
【0006】
この第1の発明によれば、二枚の面状体同士は、互いに面当接した状態で一体的に接着される関係となっていることから、互いの接着面が広く確保されて、互いの接着状態が安定しやすくなっている。したがって、上記二枚の面状体同士を、互いの間に導電線材の露出部を挟み込む形で一体的に接着させることにより、導電線材と面状体とを互いに接続抵抗が小さくなるように電気的につなげることができる。
【0007】
第2の発明は、上述した第1の発明において、導電線材が布材の特定の面内方向に複数並んで設けられており、二枚の面状体が各導電線材の外部に露出する各露出部に跨って設けられて、各露出部を間に挟み込んだ状態となって互いに面当接した状態に一体的に接着されて電気的に接続されている。
【0008】
この第2の発明によれば、二枚の面状体が複数の導電線材の各露出部に跨って各露出部を間に挟み込んだ状態となって互いに面当接した状態に一体的に接着されて電気的に接続されることにより、複数の導電線材と面状体とを互いに接続抵抗が小さくなるように電気的につなげることができる。
【0009】
第3の発明は、上述した第1又は第2の発明において、二枚の面状体を互いに熱溶着により一体的に接着可能な同一素材から成る布帛により構成した。
【0010】
この第3の発明によれば、二枚の面状体を互いに熱溶着により一体的に接着可能な同一素材から成る布帛により構成したことにより、二枚の面状体を同じ溶融態様で溶融させて良好な状態に接着することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施例1の布材が適用された車両用シートの斜視図である。
【図2】布材の一部透視平面図である。
【図3】(a)は布材の製造工程を示す一部拡大図であり、(b)は(a)のIII-III線断面図である。
【図4】(a)は布材の別の製造工程を示す一部拡大図であり、(b)は(a)のIV-IV線断面図である。
【図5】(a)は製造された布材の一部拡大図であり、(b)は(a)のV-V線断面図である。
【図6】(a)は実施例2の布材の製造工程を示す一部拡大図であり、(b)は(a)のVI-VI線断面図である。
【図7】(a)は製造された布材の一部拡大図であり、(b)は(a)のVII-VII線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について、図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
始めに、実施例1の布材10の構成について、図1〜図5を用いて説明する。本実施例の布材10は、図1〜図2に示すように、車両用シート1のシートクッション2の着座面を構成する表皮材として構成されている。この布材10は、その内部に、通電により発熱可能な複数本の導電線材11が埋設されており、各導電線材11を通電させて発熱させることにより、ヒータとして機能させられるようになっている。
【0014】
上記導電線材11は、図2に示すように、それぞれ、布材10の内部において、シート幅方向LRに向かって真っ直ぐに延びるように配設されており、このような導電線材11が布材10の内部にシート前後方向FRに複数本並べられて設けられている。これら導電線材11は、炭素繊維のフィラメント(導電糸)を複数本束状に撚り合わせて構成したものである。なお、導電線材11は、この他にも、金属製又は合金製の導電糸やメッキ線材から成るものであってもよく、これら線材を複数本束状に撚り合わせて構成したものであってもよい。
【0015】
布材10は、ポリエチレンテレフタレート(PET)の仮撚加工糸を織って構成したもの(布帛)である。なお、布材10は、この他にも、各種の絶縁繊維から成る線材によって作製される織物、編物、不織布又は組紐(組物)によって構成したものであってもよい。上記絶縁繊維としては、植物系又は動物系の天然繊維、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる化学繊維、或いはこれらの混紡繊維から成るものが挙げられる。
【0016】
上記導電線材11は、布材10を織り込んで作製する際に、布材10の線材が織り込まれる所定間隔毎に打ち込まれることで、布材10の内部に埋設されている。なお、導電線材11は、布材10の裏面に貼り付けられて設けられるものであってもよい。上記布材10の裏面には、図示しないパッド材及び裏基布が設けられている。上記布材10は、各導電線材11に電気的につなげられた通電手段12によって、各導電線材11を通電させて発熱させることによりヒータとして機能するのであるが、このとき、各導電線材11と通電手段12とを互いの接続抵抗がより小さくなるように電気的につなげることが望まれる。
【0017】
以下、上記各導電線材11と通電手段12とを接続抵抗が小さくなるように電気的につなげる構成について詳しく説明する。ここで、布材10は、図2〜図3に示すように、その本体部と両側の縁部10Aとの間の面部が、レーザ照射により加熱溶融されて除去された構成となっており、この除去された部位に、各導電線材11の一部(露出部11A)がそれぞれ外部に露出した構成となっている。なお、上記布材10の一部を除去する手段としては、上記レーザなどの光学的な加熱手段のほか、パンチやハサミなどの機械的に除去する手段が挙げられる。
【0018】
そして、図3〜図5に示すように、上記各導電線材11の各側の露出した露出部11Aに跨って、これらを上下側から両挟み状に挟み込むように、導電性を備えた帯状の第1の面状体12Aと導電性を備えた帯状の第2の面状体12Bとが設けられて、これらが互いに熱溶着されて一体化されることにより、各導電線材11と互いに電気的に接続された状態となっている。ここで、第1の面状体12Aと第2の面状体12Bが、それぞれ、本発明の面状体に相当する。
【0019】
上記第1及び第2の面状体12A,12Bは、それぞれ、布材10と同じ、ポリエチレンテレフタレート(PET)の仮撚加工糸を織って構成したもの(布帛)に、導電性を備える導電糸を複数本打ち込んで構成したものとなっている。なお、第1及び第2の面状体12A,12Bは、この他にも、各種の絶縁繊維から成る線材によって作製される織物、編物、不織布又は組紐(組物)によって構成したものに対し、導電糸を複数本打ち込んで構成したものであってもよい。これら第1の面状体12Aと第2の面状体12Bは、これらを各導電線材11の露出部11Aに上下側から挟み込んだ状態となるようにセットして、これらを各種の加熱手段により溶融させて各導電糸を各導電線材11の露出部11Aにそれぞれ接触させた状態にして、互いの向かい合う面同士を全面的に溶着させて面接着させた状態とすることにより、各露出部11Aに電気的に接続された状態となって互いに一体的に接着された状態となっている。
【0020】
詳しくは、上記第1及び第2の面状体12A,12Bは、図5に示すように、その左右両側の各縁部が、それぞれ、布材10の本体部と縁部10Aとに乗り掛かった状態として、これらにも一体的に溶着されて固定された状態となっている。これにより、第1及び第2の面状体12A,12Bが、それぞれ、布材10に対しても一体的に固定された状態として、各導電線材11の露出部11Aとの電気的な接続状態がより安定した状態に保持されるようになっている。図2に示すように、上記布材10の本体部と各縁部10Aとの間に配設された各側の第1の面状体12Aには、それぞれ、電源ケーブル12Cが電気的に接続された状態となって設けられている。これら電源ケーブル12Cは、それぞれ、図示しない直流電源の正極又は負極と電気的に接続されており、この接続により、各導電線材11が、上記直流電源に対して並列に並ぶ並列回路を構成するように電気的に接続された状態となっている。これにより、各導電線材11を、比較的低い電圧によって通電させて発熱させられるようになっている。
【0021】
このように、本実施例の布材10によれば、各導電線材11の露出部11Aと電気的に接続される第1及び第2の面状体12A,12Bは、互いに面当接した状態で一体的に接着される関係となっていることから、互いの接着面が広く確保されて、互いの接着状態が安定されやすくなっている。したがって、上記第1の面状体12Aと第2の面状体12Bとを、互いの間に導電線材11の露出部11Aを挟み込む形で一体的に接着させることにより、各導電線材11と第1及び第2の面状体12A,12Bとを互いの接続抵抗が小さくなるように電気的につなげることができる。また、第1の面状体12Aと第2の面状体12Bとを互いに熱溶着により一体的に接着可能な同一素材から成る布帛により構成したことにより、第1の面状体12Aと第2の面状体12Bとを互いに同じ溶融態様で溶融させて良好な状態に接着することができる。
【実施例2】
【0022】
続いて、実施例2の布材10の構成について、図6〜図7を用いて説明する。なお、本実施例では、実施例1で示した布材10と実質的に構成が同じとなる箇所については、それらに同一の符号を付して説明を省略し、構成が異なる箇所について異なる符号を付して詳細に説明することとする。
【0023】
本実施例の布材10は、図6〜図7に示すように、第1の面状体12Aと第2の面状体12Bとの間に、各導電線材11の露出部11Aを上下側から挟み込むように、導電性を備えた帯状の第1の中間部材12Dと第2の中間部材12Eとがそれぞれ設けられた構成となっている。これら第1の中間部材12Dと第2の中間部材12Eは、それらの横幅が、布材10の本体部と各縁部10Aとの間の露出部11Aが露呈する隙間幅に収まる大きさに形成されており、第1の面状体12Aと第2の面状体12Bとの間に挟まれて配置されることで、第1の面状体12Aと第2の面状体12Bとを布材10の厚さ分だけ撓ませることなく面接触させられるように機能するものとなっている。したがって、これら第1の中間部材12Dと第2の中間部材12Eとをそれぞれ弾発力のある素材によって構成することで、かかる弾発力によって、各露出部11Aに対する圧着力と、第1及び第2の面状体12A,12Bに対する各圧着力とをそれぞれ高めた状態にして、各導電線材11と第1及び第2の面状体12A,12Bとを互いの接続抵抗がより小さくなるように電気的につなげることができる。なお、上記弾発力は、第1の中間部材12D又は第2の中間部材12Eのうちの少なくとも一方に備わっていれば足りるが、両方に備わっていることで、より強力な弾発力を発揮させることができるため、好ましい。なお、本実施例では、第1の中間部材12Dと第2の中間部材12Eとがそれぞれ導電性を備える構成となっているため、電源ケーブル12C(図2参照)は、実施例1で示したように第1の面状体12Aに電気的に接続された構成となっていてもよいが、第1の中間部材12D又は第2の中間部材12Eに接続されていてもよい。
【0024】
以上、本発明の実施形態を二つの実施例を用いて説明したが、本発明は上記実施例のほか各種の形態で実施できるものである。上記各実施例では、布材10を車両用シート1のシートクッション2の表皮材として用いたものを例示したが、シートバック3やヘッドレストやオットマン等の着座者が接触する部位の表皮材を構成するものとして用いてもよい。また、本発明の布材は、車両用シートの表皮材への適用に限定されず、使用者に温熱感を与えるために使用される種々の布材に適用することができるものである。また、布材に設けられる導電線材は、少なくとも1本あれば良く、その配される本数は特に限定されない。また、導電線材は、その長さ方向の一部が布材から外部に露出した状態で設けられていればよく、布材に対する配索方向やその露出部が露出する箇所については特に限定されることなく、使用目的に応じて自由に設定することができるものである。
【0025】
また、上記各実施例では、第1及び第2の面状体12A,12Bが共に導電性を備えた構成となっているものを示したが、少なくとも電源ケーブル12Cとつながれる一方側の面状体が導電性を備えた構成となっていればよい。また、実施例2でも同様に、第1の中間部材12Dと第2の中間部材12Eとが共に導電性を備えた構成となっているものを示したが、少なくとも電源ケーブル12Cとつながれる一方側の面状体と面接触する側の中間部材が導電性を備えた構成となっていればよい。また、実施例2では、導電線材11の露出部11Aを間に挟むようにして、帯状の第1の中間部材12Dと第2の中間部材12Eとを配設した構成を例示したが、これらの形状は、帯状の形に限定されるものではなく、導電線材等の他の形をしたものであってもよい。また、第1の面状体12A及び第2の面状体12Bとして、互いに熱溶着により一体的に接着可能な同一素材から成る布帛により構成したものを例示したが、これらは互いに異なる素材によって構成されていてもよく、また、導電性を備える側の部材が、全体に導電性を備えて構成されるものでも、一部に導電性を備えて構成されるものでも、どちらでも構わない。
【符号の説明】
【0026】
1 車両用シート
2 シートクッション
3 シートバック
10 布材
10A 縁部
11 導電線材
11A 露出部
12 通電手段
12A 第1の面状体(面状体)
12B 第2の面状体(面状体)
12C 電源ケーブル
12D 第1の中間部材
12E 第2の中間部材
LR シート幅方向
FR シート前後方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
通電により発熱可能な導電線材を備える布材であって、
前記導電線材はその長さ方向の一部が前記布材から外部に露出した状態で設けられ、該導電線材の外部に露出した露出部に対し、少なくとも一方に導電性を備える二枚の面状体が前記露出部を間に挟み込んだ状態となって互いに面当接した状態に一体的に接着されて電気的に接続されていることを特徴とする布材。
【請求項2】
請求項1に記載の布材であって、
前記導電線材が前記布材の特定の面内方向に複数並んで設けられており、前記二枚の面状体が前記各導電線材の外部に露出する各露出部に跨って設けられて当該各露出部を間に挟み込んだ状態となって互いに面当接した状態に一体的に接着されて電気的に接続されていることを特徴とする布材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の布材であって、
前記二枚の面状体を互いに熱溶着により一体的に接着可能な同一素材から成る布帛により構成したことを特徴とする布材。
【請求項1】
通電により発熱可能な導電線材を備える布材であって、
前記導電線材はその長さ方向の一部が前記布材から外部に露出した状態で設けられ、該導電線材の外部に露出した露出部に対し、少なくとも一方に導電性を備える二枚の面状体が前記露出部を間に挟み込んだ状態となって互いに面当接した状態に一体的に接着されて電気的に接続されていることを特徴とする布材。
【請求項2】
請求項1に記載の布材であって、
前記導電線材が前記布材の特定の面内方向に複数並んで設けられており、前記二枚の面状体が前記各導電線材の外部に露出する各露出部に跨って設けられて当該各露出部を間に挟み込んだ状態となって互いに面当接した状態に一体的に接着されて電気的に接続されていることを特徴とする布材。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の布材であって、
前記二枚の面状体を互いに熱溶着により一体的に接着可能な同一素材から成る布帛により構成したことを特徴とする布材。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2011−243312(P2011−243312A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−111925(P2010−111925)
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(000241500)トヨタ紡織株式会社 (2,945)
【Fターム(参考)】
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