説明

帯電部材、プロセスカートリッジ及び電子写真装置

【課題】繰り返し使用しても優れた耐磨耗性を維持し得る帯電部材、ならびに、該帯電部材を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供する。
【解決手段】オキシアルキレン基を有するポリシロキサンと、1nm以上500nm以下の平均粒子径を有する無機微粒子とを含有する材料からなる表面層を有する帯電部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やレーザービームプリンター(LBP)などの電子写真装置に用いられる帯電部材、ならびに、該帯電部材を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、電子写真感光体の表面を帯電する方式の1つとして、接触帯電方式が実用化されている。
【0003】
接触帯電方式は、電子写真感光体に接触配置された帯電部材に電圧を印加し、該帯電部材と該電子写真感光体との間の当接部近傍で微少な放電をさせることによって、該電子写真感光体の表面を帯電する方式である。
【0004】
また、接触帯電方式の中でも近年、帯電装置、電子写真装置の小型化、及びコストダウンの点で優れた帯電方式として用いられている方式として、直流電圧のみの電圧を帯電部材に印加する方式(以下「DC接触帯電方式」ともいう。)が普及している。
【0005】
帯電部材の形状としては、ローラ形状が一般的である(以下、ローラ形状の帯電部材を「帯電ローラ」ともいう。)。
【0006】
接触帯電方式の場合、電子写真感光体と帯電部材との当接ニップを十分にかつ均一に確保する必要がある。このような要求に対して、従来、支持体及び該支持体上に設けられた弾性層(導電性弾性層)を有する帯電部材が提案されている。しかしながら、弾性層(導電性弾性層)は、低分子量成分を比較的多量に含むことが多いため、この低分子量成分がブリードアウトし、電子写真感光体の表面を汚染することがある。そこで、現在、低分子量成分のブリードアウトの抑制を目的として、導電性弾性層上に表面層を設けることもよく行われている。
【0007】
例えば、特許文献1には、ゾル−ゲル法によって形成される無機酸化物被膜からなるブリージング阻止層によって導電性ロール基材の表面を被覆したことを特徴とする導電性ロールが開示されている。特許文献1に開示された技術は、具体的には、金属アルコキシドと有機ケイ素化合物またはフッ素置換有機ケイ素化合物との反応物からなるゾルを導電性ロール基材表面に塗布し、これをゲル化させることによって被覆する技術である。しかしながらこのようなブリージング阻止層が表面層となっている導電性ロールにおいては、繰り返し使用していくと、感光体やトナー及びトナーの外添剤と摩擦を生じることによって、表面層が磨耗・劣化し、画像不良を引き起こすことがある。
【0008】
【特許文献1】特開2001−173641号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、良好な帯電特性を示す帯電部材、具体的には、繰り返し使用しても優れた耐磨耗性を維持し得る帯電部材、ならびに、該帯電部材を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決した本発明は、オキシアルキレン基を有するポリシロキサンと、1nm以上、500nm以下の平均粒子径を有する無機微粒子とを含有する材料からなる表面層を有する帯電部材である。
また、上記課題を解決した本発明は、電子写真感光体と、該電子写真感光体の表面を帯電するための帯電部材とを一体に保持した、電子写真装置本体に着脱自在に装着可能なプロセスカートリッジにおいて、該帯電部材が上記本発明の帯電部材であることを特徴とするプロセスカートリッジである。
また、上記課題を解決した本発明は、電子写真感光体と、該電子写真感光体の表面を帯電するための帯電部材とを有する電子写真装置において、該帯電部材が上記本発明の帯電部材であることを特徴とする電子写真装置である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、繰り返し使用しても優れた耐磨耗性を維持し得る帯電部材、ならびに、該帯電部材を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の帯電部材は、上記の通り、オキシアルキレン基を有するポリシロキサンと、1nm以上、500nm以下の平均粒子径を有する無機微粒子とを含有する材料からなる表面層を有している。
【0013】
上記オキシアルキレン基とは、−O−R−(−R−:アルキレン基)で示される構造を有する2価の基(「アルキレンエーテル基」と呼ばれることもある。)である。この−R−(アルキレン基)としては、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましい。該オキシアルキレン基の含有量は、該オキシアルキレン基を有するポリシロキサンの全質量に対し、2〜50質量%であることが好ましく、2〜25質量%とすることがより好ましい。
【0014】
そして、本発明の帯電部材は、平均粒子径が1nm以上500nm以下の平均粒子径を有する無機微粒子を含有する材料からなる表面層を有することを特徴の1つとしている。
【0015】
本発明において、無機微粒子の平均粒子径とは、次のようにして測定して得られる平均粒子径を意味する。すなわち、帯電部材の表面層を、その近傍の弾性層から幅2mm×長さ1cm×深さ1mm程度に切り取り、最表面から弾性層に向かって斜めにカットして表面層の断面を作成したものをサンプル片とした(図3に無機微粒子の平均粒子径の測定サンプルの一例を示す)。このサンプル片の断面側に白金蒸着を施したものを、走査型電子顕微鏡(商品名:S-4800;(株)日立ハイテクノロジーズ)に投入して、加速電圧1.0Kv×100Kの条件で、2次電子像観察を行った。観察した画像データを、Image Pro PLUSに取り込み、画像解析により2値化することによって、ポリシロキサン部分を黒に、無機微粒子の部分を白に分けた。個々の白の部分(無機微粒子)の最短距離を任意に100点計測し(概念図を図4に示す)、その平均値を平均粒径とした。
【0016】
ここで、平均粒子径が1nm以下であると、無機微粒子の製造が困難となるほか、分散溶媒中で無機微粒子が凝集し、保存安定性が悪くなることがある。一方、平均粒子径が500nm以上であると、ポリシロキサンに混入させた際に、分散不良となるほか、薄膜形成に不利となることがある。無機微粒子の平均粒子径は、5nm以上300nm以下とすることが好ましい。
【0017】
また、本発明において、表面層の表面における上記無機微粒子の占有表面積%は、該表面層の全表面積に対し、5%以上85%以下であることが好ましい。無機微粒子の占有表面積%を5%以上とすると、分散が均一となり、表面層の機械的強度を十分に上げることができる。一方、占有表面積%を85%以下とすると、ポリシロキサン部分と無機微粒子との親和性が充分に高くなり、凝集破壊を起こすことを防止することができる。無機微粒子の占有表面積%は、15%以上80%以下とすることがより好ましい。
【0018】
本発明において、表面層の表面における無機微粒子の占有表面積%は、次のようにして測定して得られる値を意味する。すなわち、平均粒子径と同様の方法によって、断面観察及び画像解析を行った。帯電部材の表面層を、その近傍の弾性層から幅2mm×長さ1cm×深さ1mm程度に切り取り、最表面から弾性層に向かって斜めにカットして表面層の断面を作成したものをサンプル片とした(図3に無機微粒子の占有表面積%の測定サンプルの一例を示す)。このサンプル片に断面側から白金蒸着を施したものを、走査型電子顕微鏡(商品名:S-4800;(株)日立ハイテクノロジーズ)に投入して、加速電圧1.0Kv×100Kの条件で、2次電子像観察を行った。観察した画像データを、Image Pro PLUSに取り込み、画像解析により2値化することによって、ポリシロキサン部分を黒に、無機微粒子の部分を白に分けた(概念図を図5に示す)。白(無機微粒子)の部分の面積Wと、黒及び白の部分の面積の合算値Tを求め(W÷T)×100を計算することにより、無機微粒子の占有表面積%を求めた。
【0019】
また、本発明における無機微粒子は、平均粒子径が1nm〜500nmであるものであれば特に限定されるものではないが、Al、Si、Zn、Ti、Zr、などの金属の、酸化物、窒化物、炭化物及び水酸化物等からなる無機微粒子が好ましい。その形状としては、粉状、粒子状、繊維状、鱗片状、球状、針状、ウィスカー状、テトラポット状などが例示できる。また前記無機微粒子は、水、アルコール類またはそれ以外の有機溶媒に分散されたスラリー、粉末、ペースト状のものを用いることができる。その中でも特に、本発明の効果を簡単に実現させることができるという点で、アルミナ及びシリカからなる無機微粒子が好ましく、球形の形状を有するものがより好ましい。またアルミナ及びシリカが分散されたスラリーを用いることが好ましい。また、表面をシランカップリング剤等で疎水化処理した無機微粒子を使用することもできる。
【0020】
前記無機微粒子は、前記ポリシロキサンの質量に対し、5質量%以上80質量%以下含まれることが好ましい。無機微粒子が5質量%以上含まれると、分散が均一となり、表面層の機械的強度を十分に上げることができる。また、無機微粒子が80質量%以下含まれると、ポリシロキサン部分と無機微粒子との親和性が充分に高くなり、凝集破壊を起こすことを防止することができる。無機微粒子は、10質量%以上40質量%以下含まれることがより好ましい。また、前記無機微粒子は、後述する前記ポリシロキサン縮合前工程(例えば、加水分解性シラン化合物を反応容器に装入する工程)で、または、縮合後工程(例えば加水分解性シラン化合物を縮合させた後、カチオン重合可能な基を開裂させることにより、加水分解性シラン化合物の縮合物を架橋させる工程の前)に加えることが好ましい。ポリシロキサン縮合前工程で加えると、加水分解性シラン化合物と無機微粒子表面との化学的親和力の向上も期待でき、より高い耐磨耗性が期待できる。また、縮合後工程で加えると、簡便な方法で耐摩耗性の高い表面層材料を作ることが可能となり便利である。
【0021】
上記オキシアルキレン基を有するポリシロキサンは、さらに、置換及び無置換のアルキル基並びに置換及び無置換のアリール基から選ばれた少なくとも1種の基を有していることが好ましい。この場合、該ポリシロキサンは、該ポリシロキサンの全質量に対し、2質量%以上30質量%以下のアリール基、2質量%以上30質量%以下のアルキル基、2質量%以上50質量%以下のオキシアルキレン基及びシロキサン部分を含有するものであることが好ましい。前記シロキサン部分とは、−Si−O−Si−O−・・・で示される構造を有する部分である。該シロキサン部分は、29Si−固体NMR(商品名:CMX−300、Chemagnetics社製)を用い、測定試料を直径7.5mmのセラミック製プローブに挿入し、室温(25℃)にてCP/MAS法により測定した。測定試料としては、帯電部材の表面層から適当量採取し、これを粉砕したものを用いた。
【0022】
また、前記アリール基、アルキル基及びオキシアルキレン基の含有量総計は6〜70質量%とすることが好ましく、15〜50質量%とすることがより好ましい。
【0023】
また、上記のオキシアルキレン基を有するポリシロキサンは、さらに、フッ化アルキル基を有するものであることが好ましい。この場合、該ポリシロキサンは、該ポリシロキサンの全質量に対し、2質量%以上30質量%以下のアリール基、2質量%以上30質量%以下のアルキル基、2質量%以上50質量%以下のオキシアルキレン基、2質量%以上50質量%以下のフッ化アルキル基及びシロキサン部分を含有するものであることが好ましい。この場合、前記シロキサン部分とは、−Si−O−Si−O−・・・で示される構造を有する部分である。該シロキサン部分は、29Si−固体NMR(商品名:CMX−300、Chemagnetics社製)を用い、測定試料を直径7.5mmのセラミック製プローブに挿入し、室温(25℃)にてCP/MAS法により測定した。測定試料としては、帯電部材の表面層から適当量採取し、これを粉砕したものを用いた。
【0024】
また、前記アリール基、アルキル基、オキシアルキレン基及びフッ化アルキル基の含有量総計は8〜70質量%とすることが好ましく、15〜50質量%とすることがより好ましい。
【0025】
上記フッ化アルキル基としては、例えば、直鎖型または分岐型のアルキル基の水素原子の一部または全部をフッ素原子で置換したものが挙げられる。その中でも、炭素数6〜31の直鎖状のパーフルオロアルキル基が好ましい。
【0026】
本発明の帯電部材の表面層を構成する材料に含有させるオキシアルキレン基を有するポリシロキサンは、例えば、下記工程(I)及び(II)を経て得ることができる。
(I)加水分解性シラン化合物と、カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物とを加水分解によって縮合させる縮合工程
(II)上記カチオン重合可能な基を開裂させることにより、工程(I)により得られた加水分解性縮合物を架橋させる架橋工程
【0027】
上記工程(I)の縮合工程で、加水分解に用いる水の量は、上記工程(I)に用いる加水分解性シラン化合物の総量に対して30〜50質量%の範囲にあることが好ましい。
【0028】
また、上記加水分解性シラン化合物としては、置換及び無置換アリール基から選ばれた少なくとも一種の基を有する加水分解性シラン化合物を用いることが好ましい。これらのなかでは、下記式(1)で示される構造を有するアリール基を有する加水分解性シラン化合物が好適である。
【0029】
【化1】

【0030】
(式中、R11及びR12は、それぞれ独立に、置換または無置換のアルキル基を示し、Ar11は、アリール基を示す。aは、0以上、2以下の整数であり、bは、1以上、3以下の整数であり、a+b=3である。)
【0031】
上記式(1)中のアルキル基R11またはR12としては、メチル基、エチル基、プロピル基が好ましい。また、上記式(1)中のアリール基Ar11としては、フェニル基が好ましい。
【0032】
以下に上記式(1)で表されるアリール基を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。
(1−1):フェニルトリメトキシシラン
(1−2):フェニルトリエトキシシラン
(1−3):フェニルトリプロポキシシラン
【0033】
上記カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物としては、下記式(2)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物が好適である。
【0034】
【化2】

【0035】
(式中、R21及びR22は、それぞれ独立に、置換または無置換のアルキル基を示し、Z21は、2価の有機基を示し、Rc21は、カチオン重合可能な基を示す。dは、0以上、2以下の整数であり、eは、1以上、3以下の整数であり、d+e=3である。)
【0036】
上記式(2)中のカチオン重合可能な基Rc21は、開裂によってオキシアルキレン基を生成する、カチオン重合可能な有機基を意味し、例えば、エポキシ基やオキセタン基などの環状エーテル基、及び、ビニルエーテル基などが挙げられる。これらの中では、入手の容易性及び反応制御の容易性の観点から、エポキシ基であることが好ましい。
【0037】
上記式(2)中のアルキル基R21またはR22としては、炭素数1〜3の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、さらには、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0038】
上記式(2)中の2価の有機基Z21としては、例えば、アルキレン基及びアリーレン基などが挙げられる。これらの中では、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、さらにはエチレン基がより好ましい。
また、上記式(2)中のeは3であることが好ましい。上記式(2)中のdが2の場合、2個のR21は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、上記式(2)中のeが2または3の場合、2個または3個のR22は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0039】
以下に、上記式(2)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。
(2−1):グリシドキシプロピルトリメトキシシラン
(2−2):グリシドキシプロピルトリエトキシシラン
(2−3):エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン
(2−4):エポキシシクロヘキシルエチルトリエトキシシラン
【0040】
また、製造される帯電部材の表面の離型性を向上させる観点から、上記工程(I)において、アリール基を有する加水分解性シラン化合物及びカチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物だけでなく、第3の原料として、さらに下記式(3)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を併用することがより好ましい。下記式(3)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を用いることによって、得られるポリシロキサンは、フッ化アルキル基(パーフルオロアルキル基)を有するポリシロキサンとなる。
【0041】
【化3】

【0042】
(式中、R31及びR32は、それぞれ独立に、置換または無置換のアルキル基を示し、Z31は、2価の有機基を示し、Rf31は、炭素数1〜11のフッ化アルキル基を示す。fは、0〜2の整数であり、gは、1〜3の整数であり、f+g=3である。)
【0043】
上記式(3)中のR31及びR32のアルキル基としては、炭素数1〜3の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、さらにはメチル基、エチル基がより好ましい。また、上記式(3)中のZ31の2価の有機基としては、例えば、アルキレン基及びアリーレン基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜6のアルキレン基が好ましく、さらにはエチレン基がより好ましい。また、上記式(3)中のRf31の炭素数1〜31のフッ化アルキル基としては、処理性の観点から、特に炭素数6〜11の直鎖状のフッ化アルキル基が好ましい。
【0044】
上記式(3)中のgは3であることが好ましい。また、上記式(3)中のfが2の場合、2個のR31は同一であってもよく、異なっていてもよい。上記式(3)中のgが2または3の場合、2個または3個のR32は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0045】
以下に、上記式(3)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。
(3−1):CF3−(CH22−Si−(OR)3
(3−2):F(CF22−(CH22−Si−(OR)3
(3−3):F(CF24−(CH22−Si−(OR)3
(3−4):F(CF26−(CH22−Si−(OR)3
(3−5):F(CF28−(CH22−Si−(OR)3
(3−6):F(CF210−(CH22−Si−(OR)3
上記式(3−1)〜(3−6)中のRはメチル基またはエチル基を示す。
【0046】
上記式(3−1)〜(3−6)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の中でも、式(3−4)〜(3−6)で示されるものが好ましい。
【0047】
上記アリール基を有する加水分解性シラン化合物、上記カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物及び上記フッ化アルキル基を有する加水分解性シラン化合物は、それぞれ、1種のみ用いてもよいし、2種以上用いてもよい。
【0048】
本発明においては、上記工程(I)において、上述の加水分解性シラン化合物以外の加水分解性シランをさらに併用してもよい。上述の加水分解性シラン化合物以外の加水分解性シランとしては、例えば、下記式(4)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物が挙げられる。
【0049】
【化4】

【0050】
(式中、R41は、フェニル基置換のアルキル基もしくは無置換のアルキル基、または、アルキル基置換のアリール基もしくは無置換のアリール基を示す。R42は、飽和または不飽和の1価の炭化水素基を示す。hは、0〜3の整数であり、kは、1〜4の整数であり、h+k=4である。)
【0051】
上記式(4)中のR41のフェニル基置換のアルキル基もしくは無置換のアルキル基のアルキル基としては、炭素数1〜21の直鎖状のアルキル基が好ましい。上記式(4)中のR41のアルキル基置換のアリール基もしくは無置換のアリール基のアリール基としては、フェニル基が好ましい。
【0052】
上記式(4)中のhは1〜3の整数であることが好ましく、特には1であることがより好ましい。また、上記式(4)中のkは1〜3の整数であることが好ましく、特には3であることがより好ましい。
【0053】
上記式(4)中のR42の飽和または不飽和の1価の炭化水素基としては、例えば、アルキル基、アルケニル基及びアリール基などが挙げられる。これらの中でも、炭素数1〜3の直鎖状または分岐鎖状のアルキル基が好ましく、さらにはメチル基、エチル基、n−プロピル基がより好ましい。
【0054】
上記式(4)中のhが2または3の場合、2個または3個のR41は同一であってもよく、異なっていてもよい。また、上記式(4)中のkが2、3または4の場合、2個、3個または4個のR42は同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0055】
以下に、上記式(4)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物の具体例を示す。
(4−1):テトラメトキシシラン
(4−2):テトラエトキシシラン
(4−3):テトラプロポキシシラン
(4−4):メチルトリメトキシシラン
(4−5):メチルトリエトキシシラン
(4−6):メチルトリプロポキシシラン
(4−7):エチルトリメトキシシラン
(4−8):エチルトリエトキシシラン
(4−9):エチルトリプロポキシシラン
(4−10):プロピルトリメトキシシラン
(4−11):プロピルトリエトキシシラン
(4−12):プロピルトリプロポキシシラン
(4−13):ヘキシルトリメトキシシラン
(4−14):ヘキシルトリエトキシシラン
(4−15):フェニルトリプロポキシシラン
(4−16):デシルトリメトキシシラン
(4−17):デシルトリエトキシシラン
(4−18):デシルトリプロポキシシラン
【0056】
次に、本発明の帯電部材の構成について、上記ポリシロキサンを含有する表面層の具体的な形成方法を含めて説明する。
【0057】
図1に、本発明の帯電部材の一例である帯電ローラの、軸方向に対し垂直な面における断面模式図を示す。図1中、101は支持体であり、102は導電性弾性層であり、103は表面層である。電子写真感光体と帯電部材との当接ニップを十分に確保する観点から、帯電部材は、例えば図1に示したように、支持体101と表面層103との間に導電性弾性層102を設けた構成であることが好ましい。換言すれば、帯電部材は、支持体101、該支持体101上に形成された導電性弾性層102、及び、該導電性弾性層102上に形成された表面層103を有するものであることが好ましい。また、支持体101と導電性弾性層102との間や導電性弾性層102と表面層103との間に別の層を1つまたは2つ以上設けてもよい。
【0058】
以下、支持体、該支持体上に形成された導電性弾性層、及び、該導電性弾性層上に形成された表面層を有する帯電部材を例にとって説明する。
【0059】
帯電部材の支持体としては、導電性を有していればよく(導電性支持体)、例えば、鉄、銅、ステンレス、アルミニウム、アルミニウム合金、ニッケルなどの金属製(合金製)の支持体を用いることができる。また、これらの表面に耐傷性付与を目的として、導電性を損なわない範囲で、メッキ処理などの表面処理を施してもよい。
【0060】
導電性弾性層を構成する材料として、従来の帯電部材の弾性層(導電性弾性層)に用いられているゴムや熱可塑性エラストマーなどの弾性体を1種または2種以上用いることができる。
【0061】
ゴムとしては、例えば、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム、アクリロニトリルゴム、エピクロルヒドリンゴム及びアルキルエーテルゴムなどが挙げられる。
【0062】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー及びオレフィン系エラストマーなどが挙げられる。スチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、三菱化学(株)製「ラバロン」、クラレ(株)製「セプトンコンパウンド」などが挙げられる。オレフィン系エラストマーの市販品としては、例えば、三菱化学(株)製の「サーモラン」、三井化学(株)製の「ミラストマー」、住友化学(株)製の「住友TPE」及びアドバンストエラストマーシステムズ社製の「サントプレーン」などが挙げられる。
【0063】
また、導電性弾性層には、導電剤を適宜使用することによって、その導電性を所定の値にすることができる。導電性弾性層の電気抵抗は、導電剤の種類及び使用量を適宜選択することによって調整することができ、その電気抵抗の好適な範囲は102〜108Ωであり、より好適な範囲は103〜106Ωである。
【0064】
導電性弾性層に用いられる導電剤としては、例えば、陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性イオン界面活性剤、帯電防止剤、電解質などが挙げられる。
【0065】
陽イオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム、ステアリルトリメチルアンモニウム、オクタドデシルトリメチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム及び変性脂肪酸・ジメチルエチルアンモニウムなどの第四級アンモニウム塩が挙げられる。第四級アンモニウム塩として、具体的には、過塩素酸塩、塩素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、エトサルフェート塩及びハロゲン化ベンジル塩(臭化ベンジル塩や塩化ベンジル塩など)などが挙げられる。
【0066】
陰イオン性界面活性剤としては、例えば、脂肪族スルホン酸塩、高級アルコール硫酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加硫酸エステル塩、高級アルコール燐酸エステル塩及び高級アルコールエチレンオキサイド付加燐酸エステル塩が挙げられる。
【0067】
帯電防止剤としては、例えば、高級アルコールエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル及び多価アルコール脂肪酸エステルなどの非イオン性帯電防止剤などが挙げられる。
【0068】
電解質としては、例えば、周期律表第1族の金属(LiやNaやKなど)の塩(第四級アンモニウム塩など)が挙げられる。周期律表第1族の金属の塩として、具体的には、LiCF3SO3、NaClO4、LiAsF6、LiBF4、NaSCN、KSCN及びNaClなどが挙げられる。
【0069】
また、導電剤として、周期律表第2族の金属(CaやBaなど)の塩(Ca(ClO42など)やこれから誘導される帯電防止剤が、イソシアネート(一級アミノ基や二級アミノ基など)と反応可能な活性水素を有する基(水酸基やカルボキシル基など)を1つ以上持ったものを用いることもできる。また、これらと多価アルコール(1,4−ブタンジオール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)もしくはその誘導体との錯体や、これらとモノオール(エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルなど)との錯体などのイオン導電性導電剤を用いることもできる。
【0070】
また、導電剤として、ケッチェンブラックEC、アセチレンブラック、ゴム用カーボン、酸化処理を施したカラー(インク)用カーボン、及び、熱分解カーボンなどの導電性のカーボンを用いることもできる。ゴム用カーボンとして、具体的には、Super Abrasion Furnace(SAF:超耐摩耗性)、Intermediate Super Abrasion Furnace(ISAF:準超耐摩耗性)、High Abrasion Furnace(HAF:高耐摩耗性)、Fast Extruding Furnace(FEF:良押し出し性)、General Purpose Furnace(GPF:汎用性)、Semi Rein Forcing Furnace(SRF:中補強性)、Fine Thermal(FT:微粒熱分解)及びMedium Thermal(MT:中粒熱分解)などの各ゴム用カーボンが挙げられる。また、天然グラファイト及び人造グラファイトなどのグラファイトを用いることもできる。また、導電性弾性層用の導電剤として、酸化スズ、酸化チタン及び酸化亜鉛などの金属酸化物や、ニッケル、銅、銀及びゲルマニウムなどの金属を用いることもできる。また、ポリアニリン、ポリピロール及びポリアセチレンなどの導電性ポリマーを用いることもできる。
【0071】
また、導電性弾性層には、無機または有機の充填剤や架橋剤を添加してもよい。
充填剤としては、例えば、シリカ(ホワイトカーボン)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、クレー、タルク、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム及び硫酸アルミニウムなどが挙げられる。架橋剤としては、例えば、イオウ、過酸化物、架橋助剤、架橋促進剤、架橋促進助剤、架橋遅延剤などが挙げられる。
【0072】
導電性弾性層の硬度は、帯電部材と被帯電体である電子写真感光体とを当接させた際の帯電部材の変形を抑制する観点から、アスカーC硬度で70度以上であることが好ましく、特には73度以上であることがより好ましい。本発明において、アスカーC硬度の測定は、測定対象の表面にアスカーC型硬度計(高分子計器(株)製)の押針を当接し、1000g加重の条件で行った。
【0073】
以下、表面層の具体的な形成方法の一例について説明する。
まず、アリール基を有する加水分解性シラン化合物及びカチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物、並びに、必要に応じて上記の他の加水分解性シラン化合物を水の存在下で加水分解反応させることによって加水分解性縮合物を得る(工程I)。加水分解反応の際、温度やpHなどを制御することで、所望の縮合度の加水分解性縮合物を得ることができる。
【0074】
また、加水分解反応の際、加水分解反応の触媒として金属アルコキシドなどを利用し、縮合度を制御してもよい。金属アルコキシドとしては、例えば、アルミニウムアルコキシド、チタニウムアルコキシド及びジルコニアアルコキシドなど、ならびに、これらの錯体(アセチルアセトン錯体など)が挙げられる。
【0075】
また、加水分解性縮合物を得る際の、アリール基を有する加水分解性シラン化合物及びカチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物の配合割合は、得られるポリシロキサン中の基及びシロキサン部分の含有量が次の範囲となることが好ましい。
・アリール基の含有量 :2〜30質量%
・アルキル基の含有量 :2〜30質量%
・オキシアルキレン基の含有量 :2〜50質量%
上記含有量は、いずれもポリシロキサン化合物の全質量に対する百分率を示し、通常、前記アリール基、アルキル基及びオキシアルキレン基の含有量総計は6〜70質量%とすることが好ましく、15〜50質量%とすることがより好ましい。また、通常、アリール基を有する加水分解性シラン化合物を、全加水分解性シラン化合物に対して10〜50mol%の範囲になるように配合することがより好ましい。
【0076】
また、上記工程(I)において、上記式(3)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物を併用する場合には、得られるポリシロキサン中の基及び部分の含有量が次の範囲となることが好ましい。
・アリール基の含有量 :2〜30質量%
・アルキル基の含有量 :2〜30質量%
・オキシアルキレン基の含有量 :2〜50質量%
・フッ化アルキル基の含有量 :2〜50質量%
上記含有量は、いずれもポリシロキサン化合物の全質量に対する百分率を示し、通常、前記アリール基、アルキル基、オキシアルキレン基及びフッ化アルキル基の含有量総計は8〜70質量%とすることが好ましく、15〜50質量%とすることがより好ましい。また、通常、カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物とフッ化アルキル基を含有する加水分解性シラン化合物とのモル比は10:1〜1:10の範囲になるように配合することがより好ましい。
【0077】
次に、得られた加水分解性縮合物を含む表面層用塗布液を調製し、表面層の直下となる層(例えば導電性弾性層。支持体の場合もある。)の上に、調製した表面層用塗布液を塗布する。
【0078】
表面層用塗布液を調製する際には、塗布性向上のために、加水分解性縮合物以外に、適当な溶剤を用いてもよい。適当な溶剤としては、例えば、エタノール及び2−ブタノールなどのアルコールや、酢酸エチルや、メチルエチルケトンなど、あるいは、これらを混合したものが挙げられる。また、表面層用塗布液を導電性弾性部材(導電性弾性層)上に塗布する際には、ロールコーターを用いた塗布、浸漬塗布、リング塗布などの方法を採用することができる。
【0079】
次に、導電性弾性部材(導電性弾性層)上に塗布された表面層用塗布液層に活性エネルギー線を照射する。すると、表面層用塗布液層に含まれる加水分解性縮合物中のカチオン重合可能な基は開裂し、これによって該表面塗布液層中の加水分解性縮合物を架橋させることができる。加水分解性縮合物は架橋によって硬化し、これを乾燥すると表面層が形成される。
【0080】
活性エネルギー線としては、紫外線が好ましい。
上記活性エネルギー線照射時に発生した熱により、導電性弾性部材の導電性弾性層が膨張し、その後冷却によって収縮した際、表面層がこの膨張・収縮に十分に追従しないと、シワやクラックが多い表面層になってしまう場合がある。架橋反応に紫外線を用いた場合、短時間(15分以内)に加水分解性縮合物を架橋することができる上、熱の発生も少なく、表面層のシワやクラックが発生しにくい。また、帯電部材の置かれる環境が温湿度の変化が急激な環境である場合、その温湿度の変化による導電性弾性層の膨張・収縮に表面層が十分に追従しないと、表面層にシワやクラックが発生することがある。架橋反応を熱の発生が少ない紫外線によって行えば、導電性弾性層と表面層との密着性が高まり、導電性弾性層の膨張・収縮に表面層が十分に追従できるようになるため、環境の温湿度の変化による表面層のシワやクラックも抑制することができる。また、架橋反応を紫外線によって行えば、熱履歴による導電性弾性層の劣化を抑制することができるため、導電性弾性層の電気的特性の低下を抑制することもできる。
【0081】
紫外線の照射には、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、低圧水銀ランプ、エキシマUVランプなどを用いることができ、これらのうち、紫外線の波長が150〜480nmの光を豊富に含む紫外線源が好ましく用いられる。
【0082】
なお、紫外線の積算光量は、以下のように定義される。
紫外線積算光量[mJ/cm2]=紫外線強度[mW/cm2]×照射時間[s]
紫外線の積算光量の調節は、照射時間や、ランプ出力や、ランプと被照射体との距離などで行うことが可能である。また、照射時間内で積算光量に勾配をつけてもよい。低圧水銀ランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、ウシオ電機(株)製の紫外線積算光量計UIT−150−A(商品名)やUVD−S254(商品名)を用いて測定することができる。エキシマUVランプを用いる場合、紫外線の積算光量は、ウシオ電機(株)製の紫外線積算光量計UIT−150−A(商品名)やVUV−S172(商品名)を用いて測定することができる。
【0083】
また、架橋反応の際、架橋効率向上の観点から、カチオン重合触媒(重合開始剤)を共存させておくことが好ましい。例えば、活性エネルギー線によって賦活化されるルイス酸のオニウム塩に対してエポキシ基は高い反応性を示すことから、上記のカチオン重合可能な基がエポキシ基である場合、カチオン重合触媒としては、ルイス酸のオニウム塩を用いることが好ましい。
【0084】
その他のカチオン重合触媒としては、例えば、ボレート塩、イミド構造を有する化合物、トリアジン構造を有する化合物、アゾ化合物、過酸化物などが挙げられる。各種カチオン重合触媒の中でも、感度、安定性及び反応性の観点から、芳香族スルホニウム塩や芳香族ヨードニウム塩が好ましい。特に、ビス(4−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム塩や、下記式(5)で示される構造を有する化合物(商品名:アデカオプトマ−SP150、旭電化工業(株)製)や、下記式(6)で示される構造を有する化合物(商品名:イルガキュア261、チバスペシャルティーケミカルズ社製)が好ましい。
【0085】
【化5】

【0086】
【化6】

【0087】
カチオン重合触媒の使用量は、加水分解性縮合物に対して0.1〜3質量%であることが好ましい。
【0088】
また、帯電部材の表面へのトナーや外添剤の固着を抑制する観点から、帯電部材の表面(=表面層の表面)の粗さ(Rzjis;JIS B 0601:2001に準拠して測定)は10μm以下であることが好ましく、7μm以下であることがより好ましく、5μm以下であることがより一層好ましい。
【0089】
また、電子写真感光体との当接ニップを十分に確保する観点から、帯電部材の表面層の弾性率は5000MPa以下であることが好ましい。一方、一般的に、表面層の弾性率は小さくなるほど架橋密度が小さくなる傾向にある。このため、帯電部材に導電性弾性層を設ける場合には、導電性弾性層中の低分子量成分が帯電部材の表面にブリードアウトして電子写真感光体の表面を汚染してしまうのを抑制する観点から、表面層の弾性率は100MPa以上であることが好ましい。
【0090】
また、表面層の層厚は厚いほど低分子量成分のブリードアウトを抑制する効果が大きくなる傾向にあるため、帯電部材に導電性弾性層を設ける場合には、表面層の層厚は0.1μm以上であることが好ましく、0.2μm以上であることがより好ましい。一方、表面層の層厚は薄いほど帯電部材の帯電能が向上する傾向にあるため、表面層の層厚は1.0μm以下であることが好ましく、0.6μm以下であることがより好ましい。
【0091】
図2に、本発明の帯電部材を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の一例の概略構成を示す。図2において、1は円筒状の電子写真感光体であり、軸2を中心に矢印方向に所定の周速度で回転駆動される。電子写真感光体としては、支持体及び支持体上に形成された無機感光層または有機感光層を有するものが一般的である。また、電子写真感光体は表面層として電荷注入層を有するものであってもよい。
【0092】
回転駆動される電子写真感光体1の表面は、本発明の帯電部材3(図2においてはローラ形状の帯電部材)により、正または負の所定電位に均一に帯電される。次いで、スリット露光やレーザービーム走査露光などの露光手段(不図示)から出力される露光光(画像露光光)4を受ける。こうして電子写真感光体1の表面に、目的の画像に対応した静電潜像が順次形成されていく。
【0093】
帯電部材3により電子写真感光体1の表面を帯電する際、帯電部材3には、電圧印加手段(不図示)から直流電圧のみの電圧あるいは直流電圧に交流電圧を重畳した電圧が印加される。帯電部材に直流電圧のみの電圧を印加するための電圧印加手段を有する電子写真装置に、本発明の帯電部材を使用することが好ましい。直流電圧としては、例えば、−1200Vの電圧を印加すればよい。また、その際の暗部電位は−600V程度、明部電位は、−350V程度となることが好ましい。
【0094】
電子写真感光体1の表面に形成された静電潜像は、現像手段5の現像剤に含まれるトナーにより現像(反転現像または正規現像)されてトナー像となる。次いで、電子写真感光体1の表面に形成担持されているトナー像が、転写手段(転写ローラなど)6からの転写バイアスによって、転写材(紙など)Pに順次転写されていく。このとき、転写材Pは、転写材供給手段(不図示)から電子写真感光体1と転写手段6との間(当接部)に電子写真感光体1の回転と同期して取り出されて給送される。
【0095】
現像手段としては、例えば、ジャンピング現像手段、接触現像手段及び磁気ブラシ手段などが挙げられるが、トナーの飛散性改善の観点から、接触現像手段が好ましい。
【0096】
また、転写ローラとしては、支持体上に中抵抗に調整された弾性樹脂層を被覆してなるものが例示される。
【0097】
トナー像の転写を受けた転写材Pは、電子写真感光体1の表面から分離されて定着手段8へ導入されて像定着を受けることにより画像形成物(プリント、コピー)として装置外へプリントアウトされる。両面画像形成モードや多重画像形成モードの場合、この画像形成物は、不図示の再循環搬送機機構に導入されて転写部へ再導入される。
【0098】
トナー像転写後の電子写真感光体1の表面は、クリーニング手段(クリーニングブレードなど)7によって転写残りの現像剤(トナー)の除去を受けて清浄面化される。電子写真感光体1の表面は、さらに前露光手段(不図示)からの前露光光(不図示)により除電処理された後、繰り返し画像形成に使用される。なお、帯電手段が接触帯電手段である場合は、前露光は必ずしも必要ではない。
【0099】
上述の電子写真感光体1、帯電部材3、現像手段5、転写手段6及びクリーニング手段7などの構成要素のうち、複数のものを容器に納めてプロセスカートリッジとして一体に保持して構成してもよい。このプロセスカートリッジは複写機やレーザービームプリンターなどの電子写真装置本体に対して着脱自在に装着可能な構成としてもよい。例えば、図2に示したように、電子写真感光体1、帯電部材3、現像手段5及びクリーニング手段7とを一体に支持してカートリッジ化してもよい。また、例えば、図2に示したように、電子写真装置本体のレールなどの案内手段10を用いて電子写真装置本体に着脱自在なプロセスカートリッジ9としてもよい。
【実施例】
【0100】
以下に、具体的な実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「質量部」を意味する。
【0101】
〈実施例1〉
(帯電ローラの作製)
下記原材料を用意した。
・エピクロルヒドリンゴム 100部
(商品名:エピクロマーCG105、ダイソー(株)製)
・カーボン 2部
(商品名:EC600JD、ライオン(株)製)
・カーボン 20部
(商品名:HS−500、旭カーボン(株)製)
・ベントナイト 5部
(商品名:ベンゲルSH、ホージュン(株)製)
・酸化亜鉛 5部
この原材料を、オープンロールで30分間混練した。30分間混練したものに、下記加硫促進剤及び加硫剤を加え、オープンロールでさらに15分間混練することによって、混練物Iを得た。
・加硫促進剤(ジ−2−ベンゾチアゾリルジスルフィド) 1.0部
(商品名:ノクセラーDMーP、大内新興化学(株)製)
・加硫促進剤(テトラエチルチウラムジスルフィド) 1.0部
(商品名:ノクセラーTET−G、大内新興化学(株)製)
・加硫剤(硫黄) 1.2部
【0102】
次に、混練物Iを、ゴム押出機で、外径9.4mm、内径5.4mmの円筒形に押し出し、250mmの長さに裁断し、加硫缶で160℃の水蒸気で30分間1次加硫することによって、導電性弾性層用1次加硫チューブIを得た。
【0103】
一方、円柱形の鋼製の支持体(直径6mm、長さ256mm;表面をニッケルメッキ加工)を用意した。この支持体の円柱面軸方向中央を挟んで両側115.5mmまでの領域(あわせて軸方向幅231mmの領域)に、金属及びゴムを含む熱硬化性接着剤(商品名:メタロックU−20、(株)東洋化学研究所製)を塗布した。これを80℃で30分間乾燥した後、さらに120℃で1時間乾燥した。この支持体を、上記導電性弾性層用1次加硫チューブIの中に挿入し、160℃で1時間加熱して導電性弾性層用1次加硫チューブIを2次加硫し、熱硬化性接着剤を硬化した。このようにして、表面研磨前の導電性弾性ローラIを得た。
【0104】
次に、表面研磨前の導電性弾性ローラIの導電性弾性層部分(ゴム部分)の両端を切断し、導電性弾性層部分の軸方向幅を231mmとした。さらに、導電性弾性層部分の表面を回転砥石で研磨することによって、導電性弾性ローラ(表面研磨後の導電性弾性ローラ)Iを得た。この導電性弾性ローラIは、端部直径8.2mm、中央部直径8.5mmのクラウン形状の導電性弾性層を有しており、この導電性弾性層の表面の十点平均粗さ(Rzjis)は5.5μm、振れは28μmであった。また、導電性弾性層のアスカーC硬度は78度であった。
【0105】
上記十点平均粗さ(Rzjis)はJIS B 0601:2001に準拠して測定した。
【0106】
また、振れの測定は、ミツトヨ(株)製高精度レーザー測定機LSM−430v(商品名)を用いて行った。詳しくは、該測定機を用いて外径を測定し、最大外径値と最小外径値の差を外径差振れとし、この測定を5点で行い、5点の外径差振れの平均値を被測定物の振れとした。
【0107】
また、上記アスカーC硬度の測定は、前述したように、測定対象の表面にアスカーC型硬度計(高分子計器(株)製)の押針を当接し、1000g加重の条件で行った。
【0108】
次に、下記原料を混合した後、室温で攪拌し、次いで2時間加熱還流(120℃)を行うことによって、加水分解性シラン化合物の縮合物Iを得た。
・フェニルトリエトキシシラン(PhTES ) 42.12g(0.175mol)
(加水分解性シラン化合物総量に対して54.75mol%相当)
・グリシドキシプロピルトリエトキシシラン(GPTES)
16.26g(0.058mol)
・ヘキシルトリメトキシシラン(HETMS ) 13.21g(0.064mol)
・トリデカフルオロ−1,1,2,2,テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン(FTS、パーフルオロアルキル基の炭素数6) 11.42g(0.013mol)
・コロイダルアルミナ 24.23g
(10.0質量%(加水分解性シラン化合物が全て脱水縮合したと仮定した時のポリシロキサン固形分総量に対する質量%)、(Al23・H2O 商品名;アルミナゾル-520 分散溶媒;水 固形分量(質量% Al23として)=20〜22 製造元;日産化学工業(株))
・水 25.93g
・エタノール 66.70g
【0109】
この縮合物Iを2−ブタノール/エタノールの混合溶剤に添加することによって、固形分7質量%の縮合物含有アルコール溶液Iを調製した。この縮合物含有アルコール溶液I100gに対して光カチオン重合開始剤として芳香族スルホニウム塩(商品名:アデカオプトマーSP−150、旭電化工業(株)製)を0.35g添加した。さらにエタノールでこれを希釈することによって、固形分2質量%の表面層用塗布液Iを調製した。
【0110】
次に、導電性弾性ローラ(表面研磨後の導電性弾性ローラ)Iの導電性弾性層上に表面層用塗布液Iをリング塗布(吐出量:0.008ml/s(リング部のスピード:30mm/s、総吐出量:0.064ml))した。そして、導電性弾性層上にリング塗布した表面層用塗布液Iに254nmの波長の紫外線を積算光量が8500mJ/cm2になるように照射することによって、表面層用塗布液Iを硬化(架橋反応による硬化)させた。この硬化させたものを数秒間(2〜3秒間)放置して乾燥させることによって表面層を形成した。紫外線の照射には、ハリソン東芝ライティング(株)製の低圧水銀ランプを用いた。紫外線の照射によってグリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ基が開裂し、縮合物Iの架橋反応が生じたと考えられる。
【0111】
以上のようにして、支持体、該支持体上に形成された導電性弾性層、及び、該導電性弾性層上に形成された表面層(表面層用塗布液Iを用いて形成したポリシロキサンを含有する層)を有する帯電ローラを作製した。この帯電ローラを、帯電ローラIとする。
【0112】
〈実施例2〉
コロイダルアルミナを48.45g(20.0質量%(加水分解性シラン化合物が全て脱水縮合したと仮定した時のポリシロキサン固形分総量に対する質量%))に、エタノールを60.64gに変えたこと以外は、実施例1と同様にして表面層用塗布液IIを調整して、帯電ローラIIを得、導電性弾性層の物性を測定した。
【0113】
〈実施例3〉
コロイダルアルミナを用いなかったこと及びエタノールの使用量を69.31gとしたこと以外は実施例1と同様の原料を用い、室温で攪拌し、次いで24時間加熱還流(120℃)を行うことによって、加水分解性性シラン化合物の縮合物を得た。
【0114】
この縮合物に、コロイダルシリカ(SiO2 商品名;PL-2L-IPA 分散溶媒;2-プロパノ-ル 固形分量(質量%)=24.9 製造元;扶桑化学工業(株))20.35g(10.0質量%(加水分解性シラン化合物が全て脱水縮合したと仮定した時のポリシロキサン固形分総量に対する質量%))を加えることにより、縮合物IIIを得た。
【0115】
この縮合物IIIを用いたこと以外は実施例1と同様の方法で表面層用塗布液IIIを調製し、実施例1と同様にして作製した導電性弾性ローラ(表面研磨後の導電性弾性ローラ)Iに実施例1と同様にして塗布・硬化して、帯電ローラIIIを得、実施例1と同様にして導電性弾性層の物性を測定した。
【0116】
〈実施例4〉
コロイダルシリカを40.70g(20.0質量%(加水分解性シラン化合物が全て脱水縮合したと仮定した時のポリシロキサン固形分総量に対する質量%))に変えたこと以外は、実施例3と同様にして、帯電ローラIVを得、導電性弾性層の物性を測定した。
【0117】
〈実施例5〉
コロイダルシリカを81.40g(40.0質量%(加水分解性シラン化合物が全て脱水縮合したと仮定した時のポリシロキサン固形分総量に対する質量%))に変えたこと以外は、実施例3と同様にして、帯電ローラVを得、導電性弾性層の物性を測定した。
【0118】
〈比較例1〉
・フェニルトリエトキシシラン(PhTES) 56.16g(0.234mol)
・ヘキシルトリメトキシシラン(HeTMS) 13.21g(0.064mol)
・トリデカフルオロ−1,1,2,2,テトラヒドロオクチルトリエトキシシラン(FT
S、パーフルオロアルキル基の炭素数6) 11.42g(0.022mol)
・水 25.93g
・エタノール 61.50g
上記原料を混合した後、室温で攪拌し、次いで24時間加熱還流(100℃)を行うことによって、加水分解性シラン化合物の縮合物CIを得たこと、及び、この縮合物Iを用いたこと以外は実施例1と同様にして、帯電ローラCIを得、導電性弾性層の物性を測定した。
【0119】
〈比較例2〉
フッ素樹脂ディスパージョン(テトラフルオロエチレン-パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(以下、PFAと表す。)(商品名;AD-2CR水性ディスパージョン 固形分濃度=45〜50質量% 比重=1.4 粘度(25℃・mPa・s)=250〜500 製造元;ダイキン工業(株))100gに、実施例3で用いたコロイダルシリカを19・08g(10質量%(PFA固形分総量に対する質量%))混合し塗布液を得たこと、及び、この塗布液を用い、スプレー法により、膜厚が5μmになるように塗布し、320℃で40分焼成して、表面層を形成したこと以外は実施例1と同様にして帯電ローラCIIを得、導電性弾性層の物性を測定した。
表1に実施例1〜5及び比較例1、2の表面層の形成に用いた原料、それらの使用量等を示す。
【0120】
【表1】

【0121】
(帯電ローラの物性の測定)
上記実施例及び比較例の帯電ローラの物性を、以下に示す方法で測定した。
(1)表面層における無機微粒子の平均粒子径
帯電ローラの表面層における無機微粒子の平均粒子径は、上記の方法によって観察・測定した。得られた結果は表2に示した。
【0122】
(2)表面層における無機微粒子の占有表面積%
帯電ローラの表面層の表面における無機微粒子の占有表面積%は、上記の方法によって観察・測定した。得られた結果は表2に示した。
【0123】
(3)無機微粒子の組成
無機微粒子の組成は、粉末X線回折装置(商品名;TTRII 製造元;(株)リガク)に平均粒子径及び占有表面積%を測定した時と同様の前述のサンプル片を組み込み、50KV×300mAの条件でX線を発生させ、CuKα線の平行ビームをサンプルに照射してX線回折スペクトルを測定することによって同定した。得られた結果は、表1に示した。
【0124】
(4)表面層の弾性率
帯電ローラの表面層の弾性率は、表面皮膜物性試験機(商品名:フィッシャースコープH100V(商品名);フィッシャーインストルメンツ社製)を用いて測定した。圧子を測定対象の表面から1μm/7sの速度で進入させたときの値を弾性率とした。なお、弾性率測定用のサンプルには、アルミシート上に上記表面層用塗布液を、硬化後の膜厚が10μm以上になるように塗布し、帯電ローラと同条件でUV硬化させたものを使用した。得られた結果は、表2に示した。
【0125】
(5)表面層の層厚
帯電ローラの表面層の層厚は、帯電ローラの表面層付近を基層から採取したものをサンプル片として、表面層の断面側から白金蒸着を施したのち、走査型電子顕微鏡(商品名:S-4800;(株)日立ハイテクノロジーズ)に組み込んで観察・計測を行った。
得られた結果は、表2に示した。
【0126】
(6)表面層の十点平均粗さ
帯電ローラの表面層の十点平均粗さ(Rzjis)はJIS B 0601:2001に準拠して測定した。
得られた結果は、表2に示した。
【0127】
【表2】

【0128】
(7)ポリシロキサン中の官能基の含有量
10〜1000倍の光学顕微鏡下、光学顕微鏡に設置した3次元粗微動マイクロマニピュレーター((株)ナリシゲ製)を用い、帯電ローラの表面層から1mg程度の試料を採取した。採取した試料を、TG−MS法(TG装置にMS装置を直結)により、加熱時に発生する気体の質量数ごとの濃度変化を、重量変化と同時に、温度の関数として追跡した。測定の条件を表3に示す。
【0129】
【表3】

【0130】
上記条件で測定して得られたTG−DTG(Derivative thrmogravimetry)曲線によると、400〜500℃付近及び500〜650℃付近から、2段階の顕著な重量減少が認められた。
【0131】
ここで、400〜500℃で発生する気体について、質量数(m/z)31、43、58、59のオキシアルキレン基(グリシドキシプロピルトリエトキシシランのグリシドキシ基由来)由来のピーク、質量数(m/z)78(ベンゼン)、91(トルエン)などのアリール基由来のピーク、及び質量数(m/z)16、41などのアルキル基由来のピークが確認された。これらのピークから、上記400〜500℃の各温度で分解されポリシロキサンから発生した上記の各基に由来する気体成分の濃度を求めた。また、これらの各基に由来する気体成分の濃度と測定された重量減少率から、各温度で発生した上記の各基に由来する気体成分による重量減少率を求めた。これを上記400℃〜500℃にわったって積算し、ポリシロキサン中のオキシアルキレン基、アリール基及びアルキル基の含有量を求めた。
【0132】
また、500℃〜650℃で発生する気体について、質量数(m/z)51、69、119、131のフッ化アルキル基(トリデカフルオロ−1,1,2,2,テトラヒドロオクチルトリエトキシシランのフッ化アルキル基由来)由来のピークが確認された。これらのピークから、上記500℃〜650℃の各温度で分解されたポリシロキサンから発生したフッ化アルキル基に由来する気体成分の濃度を求めた。また、フッ化アルキル基に由来する気体成分の濃度と測定された重量減少率から、各温度で発生したフッ化アルキル基に由来する気体成分による重量減少率を求めた。これを上記500℃〜600℃の温度範囲にわたって積算し、ポリシロキサン中のフッ化アルキル基の含有量を求めた。
【0133】
残渣はポリシロキサン中のアルミナ微粒子などの無機微粒子及びシロキサン部分であると考えられる。
得られた、オキシアルキレン基、アリール基、アルキル基、フッ化アルキル基及びシロキサン部分と無機微粒子の含有量を表4示す。
【0134】
【表4】

【0135】
(帯電ローラの評価)
上記実施例及び比較例の帯電ローラを用いて、以下に示す評価を行った。
【0136】
まず、帯電ローラと電子写真感光体とを、これらを一体に支持するプロセスカートリッジEP-85(ブラック)(キヤノン(株)製、商品名)に組み込み、このプロセスカートリッジをA4紙縦出力用のレーザービームプリンターLBP−5500(キヤノン(株)製、商品名)に装着した。このレーザービームプリンターの現像方式は反転現像方式であり、転写材の出力スピードは47mm/sであり、画像解像度は600dpiである。
【0137】
なお、帯電ローラとともにプロセスカートリッジに組み込んだ電子写真感光体は、支持体上に層厚14μmの有機感光層を形成してなる有機電子写真感光体である。また、この有機感光層は、支持体側から電荷発生層と変性ポリアリレート(結着樹脂)を含有する電荷輸送層とを積層してなる積層型感光層であり、この電荷輸送層は電子写真感光体の表面層となっている。
【0138】
また、上記レーザービームプリンターに使用したトナーは、ワックス、荷電制御剤、色素、スチレン、ブチルアクリレート及びエステルモノマーを含む重合性単量体系を水系媒体中で懸濁重合して得られた粒子を含む、いわゆる、重合トナーである。このトナーは左記粒子にシリカ微粒子及び酸化チタン微粒子を外添してなるトナー粒子を含む重合トナーであって、そのガラス転移温度は63℃、体積平均粒子径は6μmである。
【0139】
画像出力は、30℃/80%RH環境下で行い、A4紙に印字率4%のE文字パターンを形成し、これを47mm/sのプロセススピードで3000枚出力した。
【0140】
(i)表面層の耐磨耗性
表面層の耐磨耗性は、初期の表面層の層厚と3000枚出力後の表面層の層厚を、上述したのと同じ方法で観察・計測を行い、層厚を比較することによって確認した。
得られた結果は、表5に示した。
【0141】
(ii)画像評価
画像評価は、表層膜の磨耗に起因するトナーの濃度差として現れるスジ状の画像不良(以下「縦スジ」と呼ぶ。)の発生を観察した。観察に使用した画像として、A4紙に、電子写真感光体の回転方向と垂直方向に幅1ドット、間隔2ドットの横線を描く画像(ハーフトーン画像)を用いた。この画像の1枚目出力時(初期)及び3000枚目出力時に得られた出力画像を目視することによって行った。
評価基準は以下のとおりである。
A:縦スジが全く出ていないもの。
B:縦スジが少量発生したもの。
C:縦スジが多量に発生したもの。
得られた評価結果は、表6に示した。
【0142】
【表5】

【0143】
【表6】

【0144】
以上の通り、本発明によれば、繰り返し使用しても優れた耐磨耗性を維持し得る帯電ローラ(帯電部材)、ならびに、該帯電ローラ(帯電部材)を有するプロセスカートリッジ及び電子写真装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0145】
【図1】本発明の帯電部材の一例である帯電ローラの、軸方向に対し垂直な面における断面模式図である。
【図2】本発明の帯電部材を有するプロセスカートリッジを備えた電子写真装置の概略構成の一例を示す図である。
【図3】本発明の帯電部材の表面層の表面における無機微粒子の占有表面積%の測定サンプルの一例を示す図である。
【図4】本発明の帯電部材の無機微粒子の平均粒子径の概念を示す図である。
【図5】本発明の帯電部材の無機微粒子の占有表面積%の概念を示す図である。
【符号の説明】
【0146】
1 電子写真感光体
2 軸
3 帯電部材
4 露光光
5 現像手段
6 転写手段(転写ローラ)
7 クリーニング手段(クリーニングブレード)
8 定着手段
9 プロセスカートリッジ
10 案内手段
P 転写材
101 支持体
102 導電性弾性層
103 表面層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オキシアルキレン基を有するポリシロキサンと、1nm以上500nm以下の平均粒子径を有する無機微粒子とを含有する材料からなる表面層を有する帯電部材。
【請求項2】
前記表面層の表面における前記無機微粒子の占有表面積%が、該表面層の全表面積に対し5%以上85%以下である請求項1に記載の帯電部材。
【請求項3】
前記無機微粒子が、アルミナまたはシリカからなる無機微粒子から選ばれた少なくとも1種の無機微粒子である請求項1または2に記載の帯電部材。
【請求項4】
前記ポリシロキサンが、さらに、置換及び無置換のアルキル基並びに置換及び無置換のアリール基から選ばれた少なくとも1種の基を有し、該ポリシロキサンの全質量に対して、2質量%以上30質量%以下のアリール基、2質量%以上30質量%以下のアルキル基、2質量%以上50質量%以下のオキシアルキレン基及びシロキサン部分を含有する請求項1乃至3のいずれかに記載の帯電部材。
【請求項5】
前記ポリシロキサンが、さらに、フッ化アルキル基を有し、該ポリシロキサンの全質量に対して、2質量%以上30質量%以下のアリール基、2質量%以上30質量%以下のアルキル基、2質量%以上50質量%以下のオキシアルキレン基、2質量%以上50質量%以下のフッ化アルキル基及びシロキサン部分を含有する請求項1乃至4のいずれかに記載の帯電部材。
【請求項6】
前記ポリシロキサンが、下記工程(I)及び(II)を経て得られるポリシロキサンである請求項1乃至5のいずれかに記載の帯電部材。
(I)アリール基を有する加水分解性シラン化合物と、カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物とを加水分解によって縮合させる縮合工程
(II)該カチオン重合可能な基を開裂させることにより、工程(I)により得られた加水分解性縮合物を架橋させる架橋工程
【請求項7】
前記工程(I)が、アリール基を有する加水分解性シラン化合物と、カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物と、さらに下記式(3)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物とを加水分解によって縮合させる工程である請求項6に記載の帯電部材。
【化1】

(式中、R31及びR32は、それぞれ独立に、置換または無置換のアルキル基を示し、Z31は、2価の有機基を示し、Rf31は、炭素数1以上、11以下のフッ化アルキル基を示す。fは0以上、2以下の整数であり、gは1以上、3以下の整数であり、f+g=3である。)
【請求項8】
前記アリール基を有する加水分解性シラン化合物が、下記式(1)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物である請求項6または7に記載の帯電部材。
【化2】

(式中、R11及びR12は、それぞれ独立に、置換または無置換のアルキル基を示し、Ar11は、アリール基を示す。aは0以上、2以下の整数であり、bは1以上、3以下の整数であり、a+b=3である。)
【請求項9】
前記カチオン重合可能な基を有する加水分解性シラン化合物が、下記式(2)で示される構造を有する加水分解性シラン化合物である請求項6乃至8のいずれかに記載の帯電部材。
【化3】

(式中、R21及びR22は、それぞれ独立に、置換または無置換のアルキル基を示し、Z21は、2価の有機基を示し、Rc21は、カチオン重合可能な基を示す。dは0以上、2以下の整数であり、eは1以上、3以下の整数であり、d+e=3である。)
【請求項10】
前記カチオン重合可能な基が、エポキシ基である請求項6乃至9のいずれかに記載の帯電部材。
【請求項11】
前記無機微粒子が、前記ポリシロキサンの質量に対し、5質量%以上80質量%以下含まれる請求項1乃至10のいずれかに記載の帯電部材。
【請求項12】
前記無機微粒子が、前記ポリシロキサン縮合前工程または縮合後に、加えられる請求項1乃至11のいずれかに記載の帯電部材。
【請求項13】
電子写真感光体と、該電子写真感光体の表面を帯電するための帯電部材とを一体に保持した、電子写真装置本体に着脱自在に装着可能なプロセスカートリッジにおいて、該帯電部材が請求項1乃至12のいずれかに記載の帯電部材であることを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項14】
前記帯電部材が、前記電子写真感光体に接触配置されている請求項13に記載のプロセスカートリッジ。
【請求項15】
電子写真感光体と、該電子写真感光体の表面を帯電するための帯電部材とを有する電子写真装置において、該帯電部材が請求項1乃至12のいずれかに記載の帯電部材であることを特徴とする電子写真装置。
【請求項16】
前記帯電部材が、前記電子写真感光体に接触配置されている請求項15に記載の電子写真装置。
【請求項17】
前記帯電部材に、直流電圧のみの電圧を印加するための電圧印加手段を有する請求項15または16に記載の電子写真装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−232876(P2007−232876A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−52225(P2006−52225)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】