説明

平版印刷版原版の製版方法

【課題】比較的中性の現像液にて、現像除去成分の版面再付着を抑制でき、かつ良好な着肉性および耐刷性を得るのに適した平版印刷版原版の製版方法を提供する。
【解決手段】下記工程を含むことを特徴とする製版方法。
(a)該画像形成層中に赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物、疎水性バインダーポリマー、及び特定のカルボン酸化合物を含む平版印刷版原版を準備する工程。
(b)該平版印刷版原版を画像様に露光する工程。
(c)前記露光済みの平版印刷版原版を、擦り部材を具備する自動処理機を用いて、アラビアガム及び澱粉からなる群から選ばれる少なくとも1種の水溶性ポリマーを含有する水溶液で現像する工程。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、平版印刷版原版の製版方法に関する。詳しくは、現像除去成分の版面再付着を抑制し、かつ、良好な印刷性能を得るのに適した平版印刷版原版の製版方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、平版印刷版は、印刷過程でインキを受容する親油性の画像部と、湿し水を受容する親水性の非画像部とからなる。平版印刷は、水と油性インキが互いに反発する性質を利用して、平版印刷版の親油性の画像部をインキ受容部、親水性の非画像部を湿し水受容部(インキ非受容部)として、平版印刷版の表面にインキの付着性の差異を生じさせ、画像部のみにインキを着肉させた後、紙などの被印刷体にインキを転写して印刷する方法である。
この平版印刷版を作製するため、従来、親水性の支持体上に親油性の感光性樹脂層(画像形成層)を設けてなる平版印刷版原版(PS版)が広く用いられている。通常は、平版印刷版原版を、リスフィルムなどの原画を通した露光を行った後、画像部に対応する画像形成層を残存させ、非画像部に対応する不要な画像形成層をpH12以上の強アルカリ性現像液又は有機溶剤含有現像液によって溶解除去し、親水性の支持体表面を露出させて非画像部を形成する方法により製版を行って、平版印刷版を得ている。
【0003】
従来の平版印刷版原版の製版工程においては、露光の後、不要な画像形成層を現像液などによって溶解除去する工程が必要であるが、このような付加的に行われる湿式処理を簡易化することが課題の一つとして挙げられている。特に、近年、地球環境への配慮から高pHのアルカリ現像処理に伴って排出される廃液の処分が産業界全体の大きな関心事となっているので、簡易化の一つとして、中性に近い水溶液で現像できることが一層強く望まれている。
【0004】
一方、近年、画像情報をコンピュータで電子的に処理し、蓄積し、出力する、デジタル化技術が広く普及してきており、このようなデジタル化技術に対応した新しい画像出力方式が種々実用されるようになってきている。これに伴い、レーザー光のような高収斂性の輻射線にデジタル化された画像情報を担持させて、その光で平版印刷版原版を走査露光し、リスフィルムを介することなく、直接平版印刷版を製造するコンピュータ・トゥ・プレート技術が注目されてきている。したがって、このような技術に適応した平版印刷版原版を得ることが重要な技術課題の一つとなっている。
【0005】
上述したような簡易化された製版作業を印刷環境下で行う場合、露光後の画像形成層が現像までの間に印刷環境の明室下で被ってしまう可能性があるため、明室又は黄色灯下で取り扱い可能な画像形成層及び光源が必要とされる。
そのようなレーザー光源として、波長760〜1200nmの赤外線を放射する半導体レーザー及びYAGレーザー等の固体レーザーは、高出力かつ小型のものを安価に入手できるようになったことから、極めて有用である。また、UVレーザーも用いることができる。
【0006】
上述のような背景から、現在、製版作業の簡易化とデジタル化の両面への適合が、従来にも増して、強く望まれるようになってきている。
【0007】
これに対して、例えば、特許文献1には、親水性結合剤中に疎水性熱可塑性重合体粒子を分散させた像形成層を親水性支持体上に設けた平版印刷版原版をガム液により現像する製版方法が記載されている。この製版方法では、上記平版印刷版原版を、赤外レーザーを用いた画像露光によって、疎水性熱可塑性重合体粒子を融着させて画像を形成させた後、ガム液により未露光部を除去することにより現像が可能となる。
しかし、このような微粒子の熱融着による画像形成を用いた平版印刷版原版をガム液で現像する方法は、感度や耐刷性が低く、かつ未露光部の除去された微粒子が現像液中で凝集・沈降しやすいために、現像除去成分が現像処理後の版面に再付着しインキ汚れが発生してしまうという問題を有していた。
【0008】
特許文献2には、(i)親水性支持体、及び(ii)ラジカル重合性エチレン性不飽和モノマー、ラジカル重合開始剤及び赤外吸収染料を含有する感光層からなる平版印刷版原版を、赤外レーザーで画像様に露光し、該感光層の未硬化部分をガム液で除去する平版印刷版原版の処理方法が記載されている。特許文献3では、ラジカル重合系感光層を赤外レーザー露光により硬化し、pH2〜10の水性現像液で未露光部を除去することからなる平版印刷版原版の現像方法が記載されている。また、特許文献4では、疎水性のバインダーポリマーを含有するラジカル重合系感光層を赤外レーザー露光により硬化し、界面活性剤を含む水溶液で現像することからなる平版印刷版原版の現像方法が記載されている。これらは画像形成にラジカル重合を用いており感度が高く、更にこれらのうち疎水性バインダーポリマーを用いたものは耐刷も高いが、疎水性バインダーポリマーを用いると現像除去成分が現像液中で凝集・沈降し、現像処理後の版面に再付着してインキ汚れが発生してしまう問題を依然として有していた。
また、疎水性バインダーポリマーを用いた場合は、pH2〜10の水性現像液での現像性が劣化してしまうという問題もあった。これに対しては、特許文献5で機上現像型の平版印刷版に関して記載されているように、低分子の親水性化合物を添加することで現像性を向上させることが出来るものの、画像部表面の親水性が高くなり着肉性が劣化してしまう問題を有していた。
【0009】
【特許文献1】欧州特許第1342568号明細書
【特許文献2】国際公開第05/111727号パンフレット
【特許文献3】米国特許第6902865号明細書
【特許文献4】特開2006−106700号公報
【特許文献5】特開2007−276454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従って、本発明の目的は、良好な現像性を維持しつつ、現像除去成分版面再付着を抑制し、かつ画像部の良好な着肉性および耐刷性を得るのに適した平版印刷版原版の製版方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は上記課題を解決するべく種々の検討を行った結果、画像形成層に疎水性のバインダーポリマーと特定のカルボン酸化合物を含有させ、現像液として、特定の水溶性ポリマーを含有する水溶液を用いることにより、上記課題を解決できることを見出し本発明に至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
【0012】
1.支持体上に、画像形成層を有する平版印刷版原版の製版方法であって、下記工程を含むことを特徴とする製版方法。
(a)該画像形成層中に赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物、疎水性バインダーポリマー、及び下記一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物を含む平版印刷版原版を準備する工程。
(b)該平版印刷版原版を画像様に露光する工程。
(c)前記露光済みの平版印刷版原版を、擦り部材を具備する自動処理機を用いて、アラビアガム及び澱粉からなる群から選ばれる少なくとも1種の水溶性ポリマーを含有する水溶液で現像する工程。
【0013】
【化1】

【0014】
ここで、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フェニル基、ハロゲン原子、アミノ基又はニトロ基を表し、これらの基の一部が炭素数4以下のアルキル基又はヒドロキシル基で置換されていてもよい。またR〜Rの少なくとも二つが結合して脂肪族又は芳香族環を形成してもよい。Xは−O−又は−NH−を表し、Yは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を表し、これらの基の一部が炭素数4以下のアルキル基やヒドロキシル基で置換されていてもよい。
【0015】
2.前記一般式(1)又は一般式(2)で表されるカルボン酸化合物が、N−フェニルイミノ二酢酸、N−フェニルイミノ二酢酸モノメチル、N−フェニルイミノ二酢酸モノアニリド及び(3,4−ジメトキシフェニルチオ)酢酸からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする1に記載の平版印刷版原版の製版方法。
3.前記水溶性ポリマーを含有する水溶液が、pH2〜9.8であることを特徴とする1又は2に記載の平版印刷版原版の製版方法。
4.前記水溶性ポリマーを含有する水溶液が、少なくともアラビアガムを含有することを特徴とする1〜3のいずれか一項に記載の平版印刷版原版の製版方法。
5.前記(c)の工程を2回以上連続して行うことを特徴とする1〜4のいずれか一項に記載の平版印刷版原版の製版方法。
6.前記(c)の工程の後に、更に(d)現像済みの平版印刷版表面を水洗する工程を含むことを特徴とする1〜5のいずれか一項に記載の平版印刷版原版の製版方法。
7.前記(c)の工程で使用される水溶性ポリマーを含有する水溶液が、フィルターを通して繰り返し使用されることを特徴とする1〜6のいずれか一項に記載の平版印刷版原版の製版方法。
【0016】
8.前記赤外線吸収剤がシアニン染料であり、重合開始剤がオニウム塩であることを特徴とする1〜7のいずれか一項に記載の平版印刷版原版の製版方法。
9.前記平版印刷版原版が、画像形成層上に保護層を有し、該保護層がアニオン変性ポリビニルアルコールを保護層の全固形分中10〜50質量%含有することを特徴とする1〜8のいずれか一項に記載の平版印刷版原版の製版方法。
10.前記平版印刷版原版が、支持体と画像形成層の間に、基板吸着性基と架橋性基とを分子内に含有する化合物を含む下塗り層を有することを特徴とする1〜9のいずれか一項に記載の平版印刷版原版の製版方法。
11.前記平版印刷版原版が、リン酸を用いて陽極酸化処理された支持体を有することを特徴とする1〜10のいずれか一項に記載の平版印刷版原版の製版方法。
12.前記平版印刷版原版が、ポリビニルホスホン酸を用いて親水化処理された支持体を有することを特徴とする1〜11のいずれか一項に記載の平版印刷版原版の製版方法。
【0017】
本発明では、画像形成層中に一般式(1)又は一般式(2)で表される特定のカルボン酸を含む平版印刷版原版を用い、水溶性ポリマーを含有する水溶液で現像することによって、課題を解決できた。
本発明の効果発現のメカニズムは次のように考えている。すなわち、特定のカルボン酸はフェニル基などを有すことで疎水性バインダーとの相溶性が良好となり、この状態で現像除去されたとき、現像液中の特定の水溶性ポリマーと現像除去成分との親和性が良好なものとなり、その結果、凝集・沈降しにくく、版面への再付着が抑制されるものと推定している。
またこれらの特定のカルボン酸は露光により脱炭酸することで消失すると考えられる。すなわち未露光部においては、疎水性バインダーを主成分としたバルク構造中に親水性部位を導入することで現像性向上に寄与し、一方露光部においては、上記の脱炭酸により疎水化することで画像部表面の着肉性向上に寄与すると推定している。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、露光後、高pHのアルカリ現像処理を用いる必要なく、比較的中性の現像液にて、現像除去成分の版面再付着を抑制でき、かつ良好な着肉性および耐刷性を得るのに適した平版印刷版原版の製版方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
〔製版方法〕
本発明の平版印刷版を作製する方法は、画像様露光後、アラビアガム及び澱粉からなる群から選ばれる少なくとも1種の水溶性ポリマーを含有する水溶液(以降、本発明の現像液と称する)を用いて画像形成層未露光部の除去を行うと同時に不感脂化処理を行うことを特徴とする。アラビアガム及び澱粉からなる群から選ばれる少なくとも1種の水溶性ポリマーにより不感脂化される。
【0020】
本発明の現像液に用いられる澱粉としては、かんしょ澱粉、ばれいしょ澱粉、タピオカ澱粉、小麦澱粉及びコーンスターチ等の類、さらにこれらの澱粉の誘導体が挙げられる。
【0021】
上記澱粉誘導体としては、ブリティッシュガム等の焙焼澱粉、酵素デキストリン及びシャーディンガーデキストリン等の酵素変成デキストリン、可溶化澱粉に示される酸化澱粉、変成アルファー化澱粉及び無変成アルファー化澱粉等のアルファー化澱粉、燐酸澱粉、脂肪澱粉、硫酸澱粉、硝酸澱粉、キサントゲン酸澱粉及びカルバミン酸澱粉等のエステル化澱粉、カルボキシアルキル澱粉、ヒドロキシアルキル澱粉、スルフォアルキル澱粉、シアノエチル澱粉、アリル澱粉、ベンジル澱粉、カルバミルエチル澱粉、ジアルキルアミノ澱粉等のエーテル化澱粉、メチロール架橋澱粉、ヒドロキシアルキル架橋澱粉、燐酸架橋澱粉、ジカルボン酸架橋澱粉等の架橋澱粉、澱粉ポリアクリロアミド共重合体、澱粉ポリアクリル酸共重合体、澱粉ポリ酢酸ビニル共重合体、澱粉ポリアクリロニトリル共重合体、カオチン性澱粉ポリアクリル酸エステル共重合体、カオチン性澱粉ビニルポリマー共重合体、澱粉ポリスチレンマレイン酸共重合体、澱粉ポリエチレンオキサイド共重合体、澱粉ポリプロピレン共重合体等の澱粉グラフト重合体が好ましい。
【0022】
これらの水溶性ポリマーの中でもアラビアガムが最も好ましい。
【0023】
これらの水溶性ポリマーは2種以上組み合わせても使用でき、本発明の現像液中に好ましくは1〜50質量%、より好ましくは3〜30質量%の範囲で含有させることができる。
【0024】
本発明の現像液はpH2〜9.8の範囲で使用することが有利であり、pH3〜9.5がより好ましく、pH3.5〜8がさらに好ましい。
pHをこの範囲にするためには一般にpH調整剤が添加される。pHを2〜9.8にするためには一般的にガム液中に鉱酸、有機酸又は無機塩等を添加し調節する。その添加量は0.01〜2質量%である。例えば鉱酸としては硝酸、硫酸、リン酸、メタリン酸等が挙げられる。有機酸としては酢酸、蓚酸、マロン酸、p−トルエンスルホン酸、レブリン酸、フィチン酸、有機ホスホン酸、ポリスチレンスルホン酸、またグリシン、α−アラニン、β−アラニンなどのアミノ酸等が挙げられる。無機塩としては硝酸マグネシウム、第1リン酸ナトリウム、第2リン酸ナトリウム、硫酸ニッケル、ヘキサメタリン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム等が挙げられる。鉱酸、有機酸又は無機塩等の少なくとも1種もしくは2種以上を併用してもよい。
【0025】
本発明の現像液には、上記の水溶性ポリマー、pH調整剤の他に、界面活性剤、防腐剤、防黴剤、親油性物質、湿潤剤、キレート剤、消泡剤などを含有させておくことができる。
【0026】
本発明の現像液に含有される界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤及びノニオン界面活性剤が挙げられる。アニオン界面活性剤としては脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、α−オレフィンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム類、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩類、石油スルホン酸塩類、硫酸化ヒマシ油、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル燐酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル塩類、スチレン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン−無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類等が挙げられる。これらの中でもジアルキルスルホコハク酸塩類、アルキル硫酸エステル塩類及びアルキルナフタレンスルホン酸塩類及びα−オレフィンスルホン酸塩類、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩類、が特に好ましく用いられる。
【0027】
カチオン界面活性剤としては、アルキルアミン塩類、第4級アンモニウム塩類等が用いられる。
【0028】
両性界面活性剤としては、アルキルカルボキシベタイン類、アルキルイミダゾリン類、アルキルアミノカルボン酸類等が用いられる。
【0029】
ノニオン界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸部分エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリプロピレングリコールの分子量200〜5000、トリメチロールプロパン、グリセリン又はソルビトールのポリオキシエチレン又はポリオキシプロピレンの付加物、アセチレングリコール系等が挙げられる。又、弗素系、シリコン系のノニオン界面活性剤も同様に使用することができる。
【0030】
該界面活性剤は二種以上併用することができる。使用量は特に限定する必要はないが、好ましい範囲としては本発明の現像液の全質量に基づいて0.01〜20質量%が適当であり、好ましくは0.05〜10質量%である。
【0031】
また、防腐剤としては繊維、木材加工、食品、医薬、化粧品、農薬分野等で使用されている公知の物が使用できる。例えば第4級アンモニウム塩、一価フェノール誘導体、二価フェノール誘導体、多価フェノール誘導体、イミダゾール誘導体、ピラゾロピリミジン誘導体、一価ナフトール、カーボネート類、スルホン誘導体、有機スズ化合物、シクロペンタン誘導体、フェニル誘導体、フェノールエーテル誘導体、フェノールエステル誘導体、ヒドロキシルアミン誘導体、ニトリル誘導体、ナフタリン類、ピロール誘導体、キノリン誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、第2級アミン、1,3,5トリアジン誘導体、チアジアゾール誘導体、アニリド誘導体、ピロール誘導体、ハロゲン誘導体、二価アルコール誘導体、ジチオール類、シアン酸誘導体、チオカルバミド酸誘導体、ジアミン誘導体、イソチアゾール誘導体、一価アルコール、飽和アルデヒド、不飽和モノカルボン酸、飽和エーテル、不飽和エーテル、ラクトン類、アミノ酸誘導体、ヒダントイン、シアヌール酸誘導体、グアニジン誘導体、ピリジン誘導体、飽和モノカルボン酸、ベンゼンカルボン酸誘導体、ヒドロキシカルボン酸誘導体、ビフェニル、ヒドロキサム酸誘導体、芳香族アルコール、ハロゲノフェノール誘導体、ベンゼンカルボン酸誘導体、メルカプトカルボン酸誘導体、第4級アンモニウム塩誘導体、トリフェニルメタン誘導体、ヒノキチオール、フラン誘導体、ベンゾフラン誘導体、アクリジン誘導体、イソキノリン誘導体、アルシン誘導体、チオカルバミン酸誘導体、リン酸エステル、ハロゲノベンゼン誘導体、キノン誘導体、ベンゼンスルホン酸誘導体、モノアミン誘導体、有機リン酸エステル、ピペラジン誘導体、フェナジン誘導体、ピリミジン誘導体、チオファネート誘導体、イミダゾリン誘導体、イソオキサゾール誘導体、アンモニウム塩誘導体等の公知の防腐剤が使用できる。特に好ましい防腐剤として、ピリジンチオール−1−オキシドの塩、サリチル酸及びその塩、1,3,5−トリスヒドロキシエチルヘキサヒドロ−S−トリアジン、1,3,5−トリスヒドロキシメチルヘキサヒドロ−S−トリアジン、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、5−クロル−2−メチル−4−イソチアゾリン−3−オン、2−ブロモ−2−ニトロ−1,3−プロパンジオールが挙げられる。好ましい添加量は、細菌、カビ、酵母等に対して、安定に効力を発揮する量であって、細菌、カビ、酵母の種類によっても異なるが、使用時の本発明の現像液に対して0.01〜4質量%の範囲が好ましく、また種々のカビ、細菌に対して効力のあるように2種以上の防腐剤を併用することが好ましい。
【0032】
本発明の現像液には親油性物質を含有させておくこともできる。好ましい親油性物質には、例えばオレイン酸、ラノリン酸、吉草酸、ノニル酸、カプリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸などのような炭素数が5〜25の有機カルボン酸、ひまし油などが含まれる。これらの親油性物質は単独もしくは2以上を組み合わせて使用することができる。本発明の現像液中に含ませる親油性物質は、その総質量に対して0.005〜10質量%、より好ましくは0.05〜5質量%の範囲である。
【0033】
その他、本発明の現像液には必要により湿潤剤としてグリセリン、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリエチレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジグリセリン、ポリオキシエチレン等を添加することができる。これらの湿潤剤は単独で用いてもよいが、2種以上併用してもよい。これらの湿潤剤の好ましい使用量としては0.1〜5質量%である。
【0034】
また、本発明の現像液にはキレート化合物を添加してもよい。本発明の現像液は、一般の現像液と同様に、濃縮液として流通、市販され、使用時に水道水、井戸水等を加えて希釈して使用される。この希釈する水道水や井戸水に含まれているカルシウムイオン等が印刷に悪影響を与え、印刷物を汚れ易くする原因となることもあるので、キレート化合物を添加して、上記欠点を解消することができる。好ましいキレート化合物としては、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ジエチレントリアミンペンタ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;トリエチレンテトラミンヘキサ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩、ヒドロキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;ニトリロトリ酢酸、そのナトリウム塩;1−ヒドロキシエタン−1,1−ジホスホン酸、そのカリウム塩、そのナトリウム塩;アミノトリ(メチレンホスホン酸)、そのカリウム塩、そのナトリウム塩などのような有機ホスホン酸類あるいはホスホノアルカントリカルボン酸類を挙げることが出来る。上記キレート剤のナトリウム塩、カリウム塩の代りに有機アミンの塩も有効である。これらキレート剤は本発明の現像液組成中に安定に存在し、印刷性を阻害しないものが選ばれる。添加量としては使用時の本発明の現像液に対して0.001〜1.0質量%が適当である。
【0035】
また、本発明の現像液には消泡剤を添加することもでき、特にシリコン消泡剤が好ましい。その中で乳化分散型及び可溶化型等がいずれも使用できる。好ましくは使用時の本発明の現像液に対して0.001〜1.0質量%の範囲が最適である。
【0036】
本発明の現像液は乳化分散型として調製してもよく、その油相としては有機溶剤が用いられ、又、前述したような界面活性剤の助けを借りて、可溶化型(乳化型)にしてもよい。
【0037】
有機溶剤としては、20℃で水に対する溶解性が5質量%以下で沸点160℃以上の有機溶剤であることが好ましい。例えば、ジブチルフタレート、ジヘプチルフタレート、ジ−n−オクチルフタレート、ジ(2−エチルヘキシル)フタレート、ジノニルフタレート、ジデシルフタレート、ジラウリルフタレート、ブチルベンジルフタレートなどのフタル酸ジエステル剤、例えば、ジオクチルアジペート、ブチルグリコールアジペート、ジオクチルアゼレート、ジブチルセバケート、ジ(2−エチルヘキシル)セバケート、ジオクチルセバケートなどの脂肪族二塩基酸エステル類、例えば、エポキシ化大豆油などのエポキシ化トリグリセリド類、例えば、トリクレジルホスフェート、トリオクチルフォスフェート、トリスクロルエチルフォスフェートなどの燐酸エステル類、例えば、安息香酸ベンジルなどの安息香酸エステル類などの凝固点が15℃以下で、1気圧下での沸点が300℃以上の可塑剤が含まれる。
【0038】
その他アルコール系としては、2−オクタノール、2−エチルヘキサノール、ノナノール、n−デカノール、ウンデカノール、n−ドデカノール、トリメチルノニルアルコール、テトラデカノール、ベンジルアルコール等が挙げられる。グリコール系としてはエチレングリコールイソアミルエーテル、エチレングリコールモノフェニルエーテル、エチレングリコールベンジルエーテルエチレングリコールヘキシルエーテル、オクチレングリコール等が挙げられる。
【0039】
上記化合物を選択するときの条件としては臭気が特に挙げられる。これら溶剤の使用量の好ましい範囲は版面保護剤の0.1〜5質量%でより好ましい範囲は0.5〜3質量%である。これらの溶剤は1種もしくは2種以上併用することもできる。
【0040】
本発明の現像液としては、本発明の水溶性ポリマーを含有する限り、上記の水溶液以外にも、欧州特許第1342568号明細書、欧州特許出願公開第1788444号明細書などに記載されているガム液も好適に使用され得る。
【0041】
本発明の現像液は、水相を温度40℃±5℃に調製し、高速攪拌し、水相の中に調製した油相をゆっくり滴下し充分攪拌後、圧力式のホモジナイザーを通して乳化分散することによって作製される。
【0042】
本発明の現像液の残余成分は水である。本発明の現像液は、使用時よりも水の含有量を少なくした濃縮液としておき、使用時に水で希釈するようにしておくことが運搬上有利である。この場合の濃縮度は各成分が分離や析出を起さない程度が適当である。
【0043】
本発明の現像処理は、擦り部材を備えた自動処理機を用いて実施される。更に本発明の現像処理は、本発明の現像液などの供給手段を備えた自動処理機により好適に実施することができる。自動処理機としては、例えば、画像記録後の平版印刷版原版を搬送しながら擦り処理を行う、特開2006−235227号公報等に記載の自動処理機等が挙げられる。なかでも、擦り部材として、回転ブラシロールを用いる自動処理機が特に好ましい。
【0044】
本発明に好ましく使用できる回転ブラシロールは、画像部の傷つき難さ、さらには、平版印刷版原版支持体の腰の強さ等を考慮して適宜選択することができる。
上記回転ブラシロールとしては、ブラシ素材をプラスチック又は金属のロールに植え付けて形成された公知のものが使用できる。例えば、特開昭58−159533号公報や、特開平3−100554号公報記載のものや、実公昭62−167253号公報に記載されているような、ブラシ素材を列状に植え込んだ金属又はプラスチックの溝型材を芯となるプラスチック又は金属のロールに隙間なく放射状に巻き付けたブラシロールが使用できる。
また、ブラシ素材としては、プラスチック繊維(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系、ナイロン6.6、ナイロン6.10等のポリアミド系、ポリアクリロニトリル、ポリ(メタ)アクリル酸アルキル等のポリアクリル系、及び、ポリプロピレン、ポリスチレン等のポリオレフィン系の合成繊維)を使用することができ、例えば、繊維の毛の直径は、20〜400μm、毛の長さは、5〜30mmのものが好適に使用できる。
さらに、回転ブラシロールの外径は、30〜200mmが好ましく、版面を擦るブラシの先端の周速は、0.1〜5m/secが好ましい。
【0045】
本発明に用いる回転ブラシロールの回転方向は、本発明の平版印刷版原版の搬送方向に対し、同一方向であっても、逆方向であってもよいが、図1に例示した自動処理機のように、2本以上の回転ブラシロールを使用する場合は、少なくとも1本の回転ブラシロールが、同一方向に回転し、少なくとも1本の回転ブラシロールが、逆方向に回転することが好ましい。これにより、未露光部の画像形成層の除去が、さらに確実となる。さらに、回転ブラシロールを、ブラシロールの回転軸方向に揺動させることも効果的である。
【0046】
本発明の製版方法としては、前記(c)の工程を2回以上連続して行う方法も好適なものとして挙げられる。このような現像処理を2回以上連続して行う具体的な方法としては、上記のような擦り部材を備えた現像部のみからなる自動処理機(図2参照)を使って現像処理を2回以上行う方法(その場合、自動現像機2台以上を連結して行うこともできる。)、上記のような擦り部材を備えた現像部を複数有する自動処理機を用いる方法などが挙げられる。
【0047】
また、本発明の製版方法の好ましい他の形態として、上記の本発明の現像液を用いた現像工程に続いて水洗工程を行うことが出来る。これらによって、現像除去成分の版面再付着が更に抑制される。
本発明の水洗工程に用いられる水は、一般の水道水、井水、イオン交換水、蒸留水など如何なる水でも使用可能であるが、経済的観点からは水道水や井水が好ましい。この水洗工程に用いられる水は、常に新鮮水を使用するか、水洗工程で使用された水を、後述するようなフィルターを通して循環させて再使用することが好ましい。
【0048】
本発明の現像液は、常に新鮮な液を用いてもよいが、現像処理後の本発明の現像液を、フィルターを通して循環させて繰り返し使用することが好ましい。
【0049】
本発明の現像液を用いた現像工程、及び上記の水洗工程に用いられるフィルターは、それぞれの液に混入した画像形成層除去成分を濾過出来るものであれば、如何なるものでも使用可能である。フィルターの材質としてはポリエステル樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、セルロース樹脂、コットン等が好ましく用いられる。またその形態としては、交換可能なフィルターとして、ハウジング内にカートリッジの様式で収容されたものが好ましい。カートリッジは、例えばセルロース繊維製の濾紙に、強度補強、繊維離脱防止のため、エポキシ樹脂加工を施し、濾過面積を大きくするためにプリーツ状に成型したプリーツタイプ、多くの繊維からなるヤーン(繊維の束)を中心筒より緩やかな密度勾配が得られるよう巻き上げたデプスタイプ、あるいはポリエチレン等のプラスチック製ケースに吸着剤を収納させるか、もしくは、主に樹脂、セルロース、ガラス繊維及び吸水性ポリマーによって構成されたメディアに活性炭などの吸着剤を担持させた吸着タイプのものが好ましい。この吸着剤としては、シリカゲル、活性炭、活性アルミニウム、モレキュラーシーブ、クレー及び超吸収性繊維、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、過マンガン酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム及び活性金属から選択された材料、及び、各種フィルターに用いられるイオン交換体を用いることができる。
入手可能なフィルターとして、ADVANTEC社製のカートリッジフィルター「TCWタイプ」、「TCPタイプ」、「TCSタイプ」などが好ましく用いられる。
フィルターのメッシュ径としては、5〜500μmが好ましく、10〜200μmがより好ましく、20〜100μmが更に好ましい。
【0050】
本発明の現像液を用いて、現像及び不感脂化処理を同時に行なった後、連続して乾燥処理を行う。また、本発明の現像液を用いた現像工程の後に水洗工程を行った場合は、その後さらに引き続いてガム液による非画像部の不感脂化工程を行うことも可能である。
【0051】
水洗工程の後にガム液を版面に供給することによって、非画像部を充分に不感脂化させることが出来る。この不感脂化工程では、一般的なガム液や、前述した本発明の現像液が使用されうる。後者の場合、現像工程に用いられた本発明の現像液と基本的に同一組成の液を用いることが装置構造上好ましい。これは、現像ユニットのタンクに仕込む本発明の現像液と、不感脂化ユニットのタンクに仕込む液が同一のものであることを意味し、その後の現像処理による現像液成分の持ち出しや平版印刷版原版成分の混入、更には水の蒸発や二酸化炭素の溶解などによる組成変化を意味するものではない。これによって、それぞれの工程で使用する液の仕込み液や補充液の共通化が出来る。また更には、現像部の補充液として、その必要量を不感脂化部の循環液をオーバーフローさせて供給するカスケード方式も採用できるようになる。
【0052】
上記の本発明の現像液、水洗工程の水、不感脂化工程のガム液の温度は、それぞれ別々に任意の温度で使用できるが、好ましくは10℃〜50℃である。
【0053】
なお、本発明において、各工程の後に乾燥工程を設けることも任意に可能である。特に自動処理機の最後の工程に設けることが好ましく、さらに水洗工程と不感脂化工程を有す場合はその間にも設けることがより好ましい。この乾燥工程は、一般にローラーニップで処理液のほとんどを除去した後に、任意の温度の乾燥風を吹き付けることにより行われる。
【0054】
上記の現像処理に先立って、平版印刷版原版は、線画像、網点画像等を有する透明原画を通して露光するかデジタルデータによるレーザー光走査等で画像様に露光される。露光に好適な光源としては、カーボンアーク灯、水銀灯、キセノンランプ、メタルハイラドランプ、ストロボ、紫外線、赤外線、レーザー光線などが挙げられる。特にレーザー光線が好ましく、760〜1200nmの赤外線を放射する固体レーザー及び半導体レーザーが好ましい。赤外レーザーは、白灯又は黄色灯下で作業を行うことができるので、製版の簡易化の点からも好ましい。
赤外レーザーに関しては、出力は100mW以上であることが好ましく、1画素当たりの露光時間は20μs以内であるのが好ましく、また照射エネルギー量は10〜300mJ/cmであるのが好ましい。露光時間を短縮するためマルチビームレーザーデバイスを用いるのが好ましい。
【0055】
以下では本発明に用いる平版印刷版原版の構成要素及び成分について説明する。
〔平版印刷版原版〕
本発明に用いられる平版印刷版原版は、支持体上に画像形成層を有し、かつ該画像形成層は、赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物、疎水性バインダーポリマー、及び一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物(以下では本発明のカルボン酸化合物という。)を含み、露光後、前記の本発明の現像液を供給して未露光部分を除去することにより画像形成可能である画像形成層であることを特徴とする。
赤外線吸収剤、重合開始剤および重合性化合物を含有することにより、露光領域が重合硬化して画像部を形成する。
なお、本発明において、「支持体上に画像形成層を有す」るとは、所望により設けられる保護層、下塗り層、中間層、バックコート層など任意の層の存在を否定するものではない。
【0056】
(画像形成層)
<疎水性バインダーポリマー>
本発明に用いられる疎水性バインダーポリマーは、水に対し実質的に溶解しなければ従来公知のものを制限なく使用でき、皮膜性を有するポリマーが好ましい。このようなバインダーポリマーの例としては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられる。
【0057】
本発明に用いられるバインダーポリマーは、画像部の皮膜強度を向上するために、架橋性を有していてもよい。バインダーポリマーに架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子の主鎖中又は側鎖中に導入すればよい。架橋性官能基は、共重合により導入してもよい。
分子の主鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、ポリ−1,4−ブタジエン、ポリ−1,4−イソプレン等が挙げられる。
分子の側鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル又はアミドのポリマーであって、エステル又はアミドの残基(−COOR又は−CONHRのR)がエチレン性不飽和結合を有するポリマーを挙げることができる。
【0058】
エチレン性不飽和結合を有する残基(上記R)の例としては、−CH=CH、−C(CH)=CH、−(CHCR=CR、−(CHO)CHCR=CR、−(CHCHO)CHCR=CR、−(CHNH−CO−O−CHCR=CR、−(CH−O−CO−CR=CR及び−(CHCHO)−X(式中、R〜Rはそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基もしくはアリールオキシ基を表し、RとR又はRとは互いに結合して環を形成してもよい。nは、1〜10の整数を表す。Xは、ジシクロペンタジエニル残基を表す。)を挙げることができる。
エステル残基の具体例としては、−CH=CH、−C(CH)=CH、−CHCH=CH(特公平7−21633号公報に記載されている。)、−CHCHO−CHCH=CH、−CHC(CH)=CH、−CHCH=CH−C、−CHCHOCOCH=CH−C、−CHCH−NHCOO−CHCH=CH及び−CHCHO−X(式中、Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)が挙げられる。
アミド残基の具体例としては、−CH=CH、−C(CH)=CH、−CHCH=CH、−CHCH−Y(式中、Yはシクロヘキセン残基を表す。)、−CHCH−OCO−CH=CHが挙げられる。
【0059】
架橋性を有するバインダーポリマーは、例えば、その架橋性官能基にフリーラジカル(重合開始ラジカル又は重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、ポリマー間で直接に又は重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。又は、ポリマー中の原子(例えば、官能性架橋基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。
【0060】
バインダーポリマー中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。この範囲で、良好な感度と良好な保存安定性が得られる。
【0061】
本発明に用いられるバインダーポリマーは、現像液への分散性を向上させるため、親水性基を有することが好ましい。親水性基としてはエチレンオキシ繰り返し単位が好ましい。具体例としては、アルコキシポリエチレングリコールアクリレート又はメタクリレート、例えばメトキシポリエチレングリコールアクリレート又はメタクリレートを共重合成分として含有することが挙げられる。
【0062】
本発明に用いられるバインダーポリマーは、質量平均モル質量が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましく、また、数平均モル質量が1000以上であるのが好ましく、2000〜25万であるのがより好ましい。多分散度(質量平均モル質量/数平均モル質量)は、1.1〜10であるのが好ましい。
【0063】
本発明に用いられるバインダーポリマーは、市販品を購入するか、あるいは公知の方法で合成することによって入手できる。
【0064】
本発明に用いられるバインダーポリマーは、市販品を購入するか、あるいは公知の方法で合成することによって入手できる。
【0065】
例えば、上記バインダーポリマーは、ラジカル重合によって作製することができる。ラジカル重合は当業者によく知られており、例えば、Macromolecules(マクロ分子)第2巻、第2版、H.G. Elias編、Plenum, New York, 1984の第20章及び21章に記載されている。有用なフリーラジカル開始剤は、過酸化物、例えば過酸化ベンゾイル、ヒドロペルオキシド、例えばクミルヒドロペルオキシド、及びアゾ化合物、例えば2,2'-アゾビス-イソブチロニトリル(AIBN)である。連鎖移動剤、例えばドデシルメルカプタンを使用して、化合物の分子量を制御することができる。
【0066】
一般にラジカル重合に適した溶剤は、反応物質に対して不活性でありそして反応に対して特に不都合な影響を及ぼすことがない液体が選ばれる。例えばエステル類、例えばエチルアセテート及びブチルアセテート; ケトン類、例えばメチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、及びアセトン; アルコール類、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、及びブタノール; エーテル類、例えばジオキサン及びテトラヒドロフラン; 及びこれらの混合物を含む。
【0067】
本発明に用いられるバインダーポリマーは、線形のポリマーであってもいいし、部分架橋したポリマーやポリマー粒子であってもよい。このポリマー粒子としては、平均粒径が0.05〜0.8μmの粒子であることが好ましく、0.1〜0.5μmであることがより好ましい。
本発明に用いられるバインダーポリマーを粒子形状で得るためには、親水性媒質(水、又は水とアルコールとの混合物)中で乳化重合により作製することが好ましい。
【0068】
バインダーポリマーの含有量は、画像形成層の全固形分に対して、5〜90質量%であり、5〜80質量%であるのが好ましく、10〜70質量%であるのがより好ましい。この範囲で、良好な画像部の強度と画像形成性が得られる。
また、(C)重合性化合物とバインダーポリマーは、質量比で0.5/1〜4/1となる量で用いるのが好ましい。
【0069】
<本発明のカルボン酸化合物>
本発明のカルボン酸化合物は、下記一般式(1)又は一般式(2)で表される。
【0070】
【化2】

【0071】
一般式中、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フェニル基、ハロゲン原子、アミノ基又はニトロ基を表し、これらの基の一部が炭素数4以下のアルキル基又はヒドロキシル基で置換されていてもよい。またR〜Rの少なくとも二つが結合して脂肪族又は芳香族環を形成してもよい。例えば上記一般式の芳香族環部分が、ナフチル基やインデニル基であってもよい。
Xは−O−又は−NH−を表し、Yは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を表し、これらの基の一部が炭素数4以下のアルキル基やヒドロキシル基で置換されていてもよい。
【0072】
Yの具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、s−ブチル基、t−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、1−メチルブチル基、イソヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、2−ヒドロキシフェニル基、3−ヒドロキシフェニル基、4−ヒドロキシフェニル基、4−メチルベンジル基、4−ヒドロキシベンジル基などを挙げることができる。これらの中では、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、無置換のフェニル基がより好ましい。
【0073】
以下、一般式(1)または(2)で表されるカルボン酸化合物の具体例(C−1)〜(C−48)、(A−1)〜(A−48)および(T−1)〜(T−13)を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0074】
【化3】

【0075】
【化4】

【0076】
【化5】

【0077】
【化6】

【0078】
【化7】

【0079】
次に、本発明に係るカルボン酸化合物の代表的な合成例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0080】
<化合物(C−13)の合成>
窒素気流下、2Lのナス型フラスコに、N−フェニルイミノ二酢酸62.8gを入れ、トルエン500mLで溶解した。無水酢酸32.0gを加え、加熱して還流し、撹拌した。1時間後、室温まで冷却した後、撹拌しながら、ヘキサン3Lを加えていき、析出させた。ろ過して、N−フェニルイミノ二酢酸無水物52.0gを得た。
次に、窒素気流下、200mLのナス型フラスコに、上記で得られたN−フェニルイミノジ酢酸無水物5.1gを入れ、メタノール60mLを加えた。室温で、6時間撹拌した後、溶媒を減圧留去した。残査をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し(流出溶媒 ヘキサン/酢酸エチル)、化合物(C−13)を5.7g得た。化合物(C−13)であることは、NMRスペクトル、IRスペクトル、質量分析スペクトルから確認した。
【0081】
<化合物(C−37)の合成>
窒素気流下、2Lのナス型フラスコに、N−フェニルイミノ二酢酸62.8gを入れ、トルエン500mLで溶解した。無水酢酸32.0gを加え、加熱して還流し、撹拌した。1時間後、室温まで冷却した後、撹拌しながら、ヘキサン3Lを加えていき、析出させた。ろ過して、N−フェニルイミノ二酢酸無水物52.0gを得た。
窒素気流下、200mLのナス型フラスコに、上記で得られたN−フェニルイミノジ酢酸無水物5.1gを入れ、ベンジルアルコール50mLを加えた。室温で、8時間撹拌した後、溶媒を減圧留去した。残査をシリカゲルクロマトグラフィーで精製し(流出溶媒 ヘキサン/酢酸エチル)、化合物(C−37)を7.2g得た。化合物(C−37)であることは、NMRスペクトル、IRスペクトル、質量分析スペクトルから確認した。
【0082】
以上に説明した本発明に係るカルボン酸基を有する化合物は、1種のみを用いても良く、2種以上を併用して用いても良い。これらの特定カルボン酸化合物の添加量としては、画像形成層を構成する全固形分中0.5〜20質量%の割合で添加することが好ましく、1〜10質量%がより好ましく、1.5〜6質量%が更に好ましい。
【0083】
<(A)赤外線吸収剤>
本発明の平版印刷版原版は、(A)赤外線吸収剤を含有することにより、760〜1200nmの赤外線を発するレーザー等の赤外線を光源とする画像形成が可能となる。
赤外線吸収剤は、吸収した赤外線を熱に変換する機能と赤外線により励起して後述の重合開始剤(ラジカル発生剤)に電子移動/エネルギー移動する機能を有する。本発明において使用される赤外線吸収剤は、波長760〜1200nmに吸収極大を有する染料又は顔料である。
【0084】
染料としては、市販の染料及び例えば「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)等の文献に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、ナフトキノン染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、金属チオレート錯体等の染料が挙げられる。
好ましい染料としては、例えば、特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号等の公報に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号等の公報に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号等の公報に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号公報等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許第434,875号明細書記載のシアニン染料等を挙げることができる。
【0085】
また、米国特許第5,156,938号明細書記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書記載の置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)記載のトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、同58−220143号、同59−41363号、同59−84248号、同59−84249号、同59−146063号、同59−146061号の各公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報記載のシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載のペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、同5−19702号の各公報に開示されているピリリウム化合物も好ましく用いられる。また、染料として好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)及び(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
また、本発明において、赤外線吸収色素の好ましい他の例としては、以下に例示するような特開2002−278057号公報に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
【0086】
【化8】

【0087】
これらの染料のうちなかでも好ましいものとしては、シアニン色素、スクワリリウム色素、ピリリウム塩、ニッケルチオレート錯体、インドレニンシアニン色素が挙げられる。さらに、シアニン色素やインドレニンシアニン色素が好ましく、特に好ましい一つの例として下記一般式(i)で示されるシアニン色素が挙げられる。
【0088】
【化9】

【0089】
一般式(i)中、Xは、水素原子、ハロゲン原子、−NPh、X−L又は下記構造式で表される基を表す。ここで、Xは酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を示し、Lは、炭素原子数1〜12の炭化水素基、ヘテロ原子を有する芳香族環、ヘテロ原子を含む炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。なお、ここでヘテロ原子とは、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、ハロゲン原子、セレン原子を示す。Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、置換又は無置換のアミノ基、ハロゲン原子より選択される置換基を表し、Xは後述するZと同様に定義される。
【0090】
【化10】

【0091】
及びRは、それぞれ独立に、炭素原子数1〜12の炭化水素基を示す。画像形成層用塗布液の保存安定性から、R及びRは、炭素原子数2個以上の炭化水素基であることが好ましく、さらに、RとRとは互いに結合し、5員環又は6員環を形成していることが特に好ましい。
【0092】
Ar及びArは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい芳香族炭化水素基を示す。好ましい芳香族炭化水素基としては、ベンゼン環及びナフタレン環が挙げられる。また、好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下の炭化水素基、ハロゲン原子、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が挙げられ、炭素原子数12個以下の炭化水素基、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が最も好ましい。Y及びYは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、硫黄原子又は炭素原子数12個以下のジアルキルメチレン基を示す。R及びRは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、置換基を有していてもよい炭素原子数20個以下の炭化水素基を示す。好ましい置換基としては、炭素原子数12個以下のアルコキシ基、カルボキシル基、スルホ基が挙げられ、炭素原子数12個以下のアルコキシ基が最も好ましい。R、R、R及びRは、それぞれ同じでも異なっていてもよく、水素原子又は炭素原子数12個以下の炭化水素基を示す。原料の入手性から、好ましくは水素原子である。また、Zは、対アニオンを示す。ただし、一般式(i)で示されるシアニン色素が、その構造内にアニオン性の置換基を有し、電荷の中和が必要ない場合にはZは必要ない。好ましいZは、画像形成層用塗布液の保存安定性から、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びスルホン酸イオンであり、特に好ましくは、過塩素酸イオン、テトラフルオロボレートイオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、及びアリールスルホン酸イオンである。
【0093】
本発明において、好適に用いることのできる一般式(i)で示されるシアニン色素の具体例としては、特開2001−133969公報の段落番号[0017]から[0019]に記載されたものを挙げることができる。
また、特に好ましい他の例としてさらに、前記した特開2002−278057号公報に記載の特定インドレニンシアニン色素が挙げられる。
【0094】
本発明において使用される顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
【0095】
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。これらの顔料のうち好ましいものはカーボンブラックである。
【0096】
これら顔料は表面処理をせずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法には、樹脂やワックスを表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シランカップリング剤、エポキシ化合物、ポリイソシアネート等)を顔料表面に結合させる方法等が考えられる。上記の表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)及び「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0097】
顔料の粒径は0.01μm〜10μmの範囲にあることが好ましく、0.05μm〜1μmの範囲にあることがさらに好ましく、特に0.1μm〜1μmの範囲にあることが好ましい。この範囲で、顔料分散物の画像形成層用塗布液中での良好な安定性と画像形成層の良好な均一性が得られる。
【0098】
顔料を分散する方法としては、インキ製造やトナー製造等に用いられる公知の分散技術が使用できる。分散機としては、超音波分散器、サンドミル、アトライター、パールミル、スーパーミル、ボールミル、インペラー、デスパーザー、KDミル、コロイドミル、ダイナトロン、3本ロールミル、加圧ニーダー等が挙げられる。詳細は、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。
【0099】
これらの赤外線吸収剤は、他の成分と同一の層に添加してもよいし、別の画像形成層を設けそこへ添加してもよいが、平版印刷版原版を作製した際に、画像形成層の波長760nm〜1200nmの範囲における極大吸収波長での吸光度が、反射測定法で0.3〜1.2の範囲にあるように添加する。好ましくは、0.4〜1.1の範囲である。この範囲で、画像形成層の深さ方向での均一な重合反応が進行し、良好な画像部の膜強度と支持体に対する密着性が得られる。
画像形成層の吸光度は、画像形成層に添加する赤外線吸収剤の量と画像形成層の厚みにより調整することができる。吸光度の測定は常法により行うことができる。測定方法としては、例えば、アルミニウム等の反射性の支持体上に、乾燥後の塗布量が平版印刷版として必要な範囲において適宜決定された厚みの画像形成層を形成し、反射濃度を光学濃度計で測定する方法、積分球を用いた反射法により分光光度計で測定する方法等が挙げられる。
【0100】
本発明における画像形成層中の(A)赤外線吸収剤の含有量を、具体的な添加量で述べれば、画像形成層の全固形分の0.1〜10.0質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5.0質量%である。
【0101】
<(B)重合開始剤>
本発明に用いられる(B)重合開始剤としては、光、熱あるいはその両方のエネルギーによりラジカルを発生し、(C)重合性化合物の重合を開始、促進する化合物を示す。本発明において使用しうる重合開始剤としては、公知の熱重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物、光重合開始剤などを使用することができる。
本発明における重合開始剤としては、例えば、(a)有機ハロゲン化物、(b)カルボニル化合物、(c)アゾ系重合開始剤、(d)有機過酸化物、(e)メタロセン化合物、(f)アジド化合物、(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物、(h)有機ホウ酸塩化合物、(i)ジスルホン化合物、(j)オキシムエステル化合物、(k)オニウム塩化合物、が挙げられる。
【0102】
(a)有機ハロゲン化物としては、具体的には、若林等、「Bull Chem.Soc Japan」42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46−4605号、特開昭48−36281号、特開昭55−32070号、特開昭60−239736号、特開昭61−169835号、特開昭61−169837号、特開昭62−58241号、特開昭62−212401号、特開昭63−70243号、特開昭63−298339号の各公報、M.P.Hutt“Jurnal of Heterocyclic Chemistry”1(No3),(1970)」等に記載の化合物が挙げられ、特に好ましいものとして、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物、s−トリアジン化合物が挙げられる。
【0103】
より好適には、すくなくとも一つのモノ、ジ、又はトリハロゲン置換メチル基が結合したs−トリアジン誘導体及びオキサジアゾール誘導体が挙げられる。具体的には、例えば、2,4,6−トリス(モノクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2―n−プロピル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(α,α,β−トリクロロエチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(3,4−エポキシフェニル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−クロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ブロモフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−フルオロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリフルオロメチルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2,6−ジクロロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2,6−ジフルオロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(2,6−ジブロモフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−ビフェニリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4’−クロロ−4−ビフェニリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−シアノフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−アセチルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−エトキシカルボニルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−フェノキシカルボニルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メチルスルホニルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ジメチルスルホニウムフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン・テトラフルオロボレート、
【0104】
2−(2,4−ジフルオロフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−ジエトキシホスホリルフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔4−(4−ヒドロキシフェニルカルボニルアミノ)フェニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−〔4−(p−メトキシフェニル)−1,3−ブタジエニル〕−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−スチリル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシスチリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−i−プロピルオキシスチリル)−4、6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシナフチル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−フェニルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ベンジルチオ−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(ジブロモメチル)−s−トリアジン、2,4,6−トリス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ビス(トリブロモメチル)−s−トリアジン、2−(o−メトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、2−(3,4−エポキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、2−〔1−フェニル−2−(4−メトキシフェニル)ビニル〕−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、2−(p−ヒドロキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、2−(3,4−ジヒドロキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、2−(p−t−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール等が挙げられる。
【0105】
(b)カルボニル化合物としては、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、2−メチルベンゾフェノン、3−メチルベンゾフェノン、4−メチルベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4−ブロモベンゾフェノン、2−カルボキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン誘導体、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、α−ヒドトキシ−2−メチルフェニルプロパノン、1−ヒドロキシ−1−メチルエチル−(p−イソプロピルフェニル)ケトン、1−ヒドロキシ−1−(p−ドデシルフェニル)ケトン、2−メチルー(4’−(メチルチオ)フェニル)−2−モルホリノ−1−プロパノン、1,1,1−トリクロロメチル−(p−ブチルフェニル)ケトン等のアセトフェノン誘導体、チオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジメチルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン誘導体、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体等を挙げることができる。
【0106】
(c)アゾ化合物としては、例えば、特開平8−108621号公報に記載のアゾ化合物等を使用することができる。
【0107】
(d)有機過酸化物としては、例えば、トリメチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ブタン、tert−ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、tert−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−オキサノイルパーオキサイド、過酸化コハク酸、過酸化ベンゾイル、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジメトキシイソプロピルパーオキシカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、tert−ブチルパーオキシアセテート、tert−ブチルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシネオデカノエート、tert−ブチルパーオキシオクタノエート、tert−ブチルパーオキシラウレート、ターシルカーボネート、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(t−ヘキシルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、3,3’,4,4’−テトラ−(p−イソプロピルクミルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、カルボニルジ(t−ブチルパーオキシ二水素二フタレート)、カルボニルジ(t−ヘキシルパーオキシ二水素二フタレート)等が挙げられる。
【0108】
(e)メタロセン化合物としては、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報、特開昭63−41484号公報、特開平2−249号公報、特開平2−4705号公報、特開平5−83588号公報記載の種々のチタノセン化合物、例えば、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−フェニル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4−ジ−フルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,4,6−トリフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,5,6−テトラフルオロフェニ−1−イル、ジ−メチルシクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,3,4,5,6−ペンタフルオロフェニ−1−イル、ジ−シクロペンタジエニル−Ti−ビス−2,6−ジフルオロ−3−(ピロール−1−イル)フェニ−1−イル、特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報記載の鉄−アレーン錯体等が挙げられる。
【0109】
(f)アジド化合物としては、2,6−ビス(4−アジドベンジリデン)−4−メチルシクロヘキサノン等の化合物を挙げることができる。
(g)ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特公平6−29285号公報、米国特許第3,479,185号、同第4,311,783号、同第4,622,286号等の明細書に記載の種々の化合物、具体的には、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ブロモフェニル))4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o,p−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラキス(m−メトキシフェニル)ビイジダゾール、2,2’−ビス(o,o’−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−ニトロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−メチルフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール、2,2’−ビス(o−トリフルオロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニルビイミダゾール等が挙げられる。
【0110】
(h)有機ホウ酸塩化合物としては、例えば、特開昭62−143044号、特開昭62−150242号、特開平9−188685号、特開平9−188686号、特開平9−188710号、特開2000−131837号、特開2002−107916号、特許第2764769号明細書、特開2002−116539号公報、及び、Kunz,Martin”Rad Tech’98.Proceeding April 19−22,1998,Chicago”等に記載される有機ホウ酸塩、特開平6−157623号公報、特開平6−175564号公報、特開平6−175561号公報に記載の有機ホウ素スルホニウム錯体あるいは有機ホウ素オキソスルホニウム錯体、特開平6−175554号公報、特開平6−175553号公報に記載の有機ホウ素ヨードニウム錯体、特開平9−188710号公報に記載の有機ホウ素ホスホニウム錯体、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられる。
【0111】
(i)ジスルホン化合物としては、特開昭61−166544号、特開2003−328465号公報等に記載の化合物が挙げられる。
【0112】
(j)オキシムエステル化合物としては、J.C.S. Perkin II (1979 )1653−1660)、J.C.S.Perkin II (1979)156−162、Journal of Photopolymer Science and Technology(1995)202−232、特開2000−66385号公報記載の化合物、特開2000−80068号公報記載の化合物が挙げられる。具体例としては下記の構造式で示される化合物が挙げられる。
【0113】
【化11】

【0114】
(k)オニウム塩化合物としては、例えば、S.I.Schlesinger,Photogr.Sci.Eng.,18,387(1974)、T.S.Bal et al,Polymer,21,423(1980)に記載のジアゾニウム塩、米国特許第4,069,055号明細書、特開平4−365049号公報等に記載のアンモニウム塩、米国特許第4,069,055号、同4,069,056号の各明細書に記載のホスホニウム塩、欧州特許第104、143号、米国特許第339,049号、同第410,201号の各明細書、特開平2−150848号、特開平2−296514号の各公報に記載のヨードニウム塩、欧州特許第370,693号、同390,214号、同233,567号、同297,443号、同297,442号、米国特許第4,933,377号、同161,811号、同410,201号、同339,049号、同4,760,013号、同4,734,444号、同2,833,827号、独国特許第2,904,626号、同3,604,580号、同3,604,581号の各明細書に記載のスルホニウム塩、J.V.Crivello et al,Macromolecules,10(6),1307(1977)、J.V.Crivello et al,J.Polymer Sci.,Polymer Chem.Ed.,17,1047(1979)に記載のセレノニウム塩、C.S.Wen et al,Teh,Proc.Conf.Rad.Curing ASIA,p478 Tokyo,Oct(1988)に記載のアルソニウム塩等のオニウム塩等が挙げられる。
【0115】
特に、反応性、安定性の面から上記オキシムエステル化合物あるいはジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩が好適なものとして挙げられる。本発明において、これらのオニウム塩は酸発生剤ではなく、イオン性のラジカル重合開始剤として機能する。
本発明に好適なオニウム塩は、下記一般式(RI−I)〜(RI−III)で表されるオニウム塩である。
【0116】
【化12】

【0117】
式(RI−I)中、Ar11は置換基を1〜6有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表し、好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。Z11−は1価の陰イオンを表し、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性、焼き出し画像の視認性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオンが好ましい。
【0118】
式(RI−II)中、Ar21、Ar22は各々独立に置換基を1〜6有していてもよい炭素数20以下のアリール基を表し、好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。Z21−は1価の陰イオンを表し、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性、焼き出し画像の視認性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましい。
【0119】
式(RI−III)中、R31、R32、R33は各々独立に置換基を1〜6有していて
もよい炭素数20以下のアリール基又はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基を表し、好ましくは反応性、安定性の面から、アリール基であることが望ましい。好ましい置換基としては炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、炭素数1〜12のアリーロキシ基、ハロゲン原子、炭素数1〜12のアルキルアミノ基、炭素数1〜12のジアルキルアミノ基、炭素数1〜12のアルキルアミド基又はアリールアミド基、カルボニル基、カルボキシル基、シアノ基、スルホニル基、炭素数1〜12のチオアルキル基、炭素数1〜12のチオアリール基が挙げられる。Z31−は1価の陰イオンを表し、ハロゲン化物イオン、過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、チオスルホン酸イオン、硫酸イオンであり、安定性、焼き出し画像の視認性の面から過塩素酸イオン、ヘキサフルオロホスフェートイオン、テトラフルオロボレートイオン、スルホン酸イオン、スルフィン酸イオン、カルボン酸イオンが好ましく、より好ましいものとして特開2001−343742号公報記載のカルボン酸イオン、特に好ましくは特開2002−148790号公報記載のカルボン酸イオンが挙げられる。
【0120】
以下に、本発明において重合開始剤として好適に用いられるオニウム塩の例を挙げるが、本発明はこれら制限されるものではない。
【0121】
【化13】

【0122】
【化14】

【0123】
【化15】

【0124】
【化16】

【0125】
【化17】

【0126】
【化18】

【0127】
【化19】

【0128】
(B)重合開始剤としては、上記に限定されないが、特に反応性、安定性の面から、(a)有機ハロゲン化物、なかでも、これに包含されるトリアジン系開始剤、(j)オキシムエステル化合物、(k)オニウム塩化合物に包含されるジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、スルホニウム塩がより好ましい。また、これらの重合開始剤の中でも赤外線吸収剤との組み合わせで焼き出し画像の視認性向上を図る観点からは、オニウム塩であって、対イオンとして無機アニオン、例えば、PF、BFなど、を有するものが好ましい。さらに、発色に優れていることから、オニウム塩としては、ジアリールヨードニウムが好ましい。
【0129】
これらの(B)重合開始剤は1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
(B)重合開始剤は、画像形成層を構成する全固形分に対し0.1〜50質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜30質量%、特に好ましくは0.8〜20質量%の割合で添加することができる。この範囲で、良好な感度と印刷時の非画像部の良好な汚れ難さが得られる。
また、これらの(B)重合開始剤は他の成分と同一の層に添加してもよいし、画像形成層中や、これに隣接して別の層を設けそこに添加してもよい。
【0130】
<(C)重合性化合物>
本発明に用いることができる(C)重合性化合物は、少なくとも一個のエチレン性不飽和二重結合を有する付加重合性化合物であり、末端エチレン性不飽和結合を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物から選ばれる。このような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においてはこれらを特に限定無く用いることができる。これらは、例えば、モノマー、プレポリマー、すなわち2量体、3量体及びオリゴマー、又はそれらの混合物、並びにそれらの(共)重合体などの化学的形態をもつ。
【0131】
モノマー及びその共重合体の例としては、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸など)や、そのエステル類、アミド類が挙げられ、好ましくは、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール化合物とのエステル、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミン化合物とのアミド類が用いられる。また、ヒドロキシ基やアミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能イソシアネート類あるいはエポキシ類との付加反応物、及び単官能もしくは、多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に使用される。また、イソシアネート基や、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との付加反応物、さらにハロゲン基や、トシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルあるいはアミド類と単官能もしくは多官能のアルコール類、アミン類、チオール類との置換反応物も好適である。また、別の例として、上記の不飽和カルボン酸の代わりに、不飽和ホスホン酸、スチレン、ビニルエーテル等に置き換えた化合物群を使用することも可能である。
【0132】
脂肪族多価アルコール化合物と不飽和カルボン酸とのエステルのモノマーの具体例としては、アクリル酸エステルとして、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリ(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリ(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー等がある。
【0133】
メタクリル酸エステルとしては、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−(3−メタクリルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタクリルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタン等がある。
【0134】
イタコン酸エステルとしては、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート等がある。
クロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネート等がある。
イソクロトン酸エステルとしては、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネート等がある。
マレイン酸エステルとしては、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレート等がある。
【0135】
その他のエステルの例として、例えば、特公昭51−47334号、特開昭57−196231号の各公報記載の脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号、特開昭59−5241号、特開平2−226149号の各公報記載の芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報記載のアミノ基を含有するもの等も好適に用いられる。さらに、前述のエステルモノマーは混合物としても使用することができる。
【0136】
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミド等がある。その他の好ましいアミド系モノマーの例としては、特公昭54−21726記載のシクロへキシレン構造を有すものを挙げることができる。
【0137】
また、イソシアネートとヒドロキシ基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、そのような具体例としては、例えば、特公昭48−41708号公報中に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記一般式(ii)で示されるヒドロキシ基を含有するビニルモノマーを付加させた1分子中に2個以上の重合性ビニル基を含有するビニルウレタン化合物等が挙げられる。
【0138】
CH=C(R)COOCHCH(R)OH 一般式(ii)
(ただし、R及びRは、それぞれ、H又はCHを示す。)
【0139】
また、特開昭51−37193号、特公平2−32293号、特公平2−16765号の各公報に記載されているようなウレタンアクリレート類や、特公昭58−49860号、特公昭56−17654号、特公昭62−39417号、特公昭62−39418号の各公報記載のエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物類も好適である。さらに、特開昭63−277653号、特開昭63−260909号、特開平1−105238号の各公報に記載される、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有する付加重合性化合物類を用いることによっては、非常に感光スピードに優れた光重合性組成物を得ることができる。
【0140】
その他の例としては、特開昭48−64183号、特公昭49−43191号、特公昭52−30490号、各公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂とアクリル酸もしくはメタクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートを挙げることができる。また、特公昭46−43946号、特公平1−40337号、特公平1−40336号、各公報記載の特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報記載のビニルホスホン酸系化合物等も挙げることができる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報記載のペルフルオロアルキル基を含有する構造が好適に使用される。さらに日本接着協会誌vol.20、No.7、300〜308ページ(1984年)に光硬化性モノマー及びオリゴマーとして紹介されているものも使用することができる。
【0141】
これらの付加重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な平版印刷版原版の性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。
感度の点では1分子あたりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部すなわち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、さらに、異なる官能数・異なる重合性基(例えば、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。
また、画像形成層中の他の成分(例えば、バインダーポリマー、重合開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、付加重合化合物の選択・使用法は重要な要因であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、支持体や後述の保護層等の密着性を向上せしめる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
【0142】
本発明において、(C)重合性化合物は、画像形成層中の不揮発性成分に対して、好ましくは5〜80質量%、さらに好ましくは25〜75質量%の範囲で使用される。
そのほか、付加重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から、適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、さらに場合によっては、下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施しうる。
【0143】
<その他の成分>
(1)界面活性剤
本発明における画像形成層には、現像性を促進するため、及び塗布面状を向上させるため、界面活性剤を用いることができる。
界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0144】
本発明に用いられるノニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
【0145】
本発明に用いられるアニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類が挙げられる。
【0146】
本発明に用いられるカチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
【0147】
なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
【0148】
さらに好ましい界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号及び同60−168144号の各公報に記載されているフッ素系界面活性剤も好適に挙げられる。
【0149】
界面活性剤は、単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
界面活性剤の含有量は、画像形成層の全固形分に対して、0.001〜10質量%であるのが好ましく、0.01〜5質量%であるのがより好ましい。
【0150】
(2)着色剤
本発明における画像形成層には、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、及び特開昭62−293247号に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料も好適に用いることができる。
これらの着色剤を用いると、画像形成後の画像部と非画像部の区別がつきやすくなるので、添加する方が好ましい。
なお、添加量は、画像形成層の全固形分に対し、0.01〜10質量%の割合である。
【0151】
(3)焼き出し剤
本発明における画像形成層には、焼き出し画像の生成のため、酸又はラジカルによって変色する化合物を添加することができる。
このような化合物としては、例えば、ジフェニルメタン系、トリフェニルメタン系、チアジン系、オキサジン系、キサンテン系、アンスラキノン系、イミノキノン系、アゾ系、アゾメチン系等の各種色素が有効に用いられる。
【0152】
具体例としては、ブリリアントグリーン、エチルバイオレット、メチルグリーン、クリスタルバイオレット、ベイシックフクシン、メチルバイオレット2B、キナルジンレッド、ローズベンガル、メタニルイエロー、チモールスルホフタレイン、キシレノールブルー、メチルオレンジ、パラメチルレッド、コンゴーフレッド、ベンゾプルプリン4B、α−ナフチルレッド、ナイルブルー2B、ナイルブルーA、メチルバイオレット、マラカイトグリーン、パラフクシン、ビクトリアピュアブルーBOH[保土ケ谷化学(株)製]、オイルブルー#603[オリエント化学工業(株)製]、オイルピンク#312[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッド5B[オリエント化学工業(株)製]、オイルスカーレット#308[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドOG[オリエント化学工業(株)製]、オイルレッドRR[オリエント化学工業(株)製]、オイルグリーン#502[オリエント化学工業(株)製]、スピロンレッドBEHスペシャル[保土ケ谷化学工業(株)製]、m−クレゾールパープル、クレゾールレッド、ローダミンB、ローダミン6G、スルホローダミンB、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシアニリノ−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノナフトキノン、2−カルボキシステアリルアミノ−4−p−N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アミノ−フェニルイミノナフトキノン、1−フェニル−3−メチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン、1−β−ナフチル−4−p−ジエチルアミノフェニルイミノ−5−ピラゾロン等の染料やp,p’,p”−ヘキサメチルトリアミノトリフェニルメタン(ロイコクリスタルバイオレット)、Pergascript Blue SRB(チバガイギー社製)等のロイコ染料が挙げられる。
【0153】
上記の他に、感熱紙や感圧紙用の素材として知られているロイコ染料も好適なものとして挙げられる。具体例としては、クリスタルバイオレットラクトン、マラカイトグリーンラクトン、ベンゾイルロイコメチレンブルー、2−(N−フェニル−N−メチルアミノ)−6−(N−p−トリル−N−エチル)アミノ−フルオラン、2−アニリノ−3−メチル−6−(N−エチル−p−トルイジノ)フルオラン、3,6−ジメトキシフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−5−メチル−7−(N,N−ジベンジルアミノ)−フルオラン、3−(N−シクロヘキシル−N−メチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メチルー7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−6−メトキシ−7−アミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−(4−クロロアニリノ)フルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−クロロフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7−ベンジルアミノフルオラン、3−(N,N−ジエチルアミノ)−7,8−ベンゾフロオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−(N,N−ジブチルアミノ)−6−メチル−7−キシリジノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピロリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3,3−ビス(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(1−n−ブチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド、3−(4−ジエチルアミノ−2−エトキシフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)−4−ザフタリド、3−(4−ジエチルアミノフェニル)−3−(1−エチル−2−メチルインドール−3−イル)フタリド、などが挙げられる。
【0154】
酸又はラジカルによって変色する染料の好適な添加量は、画像形成層固形分に対して0.01〜10質量%の割合であることが好ましい。
【0155】
(4)重合禁止剤
本発明における画像形成層には、画像形成層の製造中又は保存中において、(C)重合性化合物の不要な熱重合を防止するために、少量の熱重合防止剤を添加するのが好ましい。
熱重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩が好適に挙げられる。
熱重合防止剤の添加量は、画像形成層の全固形分に対して、約0.01〜約5質量%であるのが好ましい。
【0156】
(5)高級脂肪酸誘導体等
本発明における画像形成層には、酸素による重合阻害を防止するために、ベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で画像形成層の表面に偏在させてもよい。
高級脂肪酸誘導体の添加量は、画像形成層の全固形分に対して、約0.1〜約10質量%であるのが好ましい。
【0157】
(6)可塑剤
本発明における画像形成層は、現像性を向上させるために、可塑剤を含有してもよい。
可塑剤としては、例えば、ジメチルフタレート、ジエチルフタレート、ジブチルフタレート、ジイソブチルフタレート、ジオクチルフタレート、オクチルカプリルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジトリデシルフタレート、ブチルベンジルフタレート、ジイソデシルフタレート、ジアリルフタレート等のフタル酸エステル類;ジメチルグリコールフタレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、トリエチレングリコールジカプリル酸エステル等のグリコールエステル類;トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート等のリン酸エステル類;ジイソブチルアジペート、ジオクチルアジペート、ジメチルセバケート、ジブチルセバケート、ジオクチルアゼレート、ジブチルマレエート等の脂肪族二塩基酸エステル類;ポリグリシジルメタクリレート、クエン酸トリエチル、グリセリントリアセチルエステル、ラウリン酸ブチル等が好適に挙げられる。
可塑剤の含有量は、画像形成層の全固形分に対して、約30質量%以下であるのが好ましい。
【0158】
(7)無機微粒子
本発明における画像形成層は、硬化皮膜強度向上及び機上現像性向上のために、無機微粒子を含有してもよい。
無機微粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム、酸化チタン、炭酸マグネシウム、アルギン酸カルシウム、又はこれらの混合物が好適に挙げられる。これらは皮膜の強化、表面粗面化による界面接着性の強化等に用いることができる。
無機微粒子は、平均粒径が5nm〜10μmであるのが好ましく、0.5μm〜3μmであるのがより好ましい。上記範囲であると、画像形成層中に安定に分散して、画像形成層の膜強度を十分に保持し、印刷時の汚れを生じにくい親水性に優れる非画像部を形成することができる。
上述したような無機微粒子は、コロイダルシリカ分散物等の市販品として容易に入手することができる。
無機微粒子の含有量は、画像形成層の全固形分に対して、40質量%以下であるのが好ましく、30質量%以下であるのがより好ましい。
【0159】
(8)低分子親水性化合物
本発明における画像形成層は、耐刷性を低下させることなく現像性を向上させることから、低分子親水性化合物を含有してもよい。
低分子親水性化合物としては、例えば、水溶性有機化合物としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール等のグリコール類及びそのエーテル又はエステル誘導体類、グリセリン、ペンタエリスリトール等のポリヒドロキシ類、トリエタノールアミン、ジエタノールアミンモノエタノールアミン等の有機アミン類及びその塩、アルキルスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸等の有機スルホン酸類及びその塩、アルキルスルファミン酸等の有機スルファミン酸類及びその塩、アルキル硫酸、アルキルエーテル硫酸等の有機硫酸類及びその塩、フェニルホスホン酸等の有機ホスホン酸類及びその塩、酒石酸、シュウ酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸、アミノ酸類等の有機カルボン酸類及びその塩等が挙げられる。
これらの中でも、有機スルホン酸、有機スルファミン酸、有機硫酸のナトリウム塩やリチウム塩などの有機硫酸塩が好ましく使用される。
【0160】
有機スルホン酸塩の具体的な化合物としては、ノルマルブチルスルホン酸ナトリウム、イソブチルスルホン酸ナトリウム、sec−ブチルスルホン酸ナトリウム、tert−ブチルスルホン酸ナトリウム、ノルマルペンチルスルホン酸ナトリウム、1−エチルプロピルスルホン酸ナトリウム、ノルマルヘキシルスルホン酸ナトリウム、1、2−ジメチルプロピルスルホン酸ナトリウム、2−エチルブチルスルホン酸ナトリウム、シクロヘキシルスルホン酸ナトリウム、ノルマルヘプチルスルホン酸ナトリウム、ノルマルオクチルスルホン酸ナトリウム、tert−オクチルスルホン酸ナトリウム、ノルマルノニルスルホン酸ナトリウム、アリルスルホン酸ナトリウム、2−メチルアリルスルホン酸ナトリウム、ベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム、p−ヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、イソフタル酸ジメチル−5−スルホン酸ナトリウム、1,3−ベンゼンジスルホン酸ジナトリウム、1,3,5−ベンゼントリスルホン酸トリナトリウム、p−クロロベンゼンスルホン酸ナトリウム、3,4−ジクロロベンゼンスルホン酸ナトリウム、1−ナフチルスルホン酸ナトリウム、2−ナフチルスルホン酸ナトリウム、4−ヒドロキシナフチルスルホン酸ナトリウム、1,5−ナフチルジスルホン酸ジナトリウム、2,6−ナフチルジスルホン酸ジナトリウム、1,3,6−ナフチルトリスルホン酸トリナトリウム、及びこれらのリチウム塩交換体などが挙げられる。
【0161】
有機スルファミン酸塩の具体的な化合物としては、ノルマルブチルスルファミン酸ナトリウム、イソブチルスルファミン酸ナトリウム、tert−ブチルスルファミン酸ナトリウム、ノルマルペンチルスルファミン酸ナトリウム、1−エチルプロピルスルファミン酸ナトリウム、ノルマルヘキシルスルファミン酸ナトリウム、1、2−ジメチルプロピルスルファミン酸ナトリウム、2−エチルブチルスルファミン酸ナトリウム、シクロヘキシルスルファミン酸ナトリウム、及びこれらのリチウム塩交換体などが挙げられる。
【0162】
これらの化合物は疎水性部分の構造が小さくて界面活性作用がほとんどなく、長鎖アルキルスルホン酸塩や長鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩などが良好に用いられる前述の界面活性剤とは明確に区別される。
【0163】
有機硫酸塩としては、特に下記一般式(iii)で示される化合物が好ましく使用される

【0164】
【化20】

【0165】
上記一般式(iii)中、Rは、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、又は複素環基を表し、mは1〜4の整数を表し、Xはナトリウム、カリウム、又はリチウムを表す。
【0166】
Rは、好ましくは、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、炭素数20以下のアリール基が挙げられる。これらの基はさらに置換基を有していてもよく、その場合、導入可能な置換基としては、直鎖状、分岐状又は環状の炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアルケニル基、炭素数1〜12のアルキニル基、ハロゲン原子、炭素数20以下のアリール基が挙げられる。
【0167】
一般式(iii)で表される化合物の好ましい例としては、オキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸ナトリウム、ジオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸ナトリウム、ジオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸カリウム、ジオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸リチウム、トリオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸ナトリウム、テトラオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸ナトリウム、ジオキシエチレンヘキシルエーテル硫酸ナトリウム、ジオキシエチレンオクチルエーテル硫酸ナトリウム、ジオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等が挙げられる。なかでも、最も好ましい化合物としては、ジオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸ナトリウム、ジオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸カリウム、ジオキシエチレン−2−エチルヘキシルエーテル硫酸リチウムが挙げられる。
【0168】
これら低分子親水性化合物の画像形成層への添加量は、画像形成層全固形分量の0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましい。より好ましくは1質量%以上10質量%以下であり、さらに好ましくは2質量%以上8質量%以下である。この範囲で良好な機上現像性と耐刷性が得られる。
これらの化合物は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0169】
(9)感脂化剤
本発明の平版印刷版原版では、着肉性向上のため、画像形成層及び/又は保護層に感脂化剤としてホスホニウム化合物を添加することができる。好適なホスホニウム化合物としては、特開2006−297907号公報に記載の下記一般式(iv)又は特開2007−50660号公報に記載の下記一般式(v)で表される化合物が挙げられる。
【0170】
【化21】

【0171】
一般式(iv)において、R1〜R4は、それぞれ独立に、置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、複素環基又は水素原子を表す。R1〜R4の少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。Xはカウンターアニオンを示す。
【0172】
一般式(v)において、Ar1〜Ar6は、各々独立してアリール基又は複素環基を表し、Lは2価の連結基を表し、Xn−はn価のカウンターアニオンを表し、nは1〜3の整数を表し、mはn x m=2を満たす数を表す。ここでアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基、フルオロフェニル基、クロロフェニル基、ブロモフェニル基、メトキシフェニル基、エトキシフェニル基、ジメトキシフェニル基、メトキシカルボニルフェニル基、ジメチルアミノフェニル基などが好適なものとして挙げられる。複素環基としては、ピリジル基、キノリル基、ピリミジニル基、チエニル基、フリル基などが挙げられる。Lは2価の連結基を表す。連結基中の炭素数は6〜15が好ましく、より好ましくは、炭素数6〜12の連結基である。Xn−の好ましいものとしては、Cl、Br、Iなどのハロゲン化物アニオン、トルエンスルホナート、ナフタレン−1,7−ジスルホナート、ナフタレン−1,3,6−トリスルホナート、5−ベンゾイル−4−ヒドロキシ−2−メトキシベンゼン−4−スルホナートなどのスルホン酸アニオン、カルボン酸アニオン、硫酸エステルアニオン、PF、BF、過塩素酸アニオンなどが挙げられる。なかでも、スルホン酸アニオンが特に好ましい。
【0173】
上記一般式(iv)又は(v)で表されるホスホニウム化合物の具体例を以下に示す。
【0174】
【化22】

【0175】
感脂化剤としてはホスホニウム化合物の他に、下記の含窒素化合物も好適なものとして挙げられる。好ましい含窒素化合物としては下記一般式(I)の構造を有す。
【0176】
【化23】

【0177】
式中、R1〜R4は、それぞれ独立に置換又は無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、複素環基又は水素原子を表す。R1〜R4の少なくとも2つが結合して環を形成してもよい。Xはアニオンであり、PF、BF、又はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基ならびに複素環基から選ばれる置換基を有する有機スルホン酸アニオンを示す。
すなわち本発明の含窒素化合物は、R1〜R4の少なくとも1つが水素原子であるアミン塩類、R1〜R4がいずれも水素原子でない第4級アンモニウム塩類でもよく、また下記一般式(II)で示されるイミダゾリニウム塩類、下記一般式(III)で示されるベンゾイミダゾリニウム塩類、下記一般式(IV)で示されるピリジニウム塩類、下記一般式(V)で示されるキノリニウム塩類の構造でもよい。
【0178】
【化24】

【0179】
上記式中、RとRは、置換又は無置換の、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基、複素環基又は水素原子を表す。Xは前記同様、アニオンであり、PF、BF、又はアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、アリール基、アラルキル基ならびに複素環基から選ばれる置換基を有する有機スルホン酸アニオンを示す。
【0180】
これらの中でも、第4級アンモニウム塩類、ピリジニウム塩類が好ましく用いられる。
【0181】
第4級アンモニウム塩類の具体例を以下に示す。
【0182】
【化25】

【0183】
ピリジニウム塩類の具体例を以下に示す。
【0184】
【化26】

【0185】
画像形成層又は保護層への感脂化剤の添加量としては、各層の固形分中0.01〜20質量%が好ましく、0.05〜10質量%がさらに好ましく、0.1〜5質量%がもっとも好ましい。これらの範囲内で良好なインキ着肉性が得られる。
【0186】
(10)共増感剤
本発明の画像記録層には、感度を一層向上させる、または酸素による重合阻害を抑制する等の作用を有する連鎖移動剤または共増感剤などと呼ばれる公知の化合物を加えてもよい。
【0187】
この様な化合物の例としては、アミン類、例えばM. R. Sanderら著「Journal of Polymer Society」第10巻3173頁(1972)、特公昭44−20189号、特開昭51−82102号、特開昭52−134692号、特開昭59−138205号、特開昭60−84305号、特開昭62−18537号、特開昭64−33104号、Research Disclosure 33825号記載の化合物、等が挙げられ、具体的には、トリエタノールアミン、N−フェニルグリシン、N−フェニルアスパラギン酸、およびp−ジメチルアミノ安息香酸エチルエステル、p−ホルミルジメチルアニリン、p−メチルチオジメチルアニリン等のN,N−ジアルキルアニリン誘導体、等が挙げられる。
【0188】
連鎖移動剤として作用する別の例としては、例えば、分子内にSH、PH、SiH、GeHを有する化合物群が挙げられる。これらは、低活性のラジカル種に水素供与して、ラジカルを生成するか、または、酸化された後、脱プロトンすることによりラジカルを生成しうる。
【0189】
本発明の画像記録層には、特に、チオール化合物(例えば、2−メルカプトベンズイミダゾール類、2−メルカプトベンズチアゾール類、2−メルカプトベンズオキサゾール類、3−メルカプトトリアゾール類、5−メルカプトテトラゾール類、等)を連鎖移動剤として好ましく用いることができる。
【0190】
なかでも、特開2006−091479号公報等に記載の下記一般式(VI)で表されるチオール化合物が特に好適に使用される。連鎖移動剤としてこのチオール化合物を用いることによって、臭気の問題、および画像記録層から蒸発や他の層への拡散による感度減少を回避し、保存安定性に優れ、さらには高感度で高耐刷の平版印刷版原版が得られる。
【0191】
【化27】

【0192】
一般式(VI)中、Rは水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表し、AはN=C−N部分と共に炭素原子を有する5員環または6員環の複素環を形成する原子団を表し、Aはさらに置換基を有してもよい。
【0193】
さらに好ましくは下記一般式(VIA)または一般式(VIB)で表されるものが使用される。
【0194】
【化28】

【0195】
一般式(VIA)および式(VIB)中、Rは水素原子、置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表し、Xはハロゲン原子、アルコキシル基、置換基を有してもよいアルキル基、または置換基を有してもよいアリール基を表す。
【0196】
具体的化合例としては、1−メチル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−プロピル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−ヘキシル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−ヘキシル−2−メルカプト−5−クロルベンゾイミダゾール、1−ペンチル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−オクチル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−オクチル−2−メルカプト−5−メトキシベンゾイミダゾール、1−シクロヘキシル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−フェニル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−フェニル−2−メルカプト−5−メチルスルホニルベンゾイミダゾール、1−(p−トリル)−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−メトキシエチル−2−メルカプトベンゾイミダゾール、1−ブチル−2−メルカプトナフトイミダゾール、1−メチル−2−メルカプト−5−フェニル−1,3,5−トリアゾール、1−ブチル−2−メルカプト−5−フェニル−1,3,5−トリアゾール、1−ヘプチル−2−メルカプト−5−フェニル−1,3,5−トリアゾール、1−フェニル−2−メルカプト−5−フェニル−1,3,5−トリアゾール、1−ベンジル−2−メルカプト−5−フェニル−1,3,5−トリアゾール、1−フェネチル−2−メルカプト−5−フェニル−1,3,5−トリアゾール、1−シクロヘキシルル−2−メルカプト−5−フェニル−1,3,5−トリアゾール、1−フェネチル−2−メルカプト−5−(3−フルオロフェニル)−1,3,5−トリアゾール、1−フェネチル−2−メルカプト−5−(3−トリフルオロメチルフェニル)−1,3,5−トリアゾール、1−ベンジル−2−メルカプト−5−(p−トリル)−1,3,5−トリアゾール、1−ベンジル−2−メルカプト−5−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアゾール、1−ベンジル−2−メルカプト−5−(p−トリフルオロメチルフェニル)−1,3,5−トリアゾール、1−ベンジル−2−メルカプト−5−(3,5−ジクロロフェニル)−1,3,5−トリアゾール、1−フェニル−2−メルカプト−5−(p−トリル)−1,3,5−トリアゾール、1−フェニル−2−メルカプト−5−(4−メトキシフェニル)−1,3,5−トリアゾール、1−(1−ナフチル)−2−メルカプト−5−フェニル−1,3,5−トリアゾール、1−(4−ブロモフェニル)−2−メルカプト−5−フェニル−1,3,5−トリアゾール、1−(4−トリフルオロフェニル)−2−メルカプト−5−フェニル−1,3,5−トリアゾール、6−ブロモ−2−メルカプト−ベンゾイミダゾール、などが挙げられる。
【0197】
これらの連鎖移動剤の使用量は画像記録層の全固形分の質量に対し、好ましくは0.01〜20質量%、より好ましくは0.1〜15質量%である。さらに好ましくは1.0〜10質量%である。
【0198】
<画像形成層の形成>
本発明における画像形成層は、必要な上記各成分を溶剤に分散又は溶解して塗布液を調製し、これを支持体上に塗布、乾燥することで形成される。
ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチルラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独又は混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
【0199】
本発明における画像形成層は、同一又は異なる上記各成分を同一又は異なる溶剤に分散又は溶解した塗布液を複数調製し、複数回の塗布、乾燥を繰り返して、多層構造の画像形成層を形成することも可能である。
【0200】
また、塗布、乾燥後に得られる支持体上の画像形成層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.3〜3.0g/mが好ましい。この範囲で、良好な感度と画像形成層の良好な皮膜特性が得られる。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等が挙げられる。
【0201】
(保護層)
本発明の平版印刷版原版は、画像形成層の上に保護層(オーバーコート層)を備えることが好ましい。
保護層は酸素遮断によって画像形成阻害反応を抑制する機能の他、画像形成層での傷の発生防止、高照度レーザー露光時のアブレーション防止などの機能も有する。
以下、保護層を構成する成分等について説明する。
【0202】
通常、平版印刷版の露光処理は大気中で実施する。露光処理によって生じる画像形成層中での画像形成反応は、大気中に存在する酸素、塩基性物質等の低分子化合物によって阻害され得る。保護層は、この酸素、塩基性物質等の低分子化合物が画像形成層へ混入することを防止し、結果として大気中での画像形成阻害反応を抑制する。従って、保護層に望まれる特性は、酸素等の低分子化合物の透過性を低くすることであり、さらに、露光に用いられる光の透過性が良好で、画像形成層との密着性に優れ、かつ、露光後の現像処理工程で容易に除去することができるものである。このような特性を有する保護層については、例えば、米国特許第3,458,311号明細書及び特公昭55−49729号公報に記載されている。
【0203】
保護層に用いられる材料としては、水溶性ポリマー、水不溶性ポリマーのいずれをも適宜選択して使用することができる。具体的には、例えば、ポリビニルアルコール、変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニルの部分鹸化物、エチレン−ビニルアルコール共重合体、水溶性セルロース誘導体、ゼラチン、デンプン誘導体、アラビアゴム等の水溶性ポリマーや、ポリ塩化ビニリデン、ポリ(メタ)アクリロニトリル、ポリサルホン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリアミド、セロハン等のポリマー等が挙げられる。
これらは、必要に応じて2種以上を併用して用いることもできる。
【0204】
上記材料中で比較的有用な素材としては、結晶性に優れる水溶性高分子化合物が挙げられる。具体的には、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾール、ポリアクリル酸等の水溶性アクリル樹脂、ゼラチン、アラビアゴム等が好適であり、なかでも、水を溶媒として塗布可能であり、かつ、印刷時における湿し水により容易に除去されるという観点から、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリビニルイミダゾールが好ましい。その中でも、ポリビニルアルコール(PVA)は、酸素遮断性、現像除去性等の基本的な特性に対して最も良好な結果を与える。
【0205】
保護層に用い得るポリビニルアルコールは、必要な水溶性を有する実質的量の未置換ビニルアルコール単位を含有するかぎり、一部がエステル、エーテル、及びアセタールで置換されていてもよい。また、同様に一部が他の共重合成分を含有していてもよい。例えば、カルボキシル基、スルホ基等のアニオンで変性されたアニオン変性部位、アミノ基、アンモニウム基等のカチオンで変性されたカチオン変性部位、シラノール変性部位、チオール変性部位等種々の親水性変性部位をランダムに有す各種重合度のポリビニルアルコール、前記のアニオン変性部位、前記のカチオン変性部位、シラノール変性部位、チオール変性部位、さらにはアルコキシル変性部位、スルフィド変性部位、ビニルアルコールと各種有機酸とのエステル変性部位、前記アニオン変性部位とアルコール類等とのエステル変性部位、エポキシ変性部位等種々の変性部位をポリマー鎖末端に有す各種重合度のポリビニルアルコール等も好ましく用いられる。
これらの中でもアニオン変性ポリビニルアルコールが、本発明の現像液中での分散安定性が良好であり最も好ましい。このアニオン変性ポリビニルアルコールは、保護層全固形分中の10〜50質量%含有することが好ましく、20〜40質量%含有することがより好ましい。
【0206】
これら変性ポリビニルアルコールは71〜100モル%加水分解された重合度300〜2400の範囲の化合物が好適に挙げられる。具体的には、株式会社クラレ製のPVA−105,PVA−110,PVA−117,PVA−117H,PVA−120,PVA−124,PVA−124H,PVA−CS,PVA−CST,PVA−HC,PVA−203,PVA−204,PVA−205,PVA−210,PVA−217,PVA−220,PVA−224,PVA−217EE,PVA−217E,PVA−220E,PVA−224E,PVA−405,PVA−420,PVA−613,L−8等が挙げられる。
また、変性ポリビニルアルコールとしては、アニオン変性部位を有すKL−318、KL−118、KM−618、KM−118、SK−5102、CKS−50、カチオン変性部位を有すC−318、C−118、CM−318、末端チオール変性部位を有すM−205、M−115、末端スルフィド変性部位を有すMP−103、MP−203、MP−102、MP−202、高級脂肪酸とのエステル変性部位を末端に有すHL−12E、HL−1203、その他反応性シラン変性部位を有すR−1130、R−2105、R−2130等が挙げられる。
【0207】
また、保護層には無機質の層状化合物、すなわち、無機化合物であって層状構造を有し、かつ、平板状の形状を有する化合物を含有することが好ましい。このような無機質の層状化合物を併用することにより、酸素遮断性はさらに高まり、また、保護層の膜強度が一層向上して耐キズ性が向上する他、特定保護層にマット性を付与することができる。
無機質の層状化合物としては、例えば、下記一般式A(B,C)2−5D10(OH,F,O)〔ただし、AはLi,K,Na,Ca,Mg,有機カチオンの何れか、B及びCはFe(II),Fe(III),Mn,Al,Mg,Vの何れかであり、DはSi又はAlである。〕で表される天然雲母、合成雲母等の雲母群、式3MgO・4SiO・HOで表されるタルク、テニオライト、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、リン酸ジルコニウムなどが挙げられる。
【0208】
雲母化合物のうち、天然雲母としては白雲母、ソーダ雲母、金雲母、黒雲母及び鱗雲母が挙げられる。また、合成雲母としては、フッ素金雲母KMg(AlSi10)F、カリ四ケイ素雲母KMg2.5Si10)F等の非膨潤性雲母、及びNaテトラシリリックマイカNaMg2.5(Si10)F、Na又はLiテニオライト(Na,Li)MgLi(Si10)F、モンモリロナイト系のNa又はLiヘクトライト(Na,Li)1/8Mg/5Li/8(Si10)F等の膨潤性雲母等が挙げられる。また合成スメクタイトも有用である。
【0209】
上記雲母化合物の中でも、合成の層状化合物であるフッ素系の膨潤性雲母が特に有用である。すなわち、雲母、モンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ベントナイト等の膨潤性粘土鉱物類等は、10〜15Å程度の厚さの単位結晶格子層からなる積層構造を有し、格子内金属原子置換が他の粘度鉱物より著しく大きい。その結果、格子層は正電荷不足を生じ、それを補償するために層間にLi、Na、Ca2+、Mg2+、アミン塩、第4級アンモニウム塩、ホスホニウム塩及びスルホニウム塩等の有機カチオンの陽イオンを吸着している。これらの層状化合物は水により膨潤する。その状態でシェアーをかけると容易に劈開し、水中で安定したゾルを形成する。ベントナイト及び膨潤性合成雲母はこの傾向が強く、本発明に有用であり、特に、入手容易性、品質の均一性の観点から、膨潤性合成雲母が好ましく用いられる。
【0210】
層状化合物の形状は平板状であり、拡散制御の観点からは、その厚さは薄ければ薄いほどよく、平面サイズは塗布面の平滑性や活性光線の透過性を阻害しない限りにおいて大きいほどよい。従って、アスペクト比は20以上であり、好ましくは100以上、特に好ましくは200以上である。なお、アスペクト比は粒子の長径に対する厚さの比であり、たとえば、粒子の顕微鏡写真による投影図から測定することができる。アスペクト比が大きい程、得られる効果が大きい。
【0211】
層状化合物の粒子径は、その平均長径が0.3〜20μm、好ましくは0.5〜10μm、特に好ましくは1〜5μmである。粒子径が0.3μmよりも小さいと酸素や水分の透過の抑制が不十分であり、効果を十分に発揮できない。また20μmよりも大きいと塗布液中での分散安定性が不十分であり、安定的な塗布を行うことができない問題が生じる。また、該粒子の平均の厚さは、0.1μm以下、好ましくは、0.05μm以下、特に好ましくは、0.01μm以下である。例えば、無機質の層状化合物のうち、代表的化合物である膨潤性合成雲母のサイズは厚さが1〜50nm、面サイズが1〜20μm程度である。
【0212】
このようにアスペクト比が大きい無機質の層状化合物の粒子を保護層に含有させると、塗膜強度が向上し、また、酸素や水分の透過を効果的に防止しうるため、変形などによる保護層の劣化を防止し、高湿条件下において長期間保存しても、湿度の変化による平版印刷版原版における画像形成性の低下もなく保存安定性に優れる。
【0213】
次に、層状化合物を保護層に用いる場合の一般的な分散方法の例について述べる。
まず、水100質量部に先に層状化合物の好ましいものとして挙げた膨潤性の層状化合物を5〜10質量部添加し、充分水になじませ、膨潤させた後、分散機にかけて分散する。ここで用いる分散機としては、機械的に直接力を加えて分散する各種ミル、大きな剪断力を有する高速攪拌型分散機、高強度の超音波エネルギーを与える分散機等が挙げられる。具体的には、ボールミル、サンドグラインダーミル、ビスコミル、コロイドミル、ホモジナイザー、ティゾルバー、ポリトロン、ホモミキサー、ホモブレンダー、ケディミル、ジェットアジター、毛細管式乳化装置、液体サイレン、電磁歪式超音波発生機、ポールマン笛を有する乳化装置等が挙げられる。上記の方法で分散した無機質層状化合物5〜10質量%の分散物は高粘度あるいはゲル状であり、保存安定性は極めて良好である。
この分散物を用いて保護層用塗布液を調製する際には、水で希釈し、充分攪拌した後、バインダー溶液と配合して調製するのが好ましい。
【0214】
保護層中の無機質層状化合物の含有量は、保護層に使用されるバインダーの量に対し、質量比で5/1〜1/100であることが好ましい。複数種の無機質の層状化合物を併用した場合でも、これら無機質の層状化合物の合計量が上記の質量比に適合することが好ましい。
【0215】
保護層の他の添加物として、例えば、グリセリン、ジプロピレングリコール、プロピオンアミド、シクロヘキサンジオール、ソルビトール等を前記水溶性又は水不溶性ポリマーに対して数質量%相当量添加して可撓性を付与することができる。また、皮膜の物性改良のため水溶性の(メタ)アクリル系ポリマー、水溶性可塑剤などの公知の添加剤を加えることができる。
【0216】
さらに、本発明における保護層は後述のような保護層用塗布液を用いて形成されるが、この塗布液には、画像形成層との密着性、塗布液の経時安定性を向上するための公知の添加剤を加えてもよい。
すなわち、保護層用塗布液には、塗布性を向上させためのアニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、フッ素系界面活性剤、具体的には、アルキル硫酸ナトリウム、アルキルスルホン酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤;アルキルアミノカルボン酸塩、アルキルアミノジカルボン酸塩等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等の非イオン界面活性剤を添加することができる。これら界面活性剤の添加量は前記水溶性又は水不溶性ポリマーに対して0.1〜100質量%添加することができる。
【0217】
また、画像部との密着性を良化させるため、例えば、特開昭49−70702号公報及び英国特許出願公開第1303578号明細書には、主にポリビニルアルコールからなる親水性ポリマー中に、アクリル系エマルション、水不溶性ビニルピロリドン−ビニルアセテート共重合体等を20〜60質量%混合させ、画像形成層上に積層することにより、十分な接着性が得られることが記載されている。本発明においては、これらの公知の技術をいずれも用いることができる。
【0218】
さらに、保護層には、他の機能を付与することもできる。例えば、露光に用いられる赤外線の透過性に優れ、かつ、それ以外の波長の光を効率よく吸収しうる、着色剤(例えば、水溶性染料)の添加により、感度低下を引き起こすことなく、セーフライト適性を向上させることができる。
【0219】
保護層の形成は、上記保護層成分を溶媒に分散又は溶解して調製された保護層用塗布液を、画像形成層上に塗布、乾燥して行われる。
塗布溶剤は、バインダーとの関連において適宜選択することができるが、水溶性ポリマーを用いる場合には、蒸留水、精製水を用いることが好ましい。
【0220】
保護層の塗布方法は、特に制限されるものではなく、米国特許第3,458,311号明細書又は特公昭55−49729号公報に記載されている方法など公知の方法を適用することができる。
具体的には、例えば、保護層を形成する際には、ブレード塗布法、エアナイフ塗布法、グラビア塗布法、ロールコーティング塗布法、スプレー塗布法、ディップ塗布法、バー塗布法等が用いられる。
【0221】
保護層の塗布量としては、乾燥後の塗布量で、0.02〜3g/mの範囲であることが好ましく、0.05〜1g/mの範囲がより好ましく、最も好ましくは0.1〜0.4g/mの範囲である。
【0222】
(支持体)
本発明の平版印刷版原版に用いられる支持体は、特に限定されず、寸度的に安定な板状物であればよい。例えば、紙、プラスチック(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等)がラミネートされた紙、金属板(例えば、アルミニウム、亜鉛、銅等)、プラスチックフィルム(例えば、二酢酸セルロース、三酢酸セルロース、プロピオン酸セルロース、酪酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、硝酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリビニルアセタール等)、上述した金属がラミネートされ又は蒸着された紙又はプラスチックフィルム等が挙げられる。
好ましい支持体としては、ポリエステルフィルム及びアルミニウム板が挙げられる。なかでも、寸法安定性がよく、比較的安価であるアルミニウム板が好ましい。
【0223】
アルミニウム板は、純アルミニウム板、アルミニウムを主成分とし、微量の異元素を含む合金板、又は、アルミニウムもしくはアルミニウム合金の薄膜にプラスチックがラミネートされているものである。アルミニウム合金に含まれる異元素には、ケイ素、鉄、マンガン、銅、マグネシウム、クロム、亜鉛、ビスマス、ニッケル、チタン等がある。合金中の異元素の含有量は10質量%以下であるのが好ましい。本発明においては、純アルミニウム板が好ましいが、完全に純粋なアルミニウムは精錬技術上製造が困難であるので、わずかに異元素を含有するものでもよい。アルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、公知公用の素材のものを適宜利用することができる。
【0224】
アルミニウム板を使用するに先立ち、粗面化処理、陽極酸化処理等の表面処理を施すのが好ましい。表面処理により、親水性の向上及び画像形成層と支持体との密着性の確保が容易になる。アルミニウム板を粗面化処理するに先立ち、所望により、表面の圧延油を除去するための界面活性剤、有機溶剤、アルカリ性水溶液等による脱脂処理が行われる。
【0225】
アルミニウム板表面の粗面化処理は、種々の方法により行われるが、例えば、機械的粗面化処理、電気化学的粗面化処理(電気化学的に表面を溶解させる粗面化処理)、化学的粗面化処理(化学的に表面を選択溶解させる粗面化処理)が挙げられる。
機械的粗面化処理の方法としては、ボール研磨法、ブラシ研磨法、ブラスト研磨法、バフ研磨法等の公知の方法を用いることができる。また、アルミニウムの圧延段階において凹凸を設けたロールで凹凸形状を転写する転写法も用いることができる。
電気化学的粗面化処理の方法としては、例えば、塩酸、硝酸等の酸を含有する電解液中で交流又は直流により行う方法が挙げられる。また、特開昭54−63902号公報に記載されているような混合酸を用いる方法も挙げられる。
【0226】
粗面化処理されたアルミニウム板は、必要に応じて、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等の水溶液を用いてアルカリエッチング処理を施され、さらに、中和処理された後、所望により、耐摩耗性を高めるために陽極酸化処理を施される。
【0227】
アルミニウム板の陽極酸化処理に用いられる電解質としては、多孔質酸化皮膜を形成させる種々の電解質の使用が可能である。一般的には、硫酸、塩酸、シュウ酸、リン酸、クロム酸又はそれらの混酸が用いられる。これらの中でも硫酸、シュウ酸、リン酸が好ましく、リン酸が更に好ましい。それらの電解質の濃度は電解質の種類によって適宜決められる。
陽極酸化処理の条件は、用いられる電解質により種々変わるので一概に特定することはできないが、一般的には、電解質濃度1〜80質量%溶液、液温5〜70℃、電流密度5〜60A/dm、電圧1〜100V、電解時間10秒〜5分であるのが好ましい。形成される陽極酸化皮膜の量は、1.0〜5.0g/mであるのが好ましく、1.5〜4.0g/mであるのがより好ましい。この範囲で、良好な耐刷性と平版印刷版の非画像部の良好な耐傷性が得られる。
【0228】
本発明で用いられる支持体としては、上記のような表面処理をされ陽極酸化皮膜を有する基板そのままでもよいが、上層との接着性、親水性、汚れ難さ、断熱性などを一層改良するため、必要に応じて、特開2001−253181号公報や特開2001−322365号公報に記載されている陽極酸化皮膜のマイクロポアの拡大処理や封孔処理、及び親水性化合物を含有する水溶液に浸漬する表面親水化処理などを適宜選択して行うことができる。もちろん、これら拡大処理、封孔処理はこれらに記載のものに限られたものではなく従来公知の何れも方法も行うことができる。例えば、封孔処理としては、蒸気封孔のほかフッ化ジルコン酸の単独処理、フッ化ナトリウムによる処理、塩化リチウムを添加した蒸気封孔でも可能である。
【0229】
本発明に用いられる封孔処理は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができるが、なかでも、無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理、水蒸気による封孔処理及び熱水による封孔処理が好ましい。以下にそれぞれ説明する。
【0230】
<1>無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理
無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理に用いられる無機フッ素化合物としては、金属フッ化物が好適に挙げられる。
具体的には、例えば、フッ化ナトリウム、フッ化カリウム、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸カリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化ジルコン酸アンモニウム、フッ化チタン酸アンモニウム、フッ化チタン酸カリウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸、ヘキサフルオロケイ酸、フッ化ニッケル、フッ化鉄、フッ化リン酸、フッ化リン酸アンモニウムが挙げられる。なかでも、フッ化ジルコン酸ナトリウム、フッ化チタン酸ナトリウム、フッ化ジルコン酸、フッ化チタン酸が好ましい。
【0231】
水溶液中の無機フッ素化合物の濃度は、陽極酸化皮膜のマイクロポアの封孔を十分に行う点で、0.01質量%以上であるのが好ましく、0.05質量%以上であるのがより好ましく、また、耐汚れ性の点で、1質量%以下であるのが好ましく、0.5質量%以下であるのがより好ましい。
【0232】
無機フッ素化合物を含有する水溶液は、さらに、リン酸塩化合物を含有するのが好ましい。リン酸塩化合物を含有すると、陽極酸化皮膜の表面の親水性が向上するため、機上現像性及び耐汚れ性を向上させることができる。
【0233】
リン酸塩化合物としては、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属等の金属のリン酸塩が好適に挙げられる。
具体的には、例えば、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、リン酸アンモニウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、リン酸一アンモニウム、リン酸一カリウム、リン酸一ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウム、リン酸カルシウム、リン酸水素アンモニウムナトリウム、リン酸水素マグネシウム、リン酸マグネシウム、リン酸第一鉄、リン酸第二鉄、リン酸二水素ナトリウム、リン酸ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸鉛、リン酸二アンモニウム、リン酸二水素カルシウム、リン酸リチウム、リンタングステン酸、リンタングステン酸アンモニウム、リンタングステン酸ナトリウム、リンモリブデン酸アンモニウム、リンモリブデン酸ナトリウム、亜リン酸ナトリウム、トリポリリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウムが挙げられる。なかでも、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸水素二カリウムが好ましい。
無機フッ素化合物とリン酸塩化合物の組み合わせは、特に限定されないが、水溶液が、無機フッ素化合物として、少なくともフッ化ジルコン酸ナトリウムを含有し、リン酸塩化合物として、少なくともリン酸二水素ナトリウムを含有するのが好ましい。
【0234】
水溶液中のリン酸塩化合物の濃度は、機上現像性及び耐汚れ性の向上の点で、0.01質量%以上であるのが好ましく、0.1質量%以上であるのがより好ましく、また、溶解性の点で、20質量%以下であるのが好ましく、5質量%以下であるのがより好ましい。
【0235】
水溶液中の各化合物の割合は、特に限定されないが、無機フッ素化合物とリン酸塩化合物の質量比が、1/200〜10/1であるのが好ましく、1/30〜2/1であるのがより好ましい。
また、水溶液の温度は、20℃以上であるのが好ましく、40℃以上であるのがより好ましく、また、100℃以下であるのが好ましく、80℃以下であるのがより好ましい。
また、水溶液は、pH1以上であるのが好ましく、pH2以上であるのがより好ましく、また、pH11以下であるのが好ましく、pH5以下であるのがより好ましい。
無機フッ素化合物を含有する水溶液による封孔処理の方法は、特に限定されず、例えば、浸漬法、スプレー法が挙げられる。これらは単独で1回又は複数回用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
なかでも、浸漬法が好ましい。浸漬法を用いて処理する場合、処理時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
【0236】
<2>水蒸気による封孔処理
水蒸気による封孔処理は、例えば、加圧又は常圧の水蒸気を連続的に又は非連続的に、陽極酸化皮膜に接触させる方法が挙げられる。
水蒸気の温度は、80℃以上であるのが好ましく、95℃以上であるのがより好ましく、また、105℃以下であるのが好ましい。
水蒸気の圧力は、(大気圧−50mmAq)から(大気圧+300mmAq)までの範囲(1.008×10〜1.043×10Pa)であるのが好ましい。
また、水蒸気を接触させる時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
【0237】
<3>熱水による封孔処理
熱水による封孔処理としては、例えば、陽極酸化皮膜を形成させたアルミニウム板を熱水に浸漬させる方法が挙げられる。
熱水は、無機塩(例えば、リン酸塩)又は有機塩を含有していてもよい。
熱水の温度は、80℃以上であるのが好ましく、95℃以上であるのがより好ましく、また、100℃以下であるのが好ましい。
また、熱水に浸漬させる時間は、1秒以上であるのが好ましく、3秒以上であるのがより好ましく、また、100秒以下であるのが好ましく、20秒以下であるのがより好ましい。
【0238】
前記親水化処理としては、米国特許第2,714,066号、同第3,181,461号、同第3,280,734号及び同第3,902,734号の各明細書に記載されているようなアルカリ金属シリケート法がある。この方法においては、支持体をケイ酸ナトリウム等の水溶液で浸漬処理又は電解処理する。そのほかに、特公昭36−22063号公報に記載されているフッ化ジルコン酸カリウムで処理する方法、米国特許第3,136,636号明細書に記載されているようなポリアクリル酸で処理する方法、米国特許第3,276,868号、同第4,153,461号及び同第4,689,272号の各明細書に記載されているようなポリビニルホスホン酸で処理する方法等が挙げられる。これらの中でもアルカリ金属シリケート処理やポリビニルホスホン酸処理が好ましく、ポリビニルホスホン酸処理が更に好ましい。
【0239】
本発明における支持体として、ポリエステルフィルムなど表面の親水性が不十分な支持体を用いる場合は、親水層を塗布して表面を親水性にすることが望ましい。親水層としては、特開2001−199175号公報に記載の、ベリリウム、マグネシウム、アルミニウム、珪素、チタン、硼素、ゲルマニウム、スズ、ジルコニウム、鉄、バナジウム、アンチモン及び遷移金属から選択される少なくとも一つの元素の酸化物又は水酸化物のコロイドを含有する塗布液を塗布してなる親水層や、特開2002−79772号公報に記載の、有機親水性ポリマーを架橋あるいは疑似架橋することにより得られる有機親水性マトリックスを有する親水層や、ポリアルコキシシラン、チタネート、ジルコネート又はアルミネートの加水分解及び縮合反応からなるゾル−ゲル変換により得られる無機親水性マトリックスを有する親水層、あるいは、金属酸化物を含有する表面を有する無機薄膜からなる親水層が好ましい。なかでも、珪素の酸化物又は水酸化物のコロイドを含有する塗布液を塗布してなる親水層が好ましい。
【0240】
また、本発明における支持体としてポリエステルフィルム等を用いる場合には、支持体の親水性層側又は反対側、あるいは両側に、帯電防止層を設けるのが好ましい。帯電防止層を支持体と親水性層との間に設けた場合には、親水性層との密着性向上にも寄与する。帯電防止層としては、特開2002−79772号公報に記載の、金属酸化物微粒子やマット剤を分散したポリマー層等が使用できる。
【0241】
支持体は、中心線平均粗さが0.10〜1.2μmであるのが好ましい。この範囲で、画像形成層との良好な密着性、良好な耐刷性と良好な汚れ難さが得られる。
【0242】
支持体の厚さは0.1〜0.6mmであるのが好ましく、0.15〜0.4mmであるのがより好ましい。
【0243】
(バックコート層)
支持体に表面処理を施した後又は下塗り層(後述)を形成させた後、必要に応じて、支持体の裏面にバックコート層を設けることができる。
バックコート層としては、例えば、特開平5−45885号公報に記載されている有機高分子化合物、特開平6−35174号公報に記載されている有機金属化合物又は無機金属化合物を加水分解及び重縮合させて得られる金属酸化物からなる被覆層が好適に挙げられる。なかでも、Si(OCH、Si(OC、Si(OC、Si(OC等のケイ素のアルコキシ化合物を用いるのが、原料が安価で入手しやすい点で好ましい。
【0244】
(下塗り層)
本発明に用いられる平版印刷版原版においては、必要に応じて、画像形成層と支持体との間に下塗り層を設けることができる。
下塗り層は、未露光部において、画像形成層の支持体からのはく離を生じやすくさせるため、現像性が向上する。また、赤外レーザー露光の場合は、下塗り層が断熱層として機能することにより、露光により発生した熱が支持体に拡散せず効率よく利用されるようになるため、高感度化が図れるという利点がある。
【0245】
下塗り層用化合物としては、具体的には、特開平10−282679号公報に記載されている付加重合可能なエチレン性二重結合反応基を有しているシランカップリング剤、特開平2−304441号公報記載のエチレン性二重結合反応基を有しているリン化合物等が好適に挙げられる。
最も好ましい下塗り層用化合物としては、基板吸着性基(以下では単に吸着性基という。)、親水性基、及び架橋性基を有する高分子樹脂が挙げられる。この高分子樹脂は、吸着性基を有するモノマー、親水性基を有するモノマー、及び架橋性基を有するモノマーを共重合してなることが好ましい。
【0246】
下塗り層用の高分子樹脂は、親水性支持体表面への吸着性基を有することが好ましい。親水性支持体表面への吸着性の有無に関しては、例えば、以下のような方法で判断できる。
試験化合物を易溶性の溶媒に溶解させた塗布夜を作製し、その塗布夜を乾燥後の塗布量が30mg/mとなるように支持体上に塗布・乾燥させる。次に、試験化合物を塗布した支持体を、易溶性溶媒を用いて十分に洗浄した後、洗浄除去されなかった試験化合物の残存量を測定して支持体吸着量を算出する。ここで残存量の測定は、残存化合物量を直接定量してもよいし、洗浄液中に溶解した試験化合物量を定量して算出してもよい。化合物の定量は、例えば、蛍光X線測定、反射分光吸光度測定、液体クロマトグラフィー測定などで実施できる。支持体吸着性がある化合物は、上記のような洗浄処理を行っても1mg/m以上残存する化合物である。
【0247】
親水性支持体表面への吸着性基は、親水性支持体表面に存在する物質(例えば、金属、金属酸化物)、あるいは官能基(例えば、ヒドロキシ基)と、化学結合(例えば、イオン結合、水素結合、配位結合、分子間力による結合)を引き起こすことができる官能基である。吸着性基は、酸基又はカチオン性基が好ましい。
酸基は、酸解離定数(pKa)が7以下であることが好ましい。酸基の例は、フェノール性ヒドロキシ基、カルボキシル基、−SOH、−OSOH、−PO、−OPO、−CONHSO−、−SONHSO、−COCHCOCHが挙げられる。なかでも、−OPO、及びPOが特に好ましい。またこれら酸基は、金属塩であっても構わない。
カチオン性基は、オニウム基であることが好ましい。オニウム基の例は、アンモニウム基、ホスホニウム基、アルソニウム基、スチボニウム基、オキソニウム基、スルホニウム基、セレノニウム基、スタンノニウム基、ヨードニウム基が挙げられる。なかでも、アンモニウム基、ホスホニウム基、及びスルホニウム基が好ましく、アンモニウム基、及びホスホニウム基がさらに好ましく、アンモニウム基が最も好ましい。
【0248】
下塗り層用化合物として好適な高分子樹脂を合成する際に用いられる、吸着性基を有するモノマーの特に好ましい例としては、下記一般式(U1)又は一般式(U2)で表される化合物が挙げられる。
【0249】
【化29】

【0250】
上記一般式(U1)及び(U2)中、R、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、又は炭素原子数が1乃至6のアルキル基である。
、R、及びRは、それぞれ独立に、水素原子、又は炭素原子数が1乃至6のアルキル基であることが好ましく、水素原子、又は炭素原子数が1乃至3のアルキル基であることがさらに好ましく、水素原子、又はメチル基であることが最も好ましい。R及びRは、水素原子であることが特に好ましい。
Zは、親水性支持体表面に吸着する官能基であり、該吸着性の官能基については、前述した通りである。
【0251】
一般式(U1)及び(U2)において、Lは、単結合、又は2価の連結基である。
Lは、2価の脂肪族基(アルキレン基、置換アルキレン基、アルケニレン基、置換アルケニレン基、アルキニレン基、置換アルキニレン基)、2価の芳香族基(アリレン基、置換アリレン基)、又は2価の複素環基であるか、あるいはそれらと、酸素原子(−O−)、硫黄原子(−S−)、イミノ(−NH−)、置換イミノ(−NR−、Rは脂肪族基、芳香族基又は複素環基)、又はカルボニル(−CO−)との組み合わせであることが好ましい。
【0252】
前記2価の脂肪族基は、環状構造又は分岐構造を有していてもよい。2価の脂肪族基の炭素原子数は、1乃至20が好ましく、1乃至15がさらに好ましく、1乃至10が最も好ましい。また、2価の脂肪族基は、不飽和脂肪族基よりも飽和脂肪族基の方が好ましい。さらに、2価の脂肪族基は、置換基を有していてもよく、その置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、芳香族基、複素環基が挙げられる。
前記2価の芳香族基の炭素原子数は、6乃至20が好ましく、6乃至15がさらに好ましく、6乃至10が最も好ましい。また、2価の芳香族基は、置換基を有していてもよく、その置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、脂肪族基、芳香族基、複素環基が挙げられる。
前記2価の複素環基は、複素環として5員環又は6員環を有することが好ましい。また、複素環に他の複素環、脂肪族環又は芳香族環が縮合していてもよい。2価の複素環基は、置換基をしていてもよく、その置換基の例は、ハロゲン原子、ヒドロキシ基、オキソ基(=O)、チオキソ基(=S)、イミノ基(=NH)、置換イミノ基(=N−R、Rは脂肪族基、芳香族基又は複素環基)、脂肪族基、芳香族基、複素環基が挙げられる。
【0253】
本発明において、Lは、複数のポリオキシアルキレン構造を含む二価の連結基であることが好ましい。ポリオキシアルキレン構造は、ポリオキシエチレン構造であることがさらに好ましい。言い換えると、Lは、−(OCHCH−(nは2以上の整数)を含むことが好ましい。
一般式(U1)において、Xは、酸素原子(−O−)、又はイミノ(−NH−)である。Xは、酸素原子であることがさらに好ましい。
一般式(U2)において、Yは炭素原子又は窒素原子である。Y=窒素原子でY上にLが連結し四級ピリジニウム基になった場合、それ自体が吸着性を示すことからZは必須ではなく、Zが水素原子でもよい。
【0254】
以下に、一般式(U1)又は一般式(U2)で表される代表的な化合物の例を示す。
【0255】
【化30】

【0256】
下塗り層用化合物として好適な高分子樹脂は親水性基を有することが好ましく、この親水性基としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボキシレート基、ヒドロキシエチル基、ポリオキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ポリオキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アンモニウム基、アミド基、カルボキシメチル基、スルホ基、リン酸基等が好適に挙げられる。なかでも、高親水性を示すスルホ基が好ましい。
【0257】
スルホ基を有するモノマーの具体例としては、メタリルオキシベンゼンスルホン酸,アリルオキシベンゼンスルホン酸,アリルスルホン酸、ビニルスルホン酸、p−スチレンスルホン酸、メタリルスルホン酸、アクリルアミドt−ブチルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、(3−アクリロイルオキシプロピル)ブチルスルホン酸のナトリウム塩、アミン塩が挙げられる。なかでも、親水性能及び合成の取り扱いから、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸ナトリウム塩が好ましい。
これらは下塗り層用化合物として好適な高分子樹脂を合成する際に好適に用いられる。
【0258】
本発明における下塗り層用の高分子樹脂は架橋性基を有することが好ましい。架橋性基によって画像部との密着の向上が得られる。下塗り層用の高分子樹脂に架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子の側鎖中に導入したり、高分子樹脂の極性置換基と対荷電を有する置換基とエチレン性不飽和結合を有する化合物で塩構造を形成させたりして導入することができる。
【0259】
分子の側鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、アクリル酸又はメタクリル酸のエステル又はアミドのポリマーであって、エステル又はアミドの残基(−COOR又は−CONHRのR)がエチレン性不飽和結合を有するポリマーを挙げることができる。
【0260】
エチレン性不飽和結合を有する残基(上記R)の例としては、−CH=CH、−C(CH)=CH、−(CHCR=CR、−(CHO)CHCR=CR、−(CHCHO)CHCR=CR、−(CHNH−CO−O−CHCR=CR、−(CH−O−CO−CR=CR、及び(CHCHO)−X(式中、R〜Rはそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子又は炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基もしくはアリールオキシ基を表し、RとR又はRとは互いに結合して環を形成してもよい。nは、1〜10の整数を表す。Xは、ジシクロペンタジエニル残基を表す。)を挙げることができる。
エステル残基の具体例としては、−CH=CH、−C(CH)=CH、−CHCH=CH(特公平7−21633号公報に記載されている。)、−CHCHO−CHCH=CH、−CHC(CH)=CH、−CHCH=CH−C、−CHCHOCOCH=CH−C、−CHCHNHCOO−CHCH=CH、及びCHCHO−X(式中、Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)が挙げられる。
アミド残基の具体例としては、−CH=CH、−C(CH)=CH、−CHCH=CH、−CHCHO−Y(式中、Yはシクロヘキセン残基を表す。)、−CHCHOCO−CH=CHが挙げられる。
下塗り層用の高分子樹脂の架橋性基を有するモノマーとしては、上記架橋性基を有するアクリル酸又はメタクリル酸のエステル又はアミドが好適である。
【0261】
下塗り層用高分子樹脂中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、高分子樹脂1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。この範囲で、良好な感度と汚れ性の両立、及び良好な保存安定性が得られる。
【0262】
下塗り層用の高分子樹脂は、質量平均モル質量が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましく、また、数平均モル質量が1000以上であるのが好ましく、2000〜25万であるのがより好ましい。多分散度(質量平均モル質量/数平均モル質量)は、1.1〜10であるのが好ましい。
下塗り層用の高分子樹脂は、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれでもよいが、ランダムポリマーであるのが好ましい。
【0263】
下塗り用の高分子樹脂は単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
下塗り層用塗布液は、上記下塗り用の高分子樹脂を有機溶媒(例えば、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトンなど)及び/又は水に溶解して得られる。
下塗り層用塗布液には、赤外線吸収剤を含有させることもできる。
下塗り層用塗布液を支持体に塗布する方法としては、公知の種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
下塗り層の塗布量(固形分)は、0.1〜100mg/mであるのが好ましく、1〜30mg/mであるのがより好ましい。
【0264】
〔印刷方法〕
【0265】
露光し本発明の現像を施され製版された平版印刷版は、印刷機の版胴に装着され、湿し水と印刷インキとが供給されることにより多数枚の印刷に用いられる。
【実施例】
【0266】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0267】
<平版印刷版原版(1)の作製>
(1)支持体(1)の作製
厚み0.3mmのアルミニウム板(材質JIS A 1050)の表面の圧延油を除去するため、10質量%アルミン酸ソーダ水溶液を用いて50℃で30秒間、脱脂処理を施した後、毛径0.3mmの束植ナイロンブラシ3本とメジアン径25μmのパミス−水懸濁液(比重1.1g/cm)を用いアルミ表面を砂目立てして、水でよく洗浄した。この板を45℃の25質量%水酸化ナトリウム水溶液に9秒間浸漬してエッチングを行い、水洗後、更に60℃で20質量%硝酸に20秒間浸漬し、水洗した。この時の砂目立て表面のエッチング量は約3g/mであった。
【0268】
次に、60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃であった。交流電源波形は、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。電流密度は電流のピーク値で30A/dm、補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。硝酸電解における電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量175C/dmであった。その後、スプレーによる水洗を行った。
【0269】
続いて、塩酸0.5質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)、液温50℃の電解液にて、アルミニウム板が陽極時の電気量50C/dmの条件で、硝酸電解と同様の方法で、電気化学的な粗面化処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
次に、この板に15質量%硫酸(アルミニウムイオンを0.5質量%含む)を電解液として電流密度15A/dmで2.5g/mの直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥した。
更に、この板に100℃の水蒸気を1.033×10Paの圧力で上記の陽極酸化皮膜に8秒間吹き付けて、封孔処理を行った。
その後、非画像部の親水性を確保するため、2.5質量%3号ケイ酸ソーダ水溶液を用いて75℃で6秒間、シリケート処理を施した。Siの付着量は10mg/mであった。その後、水洗して、支持体(1)を得た。この基板の中心線平均粗さ(Ra)を直径2μmの針を用いて測定したところ、0.51μmであった。
【0270】
(2)下塗り層の形成
次に、上記支持体(1)上に、下記下塗り層用塗布液(1)を乾燥塗布量が20mg/mになるよう塗布して、以下の実験に用いる支持体を作製した。
【0271】
−下塗り層用塗布液(1)―
・下記構造の下塗り層用化合物(1) 0.18g
・メタノール 55.24g
・水 6.15g
【0272】
【化31】

【0273】
(3)画像形成層の形成
上記のようにして形成された下塗り層上に、下記組成の画像形成層塗布液(1)をバー塗布した後、100℃60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量1.0g/mの画像形成層を形成した。
画像形成層塗布液(1)は下記感光液(1)及びミクロゲル液(1)を塗布直前に混合し攪拌することにより得た。
【0274】
−画像形成層塗布液(1)−
・バインダーポリマー(1)〔下記構造〕 0.240g
・下表1に記載の本発明のカルボン酸化合物 0.060g
・赤外線吸収剤(1)〔下記構造〕 0.030g
・重合開始剤(例示化合物I−28) 0.162g
・重合性化合物〔トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート〕
(NKエステルA−9300、新中村化学(株)製) 0.192g
・トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート 0.062g
・パイオニンA−20(竹本油脂(株)製) 0.055g
・ベンジル−ジメチル−オクチルアンモニウム・PF塩 0.018g
・フッ素系界面活性剤(1)〔下記構造〕 0.008g
・メチルエチルケトン 1.091g
・1−メトキシ−2−プロパノール 8.609g
【0275】
<ミクロゲル液(1)>
・ミクロゲル(1) 2.640g
・蒸留水 2.425g
【0276】
上記の、赤外線吸収剤(1)、バインダーポリマー(1)、及び、フッ素系界面活性剤(1)の構造は、以下に示す通りである。
【0277】
【化32】

【0278】
【化33】

【0279】
上記に記載のミクロゲル(1)は、以下のようにして合成されたものである。
【0280】
−ミクロゲル(1)の合成−
油相成分として、トリメチロールプロパンとキシレンジイソシアナート付加体(三井武田ケミカル(株)製、タケネートD−110N)10g、ペンタエリスリトールトリアクリレート(日本化薬(株)製、SR444)3.15g、及びパイオニンA−41C(竹本油脂(株)製)0.1gを酢酸エチル17gに溶解した。水相成分としてPVA−205の4質量%水溶液40gを調製した。油相成分及び水相成分を混合し、ホモジナイザーを用いて12,000rpmで10分間乳化した。得られた乳化物を、蒸留水25gに添加し、室温で30分攪拌後、50℃で3時間攪拌した。このようにして得られたミクロゲル液の固形分濃度を、15質量%になるように蒸留水を用いて希釈し、これを前記ミクロゲル(1)とした。ミクロゲルの平均粒径を光散乱法により測定したところ、平均粒径は0.2μmであった。
【0281】
(3)保護層の形成
上記画像形成層上に、さらに下記組成の保護層塗布液(1)をバー塗布した後、120℃、60秒でオーブン乾燥し、乾燥塗布量0.15g/mの保護層を形成して平版印刷版原版(1)を得た。
【0282】
−保護層用塗布液(1)−
・無機質層状化合物分散液(1) 1.5g
・ポリビニルアルコール(日本合成化学工業(株)製CKS50、スルホン酸変性、
けん化度99モル%以上、 重合度300)6質量%水溶液 0.55g
・ポリビニルアルコール((株)クラレ製PVA−405、けん化度81.5モル%、
重合度500)6質量%水溶液 0.03g
・日本エマルジョン(株)製界面活性剤
(エマレックス710)1質量%水溶液 0.86g
・イオン交換水 6.0g
【0283】
−無機質層状化合物分散液(1)の調製−
イオン交換水193.6gに合成雲母ソマシフME−100(コープケミカル(株)製)6.4gを添加し、ホモジナイザーを用いて平均粒径(レーザー散乱法)が3μmになるまで分散した。得られた分散粒子のアスペクト比は100以上であった。
【0284】
<下記の実験に用いる化学物質の用語解説>
・Byk 335:Byk-Chemie USA Inc.(Wallingford, Connecticut)から入手可能な、25質量% キシレン/メトキシプロピルアセテート溶液中の改質ジメチルポリシロキサンコポリマー
・DESMODUR N100:Bayer Corp.(Milford, Connecticut)から入手可能な、ヘキサメチレンジイソシアネートを主剤とする脂肪族ポリイソシアネート樹脂)
・ELVACITE 4026:Lucite International, Inc.(Cordova, Tennessee)から入手可能な高分枝状ポリ(メチルメタクリレート)の10質量% 2-ブタノン溶液
【0285】
・ヒドロキシプロピルセルロース:和光純薬工業製ヒドロキシプロピルセルロース1,000〜4,000cPの2%水溶液
・メルカプト-3-トリアゾール:PCAS(フランス国Paris)から入手可能なメルカプト-3-トリアゾール-1H,2,4
【0286】
・PEGMA:Sigma-Aldrich Corp.(St. Louis, Missouri)から入手可能なポリ(エチレングリコール)メチルエーテルメタクリレート;50質量%水溶液として、平均Mn〜2080
・SARTOMER 355:サートマー・ジャパンから入手可能なジトリメチロールプロパンテトラアクリレート
・ウレタンアクリレート:DESMODUR N100と、ヒドロキシエチルアクリレート及びペンタエリトリトールトリアクリレートとの反応により得られるウレタンアクリレートの、80質量% 2-ブタノン溶液
・V-601:和光純薬工業製、V-601(2,2'-アゾビス(2-メチルプロパン酸ジメチル))
【0287】
<平版印刷版原版(2)の作製>
(1)支持体(2)の作製
支持体(1)の作製と同様に電気化学的粗面化までを行ったアルミニウム板を、2.5Mリン酸を電解液として、電圧50V、最大電流密度2A/dmで1.5g/mの直流陽極酸化皮膜を設けた後、水洗、乾燥した。
続いて、この板に100℃の水蒸気を1.033×10Paの圧力で上記の陽極酸化皮膜に15秒間吹き付けて、封孔処理を行った。
その後、液温25℃、1.0質量%のポリアクリル酸水溶液に8秒間浸漬し、水洗、乾燥して支持体(2)を得た。
【0288】
(2)下塗り層、画像形成層及び保護層の形成
上記支持体(2)を用いて、画像形成層塗布液(1)を下記の画像形成層塗布液(2)に変更した以外は、平版印刷版原版(1)の場合と同様にして、下塗り層、画像形成層及び保護層を設けて平版印刷版原版(2)を得た。
画像形成層塗布液(2)は下記感光液(2)に、下記のようにして作製したポリマー微粒子分散液(1)の14.00gを塗布直前に混合し攪拌することにより得た。
【0289】
−感光液(2)−
・バインダーポリマー(2) 3.97g
・下表1に記載の本発明のカルボン酸化合物 0.25g
・ウレタンアクリレート 2.48g
・重合開始剤(例示化合物I−40) 0.32g
・下記赤外線吸収剤(2) 0.13g
・メルカプト−3−トリアゾール 1.00g
・BYK335 0.60g
・ヒドロキシプロピルセルロース 3.31g
・n−プロパノール 61.97g
・水 13.41g
【0290】
−バインダーポリマー(2)の合成−
2-ブタノン(384.1 g)及び8.5 gのPEGMAを、N2雰囲気下で1L四つ口フラスコ内に装入し、そして80℃まで加熱した。アリルメタクリレート(38.0 g)とV-601(0.3 g)との予混合物を、90分間にわたって80℃で添加した。添加が完了した後、V-601をさらに0.13 g添加した。その後、0.13gのV-601をさらに2回添加した。不揮発分パーセントに基づくポリマー変換率は、>98質量%であった。
得られたバインダーポリマー(2)の分子量を測定したところ、Mw4.5万であった。
【0291】
−ポリマー微粒子分散液(1)の作製−
190 gの脱イオン水と200 gのn-プロパノールとの混合物中に溶解された20 gのPEGMAの溶液を、1000 mL四つ口フラスコ内に装入し、そしてN2雰囲気下でわずかに還流するまで(〜73℃)ゆっくりと加熱した。スチレン(9 g)、アクリロニトリル(81 g)、及びV-601(0.7 g)を予め混合した混合物を、2時間にわたって添加した。6時間後、V-601(0.5 g)をさらに添加した。温度を80℃まで上昇させた。続いて、V-601をさらにもう2回(それぞれ0.35 g)6時間にわたって添加した。全部で19時間にわたる反応後、コポリマーへの変換率は、不揮発分パーセントの測定に基づいて、>98質量%であった。PEGMA/スチレン/アクリロニトリルの質量比は、10:9:81であり、そしてn-プロパノール/水の比は、50:50であった。溶液中の残留アクリロニトリルは、1H-NMRによる測定に基づいて、0.08%であった。結果として生じた分散液(1)は、21.6質量%のポリマー微粒子を含有した。
得られたポリマー微粒子(1)の粒子サイズと分子量とを測定したところ、平均粒径225nm、Mw19.3万であった。
【0292】
<平版印刷版原版(3)の作製>
(1)支持体(3)の作製
支持体(2)の作製におけるポリアクリル酸処理をポリビニルホスホン酸処理に変更した。すなわち、支持体(2)の作製におけるポリアクリル酸処理の手前までの処理を完了したアルミニウム板を、液温50℃、0.4質量%ポリビニルホスホン酸水溶液に10秒間浸漬し、水洗、乾燥して、支持体(3)を得た。
【0293】
(2)画像形成層の形成
上記支持体(3)に下塗り層は設けないでそのまま下記の画像形成層塗布液(3)を塗布し、90℃90秒間、オーブン乾燥し乾燥塗布量1.5g/mの画像形成層を設けて、平版印刷版原版(3)を得た。平版印刷版原版(3)には保護層を設けなかった。
【0294】
−画像形成層塗布液(3)−
・バインダーポリマー(2) 3.97g
・下表1に記載の本発明のカルボン酸化合物 0.25g
・ウレタンアクリレート 2.48g
・ELVACITE4026 3.31g
・重合開始剤(例示化合物I−40) 0.32g
・赤外線吸収剤(2) 0.13g
・メルカプト−3−トリアゾール 0.18g
・BYK335 0.60g
・ヒドロキシプロピルセルロース 3.30g
・SARTOMER355 0.33g
・n−プロパノール 62.42g
・水 13.37g
【0295】
<平版印刷版原版(4)の作製>
上記画像形成層塗布液(3)中のバインダーポリマー(2)を、ポリビニルピロリドン(和光純薬工業(株)製、K30、Mw40万)に変更した以外は平版印刷版原版(3)の作製と同様にして比較例用の平版印刷版原版(4)を得た。
【0296】
<露光>
得られた平版印刷版原版(1)、(2)、(4)を赤外線半導体レーザー搭載の富士フイルム(株)製Luxel PLATESETTER T−6000IIIにて、外面ドラム回転数1000rpm、レーザー出力70%、解像度2400dpiの条件で露光した。また得られた平版印刷版原版(3)を赤外線半導体レーザー搭載のCreo社製Trendsetter3244VXにて、出力10Wで外面ドラム回転数150rpm、解像度2400dpiの条件で露光した。露光画像にはそれぞれベタ画像及び細線画像を含むようにした。
【0297】
<製版処理>
(実施例1〜29及び比較例1〜9)
得られた露光済み原版を、図1に示す自動現像装置を使用して製版処理した。図中14の現像部にて非画像部の除去、図中16の水洗部にて水洗、図中18の不感脂化処理部にて不感脂化を、下表1に記載の現像液、水洗水及び不感脂化液を用いて行った。
現像部で使用する本発明の現像液は、ADVANTEC社製カートリッジフィルター「TCW−75N−PPS」(メッシュ径:75μm)を通し、ポンプを用いて循環使用した。
【0298】
(実施例30〜33)
得られた露光済み原版を、図2に示す自動現像装置を使用しした後、ドライヤーで乾燥処理し製版処理した。実施例30及び32ではこの自動現像装置を単体で、実施例31及び33については2台連結して用いた。下記表1に用いた現像液を示した。
【0299】
<評価>
上記の製版における非画像部除去成分再付着性、初期着肉性および耐刷性を下記の要領で評価した。評価結果は表1に示す。
【0300】
(1)非画像部除去成分再付着性
上記現像処理を行った後の平版印刷版表面を目視観察し、非画像部画像形成層の除去成分が再付着している程度を下記の指標で評価した。
A:除去成分の再付着が全くなく極めて良好。
B:ごく僅かに除去成分が観察されるが、ウェスなどで容易に除去可能で
許容レベル。
C:除去成分多く、かつウェスで拭いても容易に除去出来ずNGレベル。
D:除去成分の再付着が極めて多く劣悪。
これらの結果を表1に示す。
【0301】
(2)初期着肉性
次いで、現像処理後の平版印刷版を(株)小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の版胴に取り付けた。Ecolity−2(富士フイルム(株)製)/水道水=2/98(容量比)の湿し水とValues−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、LITHRONE26の標準自動印刷スタート方法で湿し水とインキとを供給して印刷を開始し、毎時10000枚の印刷速度で、特菱アート(76.5kg)紙に印刷を100枚行い、このときの印刷物をサンプリングした。画像形成層の露光部領域の印刷用紙上インキ濃度が規定の標準濃度に達するまでに要した印刷用紙の枚数を初期着肉性として計測した。これらの結果を表1に示す。
【0302】
(3)耐刷性
その後さらに印刷を続けた。印刷枚数を増やしていくと徐々に画像形成層が磨耗するため印刷物上のインキ濃度が低下した。印刷物におけるFMスクリーン50%網点の網点面積率をグレタグ濃度計で計測した値が印刷100枚目の計測値よりも5%低下したときの印刷部数を刷了枚数として耐刷性を評価した。結果を表1に示す。
【0303】
表1により、本発明の平版印刷版原版の製版方法を用いた場合、実施例1〜33のいずれにおいても、良好な除去成分再付着抑止効果と、着肉性、耐刷性に優れた平版印刷版原版の製版方法が得られることがわかる。
【0304】
(実施例34〜39 比較例10,11)
平版印刷版原版(1)の保護層塗布液の、乾燥塗布量が表3に示すように塗布し、平版印刷版原版(5)〜(11)を作成し、実施例30と同様に露光した。
得られた露光済み原版を、実施例30と同じように処理した。
上記の製版における非画像部除去成分再付着性、初期着肉性、および細線再現性とを下記の要領で評価した。
(1)非画像部除去成分再付着性
上記現像処理を行った後の平版印刷版表面を目視観察し、非画像部画像形成層の除去成分が再付着している程度を下記の指標で評価した。
A:除去成分の再付着が全くなく極めて良好。
B:ごく僅かに除去成分が観察されるが、ウェスなどで容易に除去可能で
許容レベル。
B’:除去成分多いが、ウェスなどで容易に除去可能で許容限界レベル。
C:除去成分多く、かつウェスで拭いても容易に除去出来ずNGレベル。
これらの結果を表2に示す。
【0305】
次いで、現像処理後の平版印刷版を(株)小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の版胴に取り付けた。Ecolity−2(富士フイルム(株)製)/水道水=2/98(容量比)の湿し水とValues−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、LITHRONE26の標準自動印刷スタート方法で湿し水とインキとを供給して印刷を開始し、毎時10000枚の印刷速度で、特菱アート(76.5kg)紙に印刷を100枚行った。
(2)初期着肉性
次いで、現像処理後の平版印刷版を(株)小森コーポレーション製印刷機LITHRONE26の版胴に取り付けた。Ecolity−2(富士フイルム(株)製)/水道水=2/98(容量比)の湿し水とValues−G(N)墨インキ(大日本インキ化学工業(株)製)とを用い、LITHRONE26の標準自動印刷スタート方法で湿し水とインキとを供給して印刷を開始し、毎時10000枚の印刷速度で、特菱アート(76.5kg)紙に印刷を100枚行い、このときの印刷物をサンプリングした。画像形成層の露光部領域の印刷用紙上インキ濃度が規定の標準濃度に達するまでに要した印刷用紙の枚数を初期着肉性として計測した。これらの結果を表2に示す。
(2)細線再現性(画像部のつき)
上記印刷を10000枚実施した。10000枚目の印刷物の、画像部細線のつきを調べた。すなわち、何μm以上の細線が印刷されているかを5μmから50μmまで5μmおきにの太さを変えたテストチャートで評価した。すなわち、値が小さい方がより細い細線まで再現している。これは保護層の酸素遮断性により、画像形成層中の酸素量が抑制され、細線再現性が良好になったと考えられる。10μm再現していれば許容範囲内である。これらの結果を表2に示す。
【0306】
【表1】

【0307】
【表2】

【0308】
〔現像工程で用いた処理液の組成〕
<現像液1>
・アラビアガム 1.6質量%
・酵素変成馬鈴薯澱粉 8.8質量%
・燐酸化ワキシー玉蜀黍澱粉 0.80質量%
・ジオクチルスルホコハク酸エステルのナトリウム塩 0.10質量%
・クエン酸 0.14質量%
・αアラニン 0.11質量%
・EDTA−四ナトリウム塩 0.10質量%
・ドデシルジフェニルエーテルジスルホン酸2Na塩 0.18質量%
・エチレングリコール 0.72質量%
・ベンジルアルコール 0.87質量%
・デヒドロ酢酸ナトリウム 0.04質量%
・エマルジョン型シリコン消泡剤 0.01質量%
・水を加えて 全量を100質量%とする
pH 5.0
【0309】
<現像液2>
・Dowfax3B2(ダウ・ケミカル製) 100ml
・1,3−ベンゼンジスルホン酸2Na塩(Riedel de Haan製
31.25g
・Versa TL77(Alco Chemical製、ポリスチレンスルホン酸)
31.25g
・Trisodium citrate dihydrate 10.4g
・Acticide LA1206(Thor製防腐剤) 2ml
・Polyox WSRN−750(ユニオン・カーバイド製) 2.08g
・Penon JE-66(日澱化学(株)製、ヒドロキシプロピル化酵素変性デキストリン)
50.0g
・水 1750g
pH 7.5
【0310】
<現像液3>
上記現像液1に、pH3.0となるようにp−トルエンスルホン酸を添加して現像液3を得た。
【0311】
<現像液4>
上記現像液1に、pH9.5となるように水酸化ナトリウムを添加して現像液4を得た。
【0312】
<水溶液1>
・7−n−ブチルナフタレン−2−硫酸ナトリウム 300g
・ポリエチレンオキシド−2−ナフチルエーテル 100g
・ベンジルアルコール 50g
・水 9550g
【0313】
<水溶液2>
・カルボキシメチルセルロース(Mw2万) 450g
・ポリビニルピロリドン(和光純薬工業(株)製、K30、Mw40万)200g
・パイオニンD−1305(竹本油脂(株)製、ノニオン系界面活性剤)100g
・水 9250g
【0314】
〔水洗工程で用いる水洗水の水質〕
<新鮮水> :常に新しい水道水を使用。(再使用なし。)
<循環水>:ポンプを用いて循環する再使用水。一度水洗に使用後、ADVANTEC社製カートリッジフィルター「TCW−75N−PPS」(メッシュ径:75μm)を通したのち再使用。
【0315】
〔不感脂化工程のガム液〕
<ガム液>
富士フイルム(株)製ガム液「FN−6」/水道水=1/1。
【図面の簡単な説明】
【0316】
【図1】本発明に係る平版印刷版の自動現像装置の構成を示す図である。
【図2】本発明に係る現像部のみの自動現像装置の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0317】
(図1)
1 自動現像装置
10 現像処理部
12 印刷版
14 現像部
16 水洗部
18 不感脂化処理部
20 乾燥部
24 現像槽
141,142 ブラシローラ(擦り部材)
200 前処理部

(図2)
1:回転ブラシロール
2:受けロール
3:搬送ロール
4:搬送ガイド板
5:スプレーパイプ
6:管路
7:フィルター
8:給版台
9:排版台
10:現像液タンク
11:循環ポンプ
12:版

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に、画像形成層を有する平版印刷版原版の製版方法であって、下記工程を含むことを特徴とする製版方法。
(a)該画像形成層中に赤外線吸収剤、重合開始剤、重合性化合物、疎水性バインダーポリマー、及び下記一般式(1)又は一般式(2)で表される化合物を含む平版印刷版原版を準備する工程。
(b)該平版印刷版原版を画像様に露光する工程。
(c)前記露光済みの平版印刷版原版を、擦り部材を具備する自動処理機を用いて、アラビアガム及び澱粉からなる群から選ばれる少なくとも1種の水溶性ポリマーを含有する水溶液で現像する工程。
【化1】

ここで、R〜Rはそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、フェニル基、ハロゲン原子、アミノ基又はニトロ基を表し、これらの基の一部が炭素数4以下のアルキル基又はヒドロキシル基で置換されていてもよい。またR〜Rの少なくとも二つが結合して脂肪族又は芳香族環を形成してもよい。Xは−O−又は−NH−を表し、Yは水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、フェニル基又はベンジル基を表し、これらの基の一部が炭素数4以下のアルキル基やヒドロキシル基で置換されていてもよい。
【請求項2】
前記一般式(1)又は一般式(2)で表されるカルボン酸化合物が、N−フェニルイミノ二酢酸、N−フェニルイミノ二酢酸モノメチル、N−フェニルイミノ二酢酸モノアニリド及び(3,4−ジメトキシフェニルチオ)酢酸からなる群から選ばれる少なくとも1つであることを特徴とする請求項1に記載の平版印刷版原版の製版方法。
【請求項3】
前記水溶性ポリマーを含有する水溶液が、pH2〜9.8であることを特徴とする請求項1又は2に記載の平版印刷版原版の製版方法。
【請求項4】
前記水溶性ポリマーを含有する水溶液が、少なくともアラビアガムを含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の平版印刷版原版の製版方法。
【請求項5】
前記(c)の工程を2回以上連続して行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の平版印刷版原版の製版方法。
【請求項6】
前記(c)の工程の後に、更に(d)現像済みの平版印刷版表面を水洗する工程を含むことを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の平版印刷版原版の製版方法。
【請求項7】
前記(c)の工程で使用される水溶性ポリマーを含有する水溶液が、フィルターを通して繰り返し使用されることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の平版印刷版原版の製版方法。
【請求項8】
前記赤外線吸収剤がシアニン染料であり、重合開始剤がオニウム塩であることを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載の平版印刷版原版の製版方法。
【請求項9】
前記平版印刷版原版が、画像形成層上に保護層を有し、該保護層がアニオン変性ポリビニルアルコールを保護層の全固形分中10〜50質量%含有することを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載の平版印刷版原版の製版方法。
【請求項10】
前記平版印刷版原版が、支持体と画像形成層の間に、基板吸着性基と架橋性基とを分子内に含有する化合物を含む下塗り層を有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載の平版印刷版原版の製版方法。
【請求項11】
前記平版印刷版原版が、リン酸を用いて陽極酸化処理された支持体を有することを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項に記載の平版印刷版原版の製版方法。
【請求項12】
前記平版印刷版原版が、ポリビニルホスホン酸を用いて親水化処理された支持体を有することを特徴とする請求項1〜11のいずれか一項に記載の平版印刷版原版の製版方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−237175(P2009−237175A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−82234(P2008−82234)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】