説明

平版印刷版材料の故障検出方法

【課題】表面に微小な濃淡が存在する平版印刷版材料の塗布欠陥を迅速に検出する故障検出方法を提供することである。
【解決手段】プラスチック支持体上に少なくとも1層の親水性層及び少なくとも1層の画像形成層を有する平版平版印刷版材料の故障検出方法において、該平版平版印刷版材料を透過で撮影した画像データから、特定濃度以上の部分を抽出し、該当部分の面積及び積算濃度から算出される式から故障部分を抽出することを特徴とする故障検出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック支持体上に塗布、乾燥することによって形成される平版印刷版材料の故障検出方法に関する。さらに詳しくは、表面検査型のカメラにて撮影された画像から、欠陥となる部分を抽出する故障検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック支持体上に、機能性の層を塗布、乾燥して設け、特定の用途に使用する製品は、多岐にわたって存在する。例えば、プラスチック支持体上に、親水性層、画像形成層を形成し、印刷版材料として供給する方法(例えば、特許文献1参照)が提案されている。
【0003】
塗布する際に、プラスチック支持体自体に傷があったり、ゴミが付着していたり、塗布物質に気泡や異物が存在していたり、もしくは塗布装置に異常があると、これが原因で塗布層に欠陥が生じることがある。
【0004】
従来から、塗布層に生じるこれらの欠陥の検出方法としては、人が目視判定により行う方法と、光学系を走査して各走査位置での光量変化によって塗布層の欠陥検査を自動的に行う方法(例えば、特許文献2、3、4参照)が知られていた。
【0005】
しかしながら、目視判定を行う方法では、人手を必要とし、また、高速に検査するには限界があった。
【0006】
また、光学系によって塗布層の欠陥検査を行う方法では、比較的大きな異物、傷や濃淡のはっきりしている塗布ムラ等の検出は容易にできるが、カメラの解像度に近いサイズの微細な欠陥を検出するには不十分であることが多かった。特に、表面に微小な濃淡が存在する製品の欠陥を検出するには、欠陥か、本来の濃淡かを判別することは難しかった。
【特許文献1】特開平9−123387号公報
【特許文献2】特開平5−107196号公報
【特許文献3】特開平6−34565号公報
【特許文献4】特開平10−97088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、表面に微小な濃淡が存在する平版印刷版材料の塗布欠陥を迅速に検出する故障検出方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
【0009】
1.プラスチック支持体上に少なくとも親水性層及び画像形成層を有する平版印刷版材料の故障検出方法において、該平版印刷版材料を透過光で撮影した画像データから、特定濃度以上の部分を抽出し、該当部分の面積及び積算濃度から算出される式により故障部分を抽出することを特徴とする平版印刷版材料の故障検出方法。
【0010】
2.前記算出される式が、下記式(1)であることを特徴とする1記載の平版印刷版材料の故障検出方法。
【0011】
式(1):(積算濃度)/(面積)n/100≧A
(式中、nは1〜1.5の数値、Aは特定の数値を表す。)
3.前記算出される式が、下記式(2)であることを特徴とする1記載の平版印刷版材料の故障検出方法。
【0012】
式(2):(積算濃度)/(面積)n/100≦B
(式中、nは1〜1.5の数値、Bは特定の数値を表す。)
4.前記算出される式が、下記式(3)であることを特徴とする1記載の平版印刷版材料の故障検出方法。
【0013】
式(3):(積算濃度)/(面積)n/100−(特定濃度−最小濃度)/m≧C
(式中、nは1〜1.5の数値、mは1〜3の数値、Cは特定の数値を表す。)
5.前記平版印刷版材料を搬送しながら透過光で撮影することを特徴とする1〜4のいずれか1項記載の平版印刷版材料の故障検出方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、表面に微小な濃淡が存在する平版印刷版材料の塗布欠陥を迅速に検出する故障検出方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明者は鋭意検討の結果、プラスチック支持体上に少なくとも親水性層及び画像形成層を有する平版印刷版材料の故障検出方法において、該平版印刷版材料を透過で撮影した画像データから、特定濃度以上の部分を抽出し、該当部分の面積及び積算濃度から算出される式から故障部分を抽出する故障検出方法により、表面に微小な濃淡が存在する平版印刷版材料の塗布欠陥を迅速に検出する方法が得られることを見出した。
【0016】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0017】
〔故障検出方法〕
本発明の故障検出方法は、平版印刷版材料を透過光で撮影した画像データから、特定濃度以上の部分を抽出し、該当部分の面積及び積算濃度から算出される式により故障部分を抽出することを特徴とする。
【0018】
平版印刷版材料の透過光を微少領域(以下、画素ともいう)単位で光電変換して得られる信号を時系列的に連続して測定し、2次元の濃度分布図を作成し、特定濃度以上の画素部分を抽出し、各々の画素部分の画素数から面積を算出し、また、抽出した部分の画素の濃度の総和から積算濃度を算出し、2次元の面積−積算濃度分布図を作成する。得られた面積−積算濃度分布図において、該当部分の面積及び積算濃度から算出される式により故障部分を抽出する。
【0019】
該当部分の面積及び積算濃度から算出される式としては、前記式(1)〜(3)で表される式が好ましい。また、前記式(1)〜(3)のいずれか1つの式で故障部分を抽出する方法の他に、前記式(1)〜(3)の式を組み合わせて故障部分を抽出してもよい。
【0020】
前記式(1)〜(3)において、nは1〜1.5の数値、mは1〜3の数値、A〜Cは特定の数値を表す。n、m、A〜Cの具体的な値は、平版印刷版材料の表面に存在する故障ではない微小な濃淡の程度、平版印刷版材料の塗布欠陥の種類等により設定する。
【0021】
透過光での撮影に用いる光源の種類は特に限定されないが、ハロゲン光源、レーザー光が好ましく用いられる。
【0022】
透過光での撮影は、塗布欠陥を迅速に検出するため、平版印刷版材料を搬送しながら行うことが好ましい。
【0023】
〔親水性層〕
本発明に係る親水性層とは、印刷時、印刷インキの着肉しない非画像部となりうる層であって、プラスチック支持上に設層された層、あるいは、基材表面を親水化したときの表面層である。また、親水性層は親水性素材を含む。親水性素材としては下記の無機素材、有機無機素材、有機素材が挙げられる。
【0024】
(無機素材)
無機素材としては、金属酸化物が好ましい。金属酸化物としては、金属酸化物微粒子を含むものが好ましい。例えば、コロイダルシリカ、アルミナゾル、チタニアゾル、その他の金属酸化物のゾルが挙げられる。
【0025】
金属酸化物微粒子の形態としては、球状、針状、羽毛状、その他の何れの形態でもよい。金属酸化物微粒子の平均粒径は、3〜100nmであることが好ましい。平均粒径が異なる数種の金属酸化物微粒子を併用することもできる。また、粒子表面に表面処理がなされていてもよい。
【0026】
上記金属酸化物微粒子はその造膜性を利用して結合剤としての使用が可能である。有機の結合剤を用いるよりも親水性の低下が少なく、親水性層への使用に適している。
【0027】
上記の中でも特にコロイダルシリカが好ましく使用できる。コロイダルシリカは比較的低温の乾燥条件であっても造膜性が高いという利点があり、炭素原子を含まない素材が91質量%以上というような層においても良好な強度を得ることができる。
【0028】
上記コロイダルシリカとしては、後述するネックレス状コロイダルシリカ、平均粒径20nm以下の微粒子コロイダルシリカを含むことが好ましく、さらに、コロイダルシリカはコロイド溶液とした場合アルカリ性を呈することが好ましい。
【0029】
ネックレス状コロイダルシリカとは1次粒子径がnmのオーダーである球状シリカの水分散系の総称である。本発明に用いられるネックレス状コロイダルシリカとは1次粒粒子径が10〜50nmの球状コロイダルシリカが50〜400nmの長さに結合した「パールネックレス状」のコロイダルシリカを意味する。パールネックレス状(即ち真珠ネックレス状)とは、コロイダルシリカのシリカ粒子が連なって結合した状態のイメージが真珠ネックレスの様な形状をしていることを意味している。ネックレス状コロイダルシリカを構成するシリカ粒子同士の結合は、シリカ粒子表面に存在する−SiOH基が脱水結合した−Si−O−Si−と推定される。ネックレス状のコロイダルシリカとしては、具体的には日産化学工業(株)製の「スノーテックス−PS」シリーズなどが挙げられる。
【0030】
ネックレス状コロイダルシリカを添加することにより、層の多孔性を確保しつつ、強度を維持することが可能となり、層の多孔質化材として好ましく使用できる。
【0031】
また、コロイダルシリカは粒子径が小さいほど結合力が強くなることが知られており、本発明には平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカを用いることが好ましく、3〜15nmであることがさらに好ましい。また、前述のようにコロイダルシリカの中ではアルカリ性のものが地汚れ発生を抑制する効果が高いため、アルカリ性のコロイダルシリカを使用することが特に好ましい。
【0032】
平均粒径がこの範囲にあるアルカリ性のコロイダルシリカとしては日産化学社製の「スノーテックス−20(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−30(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−40(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−N(粒子径10〜20nm)」、「スノーテックス−S(粒子径8〜11nm)」、「スノーテックス−XS(粒子径4〜6nm)」が挙げられる。
【0033】
平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカは前述のネックレス状コロイダルシリカと併用することで、層の多孔質性を維持しながら、強度をさらに向上させることが可能となり、特に好ましい。
【0034】
平均粒径が20nm以下であるコロイダルシリカ/ネックレス状コロイダルシリカの質量比率は95/5〜5/95が好ましく、70/30〜20/80がより好ましく、60/40〜30/70がさらに好ましい。
【0035】
本発明に係る親水性層にはその他の添加素材として、ケイ酸塩も使用することができる。ケイ酸Na、ケイ酸K、ケイ酸Liといったアルカリ金属ケイ酸塩が好ましく、そのSiO2/M2O比率はケイ酸塩を添加した際の親水性層用塗布液全体のpHが13を超えない範囲となるように選択することが無機粒子の溶解を防止する上で好ましい。
【0036】
(有機無機素材)
また、金属アルコキシドを用いた、いわゆるゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーも使用することができる。ゾル−ゲル法による無機ポリマーもしくは有機−無機ハイブリッドポリマーの形成については、例えば「ゾル−ゲル法の応用」(作花済夫著/アグネ承風社発行)に記載されているか、または本書に引用されている文献に記載されている公知の方法を使用することができる。
【0037】
(有機素材)
有機素材としては、例えばポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の樹脂が挙げられる。
【0038】
また、親水性層はカチオン性樹脂を含有してもよく、カチオン性樹脂としては、ポリエチレンアミン、ポリプロピレンポリアミン等のようなポリアルキレンポリアミン類またはその誘導体、第3級アミノ基や第4級アンモニウム基を有するアクリル樹脂、ジアクリルアミン等が挙げられる。カチオン性樹脂は微粒子状の形態で添加してもよい。これは、例えば特開平6−161101号に記載のカチオン性マイクロゲルが挙げられる。
【0039】
本発明のより好ましい態様としては、親水性層中に含有される親水性有機樹脂は水溶性のものである。
【0040】
水溶性素材としては、糖類が好ましい。糖類としては、後に詳細に説明するオリゴ糖を用いることもできるが、特に多糖類を用いることが好ましい。
【0041】
多糖類としては、デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルランなどが使用可能であるが、特にメチルセルロース塩、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース塩等のセルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩がより好ましい。
【0042】
これは、親水性層に多糖類を含有させることにより、親水性層の表面形状を好ましい状態に形成する効果が得られるためである。
【0043】
親水性層の表面は、PS版のアルミ砂目のように0.1〜50μmピッチの凹凸構造を有することが好ましく、この凹凸により保水性や画像部の保持性が向上する。
【0044】
このような凹凸構造は、親水性層に適切な粒径のフィラーを適切な量含有させて形成することも可能であるが、親水性層の塗布液に前述のアルカリ性コロイダルシリカと前述の水溶性多糖類とを含有させ、親水性層を塗布、乾燥させる際に相分離を生じさせて形成することがより良好な印刷性能を有する構造を得ることができ、好ましい。
【0045】
凹凸構造の形態(ピッチ及び表面粗さなど)はアルカリ性コロイダルシリカの種類及び添加量、水溶性多糖類の種類及び添加量、その他添加材の種類及び添加量、塗布液の固形分濃度、ウエット膜厚、乾燥条件等で適宜コントロールすることが可能である。
【0046】
凹凸構造のピッチとしては0.2〜30μmであることがより好ましく、0.5〜20μmであることがさらに好ましい。また、ピッチの大きな凹凸構造の上に、それよりもピッチの小さい凹凸構造が形成されているような多重構造の凹凸構造が形成されていてもよい。
【0047】
表面粗さとしては、Ra表示で100〜1000nmが好ましく、150〜600nmがより好ましい。
【0048】
また、親水性層の膜厚としては、0.01〜50μmであり、好ましくは0.2〜10μmであり、さらに好ましくは0.5〜3μmである。
【0049】
本発明に係る親水性層はさらに、下記のような多孔質体、層状鉱物等を含むのが好ましい。
【0050】
(多孔質シリカまたは多孔質アルミノシリケート粒子)
多孔質シリカ粒子は一般に湿式法または乾式法により製造される。湿式法ではケイ酸塩水溶液を中和して得られるゲルを乾燥、粉砕するか、中和して析出した沈降物を粉砕することで得ることができる。乾式法では四塩化珪素を水素と酸素と共に燃焼し、シリカを析出することで得られる。これらの粒子は製造条件の調整により多孔性や粒径を制御することが可能である。
【0051】
多孔質シリカ粒子としては、湿式法のゲルから得られるものが特に好ましい。
【0052】
多孔質アルミノシリケート粒子は例えば特開平10−71764号に記載されている方法により製造される。
【0053】
即ち、アルミニウムアルコキシドと珪素アルコキシドを主成分として加水分解法により合成された非晶質な複合体粒子である。粒子中のアルミナとシリカの比率は1:4〜4:1の範囲で合成することが可能である。また、製造時にその他の金属のアルコキシドを添加して3成分以上の複合体粒子として製造したものも本発明に使用できる。これらの複合体粒子も製造条件の調整により多孔性や粒径を制御することが可能である。
【0054】
粒子の多孔性としては、分散前の状態で細孔容積で1.0ml/g以上であることが好ましく、1.2ml/g以上であることがより好ましく、1.8〜2.5ml/g以下であることがさらに好ましい。
【0055】
細孔容積は塗膜の保水性と密接に関連しており、細孔容積が大きいほど保水性が良好となって印刷時に汚れにくく、水量ラチチュードも広くなるが、2.5ml/gよりも大きくなると粒子自体が非常に脆くなるため塗膜の耐久性が低下する。細孔容積が1.0ml/g未満の場合には、印刷時の汚れにくさ、水量ラチチュードの広さが不充分となる。
【0056】
粒径としては、親水性層に含有されている状態で(例えば分散時に破砕された場合も含めて)、実質的に1μm以下であることが好ましく、0.5μm以下であることがさらに好ましい。
【0057】
(層状鉱物粒子)
また、本発明に係る親水性層は金属酸化物として、層状鉱物粒子を含んでもよい。層状鉱物粒子としては、カオリナイト、ハロイサイト、タルク、スメクタイト(モンモリロナイト、バイデライト、ヘクトライト、サボナイト等)、バーミキュライト、マイカ(雲母)、クロライトといった粘土鉱物及び、ハイドロタルサイト、層状ポリケイ酸塩(カネマイト、マカタイト、アイアライト、マガディアイト、ケニヤアイト等)等が挙げられる。中でも、単位層(ユニットレイヤー)の電荷密度が高いほど極性が高く、親水性も高いと考えられる。好ましい電荷密度としては0.25以上、さらに好ましくは0.6以上である。このような電荷密度を有する層状鉱物としては、スメクタイト(電荷密度0.25〜0.6;陰電荷)、バーミキュライト(電荷密度0.6〜0.9;陰電荷)等が挙げられる。特に、合成フッ素雲母は粒径等安定した品質のものを入手することができ好ましい。また、合成フッ素雲母の中でも、膨潤性であるものが好ましく、自由膨潤であるものがさらに好ましい。
【0058】
また、上記の層状鉱物のインターカレーション化合物(ピラードクリスタル等)や、イオン交換処理を施したもの、表面処理(シランカップリング処理、有機バインダとの複合化処理等)を施したものも使用することができる。
【0059】
層状鉱物粒子のサイズとしては、層中に含有されている状態で(膨潤工程、分散剥離工程を経た場合も含めて)、平均粒径(粒子の最大長)が20μm以下であり、また平均アスペクト比(粒子の最大長/粒子の厚さ)が20以上の薄層状であることが好ましく、平均粒径が5μm以下であり、平均アスペクト比が50以上であることがさらに好ましく、平均粒径が1μm以下であり、平均アスペクト比が50以上であることがさらに好ましい。粒子サイズが上記範囲にある場合、薄層状粒子の特徴である平面方向の連続性及び柔軟性が塗膜に付与され、クラックが入りにくく乾燥状態で強靭な塗膜とすることができる。
【0060】
また、粒子物を多く含有する塗布液においては、層状粘土鉱物の増粘効果によって、粒子物の沈降を抑制することができる。
【0061】
層状鉱物粒子の含有量としては、層全体の0.1〜30質量%であることが好ましく、1〜10質量%であることがより好ましい。特に膨潤性合成フッ素雲母やスメクタイトは少量の添加でも効果が見られるため好ましい。層状鉱物粒子は、塗布液に粉体で添加してもよいが、簡便な調液方法(メディア分散等の分散工程を必要としない)でも良好な分散度を得るために、層状鉱物粒子を単独で水に膨潤させたゲルを作製した後、塗布液に添加することが好ましい。
【0062】
(その他含有可能な素材)
本発明に係る親水性層を作製するための塗布液には、塗布性改善等の目的で水溶性の界面活性剤を含有させることができる。Si系、またはF系等の界面活性剤を使用することができるが、特にSi元素を含む界面活性剤を使用することが印刷汚れを生じる懸念がなく、好ましい。該界面活性剤の含有量は親水性層全体(塗布液としては固形分)の0.01〜3質量%が好ましく、0.03〜1質量%がさらに好ましい。
【0063】
また、本発明に係る親水性層はリン酸塩を含むことができる。本発明では親水性層の塗布液がアルカリ性であることが好ましいため、リン酸塩としてはリン酸三ナトリウムやリン酸水素二ナトリウムとして添加することが好ましい。リン酸塩を添加することで、印刷時の網の目開きを改善する効果が得られる。リン酸塩の添加量としては、水和物を除いた有効量として、0.1〜5質量%が好ましく、0.5〜2質量%がさらに好ましい。
【0064】
〔画像形成層〕
本発明に係る平版印刷版材料は、プラスチック支持体の親水性層を有する側に画像形成層を有する。
【0065】
本発明に係る画像形成層は、画像露光によって画像を形成し得る層であり、従来平版印刷版の感光層として用いられているネガ型、ポジ型どちらの画像形成層も用いることができる。
【0066】
本発明に係る画像形成層は、感熱画像形成層あるいは重合型画像形成層である場合に本発明は有効である。
【0067】
感熱画像形成層としては、光熱変換材料を有することが好ましい。
【0068】
光熱変換材料としては赤外吸収色素または顔料を用いることができる。
【0069】
(赤外吸収色素)
赤外吸収色素としては、一般的な赤外吸収色素であるシアニン系色素、クロコニウム系色素、ポリメチン系色素、アズレニウム系色素、スクワリウム系色素、チオピリリウム系色素、ナフトキノン系色素、アントラキノン系色素等の有機化合物、フタロシアニン系、ナフタロシアニン系、アゾ系、チオアミド系、ジチオール系、インドアニリン系の有機金属錯体等が挙げられる。
【0070】
具体的には、特開昭63−139191号、同64−33547号、特開平1−160683号、同1−280750号、同1−293342号、同2−2074号、同3−26593号、同3−30991号、同3−34891号、同3−36093号、同3−36094号、同3−36095号、同3−42281号、同3−97589号、同3−103476号、同7−43851号、同7−102179号、特開2001−117201号の各公報等に記載の化合物が挙げられる。これらは一種または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0071】
(顔料)
顔料としては、カーボン、グラファイト、金属、金属酸化物等が挙げられる。
【0072】
カーボンとしては、特にファーネスブラックやアセチレンブラックの使用が好ましい。粒度(d50)は100nm以下であることが好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。
【0073】
グラファイトとしては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下の微粒子を使用することができる。
【0074】
金属としては、粒径が0.5μm以下、好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下の微粒子であれば何れの金属であっても使用することができる。形状としては球状、片状、針状等何れの形状でもよい。特にコロイド状金属微粒子(Ag、Au等)が好ましい。
【0075】
金属酸化物としては、可視光域で黒色を呈している素材または素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材を使用することができる。可視光域で黒色を呈している素材しては、黒色酸化鉄(Fe34)や、二種以上の金属を含有する黒色複合金属酸化物が挙げられる。具体的には、Al、Ti、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sb、Baから選ばれる二種以上の金属からなる複合金属酸化物である。これらは特開平8−27393号、同9−25126号、同9−237570号、同9−241529号、同10−231441号の各公報等に開示されている方法により製造することができる。本発明に用いることができる複合金属酸化物としては、特にCu−Cr−Mn系またはCu−Fe−Mn系の複合金属酸化物であることが好ましい。Cu−Cr−Mn系の場合には、6価クロムの溶出を低減させるために、特開平8−27393号公報に開示されている処理を施すことが好ましい。
【0076】
これらの複合金属酸化物は光熱変換効率が良好である。これらの複合金属酸化物は平均1次粒子径が1μm以下であることが好ましく、平均1次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲にあることがより好ましい。平均1次粒子径が1μm以下とすることで、添加量に対する光熱変換能がより良好となり、平均1次粒子径が0.01〜0.5μmの範囲とすることで添加量に対する光熱変換能がより良好となる。ただし、添加量に対する光熱変換能は粒子の分散度にも大きく影響を受け、分散が良好であるほど良好となる。従って、これらの複合金属酸化物粒子は塗布液に添加する前に、別途公知の方法により分散して、分散液(ペースト)としておくことが好ましい。平均1次粒子径が0.01未満となると、分散が困難となるため好ましくない。分散には適宜分散剤を使用することができる。分散剤の添加量は複合金属酸化物粒子に対して0.01〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましい。分散剤の種類は特に限定しないが、Si元素を含むSi系界面活性剤を用いることが好ましい。
【0077】
素材自体が導電性を有するか、半導体であるような素材としては、例えば、SbをドープしたSnO2(ATO)、Snを添加したIn23(ITO)、TiO2、TiO2を還元したTiO(酸化窒化チタン、一般的にはチタンブラック)等が挙げられる。また、これらの金属酸化物で芯材(BaSO4、TiO2、9Al23・2B2O、K2O・nTiO2等)を被覆したものも使用することができる。これらの粒径は0.5μm以下、好ましくは100nm以下、さらに好ましくは50nm以下である。
【0078】
特に好ましい光熱変換材料としては、前記の赤外吸収色素及び金属酸化物が二種以上の金属の酸化物からなる黒色複合金属酸化物である。
【0079】
これらの光熱変換材料の添加量としては、これを含む層に対して0.1〜50質量%であり、1〜30質量%が好ましく、3〜25質量%がより好ましい。
【0080】
〔光重合性化合物〕
本発明に係る画像形成層には光重合性化合物を含有することが好ましい。
【0081】
本発明に用いられる光重合性化合物は、少なくとも活性光で重合可能なエチレン性不飽和結合を有するモノマー/プレポリマーを含有する。
【0082】
光重合性のモノマー/プレポリマーとしては、例えば、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート等の単官能アクリル酸エステル及びその誘導体、あるいはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエート等に代えた化合物、ポリエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールのε−カプロラクトン付加物のジアクリレート等の2官能アクリル酸エステル及びその誘導体、あるいはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエート等に代えた化合物、あるいはトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ピロガロールトリアクリレート等の多官能アクリル酸エステル及びその誘導体、あるいはこれらのアクリレートをメタクリレート、イタコネート、クロトネート、マレエート等に代えた化合物等を挙げることができる。また、エチレン性不飽和結合を有する樹脂は、適当な分子量のオリゴマーにアクリル酸またはメタアクリル酸を導入し、重合性を付与した、いわゆるプレポリマーと呼ばれるものも好適に使用できる。その他の好ましい光重合性化合物としては、特開昭61−6649号、同62−173295号等に記載の化合物、特開2005−41206号(0085)〜(0097)に記載の化合物、「11290の化学商品」化学工業日報社、p.286〜294に記載の化合物、「UV・EB硬化ハンドブック(原料編)」高分子刊行会、p.11〜65に記載の化合物を本発明に好ましく用いることができる。
【0083】
画像形成層に含まれる光重合性化合物について、その構造、単独使用か併用か、添加量等の使用方法の詳細は、最終的な平版平版印刷版材料の性能設計にあわせて任意に設定できる。例えば、次のような観点から選択される。
【0084】
感度の点では1分子当たりの不飽和基含量が多い構造が好ましく、多くの場合、2官能以上が好ましい。また、画像部、即ち硬化膜の強度を高くするためには、3官能以上のものがよく、さらに、異なる官能数・異なる重合性基(例えばアクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、スチレン系化合物、ビニルエーテル系化合物)のものを併用することで、感度と強度の両方を調節する方法も有効である。
【0085】
また、画像形成層中の他の成分(例えばバインダーポリマー、重合開始剤、着色剤等)との相溶性、分散性に対しても、光重合性化合物の選択・使用法は重要であり、例えば、低純度化合物の使用や、2種以上の併用により相溶性を向上させうることがある。また、プラスチック支持体や後述の保護層等との密着性を向上させる目的で特定の構造を選択することもあり得る。
【0086】
光重合性化合物は、画像形成層中に、好ましくは5〜80質量%、さらに好ましくは25〜75質量%の範囲で使用される。また、これらは単独で用いても2種以上併用してもよい。そのほか、光重合性化合物の使用法は、酸素に対する重合阻害の大小、解像度、かぶり性、屈折率変化、表面粘着性等の観点から適切な構造、配合、添加量を任意に選択でき、さらに場合によっては下塗り、上塗りといった層構成・塗布方法も実施しうる。
【0087】
〔バインダーポリマー〕
本発明では、画像形成層の皮膜特性や機上現像性の向上のため、バインダーポリマーを用いることができる。バインダーポリマーとしては、従来公知のものを制限なく使用でき、皮膜性を有する線状有機ポリマーが好ましい。このようなバインダーポリマーの例としては、アクリル樹脂、ポリビニルアセタール樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリウレア樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、メタクリル樹脂、ポリスチレン系樹脂、ノボラック型フェノール系樹脂、ポリエステル樹脂、合成ゴム、天然ゴムが挙げられる。
【0088】
バインダーポリマーは、画像部の皮膜強度を向上するために、架橋性を有していることが好ましい。バインダーポリマーに架橋性を持たせるためには、エチレン性不飽和結合等の架橋性官能基を高分子の主鎖中または側鎖中に導入すればよい。架橋性官能基は、共重合により導入してもよいし、高分子反応によって導入してもよい。
【0089】
分子の主鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、ポリ−1,4−ブタジエン、ポリ−1,4−イソプレン等が挙げられる。
【0090】
分子の側鎖中にエチレン性不飽和結合を有するポリマーの例としては、アクリル酸またはメタクリル酸のエステルまたはアミドのポリマーであって、エステルまたはアミドの残基(−COORまたは−CONHRのR)の少なくとも一部がエチレン性不飽和結合を有するポリマーを挙げることができる。
【0091】
エチレン性不飽和結合を有する残基(上記R)の例としては、−(CH2nCR1=CR23、−(CH2O)nCH2CR1=CR23、−(CH2CH2O)nCH2CR1=CR23、−(CH2nNH−CO−O−CH2CR1=CR23、−(CH2n−O−CO−CR1=CR23及び−(CH2CH2O)2−X(式中、R1〜R3はそれぞれ、水素原子、ハロゲン原子または炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アルコキシ基もしくはアリールオキシ基を表し、R1とR2またはR3とは互いに結合して環を形成してもよい。nは、1〜10の整数を表す。Xは、ジシクロペンタジエニル残基を表す。)を挙げることができる。
【0092】
エステル残基の具体例としては、−CH2CH=CH2、−CH2CH2O−CH2CH=CH2、−CH2C(CH3)=CH2、−CH2CH=CH−C65、−CH2CH2OCOCH=CH−C65、−CH2CH2OCOC(CH3)=CH2、−CH2CH2OCOCH=CH2、−CH2CH2−NHCOO−CH2CH=CH2及び−CH2CH2O−X(式中、Xはジシクロペンタジエニル残基を表す。)が挙げられる。
【0093】
アミド残基の具体例としては、−CH2CH=CH2、−CH2CH2−Y(式中、Yはシクロヘキセン残基を表す。)、−CH2CH2−OCO−CH=CH2が挙げられる。
【0094】
架橋性を有するバインダーポリマーは、例えば、その架橋性官能基にフリーラジカル(重合開始ラジカルまたは重合性化合物の重合過程の生長ラジカル)が付加し、ポリマー間で直接にまたは重合性化合物の重合連鎖を介して付加重合して、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。または、ポリマー中の原子(例えば、官能性架橋基に隣接する炭素原子上の水素原子)がフリーラジカルにより引き抜かれてポリマーラジカルが生成し、それが互いに結合することによって、ポリマー分子間に架橋が形成されて硬化する。
【0095】
バインダーポリマー中の架橋性基の含有量(ヨウ素滴定によるラジカル重合可能な不飽和二重結合の含有量)は、バインダーポリマー1g当たり、好ましくは0.1〜10.0mmol、より好ましくは1.0〜7.0mmol、最も好ましくは2.0〜5.5mmolである。この範囲で、良好な感度と良好な保存安定性が得られる。
【0096】
また、画像形成層未露光部の機上現像性向上の観点から、バインダーポリマーは、インキ及び/また湿し水に対する溶解性または分散性が高いことが好ましい。
【0097】
インキに対する溶解性または分散性を向上させるためには、バインダーポリマーは、親油的な方が好ましく、湿し水に対する溶解性または分散性を向上させるためには、バインダーポリマーは、親水的な方が好ましい。このため、本発明においては、親油的なバインダーポリマーと親水的なバインダーポリマーを併用することも有効である。
【0098】
親水的なバインダーポリマーとしては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシル基、カルボキシレート基、ヒドロキシエチル基、ポリオキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、ポリオキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、アンモニウム基、アミド基、カルボキシメチル基、スルホン酸基、リン酸基等の親水性基を有するものが挙げられる。
【0099】
具体例として、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、デンプン誘導体、カルボキシメチルセルロース及びそのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、ポリアクリル酸類及びそれらの塩、ポリメタクリル酸類及びそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシピロピルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマー及びコポリマー、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、加水分解度が60質量%以上、好ましくは80質量%以上である加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、メタクリルアミドのホモポリマー及びポリマー、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマー及びコポリマー、ポリビニルピロリドン、アルコール可溶性ナイロン、2,2−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−プロパンとエピクロロヒドリンとのポリエーテル等が挙げられる。
【0100】
バインダーポリマーは、重量平均分子量が5000以上であるのが好ましく、1万〜30万であるのがより好ましく、また、数平均分子量が1000以上であるのが好ましく、2000〜25万であるのがより好ましい。多分散度(重量平均分子量/数平均分子量)は、1.1〜10であるのが好ましい。
【0101】
バインダーポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、グラフトポリマー等のいずれでもよいが、ランダムポリマーであるのが好ましい。
【0102】
バインダーポリマーは、従来公知の方法により合成することができる。なかでも、側鎖に架橋性基を有するバインダーポリマーは、ラジカル重合または高分子反応によって容易に合成できる。ラジカル重合に用いられるラジカル重合開始剤としては、アゾ系開始剤、過酸化物開始剤等の公知の化合物を用いることができる。合成する際に用いられる溶媒としては、例えば、テトラヒドロフラン、エチレンジクロリド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、アセトン、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、2−メトキシエチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、トルエン、酢酸エチル、乳酸メチル、乳酸エチル、ジメチルスルホキシド、水が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上混合して用いられる。
【0103】
バインダーポリマーは単独で用いても2種以上を混合して用いてもよい。
【0104】
バインダーポリマーの含有量は、画像形成層の全固形分に対して、10〜90質量%であるのが好ましく、20〜80質量%であるのがより好ましく、30〜70質量%であるのがさらに好ましい。この範囲で、良好な画像部の強度と画像形成性が得られる。
【0105】
また、重合性化合物とバインダーポリマーは、質量比で1/9〜7/3となる量で用いるのが好ましい。
【0106】
〔重合開始剤〕
本発明に係る画像形成層には重合開始剤を含有することが好ましい。本発明に用いられる重合開始剤は、光及び/または熱によりラジカルを発生させて、前述の光重合化合物の硬化反応を開始させるものである。いわゆる、光重合開始剤または熱重合開始剤であり、本発明においては、光熱変換材料を併用するため、熱により分解してラジカルを発生させる熱重合開始剤が好ましく用いられる。
【0107】
重合開始剤として、オニウム塩、ハロゲン原子を有するトリアジン系化合物(特公昭59−1281号、同61−9621号、特開昭60−60104号に記載のトリアジン誘導体等)、鉄アレーン錯体及びビスイミダゾール(特開昭55−127550号、同60−202437号に記載の2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体等)が好ましく用いられる。
【0108】
オニウム塩としては、ヨードニウム塩、スルホニウム塩、ホスソニウム塩、スタンノニウム塩、オキサゾリウム塩等が挙げられるが、好ましくは、下記一般式(I)、(II)、(III)または(IV)で表される化合物である。
【0109】
【化1】

【0110】
式中、R1〜R4及びR10〜R13は各々、アルキル基、アリール基またはアラルキル基を表し、R1〜R4及びR10〜R13が各々、互いに結合して環を形成してもよい。R5、R6及びR7は各々、アルキル基またはアリール基を表し、R5〜R7が互いに結合して環を形成してもよい。R8及びR9は各々、アリール基を表し、X-は対アニオンを表す。
【0111】
(一般式(I)で表される化合物)
まず、一般式(I)で表されるホスホニウム塩化合物(以下、本発明のホスホニウム塩ともいう)について述べる。
【0112】
1〜R4で表される置換基の具体例としては、以下の如くである。
【0113】
アルキル基としては直鎖、分岐アルキル基が含まれ、例えばメチル、エチル、ブチル、i−ブチル、ヘキシル、オクチル、ステアリル基等が挙げられる。発色濃度の点から炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、特にブチル基が好ましい。これらのアルキル基は互いに結合して環を形成してもよく、シクロアルキル基としては5〜7員環のもの(例えばシクロペンチル、シクロヘキシル基等)が好ましい。
【0114】
アリール基としてはフェニル、ナフチル基等が挙げられ、アラルキル基としてはベンジル、フェネチル基等が挙げられる。
【0115】
これらの基はさらに置換されていてもよく、置換基としてハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、アミノ基(アルキル置換アミノ基を含む)、アルコキシ基、カルバモイル基、−COOR基、−OCOR基(Rはアルキル基、アリール基等の有機基)が挙げられる。
【0116】
-で表される対アニオンとしては、1価のアニオンであれば特に制約されないが、好ましくはハロゲンイオンであり、さらに塩素及び臭素アニオンが発色濃度の点で望ましい。対アニオンの具体例としては、ブロマイド、クロライド、アイオダイド、フルオライド、パークロレート、ベンゾエート、チオシアナート、アセテート、トリフルオロアセテート、ヘキサフルオロホスフェート、ナイトレート、サリシネート等が挙げられる。
【0117】
(一般式(II)で表される化合物)
次に、一般式(II)で表されるスルホニウム塩化合物(以下、本発明のスルホニウム塩ともいう)について述べる。
【0118】
5〜R7で表される置換基の具体例としては、以下の如くである。
【0119】
アルキル基としては直鎖、分岐アルキル基が含まれ、メチル、エチル、ブチル、i−ブチル、ヘキシル、オクチル、ステアリル基等が挙げられる。発色濃度の点から炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、特にブチル基が好ましい。これらのアルキル基は互いに結合して環を形成してもよく、シクロアルキル基としては5〜7員環のもの(例えばシクロペンチル、シクロヘキシル基等)が好ましい。
【0120】
アリール基としてはフェニル、ナフチル等が挙げられる。
【0121】
5〜R7が互いに結合してS+と共に形成する環としては、ベンゾチアチオピリリウム環等が挙げられる。
【0122】
これらの基はさらに置換されていてもよく、置換基としては、前記一般式(I)で述べた基と同様の基が挙げられる。
【0123】
-で表される対アニオンは、一般式(I)のX-と同義である。
【0124】
(一般式(III)で表される化合物)
さらに、一般式(III)で表されるヨードニウム塩化合物(以下、本発明のヨードニウム塩と記す)について述べる。
【0125】
8及びR9で表されるアリール基としてはフェニル、ナフチル基等が挙げられるが、これらの基はさらに置換されていてもよく、置換基としては、前記一般式(I)で述べた基と同様の基が挙げられる。
【0126】
-で表される対アニオンは、一般式(I)のX-と同義である。
【0127】
(一般式(IV)で表される化合物)
次に、一般式(IV)で表されるアンモニウム塩化合物(以下、本発明のアンモニウム塩ともいう)について述べる。
【0128】
10〜R13で表される置換基の具体例としては、以下の如くである。
【0129】
アルキル基としては直鎖、分岐アルキル基が含まれ、例えばメチル、エチル、ブチル、i−ブチル、ヘキシル、オクチル、ステアリル等が挙げられる。発色濃度の点から炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、特にブチル基が好ましい。これらのアルキル基は互いに結合して環を形成してもよく、シクロアルキル基としては5〜7員環のもの(例えばシクロペンチル、シクロヘキシル基等)が好ましい。
【0130】
アリール基としてはフェニル、ナフチル基等が挙げられ、アラルキル基としてはベンジル、フェネチル基等が挙げられる。
【0131】
これらの基はさらに置換されていてもよく、置換基として、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルキル基、アリール基、ヒドロキシル基、アミノ基(アルキル置換アミノ基を含む)、アルコキシ基、カルバモイル基、−COOR基、−OCOR(Rはアルキル基、アリール基等の有機基)が挙げられる。
【0132】
以下に、オニウム塩の代表的具体例を挙げるが、これらに限定されない。
【0133】
【化2】

【0134】
【化3】

【0135】
【化4】

【0136】
【化5】

【0137】
また、その他の好ましいオニウム塩としては、特公昭55−39162号、特開昭59−14023号並びに「マクロモレキュルス(Macromolecules)」第10巻、第1307頁(1977年)に記載の各種オニウム化合物が挙げられる。
【0138】
オニウム塩の添加量は、オニウム塩の種類及び使用形態により異なるが、画像形成材料1m2当たり0.2〜5gが好ましい。
【0139】
鉄アレーン錯体としては下記構造のものが挙げられる。
【0140】
【化6】

【0141】
なお、式中R1はアルキル基、アリール基またはアルコキシ基を表す。
【0142】
鉄アレーン錯体としては好ましくは化合物(1)−1である。
【0143】
【化7】

【0144】
また、ビスイミダゾール化合物として下記構造のものを用いることが好ましい。
【0145】
【化8】

【0146】
これらの重合開始剤のうち、オニウム塩が特に好ましい。
【0147】
これらの重合開始剤は、さらなる感度向上を目的として他のラジカル発生剤と併用することができ、併用可能なラジカル発生剤としては、特開昭59−1504号並びに同61−243807号に記載の有機過酸化物、特公昭43−23684号、同44−6413号、同44−6413号、同47−1604号並びに米国特許第3,567,453号に記載のジアゾニウム化合物、米国特許第2,848,328号、同2,852,379号並びに同2,940,853号に記載の有機アジド化合物、特公昭36−22062号、同37−13109号、同38−18015号並びに同45−9610号に記載のオルト−キノンジアジド類、特開昭59−142205号に記載のアゾ化合物、特開平1−54440号、欧州特許第109,851号、同第126,712号、「ジャーナル・オブ・イメージング・サイエンス(J.Imag.Sci.)」第30巻、第174頁(1986年)に記載のその他の金属アレーン錯体、特開平5−213861号及び同5−255347号に記載の(オキソ)スルホニウム有機ホウ素錯体、特開昭61−151197号に記載のチタノセン類、「コーディネーション・ケミストリー・レビュー(Coordination Chemistry Review)」第84巻、第85〜277頁(1988年)並びに特開平2−182701号に記載のルテニウム等の遷移金属を含有する遷移金属錯体、特開平3−209477号に記載の4臭化炭素、特開昭59−107344号に記載の有機ハロゲン化合物等が挙げられる。
【0148】
本発明に用いられる重合開始剤は、極大吸収波長が400nm以下であることが好ましい。より好ましくは、極大吸収波長が360nm以下であり、最も好ましくは300nm以下である。このように吸収波長を紫外線領域にすることにより、平版印刷版原版の取り扱いを白灯下で実施することができる。
【0149】
これらの重合開始剤は、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、これらの重合開始剤は、画像形成層の他に別の層を設け、そこにも添加することができる。
【0150】
〔熱重合防止剤〕
画像形成層には、さらに目的を損なわない範囲で、増感剤、光熱変換剤、重合促進剤等の他の成分を含有せしめることは任意である。
【0151】
増感剤としては、特開昭64−13140号に記載のトリアジン系化合物、特開昭64−13141号に記載の芳香族オニウム塩、芳香族ハロニウム塩、特開昭64−13143号に記載の有機過酸化物、特公昭45−37377号や米国特許3,652,275号に記載のビスイミダゾール化合物、チオール類等が挙げられる。増感剤の添加量は、光重合性親油性熱可塑性モノマー/プレポリマーの合計量100質量部に対して10質量部以下、好ましくは0.01〜5質量部程度が添加される。
【0152】
重合促進剤としては、アミン化合物や硫黄化合物(チオール、ジスルフィド等)に代表される重合促進剤や連鎖移動触媒等を添加することが可能である。
【0153】
光重合性組成物に添加可能な重合促進剤や連鎖移動触媒の具体例としては、例えばN−フェニルグリシン、トリエタノールアミン、N,N−ジエチルアニリン等のアミン類;米国特許4,414,312号や特開昭64−13144号記載のチオール類;特開平2−29161号記載のジスルフィド類;米国特許3,558,322号や特開昭64−17048号記載のチオン類;特開平2−291560号記載のO−アシルチオヒドロキサメートやN−アルコキシピリジンチオン類が挙げられる。特に好ましいアミン化合物としてはN,N−ジエチルアニリンであり、硫黄化合物としては2−メルカプトベンゾチアゾールである。
【0154】
熱重合禁止剤としては、キノン系、フェノール系等の化合物が好ましく用いられる。例えばハイドロキノン、ピロガロール、p−メトキシフェノール、カテコール、β−ナフトール、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール等が挙げられる。光重合性親油性熱可塑性モノマー/プレポリマー100質量部に対して、10質量部以下、好ましくは0.01〜5質量部程度添加される。
【0155】
〔可視画剤〕
(可視画性の付与)
通常、印刷業界においては、印刷する前に平版印刷版材料に画像形成した印刷版を正しく画像が形成されているかを検査する検版という作業がある。検版をするためには、印刷前に形成された画像が版面上で見える性能、つまり可視画性がよいことが好ましい。現像処理なしに印刷可能なプロセスレス平版印刷版材料の場合は、露光することによる光または熱によって露光部分、または未露光部分の光学濃度が変化することが好ましい。
【0156】
本発明において好ましく用いられる方法としては、露光することにより光学濃度が変化するシアニン系赤外線吸収色素を含有する方法、光酸発生剤とその酸により変色する化合物を用いる方法、ロイコ色素のような発色剤と顕色剤を組み合わせて用いる方法、露光前は失透して白濁している前記熱溶融性微粒子または熱融着性微粒子が露光することにより透明化する作用を用いる方法等がある。
【0157】
本発明においては、上記の画像形成層構成成分及び後述のその他構成成分を画像形成層に含有させる方法として、いくつかの態様を用いることができる。一つは、例えば、特開2002−287334号公報に記載のごとく、構成成分を適当な溶媒に溶解して塗布する分子分散型画像形成層である。もう一つの態様は、例えば、特開2001−277740号公報、特開2001−277742号公報に記載のごとく、構成成分の全てまたは一部をマイクロカプセルに内包させて画像形成層に含有させるマイクロカプセル型画像形成層である。さらに、マイクロカプセル型画像形成層において、構成成分は、マイクロカプセル外にも含有させることもできる。ここで、マイクロカプセル型画像形成層は、疎水性の構成成分をマイクロカプセルに内包し、親水性構成成分をマイクロカプセル外に含有することが好ましい態様である。より良好な機上現像性を得るためには、画像形成層は、マイクロカプセル型画像形成層であることが好ましい。
【0158】
〔その他の添加剤〕
本発明に係る画像形成層には、上記の成分以外の添加剤、例えば、界面活性剤、着色剤、焼き出し剤、重合禁止剤、高級脂肪酸誘導体、可塑剤、無機微粒子、低分子親水性化合物等を含有させることができる。かかる添加剤は、画像形成層に分子分散状に添加することもできるが、必要に応じて前記重合性化合物と共にマイクロカプセルに内包することもできる。
【0159】
(界面活性剤)
本発明において、画像形成層には、印刷開始時の機上現像性を促進させるため、及び、塗布面状を向上させるために界面活性剤を用いるのが好ましい。界面活性剤としては、ノニオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤、フッ素系界面活性剤等が挙げられる。界面活性剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0160】
本発明に用いられるノニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類、グリセリン脂肪酸部分エステル類、ソルビタン脂肪酸部分エステル類、ペンタエリスリトール脂肪酸部分エステル類、プロピレングリコールモノ脂肪酸エステル類、ショ糖脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸部分エステル類、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル類、ポリグリセリン脂肪酸部分エステル類、ポリオキシエチレン化ひまし油類、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸部分エステル類、脂肪酸ジエタノールアミド類、N,N−ビス−2−ヒドロキシアルキルアミン類、ポリオキシエチレンアルキルアミン、トリエタノールアミン脂肪酸エステル、トリアルキルアミンオキシド、ポリエチレングリコール、ポリエチレングリコールとポリプロピレングリコールの共重合体が挙げられる。
【0161】
本発明に用いられるアニオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、脂肪酸塩類、アビエチン酸塩類、ヒドロキシアルカンスルホン酸塩類、アルカンスルホン酸塩類、ジアルキルスルホ琥珀酸エステル塩類、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、分岐鎖アルキルベンゼンスルホン酸塩類、アルキルナフタレンスルホン酸塩類、アルキルフェノキシポリオキシエチレンプロピルスルホン酸塩類、ポリオキシエチレンアルキルスルホフェニルエーテル塩類、N−メチル−N−オレイルタウリンナトリウム塩、N−アルキルスルホコハク酸モノアミド二ナトリウム塩、石油スルホン酸塩類、硫酸化牛脂油、脂肪酸アルキルエステルの硫酸エステル塩類、アルキル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩類、脂肪酸モノグリセリド硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル硫酸エステル塩類、アルキルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル塩類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルリン酸エステル塩類、スチレン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、オレフィン/無水マレイン酸共重合物の部分けん化物類、ナフタレンスルホン酸塩ホルマリン縮合物類が挙げられる。
【0162】
本発明に用いられるカチオン界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、アルキルアミン塩類、第四級アンモニウム塩類、ポリオキシエチレンアルキルアミン塩類、ポリエチレンポリアミン誘導体が挙げられる。
【0163】
本発明に用いられる両性界面活性剤は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、カルボキシベタイン類、アミノカルボン酸類、スルホベタイン類、アミノ硫酸エステル類、イミタゾリン類が挙げられる。
【0164】
なお、上記界面活性剤の中で、「ポリオキシエチレン」とあるものは、ポリオキシメチレン、ポリオキシプロピレン、ポリオキシブチレン等の「ポリオキシアルキレン」に読み替えることもでき、本発明においては、それらの界面活性剤も用いることができる。
【0165】
さらに好ましい界面活性剤としては、分子内にパーフルオロアルキル基を含有するフッ素系界面活性剤が挙げられる。このようなフッ素系界面活性剤としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、パーフルオロアルキルリン酸エステル等のアニオン型;パーフルオロアルキルベタイン等の両性型;パーフルオロアルキルトリメチルアンモニウム塩等のカチオン型;パーフルオロアルキルアミンオキサイド、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基及び親水性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基及び親油性基を含有するオリゴマー、パーフルオロアルキル基及び親油性基を含有するウレタン等のノニオン型が挙げられる。また、特開昭62−170950号、同62−226143号及び同60−168144号の各公報に記載されているフッ素系界面活性剤も挙げられる。
【0166】
界面活性剤は、単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0167】
界面活性剤は、画像形成層に、0.001〜10質量%含有させることが好ましく、0.01〜5質量%含有させることがより好ましい。
【0168】
(着色剤)
本発明に係る画像形成層には、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、及び特開昭62−293247号公報に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、カーボンブラック、酸化チタン等の顔料も好適に用いることができる。
【0169】
これらの着色剤は、画像形成後、画像部と非画像部の区別がつきやすいので、添加する方が好ましい。なお、添加量は、画像形成層中に、0.01〜10質量%の割合が好ましい。
【0170】
〔保護層〕
本発明において、取り扱い時の傷つき防止のために、画像形成層の上層に保護層を有することが好ましい。保護層は画像形成層のすぐ上の層であってもよいし、また画像形成層と保護層の間に中間層が設けられてもよい。保護層は印刷機上で除去可能であることが好ましい。
【0171】
保護層は、水溶性樹脂または水溶性樹脂を部分的に架橋した水膨潤性樹脂を含有することが好ましい。かかる水溶性樹脂としては、例えば、多糖類、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルエーテル、スチレン−ブタジエン共重合体、メチルメタクリレート−ブタジエン共重合体の共役ジエン系重合体ラテックス、アクリル系重合体ラテックス、ビニル系重合体ラテックス、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の樹脂が挙げられるが、本発明では多糖類を用いることが好ましい。多糖類としては、デンプン類、セルロース類、ポリウロン酸、プルラン等が使用可能であるが、特にメチルセルロース塩、カルボキシメチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース塩等のセルロース誘導体が好ましく、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩やアンモニウム塩がより好ましい。
【0172】
本発明においては、保護層は前述する光熱変換材料を含有することができる。
【0173】
またレーザー記録装置あるいは印刷機に本発明の印刷版を装着する時の傷つき防止のために、本発明において保護層に平均粒径1μm以上、20μm未満のマット剤を含有させることが好ましい。
【0174】
好ましく用いられるマット剤としては、新モース硬度5以上の無機微粒子や有機マット剤が挙げられる。新モース硬度5以上の無機微粒子としては、例えば、金属酸化物粒子(シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化鉄、酸化クロム等)や金属炭化物粒子(炭化珪素等)、窒化ホウ素粒子、ダイアモンド粒子等が挙げられる。有機マット剤としては、例えば、米国特許第2,322,037号明細書等に記載の澱粉、ベルギー特許第625,451号明細書や英国特許第981,198号明細書等に記載された澱粉誘導体、特公昭44−3643号公報等に記載のポリビニルアルコール、スイス特許第330,158号明細書等に記載のポリスチレンあるいはポリメタアクリレート、米国特許第3,079,257号等明細書に記載のポリアクリロニトリル、米国特許第3,022,169号明細書等に記載されたポリカーボネートが挙げられる。これらマット剤の添加量は1m2当たり0.1g以上、10g未満であることが好ましい。
【0175】
その他、保護層には塗布の均一性を確保する目的で、水溶液塗布の場合には主に非イオン系界面活性剤を添加することができる。このような非イオン界面活性剤の具体例としては、ソルビタントリステアレート、ソルビタンモノパルミテート、ソルビタントリオレート、ステアリン酸モノグリセリド、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル等を挙げることができる。上記非イオン界面活性剤の保護層の全固形物中に占める割合は、0.05〜5質量%が好ましく、より好ましくは1〜3質量%である。
【0176】
本発明において、保護層の乾燥塗布量は0.05〜1.5g/m2が好ましく、さらに好ましい範囲は0.1〜0.7g/m2である。この範囲内で印刷機上での保護層の除去性を損なうことなく、良好な汚れ防止、傷付き防止、指紋跡付着防止及びアブレーションカスの発生低減ができる。
【0177】
〔プラスチック支持体〕
本発明に係るプラスチック支持体は、親水性層及び画像形成層を担持しうるプラスチックフィルム体であり、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリイミド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、セルロースエステル類を挙げることができる。特に、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステルフィルムが好ましく用いられる。
【0178】
これらプラスチックフィルムは塗布層との接着性を向上させるために、塗布面に易接着処理や下塗り層塗布を行うことが好ましい。易接着処理としては、コロナ放電処理や火炎処理、紫外線照射処理等が挙げられる。
【0179】
また、下塗り層としては、ゼラチンやラテックスを含む層等が挙げられる。
【実施例】
【0180】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0181】
実施例
下記方法により、プラスチック支持体上に、下塗り層、第1親水性層、第2親水性層及び画像形成層より構成される平版平版印刷版材料を作製した。
【0182】
(1)プラスチック支持体の作製
反応溶媒としてトルエン6Lを用い、触媒としてテトラエトキシチタン5ml及びメチルアルミノキサンをアルミニウム原子として500ml添加し、50℃においてモル比でスチレン48.94:p−メチルスチレン1.06を加え、2時間重合反応を行った。反応終了後、生成物を塩酸とメタノールとの混合液で洗浄して、触媒成分を分解除去した。次いで乾燥することにより共重合体640gを得た。
【0183】
この共重合体の重量平均分子量(Mw)は44万、数平均分子量(Mn)は24万であった。この共重合体中のp−メチルスチレン単位の含有割合は5質量%であった。また、この共重合体は13C−NMRによる分析から、145.11ppm、145.22ppm、142.09ppmに吸収が認められ、そのピーク面積から算出したスチレン単位のラセミペンタッドでのシンジオタクティシティーは72%であった。
【0184】
これを150℃5時間減圧下で乾燥後、280℃で押し出し、50℃の冷却ドラムの上で未延伸シートを得た。これを115℃で3.3倍に縦延伸を行った後、120℃で3.5倍に横延伸を行い、さらに180℃で30秒熱固定を実施した後、横方向に3%緩和しながら220℃で熱弛緩を行った。このようにして120μmの2軸延伸シンジオタクチック−ポリスチレン支持体を得た。
【0185】
(2)下塗、バック層の塗設
上記で得られたプラスチック支持体の両面に、8W/m2・分のコロナ放電処理を施し、次いで、一方の面に下記下引き塗布液aを乾燥膜厚が0.8μmになるように塗設後、コロナ放電処理(8W/m2・分)を行いながら下引き塗布液bを乾燥膜厚が0.1μmになるように塗布し、各々180℃、4分間乾燥させた(下引き面A)。また、反対側の面に、下記下引き塗布液c乾燥膜厚が0.8μmになるように塗設後、コロナ放電処理(8W/m2・分)を行いながら下引き塗布液dを乾燥膜厚が1.0μmになるように塗布し、各々180℃、4分間乾燥させた(下引き面B)。
【0186】
《下引き塗布液a》
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=60/39/1の3元系共重合ラテックス(Tg=75℃) 6.3質量%(固形分基準)
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=20/40/40の3元系共重合ラテックス 1.6質量%(固形分基準)
アニオン系界面活性剤S−1 0.1質量%
水 92.0質量%
《下引き塗布液b》
ゼラチン 1質量%
アニオン系界面活性剤S−1 0.05質量%
硬膜剤H−1 0.02質量%
マット剤(シリカ,平均粒径3.5μm) 0.02質量%
防黴剤F−1 0.01質量%
水 98.9質量%
【0187】
【化9】

【0188】
《下引き塗布液c》
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=20/40/40の3元系共重合ラテックス 0.4質量%(固形分基準)
スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート/アセトアセトキシエチルメタクリレート=39/40/20/1の4元系共重合ラテックス
7.6質量%(固形分基準)
ポリ塩化ビニリデン樹脂 0.5質量%
アニオン系界面活性剤S−1 0.1質量%
水 91.4質量%
《下引き塗布液d》
成分d−11/成分d−12/成分d−13=66/31/1の導電性組成物
6.4質量%
硬膜剤H−2 0.7質量%
アニオン系界面活性剤S−1 0.07質量%
マット剤(シリカ,平均粒径3.5μm) 0.03質量%
水 93.4質量%
成分d−11:スチレンスルホン酸ナトリウム/マレイン酸=50/50の共重合体からなるアニオン性高分子化合物
成分d−12:スチレン/グリシジルメタクリレート/ブチルアクリレート=40/40/20からなる3成分系共重合ラテックス
成分d−13:スチレン/イソプレンスルホン酸ナトリウム=80/20からなる高分子活性剤
【0189】
【化10】

【0190】
次いで、前記プラスチック支持体の各々の下引き層表面に下記プラズマ処理条件でプラズマ処理を施した。
【0191】
《プラズマ処理条件》
バッチ式の大気圧プラズマ処理装置(イーシー化学(株)製、AP−I−H−340)を用いて、高周波出力が4.5kW、周波数が5kHz、処理時間が5秒及びガス条件としてアルゴン、窒素及び水素の体積比をそれぞれ90%、5%、5%で、プラズマ処理を行い、2.2m幅にスリットした。
【0192】
下引き済みプラスチック支持体のA面上に、下記第一親水性層塗布液を乾燥膜が3.0μm、塗布幅が2mになるようにワイヤーバーを用いで塗布を行った。なお、プラスチック支持体の搬送速度を50m/分、塗布液の供給量を450g/分とした。
【0193】
《第一親水性層塗布液》
スノーテックス−XS(日産化学工業株式会社製) 9.62質量部
スノーテックス−ZL(日産化学工業株式会社製) 0.6質量部
シルトンJC−40(水澤化学工業株式会社製) 2.22質量部
STM−6500S(日産化学工業株式会社製) 3質量部
カルボキシメチルセルロースナトリウム(関東化学株式会社製) 0.12質量部
ミネラルコロイドMO(ウイルバ−エリス株式会社製) 0.22質量部
MF−4500ブラック(大日精化工業株式会社製、光熱変換素材) 4質量部
リン酸三ナトリウム・12水(関東化学株式会社製) 0.06質量部
FZ−2161(日本ユニカー株式会社製) 0.16質量部
純水 80質量部
さらに、下記内容の第二親水性層塗布液を乾燥膜厚が0.6μm、塗布幅が1.95mになるようにワイヤーバーを用い塗布を行った。
【0194】
《第二親水性層塗布液》
スノーテックス−S(日産化学工業株式会社製) 1.56質量部
スノーテックス−PSM(日産化学工業株式会社製) 2.34質量部
シルトンJC−20(水澤化学工業株式会社製) 1.2質量部
AMT−08(水澤化学工業株式会社製) 3.6質量部
MP−4540(日産化学工業株式会社製) 1.8質量部
カルボキシメチルセルロースナトリウム(関東化学株式会社製) 0.12質量部
ミネラルコロイドMO(ウイルバ−エリス株式会社製) 0.24質量部
MF−4500ブラック(大日精化工業株式会社製、光熱変換素材)
1.08質量部
リン酸三ナトリウム・12水(関東化学株式会社製) 0.06質量部
純水 88質量部
上記で得られた親水性層積層品に、下記内容の画像形成層塗布液を乾燥膜厚が0.60(g/m2)、塗布幅が1.9mになるようにバー塗布装置を用いて塗布を行った。
【0195】
《画像形成層塗布液》
HI−DISPER A118(株式会社岐阜セラック製造所製、熱溶融性粒子、平均粒径0.3μm) 16.5質量部
HI−DISPER A−206(株式会社岐阜セラック製造所製、熱溶融性粒子、平均粒径0.5μm) 6.1質量部
DL−522(株式会社日本触媒製、平均分子量170.000) 0.7質量部
ペノンJE−66(日澱化学株式会社製、変性澱粉) 0.2質量部
トクソーIPA(株式会社トクヤマ製) 1.5質量部
純水 75.0質量部
画像形成層を塗布後、平版平版印刷版材料を、50m/minの速度で搬送しながら、解像度100μmのカメラを使用し、裏面(塗布されていない側)から、ハロゲン光源を照射することによって、透過光で撮影した。
【0196】
カメラに入光する光の強度を、画素ごとに、光量0の場合を0、カメラにて撮影できる最大光量を255とし、その間の光量を等間隔に255段階に分割することで画素の濃度を256階調に分類し、Y方向(搬送方向)、X方向(搬送方向に対して垂直な方向)の2次元のマップに割り付けて、濃度分布図を作成した。
【0197】
得られた濃度分布図において、濃度240以上の画素部分を抽出し、各々の画素部分の画素数から面積を算出し、また、抽出した部分の画素の濃度の総和から積算濃度を算出し、上記同様に2次元のマップに割り付けて面積−積算濃度分布図を作成した。得られた、面積−積算濃度分布図において、下記式によって、判定指標値(A)を算出し、73以上になる部分を抽出した。
【0198】
判定指標値(A)=(積算濃度)/(面積)1.15/100
同様に、濃度56以下の画素部分を抽出後、面積−積算濃度分布図を作成し、下記式によって、判定指標値(B)を算出し、−55以下になる部分を抽出した。
【0199】
判定指標値(B)=(積算濃度)/((面積)1.15)/100−(56−最小濃度)/2.5
同様に、濃度88以下の画素部分を抽出後、面積−積算濃度分布図を作成し、下記式によって、判定指標値(C)を算出し、−55以下になる部分を抽出した。
【0200】
判定指標値(C)=(積算濃度)/((面積)1.00)/100−(70−最小濃度)/2.5
上記の判定指標値(A)、(B)、(C)にて抽出された部分を2次元のマップに割り付けて、マップ1を作成した。
【0201】
また、比較として、上記平版平版印刷版材料を、5m/minの低速度で搬送しながら検査員3名が目視にて観察し、塗布故障位置を特定し、マップ2を作成した。
【0202】
得られたマップ1、2をつきあわせると、検査員が判定した塗布故障位置と、上記、透過光で撮影後、抽出した位置が同一位置にあることが確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック支持体上に少なくとも親水性層及び画像形成層を有する平版印刷版材料の故障検出方法において、該平版印刷版材料を透過光で撮影した画像データから、特定濃度以上の部分を抽出し、該当部分の面積及び積算濃度から算出される式により故障部分を抽出することを特徴とする平版印刷版材料の故障検出方法。
【請求項2】
前記算出される式が、下記式(1)であることを特徴とする請求項1記載の平版印刷版材料の故障検出方法。
式(1):(積算濃度)/(面積)n/100≧A
(式中、nは1〜1.5の数値、Aは特定の数値を表す。)
【請求項3】
前記算出される式が、下記式(2)であることを特徴とする請求項1記載の平版印刷版材料の故障検出方法。
式(2):(積算濃度)/(面積)n/100≦B
(式中、nは1〜1.5の数値、Bは特定の数値を表す。)
【請求項4】
前記算出される式が、下記式(3)であることを特徴とする請求項1記載の平版印刷版材料の故障検出方法。
式(3):(積算濃度)/(面積)n/100−(特定濃度−最小濃度)/m≧C
(式中、nは1〜1.5の数値、mは1〜3の数値、Cは特定の数値を表す。)
【請求項5】
前記平版印刷版材料を搬送しながら透過光で撮影することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載の平版印刷版材料の故障検出方法。

【公開番号】特開2007−212166(P2007−212166A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−29518(P2006−29518)
【出願日】平成18年2月7日(2006.2.7)
【出願人】(303000420)コニカミノルタエムジー株式会社 (2,950)
【Fターム(参考)】