説明

広口カップ容器の製造方法および製造装置、並びに一次成形中間体の製造方法

【課題】所望の特性を備えた広口カップ容器を二軸延伸ブロー成形により製造すること。
【解決手段】広口カップ容器の製造装置1は、多層シート押出し製造ライン3において多層シート2を製造し、プリフォーム製造ライン5において多層シート2に対して打ち抜き圧縮同時成形を行うことにより、広口カップ容器製造用のプリフォーム(一次成形中間体)4を製造する。多層シート2の層構成、構成樹脂を適切に選択することにより、広口カップ容器に要求される各種の特性を付与可能なプリフォーム4を得ることができる。ブロー成形容器ライン7では、プリフォーム4を二軸延伸ブローして、広口カップ容器6Aを製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳製品などの容器として広く用いられているプラスチック製の広口カップ容器の製造方法および製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の広口カップ容器は、一般に、底付きの円錐台形状の胴部と、その上端開口部に形成された円環状フランジとを備えた形状をしている。広口カップ容器の製造方法および装置は、本願人により出願された下記の特許文献に開示されている。ここに開示の製造方法および装置では、射出成形により製造されたプリフォームを二軸延伸ブロー成形することにより、広口カップ容器を製造するように構成されている。
【特許文献1】国際公開第03/008176号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
広口カップ容器に耐熱性などの所望の特性を付与するためには、一般には、それに対応する特性を備えたプリフォームを用意する必要がある。特に、複合樹脂を用いることにより優れた特性の広口カップ容器を得ることができるので、プリフォームも複合樹脂あるいは多層構造の樹脂素材からなるものを用いることが望ましい場合がある。
【0004】
しかしながら、従来においては、広口カップ容器をブロー成形するために用いる所望特性のプリフォームを効率良く製造可能な方法あるいは装置は何ら提案されていない。
【0005】
本発明の課題は、ブロー成形により所望の特性を備えた広口カップ容器を製造するための製造方法および装置を提案することにある。
【0006】
特に、本発明の課題は、ブロー成形により広口カップ容器を製造する場合に用いるのに適した一次成形中間体の製造方法を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の広口カップ容器の製造方法は、
多層の樹脂製のシートから、広口容器を二軸延伸ブロー成形するために用いる一次成形中間体を製造する中間体成形工程と、
前記一次成形中間体を二軸延伸ブロー成形して広口カップ容器を製造する容器成形工程と、を含む広口カップ容器の製造方法において、
前記シートは、PET樹脂、PP樹脂またはPEN樹脂を主成分とする複数の樹脂層と、これらの間に挟み込まれたEVOH系樹脂、MXD−6ナイロン樹脂、またはPGA(ポリグリコール酸)樹脂を主成分とするバリヤー樹脂からなる中間層とを含む多層シートであり、
前記中間体成形工程は、
前記シートを加熱する加熱工程と、
加熱された前記シートを、打抜き刃を保有する雄雌型で打ち抜き圧縮同時成形して、前記一次成形中間体を製造する成形工程とを含み、
前記加熱工程は前記シートをガラス転移点以上に加熱し、
前記成形工程は、
軟化した前記シートを打抜き刃でハーフカットすると共に、打ち抜かれるシート部分の外周縁部分を固定する工程と、
雄雌型を冷却し、
この状態で、雄雌型で打ち抜かれるシート部分を圧縮成形する工程と、
打抜き刃で更に前記シートを押し切ることにより、圧縮成形された多数の一次成形中間体を完全に打ち抜く工程と、
打ち抜かれた一次成形中間体をガラス転移点以下まで冷却した後に前記雄雌型から取り出す工程とを含むことを特徴としている。
【0008】
前記シートとして、共押出し機からT−ダイ、冷却ロールを経由して押出されるPET樹脂、PP樹脂またはPEN樹脂を主成分とする複数の樹脂層と、これらの間に挟み込まれたEVOH系樹脂、MXD−6ナイロン樹脂、あるいはPGA樹脂を主成分とするバリヤー樹脂からなる少なくとも一つの中間層とを含む多層シートを用いることができる。この場合、接着性に劣る異種樹脂層の間には、接着性樹脂からなる接着層を形成すればよい。
【0009】
また、多層シートとして、共押出し機からT−ダイ、冷却ロールを経由して押出されるPET樹脂、PP樹脂またはPEN樹脂を主成分とする複数の樹脂層と、これらの間に挟み込まれた耐熱性樹脂、耐寒衝撃性樹脂からなる少なくとも一つの中間層とを含む多層シートを用いることができ、この場合にも、各層間に接着性樹脂からなる接着層を形成することができる。
【0010】
一方、前記シートの利用効率を高めるためには、打抜き後の前記シートのスケルトンを、所定のサイズに粉砕した後に、前記中間層形成用の樹脂として再利用することが望ましい。
【0011】
次に、本発明は、上記の製造方法により広口カップ容器を製造する広口カップ容器の製造装置であって、前記シートを製造するための多層押出し機を備えたシート押出しラインと、前記一次成形中間体を形成するための打ち抜き圧縮同時成形ラインと、前記広口カップ容器を成形する二軸延伸ブロ−成形機を備えたブロー成形ラインとを有し、前記シート押出しライン、前記打ち抜き圧縮同時成形ラインおよび前記ブロー成形ラインがインライン化されていることを特徴としている。
【0012】
本発明の広口カップ容器の製造装置を用いることにより、所望の特性を備えた広口カップ容器を効率良く製造することができる。
【0013】
一方、本発明は広口カップ容器用一次成形中間体の製造方法に関するものであり、上記のように一次成形中間体を製造することを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
以上説明したように、本発明によれば、多層の樹脂シートから、広口カップ容器を製造するための一次成形中間体を製造し、この一次成形中間体を二軸延伸ブローして広口カップ容器を製造している。したがって、一次成形中間体を製造するための多層シートの構成樹脂、層構成を適切に選択することにより、広口カップ容器に要求される各種の特性を当該広口カップ容器に付与可能な一次成形中間体を得ることができる。よって、本発明によれば、所望の特性を備えた広口カップ容器を二軸延伸ブロー成形により製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、図面を参照して、本発明を適用した広口カップ容器の製造装置を説明する。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明を適用した広口カップ容器の製造装置の全体構成図である。広口カップ容器の製造装置1は、多層シート2を製造するための多層シート押出し製造ライン3と、多層シート2から一次成形中間体としてのプリフォーム4を製造するためのプリフォーム製造ライン5と、プリフォーム4を二軸延伸ブロ−成形して広口カップ容器6Aを製造するブロー成形容器製造ライン7を有している。これらの各製造ライン3、5、7がインライン化された構成となっている。また、製造装置1は、製造された広口カップ容器6の胴部外周面に印刷およびラベルを貼り付けるための印刷ステーション8と、印刷後の広口カップ容器6Aを整列・集合および梱包するための梱包ステーション9を有している。
【0017】
多層シート押出し製造ライン3は、複数の押出し機、本例では第1〜第5の押出し機31〜35と、冷却ロール装置36と、検査機37と、コーター38と、乾燥機39と、巻取り機40とを備えている。各押出し機31〜35からT−ダイを介して各樹脂が所定の厚さでシート状に押出されて積層されて多層シート2が形成され、この多層シート2が冷却ロール装置36で冷却された後に検査機37、コーター38および乾燥機39を介して、巻取り機40で巻き取られる。
【0018】
図に示す多層シート2は5種8層のシートであり、その表面側から順に、PEN樹脂層(100μ)PEN、PEN樹脂層(100μ)PEN、接着性樹脂からなる接着層(100μ)ad、MXD6樹脂層(100μ)MXD6、接着層(100μ)ad、バージン材であるPET樹脂とプリフォーム製造ライン5から回収した打ち抜き後の多層シート2のスケルトンの粉砕フラフを溶融した再生樹脂からなる混合樹脂層(2300μ)R+PET、PEN樹脂層(100μ)PENおよびPEN樹脂層(100μ)PENが形成されている。例えば、押出し機31から混合樹脂層R+PETが押出され、押出し機32から2層分のPEN樹脂層PENが押出され、押出し機33から2層分のPEN樹脂層PENが押出され、押出し機34からMXD6樹脂層MXD6が押出され、押出し機35から2層分の接着層adが押出される。
【0019】
巻取り機40で得られた多層シートのロールは、プリフォーム製造ライン5に供給される。プリフォーム製造ライン5は、巻き出し機51と、プレヒータ52と、打ち抜き圧縮成形装置53と、強制冷却・集積装置54とを備えている。巻き出し機51に取り付けられたロールから巻き出された多層シート2は、プレヒータ52によって予備加熱された後に、打ち抜き圧縮成形装置53に供給され、ガラス転移点以上の温度に加熱されて軟化する。
【0020】
軟化した多層シート2は、打ち抜き圧縮成形装置53の雄雌型の打ち抜き刃によってハーフカットされ、これと同時に、打ち抜かれるシート部分の外周縁部分が昇降式のホルダによって固定される。外周縁部分がホルダによって固定された状態で、雄雌型で打ち抜かれる各シート部分が圧縮成形される。圧縮成形後は、打抜き刃で更に多層シートを押し切ることにより、多層シートから圧縮成形された多数の一次成形中間体4が完全に打ち抜かれる。打ち抜かれた一次成形中間体4は、ガラス転移点以下まで冷却された後に雄雌型から取り出される。この後は、強制冷却・集積装置54において強制冷却された後に、次段のブロー成形容器製造ライン7に移送するために集積される。
【0021】
打抜き刃付き雄雌圧縮成形金型は水冷式の構造で刃物が線膨張で損傷するのを防ぐため雄型と雌型の温度差を3℃以内でコントロールし、これ以上では機械停止する機構となっている。また、冷却によって厚肉でもPET樹脂の球晶化を防ぐ効果を持っている。
【0022】
ここで、打ち抜き後に残った多層シートのスケルトンは、回収されて、例えば、シート押出し製造ライン3の第1の押出し機31において、バージン材料と混合されて再利用される。
【0023】
ブロー成形容器製造ライン7は、二連のラインからなり、各ラインは、ヒータステーション71とブローステーション72から構成されている。製造されたプリフォーム4は、所定の送りピッチでヒータステーション71に順次に供給され、ここを通過する間に再加熱されて、当該プリフォーム構成樹脂のガラス転移点以上とされ、ブローステーション72に送り込まれる。ブローステーション72は例えば、二軸延伸ブロー成形機が回転テーブル上に一定の角度間隔で配置されたロータリー式のものであり、各プリフォーム4が二軸延伸ブロー成形機に投入されて、ブロー成形が施されて、広口カップ容器6Aが得られる。
【0024】
各二軸延伸ブロー成形機により形成された広口カップ容器6Aは、各二軸延伸ブロー成形機から取り出された後に、印刷ステーション8に搬送され、ここにおいて、必要に応じて、各広口カップ容器6Aの胴部外周面に所定の印刷が施される。また、必要に応じて、ラベル貼合機やシュリンクラベル貼合機、あるいは感熱式ラベルの貼合機を用いて、胴部外周面にラベルが貼り付けられる。印刷が施され、あるいはラベルが貼付された広口カップ容器6Bは、整列・集合・梱包装置9に供給され、ここで梱包される。
【0025】
(実施の形態2)
図2は本発明を適用した広口カップ容器の製造装置の別の例を示す概略構成図である。本例の製造装置11の基本構成は図1の製造装置1と同一であるので、対応する部位には同一の符号を付し、それらの説明は省略するものとする。
【0026】
製造装置11の特徴は、多層シート押出し製造ライン3が、一次多層シート2Aの製造ライン3Aと二次多層シート2Bの製造ライン3Bとに分かれており、これらの多層シート2A、2Bがプリフォーム製造ライン5において積層されて複合多層シート2Cとされ、この複合多層シート2Cを用いてプリフォーム4が製造されることである。
【0027】
一次多層シート2Aは、PEN樹脂層(200μ)、接着層(100μ)、MXD6樹脂層(100μ)、接着層(100μ)、混合樹脂層(900μ)およびPETG樹脂層(100μ)から構成されている。例えば、製造ライン3Aには第1〜第3の押し出し機31A〜35Aが備わっており、押出し機31Aから混合樹脂層が押出され、押出し機32からPEN樹脂層が押出され、押出し機33AからMXD6樹脂層が押出され、押出し機34Aから接着層が押出され、押出し機35AからPETG樹脂が押し出される。
【0028】
二次多層シート2Bは、PETG樹脂層(100μ)、混合樹脂層(1200μ)、PEN樹脂層(100μ)およびPEN樹脂層(100μ)から構成されている。製造ライン3Bは、第1〜第4の押出し機31B〜34Bが備わっており、例えば、押出し機31Bから混合樹脂層が押出され、押出し機32Bおよび33BからPEN樹脂層が押出され、押出し機34BからPETG樹脂層が押出される。
【0029】
(多層シートの層構成例)
多層シートの層構成としては次の構成を挙げることができる。
(1)PET/PEN/R+PET/ad/MXD6/ad/PEN/PET
(2)PET/PEN/R+PET/ad/PGA/ad/PEN/PET
(3)PP/ad/EVOH/ad/PP
(4)PP/ad/MXD6/ad/PP
(5)PP/ad/PGA/ad/PP
【0030】
(耐熱性樹脂、耐寒衝撃性樹脂の例)
次に、耐熱性および耐寒衝撃性を付与するために用いることのできる樹脂の例を以下に列記する(Tg:ガラス転移点、Tm:融点)。
(1)PPO(ポリフェニレンオキサイド)
Tg:220℃、Tm:240℃、成形温度:320℃
(2)PC(ポリカーボネイト)
Tg:150℃、Tm:240℃、成形温度:300℃〜320℃
(3)PSF(ポリサルホン)
Tg:191℃、Tm:207℃、成形温度:340℃〜400℃
(4)PAR(ポリアリレート)
Tg:191℃、Tm:260℃、成形温度:300℃
【0031】
(その他の実施の形態)
図1、2の製造ラインにおいて、ブロー成形容器製造ライン7と印刷ステーション8の間に、容器コーティングラインを介在させるようにしてもよい。容器コーティングラインでは、広口カップ容器6Aにバリヤー性を付与するために、その内周面あるいは外周面、または双方の面に、シリカなどの無機質素材からなるコーティングを形成する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明を適用した広口カップ容器の製造装置の概略構成図である。
【図2】本発明を適用した広口カップ容器の製造装置の概略構成図である。
【符号の説明】
【0033】
1、11 製造装置
2 多層シート
2A、2B、2C 多層シート
3、3A、3B 多層シート押出し製造ライン
4 プリフォーム(一次成形中間体)
5 プリフォーム製造ライン
6A、6B 広口カップ容器
7 ブロー成形容器製造ライン
8 印刷ステーション
9 整列・集合・梱包装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多層の樹脂製のシートから、広口容器を二軸延伸ブロー成形するために用いる一次成形中間体を製造する中間体成形工程と、
前記一次成形中間体を二軸延伸ブロー成形して広口カップ容器を製造する容器成形工程と、を含む広口カップ容器の製造方法において、
前記シートは、PET樹脂、PP樹脂またはPEN樹脂を主成分とする複数の樹脂層と、これらの間に挟み込まれたEVOH系樹脂、MXD−6ナイロン樹脂、またはPGA(ポリグリコール酸)樹脂を主成分とするバリヤー樹脂からなる中間層とを含む多層シートであり、
前記中間体成形工程は、
前記シートを加熱する加熱工程と、
加熱された前記シートを、打抜き刃を保有する雄雌型で打ち抜き圧縮同時成形して、前記一次成形中間体を製造する成形工程とを含み、
前記加熱工程は前記シートをガラス転移点以上に加熱し、
前記成形工程は、
軟化した前記シートを打抜き刃でハーフカットすると共に、打ち抜かれるシート部分の外周縁部分を固定する工程と、
雄雌型を冷却し、
この状態で、雄雌型で打ち抜かれるシート部分を圧縮成形する工程と、
打抜き刃で更に前記シートを押し切ることにより、圧縮成形された多数の一次成形中間体を完全に打ち抜く工程と、
打ち抜かれた一次成形中間体をガラス転移点以下まで冷却した後に前記雄雌型から取り出す工程とを含む広口カップ容器の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、
打ち抜き後の前記シートのスケルトンを、所定のサイズに粉砕した後に、前記中間層を形成するための樹脂として再利用する広口カップ容器の製造方法。
【請求項3】
請求項1または2において、
前記雄型と雌型の温度差を3℃以内にする広口カップ容器の製造方法。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかの項に記載の製造方法により広口カップ容器を製造する広口カップ容器の製造装置であって、
前記シートを製造するための多層押出し機を備えたシート押出しラインと、
前記シートから前記一次成形中間体を成形する為の打ち抜き圧縮同時成形ラインと、
前記一次成形中間体から前記広口カップ容器を成形する二軸延伸ブロー成形機を備えたブロー成形ラインとを有し、
前記シート押し出しライン、前記打ち抜き圧縮同時成形ラインおよび前記ブロー成形ラインがインライン化されている広口容器の製造装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のうちのいずれかの項に記載の前記中間体成形工程を含む広口カップ容器用一次成形中間体の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−132788(P2008−132788A)
【公開日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−332468(P2007−332468)
【出願日】平成19年12月25日(2007.12.25)
【分割の表示】特願2003−150724(P2003−150724)の分割
【原出願日】平成15年5月28日(2003.5.28)
【出願人】(594082648)株式会社フロンティア (34)
【出願人】(504469307)
【出願人】(000208455)大和製罐株式会社 (309)
【Fターム(参考)】