説明

廃棄物溶融処理方法および設備

【課題】生産性低下や処理コストの高騰をもたらすことのない、エネルギー効率の良い廃棄物溶融処理方法と処理設備を提供する。
【解決手段】アスベストなどの廃棄物を溶融処理する設備において、溶融処理炉では未燃分が残るように燃料と酸化剤を供給するとともに、溶融炉の後段で廃棄物溶融に用いられた未燃分を含むガスに空気を供給し未燃分を完全燃焼させ、可燃分の無くなった排ガスの顕熱を回収し、高温空気を生成させて廃棄物溶融処理のための燃料燃焼用酸化剤として用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アスベスト、PCBなど高温処理が必要な廃棄物を効率良く処理することのできる廃棄物溶融処理方法と処理設備に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アスベストは蛇紋岩などから取れる微細な鉱物繊維であり、吸音、断熱、防結露などの目的で、鉄骨材の耐熱被覆、機械室、空調機械室、学校の教室、実験室、音楽室、体育館などにおいて、建設資材として盛んに吹付け施工されていた。しかし、アスベストは、通常の環境下では半永久的に分解・変質せず、地表に沈降した場合でも容易に粉塵として舞い上がり、長い間一般環境に留まる。そして、空気中に浮遊するアスベストを吸引することにより、健康に重大な障害を生じさせることが明らかになっている。
【0003】
こうしたアスベストの処理に関しては、溶融固化による中間処理が要請されており、その溶融固化に当たっては、炉内をアスベストの溶融に十分な1500℃以上の高温に保つこと、処理に伴うアスベストの大気への飛散を防止すること等に十分留意しなければならないとされている。
このためにいくつかの技術が報告されており、基本的には溶融処理の前に何らかの処理(前処理)を行う方式と、電気で溶融するか、燃焼反応熱で溶融する方式に大別される。
【0004】
前記前処理には、低温溶融のために融剤を使用する方式、金属系の混在物を選別する方式、既設設備の廃棄物供給条件に従う方式などがあるが、各々処理の方法は異なる。また、電気溶融方式には、抵抗加熱式とアーク加熱式があり、燃焼加熱には、酸素燃焼方式と高温空気燃焼方式がある。しかし、各方式とも課題が残されており、きめ手となる方式が無いのが現状である。
【0005】
例えば、低温溶融のために融剤を使用する方式として、特開2005−168632号公報(先行技術1)、特開2005−279589号公報 (先行技術2) が提案されているが、それらは、アスベストに融剤を含浸させるか粉砕したアスベストを融剤と混錬し、その後、長時間加熱してアスベストを無害化するので、前処理コストが高いことと、生産性(処理能力)が極めて低いことが問題である。
【0006】
電気抵抗式の溶融方式では、金属が混入するとアスベストへの入熱が急減するため、前処理で金属系の廃棄物を除去する必要がある。この除去は、系外への粉砕粒子の飛散を防止するため、外気から完全に隔離された状態で行う必要があり、このために処理コストが高くなる。また、未溶融アスベストは溶融アスベスト上に浮くため、抵抗発熱部からの伝熱が抑制され効率的な溶融が難しい問題もある。
【0007】
既存の廃棄物溶融処理炉を一部改造してアスベストを溶融処理する方式は、本来がアスベスト以外の廃棄物を処理する炉であるため、色々な性状の廃棄物を処理する必要があり、例えば、水分含有率の高い廃棄物を処理しているような場合では、アスベストの溶融処理が困難な状況が起こる。
【0008】
これに対して、高温の燃焼ガス炉で処理する場合は、基本的にアスベストの前処理は不要であり、酸素燃焼では高温場の形成は容易であるから、アスベストの溶融処理も容易である。しかし、酸化剤として酸素を用いることは非常に高価である。また、アスベスト装入時の侵入空気や不可避的に存在する隙間からの侵入空気により、局所的なNOx発生を避けがたく、このために排ガス処理コストも高くなる問題がある。
【0009】
酸素燃焼と同様に高温場を形成しつつ、処理コストとNOx排出量を削減する方法として、特開平9−210337号公報(先行技術3)や特開2004−245520号公報(先行技術4)のように、高温の酸化剤を用いた燃焼炉でのアスベスト処理方式が提案されている。
これらの方式は、リジェネ方式等による高温酸化剤発生部を持ち、この高温酸化剤を溶融炉内に供給するとともに、溶融炉内に燃料を供給し、発熱反応により高温場を形成する方式である。
【0010】
先行技術3には、溶融処理を終了した排ガスで被溶融物を予熱することが記載されているが、溶融炉内からガスを吸引して予熱に使用する方式であり、溶融炉から排出されるガスは高温のまま捨てられている。また、この先行技術では、溶融炉の中で空気比がほぼ「1.0」になるように、すなわち供給された酸化剤中の酸素を消費するだけの燃料を投入するため、NOxの発生は避けがたく、このために排ガス処理コストも高くなる。
一方、先行技術4は、溶融炉内に未燃分が残るように酸化剤と燃料を供給し、後段で完全燃焼させる方式であるため、NOxの発生はほぼ完全に抑制されるが、完全燃焼させた後の高温ガスは熱回収されることなく冷却されているので、効率向上の観点での問題が残されている。
【特許文献1】特開2005−168632号公報
【特許文献2】特開2005−279589号公報
【特許文献3】特開平9−210337号公報
【特許文献4】特開2004−245520号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は前記のような問題点を解消するためになされたもので、その目的とするところは、生産性低下や処理コストの高騰をもたらすことのない、エネルギー効率の良い廃棄物溶融処理方法と処理設備を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため本発明の廃棄物溶融処理方法は、燃料と酸素を含む高温ガスを異なる位置から炉内へ供給・反応させ、生成されたガスにより投入口より供給される廃棄物を溶融処理する設備において、溶融処理炉では未燃分が残るように燃料と酸化剤を供給するとともに、溶融炉の後段で廃棄物溶融に用いられた未燃分を含むガスに空気を供給し未燃分を完全燃焼させ、可燃分の無くなった排ガスの顕熱を回収し高温空気を生成させて廃棄物溶融処理のための燃料燃焼用酸化剤として用いることを特徴としている。(請求項1)
【0013】
また、本発明の廃棄物溶融処理方法は、燃料と酸素を含む高温ガスを異なる位置から炉内へ供給・反応させ、生成されたガスにより投入口より供給される廃棄物を溶融・無害化する設備において、溶融処理炉では未燃分が残るように燃料と酸化剤を供給するとともに、溶融炉の後段で廃棄物溶融に用いられた未燃分を含むガスに未燃分の完全燃焼に必要な量以上の空気を供給し、酸素を含む高温排ガスとし、この高温排ガスを廃棄物溶融用高温ガス発生のための酸化剤として循環使用することを特徴としている。(請求項2)
【0014】
また、本発明の廃棄物溶融設備は、燃料と酸素を含む高温ガスを異なる位置から炉内へ供給・反応させ、生成されたガスにより投入口より供給される廃棄物を溶融処理する設備において、バーナ装置を備え廃棄物を加熱して小片化する一次燃焼炉と、一次燃焼炉から落下した廃棄物の小片を加熱し、可燃分の燃焼、熱分解可能な固形分の分解および熱溶融可能な固形分の溶融スラグ化を行う主室を有する二次燃焼炉と、二次燃焼炉の溶融スラグ化を行ったガスを完全燃焼させる三次燃焼炉とを有し、前記二次燃焼炉は、前記主室の溶融スラグ化を行ったガスを三次燃焼炉に給送する副室を有し、該副室の上流端開口部が、前記主室の炉壁に開口し、前記主室は、酸化剤を主室内に吹き込む酸化剤噴射装置と燃料を吹き込む燃料噴射装置を有し、前記酸化剤噴射装置の噴射口は、前記開口部に隣接して該開口部と交差するように前記主室の炉壁に配置されており、前記三次燃焼炉は排ガスダクトを介して冷却装置と集塵装置に接続されるとともに、前記排ガスダクトは排ガスから回収された顕熱を二次燃焼炉の高温酸化剤に与えるべく配管により前記酸化剤噴射装置と接続されていることを特徴としている。(請求項5)
【発明の効果】
【0015】
本発明の請求項1によれば、破砕、融剤含浸・混錬、金属等の選別といった前処理が不要であり、また、高温空気を含む燃焼排ガスを廃棄物溶融処理のための燃料燃焼用酸化剤として用いるため、1500℃以上の高温場を容易に形成することができ、一次エネルギーの直接使用(燃料の直接使用)と排ガス顕熱による燃焼用空気予熱により高効率な廃棄物溶融処理が可能となり、また、未燃分が残るような条件で溶融炉を操業するため、NOxの発生がない。
したがって、これらの特徴により、高効率、高生産性、低コスト、高安全性およびクリーンな排ガスの好適な条件でアスベストなどの溶融処理を行えるというすぐれた効果が得られる。
【0016】
請求項2によれば、溶融炉の後段で廃棄物溶融に用いられた未燃分を含むガスに未燃分の完全燃焼に必要な量以上の空気を供給し、酸素を含む高温排ガスとし、この高温排ガスを廃棄物溶融用高温ガス発生のための酸化剤として循環使用するので、二次燃焼炉を高温に維持するために供給する燃料を削減できるというすぐれた効果が得られる。
【0017】
請求項5によれば、前記方法の実施に好適で、特に溶融工程に必要な高温の酸化剤を、燃焼排ガスを利用して連続的に生成して操業するので、経済的なコストの設備を提供できるというすぐれた効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本処理方法において、好適には、循環させる高温排ガス中に空気あるいは酸素を吹き込み、循環高温排ガス中の酸素濃度を10%以上とする。
これによれば、酸素濃度を10%以上にすることにより、廃棄物の小片を加熱し、可燃分の燃焼、熱分解可能な固形分の分解および熱溶融可能な固形分の溶融スラグ化を行う工程での室内圧力変動あるいは非常時(温度急降下等)に対しても安定な燃焼を確保することができ、常時完全溶融処理が可能になることから、未溶融分の発生にともなう再溶融処理を排除することができる効果が得られる。
【0019】
好適には、排ガス熱回収に回転式熱交換器を用い、該回転式熱交換器に酸化剤噴射装置に対する配管が接続されている。
これによれば、1000℃以上の高温の排ガスを廃棄物溶融処理の燃料燃焼用酸化剤として用いための熱交換を高い耐久性のもとで安定的に行えるという効果が得られる。
また、本発明設備おいて、好適には、二次燃焼炉の副室の出口側と三次燃焼炉の入口側との間に水冷炉壁サイクロンを配置している。
これによれば、長時間の連続運転が可能になり、停止・始動に伴うエネルギーロスを避け、設備のエネルギー効率向上と生産性向上を図ることができるという効果が得られる。
【実施例1】
【0020】
以下添付図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図1ないし図4は本発明による廃棄物処理方法と設備の第1実施例を示しており、概略的には、図1のように、回収したアスベストなどの廃棄物Aを小片化する一次燃焼炉1と、小片化した廃棄物を溶融スラグ化する二次燃焼炉2と、溶融スラグ化ガスを完全燃焼させる三次燃焼炉3とを備え、三次燃焼炉3は排気ダクト4を介して急冷装置5に接続され、急冷装置5は排気ファン7による吸引力が作用する集塵装置6に接続されている。8は煙突である。
【0021】
前記一次燃焼炉1の炉体は、垂直の燃焼室1aとこの燃焼室に所定の角度をなして傾斜する廃棄物導入ダクト1bを有している。この廃棄物導入ダクト1bは、図1のように二重ダンパ装置17及びバーナ装置18を備えている。二重ダンパ装置17は、同時開放を禁止した一対のダンパ17a、17bと、一対のダンパ間の中間室17cとを有し、廃棄物Aを収容した廃棄物容器Bは、一対のダンパの開閉制御と関連して、リフター等の供給装置(図示せず)から中間室17c内に導入され、中間室17cを経て一次燃焼室1aに投入される。
なお、設備設置上の制約がある場合には、一次燃焼炉の燃焼室1bと廃棄物導入ダクト1aを入れ替える設計も可能である。この場合は、一次燃焼炉の炉体は、垂直の廃棄物導入ダクトとダクトに所定の角度をなして傾斜する燃焼室を持つ。
【0022】
二次燃焼炉2は一次燃焼炉の燃焼室1aの下方に設けられ、燃焼室1aから落下した廃棄物Aの小片aを加熱し、可燃分の燃焼、熱分解可能な固形分の分解および熱溶融可能な固形分の溶融スラグ化を行う垂直な縦型主室2aと、前記主室2aの溶融スラグ化を行ったガスを三次燃焼炉に給送する水平または適度な傾斜角度を有する横型副室2bとからなる。
【0023】
前記二次燃焼炉2の主室2aは、図3のように、長軸を二次燃焼炉副室2bの炉軸方向に向けた楕円形横断面を有しており、楕円形横断面の反副室側に偏して廃棄物小片の落下口1cが開口していることにより、廃棄物小片を高温の主室2aの燃焼ガスと十分熱交換することなしに副室2bに導かれることを防止することができる。副室2bの開口部20は、主室2aの上部且つ長軸端に配置されている。
【0024】
前記二次燃焼炉2の主室2a下部は固形分の溶融スラグa´が溜められるスラグポット9を有しており、該スラグポット9は前記主室2aと連続する主室下部を構成するように有底容器状の耐火物からなっている。
スラグポット9は接続手段90によって前記二次燃焼炉2の主室炉体下部に着脱可能に接続されている。接続手段90は、例えば図2のようにボルト・ナットにより締結・解体可能なフランジ構造を有する。
【0025】
溶融スラグa´は、基本的に連続的に排出され、冷却・固化されることが好ましいので、スラグポット9は溶融スラグの連続排出装置9aを有している。この連続排出装置9aは、図2のように、完全に溶融したスラグだけを排出し、半溶融のスラグが排出されないように、ポット底部のスラグから順に静かに排出する機構91と、ポット内に一定量の溶融スラグを確保するためのオーバーフロー機構92を設けており、取出し部93から抽出された溶融スラグa´は、スラグ固化排出容器9cに収容されるようになっている。
【0026】
前記二次燃焼炉2の主室2aは、高温酸化剤の高速噴流を主室2a内に吹き込む高温酸化剤噴射装置10と、燃料を吹き込む燃料噴射装置11とを備えている。
ここで「高温酸化剤」は、500℃以上の温度を有し且つ1〜30%の酸素濃度を有する気体からなり、前記高温酸化剤噴射装置10の噴射口(ノズル)10aは、通常、複数所定間隔で配置され、前記主室2aに対する副室2bの開口部20に隣接しかつ該開口部20と交差するように所要角度で挿設されている。
これは、主室2aから副室2bに流出しようとする気流及び浮遊物を主室2aの下部に差し向けるように高温空気の高速噴流を下向きに噴射するためであり、好ましくは、噴射口10aの先端部は、高温空気噴射流を50〜150m/sec.に高速化し得るように適切な開口面積及び寸法に設計され、所望によりオリフィスまたは縮径部を有する。
【0027】
高温酸化剤噴射装置10は前記噴射口10aへの酸化剤供給量を制御する調整部10bを有しており、該調整部10bはバルブや送風機を含んでいる。
高温酸化剤噴射装置10は図示しないが炉内監視装置を備える。炉内監視装置は、噴射口10aを介して主室2a内の火炎、溶融スラグレベル及び炉内雰囲気等を目視観察する覗き窓を有している。所望により、炉内の状態を撮像する撮像装置を炉内監視装置に配設してもよい。
【0028】
燃料噴射装置11は、LPGなどの燃料を主室2a内に供給可能なバーナ11aと、前記バーナ11aを作動し、燃料供給量を主室2aの炉温と関連して制御する調整部11bを備えており、該調整部11bはバルブや送風機を含んでいる。バーナ11aは前記高温酸化剤噴射装置10の噴射口10aと異なる所定位置たとえば図1のように反開口部側に配置され、所要の傾斜角度で主室下部に臨んでいる。
【0029】
三次燃焼炉3は、二次燃焼炉2の溶融スラグ化を行ったガスを完全燃焼させるためのもので、炉体はその炉軸が垂直に配向され、底部が連通路30を介して前記副室2bと連通し、溶融スラグ化を行ったガスが連続的に給送されるようになっており、炉体頂部は排ガスダクト4に接続されている。
前記三次燃焼炉3は断面円筒状をなし、炉体を水平状に貫く噴射口12aが上下に所定間隔を隔てて配置された燃焼用空気噴射装置12と、噴射口12aに対する空気供給量を制御するためにバルブや送風機を含む調整部12bを有している。
【0030】
前記三次燃焼炉3は排気ダクト4を介して急冷装置5に接続されているが、三次燃焼炉3から出たガスは1000℃以上の高温であるため、蒸気発生、原料予熱、乾燥、反応・分解促進等多目的に使用することができる。しかし、本発明は、高効率の溶融処理を達成すべく、前記ガスの顕熱を積極的に回収し、顕熱を前記二次燃焼炉2の高温酸化剤に与えるようにしている。すなわち、高温空気を生成させ、この空気を廃棄物溶融処理のための燃料燃焼用酸化剤として用いるのである。
排気ダクト4は横筒状をなし、長手方向の一端に近い下部に前記三次燃焼炉3の頂部が接続され、この実施例では、排気ダクト4の長手方向端部と前記高温酸化剤噴射装置10の噴射口10aを廃熱回収・供給配管(酸化剤供給配管)13で結んでいる。
【0031】
前記廃熱回収・供給配管13には、三次燃焼炉3から一部の排ガスを吸引して廃棄物溶融用高温ガス(酸化剤)として循環使用するためにエジェクターや誘引通風機などの送風手段13aを有している。二次燃焼炉2は室温が1500℃以上であり、ガスの酸素濃度を2〜5%と低くしても燃焼性には何ら問題を生じない。
循環使用するガス量を低減する必要がある場合には、吸引した三次燃焼炉排ガス中に空気あるいは酸素を吹き込むことが好ましいので、前記廃熱回収・供給配管13には空気あるいは酸素などの気体取り入れ部13bが設けられている。気体取り入れ部13bには流量調整弁類を含んでいる。このようにすれば、酸化剤として使用する三次燃焼炉排ガスの酸素濃度を10%以上とすることができ、酸素濃度を10%以上にすることにより、二次燃焼炉2の室内圧力変動あるいは非常時(温度急降下等)に対しても安定な燃焼を確保することができる。
【0032】
前記排気ダクト4の長手方向他端側には急冷装置5が接続されている。この急冷装置5は冷媒噴霧ノズル14を多段に有する縦筒からなり、下端部付近に集塵装置6が接続されガス中の粒子を捕集して、煙突8から排気するようになっている。
【0033】
図4は本発明による廃棄物処理方法を模式的に示しており、廃棄物Aを収納した可搬容器Bは、2重ダンパー装置17を備えた廃棄物導入ダクト1bを通して間歇的あるいは連続的に一次燃焼室1bに装入される。バーナ装置18をLPG等の燃料及び燃焼用空気の供給により燃焼作動させることにより、一次燃焼室1b内の廃棄物Aを加熱し、容器Bを焼却し、または解体して小片化するとともに、容器内廃棄物Aの小片化を促す。
【0034】
一次燃焼炉の下部には落下口1cが形成されているので、容器及び廃棄物の小片aが、落下口1cから二次燃焼炉2の主室2a内に落下する。落下口の形状及び開口面積の適切な設計により、適当なサイズの小片を落下させることができる。
前記落下口1cは、図3のように、長軸を二次燃焼炉副室2bの炉軸方向に向けた楕円形横断面の主室2aの反副室側に臨んでいるので、廃棄物小片aは高温の主室2aの燃焼ガスと十分熱交換することが可能となる。
【0035】
二次燃焼炉2の主室2aにおいては、燃料噴射装置11のバーナ11aからLPGなどの燃料が落下しつつあるあるいは落下した廃棄物小片に連続的に噴射され、それと同時に、高温酸化剤噴射装置10の噴射口10aから高温酸化剤の高速噴流が主室2a内に噴射されており、それにより、廃棄物小片aは、主室内に滞留し且つ撹拌され、高温酸化剤と燃料との反応熱により形成された高温雰囲気により半溶融スラグ化する。
前記高温酸化剤は副室2bの開口部20の近くでこれの軸線と交差する方向に噴射されるので、未溶融飛散固体粒子が前記主室2aを通過して前記開口部20に吹き抜けるのが防止されるとともに、未溶融飛散固体粒子を主室2aの底部に向って再循環することができる。こうして主室2aの炉内領域は、前記廃棄物の発熱により1500℃以上の温度を維持する。
【0036】
半溶融スラグは主室2aの底部を構成するスラグポット9に残留し、高温雰囲気から熱が伝えられることにより、完全に溶融スラグ化される。溶融スラグa´は、廃棄物処理装置の休止後に冷却・固化し、装置外に排出されてもよいが、図2のような構造を採用した場合には、廃棄物処理装置の運転中に連続的又は断続的に排出することができる。
すなわち、半溶融のスラグが排出されないように排出機構91で制御され、溶融スラグa´だけが静かに排出され、固化排出容器9cに収容される。廃棄物溶融処理装置の休止時に、スラグポット9は接続手段90の解放により取外される。なお、未溶融の金属片等は、スラグ固化物内に埋入した状態で廃棄される。
【0037】
主室2a内のガスは、排気ファン7の排気誘引圧力により開口部20から副室2bに流入し、副室2bから連通路30を介して第三燃焼炉3に流入する。副室2bから第三燃焼炉3に流入するガスは、比較的多量の一酸化炭素等を含有しており、この第三燃焼炉3には、複数の噴射口12aが上下に所定間隔を隔てて配置された燃焼用空気噴射装置12aを備えているので、ガス中の可燃分は、前記噴射口12aから噴射された燃焼用空気により完全燃焼し、酸素濃度2〜5%程度の排ガスとなる。
第三燃焼炉3の炉内温度は、部分的には1500℃以上の温度に達し、頂部流出口の排ガスは1000〜1200℃のガス温度を維持する。前記燃焼用空気量は、好ましくは未燃分の完全燃焼に必要な量以上とするものであり、これにより、未燃分を含む溶融スラグ化ガスは確実に完全燃焼し、酸素を含む高温ガスとなる。
【0038】
この高温ガスは排気ダクト4から冷却装置5に供給されるが、本発明においては、排気ダクト4と高温酸化剤噴射装置10の噴射口10aの吸い込み側を廃熱回収・供給配管13で結んでおり、その廃熱回収・供給配管13に送風手段13aが設けられているので、排ガスは熱回収されるとともに一部が循環使用のために吸引され、噴射口10aから500℃以上の温度の高温空気として、前記のように主室2aに高速噴射され、後続の廃棄物小片aに連続的に噴射される。このときに、調整部13bにより排ガス酸素濃度を調整することができる。
以下、落下口1cから主室内に順次落下した廃棄物小片aは、高温空気の高速噴流とバーナ装置に供給された燃料との反応熱で溶融し、溶融スラグa´として主室2aの底部に堆積する。燃料と反応し高温となった高速噴流は、主室底部の溶融スラグa´に接し、スラグ中の未溶融分の完全溶融を促す。この時、高温空気供給量あるいは燃料供給量は、主室内で未燃分が残るように制御される。
【0039】
循環使用されない残りの三次燃焼炉の高温排ガスは排気ダクト4から急冷装置5に供給され、水スプレーにより瞬時に200℃以下の温度に急冷される。その後、バグフィルター等の集塵装置6により除塵され、排気ファン7及びスタックを介して大気に放出される。本廃棄物溶融処理設備は十分にシールされ、系内は負圧で操業されるので、未溶融廃棄物粒子が系外にリークすることが防止される。
【0040】
なお、始業時には、常温の空気で燃焼させ、炉内が高温になるまで待つ。二次燃焼炉主室2aには燃料と空気が別の場所から供給されるが、一次燃焼炉1のバーナ18を最大負荷にして燃焼させることにより、この高温ガスがパイロットバーナの役割を果たし、炉内が高温になっていなくても、また、空気と燃料が別の場所から供給されていても燃焼が維持される。このようにして、ある程度炉内温度が高く例えば1000℃以上になってから、前記配管13を介して三次燃焼炉3からの高温排ガスの一部を高温酸化剤噴射装置10に供給し、この後、炉内温度が1500℃以上と十分高くになってから廃棄物Aを一次燃焼炉1に供給する。
【実施例2】
【0041】
図5は本発明の第2実施例を示しており、この実施例においては、排気ダクト4に熱交換器15が設けられており、廃熱回収・供給配管13によって二次燃焼炉2の高温酸化剤噴射装置10と接続されている。
熱交換器としてはプレート式、蓄熱式、シェルアンドチューブ式等、各種の熱交換器の使用が可能であるが、ユングストローム式熱交換機器で代表されるより高温でも対応が可能で耐久性に優れたセラミックス製の回転式熱交換器を用いることが好ましい。前記熱交換器15は排気ダクト4に内在され、排気ダクト4内の高温ガスにより熱を与えられ、矢印で示す気体取り入れを通して外部から供給される空気に熱を与えるセラミック製蓄熱体15aを有している。
なお、廃熱回収・供給配管13には第一実施例と同じように送風手段13aを介在させ、さらに酸素などの気体取り入れ部13bを設けてもよい。もちろん前記セラミック製蓄熱体15aの気体取り入れ部に酸素の供給系を接続してもよい。
他の構成は第一実施例と同様であるから、説明は援用するものとし、同じ部分に同符号を付し、説明は省略する。
【0042】
この実施例においては、三次燃焼炉3の排ガスは、三次燃焼炉3の後段に設けられたユングストローム式などの熱交換器15のセラミック製蓄熱体15aに熱を与え、この蓄熱体15aは外部から供給される空気に熱を与える。これにより空気は800℃以上、更には1000℃以上の温度となり、配管13により二次燃焼炉2の高温酸化剤噴射装置10に導かれ、廃棄物溶融処理のための酸化剤として用いられる。したがって、より効率よく経済的に廃棄物の溶融処理を行うことが可能になる。
【実施例3】
【0043】
図6は本発明の第3実施例を示しており、この実施例においては、二次燃焼炉2の副室2bの後段すなわち副室2bの出口と三次燃焼炉3の入口との境界部位に水冷壁サイクロン16が設けられている。
なお、この第3実施例と第2実施例の併用も推奨されるので、仮想線で示す。
他の構成は第一実施例と同様であるから、説明は援用するものとし、同じ部分に同符号を付し、説明は省略する。
【0044】
廃棄物を溶融処理する際には必然的にダストが発生するため集塵機が必須であるが、可能な限り連続運転をして停止・始動に伴うエネルギーロスを避け、設備のエネルギー効率向上と生産性向上を図るために、長時間無手入れの集塵システムが要求される。
前記のように、水冷壁サイクロン16を介在させるならば、溶融状態の粒子の約90%を除去することが可能となり、かつ、サイクロンの壁を水冷することにより、溶融状態の粒子が壁に付着・成長することなく急冷・固化し、集塵される。したがって、この集塵システムにより、バグフィルターのごとき集塵装置6の清掃頻度を約1/10(連続運転時間は10倍)に低減することが可能となる。
【0045】
以上、本発明の好適な実施形態及び実施例について詳細に説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の範囲内で種々の変形又は変更が可能であり、該変形例又は変更例も又、本発明の範囲内に含まれるものであることは、いうまでもない。
1)例えば、上記実施例では、高温空気を高温酸化剤として使用したが、CO2 、N、Ar、水蒸気等の気体中に酸素を一定濃度含み、500℃以上の高温に加熱した任意の混合気体を高温酸化剤として用いてもよい。これらを高温酸化剤に使用する場合には、これらの酸素濃度を分析し、当量比(燃料の完全燃焼に必要は酸素量/供給酸素量)一定となるように、この酸素濃度から酸化剤供給量を決定し、前記配管13の気体取り入れ部13bから送入しあるいは高温酸化剤噴射装置10の調整部10bから別途送入する方法をとればよい。
2)第1実施例と第2実施例において、高温排ガスを第二燃焼炉主室2aの高温空気噴射装置10に供給しているが、第1燃焼炉1にも導いて廃棄物Aの乾燥・予熱に使用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0046】
本発明はアスベストのほか、人と環境に対して有害な物質の溶融処理に適用でき、その例としては、PCBすなわち1972年までに製造された高圧トランス、高圧コンデンサ及び安定器の絶縁油類、あるいは医療機関から排出される各種の感染性廃棄物の溶融処理が挙げられる。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明による廃棄物溶融処理方法および設備の第1実施例を示す部分切欠側面図である。
【図2】図1における第2燃焼炉の下部構造の詳細を示す断面図である。
【図3】図1におけるIII−III線に沿う断面図である。
【図4】第1実施例による廃棄物溶融処理方法を模式的に示す説明図である。
【図5】本発明の第2実施例を示す部分切欠側面図である。
【図6】本発明の第3実施例を示す部分切欠側面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 一次燃焼炉
2 二次燃焼炉
2a 主室
2b 副室
3 三次燃焼炉
4 排気ダクト
5 急冷装置
6 集塵装置
9 スラグポット
10 高温酸化剤噴射装置
10a 噴射口
13 廃熱回収・供給配管
15 熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料と酸素を含む高温ガスを異なる位置から炉内へ供給・反応させ、生成されたガスにより投入口より供給される廃棄物を溶融処理する設備において、溶融処理炉では未燃分が残るように燃料と酸化剤を供給するとともに、溶融炉の後段で廃棄物溶融に用いられた未燃分を含むガスに空気を供給し未燃分を完全燃焼させ、可燃分の無くなった排ガスの顕熱を回収し、高温空気を生成させて廃棄物溶融処理のための燃料燃焼用酸化剤として用いることを特徴とする廃棄物溶融処理方法。
【請求項2】
燃料と酸素を含む高温ガスを異なる位置から炉内へ供給・反応させ、生成されたガスにより投入口より供給される廃棄物を溶融・無害化する設備において、溶融処理炉では未燃分が残るように燃料と酸化剤を供給するとともに、溶融炉の後段で廃棄物溶融に用いられた未燃分を含むガスに未燃分の完全燃焼に必要な量以上の空気を供給し、酸素を含む高温排ガスとし、この高温排ガスを廃棄物溶融用高温ガス発生のための酸化剤として循環使用することを特徴とする廃棄物溶融処理方法。
【請求項3】
廃棄物溶融処理設備の排ガス熱回収に回転式熱交換器を用いる請求項1または2に記載の廃棄物溶融処理方法。
【請求項4】
循環させる高温排ガス中に酸素濃度が10%以上となるように空気あるいは酸素を吹き込むことを特徴とする請求項2に記載の廃棄物溶融処理方法。
【請求項5】
燃料と酸素を含む高温ガスを異なる位置から炉内へ供給・反応させ、生成されたガスにより投入口より供給される廃棄物を溶融処理する設備において、バーナ装置を備え廃棄物を加熱して小片化する一次燃焼炉と、一次燃焼炉から落下した廃棄物の小片を加熱し、可燃分の燃焼、熱分解可能な固形分の分解および熱溶融可能な固形分の溶融スラグ化を行う主室を有する二次燃焼炉と、二次燃焼炉の溶融スラグ化を行ったガスを完全燃焼させる三次燃焼炉とを有し、前記二次燃焼炉は、前記主室の溶融スラグ化を行ったガスを三次燃焼炉に給送する副室を有し、該副室の上流端開口部が、前記主室の炉壁に開口し、前記主室は、酸化剤を主室内に吹き込む酸化剤噴射装置と燃料を吹き込む燃料噴射装置を有し、前記酸化剤噴射装置の噴射口は、前記開口部に隣接して該開口部と交差するように主室の炉壁に配置されており、前記三次燃焼炉は排ガスダクトを介して冷却装置と集塵装置に接続されるとともに、前記排ガスダクトは排ガスから回収された顕熱を二次燃焼炉の高温酸化剤に与えるべく配管により前記酸化剤噴射装置と接続されていることを特徴とする廃棄物溶融処理設備。
【請求項6】
前記排ガスダクトが回転式熱交換器を備え、該回転式熱交換器に前記酸化剤噴射装置に対する供給配管が接続されている請求項5に記載の廃棄物溶融処理設備。
【請求項7】
二次燃焼炉の副室の出口側と三次燃焼炉の入口側との間に水冷炉壁サイクロンを配置している請求項5または6に記載の廃棄物溶融処理設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−275180(P2008−275180A)
【公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−298172(P2006−298172)
【出願日】平成18年11月1日(2006.11.1)
【出願人】(506367227)
【Fターム(参考)】