説明

建設車両

【課題】 外観上の違和感が少なく且つ簡易にアンテナを設置することができる建設車両を提供する。
【解決手段】 油圧ショベルは、自走可能な車両本体と、キャブと、通信装置と、アンテナ51とを備える。キャブは、車両本体に設けられ運転者が入り込む室内空間を内部に有する。通信装置は、車両本体1又はキャブに設けられ外部との間で無線通信を行う。アンテナ51は、通信装置に接続される。また、キャブは、フレーム体と、複数の外装部材とを有する。フレーム体は、底面に設けられるフロアフレームと、フロアフレームに立設される左後柱部材および右後柱部材を含む複数のパイプ状部材と、左後柱部材と右後柱部材とに亘って設けられ少なくとも上方が開放されるように屈曲した断面形状を有する後方梁部材34とを含む。複数の外装部材は、後方梁部材34を覆うカバー部材17を含み、フレーム体に取り付けられてキャブの外装を構成する。そして、アンテナ51は、後方梁部材34とカバー部材17との間の空間に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設車両に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、油圧ショベル等の建設車両において、外部との間で無線通信を行う通信装置と、通信装置に接続されたアンテナとが備えられ、外部からの情報の受信や外部へ情報の送信が可能とされたものが知られている。例えば、GPS衛星からの信号を用いて車両の位置を確認可能としたものがある(特許文献1参照)。
【0003】
一方、建設車両には、オペレータが入り込む室内空間を内部に有するキャブが備えられている。このキャブには、パイプ状部材からなる複数の柱部材と、柱部材に渡される梁部材とを含むフレーム体に複数の外装部材が取り付けられて構成されているものがある(特許文献2参照)。
【0004】
このような構造のキャブに通信装置のアンテナが設けられる場合、キャブの天井面にアンテナを取り付け、カバー部材で覆うことが考えられる。この場合、キャブの天井面を下方に窪ませ、この窪みにキャブを設置して天井面と面一なカバー部材を取り付けることによって、外観上の違和感を少なく、アンテナを設置することができる。
【特許文献1】特開2003−112579号公報
【特許文献2】特開2004−224083号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記のようにキャブの天井面に窪みを設ける場合、天井面を構成する上面パネルにプレス加工を施すなど、アンテナの設置のための加工を行う必要がある。またこの場合、プレス加工時の延びが良好な質の高い材料を上面パネルに使用する必要があり製造コストが増大する恐れがある。
【0006】
本発明の課題は、外観上の違和感が少なく且つ簡易にアンテナを設置することができる建設車両を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明に係る建設車両は、自走可能な車両本体と、キャブと、通信装置と、アンテナとを備える。キャブは、車両本体に設けられオペレータが入り込む室内空間を内部に有する。通信装置は、車両本体又はキャブに設けられ外部との間で無線通信を行う。アンテナは、通信装置に接続される。また、キャブは、フレーム体と、複数の外装部材とを有する。フレーム体は、底面に設けられるフロアフレームと、フロアフレームに立設される第1柱部材および第2柱部材を含む複数のパイプ状部材と、第1柱部材と第2柱部材とに亘って設けられ少なくとも上方が開放されるように屈曲した断面形状を有する梁部材とを含む。複数の外装部材は、梁部材を覆うカバー部材を含み、フレーム体に取り付けられてキャブの外装を構成する。そして、アンテナは、梁部材とカバー部材との間の空間に配置される。
【0008】
この建設車両では、フレーム体に含まれる梁部材が少なくとも上方が開放されるように屈曲した断面形状を有しており、アンテナを設置可能な空間が設けられている。そして、梁材を覆うカバー部材によってアンテナが外部から隠蔽される。このように、この建設車両では、第1柱部材と第2柱部材とに亘って設けられ強度部品として機能する梁部材をアンテナの設置空間を形成する部材として利用することができる。これにより、この建設車両では、外観上の違和感が少なく且つ簡易にアンテナを設置することができる。
【0009】
第2発明に係る建設車両は、第1発明の建設車両であって、カバー部材は、樹脂製である。
【0010】
この建設車両では、カバー部材が樹脂製であるため、アンテナの受信感度の低下を抑えることができる。
【0011】
第3発明に係る建設車両は、第1発明または第2発明の建設車両であって、第1柱部材と第2柱部材とは、フレーム体の背面に設けられている。また、梁部材は、フレーム体の背面上端部に沿って設けられており、上方および後方が開放された略L字型の断面形状を有する。
【0012】
この建設車両では、梁部材は、フレーム体の背面上端部に沿って設けられており、上方および後方が開放された略L字型の断面形状を有する。このため、電波の障害となる部分が少なくなっており、アンテナの受信感度の低下をより抑えることができる。
【0013】
第4発明に係る建設車両は、第3発明の建設車両であって、外装部材は、フレーム体の上面に取り付けられ天井面を構成する上面パネルを有する。また、カバー部材は、天井面の後端角部を構成し、上面パネルと面一に設けられる。
【0014】
この建設車両では、カバー部材は、天井面の後端角部を構成し、上面パネルと面一に設けられる。このため、カバー部材がキャブの形状と一体的に設けられており、外観上の違和感をより少なくすることができる。また、アンテナの設置場所が外観からは分かり難くなるため、防犯性を向上させることもできる。
【0015】
第5発明に係る建設車両は、第1発明または第2発明の建設車両であって、第1柱部材と第2柱部材とは、フレーム体の側面に設けられている。また、梁部材は、フレーム体の側面上端部に沿って設けられており、上方および側方が開放された略L字型の断面形状を有する。
【0016】
この建設車両では、梁部材は、フレーム体の側面上端部に沿って設けられており、上方および側方が開放された略L字型の断面形状を有する。このため、電波の障害となる部分が少なくなっており、アンテナの受信感度の低下をより抑えることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る建設車両では、第1柱部材と第2柱部材とに亘って設けられ強度部品として機能する梁部材をアンテナの設置空間を形成する部材として利用することができる。また、梁材を覆うカバー部材によってアンテナが外部から隠蔽される。これにより、この建設車両では、外観上の違和感が少なく且つ簡易にアンテナを設置することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の一実施形態に係る油圧ショベル100(建設車両)を図1および図2に示す。図1は、油圧ショベル100の側面図であり、図2は、油圧ショベル100の上面図である。なお、以下の説明において使用する「左右」「前後」「前面背面」という文言は、キャブ10内においてオペレータが椅子に座ったときに向く方向を基準とする方向を示すものとする。
【0019】
油圧ショベル100は、後述する作業機4を除外した機械の旋回半径R(図2参照)が所定の値以下であって、旋回時において旋回台3が下部走行体2からはみ出す量が10%以下となる後方小旋回型の油圧ショベルである。油圧ショベル100は、車両本体1と、作業機4と、キャブ10と、通信装置50と、通信装置50に接続されたアンテナ51(図7参照)とを備えている。
【0020】
[車両本体1の構成]
車両本体1は、作業機4とキャブ10とが載置される部分であり、自走可能となっている。車両本体1は、下部走行体2と、旋回台3と、カウンタウェイト5と、エンジン6と、機器室9とを有している。
【0021】
下部走行体2は、進行方向左右両端部分に巻き掛けられた履帯Pを回転させることで、油圧ショベル100を前進、後進させるとともに、上面側に旋回台3を旋回可能な状態で搭載している。
【0022】
旋回台3は、下部走行体2上において任意の方向に旋回可能であって、上面に作業機4と、カウンタウェイト5と、エンジン6と、キャブ10とを搭載している。
【0023】
カウンタウェイト5は、例えば、鋼板を組み立てて形成した箱の中に屑鉄やコンクリート等を入れて固めたものであって、採掘時等において車体のバランスをとるために旋回台3の後部に設けられている。
【0024】
エンジン6は、下部走行体2や作業機4を駆動するための駆動源であって、カウンタウェイト5に隣接する位置に配置されている。
【0025】
機器室9は、作業機4の側方に配置されており、図示しない燃料タンク、作動油タンクおよび操作弁等を収容する。
【0026】
[作業機4の構成]
作業機4は、ブームと、ブームの先端に取り付けられたアームと、アームの先端に取り付けられたバケットとを含むように構成されており、油圧シリンダによってアームやバケット等を上下に移動させながら、土砂や砂礫等の掘削を行う土木工事の現場において作業を行う。
【0027】
[キャブ10の構成]
キャブ10は、内部にオペレータ用の空間が形成された箱型の構造体であり、オペレータが座るシート、操作用のレバーやペダル等、各種の計器類が内装されている(図示せず)。キャブ10は、作業機4の先端部を見通せるように、旋回台3上における作業機4の側方となる左側前部に配置されている。また、キャブ10は、図3に示すように、旋回台3の上面部分となる旋回フレーム25における左側前方に形成された4つのマウント部24上に、防振装置24aおよびフロアパネル27を、キャブ10のフロアフレーム27aに対してボルト(図示せず)で固定した状態で搭載される。このため、キャブ10は、旋回台3(旋回フレーム25)に対して4点支持された状態で固定配置される。
【0028】
また、キャブ10は、図2に示すように、キャブ10の左側の側面部の中央部Mを、旋回台3の旋回中心Oを中心とする半径Rの円の外周部分にほぼ沿わせるように外方に膨らむように湾曲した形状(以下、円弧部分と示す)を有している。これにより、旋回時においても、下部走行体2よりも外側に旋回台の部分が大きくはみ出すことを回避した後方小旋回の油圧ショベルとして、道路工事等の狭いスペースでの作業が可能になる。そして、この円弧部分には、オペレータが乗降するためのスライドドア7が取り付けられている。これにより、スライドドア7を開けた場合でもスライドドア7が旋回台3の旋回半径Rの外側へ突出しないようにすることができる。この結果、キャブ10が車体外幅B(図2参照)からはみ出して隣接する構築物等に干渉することなく、キャブ10内部の容積を最大限に確保することができる。
【0029】
このキャブ10は、図4に示すように、フレーム体11(図5参照)、支持部材12(図5参照)、複数の外装部材13−18、スライドドア7等を備えている。
【0030】
(フレーム体11)
フレーム体11は、図5から図7に示すように、複数のパイプ状部材と板金部材とが組み合わされてオペレータが入り込む室内空間を内部に形成するキャブ10の骨格部分である。具体的には、フレーム体11は、フロアフレーム27aと、左前柱部材19と、右前柱部材31と、左後柱部材32(第1柱部材)と、右後柱部材33(第2柱部材)と、後方梁部材34(梁部材)と、前方梁部材52と、中間梁部材35と、中間柱部材36と、上部桟部材41と、下部桟部材42とを備えている。なお、図5から図7は、フレーム体11の外観斜視図であり、図4におけるキャブ10から複数の外装部材13−18やスライドドア7等を取り外した状態を示している。
【0031】
フロアフレーム27aは、フレーム体11の底面に設けられた板状の部材である。フロアフレーム27aは、略長方形の外形を有しており、中央に大きな開口が設けられている。そして、開口の周囲に沿って後述するパイプ状部材が立設される板状の部分が設けられている。また、フロアフレーム27aの左後方部には後方に突出した凸状部分が設けられており、フロアフレーム27aの後端部は左側が右側より後方に延びた段差のある形状になっている。
【0032】
左前柱部材19は、1本のパイプ状部材を中央部分付近で折り曲げて形成されており、略鉛直方向に沿って設けられる柱部19aと、略水平方向に前後方向に沿って設けられ前端部が柱部19aの上端部と繋がっている梁部19bとを有している。柱部19aは、フロアフレーム27a上に立設されており、上部が後方に位置するように僅かに傾斜している。このように、1本のパイプ状部材を折り曲げて柱部19aと梁部19bとを形成することで、部品点数を減らしつつ、剛性の高いフレーム体11を得ることができる。なお、右前柱部材31についても同様の構造である。
【0033】
左後柱部材32は、1本の直線状のパイプ状部材によって形成されており、略鉛直方向に背面の左側端部に沿って設けられている。また、左後柱部材32は、接合相手となる後方梁部材34の形状に適合するように切り欠きが上端部に形成されており、この切り欠きの部分と後方梁部材34の側面および下面とが接合される。左後柱部材32は、柱部19aと同様にフロアフレーム27a上に立設されている。そして、フロアフレーム27aは、上述したマウント部24のほぼ真上に位置している部分において、防振装置24aを介してフロアパネル27と共に取り付けられている(図3参照)。
【0034】
右後柱部材33も、左後柱部材32と同様に1本の直線状のパイプ状部材によって形成されており、略鉛直方向に沿って背面の右側端部に沿って配置されている。また、接合相手となる後方梁部材34の形状に適合するように切り欠きが上端部に形成されており、この切り欠きの部分で後方梁部材34の側面および下面と接合される点についても左後柱部材32と同様である。なお、右後柱部材33は、側面視において左後柱部材32と概ね重なるように前後方向に左後柱部材32と同じ位置に配置されているが、右後柱部材33の下端部はフロアフレーム27aのレベル(高さ位置)にまで達しておらず、下部が内側に屈曲した背面パネル15の上部に接合されている。これにより、背面パネル15の背面側にキャブ10の内側に向けて嵌入した凹部空間(以下、「外部収納空間S1」と呼ぶ)が形成されている。
【0035】
後方梁部材34は、図7に示すように、フレーム体11の背面上端部に沿って設けられている。後方梁部材34は、図8に示すように、上方および後方が開放された略L字型の断面形状を有しており、板金部材が約90度に屈曲されて形成されている。すなわち、後方梁部材34は、水平方向に平行に配置された水平板部34aと、鉛直方向に平行に配置された鉛直板部34bとを有しており、水平板部34aの前端部に鉛直板部34bの下端部が垂直に繋がっている。なお、水平板部34aの後端部は上方に向けて僅かに折り返されている。後方梁部材34は、左後柱部材32の上端部と右後柱部材33の上端部とに亘って設けられており、一端部が左後柱部材32の上端部に接合され、他端部が、右後柱部材33の上端部に接合されている。また、後方梁部材34は、左前柱部材19の梁部19bの後端部と、左後柱部材32の上端部とを接合する。さらに、後方梁部材34は、右前柱部材31の梁部31bの後端部と、右後柱部材33の上端部とを接合する。より詳細には、左前柱部材19の梁部19bの後端部は、後方梁部材34の略L字型の断面形状における鉛直方向にほぼ平行な面、すなわち、鉛直板部34bの前側の面に接合される。一方、左後柱部材32の上端部は、後方梁部材34の略L字型の断面形状における水平方向にほぼ平行な面、すなわち、水平板部34aの下面に接合される。右前柱部材31の梁部31bおよび右後柱部材33についても同様である。
【0036】
前方梁部材52は、左前柱部材19と右前柱部材31とに亘って設けられており、一端が左前柱部材19の屈曲部分に接合され、他端が右前柱部材31の屈曲部分に接合されている。前方梁部材52は、フレーム体11の前面上端部に沿って設けられている。
【0037】
中間梁部材35は、1本の直線状のパイプ状部材と板金部材とによって形成されており、水平方向に沿って配置されている。中間梁部材35は、一端が左前柱部材19の梁部19bの内側の面に固定され、他端が右前柱部材31の梁部31bの内側の面に固定されている。
【0038】
中間柱部材36は、略鉛直方向に沿って設けられた直線状のパイプ状部材である。中間柱部材36は、柱部19aの後方であって左後柱部材32の前方に配置されており、柱部19aと左後柱部材32との中間位置に配置されている。なお、上述したように、キャブ10の左側の側面は外側に膨らんだ形状となっているため、中間柱部材36は、柱部19aの真後ろよりも外側に位置しており、梁部19bの直下よりも外側に位置している。また、中間柱部材36の下端部は、フロアフレーム27aに固定されており、中間柱部材36はフロアフレーム27a上に立設されている。中間柱部材36の上端部は、後述する第1支持部材37の下面に固定されている。この中間柱部材36によって、キャブ10全体の剛性を向上させるとともに、キャブ10の左側側面に取り付けられたスライドドア7を摺動させた場合でも、キャブ10のバランスを保持することができる。
【0039】
上部桟部材41は、フレーム体11の背面において水平方向に沿って設けられており、上下方向においてフロアフレーム27aと後方梁部材34との間に設けられている。上部桟部材41は、左後柱部材32と右後柱部材33とを繋いでおり、一端が左後柱部材32の上下方向の中間部分に接合され、他端が右後柱部材33の下端部近傍に接合されている。
【0040】
下部桟部材42は、フロアフレーム27aの後端部近傍に立設された板金部材であり、左後柱部材32や後述する背面パネル15と比べてごく小さな高さ方向寸法を有している。
【0041】
なお、右後柱部材33の近傍の接合部分を補強するために、右側面補強板材39が設けられている。右側面補強板材39は、キャブ10の右側面に沿って設けられた板金部材である。右側面補強板材39は、右後柱部材33、背面パネル15およびフロアフレーム27aを互いに接合している。右側面補強板材39の上端部は、右後柱部材33の外側の面と接合されており、下端部はフロアフレーム27aに接合されている。右側面補強板材39の後端部は、背面パネル15の右側端部に接合されている。なお、背面パネル15と右側面補強板材39とは、互いに交差する向きに取り付けられている。
【0042】
(支持部材12)
支持部材12は、図5に示すように、上述した円弧部分を含むキャブ10の左側面上部に左前柱部材19の梁部19bに沿って取り付けられている。すなわち、支持部材12は、柱部19aと左後柱部材32とに亘って設けられており、フレーム体11の側面上端部に沿って設けられている。また、支持部材12は、左前柱部材19の梁部19bと、左後柱部材32とを接合するとともに、中間柱部材36の上端に固定される。これにより、互いに位相が異なる位置にある左前柱部材19の梁部19bの後端部と、左後柱部材32の上端部とを、後方梁部材34と共により強固に接合することができる。また、支持部材12は、スライドドア7が摺動する範囲に沿ってその上方に配置されており、スライドドア7を案内する案内部(図示せず)が設けられている。支持部材12は、第1支持部材37と第2支持部材38とが組み合わせて形成されており、第1支持部材37と第2支持部材38とは、上方および側方が開放された略L字型の断面形状をそれぞれ有している。
【0043】
(外装部材13−18)
図4に示す複数の外装部材13−18は、上記のフレーム体11を覆うように取り付けられており、キャブ10の外装を構成する。外装部材13−18は、主にプレス加工等の加工を施された板金部材から形成されている。複数の外装部材13−18には、サイドパネル14,16やサイドフレーム18、上面パネル13、背面パネル15、カバー部材17等があり、各外装部材13−18に形成された開口には、図示しないガラス窓が嵌め込まれる。
【0044】
サイドパネル16は、キャブ10の左側の側面に取り付けられている。サイドフレーム18は、支持部材12の外側を覆うように取り付けられている。サイドパネル16やサイドフレーム18は、キャブ10の左側面に現れる円弧部分を構成するため、旋回中心Oを中心とする円の円弧に近似した形状となっている。
【0045】
なお、フレーム体11の左側面には、スライドドア7が取り付けられており、柱部19aと中間柱部材36との間に設けられた出入口を開閉する。
【0046】
上面パネル13は、フレーム体11の上面に取り付けられ、キャブ10の天井面を構成している。上面パネル13は、板金部材から形成されており、略長方形の外形を有している。上面パネル13は、左右方向には梁部19bから梁部31bに亘って設けられ、前後方向には、前方梁部材52と後方梁部材34とに亘って設けられている。より詳細には、上面パネル13の後端部は、後方梁部材34の上端部、すなわち、鉛直板部34bの上端部と接合されている。
【0047】
カバー部材17は、後方梁部材34を覆う部材であり、後方梁部材34に着脱自在に取り付けられる。カバー部材17は、上面パネル13とは異なる電波の透過性のよい材料から形成されており、具体的には樹脂から形成されている。カバー部材17は、左右方向に延びる仮想軸を中心に約90度の範囲で湾曲する湾曲面部17aと湾曲面部17aの側方を覆う側面部17bとを有しており、後方梁部材34に取り付けられた状態で、天井面の後端角部を構成する。カバー部材17の前端部は、上面パネル13の後端部と滑らかに繋がっており、カバー部材17は、上面パネル13と面一に設けられている。カバー部材17の後端部はキャブ10の背面と面一になっている。また、カバー部材17の側面部17bは、キャブ10の側面と面一になっている。
【0048】
背面パネル15は、フレーム体11の背面に設けられており、図6に示すように、キャブ10の内部に向けて凹状に窪んだ外部収納空間S1と、その側方に位置し室内空間に連通する内部収納空間S2を形成している。この外部収納空間S1は、キャブ10の外部に連通する空間であり、旋回台3(旋回フレーム25)上に載置されたラジエーター等の冷却部品が配置される。このように、キャブ10の形状を、完全な直方体にするのではなく一部に外部収納空間S1を形成した形状とすることで、キャブ10によって占められる旋回台3上の面積を拡大して旋回台3上のスペースを有効活用できるとともに、旋回台3自体を小型化することができる。また、外部収納空間S1は、キャブ10の背面下部の右側の一部に設けられており残りの左側は背面上部と面一に設けられている。すなわち、キャブ10の背面下部の左側部分は右側部分よりも後方に突出しており、その内部が内部収納空間S2となっている。内部収納空間S2には、駆動系やエアコンの制御装置やヒューズなどの電装品46および通信装置50(図1参照)が収納される
[通信装置50およびアンテナ51の構成]
通信装置50は、GPS衛星との間で無線通信を行い、現在位置を特定する装置であり、キャブ10の内部の内部収納空間S2に設けられている。
【0049】
アンテナ51は、ケーブルによって通信装置50に接続されたGPSアンテナであり、図8に示すように、後方梁部材34とカバー部材17との間の空間(以下、「アンテナ収納空間S3」という)に配置される。すなわち、カバー部材17が取り外された状態では、キャブ10の天井面後端部が、一側端部から他側端部に亘って下方に凹んだ形状となっており、カバー部材17が取り付けられた状態では、略L字型断面の後方梁部材34とカバー部材17との間にアンテナ収納空間S3が形成される。アンテナ51は、このアンテナ収納空間S3に配置されている。
【0050】
[特徴]
(1)
この油圧ショベル100では、アンテナ51が後方梁部材34とカバー部材17との間のアンテナ収納空間S3に収納される。カバー部材17は、キャブ10の天井面後端部を構成しており、外観上、他の外装部材13−16,18と一体化しキャブ10の外装を構成している。このため、外観上の違和感なくアンテナ51を収納することができる。
【0051】
また、アンテナ収納空間S3を形成している後方梁部材34は、フレーム体11の一部を構成する部材である。このため、この油圧ショベル100では、強度部材として機能している後方梁部材34を利用してアンテナ収納空間S3を形成している。これにより、簡易にアンテナ51を設置することができる。
【0052】
(2)
この油圧ショベル100では、アンテナ51の設置場所が外観からは分かり難くなっている。このため、防犯性が向上している。
【0053】
(3)
この油圧ショベル100では、カバー部材17が樹脂で形成されている。このため、カバー部材17が電波の妨げになる恐れが少なく、内部に収納されているアンテナ51の受信感度の低下を防止することができる。
【0054】
[他の実施形態]
(A)
上記の実施形態では、後方梁部材34は略L字型の断面形状を有しているが、少なくとも上方が開放されるように屈曲した断面形状であればよく、例えば、図9に示すように、前方、後方、下方が閉じられ上方が開放されるように屈曲した略U字型の断面形状を有する梁部材54が利用されてもよい。ただし、アンテナ51の受信感度の向上、及び、梁部材の加工の容易さの観点からは、上記の実施形態のように略L字型の断面形状が望ましい。
【0055】
(B)
上記の実施形態では、カバー部材17は樹脂から形成されているが、電波の透過性が良好な他の材料から形成されても良い。
【0056】
(C)
上記の実施形態では、フレーム体11の天井面後端部に設けられる後方梁部材34がアンテナ収納空間S3を形成する部材として利用されているが、他の位置に設けられた梁部材が利用されてもよい。例えば、フレーム体11の天井面であって前後方向の中間位置(上記の中間梁部材35の位置)やフレーム体11の天井面前端部(上記の前方梁部材52の位置)に少なくとも上方が開放されるように屈曲した断面形状を有する梁部材が設けられ、この梁部材がアンテナ収納空間S3を形成する部材として利用されてもよい。ただし、他の柱部材との接合の容易さの観点からは上記のようにフレーム体11の天井面後端部に設けられることが望ましい。
【0057】
(D)
上記の実施形態では、通信装置50はキャブ10の内部の内部収納空間S2に収納されているが、車両本体1に設けられてもよい。
【0058】
(E)
上記の実施形態では、油圧ショベルに本発明が適用されているが、油圧ショベル以外の建設車両に対しても本発明が適用可能である。
【0059】
(F)
上記の実施形態では、アンテナ51が後方梁部材34によって構成されるアンテナ収納空間S3に収納されているが、図10に示すように、第2支持部材38(梁部材)によって構成される空間S4,S5に収納されてもよい。第2支持部材38は、柱部19a(第2柱部材)と左後柱部材32(第1柱部材)とに亘って設けられており、フレーム体11の側面上端部に沿って設けられている。なお、第2支持部材38によって構成される空間S4,S5は、第2支持部材38の中間部分に立設されている補強部材40によって前側の空間S4と後側の空間S5とに仕切られており、図10では、後側の空間S5にアンテナ51が配置されているが、前側の空間S4に配置されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、外観上の違和感が少なく且つ簡易にアンテナを設置することができる効果を有し、建設車両として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】油圧ショベルの側面図。
【図2】油圧ショベルの上面図。
【図3】キャブのフロアパネルへの取付を示す図。
【図4】キャブの外観斜視図。
【図5】フレーム体の外観斜視図。
【図6】フレーム体の外観斜視図。
【図7】フレーム体の外観斜視図。
【図8】後方梁部材およびカバー部材の断面図。
【図9】他の実施形態に係る後方梁部材の断面形状を示す図。
【図10】他の実施形態に係るアンテナの配置を示す図。
【符号の説明】
【0062】
1 車両本体
10 キャブ
11 フレーム体
13 上面パネル
13−18 外装部材
17 カバー部材
19a 柱部(第2柱部材)
27a フロアフレーム
32 左後柱部材(第1柱部材)
33 右後柱部材(第2柱部材)
34 後方梁部材(梁部材)
38 第2支持部材(梁部材)
50 通信装置
51 アンテナ
100 油圧ショベル(建設車両)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自走可能な車両本体と、
前記車両本体に設けられオペレータが入り込む室内空間を内部に有するキャブと、
前記車両本体又は前記キャブに設けられ外部との間で無線通信を行う通信装置と、
前記通信装置に接続されるアンテナと、
を備え、
前記キャブは、
底面に設けられるフロアフレームと、前記フロアフレームに立設される第1柱部材および第2柱部材を含む複数のパイプ状部材と、前記第1柱部材と前記第2柱部材とに亘って設けられ少なくとも上方が開放されるように屈曲した断面形状を有する梁部材とを含むフレーム体と、
前記梁部材を覆うカバー部材を含み、前記フレーム体に取り付けられて前記キャブの外装を構成する複数の外装部材と、
を有し、
前記アンテナは、前記梁部材と前記カバー部材との間の空間に配置される、
建設車両。
【請求項2】
前記カバー部材は、樹脂製である、
請求項1に記載の建設車両。
【請求項3】
前記第1柱部材と前記第2柱部材とは、前記フレーム体の背面に設けられており、
前記梁部材は、前記フレーム体の背面上端部に沿って設けられており、上方および後方が開放された略L字型の断面形状を有する、
請求項1または2に記載の建設車両。
【請求項4】
前記外装部材は、前記フレーム体の上面に取り付けられ天井面を構成する上面パネルを有し、
前記カバー部材は、前記天井面の後端角部を構成し、前記上面パネルと面一に設けられる、
請求項3に記載の建設車両のキャブ構造。
【請求項5】
前記第1柱部材と前記第2柱部材とは、前記フレーム体の側面に設けられており、
前記梁部材は、前記フレーム体の側面上端部に沿って設けられており、上方および側方が開放された略L字型の断面形状を有する、
請求項1または2に記載の建設車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−69799(P2007−69799A)
【公開日】平成19年3月22日(2007.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−260376(P2005−260376)
【出願日】平成17年9月8日(2005.9.8)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】