説明

強化食品の調製のための天然生物活性成分の油状混合物

本発明は、EPAおよびDHAで強化されたサーモン油と、α−トコフェロールと、超臨界ローズマリー抽出物とを含む強化食品の調製において使用される天然生物活性成分に基づく油状混合物に関する。必要に応じて、本発明の混合物は微細藻類デュナリエラ・サリナを含むことができる。本発明はまた、天然生物活性成分に基づく前記油状混合物で強化され、ω−3およびω−6の比率が5未満のポリ不飽和脂肪酸、α−トコフェロール、超臨界ローズマリー抽出物由来のフェノール性ジテルペン類、および必要に応じて、デュナリエラ・サリナ微細藻類由来のカロテノイド類、これらの中での濃度が安定しているために、ヒトの健康に著しく有益な食品に関する。最後に、本発明は前記強化食品を調製する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然生物活性成分で強化された食品分野に属する。より特定的には、本発明は、食品、とりわけ肉製品に添加され、陸生動物由来の食品の脂質不均衡を効果的に補償し、とりわけ、疾患の予防において、人の健康に有益な効果を与え、これらの食品の品質または安全性を損なわない、天然生物活性成分に基づく油状混合物に関する。
【背景技術】
【0002】
ここ数年、動物起源の食品が市場に現れており、(中には肉製品もあるが)主に乳製品であり、これは、少量の魚油を添加することにより、オメガ−3(ω-3)ポリ不飽和脂肪酸を組み入れている。ω-3脂肪酸は、陸生動物由来の肉中にはそれらの天然形態では存在しておらず、健康効果を求めて動物起源の食品に組み入れるのは、長年の科学的経験に基づく。
【0003】
従来、動物性脂肪は健康によくないと考えられている。数十年間、それらの脂質組成物は、心血管疾患にかかる確率と関連していた。実際、心血管危険のある個人は、食事中の乳製品および肉製品の全体量を制限するように推奨されている。長年、この観点に研究の焦点が合わせられ、これらの事象に対する科学的な説明を確立しようと試みられている。この関連に対する説が、とりわけ近年、かなり発達している。長年、動物性脂肪は、血清コレステロールレベルの上昇の一因であると考えられており、コレステロールレベルと心血管疾患との間には直接の関連が確立されている。最近になって、トリグリセリド類、とりわけ血液中のトリグリセリドレベル、および血液中のこれらのレベルの期間が、心血管危険因子の起源を構築すると考えられている。
【0004】
前世紀の中頃あたりから、研究は、血清コレステロールレベルおよび心血管疾患の減少に対するポリ不飽和脂肪酸またはPUFAの効果を確立することに基づいていた。この領域での最も重要な研究は1954年にアーレンス(Ahrens)ら(アーレンスE.H.,D.H.ブランケンホーン(Blankenhorn)、T.T.テイスタス(Tastas)(1954)、「食事における、動物の代わりに植物を代用するヒト血清脂質への効果」、Proc.Soc.Exp.Biol.Med.86、872.)および1957年にケイズ(Keys)ら(ケイズA.,J.T.アンダーソン(Anderson)、F.グランド(Grande)(1957)、「食事脂肪に対する血清コレステロール応答」、ランセット(Lancet)1、787)により実施された研究であり、これらは、心血管疾患の予防におけるPUFAの重要性に対し、明確な証拠を確立した。その時以来、多くの研究がこの観点に焦点を合わせられており、これらのほとんどが、心臓に対するω−3の有益な効果を確認している。例えば、米国臨床栄養協会の米国臨床栄養ジャーナル(Am J Clin Nutr 76(2002)326−330)において公表された、メルボルンのベイカー(Baker)医学研究所の心血管栄養研究所、トキオ(Tokio)の医学防御大学(Medical Defense College)の医学部、アデレードの健康科学および栄養部のCSIRO(オーストラリア)およびFホフマン(Hoffman)−ラロシェ(La Roche)のビタミン研究所(スイス)の研究員により、最近実施された臨床試験では、ω−3脂肪酸、とりわけ長鎖脂肪酸、言い換えると、DHA(ドコサヘキサエン酸)およびEPA(エイコサペンタエン酸)が動脈の弾性、結果的には正常な血圧レベルを維持し、心血管危険性を減少させるのを助けることができることが示されている。この研究は、コレステロール血症患者に数週間の間DHAまたはEPAまたはプラセボを投与することにあった。その後、超音波を使用して研究者らは参加者の動脈の弾性を測定した。ω−3脂肪酸を摂取した参加者は、動脈硬化の著しい減少を示し、プラセボを摂取した参加者は有意の変化を示さなかった。EPAを摂取したものは、大動脈の弾性を反映する、36%の動脈全身抵抗の増加を示し、一方、DHAを摂取したものは27%の増加を示した。
【0005】
ω−3脂肪酸(EPA/HDA)は、弾性を増加させ、LDLコレステロールを低下させ、HDLを増加させ、動脈トリグリセリドレベルを減少させ、かつ抗血栓性であるので、血液脂質プロファイルを改善する。Adeemia(ロペス(Lopez)−フエルトラス(Huertras)−E;バロ(Baro)、−L;カレロ(Carrero)、−J−J;フォノラ(Fonolla)、−J(2003)「n−3脂肪酸:健康効果および摂取を増加させるための機会」、アグロフードインダストリハイテック(Agro Food Industry hi tech.)2003;14(3);18−21;デュワイリィ(Dewailly)、−E;ブランシェット(Blanchet)、−C;ギングラス(Gingras)、−S;レミオイクス(Lemiuex)、−S;ホルブ、−B−J(2002)、「ジェームスベイクリー族(James Bay Cree)の大人の集団における心血管疾患危険因子およびn−3脂肪酸状態」、米国臨床栄養ジャーナル(American−Journal−of−Clinical−Nutrition).2002;76(1):85−92)。
【0006】
本文の前の部分において述べた、ω−3の有益な心血管効果の他に、これらの脂肪酸は、遺伝子発現および他の生物化学的身体プロセスに重要な効果を有する。ω−3の最も重要な役割の1つは、細胞膜の形成におけるものである。脳組織のほとんどが、ω−3脂肪酸リッチである。これらの効果の現在の知識は、米国生物化学・分子生物化学学会の生物化学ジャーナルにおいて発表されている、ミシガン州立大学の生理学・生物化学・分子生物学部のドナルド(Donald)B.ジャンプ(Jump)による論文にまとめてある(J.Biol.Chem 227(2002)8755−8758)。
【0007】
今日では、ポリ不飽和脂肪酸(PUFA)ω−3およびω−6がヒト体内での重要な生物学的プロセスに関連すること、これらの比率は、多くの慢性疾患の予防において重要な因子となること知られており(シモポーロス(Simopoulos)A.P.(2002)、「ω−6/ω−3必須脂肪酸の比率の重要性」、生物医学および薬物療法56、365)、慢性疾患には癌が含まれる(ヌコンジョック(Nkondjock)A.,B.シャテンステイン(Shatenstein)、P.メイソヌーボ(Maisonneuve)、P.ガジリアン(Ghadirian)(2003)、「特定脂肪酸およびヒト結腸直腸癌:概説」、癌検出および予防27、55)。推奨比は、1に近い(シモポーロスA.P.(1999)、「食品サプリプロスタグランジン類、ロイコトリエン類および必須脂肪酸類中のω−3脂肪酸の進化的観点」、60、421)。豚肉中のω−6/ω−3比は平均して10を超え、豚肉の脂身中ではさらに高くなる。そのため、どちらの場合も、推奨値よりもずっと高い。
【0008】
A.P.シモポーロスにより実施された興味深い研究[生物医学&薬物療法56(2002)365−379]は、異なるω−6/ω−3比の利益を記述している。この研究によれば、下記の通りである:
ω−6/ω−3=5は喘息に効果がある。
ω−6/ω−3=4は心血管危険を減少させるのに効果があることが証明されている。
ω−6/ω−3=2〜3の間は結腸癌および関節リウマチを予防する。
ω−6/ω−3比が低いほど、乳癌に対する予防効果が良好である。
ω−6/ω−3比が10を超えると、有害作用が生じ始める。
ω−6の悪影響をω−3を添加することにより効果的に補償するためには、抗酸化活性を有する化合物を同時に投与しなければならない[B.デミッグ−アダムス(Demmig−Adams)yW.W.アダムス、III.[サイエンス298(2002)2149−2153]。
【0009】
1950年代の始まりから香辛料の抗酸化特性は公知である(チポルト(Chipault)J.R.,ムズモ(Muzumo)G.R.,ホーキンス(Hawkins)J.M.,ランドバーグ(Lundberg)W.O.(1952)、「天然香辛料の抗酸化特性」、食品(Food)Res.17,46)。1955年には、ローズマリーがもっと優れた抗酸化活性を有する薬草の1つであることが始めて発見された(Rac M.,オストリック−マチジャセビック(Ostric−Matijasevic)B.(1955)、「ローズマリーの抗酸化剤としての特性」、Rev.Fr.コープスグラス(Corps Gras)2,796)。この一因となる化合物はすでに確立されている。1966年には、カルノソールが単離され(ブリースコーン(Briescorn)C.H.,フクス(Fuchs)A.,ブリーデンバーグ(Bredenberg)J.B.,マッケスニー(MaChesney)J.D.,ウェンカート(Wenkert)E.(1966)、「カルノソールの構造」、J.Org.Chem.29、2293)、植物の抗酸化特性はこのフェノールジテルペンに起因した。その構造、およびカルノシン酸の構造が、1982年に確認され(Wu J.W.,リー(Lee) M.H.,ホ(Ho)C.T.,チャン(Chan)S.S.(1982)、「ローズマリーから単離した天然抗酸化剤の化学構造の解明」、JAOCS 59、339)、同じ年に、ローズマノールおよびローズマリー酸が識別された(イナタニ(Inatani)R.,ナカタニ(Nakatani)N.,フワ(Fuwa)H.,セト(Seto)H.(1982)、「ローズマリーから単離した新規抗酸化フェノール性ジテルペンの構造」、Agric.Biol.Chem.46,1666)。この後、ロスマジアール(イナタニ R.,ナカタニ N.,フワ H.(1983)、「ローズマリーの成分およびそれらの誘導体の抗酸化効果」、Agric.Biol.Chem.47,521)、エピロスマノールおよびイソロスマノール(ナカタニ N.、イナタニ R.(1984)、「ローズマリー由来の2つの抗酸化ジテルペン類およびローズマノールに対する修正した構造」、Agric.Biol.Chem.48、2081)、ローズマリジフェノールおよびローズマリキノン(ホウリハン(Houlihan C.M.)、ホ C.T.、チャン S.S.(1985)、「ローズマリキノンの構造。ロスマリヌス・オフィシナリス(Rosmarinus officinalis)L.から単離した新規抗酸化剤」、JAOCS62、1985)が確認された。これらの化合物に加えて、ローズマリーの葉は、抗酸化活性を有するフラボノイド類を含む(オカムラ(Okamura)N.、ハラグチ(Haraguchi)H.、ハシモト(Hashimoto)K.、ヤギ(Yagi)A.(1994)、「ロスマリヌス・オフィシナリスの葉中のフラボノイド類」、Phytochem.37、1463)。
【0010】
一般論として、これらの化合物を個々に考慮すると、カルノシン酸が、最も高い抗酸化活性を有し、続いてカルノソール、ローズマリー酸、ローズマノールおよびロスマジアールと続くことがわかっている(クベリエール(Cuvelier)M.E.、リチャード(Richard)H.、ベルセット(Berset)C.(1996)、「セージおよびローズマリーのパイロットプラントおよび市販の抽出物の抗酸化活性およびフェノール組成物」、JAOCS 73、645)。カルノソールが通常、主化合物であり、しばしば抽出物の90%もの量に対応する。実際、カルノソースは、ローズマリー中で見いだされる他のフェノール化合物と共に、抽出操作中に、カルノシン酸の酸化により生成する。
【0011】
ローズマリーのフェノール性ジテルペン類は、主な抗酸化剤として作用する(バサガ(Basaga)H.、テッカヤ(Tekkaya)C.、アシケル(Acikel)F.(1997)、「ローズマリー抽出物の抗酸化およびフリーラジカル捕捉特性」、Lebensm.Wiss.Technol.30、105;フランケルE.N.、シュー(Shu)W.H.、エシュバッチ(Aeschbatch)R.、Prior E.(1996)
「ローズマリー抽出物ならびにバルク油および水中油エマルジョン中のその成分類、カルノシン酸、カルノソール、およびローズマリー酸の抗酸化活性」J.Agric.Food Chem.44、131;y ハラグチ H.、サイトー(Saito)T.、オクムラ N.、ヤギ A.(1995)、「ローズマリーオフィシナリス由来のジテルペノイド類による脂質過酸化およびスーパーオキシド発生の阻害」、Planta Medica 61、333)。これらの生成物がスーパーオキシド・ジスムターゼに対し同様の活性(セオク(Seok)J.K.、ダエセオク(Daeseok)H.、クワング(Kwang)D.M.、ジューン(Joon)S.R.(1995)、「天然抗酸化剤のスーパーオキシド・ジスムターゼ様活性の測定」、Biosci.Biotechnol.Biochem.59、822)および、酵素類、グルタチオンレダクターゼおよびNADPH−キノンレダクターゼとの相乗効果を有することも示されており、酵素類はそれらを再生させ、それらの有するフリーラジカルブロック効果を増大させる。上記酵素類とのこれらの相乗効果は、肺、肝臓、および胃における発癌性薬剤に対する保護効果に起因しており、近年、マウスで証明されている(シングレタリー(Singletary)K.W.、ロクセック(Rokusek)J.T.(1997)、「食事由来のローズマリー抽出物によるマウスにおける生体異物解毒酵素の組織特異的増強」、ヒト栄養のための植物性食品(Plant Foods for Human Nutrition)50、47;オフォード(Offord)、E.A.,K.Mace、O.Avanti、A.M.A.フェイファー(Pfeifer)(1997)、「ヒト肝臓および気管支細胞において研究したローズマリー抽出物の化学的予防効果に関与する機構」、癌レター(Cancer Letters)114、275)。血液リポタンパク質の過酸化に対する抗酸化剤の作用機構もまた公知であり、動脈硬化の発症における重要な因子である(ピンチャク(Pinchuk)I.、D.リヒテンバーグ(Lichtenberg)(2002)、「リポタンパク質過酸化に対する抗酸化剤作用の機序、速度論的実験に基づく評価」、脂質研究における進歩(Progress in Lipid Research41、279)。
【0012】
ローズマリーは調理において非常に一般的な材料である。しかしながら、その強烈な香りおよびその風合いのために、所望の効果が得られるのに十分な量で肉製品に添加することができない。これが、抽出物を使用する理由である。
【0013】
超臨界抽出が、抗酸化剤を得るのに、溶媒を用いた抽出にとって代わる良好な代替案である。異なる植物の香りおよび天然染料、ホップおよび含油樹脂を抽出する複数のプロセスが存在する。極端でない、非酸化状態での抽出により、溶媒残留物のない、完全な自然特性を有する高品質製品を製造することができる。
【0014】
含油樹脂の場合は注目に値し、これらは一般に、同じ超臨界抽出プロセスにおいて分画することができ、異なる機能を有する生成物が生じる。シソ科植物(ローズマリー、タイム、オレガノ、セージなど)からの抽出物を用いて、いくつかの応用が実施されている(グエン(Nguyen)U.、エバンス(Evans)D.D.、フラクマン(Frakman)G.(1994)、「超臨界流体抽出により生成した天然抗酸化剤」、「食品および生体材料の超臨界流体処理」中、Ed.S.S.H.リズヴィ(Rizvi).チャップマン(Chapman)&ホール(Hall)、ロンドン、p103)。これらの場合において、超臨界流体による抽出またはSFE(超臨界流体抽出)を用いると含油樹脂が得られ、これは2つの生成物、一般に芳香族特性および抗菌特性を有する精油および抗酸化剤に容易に分割できる。
【0015】
現在では、SFEにより得られる天然抗酸化剤は、溶媒で抽出したものよりも大きな活性を有することは周知である。ドジャルマティ(Djarmati)および同僚(ドジャルマティ Z.、ジャンコブ(Jankov)R.M.、シュウィルトリッヒ(Schwirtlich)E.、ドジュリナク(Djulinac)B.、ドジョルドジェビク(Djordjevic)A.(1991)、「超臨界CO抽出によりセージから得られた抽出物の高い抗酸化活性」、JAOCS 68、731)は、超臨界COを用いた抽出により得られたセージの抗酸化抽出物がBHTよりも効果的であることを示した。より最近では、同じことが、黒コショウの抽出物でも起きることが見いだされた(チプスリスコンド(Tipsrisukond)N.、フェルナンド(Fernando)L.N.、クラーク(Clarke)A.D.(1998)、「豚の挽肉における、超臨界二酸化炭素抽出由来の黒コショウの精油および含油樹脂の抗酸化効果」、J.Agric.Food Chem.46、4329)。
【0016】
ローズマリー抗酸化抽出物中の植物化学物質類が重要な生物活性を有する。それらの不飽和脂肪酸への効果がとりわけ興味深い。
【0017】
同様に、当技術分野の状態では、有益な特性が、微細藻類デュナリエラ・サリナ(Dunaliella salina)、微小緑藻類属に属する単細胞藻類(緑色植物)で公知である。この微細藻類は、高い塩分により、培養維持が著しく単純となり、病原体による外部からの汚染の危険がないので、精製化学製品を製造するのに商業的に初めて使用されたものであった(ボロウィツカ(Borowitzka)L.J.、モルトン(Moulton)T.P.、ボロウィツカ M.A.(1985)、「デュナリエラ・サリナ由来のβ−カロテンの塩分および商業生産」、バークレイ(Barclay)W.J.、マキントッシュ(McIntosh)R.、編、アルガスバイオマス(Algas Biomass)および学際的展望J.クラマーベルラグ(Cramer Verlag)、ベルダズ(Verduz)中)。現在、デュナリエラ・サリナはβ−カロテンがリッチな食品サプリメントとして消費されている(モカディ(Mokady)S.、アブラモビシ(Abramovici)A.、コーガン(Cogan)U.(1989)、「デュナリエラ・バルダウイル(bardawil)の潜在的食品サプリメントとしての安全性評価」、Food Chem.Toxicol.27、221;タナカ Y.(1990)「デュナリエラ藻類を含むカプセル化食料の製造プロセス」、米国特許第US4.915,965号、および日本特許第JP88−40755号;リーチ(Leach)G.、オリベイラ(Oliveira)G.、モライス(Morais)R.(1998)、「β−カロテンリッチ粉末を製造するためのデュナリエラ・サリナの噴霧乾燥」、J.Ind.Microb.Biotechnol.20、82;オルセット(Orset)S.、リーチ(Leach)G.C.、モライス(Morais)R.、ヤング(Young)A.J.(1999)、「微細藻類デュナリエラ・サリナの噴霧乾燥:β−カロテン量および異性体組成への影響」、J.Agric.Food Chem.47,4782)。オーストラリアは世界中で消費されているβ−カロテンの80%を超えるものを製造しており、それらは全て、デュナリエラ・サリナの培養物由来である。β−カロテンはこの微細藻類中、その乾燥重量の14重量%までの濃度で見いだされており、このため、この化合物を最も高い量で有する藻類ということになり、その蓄積量は培養条件に依存する(塩分、温度、光度)。最近の研究により、異なるβ−カロテン異性体、例えば9−シスの単離および精製が達成されており(ヤマノ(Yamano)Y.、ヨシザワ(Yoshizawa)M.,イトウ(Ito)M.(1999)、「デュナリエラ・バルダウィルからの9Z−βカロテンの単離およびその立体選択的合成」、J.Nutr.Sci.Vitamin.45、49)、合成β−カロテン(主に「オールトランス」組成)と比較したその抗酸化活性が確立されている。機能特性を有する、この微細藻類中に存在する別の化合物はトコフェノール類(それらの異性体組成は知られていないので通常α−トコフェノールとして定量されている)、ポリ不飽和脂肪酸類(PUFA)(フランク(Franke)H.、スプリンガー(Springer M.、プルズ(Pulz)O.、チエツ(Tietz)U.、ミュラー(Mueller)U.(1994)、「微細藻類由来のポリ不飽和脂肪酸類」、Int.Food Ingr.4,41)、ステロール類(例えばエルゴステロール)、および水溶性ビタミン類(例えばチアミン、ピリドキシン、ビオチン、リボフラビン、など)である。この藻類では、フラボノイド類またはフェノール性化合物の存在は記述されていない。しかしながら、フラボノイド類またはフェノール性化合物が同様の微細藻類種において検出されているので、それらの存在が予測できる(ローハ(Rauha)、JP;リームス(Remes)、S;ハイノネン(Heinonen)、M;ホピア、A;カーコーネン(Kahkonen)、M;クジャラ(Kujala)、T;ピーラジャ(Pihlaja)、K;ブオレラ(Vuorela)、H;ブオレラ、P.(2000)、「フラボノイド類および他のフェノール性化合物を含むフィンランド植物抽出物の抗菌効果」、Int.J.Food Microbiol.56、p.3−12)。
【0018】
前に記述したもの以外のカロテノイド類の効果に関しては、ごく最近、ルテインなどのカロテノイド類の効果が、例えば、加齢黄斑変性症の予防において証明されている。これらの効果は、これらのカロテノイド類が別の非カロテノイド抗酸化剤と組み合わされると、より顕著になる(ビーティ(Beatty)Sら、Surv.Opthalmol 2000;45:115−134;カイト(Cait)ら、Prog Retin Eye Res 2000;10:205−211)(ジャンケイラ(Junqueira)VBら、Mol Aspects Med 2004;25:5−16)(コー(Koh)HHら、目の実験研究(Experimental Eye Research)2004;79:21−27;ビーティSら、Arch Biochem Biophys 2004;430:70−76)。
【0019】
最後に、当技術分野の状態では、α−トコフェロールは、栄養の観点から、および体内において、抗酸化剤としての有益な効果で公知である。
【0020】
【非特許文献1】Ahrens E.H.,D.H.Blankenhorn,T.T.Tastas(1954)“Effect on human serum lipids of substituting plant for animal far in the diet”,Proc.Soc.Exp.Biol.Med.86、872.
【非特許文献2】Keys A.,J.T.Anderson,F.Grande(1957)、“Serum cholesterol response to dietary fat”,Lancet 1,787
【非特許文献3】American Journal of Clinical Nutrition(Am J Clin Nutr 76(2002)326−330) of American Society for Clinical Nutrition
【非特許文献4】Adeemia(Lopez−Huertras−E;Baro,−L;Carrero,−J−J;Fonolla,−J(2003)“n−3 fatty acid:health effects and opportunities to increase intake”,Agro Food Industry hi tech.)2003;14(3);18−21
【非特許文献5】Dewailly,−E;Blanchet,−C;Gingras,−S;Lemiuex,−S;Holub,−B−J(2002)、“Cardiovascular disesase risk factors and n−3 fatty acid status in the adult population of James Bay Cree”,American−Journal−of−Clinical−Nutrition).2002;76(1):85−92)
【非特許文献6】ミシガン州立大学の生理学・生物化学・分子生物学部のDonald B.Jump著、J.Biol.Chem 227(2002)8755−8758
【非特許文献7】Simopoulos A.P.(2002)、“The importance of the ratio omega−6/omega−3 essential fatty acids”,Biomedicine and Pharmacotherapy 56,365−379
【非特許文献8】Nkondjock A.,B.Shatenstein,P.Maisonneuve,P.Ghadirian(2003),“Specific fatty acids and human colorectal cancer:an overview”,Cancer Detection and Prevention 27,55
【非特許文献9】Simopoulos A.P.(1999),“Evolutionary aspects of omega−3 fatty acids in the food supli Prostaglandins,Leucotrienes and Essential Fatty Acids”,60,421
【非特許文献10】B.Demmig−Adams y W.W.Adams,III著、Science(2002)2149−2153
【非特許文献11】Chipault J.R.,Muzumo G.R.,Hawkins J.M.,Lundberg W.O.(1952)、“The antioxidant properties of natural spices”,Food Res. 17,46
【非特許文献12】Rac M.,Ostric−Matijasevic B.(1955)、“The properties of rosemary as an antioxidant”,Rev.Fr.Corps Gras 2,796
【非特許文献13】Briescorn C.H.,Fuchs A.,Bredenberg J.B.,MaChesney J.D.,Wenkert E.(1966),“The structure of carnosol”,J.Org.Chem.29,2293
【非特許文献14】Wu J.W.,Lee M.H.,Ho C.T.,Chan S.S.(1982),“Elucidation of the chemical structures of natural antioxidants isolated from Rosemary”,JAOCS 59,339
【非特許文献15】Inatani R.,Nakatani N.,Fuwa H.,Seto H.(1982),“Structure of a new antioxidative phenolic diterpene isolated from Rosemary”,Agric.Biol.Chem.46,1666
【非特許文献16】Inatani R.,Nakatani N.,Fuwa H.(1983),“Antioxidative effect of the constituents of Rosemary and their derivatives”,Agric.Biol.Chem.47,521
【非特許文献17】Nakatani N.,Inatani R.(1984),“Two antioxidative diterpenes from Rosemary and a revised structure for resmanol”,Agric.Biol.Chem.48,2081
【非特許文献18】Houlihan C.M.,Ho C.T.,Chang S.S.(1985),“The structure of rosmariquinone.A new antioxidant isolated from Rosmarinus officinalis L.”,JAOCS 62,1985
【非特許文献19】Okamura N.,Haraguchi H.,Hashimoto K.,Yagi A.(1994),“Flavonoids in Rosmarinus officinalis leaves”,Phytochem.37,1463
【非特許文献20】Cuvelier M.E.,Richard H.,Berset C.(1996)、“Antioxidative activity and phenolic composition of pilot−plant and commercial extracts of sage and rosemary”,JAOCS 73,645
【非特許文献21】Basaga H.,Tekkaya C.,Acikel F.(1997)、“Antioxidative and free radical scavenging properties of rosemary extract”,Lebensm.Wiss.Technol.30,105
【非特許文献22】Frankel E.N.,Shu W.H.,Aeschbatch R.,Prior E.(1996),“Antioxidant activity of a rosemary extract and its constituents carnosic acids,carnol,and rosmarinicacis in bulk oil and oil−in−water emalusion”,J.Agric.Food Chem.44,131
【非特許文献23】y Haraguchi H.,Saito T.,Okumura N.,Yagi A.(1995),“Inhibition of lipid peroxidation and superoxide generation by diterpenoids from Rosemary officinalis”,Planta Medica 61,333
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【非特許文献30】Tipsrisukond N.,Fernando L.N.,Clarke A.D.(1998),“Antioxidant Effects of Essential Oil and Oleoresin of Black Pepper from Suprtcritical. Carbon Dioxide Extractions in Ground Pork”,J.Agric.Food Chem.46,4329
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【非特許文献32】Mokady S.,Abramovici A.,Cogan U.(1989)、“The safety evalution ofDunaliella bardawil as a potential food supplement”,Food Chem.Toxicol.27,221
【特許文献1】米国特許第4.915,965号および日本特願昭63−40755号;Tanaka Y.(1990),“Process for production of encapsulated foodstuff containing Dunaliella algae”
【非特許文献33】Leach G.,Oliveira G.,Morais R.(1998)、“Spray−drying of Dunaliella salina to produce a beta−carotene rich powder”,J.Ind.Microb.Biotechnol.20,82
【非特許文献34】Orset S.,Leach G.C.,Morais R.,Young A.J.(1999),“Spray−drying of microalga Dunaliella salina: Effects on beta−carotene content and isomer composition”,J.Agric.Food Chem.47,4782
【非特許文献35】Yamano Y.,Yoshizawa M.,Ito M.(1999)、“Isolation of 9Z beta−carotene from Dunaliella bardawil and its stereoselective synthesis”,J.Nutr.Sci.Vitamin.45,49
【非特許文献36】Franke H.,Springer M.,Pulz O.,Tietz U.,Mueller U.(1994),“Polyunsaturated fatty acids from microalgae”,Int.Food Ingr.4,41
【非特許文献37】Rauha,JP;Remes,S;Heinonen,M;Hopia,A;Kahkonen,M;Kujala,T;Pihlaja,K;Vuorela,H;Vuorela,P.(2000)、“Antimicrobial effects of Finnish plant extracts containing flavonoids and other phenolic compounds”,Int.J.Food Microbiol.56、p.3−12
【非特許文献38】Beatty S et al.,Surv.Opthalmol 2000;45:115−134
【非特許文献39】Cait et al.,Prog Retin Eye Res 2000;10:205−211
【非特許文献40】Junqueira VB et al.,Mol Aspects Med 2004;25:5−16
【非特許文献41】Koh HH et al.,Experimental Eye Research 2004;79:21−27
【非特許文献42】Beatty S et al.,Arch Biochem Biophys 2004;430:70−76
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明者らは、長鎖ω−3ポリ不飽和酸、例えばEPAおよびDHAで強化したサーモン油と、α−トコフェロールと、超臨界ローズマリー抽出物との組み合わせを、食品に添加すると、抗酸化剤とポリ不飽和脂肪酸との間に予想外の相乗反応が生じることを発見した。これは、予測よりも抗酸化活性が大きく増加したと言い換えられる。これはまた、強化食品の製造、貯蔵および調理中の生物活性物質のレベルを維持するのを助け、その後、それらが消費されるとヒト健康に対し有益な効果が得られる。
【0022】
そのため、本発明は、強化食品の調製で使用するための、EPAおよびDHAで強化したサーモン油と、α−トコフェロールと、超臨界ローズマリー抽出物とに基づく相乗的油状組成物を提供する。この組成物はまた、例えば、カロテノイド類ルテインまたはβ−カロテンなどの健康のために有益な成分も含む微細藻類デュナリエラ・サリナもまた含むことができる。
【0023】
同様に、本発明はまた、喘息、癌または異なる心血管疾患などの疾患の予防に有益な、ω−3のω−6ポリ不飽和脂肪酸に対する比率が5未満である、この油状混合物で強化した食品を提供する。この比率はまた、これらのポリ不飽和脂肪酸類とα−トコフェロールと超臨界ローズマリー抽出物由来のフェノール性ジテルペン類との間の相乗作用により、食品の製造、貯蔵および調理中に維持される。これらの強化食品は、また、感覚特性に関する品質特性および安全性を保持する。
【0024】
そのため、本発明により提供される強化食品は、ポリ不飽和脂肪酸のレベルが安定であり、ω−3のω−6に対する比率が5未満であり、α−トコフェロールと、ローズマリーの超臨界抽出物由来のフェノール性ジテルペン類と、必要に応じて用いる、微細藻類デュナリエラ・サリナ由来のカロテノイド類の量が安定なため、ヒトの健康に対し有益である。
【課題を解決するための手段】
【0025】
そのため、本発明の目的は、EPAおよびDHAで強化したサーモンと、α−トコフェロールと、超臨界ローズマリー抽出物と、を含む強化食品の調製において使用される天然生物活性成分に基づく相乗的油状混合物を提供することである。
【0026】
本発明の別の目的は、天然生物活性成分に基づくこの油状混合物で強化した食品を提供することである。
【0027】
最後に、本発明の別の目的は、この強化食品を調製するための方法を提供することである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明は、EPAおよびDHAで強化したサーモン油と、α−トコフェロールと、超臨界ローズマリー抽出物とを含むことを特徴とする、強化食品の調製において使用される天然生物活性成分に基づく油状混合物を提供する。
【0029】
本出願の中では、「強化食品」という用語は、組成に、天然では含まれていない、または少量しか含まれていない物質が添加された食品を示す。
【0030】
同様に、「天然生物活性成分」という用語は、科学的知識の当技術分野の現状に従い、健康にとって有益な生物活性を有する、天然起源の化合物を示す。
【0031】
前に述べたように、EPA(エイコサペンタエン酸)およびDHA(ドコサヘキサエン酸)が強化されたサーモン油は、ω−3ポリ不飽和脂肪酸を提供する。これらは、食品業界で使用される周知の機能性成分であり、そのため、それらの使用の危険性は非常に低い。ω−3脂肪酸を組み入れると、陸生動物由来、とりわけブタ由来の脂肪の好ましくない脂質プロファイルが補われる。豚肉の消費によりω−6脂肪酸が上昇することがあるからである。細胞レベルでの酸化還元不均衡のこれらのω−6脂肪酸の介入により、癌において起きるもののような、細胞増殖の増加;心血管、自己免疫および神経系疾患において起きるもののような炎症過程の誘発;および、神経障害を引き起こす神経伝達の欠如に至ることがある。同様に、細胞酸化還元均衡は、生命過程のレギュレータにおける遺伝子発現および主遺伝子の突然変異が生じるDNA損傷発生に影響する。
【0032】
このように、EPAおよびDHAで強化したサーモン油を、強化のために陸生動物由来の食品に添加すると、それらの天然のω−6/ω−3不均衡の補償が助けられる。例えば、豚および七面鳥などの陸生動物の動物脂肪中のω−6/ω−3比率は、平均、10より高いためである(が、七面鳥肉は、豚の40%脂肪量に比べ、1%の脂肪量のみを示す)。豚脂肪では、ω−6/ω−3比はさらに高く、これらの動物の肉中のこの比率は、推奨値よりもずっと高い。
【0033】
しかしながら、ω−3脂肪酸の消費は酸化的ストレスを増加させることがあるので、これらの脂肪酸の食品への添加は、超臨界ローズマリー抽出物またはα−トコフェロールなどの抗酸化剤の同時添加と組み合わされなければならない。前に言及した、これらの抗酸化剤は、当技術分野の状況では公知であるが、現在まで、EPAおよびDHAで強化されたサーモン油と組み合わせた場合の、重要な相乗作用は知られていなかった。
【0034】
超臨界ローズマリー抽出物は、不飽和脂肪酸により引き起こされる酸化的ストレスを減少させるのを助け、ならびに、非常に重篤な疾患に対し潜在的な予防効果を有し、かつ優れた天然食品保存剤である。この発明の目的のために、例えば、フラベックス(Flavex)(オーストリア)により販売されている超臨界ローズマリー抽出物を使用することができ、または超臨界COにより、150〜250バール(15〜25MPa)の範囲の圧力および40〜70℃の間の温度で抽出することにより調製されたものを使用することができる。
【0035】
他方、α−トコフェロールは、前述したように、抗酸化剤として重要な利益を提供する。本発明のために、例えば、ロシュ(Roche)により市販されているα−トコフェロールを使用することができる。
【0036】
強化サーモン油のポリ不飽和脂肪酸と、α−トコフェロールと、超臨界ローズマリー抽出物の相乗的相互作用により、5未満のω−3/ω−6比率を達成することができ、これが、油状混合物が添加される食品の製造、貯蔵および調理中に維持される。この相乗的作用により、α−トコフェロールおよび超臨界ローズマリー抽出物の抗酸化活性が維持され、本発明の油状混合物が添加される食品中で、α−トコフェロール量および超臨界ローズマリー抽出物由来のフェノール性ジテルペン量が維持される。
【0037】
本発明の1つの特定の態様では、油状混合物は、70〜99.9%の、10〜40%のEPAおよびDHAで強化したサーモン油と、0.001〜1%のα−トコフェロールと、0.1〜5%の超臨界ローズマリー抽出物と、を含み、ここで、これらは、油状混合物の総重量に対する重量パーセントに対応する。
【0038】
好ましい態様では、油状混合物は、80〜97%の、10〜40%のEPAおよびDHAで強化したサーモン油と、0.001〜0.1%のα−トコフェロールと、1〜3%の超臨界ローズマリー抽出物と、を含み、ここで、これらは、油状混合物の総重量に対する重量パーセントに対応する。
【0039】
より好ましい態様では、油状混合物は、82%の、10〜40%のEPAおよびDHAで強化したサーモン油と、0.08%のα−トコフェロールと、1.6%の超臨界ローズマリー抽出物と、を含み、ここで、これらは、油状混合物の総重量に対する重量パーセントに対応する。
【0040】
本発明の別の特定の態様では、油状混合物はまた、微細藻類デュナリエラ・サリナを含む。前述したように、この微細藻類は、食品で最もよく使われるものの1つであり、そのため、その毒性はよく研究されており、使用しても健康上のリスクとはならない。微細藻類デュナリエラ・サリナはα−トコフェロールおよび超臨界ローズマリー抽出物の抗酸化作用を増強することができ、また、選択した疾患、例えば、視覚に影響するもののいくつかに対し予防作用を有するかなりのカロテノイド含有量を有する。α−トコフェロールと超臨界ローズマリー抽出物との間の相乗作用のため、本発明の油状混合物が添加される食品中で、このカロテノイド含有量を維持することが可能である。
【0041】
本発明の目的は、例えば、ネイチャーβテクノロジーズ(Nature Beta Technologies(NBT))社(イスラエル)により市販されている微細藻類デュナリエラ・サリナを用いて達成することができる。
【0042】
本発明の好ましい態様では、油状混合物は、0.1〜20%、好ましくは3〜18%、さらに好ましくは16%の微細藻類デュナリエラ・サリナを含み、ここで、これらは、油状混合物の総重量に対する重量パーセントに対応する。
【0043】
別の観点では、本発明は、前述したように、EPAおよびDHAで強化されたサーモン油と、α−トコフェロールと、超臨界ローズマリー抽出物とを含む天然生物活性成分に基づく油状混合物で強化した食品を提供する。
【0044】
特定の態様では、この食品は、EPAおよびDHAが強化されたサーモン油と、α−トコフェロールと、超臨界ローズマリー抽出物と、ならびに微細藻類デュナリエラ・サリナとを含む天然生物活性成分に基づく油状混合物で強化される。
【0045】
本発明の好ましい態様では、この食品は、0.1〜20%の、10〜40%のEPAおよびDHAで強化したサーモン油と、0.00001〜1%のα−トコフェロールと、0.001〜5%の超臨界ローズマリー抽出物と、必要に応じて、0.01〜5%の微細藻類デュナリエラ・サリナと、を含み、ここで、これらは、食品の総重量に対する重量パーセントに対応する。
【0046】
本発明のより好ましい態様では、この強化食品は、1〜10%の、10〜40%のEPAおよびDHAで強化したサーモン油と、0.001〜0.5%のα−トコフェロールと、0.01〜3%の超臨界ローズマリー抽出物と、必要に応じて、0.1〜3%の微細藻類デュナリエラ・サリナと、を含み、ここで、これらは、食品の総重量に対する重量パーセントに対応する。
【0047】
同様に、本発明のさらに好ましい態様では、この強化食品は、5%の、10〜40%のEPAおよびDHAで強化したサーモン油と、0.005%のα−トコフェロールと、0.1%の超臨界ローズマリー抽出物と、必要に応じて、1%の微細藻類デュナリエラ・サリナと、を含み、ここで、これらは、食品の総重量に対する重量パーセントに対応する。
【0048】
サーモン油は、油の総重量に対し、10〜40重量%の範囲の割合のEPAおよびDHAで強化される。好ましい態様では、サーモン油は、油の総重量の対し18重量%のEPAと12重量%のDHAで強化される。
【0049】
本発明のために、プロダクトスキミコスドムルシア(Productos Quimicos de Murcia)S.A.により市販されている18%のEPAと12%のDHAで強化されたサーモン油を使用することができる。
【0050】
本発明の強化食品は、ω−6/ω−3ポリ不飽和脂肪酸の比率が5未満であるポリ不飽和脂肪酸含量を示し、これは、前述したように、ヒトの健康に対し重要な利益となる。ω−3脂肪酸と、α−トコフェロールと、超臨界ローズマリー抽出物との相乗的相互作用のために、この比率は、このように強化された食品の製造、貯蔵およびその後の調理の間維持される。
【0051】
1つの特定の態様では、本発明の強化食品は肉製品である。好ましくは、本発明の強化食品は、フランクフルト型ソーセージ、加熱ハム(ゆでたハム)、調理済み七面鳥胸肉、加工「チョリーゾ」ソーセージ、加工「サルチチョン」ソーセージ、加工豚ロイン、および塩漬けハムからなる群より選択される肉製品である。
【0052】
別の観点では、本発明は、
a)天然生物活性成分を混合することにより、これらの天然生物活性成分に基づく油状混合物を調製する工程と、
b)工程a)で調製した油状混合物を強化すべき食品に組み入れる工程と、
を含む、この強化食品を調製するための方法に対応する。
【0053】
本発明の1つの特定態様では、天然生物活性成分は、70〜99.9%の、10〜40%のEPAおよびDHAで強化したサーモン油、0.001〜1%のα−トコフェロール、0.1〜5%の超臨界ローズマリー抽出物、必要に応じて、0.1〜20%の微細藻類デュナリエラ・サリナの割合で組み合わせられ、ここで、これらは、油状混合物の総重量に対する重量パーセントに対応する。
【0054】
本発明の好ましい態様では、天然生物活性成分は、80〜97%の、10〜40%のEPAおよびDHAで強化したサーモン油、0.001〜0.1%のα−トコフェロール、1〜3%の超臨界ローズマリー抽出物、必要に応じて、3〜18%の微細藻類デュナリエラ・サリナの割合で組み合わせられ、ここで、これらは、油状混合物の総重量に対する重量パーセントに対応する。
【0055】
本発明の方法のさらに好ましい態様では、天然生物活性成分は、82%の、10〜40%のEPAおよびDHAで強化したサーモン油、0.08%のα−トコフェロール、1.6%の超臨界ローズマリー抽出物、必要に応じて、16%の微細藻類デュナリエラ・サリナの割合で組み合わせられ、ここで、これらは、油状混合物の総重量に対する重量パーセントに対応する。
【0056】
このように、本発明の強化食品を調製するために、適した量の、機能性成分の各々の重さを量り、その後、混合して、油状のわずかに着色した製品を得る。
【0057】
強化される食品が、フランクフルトソーセージなどの肉製品に対応する場合、生物活性成分の油状混合物を、混合プロセス中に添加し、肉エマルジョンが製造される。その後、肉エマルジョンを使用してソーセージ外皮を満たし、ソーセージを調理し、真空パックし、30〜90日間の最大期間の間、冷蔵する。
【0058】
強化加熱ハムでは、生物活性成分の油状混合物を、生カットハム中に塩類溶液(例えば塩水)と共に注入する。この後、カット(肉片)をマッサージドラムに入れ、生物活性化合物の混合物が、均一に肉全体に、内部で広がるように支援する。カット(肉片)をその後、調理し、真空パックし、30〜90日の間の範囲の最大時間の間、冷蔵庫で維持する。
【0059】
強化した調理済み七面鳥胸肉を調製するために、生物活性成分の油状混合物を生の胸カット肉に塩類溶液(例えば塩水)と共に注入する。次に、カット(肉片)をマッサージドラムに入れ、生物活性化合物の混合物が、均一に肉全体に、内部で広がるように支援する。次に、カット肉を調理し、真空パックし、30〜90日の間の範囲の最大時間の間、冷蔵庫で保存する。
【0060】
強化加工ロインを調製するために、生物活性成分の油状混合物を生の豚ロインカット肉に注入する。次に、外皮を肉で充填し、加工する。
【0061】
強化塩漬けハムを調製するために、生物活性成分の油状混合物を、生ハムカットの表面に塩と共に広げる。カットをその後、穏やかに加圧し、加工する。
【0062】
強化加工チョリーゾを調製するために、生物活性成分の油状混合物を挽肉およびスパイスと混合する。次に、混合物を用いてソーセージを製造し、これを加工する。
【0063】
強化加工「サルチチョン」を調製するために、生物活性成分の油状混合物を挽肉およびスパイスと混合する。その後、混合物を用いてソーセージを製造し、これを加工する。
【0064】
このように、まとめると、本発明の相乗的油状混合物の添加により、強化食品は下記利点を提供する:
1. 5未満のω−6/ω−3比を有し、この脂肪酸プロファイルが製造プロセスを通して、その貯蔵期間中、およびこれらの製品の調理プロセス、例えばフライ加工中、維持される。
2. PUFAが組み入れられているため、酸化指数の有意の増加を示さず、これは、その製造、貯蔵および調理中にほとんど変化しないままである。
3. 製造、貯蔵および調理中に添加された抗酸化製品の抗酸化活性の有意の減少を示さない。
4. 製造、貯蔵よび調理中にα−トコフェロール量の有意の変化を示さない。
5. 製造、貯蔵よび調理中に、超臨界ローズマリー抽出物により提供されるフェノールジテルペン量の有意の変化を示さない。
6. 製造、貯蔵よび調理中に、微細藻類デュナリエラ・サリナにより提供されるカロテノイド類の有意の変化を示さない。
【0065】
下記は、肉製品に対する全ての可能な処理作業を含む強化食品の2つの例である:
実施例1.フランクフルト型ソーセージ、調理および60日の冷蔵および真空下の貯蔵、ならびにその後のフライ処理を含むプロセスにおいて、記述した特性がどのように得られ、保存されるのかを証明する。
実施例2.加工イベリアチョリーゾ、50日間の加工を有するプロセスにおいて、記述した特性がどのように得られ、保存されるのかを証明する。
【0066】
これらの実施例は、本発明の明確な理解を助けるために提供される。本発明の範囲は、全く、これらに限定されない。
【0067】
方法
1.脂肪酸プロファイル
抽出:サンプル中に存在する脂質画分を抽出するために、異なる方法を評価した:a)ヘキサン、b)ヘキサン/メタノール、およびc)ヘキサン/水(5/1)。方法a)およびb)では、相間が生じ、これにより、ヘキサン相を分離するのが困難になった。方法c)は試験したものの中では、ヘキサン相を正確に分離することができた唯一の方法であり、そのため、残りの抽出のために選択した。
【0068】
脂質抽出プロトコル:5gのサンプルを前もって粉砕し、サンプルをホモジナイズする。その後、1gの各サンプルを50mlファルコンバイアルに入れ、5mlのミリ(milli)−Q HOを添加し、続いて25mlのヘキサンを添加した。サンプルをウルトラタラックス(Ultra Turrax)により1分間激しく振盪させ、上清を収集した。場合によっては、水相とヘキサン相とを完全に分離するために遠心分離工程が必要となった。この遠心分離は、3800rpmで5分間実施した。確実に、サンプル中の脂肪のほとんどを抽出するために、第2抽出を25mlのヘキサンを用いて実施した。各抽出物中、ヘキサンをロタベイパー(rota−vapor)中、40℃で蒸発させ一定重量とし、得られた残留物を、バイアル中で、窒素雰囲気下、太陽光から保護して維持した。
【0069】
抽出物誘導体化プロトコル:クロロホルム/メタノール2/1(v/v)に溶解した、25mg/ml(サーモン油を含まないサンプルに対し)および50mg/ml(サーモン油を含むサンプルに対し)の抽出物濃度の溶液を調製した。これらの溶液の計0.5mlを、NaOHを含むメタノール(0.1M)を用い、60℃で30分間メチル化した。次に、0.2mlのmQ水を添加することにより誘導体化を中止させた。その後、形成したメチルエステル脂肪酸を2度、1mlのヘキサンで抽出した。ヘキサン相から残留水を除去するために、画分を無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥させた。
【0070】
脂質分析のためのクロマトグラフィー法:パーキンエルマー(Perkin−Elmer)自動システムXLクロマトグラフにおいて、長さ30m、内径250μm、膜厚(phase thickener)0.25μmの寸法のBTR−カルボワックス(Carbowax)カラムを用いて、分析を実施した。使用したクロマトグラフィー法は下記の通りであった:
注入器温度:220℃
炉温度プログラム:100℃−−−180℃(20℃/分で)−−−220℃(15℃/分で)(33分)
FID検出器温度:230℃
総分析時間:40分
He圧:4bar(4×10Pa)
合成空気圧:4bar(4×10Pa)
水素圧:2bar(2×10Pa)
カラムヘッド温度:12bar(12×10Pa)
He流:1ml/分
分割比:20:1
注入体積:1μl
【0071】
PUFA N°1 マリンソース(Marine Source)、スペルコ(Supelco)(4−7033)の20mg/ml(ヘキサン中)溶液を注入することにより、異なるメチルエステル脂肪酸の保持時間を決定した。
【0072】
2.酸化指数
この方法は、脂質酸化の最終化合物として生成するマロンジアルデヒド(MDA)の定量に基づく。この化合物を測定するために、トリクロロ酢酸を用いてサンプルから抽出し、その後、チオバルビツール酸との比色反応により定量すると、ピンク色の付加物が形成し、最大吸光度ピークは531nmに存在した。定量法のために:10gのサンプルを取り出し(±0.005g)、重量を記録し、20mlの10%トリクロロ酢酸を添加し、サンプルを30秒間20000rpmでホモジナイズした。その後、これを30分間4000rpm、10℃で遠心分離した。遠心分離後、サンプルを濾過し、2mlの上清を試験管中に収集した。これらの2mlの上清に、さらに2mlのチオバルビツール酸溶液を添加し(TBA、300mg/100ml);溶液をボルテックス中で混合し、銀箔で被覆し、20分間、沸騰水を有する水浴に入れた。その後、放置して室温まで冷却させ、形成した色を531nmで測定した。サンプル自体の色を測定するために、2mlの水の代わりに2mlのTBAを使用して、サンプルに対して実施したものと同じ試験をブランクに対し実施した。
【0073】
3.抗酸化活性
エタノール(10gのサンプルあたり20mlのエタノール)を添加することにより添加した化合物の抽出を実施し、遠心分離後に得られた濾液を乾燥させた。それぞれの場合において得られた乾燥残留物をエタノールに15mg/mlの濃度で溶解させた。この溶液を計0.1ml使用して、β−カロテン漂白(bleaching)試験により、異なる化合物の抗酸化能力を評価した。これにより、反応媒質中の試験化合物濃度が60μg/mlとなった。β−カロテン漂白試験は、潜在的に抗酸化効果を有する物質が、酸化促進条件のリノール酸と共にエマルジョン中に存在する場合の、この物質のβ−カロテン酸化を阻害する能力を評価する。
【0074】
4.トコフェロールの分析
サンプルの調製
混合物に添加したサーモン油のトコフェロール量を定量するために、20μlの油を直接HPLCに注入した。各サンプルから、10gを取り出し、20mlのエタノールと混合した。これをウルトラタラックス中1分間、ホモジナイズし、遠心分離した。上清をフィルタに通し、ロタベイパーで濃縮乾燥させた。その後、2mlのエタノールを添加した。濃縮物をフィルタに通し、逆相カラム(ノバ−パック(Nova−Pak)C18 60A 4μm 3.9×150mm、ウォーターズ(Waters))を使用して分析用HPLCに注入し、1ml/分の流速で展開させ、その後、97%メタノールを含む1%酢酸(v/v)の混合物の均一法を20分間実施した。ピークを、フォトダイオード検出器で検出し、言及した標準に対する保持時間およびそのスペクトルによりピークを識別し、ほとんどの化合物に対し、最大波長(295nm)で定量した。
【0075】
検出した面積を定量するために、トコフェロール標準を用いて検量線を作成し、サンプルに対応するピークを定量した。
【0076】
5.ローズマリー抽出物の抗酸化剤
抽出法:計10gの各サンプルの重さを量り、20mlのアセトンをそれぞれに添加した。1分間ウルトラタラックス中でホモジナイズした後、2時間放置し、相分離を促進した。次に、3500r.p.mで30分間遠心分離した。上清を濾紙に通して濾過し、その後ロタベイパーで蒸発させた。
【0077】
クロマトグラフィー法:長さ150mm、内径4.6mm、および粒子サイズ3.5μmのノバパックC18カラムを備えたHPLCシステムで分析を実施した。分離で使用した移動相は、溶媒A(1%酢酸を含むアセトニトリル)とB(1%酢酸を含む水)の混合物で構成した。移動相の組成は、30分グラジエントと共に変動し、50%のB、5分間で開始し、15分で30%のB、30分で0%のBに到達した。流速は分離全体で、0.7ml/分で維持した。化合物は200〜450nmの範囲の波長のダイオードビーム検出器を用いて検出した。検出スリットは4nmで確立し、サンプリング間隔は200msとした。化合物の検出のために選択した波長は230nmであった。装置には20μl注入器を取り付けた。
【0078】
6.カロテノイドプロファイル
微細藻類からのカロテノイド類の抽出:0.05g/mlのスピルリナ(Spirulina)およびデュナリエラ抽出物を、石油エーテル:アセトン(1:1)中で調製し、両方の藻類のカロテノイド濃度を比較した。terc−ブチルメチルエーテル中で0.05g/ml(サンプルに添加した1%に対応する)のデュナリエラ抽出物を調製し、カロテノイドの抽出において生成したカロテノイド類の損失を定量した。サンプルからの抽出は1度のみであるからである。第2の抽出を実施し、実験データを文献中のデータを用いて確認した。
【0079】
サンプルからのカロテノイド類の抽出.計5gの各サンプルの重さを量り、家庭用フードプロセッサ中で、1分間粉砕し、5秒休止した。計5gの粉砕混合物を10mlのterc−ブチルメチルエーテルと混合した。混合物をウルトラタラックス中で1分間ホモジナイズし、2相が分離するまで放置した(暗所で)。上清(20μl)を直ちにHPLCシステムに注入し、分析した。
【0080】
HPLC分析:サンプルおよび標準を、逆相カラム(ミクロソーブ(Microsorb)C18、バリアン(Varian)の250×4.6mm)を用いてHPLCに注入し、1ml/分の流速で展開させ、グラジエントは50%の混合物Bで開始し、14分で100%Bまで増加させ、53分の展開終了時まで一定に維持した。使用した溶媒混合物は混合物A:ジクロロメタン:メタノール:アセトニトリル:水(0:60:5:35)および混合物B:ジクロロメタン:メタノール:アセトニトリル:水(25:28:42.5:4.5)に対応する。ピーク検出はフォトダイオード検出器を使用して実施し、言及した標準に対する保持時間およびスペクトルからピークを識別し、ほとんどの化合物に対し最大波長(450nm)で定量した。検出した面積を定量するために、ルテインを用いて検量線を作成し、サンプルのルテインピークを定量した。β−カロテンおよび9−シス−β−カロテンのピークを、それらのスペクトルが類似しているため、β−カロテン曲線から得られた直線を用いて定量した。
【0081】
実施例1.フランクフルト型ソーセージ
調製
フランクフルト型ソーセージを製造するための標準肉エマルジョンを獲得した後、肉ペースト1kgあたり、下記量の油状混合物成分を添加した:50gの、脱臭し、18%EPAおよび12%DHAで強化したサーモン油と、1gの超臨界ローズマリー抽出物と、0.05gのα−トコフェロールと、10gのデュナリエラ・サリナ。
【0082】
油状混合物を、ミキサ中の肉ペーストに添加し、油状混合物成分が均一に分布したエマルジョンを獲得した。その後、これをソーセージにし、70℃で60分間調理した。次に、ソーセージを真空パックし、5℃で90日間冷蔵した。フライ加工を180℃で3分間実施した。
【0083】
結果
下記表1.1は、処理作業後、異なる貯蔵時間で決定したソーセージに対する脂質プロファイルを示す。
【表1】

表1.1.から得られるデータより、まず第一に、50g/kgの、EPAおよびDHAを強化したサーモン油を添加すると、ω−6/ω−3比が17.9から2未満の値まで減少し、これが、製造、貯蔵および調理の全プロセスで維持されることが推測できる。さらに、脂質プロファイルもまた、安定なままである。
【0084】
所期の目的を達成するには、処理および貯蔵中に油状混合物の抗酸化活性を維持することが不可欠である。さらに、PUFAは酸化しやすいので、抗酸化活性は脂質プロファイルを安定に維持するのに寄与する。
【0085】
表1.2.はソーセージに対する酸化指数データを示す。
【表2】

相当の量のPUFAを添加しても、酸化指数は全処理期間および貯蔵中、低いままであった。この結果は、提示した他のものと一致し、PUFAの脂質プロファイル、およびこれにより、ω−3/ω−6比の維持、および油状混合物成分の抗酸化活性の維持が確認される。
【0086】
表1.3はソーセージに対する抗酸化活性分析の結果を示す。
【表3】

油状混合物を添加すると、抗酸化活性が、処理前のソーセージで決定した値の3.4倍に増加する。この抗酸化活性は、処理および貯蔵期間中、わずかに減少するが、賞味期間中、油状混合物を有さない製品に対し得られた値の2.5倍未満には決して低下しない。
【0087】
フライ処理後の抗酸化活性の上昇は、使用した油(バージンオリーブ油)の吸着効果によるものとすることができる。
【0088】
表1.4.は、ソーセージ中のα−トコフェロール分析の結果を示す。処理および貯蔵の終わりに、ソーセージ中にα−トコフェロールフェロールが存在すると、油状混合物の高い抗酸化活性の別の指標となる。
【0089】
実際、サーモン油+α−トコフェロールのみをソーセージに添加した平行実験では、調理前に、α−トコフェロールは検出さえされなかった。この時点では、抗酸化活性は32.92%であり、言い換えれば、完全な油状混合物を添加した時に得られるものの半分より少なかった。これにより、α−トコフェロールと超臨界ローズマリー抽出物との間の相乗効果が証明される。
【表4】

【0090】
超臨界ローズマリー抽出物の成分の存在は、プロセス中のソーセージの永続性の指標である。表1.5は、カルノシン酸、超臨界ローズマリー抽出物の最も活性で、最も不安定な抗酸化成分の分析結果を示す。
【表5】

【0091】
ソーセージ中に存在するカルノシン酸の量は、プロセスが進むにつれ、かつ貯蔵中に減少することがわかったが、プロセスの終了時、調理後でさえも、この化合物がかなりの量存在することが証明された。
【0092】
表1.6はソーセージ中のカロテノイドの分析結果を示す。これらの化合物は微細藻類デュナリエラ・サリナに由来する。
【表6】

【0093】
いくらかの振幅が観察されることがあるが、カロテノイド類はプロセスを通して安定なままであることがわかった。最終工程中の増加は、微細藻類細胞の内部のこれらの化合物の放出によるものと考えられる。
【0094】
結論
フランクフルトソーセージ中に油状混合物を混入させると、抗酸化活性、一定量の天然抗酸化剤および>5のω−6/ω−3比が付与され、これらは製造プロセス、貯蔵および調理を通して安定なままである。
【0095】
実施例2.加工イベリアチョリーゾ
調製
従来のイベリアチョリーゾの標準成分に、肉ペースト1kgあたり、下記量の油状混合物成分を添加する:50gの、脱臭し、18%EPAおよび12%DHAを補充したサーモン油と、1gの超臨界ローズマリー抽出物と、0.05gのα−トコフェロールと、10gのデュナリエラ・サリナ。
【0096】
次に、混合物を、工業用ミキサ中、真空下で混合し、外皮中に導入し、最大50日まで加工する。
【0097】
結果
下記表2.1.は、処理作業後および異なる貯蔵時間で決定した加工チョリーゾの脂質プロファイルを示す。
【表7】

【0098】
表2.1.のデータから、最初に、EPAおよびDHAで強化したサーモン油を50g/kg添加すると、ω−6/ω−3比は、14.2から1に近い値まで減少し、これは、50日の加工プロセスを含む全製造プロセス中、維持されることが推定できる。
【0099】
抗酸化活性、α−トコフェロール、カルノシン酸、カロテノイド類および酸化指数の決定に関しては、結果はソーセージに対して提示したものと類似する。
【0100】
結果
油状混合物を加工イベリアチョリーゾに混入させると、抗酸化活性、一定量の天然抗酸化剤および>5のω−6/ω−3比が付与され、これらは50日の加工時間を含む全プロセスを通して安定なままである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
EPAおよびDHAで強化したサーモン油と、α−トコフェロールと、超臨界ローズマリー抽出物とを含むことを特徴とする、強化食品の調製において使用される天然生物活性成分に基づく油状混合物。
【請求項2】
70〜99.9%の、10〜40%のEPAおよびDHAで強化したサーモン油と、0.001〜1%のα−トコフェロールと、0.1〜5%の超臨界ローズマリー抽出物と、を含むことを特徴とし、ここで、これらは、前記油状混合物の総重量に対する重量パーセントに対応する、請求項1に記載の油状混合物。
【請求項3】
80〜97%の、10〜40%のEPAおよびDHAで強化したサーモン油と、0.001〜0.1%のα−トコフェロールと、1〜3%の超臨界ローズマリー抽出物と、を含むことを特徴とし、ここで、これらは、前記油状混合物の総重量に対する重量パーセントに対応する、請求項2に記載の油状混合物。
【請求項4】
82%の、10〜40%のEPAおよびDHAで強化したサーモン油と、0.08%のα−トコフェロールと、1.6%の超臨界ローズマリー抽出物と、を含むことを特徴とし、ここで、これらは、前記油状混合物の総重量に対する重量パーセントに対応する、請求項3に記載の油状混合物。
【請求項5】
微細藻類デュナリエラ・サリナもまた含むことを特徴する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の油状混合物。
【請求項6】
0.1〜20%、好ましくは3〜18%、さらに好ましくは16%の微細藻類デュナリエラ・サリナを含むことを特徴とし、ここで、これらは、油状油状混合物の総重量に対する重量パーセントに対応する、請求項5に記載の油状混合物。
【請求項7】
EPAおよびDHAで強化されたサーモン油と、α−トコフェロールと、超臨界ローズマリー抽出物とを含む天然生物活性成分に基づく油状混合物で強化した食品。
【請求項8】
天然生物活性成分に基づく前記油状混合物はまた、微細藻類デュナリエラ・サリナも含むことを特徴とする、請求項7に記載の強化食品。
【請求項9】
0.1〜20%の、10〜40%のEPAおよびDHAで強化したサーモン油と、0.00001〜1%のα−トコフェロールと、0.001〜5%の超臨界ローズマリー抽出物と、必要に応じて、0.01〜5%の微細藻類デュナリエラ・サリナと、を含むことを特徴とし、ここで、これらは、前記油状混合物の総重量に対する重量パーセントに対応する、請求項7または請求項8に記載に強化食品。
【請求項10】
1〜10%の、10〜40%のEPAおよびDHAで強化したサーモン油と、0.001〜0.5%のα−トコフェロールと、0.01〜3%の超臨界ローズマリー抽出物と、必要に応じて、0.1〜3%の微細藻類デュナリエラ・サリナと、を含むことを特徴とし、ここで、これらは、前記食品の総重量に対する重量パーセントに対応する、請求項9に記載の強化食品。
【請求項11】
5%の、10〜40%のEPAおよびDHAで強化したサーモン油と、0.005%のα−トコフェロールと、0.1%の超臨界ローズマリー抽出物と、必要に応じて、1%の微細藻類デュナリエラ・サリナと、を含むことを特徴とし、ここで、これらは、前記食品の総重量に対する重量パーセントに対応する、請求項10に記載の強化食品。
【請求項12】
ω−6/ω−3ポリ不飽和脂肪酸の比率が5未満であるポリ不飽和脂肪酸含量を示すことを特徴とする、請求項7から請求項11のいずれか1項に記載の食品。
【請求項13】
肉製品であることを特徴とする、請求項12に記載の強化食品。
【請求項14】
前記肉製品は、フランクフルト型ソーセージ、加熱ハム、調理済み七面鳥胸肉、加工チョリーゾ、加工サルチチョン、加工豚ロイン、および塩漬けハムからなる群より選択される、請求項13に記載の強化食品。
【請求項15】
a)天然生物活性成分を混合することにより、これらの天然生物活性成分に基づく油状混合物を調製する工程と、
b)工程a)で調製した前記油状混合物を強化すべき食品に組み入れる工程と、
を含むことを特徴とする、請求項7から請求項14のいずれか1項に記載の強化食品を調製するための方法。
【請求項16】
前記天然生物活性成分は、70〜99.9%の、10〜40%のEPAおよびDHAで強化したサーモン油、0.001〜1%のα−トコフェロール、0.1〜5%の超臨界ローズマリー抽出物、必要に応じて、0.1〜20%の微細藻類デュナリエラ・サリナの割合で組み合わせられることを特徴とし、ここで、これらは、前記油状混合物の総重量に対する重量パーセントに対応する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記天然生物活性成分は、80〜97%の、10〜40%のEPAおよびDHAで強化したサーモン油、0.001〜0.1%のα−トコフェロール、1〜3%の超臨界ローズマリー抽出物、必要に応じて、3〜18%の微細藻類デュナリエラ・サリナの割合で組み合わせられることを特徴とし、ここで、これらは、前記油状混合物の総重量に対する重量パーセントに対応する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記天然生物活性成分は、82%の、10〜40%のEPAおよびDHAで強化したサーモン油、0.08%のα−トコフェロール、1.6%の超臨界ローズマリー抽出物、必要に応じて、16%の微細藻類デュナリエラ・サリナの割合で組み合わせられることを特徴とし、ここで、これらは、前記油状混合物の総重量に対する重量パーセントに対応する、請求項17に記載の方法。

【公表番号】特表2008−520221(P2008−520221A)
【公表日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−542013(P2007−542013)
【出願日】平成17年11月7日(2005.11.7)
【国際出願番号】PCT/ES2005/000600
【国際公開番号】WO2006/053917
【国際公開日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(507159500)ウニベルシダッド アウトノマ デ マドリッド (1)
【出願人】(507160573)
【Fターム(参考)】