弾性体アクチュエータの制御装置及び制御方法、並びに、制御プログラム
【課題】弾性体アクチュエータで駆動されるロボットアーム等の可動機構を事前に想定した環境以外でも、位置又は力を精度良く制御できる、弾性体アクチュエータの制御装置及び制御方法、並びに、制御プログラムを提供する。
【解決手段】出力の目標値から出力値を減じた値にゲインを乗じた値を積分した適応オフセット値と、出力の目標値から初期値を減じた値に、出力の目標値から出力値を減じた値を乗じた値にゲインを乗じた値を積分した適応ゲイン値を算出し、適応ゲイン値に出力の目標値を乗じた値と、適応オフセット値とを加算した値を内部状態の目標補正値として適応目標内部状態補正手段で決定する。
【解決手段】出力の目標値から出力値を減じた値にゲインを乗じた値を積分した適応オフセット値と、出力の目標値から初期値を減じた値に、出力の目標値から出力値を減じた値を乗じた値にゲインを乗じた値を積分した適応ゲイン値を算出し、適応ゲイン値に出力の目標値を乗じた値と、適応オフセット値とを加算した値を内部状態の目標補正値として適応目標内部状態補正手段で決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧駆動アクチュエータ等、弾性体の変形により駆動される弾性体アクチュエータの動作を制御する弾性体アクチュエータの制御装置及び制御方法、並びに、制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ペットロボットなどの家庭用ロボットの開発が盛んに行われており、将来は家事支援ロボット等、より実用的な家庭用ロボットが実用化されるものと期待されている。家庭用ロボットは、家庭内に入り、人間と共生する必要があるため、従来の産業用ロボットなどとは必要とされる仕様が異なる。
【0003】
産業用ロボットでは、電気モータ又は減速器が用いられ、高ゲインのフィードバック制御により、繰り返し精度0.1mm等といった高い手先位置精度が実現されている。しかしながら、このような電気モータにより駆動される機構は、剛性が高く、柔らかさに欠ける場合が多く、安全性という面で問題が多い。
【0004】
これに対し、家庭用ロボットでは、繰り返し精度0.1mm等といった高い精度は必ずしも必要とせず、人間との接触時に危害を与えないなど安全性が重視される。したがって、従来の産業用ロボットのように電気モータによる駆動される機構は、家庭用ロボットなど安全性が重視される分野に適しているとは言えず、柔軟で安全なロボットアームが必要とされている。
【0005】
こうした課題に対し、例えば、マッキベン型の空気圧アクチュエータを利用したロボットアームが提案されている。マッキベン型の空気圧アクチュエータは、ゴム材料で構成された管状弾性体の外表面に繊維コードで構成された拘束手段が配設され、管状弾性体の両端部を封止部材で気密封止する構造となっている。流体注入出手段を通じて空気等の圧縮性流体により内圧を管状弾性体の内部空間に与えると、管状弾性体が主に半径方向に膨張しようとするが、拘束手段の作用により、管状弾性体の中心軸方向の運動に変換され、全長が収縮する。このマッキベン型のアクチュエータは主に弾性体で構成されるため、柔軟性があり、安全で軽量なアクチュエータであるという特徴を有する。
【0006】
しかしながら、マッキベン型のアクチュエータ等、空気等の流体圧によって動作する流体圧駆動アクチュエータでは、流体の圧縮性による弾性的性質又は流路抵抗等の影響により応答性が悪い。このため、従来より存在する一般的なフィードバック制御では所望の精度が達成できない等、弾性体アクチュエータは制御が難しいという課題をかかえている。
【0007】
こうした課題に対し、従来技術としては、内部状態誤差補償手段を配設して、上記弾性体アクチュエータの内部状態をフィードバックする制御系を構成し、そして目標内部状態決定手段を配設して、目標内部状態をフィードフォワードする制御系を構成し、応答性が良く、定常偏差の少ない、高速・高精度な制御ができる制御装置を開示している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−95989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記目標内部状態決定手段は、事前に実験を行い出力と内部状態の関係を計測した結果を、近似多項式等で表現するため、事前に想定した変動パラメータ以外の変化に対して、目標内部状態を変更することはできない。このため、家庭用ロボットのように、事前に全ての環境を想定することが困難な状況では、出力と内部状態の関係が事前に想定した環境と異なり、精度が低下するという課題があった。
【0010】
本発明の目的は、上記従来の課題を解決し、弾性体アクチュエータで駆動されるロボットアーム等の可動機構を事前に想定した環境以外でも、位置又は力を精度良く制御できる、弾性体アクチュエータの制御装置及び制御方法、並びに、制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来の課題を解決するために、本発明は以下のように構成する。
【0012】
本発明の第1態様によれば、弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段とを備え、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御装置であって、
上記適応目標内部状態補正手段は、上記出力の目標値から出力値を減じた値にゲインを乗じた値を積分した適応オフセット値と、上記出力の目標値から初期値を減じた値に、上記出力の目標値から出力値を減じた値を乗じた値にゲインを乗じた値を積分した適応ゲイン値を算出し、上記適応ゲイン値に上記出力の目標値を乗じた値と、上記適応オフセット値とを加算した値を上記内部状態の目標補正値として決定する弾性体アクチュエータの制御装置を提供する。
【0013】
本発明の第3態様によれば、弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段とを備え、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御装置であって、
上記適応目標内部状態補正手段は、規範モデルを備え、上記出力の目標値と上記規範モデルの出力と上記弾性体アクチュエータの出力との間で誤差が生じた場合にその誤差を小さくするゲインを上記出力の目標値と上記規範モデルの状態変数に乗じた値を加算し、上記内部状態の目標補正値として決定する弾性体アクチュエータの制御装置を提供する。
【0014】
本発明の第4態様によれば、弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段と、
上記適応目標内部状態補正手段からの出力をローパスフィルタを通す状態又は通さない状態との間での切り替えを行う補正出力制御手段とを備えて、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御装置を提供する。
【0015】
このような構成により、事前に想定した環境以外でも、位置又は力の精度良く制御できる弾性体アクチュエータの制御が実現できる。
【0016】
本発明の第5態様によれば、弾性体アクチュエータの内部状態を内部状態計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力を出力計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を出力誤差補償手段で補償し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を目標内部状態決定手段で決定し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を適応目標内部状態補正手段で決定し、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を内部状態誤差補償手段で補償し、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御方法であって、
上記内部状態の上記目標補正値を上記適応目標内部状態補正手段で決定するとき、上記出力の目標値から出力値を減じた値にゲインを乗じた値を積分した適応オフセット値と、上記出力の目標値から初期値を減じた値に、上記出力の目標値から出力値を減じた値を乗じた値にゲインを乗じた値を積分した適応ゲイン値を算出し、上記適応ゲイン値に上記出力の目標値を乗じた値と、上記適応オフセット値とを加算した値を上記内部状態の目標補正値として決定する、弾性体アクチュエータの制御方法を提供する。
【0017】
本発明の第6態様によれば、弾性体アクチュエータの内部状態を内部状態計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力を出力計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を出力誤差補償手段で補償し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を目標内部状態決定手段で決定し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を適応目標内部状態補正手段で決定し、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を内部状態誤差補償手段で補償し、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御方法であって、
上記内部状態の上記目標補正値を上記適応目標内部状態補正手段で決定するとき、上記適応目標内部状態補正手段に備えられた規範モデルを使用し、上記出力の目標値と上記規範モデルの出力と上記弾性体アクチュエータの出力との間で誤差が生じた場合にその誤差を小さくするゲインを上記出力の目標値と上記規範モデルの状態変数に乗じた値を加算し、上記内部状態の目標補正値として決定する、弾性体アクチュエータの制御方法を提供する。
【0018】
本発明の第7態様によれば、弾性体アクチュエータの内部状態を内部状態計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力を出力計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を出力誤差補償手段で補償し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を目標内部状態決定手段で決定し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を適応目標内部状態補正手段で決定し、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を内部状態誤差補償手段で補償し、
上記適応目標内部状態補正手段からの出力をローパスフィルタを通す状態又は通さない状態との間での切り替えを補正出力制御手段で行い、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する、弾性体アクチュエータの制御方法を提供する。
【0019】
このような構成により、事前に想定した環境以外でも、位置又は力の精度良く制御できる弾性体アクチュエータの制御が実現できる。
【0020】
本発明の第8態様によれば、弾性体アクチュエータの制御プログラムであって、
コンピュータを、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と、上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値と、が入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段として機能させて、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御するための弾性体アクチュエータの制御プログラムであって、
上記適応目標内部状態補正手段は、上記出力の目標値から出力値を減じた値にゲインを乗じた値を積分した適応オフセット値と、上記出力の目標値から初期値を減じた値に、上記出力の目標値から出力値を減じた値を乗じた値にゲインを乗じた値を積分した適応ゲイン値を算出し、上記適応ゲイン値に上記出力の目標値を乗じた値と、上記適応オフセット値とを加算した値を上記内部状態の目標補正値として決定する、弾性体アクチュエータの制御プログラムを提供する。
【0021】
本発明の第9態様によれば、弾性体アクチュエータの制御プログラムであって、
コンピュータを、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と、上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値と、が入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段として機能させて、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御プログラムであって、
上記適応目標内部状態補正手段は、規範モデルを備え、上記出力の目標値と上記規範モデルの出力と上記弾性体アクチュエータの出力との間で誤差が生じた場合にその誤差を小さくするゲインを上記出力の目標値と上記規範モデルの状態変数に乗じた値を加算し、上記内部状態の目標補正値として決定する、弾性体アクチュエータの制御プログラムを提供する。
【0022】
本発明の第10態様によれば、弾性体アクチュエータの制御プログラムであって、
コンピュータを、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と、上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値と、が入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段と、
上記適応目標内部状態補正手段からの出力をローパスフィルタを通す状態又は通さない状態との間での切り替えを行う補正出力制御手段として機能させて、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する、弾性体アクチュエータの制御プログラムを提供する。
【0023】
このような構成により、事前に想定した環境以外でも、位置又は力の精度良く制御できる弾性体アクチュエータの制御が実現できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の弾性体アクチュエータの制御装置及び制御方法、並びに、制御プログラムによれば、内部状態誤差補償手段を配設して、上記弾性体アクチュエータの内部状態をフィードバックする制御系を構成し、かつ、目標内部状態決定手段及び適応目標内部状態補正手段を配設して、適応的に補正した目標内部状態をフィードフォワードする制御系を構成することにより、応答性が良く、定常偏差の少ない、高速・高精度な制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明のこれらと他の目的と特徴は、添付された図面についての好ましい実施形態に関連した次の記述から明らかになる。この図面においては、
【図1】図1は、本発明の第1実施形態における弾性体アクチュエータの制御装置の概念を示すブロック図であり、
【図2】図2は、本発明の上記第1実施形態における上記弾性体アクチュエータの制御装置の制御対象であるロボットアームの構造を示す図であり、
【図3】図3は、本発明の上記第1実施形態における上記弾性体アクチュエータの制御装置の制御対象であるロボットアームを駆動する弾性膨張収縮構造体の構造及び動作を示す図であり、
【図4】図4は、本発明の上記第1実施形態における上記弾性体アクチュエータの制御装置の制御対象であるロボットアームを圧縮性流体である空気により駆動するための空気圧供給系の動作を示す図であり、
【図5】図5は、本発明の上記第1実施形態における上記弾性体アクチュエータ制御装置の制御ブロック図であり、
【図6】図6は、本発明の上記第1実施形態における目標圧力差計算の構造を示す図であり、
【図7】図7は、本発明の上記第1実施形態における上記弾性体アクチュエータの制御装置の制御プログラムの実際の動作ステップのフローチャートであり、
【図8】図8は、本発明の第2実施形態における弾性体アクチュエータの制御装置の適応目標圧力差補正手段の構造を示す図であり、
【図9A】図9Aは、図2に示すロボットアームについて、適応目標内部状態補正手段を用いないで図6に示す目標圧力差計算手段のみを行う従来の制御装置により手先位置の軌道追従制御を行った場合の結果を示す図であり、
【図9B】図9Bは、図5に示す本発明の上記第1実施形態における弾性体アクチュエータの制御装置により手先位置の軌道追従制御を行った場合の結果を示す図であり、
【図10】図10は、本発明の上記第1実施形態における弾性体アクチュエータ制御装置の一つである導電性ポリマーアクチュエータを用いた場合の制御ブロック図であり、
【図11A】図11Aは、本発明の上記第1実施形態における上記弾性体アクチュエータの制御装置の制御対象であるロボットアームを駆動する導電性ポリマーアクチュエータの構造及び動作を示す図であり、
【図11B】図11Bは、本発明の上記第1実施形態における上記弾性体アクチュエータの制御装置の制御対象であるロボットアームを駆動する上記導電性ポリマーアクチュエータの構造及び動作を示す図であり、
【図11C】図11Cは、本発明の上記第1実施形態における上記弾性体アクチュエータの制御装置の制御対象であるロボットアームを駆動する上記導電性ポリマーアクチュエータの構造及び動作を示す図であり、
【図12】図12は、本発明の第3実施形態における上記弾性体アクチュエータ制御装置の制御ブロック図であり、
【図13】図13は、本発明の上記第1実施形態における上記弾性体アクチュエータの制御装置に基づく制御プログラムの動作ステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
本発明にかかる実施の形態を説明する前に、本発明の種々の態様について、まず、説明する。
【0028】
本発明の第1態様によれば、弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段とを備え、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御装置であって、
上記適応目標内部状態補正手段は、上記出力の目標値から出力値を減じた値にゲインを乗じた値を積分した適応オフセット値と、上記出力の目標値から初期値を減じた値に、上記出力の目標値から出力値を減じた値を乗じた値にゲインを乗じた値を積分した適応ゲイン値を算出し、上記適応ゲイン値に上記出力の目標値を乗じた値と、上記適応オフセット値とを加算した値を上記内部状態の目標補正値として決定する弾性体アクチュエータの制御装置を提供する。
【0029】
本発明の第2態様によれば、上記目標内部状態決定手段は、さらに上記弾性体アクチュエータの出力の計測値を取得し、上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する、第1の態様に記載の弾性体アクチュエータの制御装置を提供する。
【0030】
本発明の第3態様によれば、弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段とを備え、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御装置であって、
上記適応目標内部状態補正手段は、規範モデルを備え、上記出力の目標値と上記規範モデルの出力と上記弾性体アクチュエータの出力との間で誤差が生じた場合にその誤差を小さくするゲインを上記出力の目標値と上記規範モデルの状態変数に乗じた値を加算し、上記内部状態の目標補正値として決定する弾性体アクチュエータの制御装置を提供する。
【0031】
本発明の第4態様によれば、弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段と、
上記適応目標内部状態補正手段からの出力をローパスフィルタを通す状態又は通さない状態との間での切り替えを行う補正出力制御手段とを備えて、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御装置を提供する。
【0032】
本発明の第5態様によれば、弾性体アクチュエータの内部状態を内部状態計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力を出力計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を出力誤差補償手段で補償し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を目標内部状態決定手段で決定し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を適応目標内部状態補正手段で決定し、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を内部状態誤差補償手段で補償し、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御方法であって、
上記内部状態の上記目標補正値を上記適応目標内部状態補正手段で決定するとき、上記出力の目標値から出力値を減じた値にゲインを乗じた値を積分した適応オフセット値と、上記出力の目標値から初期値を減じた値に、上記出力の目標値から出力値を減じた値を乗じた値にゲインを乗じた値を積分した適応ゲイン値を算出し、上記適応ゲイン値に上記出力の目標値を乗じた値と、上記適応オフセット値とを加算した値を上記内部状態の目標補正値として決定する、弾性体アクチュエータの制御方法を提供する。
【0033】
本発明の第6態様によれば、弾性体アクチュエータの内部状態を内部状態計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力を出力計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を出力誤差補償手段で補償し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を目標内部状態決定手段で決定し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を適応目標内部状態補正手段で決定し、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を内部状態誤差補償手段で補償し、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御方法であって、
上記内部状態の上記目標補正値を上記適応目標内部状態補正手段で決定するとき、上記適応目標内部状態補正手段に備えられた規範モデルを使用し、上記出力の目標値と上記規範モデルの出力と上記弾性体アクチュエータの出力との間で誤差が生じた場合にその誤差を小さくするゲインを上記出力の目標値と上記規範モデルの状態変数に乗じた値を加算し、上記内部状態の目標補正値として決定する、弾性体アクチュエータの制御方法を提供する。
【0034】
本発明の第7態様によれば、弾性体アクチュエータの内部状態を内部状態計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力を出力計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を出力誤差補償手段で補償し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を目標内部状態決定手段で決定し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を適応目標内部状態補正手段で決定し、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を内部状態誤差補償手段で補償し、
上記適応目標内部状態補正手段からの出力をローパスフィルタを通す状態又は通さない状態との間での切り替えを補正出力制御手段で行い、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する、弾性体アクチュエータの制御方法を提供する。
【0035】
本発明の第8態様によれば、弾性体アクチュエータの制御プログラムであって、
コンピュータを、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と、上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値と、が入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段として機能させて、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御するための弾性体アクチュエータの制御プログラムであって、
上記適応目標内部状態補正手段は、上記出力の目標値から出力値を減じた値にゲインを乗じた値を積分した適応オフセット値と、上記出力の目標値から初期値を減じた値に、上記出力の目標値から出力値を減じた値を乗じた値にゲインを乗じた値を積分した適応ゲイン値を算出し、上記適応ゲイン値に上記出力の目標値を乗じた値と、上記適応オフセット値とを加算した値を上記内部状態の目標補正値として決定する、弾性体アクチュエータの制御プログラムを提供する。
【0036】
本発明の第9態様によれば、弾性体アクチュエータの制御プログラムであって、
コンピュータを、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と、上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値と、が入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段として機能させて、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御プログラムであって、
上記適応目標内部状態補正手段は、規範モデルを備え、上記出力の目標値と上記規範モデルの出力と上記弾性体アクチュエータの出力との間で誤差が生じた場合にその誤差を小さくするゲインを上記出力の目標値と上記規範モデルの状態変数に乗じた値を加算し、上記内部状態の目標補正値として決定する、弾性体アクチュエータの制御プログラムを提供する。
【0037】
本発明の第10態様によれば、弾性体アクチュエータの制御プログラムであって、
コンピュータを、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と、上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値と、が入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段と、
上記適応目標内部状態補正手段からの出力をローパスフィルタを通す状態又は通さない状態との間での切り替えを行う補正出力制御手段として機能させて、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する、弾性体アクチュエータの制御プログラムを提供する。
【0038】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0039】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態にかかる弾性体アクチュエータの制御装置の概念を示すブロック図である。図1において、弾性体アクチュエータ102は、流体圧により駆動される流体圧駆動アクチュエータである。
【0040】
弾性体アクチュエータ102の制御装置は、目標出力生成手段101と、出力計測手段104と、目標内部状態決定手段105と、出力誤差補償手段103と、適応目標内部状態補正手段111と、内部状態計測手段107と、内部状態誤差補償手段106と、出力誤差計算部108とを備えて構成している。
【0041】
目標出力生成手段101は、各弾性体アクチュエータ102の出力の目標値113を生成する。
【0042】
出力計測手段104は、各弾性体アクチュエータ102に接続され、各弾性体アクチュエータ102の出力を計測し、計測値112を、目標内部状態決定手段105と、出力誤差計算部108を介して出力誤差補償手段103と、適応目標内部状態補正手段111とにそれぞれ入力する。
【0043】
出力誤差計算部108は、目標出力生成手段101からの出力目標値113と出力計測手段104からの出力(計算値112)とから出力誤差114を計算し、計算結果を出力誤差補償手段103に出力する。
【0044】
出力誤差補償手段103は、出力誤差計算部108から出力誤差補償手段103に入力された出力誤差114を小さくするように補正し、出力計測手段104により計測される計測値112を、目標出力生成手段101からの出力目標値113に追従させるように制御を行う。
【0045】
目標内部状態決定手段105は、目標出力生成手段101の出力目標値113と出力計測手段104からの計測値112とが入力され、出力目標値113及び計測値112により、各弾性体アクチュエータ102の内部状態目標値116を決定する。
【0046】
適応目標内部状態補正手段111は、目標出力生成手段101の出力目標値113及び出力計測手段104からの計測値112が入力され、出力目標値113及び計測値112に基づいて適応アルゴリズムを用いた信号処理を行い、各弾性体アクチュエータ102の内部状態目標補正値117を決定する。より具体的には、各弾性体アクチュエータ102の出力の目標値及び各弾性体アクチュエータ102の出力の計測値より、弾性体アクチュエータ102の内部状態と弾性体アクチュエータ102の出力の関係との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように信号合成操作を施すことにより得られる信号を、内部状態の目標補正値117として決定する。
【0047】
加算部の一例としての内部状態誤差計算部109は、出力誤差補償手段103からの出力115と、目標内部状態決定手段105からの出力(内部状態目標値)116と、適応目標内部状態補正手段111からの出力(内部状態目標補正値)117と、内部状態計測手段107からの出力(内部状態計測値)118とから、内部状態誤差を計算し、内部状態誤差補償手段106に出力する。
【0048】
内部状態誤差補償手段106は、出力誤差補償手段103からの出力、及び目標内部状態決定手段105からの出力、及び、適応目標内部状態補正手段111からの出力、及び内部状態誤差計算部109からの出力が入力されることによって、内部状態誤差を補償するように、すなわち、に基づいて各弾性体アクチュエータ102の内部状態計測値を目標値に追従させるように制御を行う。
【0049】
内部状態計測手段107は、各弾性体アクチュエータ102に接続され、各弾性体アクチュエータ102の後述する各弾性膨張収縮構造体1の内部圧力である内部状態計測値118を測定して、内部状態誤差計算部109に入力する。
【0050】
以上の原理に基づく制御プログラムの実際の動作ステップについて、図13のフローチャートに基づいて説明する。
【0051】
ステップS101では、出力計測手段104により計測された、弾性体アクチュエータ102の出力の計測値が上記制御装置に取り込まれる。
【0052】
次いで、ステップS102では、目標出力生成手段101内に予め記憶されていた弾性体アクチュエータ102の動作プログラムに基づき、目標出力生成手段101は弾性体アクチュエータ102の出力目標値を計算する。
【0053】
次いで、ステップS103では、目標出力生成手段101で計算された出力目標値と、出力計測手段104により計測された現在の出力の計測値との差である出力誤差が出力誤差計算部108により計算される。
【0054】
次いで、ステップS104では、出力誤差計算部108により計算された出力誤差から出力誤差修正出力が出力誤差補償手段103により計算される。
【0055】
次いで、ステップS105では、目標出力生成手段101で計算された出力目標値と、出力計測手段104により計測された現在の出力の計測値とに基づき、目標内部状態決定手段105が内部状態目標値を算出する。
【0056】
次いで、ステップS106では、目標出力生成手段101で計算された出力目標値と、出力計測手段104により計測された現在の出力の計測値とに基づき、適応目標内部状態補正手段111が適応目標内部状態補正値を算出する。
【0057】
次いで、ステップS107では、内部状態計測手段107により計測された、弾性体アクチュエータ102の内部状態の計測値が上記制御装置に取り込まれる。
【0058】
次いで、ステップS108では、ステップS104で出力誤差補償手段103により計算された出力誤差修正出力とステップS105で目標内部状態決定手段105により算出された内部状態目標値とステップS106で適応目標内部状態補正手段111により算出された目適応目標内部状態補正値とを加算した値から、ステップS107で計測された内部状態の計測値を減算して、内部状態誤差を内部状態誤差計算部109で計算する。
【0059】
次いで、ステップS109では、内部状態誤差計算部109で計算された内部状態誤差を基に、内部状態誤差補償手段106により内部状態誤差修正出力が計算される。
【0060】
次いで、ステップS110では、内部状態誤差補償手段106で計算された内部状態誤差修正出力が、内部状態誤差補償手段106から弾性体アクチュエータ102に与えられ、弾性体アクチュエータ102が駆動する。
【0061】
以上のステップS101〜ステップS110が制御の計算ループとして繰り返し実行されることにより、弾性体アクチュエータ102の制御が実現する。
【0062】
次に、第1実施形態の弾性体アクチュエータ102の制御装置の具体的な例について、制御対象としてロボットアーム10を例に取り説明を行う。
【0063】
図2は、本発明の第1実施形態にかかる弾性体アクチュエータ102の制御装置の制御対象となるロボットアーム10の構成を示す図である。ロボットアーム10は、2自由度のロボットアームであって、直交するx軸とy軸とを含むxy平面内で正逆回転する第1関節軸6−1と、同じくxy平面内で正逆回転する第2関節軸6−2とを備えて構成されている。
【0064】
図2において、1−1a、1−1b、1−2a、1−2b(これらは個別の弾性膨張収縮構造体に対する参照符号であり、代表的に弾性膨張収縮構造体を指し示すときには参照符号1で示す。)は弾性膨張収縮構造体である。弾性膨張収縮構造体1は、図3に示すように、ゴム材料で構成されて駆動部として機能する管状の中空弾性体2の外表面に、材料的には伸びにくい樹脂又は金属の繊維コードで網目状に編んだ変形方向規制部材3が配設される。変形方向規制部材3は、管状弾性体2の膨張による半径方向の変形が軸方向の長さの収縮に変換される一方、管状弾性体2の収縮による半径方向の変形が軸方向の長さの膨張に変換されるように構成される。管状弾性体2の両端部は、封止部材4でそれぞれ気密封止する。封止部材4に備えられた管状の流体通過部材5は、内部に圧縮性流体が通過する流体の流路を有し、中空弾性体2の中空内部に対して流体の注入あるいは注出が可能となる。流体通過部材5を通じて空気等の圧縮性流体が中空の管状弾性体2に供給される。
【0065】
供給された圧縮性流体により内圧を管状弾性体2の内部空間に与えると、管状弾性体2が主に半径方向に膨張しようとする。しかしながら変形方向規制部材3の作用により、管状弾性体2の中心軸方向の運動に変換され、全長が収縮するため、直動駆動の弾性体アクチュエータ102として利用可能である。
【0066】
ロボットアーム10では、1組の弾性膨張収縮構造体(1,1)を関節軸6−1又は6−2を支点に対向するように配設する。1組の弾性膨張収縮構造体(1,1)のうちのどちらか一方の弾性膨張収縮構造体1が収縮し、他方の弾性膨張収縮構造体1が伸張する。そして支点を介して力が作用して軸が回転する拮抗型駆動構造とすることにより、関節軸6−1又は6−2での正逆回転運動を実現することができる。具体的には、弾性膨張収縮構造体1−1aと弾性膨張収縮構造体1−1bとの拮抗駆動により第1関節軸6−1は、正逆回転駆動する。弾性膨張収縮構造体1−2aと弾性膨張収縮構造体1−2bとの拮抗駆動により第2関節軸6−2は、正逆回転駆動する。
【0067】
支持軸(第2軸)303の上端の両側には、第1関節軸6−1と同心に2つの円形支持体302,302が回転自在に支持されている。支持軸303の下端の固定床301側には、支持軸303の長手方向と直交して支持体307,307が固定されている。2つの円形支持体302,302と支持体307,307との間には、弾性膨張収縮構造体1−1a及び1−1bが連結されている。よって、弾性膨張収縮構造体1−1a及び1−1bの拮抗駆動により、第1関節軸6−1の支持軸314の軸回りにxy面内で2つの円形支持体302,302が正逆回転する。この結果、2つの円形支持体302,302に連結されたロボットアーム10の第1腕311と駆動軸313とを一体的に正逆回転させることができる。
【0068】
第1腕311の第1腕用リンク(第1軸)308は、2つの円形支持体302,302に一端が固定されて、2つの円形支持体302,302と一体的に回転可能となっている。第1腕用リンク308の円形支持体302側には、支持体307,307と同様な支持体309,309(図4参照)が第1腕用リンク308の長手方向と直交して固定される。
【0069】
また、第1腕用リンク308の先端側には、第1腕用リンク311の長手方向に直交して固定された支持体310が第2関節軸6−2の軸芯回りに回転可能に連結されている。第1腕用リンク308の円形支持体302側の支持体(図示せず)と先端側の支持体310との間には、弾性膨張収縮構造体1−2a及び1−2bが連結されている。よって、弾性膨張収縮構造体1−2a及び1−2bの拮抗駆動により、第2関節軸6−2の支持軸315の軸回りにxy面内でロボットアーム10の駆動軸313を相対的に正逆回転させることができる。
【0070】
圧力センサ9−1a,9−1bは、弾性膨張収縮構造体(1−1a、1−1b)のそれぞれの内部状態(一例として、内部圧力)を計測する内部状態計測手段107の一例であり、それぞれの流体通過部材5(流体注入出口)に配設され、それぞれの弾性膨張収縮構造体(1−1a、1−1b)内の圧力を計測する。同じく弾性膨張収縮構造体1−2a、1−2bにも内部状態計測手段107の一例である圧力センサ9−2a,9−2b(図示省略)が配設されている。
【0071】
弾性膨張収縮構造体1−1a及び1−1bと、弾性膨張収縮構造体1−2a及び1−2bとのそれぞれには、後述するように、流量比例電磁弁18が接続され、全ての流量比例電磁弁18は、制御部の一例としての一般的なパーソナルコンピュータにより構成された制御コンピュータ19に接続されている。制御コンピュータ19は、流量比例電磁弁18を介して、弾性膨張収縮構造体1−1a及び1−1bと、弾性膨張収縮構造体1−2a及び1−2bとのそれぞれの収縮及び伸張動作を制御する。また、各関節軸6−1,6−2には出力計測手段104の一例である変位計測手段(本実施形態では変位計測手段の一例としてのエンコーダ8)が配設されており、それぞれのエンコーダ8によりそれぞれの関節軸6−1,6−2の関節角度が測定可能である。各弾性膨張収縮構造体1には内部状態計測手段107の一例である圧力計測手段(本実施形態では圧力計測手段の一例として圧力センサ9)が配設されており、圧力センサ9により各弾性膨張収縮構造体1の内部圧力が測定可能となっている。
【0072】
以上のような構造とすれば、多自由度を生かし、例えば駆動軸313の代わりに、物体を把持可能なハンドを取り付ければ、物体の把持及び運搬など、ロボットアーム10として基本的な機能を実現することができる。このハンドの位置及び姿勢を、以下では手先位置及び姿勢として説明する。
【0073】
図4は、本発明の第1実施形態にかかるロボットアーム10を駆動するための空気圧供給系の構成を示す図である。図4ではロボットアーム10の第2関節軸6−2を正逆回転駆動する部分のみを記し、他の部分は省略している。図4において、16は例えばコンプレッサー等の空気圧源、17は空気圧フィルタ17a、空気圧減圧弁17b、及び空気圧用ルブリケータ17cが1組になった空気圧調整ユニットである。18は例えば電磁石の力でスプール弁などを駆動することで流量を制御する流量比例電磁弁の一例としての5ポート流量制御電磁弁である。制御コンピュータ19は、D/Aボードなどの入出力IF20を搭載し、5ポート流量制御電磁弁18に電圧指令値を出力することにより、それぞれの流体通過部材5を流れる各空気の流量を独立して制御可能とする。
【0074】
次に、図4に示す空気圧供給系の動作について説明する。空気圧源16により生成された高圧空気は、空気圧調整ユニット17により減圧され、例えば600[kPa]といった一定圧力に調整され、5ポート流量制御電磁弁18に供給される。5ポート流量制御電磁弁18の開度は、制御コンピュータ19より入出力IF20を介して出力される電圧指令値に比例して制御される。制御コンピュータ19から5ポート流量制御電磁弁18に正の電圧指令値が入力された場合には空気圧回路記号のAで示した状態になり、空気圧源16側から弾性膨張収縮構造体1−2a側への流路が開通し、電圧指令値の絶対値に比例した流量の空気が弾性膨張収縮構造体1−2a側に供給される。また、弾性膨張収縮構造体1−2b側は、大気圧側への流路が開通し、電圧指令値の絶対値に比例した流量の空気流が弾性膨張収縮構造体1−2b側から大気中へ排気される。したがって、図4に示すように、弾性膨張収縮構造体1−2aの全長が縮み、弾性膨張収縮構造体1−2bの全長が伸びることにより、電圧指令値の絶対値に比例した速度で第2関節軸6−2は右回転運動を行う。一方、制御コンピュータ19から5ポート流量制御電磁弁18に負の電圧指令値が入力された場合には空気圧回路記号のBで示した状態になり、弾性膨張収縮構造体1−2a,1−2bの動作は逆となり(すなわち、弾性膨張収縮構造体1−2aの全長が伸び、弾性膨張収縮構造体1−2bの全長が縮むことにより)、第2関節軸6−2は左回転運動を行う。
【0075】
すなわち、5ポート流量制御電磁弁18から弾性膨張収縮構造体1側に供給された空気流は、流体通過部材5により封止部材4を通過し、管状弾性体2の内部に到達し、管状弾性体2の内圧を発生させる。管状弾性体2は発生した内圧により膨張するが、変形方向規制部材3の網目状に組まれた繊維コードの拘束作用(規制作用)により、膨張による半径方向の変形が規制されて軸方向の長さの収縮に変換され、図3の下側に示すように弾性膨張収縮構造体1の全長が短くなる。一方、5ポート流量制御電磁弁18から空気を大気中に排気し、管状弾性体2の内圧を減ずれば、管状弾性体2の弾性力により復元して膨張が解消されて、弾性膨張収縮構造体1の全長は図3の上側に示すように伸張する。この結果、図3において、右端で固定されていると考えると、上記伸縮により、管状弾性体2の左端では距離dの差があることになる。したがって、第1実施形態における弾性膨張収縮構造体1は、空気圧を供給制御することにより、直動変位のアクチュエータとして機能させることが可能である。伸張及び短縮量は弾性膨張収縮構造体1の内圧に概ね比例するので、図4のように制御コンピュータ19で5ポート流量制御電磁弁18を制御して弾性膨張収縮構造体1に供給される空気流量を制御すれば、弾性膨張収縮構造体1の全長を制御できる。
【0076】
図2に示すロボットアーム10では、弾性膨張収縮構造体1−1aと1−1bによる拮抗駆動、及び、弾性膨張収縮構造体1−2aと1−2bによる拮抗駆動のために、拮抗する弾性膨張収縮構造体1それぞれに対して5ポート流量制御電磁弁18が配設されて同様の空気圧供給系が構成されている。そして制御コンピュータ19よりD/Aボード20を介してそれぞれの5ポート流量制御電磁弁18に出力される電圧指令値により、ロボットアーム10の全ての関節軸6−1,6−2を同時に正逆回転駆動することができるようになっている。
【0077】
図5は、本発明の第1実施形態にかかる弾性体アクチュエータ102の制御装置のより具体的な構成を示す図であり、上記制御装置は、例えば、上記制御コンピュータ19内に備えられている。ただし、図5において、10は弾性体アクチュエータ102の制御装置の制御対象である図2に示すロボットアームである。ロボットアーム10からはそれぞれの関節軸6−1,6−2のエンコーダ8により計測される計測値112の一例としての関節角の現在値(関節角度ベクトル)q=[q1,q2]Tと、それぞれの弾性膨張収縮構造体1の圧力センサ9により計測される内部状態計測値118の一例としての弾性膨張収縮構造体1の内圧P=[P1a,P1b,P2a,P2b]Tとが出力される。ただし、q1,q2は、それぞれ、第1関節軸6−1、第2関節軸6−2の関節角度である。また、P1a,P1b,P2a,P2bはそれぞれ、弾性膨張収縮構造体1−1a、1−1b、1−2a、1−2bの内圧である。
【0078】
圧力差計算手段13は、圧力センサ9により計測された内圧P(計測値P)が入力され、圧力センサ9の計測値Pより圧力差ΔP=[ΔP1,ΔP2]T=[P1a−P1b,P2a−P2b]Tが圧力差計算手段13で計算されて内部状態誤差計算部109に向けて出力される。
【0079】
順運動学計算手段21は、各関節軸6−1,6−2のエンコーダ8により計測された関節角の現在値qである関節角度ベクトルqがエンコーダ8から入力され、ロボットアーム10の関節角度ベクトルqから手先位置及び姿勢ベクトルrへの変換の幾何科学的計算を行う。
【0080】
近似逆運動学計算手段(23a,23b,23c)は、近似式uout=Jr(q)−1uinにより、逆運動学の近似計算を行う。ただし、Jr(q)はヤコビ行列、uinは近似逆運動学計算手段23a,23b,23cへの入力、uoutは近似逆運動学計算手段23a,23b,23cからの出力であり、入力uinを手先位置・姿勢誤差reとし、出力uoutを関節角度誤差qeとすれば、qe=Jr(q)−1reのように手先位置・姿勢誤差reから関節角度誤差qeへの変換式となる。この近似逆運動学計算手段23a,23b,23cによれば、近似逆運動学計算が容易に可能となる。
【0081】
近似逆運動学計算手段23aでは、ロボットアーム10において計測される関節角度ベクトルの現在値qと、目標出力生成手段101の一例としての目標軌道生成手段11より出力目標値113の一例として出力される手先位置及び姿勢目標ベクトルrdとの現在の手先位置及び姿勢ベクトルrとの手先位置・姿勢誤差reが入力されて、関節角度ベクトルの誤差qeが出力される。
【0082】
近似逆運動学計算手段23bは、ロボットアーム10において計測される関節角度ベクトルの現在値qと、位置誤差補償手段12から位置誤差修正出力ΔPreとが入力されて、関節誤差修正出力ΔPqeが出力される。
【0083】
近似逆運動学計算手段23cでは、ロボットアーム10において計測される関節角度ベクトルの現在値qと、目標軌道生成手段11より出力される手先位置及び姿勢目標ベクトルrdとの現在の手先位置及び姿勢ベクトルrとの誤差reが入力されて、関節角度ベクトルの誤差qeが出力される。
【0084】
目標軌道生成手段11は、目標とするロボットアーム10の動作を実現するための手先位置及び姿勢目標ベクトルrdが出力される。目標とするロボットアーム10の動作は、目的とする作業に応じて事前にそれぞれの時間(t=0、t=t1、t=t2、・・・)でのポイントごとの位置(rd0、rd1、rd2、・・・)と繰り返し動作するかどうかのフラグが記録されており、目標軌道生成手段11は、それぞれの時間(t=0、t=t1、t=t2、・・・)でのポイントごとの位置(rd0、rd1、rd2、・・・)の情報と手先位置及び姿勢ベクトルrとを基に多項式補間を使用し、各ポイント間の軌道を補完し、手先位置及び姿勢目標ベクトルrdを生成する。
【0085】
出力誤差計算部108は、手先位置及び姿勢目標ベクトルrdと順運動学計算手段21により計算される手先位置及び姿勢ベクトルrとが入力され、手先位置・姿勢誤差re=r−rdを計算し、出力誤差114の一例として手先位置・姿勢誤差reを出力する。
【0086】
出力誤差補償手段103の一例である位置誤差補償手段12は、出力誤差計算部108により出力される手先位置・姿勢誤差reが入力され、出力115の一例として位置誤差修正出力ΔPreが近似逆運動学計算手段23bに向けて出力される。
【0087】
目標内部状態決定手段105は、一例として、出力誤差計算部108と目標圧力差計算手段14と近似逆運動学計算手段23aとで構成される。目標圧力差計算手段14には、ロボットアーム10において計測される関節角度ベクトルの現在値qと関節角度ベクトルの誤差qeとに基づく目標関節角度ベクトルqdとしてqd=q+Jr(q)−1reが入力され、目標関節角度ベクトルqdより内部状態目標値116の一例としての目標圧力差(圧力差の目標値)ΔPd=[ΔP1d,ΔP2d]Tが算出され、目標内部状態誤差計算部109に向けて出力される。ただし、ΔP1d,ΔP2dはそれぞれ、弾性膨張収縮構造体1−1aと1−1bの、弾性膨張収縮構造体1−2aと1−2bの圧力差の目標値である。
【0088】
適応目標内部状態補正手段111は、一例として、出力誤差計算部108と適応目標圧力差補正手段25と近似逆運動学計算手段23cとで構成される。適応目標圧力差補正手段25には、ロボットアーム10において計測される関節角度ベクトルの現在値qと関節角度ベクトルの誤差qeとに基づく目標関節角度ベクトルqdとしてqd=q+Jr(q)−1reと、関節角度ベクトルqとが入力され、目標圧力差の調整補正値(内部状態目標補正値117の一例)ΔPda=[ΔP1da,ΔP2da]Tが適応目標圧力差補正手段25で算出され、算出された調整補正値ΔPdaが適応目標圧力差補正手段25でから内部状態誤差計算部109に向けて出力される。ただし、ΔP1da,ΔP2daはそれぞれ、弾性膨張収縮構造体1−1aと1−1bの、弾性膨張収縮構造体1−2aと1−2bの圧力差の目標値(目標圧力差)の調整補正値である。
【0089】
補正出力制御手段120は、目標軌道生成手段11から入力される動作開始の信号と目標軌道の繰り返し信号と、後述する衝突検知手段121から入力される衝突検知信号と、出力誤差計算部108から入力される出力誤差とに応じて、適応目標圧力差補正手段25のON若しくはOFFの指令(ONモード用の指令若しくはOFFモード用の指令)、又は、出力値のホールドの指令(ホールド(更新停止)モード用の指令)、又は、ローパスフィルタのON若しくはOFFの指令を適応目標圧力差補正手段25に出力する。ローパスフィルタは、適応目標圧力差補正手段25内に例えばソフトウェアとして構成される。ローパスフィルタは、適応目標圧力差補正手段25のOFFモードからONモードに切り替えるとき、又は、ホールド(更新停止)モードからONモードに切り替えるとき、適応目標圧力差補正手段25からの出力である目標圧力差が急変し、ロボットアーム10の動作が不安定になることを防ぐために使用する。上記モードの切替時に、適応目標圧力差補正手段25からの出力をローパスフィルタを経由させたのち出力させることで、目標圧力差を緩やかに変化させることができる。
【0090】
内部状態誤差計算部109は、適応目標圧力差補正手段25から出力される目標圧力差の調整補正値ΔPdaと、目標内部状態決定手段105から出力されるΔPdと、近似逆運動学計算手段23bから出力されるΔPqeとを加算し、加算された値から、圧力差計算手段13から出力されるΔPを減算して算出する圧力差誤差(圧力誤差値)ΔPeを圧力差誤差補償手段15に向けて出力する。
【0091】
内部状態誤差補正手段106の一例である圧力差誤差補償手段15は、内部状態誤差計算部109から圧力差誤差ΔPeが入力され、圧力差誤差修正出力uがロボットアーム10に向けて出力される。圧力差誤差修正出力uは、D/Aボードなどの入出力IF20を介して5ポート流量制御電磁弁18に電圧指令値として与えられ、各関節軸6−1,6−2が正逆回転駆動されてロボットアーム10が動作する。
【0092】
衝突検知手段121は、ロボットアーム10が外部の物体と衝突したことを検知し、衝突検知信号を補正出力制御手段120に出力する。衝突を検知する一例として、図5ではロボットアーム10の手先位置の誤差を用いている。これは手先位置の誤差を微分し、誤差の時間微分の値が、事前に決めた閾値よりも大きくなったときに、衝突が起こったと推定する方法である。衝突の検知方法は、他にもカメラを用いて検知する方法、又は、接触センサ又は力センサなどで検知する方法でもよい。
【0093】
以上のように構成される制御装置に関して、制御動作の原理について説明する。
【0094】
制御動作の基本は、位置誤差補償手段12による手先位置・姿勢誤差reのフィードバック制御(位置制御)である。位置誤差補償手段12として、例えば、PID補償器を使用すれば、手先位置・姿勢誤差reが0に収束するように制御が働き、目標とするロボットアーム10の動作が実現する。
【0095】
圧力差誤差補償手段15には圧力差誤差ΔPeが入力されるため、手先位置・姿勢誤差reが発生すると圧力差誤差補償手段15が動作し、手先位置・姿勢誤差reが0に収束するように圧力差の制御が働く。図3に示す弾性膨張収縮構造体1では内部圧力の変化が発生して初めて変位が発生するため、時間的には位置の変化(変位)よりも圧力変化の方が早く観測されることになる。したがって、図5に示す制御系のように位置制御を行う位置フィードバックループの内側に、圧力差の制御を行う内部圧力フィードバックループを構成することにより、応答性の悪さを補償し、位置制御性能の向上を実現可能である。
【0096】
次に、目標圧力差計算手段14について説明する。図3に示す1組の弾性膨張収縮構造体1,1の拮抗駆動による関節軸6−1,6−2の正逆回転駆動を行う場合、関節角度と1組の弾性膨張収縮構造体1の内部圧力差との関係は、例えば、図6のようになる。図6は全長250mm、内径10mmの弾性膨張収縮構造体(マッキベン型空気圧人工筋)を使用した場合の結果である。図6中に示したように、測定結果は、ほぼ直線で近似することができる。したがって、目標圧力差ΔPdを計算する式として、直線を表す1次式
【0097】
【数1】
を使うことができる。ただし、A、bは係数であり、図6の測定結果より求めることができる。したがって、目標圧力差計算手段14において、式(1)により目標関節角度ベクトルqdから目標圧力差ΔPdを計算し、内部状態誤差計算部109を介して圧力差誤差補償手段15に入力することにより、定常偏差の小さい高精度な位置制御が実現する。ここでは、関節角度と圧力差の関係を1次方程式で近似したが、これに限られるわけではなく、2次方程式など多次元の多項式でも近似可能である。また、上記弾性体アクチュエータ102の出力と上記弾性体アクチュエータ102の内部状態の関係(例えば、関節角度と圧力差の関係)をテーブルとして上記制御装置の記憶部(図示せず)に記憶させておき、記憶部に記憶したテーブルに基づき、上記弾性体アクチュエータ102の出力の目標値(例えば関節角度の目標値)から上記弾性体アクチュエータ102の内部状態の目標値(例えば圧力差の目標値)を内部状態目標値導出部(図示せず)で導出するという構成とすることもできる。
【0098】
目標圧力差計算手段14は、事前の実験にて関節角度と圧力差の関係を算出して、算出結果を上記したように記憶部(図示せず)に記憶している。しかし、ロボットアーム10の先端にかかる負荷による重力の影響又はその他の外乱、弾性体アクチュエータ102の経年変化による特性変化により、出力と内部状態の関係(例えば、関節角度と圧力差の関係)は変化する。この結果として起こる弾性体アクチュエータ102の出力誤差を補正するため、適応目標圧力差補正手段25は目標圧力差の調整補正値ΔPdaを出力する。
【0099】
適応目標圧力差補正手段25の一例を、以下の式(2)〜(3)に示す。適応目標圧力差補正手段25では、関節角度目標値qdと現在の関節角度qより関節誤差qeを算出し、関節誤差qeを用いて目標圧力差の調整補正値ΔPdaを算出することにより、適応的に目標圧力差を変化させる(言い換えれば、関節誤差qeが生じた場合に、その関節誤差qeを小さくするように目標圧力差を変化させる)ことができる。
【0100】
【数2】
【0101】
【数3】
ここで、KPとKIは事前の実験で決めたゲイン、qoは拮抗する2本の弾性体アクチュエータ102,102が中立であるとき(初期値)の関節角度である。式(3)は、式(1)の係数A及び係数bをそれぞれ補正するように設計している。式(3)の前半部
【0102】
【数4】
【0103】
は関節誤差qeにゲインを掛けたものを積分して適応オフセット値を求めているが、これは、式(1)の係数bの補正値として機能する。また、式(3)の後半部のうち
【0104】
【数5】
【0105】
は適応ゲイン値であり、係数Aの補正値として機能する。比例係数Aの誤差による影響は、拮抗する2本の弾性体アクチュエータ102,102の中立点から離れたところほど大きくなるため、中立点からの距離に応じて関節誤差qeに重みをかけ、その値を積分することで、係数Aの補正ができる。
【0106】
以上のように、式(3)を現在の関節誤差qeに応じて適応的に変化する(言い換えれば、現在の関節誤差qeを小さくするように変化する)ことで、式(1)の補正をすることが可能となり、関節誤差qeを減らす方向に働く。
【0107】
また、補正出力制御手段120から適応目標圧力差補正手段25にローパスフィルタがONの指令が入っている場合、適応目標圧力差補正手段25の出力は、目標圧力差の調整補正値ΔPdaをローパスフィルタを通した値を出力する。補正出力制御手段120から適応目標圧力差補正手段25にローパスフィルタがOFFの指令が入っている場合、適応目標圧力差補正手段25の出力は、ローパスフィルタを通さずに、目標圧力差の調整補正値ΔPdaをそのまま出力する。
【0108】
補正出力制御手段120は、
(i)目標圧力差の調整補正値ΔPdaを出力する指令、若しくは、出力しない指令、又は、
(ii)ローパスフィルタを通して出力する指令、又は、
(iii)ΔPdaの値をある値でホールドする指令を、
適応目標圧力差補正手段25に対して行う。具体的には以下の条件の少なくとも1つを用いて、目標圧力差の調整補正値ΔPdaを補正出力制御手段120が制御する。
【0109】
(1)ロボットアーム10の始動時には適応目標圧力差補正手段25は動作せず(使用せず)、始動時から一定時間経過した後から、適応目標圧力差補正手段25の動作を始める(使用し始める)。これは、ロボットアーム10の始動時には、正常な始動に必要な初期動作を行うケースがあり、この初期動作では、位置制御の精度よりも、例えばセンサの確認などが優先される。また、この初期動作が完了するまでは、ロボットアーム10の動作自体が不安定であることも考えられる。そのため、適応的に(誤差が小さくなるように)動かそうとすると、ロボットアーム10の安定性が損なわれる可能性がある。このため、始動しロボットアーム10の初期動作が完了するまでは、適応目標圧力差補正手段25を動作させない(言い換えれば、適応目標圧力差補正手段25のOFFモードを意味する)。
【0110】
(2)衝突検知手段121から衝突検知信号が入力されたときから一定時間の間、適応目標圧力差補正手段25の出力値をホールドして更新しない。外部の物体との衝突により、軌道に沿って動けなくなっているロボットアーム10に対して誤差を補正しようとすることにより、ロボットアーム10もしくは衝突した物体が破損する可能性があるため、衝突が検知されてから一定時間の間は適応目標圧力差補正手段25の出力を更新せず、出力値をホールドする。
【0111】
(3)目標軌道生成手段11から繰り返し軌道である信号(目標軌道の繰り返し信号)が来たときに適応目標圧力差補正手段25を動作させる(適応目標圧力差補正手段25を使用する)(言い換えれば、適応目標圧力差補正手段25のONモードを意味する)。これは、適応目標圧力差補正手段25の効果が最も優位に現れるのが繰り返し動作時であるため、繰り返し動作のときだけ適応目標圧力差補正手段25を使用するために適応目標圧力差補正手段25を動作させる。このため、例えば、適応目標圧力差補正手段25は、判断手段25aを備えて、目標軌道生成手段11から目標軌道の繰り返し信号を適応目標圧力差補正手段25で受け取り、弾性体アクチュエータ102の目標値を時系列に並べた弾性体アクチュエータ102の軌道が繰り返しであると判断手段25aで判断したとき(例えば、目標軌道生成手段11からの信号内に繰り返し動作するとのフラグが記録されていると判断手段25aで判断したとき)に、適応目標圧力差補正手段25を使用することを決定する。
【0112】
(4)目標軌道生成手段11から繰り返し軌道である信号(目標軌道の繰り返し信号)が来ていて、かつ、ロボットアーム10の手先位置誤差が閾値を下回ったとき、適応目標圧力差補正手段25の出力値をホールドして更新しない。これは、適応的に圧力差を補正しても(誤差が小さくなるように圧力差を補正しても)、これ以上は誤差が小さくならない(手先位置誤差が閾値を下回った)と補正出力制御手段120により判断した場合、適応目標圧力差補正手段25の更新を停止するために行う(言い換えれば、適応目標圧力差補正手段25のホールド(更新停止)モードを意味する)。
【0113】
(5)適応目標圧力差補正手段25の動作を開始するとき(OFFモードからONモードに切り替えるとき)、及び、更新を停止した状態から再び更新を開始するとき(ホールド(更新停止)モードからONモードに切り替えるとき)には、事前に決められた時間の間は、適応目標圧力差補正手段25からの出力を適応目標圧力差補正手段25のローパスフィルタを通してから出力する。これは、適応目標圧力差補正手段25の上記モードの切替時に目標圧力差が急変し、ロボットアーム10の動作が不安定になることを防ぐために行う。
【0114】
以上の原理に基づく制御プログラムの実際の動作ステップについて、図7のフローチャートに基づいて説明する。
【0115】
ステップS1では、エンコーダ8により計測された関節角度データ(関節変数ベクトル又は関節角度ベクトルq)が上記制御装置に取り込まれる。
【0116】
次いで、ステップS2では、ロボットアーム10の運動学計算に必要なヤコビ行列Jr等の計算が近似逆運動学計算手段(23a,23b,23c)により行われる。
【0117】
次いで、ステップS3では、ロボットアーム10からの関節角度データ(関節角度ベクトルq)から、ロボットアーム10の現在の手先位置及び姿勢ベクトルrが順運動学計算手段21により計算される(順運動学計算手段21での処理)。
【0118】
次いで、ステップS4では、目標軌道生成手段11内に予め記憶されていたロボットアーム10の動作プログラムに基づき、目標軌道生成手段11はロボットアーム10の手先位置及び姿勢目標ベクトルrdを計算する。
【0119】
次いで、ステップS5では、手先位置及び姿勢目標ベクトルrdと現在の手先位置及び姿勢ベクトルrの差である手先位置・姿勢誤差reが出力誤差計算部108により計算される。
【0120】
次いで、ステップS6では、手先位置・姿勢誤差reから位置誤差修正出力ΔPreが位置誤差補償手段12により計算される(位置誤差補償手段12での処理)。位置誤差補償手段12の具体例としてはPID補償器が考えられる。PID補償器の場合、ステップS6では、手先位置・姿勢誤差reに比例ゲインを乗算した値、手先位置・姿勢誤差reの微分値に微分ゲインを乗算した値、及び手先位置・姿勢誤差reの積分値に積分ゲインを乗算した値の3つの値の合計値が位置誤差修正出力ΔPreとなる。定数の対角行列である比例、微分、積分の3つのゲインを適切に調整することにより、位置誤差が0に収束するように制御が働く。
【0121】
次いで、ステップS7では、ステップS2で計算したヤコビ行列Jrの逆行列を乗算することにより、位置誤差修正出力ΔPreを手先位置の誤差に関する値から関節角度の誤差に関する値である関節誤差修正出力ΔPqeに近似逆運動学計算手段23bにより変換する(近似逆運動学計算手段23bでの処理)。
【0122】
次いで、ステップS8では、ヤコビ行列Jrの逆行列を乗算することにより、手先位置・姿勢誤差reを関節角度ベクトルの誤差qeに近似逆運動学計算手段23a、23cにより変換する(近似逆運動学計算手段23a、23cでの処理)。
【0123】
次いで、ステップS9では、目標圧力差計算手段14により、ステップS8で計算された関節角度ベクトルの誤差qeとエンコーダ8により計測された現在の関節角度qとを加算した値を目標関節角度ベクトルqdとし、目標圧力差ΔPdを算出する。
【0124】
次いで、ステップS10では、適応目標圧力差補正手段25により、ステップS8で計算された関節角度ベクトルの誤差qeとエンコーダ8により計測された現在の関節角度qとを加算した値を目標関節角度ベクトルqdとし、適応目標圧力差の調整補正値ΔPdaを算出する。
【0125】
次いで、ステップS11では、内部状態計測手段107の一例である圧力センサ9により計測された各アクチュエータ102の内部圧力値が上記制御装置に取り込まれ、拮抗駆動されるそれぞれ2本のアクチュエータ102,102の内部圧力間の現在の圧力差ΔPが圧力差計算手段13により計算される。
【0126】
次いで、ステップS12では、ステップS7で近似逆運動学計算手段23bにより計算された関節誤差修正出力ΔPqeとステップS9で目標圧力差計算手段14により算出された目標圧力差ΔPdとステップS10で適応目標圧力差補正手段25により算出された目標圧力差の調整補正値ΔPdaとを加算した値から、ステップS11で圧力差計算手段13により計算した現在の圧力差ΔPを減算して、圧力差誤差ΔPeを圧力差誤差補償手段15で計算する(圧力差誤差補償手段15での処理)。さらに、ステップS12では、圧力差誤差ΔPeより圧力差誤差修正出力が圧力差誤差補償手段15で計算される(圧力差誤差補償手段15での処理)。圧力差誤差補償手段15としては、例えば、PID補償器が考えられる。
【0127】
次いで、ステップS13では、圧力差誤差修正出力が、圧力差誤差補償手段15からD/Aボードなどの入出力IF20を通じ、電圧指令値として、それぞれの流量制御電磁弁18に与えられ、それぞれの流量制御電磁弁18がそれぞれのアクチュエータ102内の圧力を変化させることにより、ロボットアーム10のそれぞれの関節軸6−1,6−2の回転運動が発生する。
【0128】
以上のステップS1〜ステップS13が制御の計算ループとして繰り返し実行されることにより、ロボットアーム10の動作の制御が実現する。
【0129】
図9A及び図9Bは、図2に示すロボットアーム10について、適応目標内部状態補正手段111を用いないで図6に示す目標圧力差計算手段のみを行う従来の制御装置により手先位置の軌道追従制御を行った場合の結果、及び、図5に示す第1実施形態の制御装置により手先位置の軌道追従制御を行った場合の結果を示している。一例として、図2に示すロボットアーム10は、第1軸308、第2軸303とも自然長295mm、内径10mmの弾性膨張収縮構造体1を用いている。
【0130】
図9A及び図9Bの結果は、2自由度ロボットアームの手先位置の目標値と測定結果を示している。今回の実験では、目標値として手先位置がxy平面内で一辺の長さ0.2mの正方形を描く軌道を与えた。
【0131】
図9Aは従来の制御装置による制御結果である。従来の制御装置では事前計測によって定めた目標圧力差と角度の関係に対し、実際の圧力差と角度の関係がずれている場合、図9Aにあるように誤差は大きく、追従性は良くないことがわかる。
【0132】
一方、図9Bは、図5に示す第1実施形態の制御装置による制御結果である。適応目標内部状態補正手段111を付加した効果により、誤差は小さく、追従性に優れることがわかる。
【0133】
以上のように、上記第1実施形態の上記制御装置によれば、圧力差誤差補償手段15を配設して、上記弾性体アクチュエータ102の内部状態をフィードバックする内部圧力制御系を構成し、かつ、目標圧力差計算手段14と適応目標圧力差補正手段25とを配設して、上記弾性体アクチュエータ102の目標内部状態の一例である目標圧力差をフィードフォワードする制御系を構成することにより、事前に想定した環境以外でも、応答性が良く、定常偏差の少ない、高精度なロボットアーム10の制御が可能となる。
【0134】
(第2実施形態)
図8は、適応目標圧力差補正手段25の一例を示す図である。50はロボットアーム10の関節角度が追従すべき規範モデル、51a、51bは可変ゲインである。規範モデル50は、ロボットアーム10に望む応答性などから事前に決定する。規範モデル50は、伝達関数、又は、状態方程式の形で表現されるが、いずれも入力は関節角度目標値qdであり、出力は関節角度qのモデルである。関節角度目標値qdを入力としたときの規範モデル50の出力と現在の関節角度qとの差eqを適応目標圧力差補正手段25で算出し、差eqを用いて目標圧力差の調整補正値ΔPdaを適応目標圧力差補正手段25で算出することにより、適応的に目標圧力差を変化させる(誤差が小さくなるように目標圧力差を変化させる)ことができる。可変ゲイン51a、51bは式(4)〜式(5)により算出される。
【0135】
【数6】
ここで、axとaqとbxとbqは、それぞれ、事前の実験で決めた固定値である。また、xmは、規範モデル50の状態ベクトルを示す。式(4)と式(5)は、単純適応制御などで知られる規範モデル50に追従するためのフィードフォワード項の式であり、関節角度目標値qd及び規範モデル50の状態ベクトルxmのそれぞれに、関節角度の差eqにより変化するゲインをかけることで、現在の関節角度の差eqに適応的に変化する(差eqが小さくなるように変化する)ことが可能となる。規範モデル50は、制御対象(弾性体アクチュエータ102)の使用する周波数帯では、目標値にほぼ追従できるモデルを選択することが多いため、関節角度の差eqによって適応的に変化することは現在の関節誤差qeに応じて適応的に変化することと等しい。よって、式(4)、式(5)により、適応目標圧力差補正手段25は関節誤差qeを減らすように機能する。
【0136】
また、適応目標圧力差補正手段25の出力は、補正出力制御手段120からローパスフィルタがONの指令が入っている場合には、目標圧力差の調整補正値ΔPdaをローパスフィルタを通した値を出力する。
【0137】
その他の構成は図5に示した第1実施形態の制御装置と同様であり、説明は省略する。
【0138】
上記第2実施形態においても、第1実施形態の効果と同様な効果を得ることができる。
【0139】
(第3実施形態)
図12は、本発明の第3実施形態にかかる弾性体アクチュエータ102の制御装置のより具体的な構成を示す図であり、上記制御装置は、例えば、上記制御コンピュータ19内に備えられている。ただし、図12において、10は弾性体アクチュエータ102の制御装置の制御対象である図2に示すロボットアームである。
【0140】
目標軌道生成手段11は、目標出力生成手段101の一例としての機能し、目標とするロボットアーム10の動作を実現するための目標関節角度ベクトルqdが出力される。目標とするロボットアーム10の動作は、目的とする作業に応じて事前にそれぞれの時間(t=0、t=t1、t=t2、・・・)でのポイントごとの位置(qd0、qd1、qd2、・・・)と繰り返し動作するかどうかのフラグが記録されており、目標軌道生成手段11は、それぞれの時間(t=0、t=t1、t=t2、・・・)でのポイントごとの角度(qd0、qd1、qd2、・・・)の情報と関節角度ベクトルqとを基に多項式補間を使用し、各ポイント間の軌道を補完し、目標関節角度ベクトルqdを生成する。
【0141】
出力誤差計算部108は、関節角度目標ベクトルqdとロボットアーム10より出力される関節角度ベクトルqとが入力され、関節角度誤差qe=q−qdを計算し、出力誤差114の一例として関節角度誤差qeを出力する。
【0142】
出力誤差補償手段103の一例である角度誤差補償手段60は、出力誤差計算部108により出力される関節角度誤差qeが入力され、出力115の一例として角度誤差修正出力ΔPqeが内部状態誤差計算部109に向けて出力される。
【0143】
目標内部状態決定手段105の一例である目標圧力差計算手段14は、目標軌道生成手段11の出力である目標関節角度ベクトルqdが入力され、目標関節角度ベクトルqdより内部状態目標値116の一例としての目標圧力差(圧力差の目標値)ΔPd=[ΔP1d,ΔP2d]Tが算出され、目標内部状態誤差計算部109に向けて出力される。ただし、ΔP1d,ΔP2dはそれぞれ、弾性膨張収縮構造体1−1aと1−1bの、弾性膨張収縮構造体1−2aと1−2bの圧力差の目標値である。
【0144】
適応目標内部状態補正手段111の一例である適応目標圧力差補正手段25は、ロボットアーム10において計測される関節角度ベクトルqと目標軌道生成手段11の出力である目標関節角度ベクトルqdとが入力され、目標圧力差の調整補正値(内部状態目標補正値117の一例)ΔPda=[ΔP1da,ΔP2da]Tが適応目標圧力差補正手段25で算出され、算出された調整補正値ΔPdaが適応目標圧力差補正手段25でから内部状態誤差計算部109に向けて出力される。ただし、ΔP1da,ΔP2daはそれぞれ、弾性膨張収縮構造体1−1aと1−1bの、弾性膨張収縮構造体1−2aと1−2bの圧力差の目標値(目標圧力差)の調整補正値である。
【0145】
内部状態誤差計算部109は、適応目標圧力差補正手段25から出力される目標圧力差の調整補正値ΔPdaと、目標圧力差計算手段14から出力されるΔPdと、角度誤差補償手段60から出力されるΔPqeとを加算し、加算された値から、圧力差計算手段13から出力されるΔPを減算して算出する圧力差誤差(圧力誤差値)ΔPeを圧力差誤差補償手段15に向けて出力する。
【0146】
衝突検知手段121は、ロボットアーム10が外部の物体と衝突したことを検知し、衝突検知信号を補正出力制御手段120に出力する。衝突を検知する一例として、図12ではロボットアーム10の関節角度誤差を用いている。これは関節角度誤差を微分し、誤差の時間微分の値が、事前に決めた閾値よりも大きくなったときに、衝突が起こったと推定する方法である。衝突の検知方法は、他にもカメラを用いて検知する方法、又は、接触センサ又は力センサなどで検知する方法でもよい。
【0147】
その他の構成は図5に示した第1実施形態の制御装置と同様であり、説明は省略する。
【0148】
上記第3実施形態においても、第1実施形態の効果と同様な効果を得ることができる。
【0149】
また、上記各実施形態では、出力を関節角度としたが、これに限られるわけではなく、出力計測手段104を変位速度計測手段の一例としての変位速度センサとし、出力値を変位速度として変位速度制御を行う場合でも同様である。
【0150】
また、上記各実施形態では、出力を関節角度としたが、これに限られるわけではなく、出力計測手段104を力計測手段の一例としての力センサとし、出力値を力として力制御を行う場合でも同様である。
【0151】
また、上記各実施形態では、内部状態計測手段107の一例としてセンサを設けるとしたが、オブザーバ(観測器)を設け、オブザーバにより、内部状態を推定し、内部状態の推定値を使用する場合でも同様の効果を発揮する。
【0152】
また、上記各実施形態では弾性体アクチュエータ102として、流体圧により駆動される流体圧駆動アクチュエータを例に説明を行ったが、これに限られるわけではなく、導電性ポリマー、誘電体ポリマー、又は、各種ゲル等の弾性体を電気的刺激により駆動するアクチュエータの場合でも、内部状態として電界又は電荷量等を採用することにより同様の効果を発揮する。
【0153】
図11A〜図11Cは、弾性体アクチュエータ102の一例である導電性ポリマーアクチュエータの構造と動作説明図である。このアクチュエータは、導電性高分子膜であるポリアニリン膜体80a、80bで固体電解質成形体81を挟み込む構造となっている(図11A参照)。スイッチ83をオンすることで、電源82において設定された電位差がポリアニリン膜体80a、80b間に与えられ、一方のポリアニリン膜体80bには陰イオンが挿入されて伸長し、もう一方のポリアニリン膜体80aからは陰イオンが離脱して縮小し、結果として、たわみ変形が発生するようになる(図11B参照)。この場合、一方のポリアニリン膜体80bは、もう一方のポリアニリン膜体80aに対して電解質形成体81を介して接続された電極として作用していることになる。電位差が逆の場合には、図11Cに示すようにポリアニリン膜体80a、80bが逆方向に変形する。
【0154】
図10は、ロボットアーム10Aの弾性体アクチュエータとして、導電性ポリマーアクチュエータを使用した際の弾性体アクチュエータの制御装置の構成を示す図である。図5の構成図と異なるのは、圧力センサ9と適応目標圧力差補正手段25と圧力差計算手段13と目標圧力差計算手段14と圧力差誤差補償手段15とが、それぞれ、電流計72と適応目標電荷量補正手段70と電荷量計算手段73と目標電荷量計算手段71と電荷量誤差補償手段74とに置き換わった点である。
【0155】
目標電荷量計算手段71は目標内部状態決定手段105の一例であり、目標角度ベクトルqdから目標電荷量cdを計算して、内部状態誤差計算部109に向けて出力する。
【0156】
適応目標電荷量補正手段70は、適応目標内部状態補正手段111の一例である。適応目標電荷量補正手段70は、導電性ポリマアクチュエータの出力誤差を補正するために目標電荷量の補正値cdaを内部状態誤差計算部109に向けて出力する。
【0157】
電流計72は、内部状態計測手段107の一例であり、各導電性ポリマーアクチュエータに流れる電流iを計測する。電流計72で計測される電流iが電荷量計算手段73において積分されることにより、現在の電荷量cが計算でき、計算された現在の電荷量cを内部状態誤差計算部109に向けて出力する。
【0158】
位置誤差補償手段12は、出力誤差計算部108から出力される手先位置・姿勢誤差reが入力され、位置誤差修正出力Δcreが近似逆運動学計算手段23bに向けて出力される。
【0159】
近似逆運動学23bは、ロボットアーム10において計測される関節角度ベクトルの現在値qと、位置誤差補償手段12から位置誤差修正出力Δcreとが入力されて、関節誤差修正出力Δcqeが内部状態誤差計算部109に向けて出力される。内部状態誤差計算部109では、関節誤差修正出力Δcqeと目標電荷量cdと目標電荷量の補正値cdaとを加算した値から、電荷量計算手段73で求められた現在の電荷量cを減算した値(電荷量誤差ce)が計算され、電荷量誤差補償手段74に出力される。
【0160】
電荷量誤差補償手段74は、内部状態誤差計算部109から電荷量誤差ceが入力され、電荷量の誤差を補正するように、電荷量誤差修正出力uがロボットアーム10に向けて出力される。
【0161】
以上のように構成することで、導電性ポリマーアクチュエータでも、本発明の実施は可能である。
【0162】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0163】
また、適応的に制御することで、一般的に、そうでない(適応的に制御しない)場合と比べ、安定性が損なわれる場合がある。しかしながら、上記第1実施形態の上記制御装置によれば、基本となる目標圧力差ΔPdは目標圧力差計算手段14を含む目標内部状態決定手段105で計算を行い、それによって修正できない誤差を、適応目標圧力差補正手段25を含む適応目標内部状態補正手段111によって補っている。そのため、目標圧力差計算手段14が存在しない場合と比べ、適応目標圧力差補正手段25内の固定値(axとaqとbxとbq)を小さくすることができ、安定性を損なわず、かつ、適応的に目標圧力差を補正できる(誤差が小さくなるように目標圧力差を補正できる)。さらに、補正出力制御手段120により、適応目標圧力差補正手段25の機能が不要なときには、適応目標圧力差補正手段25の機能を停止することもできるため、安定性を損なわない効果を発揮できる。
【0164】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明の弾性体アクチュエータの制御装置及び制御方法、並びに、制御プログラムは、弾性体アクチュエータにより動作するロボットアームの手先位置の軌道制御等の位置制御を行う制御装置及び制御方法、並びに、制御プログラムとして有用である。また、ロボットアームに限らず、生産設備等における弾性体アクチュエータによる回転機構の制御装置及び制御方法、並びに、制御プログラム、又は、リニアスライダ又はプレス装置等の弾性体アクチュエータによる直動機構の制御装置及び制御方法、並びに、制御プログラムとしても適用が可能である。
【0166】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形又は修正は明白である。そのような変形又は修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体圧駆動アクチュエータ等、弾性体の変形により駆動される弾性体アクチュエータの動作を制御する弾性体アクチュエータの制御装置及び制御方法、並びに、制御プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ペットロボットなどの家庭用ロボットの開発が盛んに行われており、将来は家事支援ロボット等、より実用的な家庭用ロボットが実用化されるものと期待されている。家庭用ロボットは、家庭内に入り、人間と共生する必要があるため、従来の産業用ロボットなどとは必要とされる仕様が異なる。
【0003】
産業用ロボットでは、電気モータ又は減速器が用いられ、高ゲインのフィードバック制御により、繰り返し精度0.1mm等といった高い手先位置精度が実現されている。しかしながら、このような電気モータにより駆動される機構は、剛性が高く、柔らかさに欠ける場合が多く、安全性という面で問題が多い。
【0004】
これに対し、家庭用ロボットでは、繰り返し精度0.1mm等といった高い精度は必ずしも必要とせず、人間との接触時に危害を与えないなど安全性が重視される。したがって、従来の産業用ロボットのように電気モータによる駆動される機構は、家庭用ロボットなど安全性が重視される分野に適しているとは言えず、柔軟で安全なロボットアームが必要とされている。
【0005】
こうした課題に対し、例えば、マッキベン型の空気圧アクチュエータを利用したロボットアームが提案されている。マッキベン型の空気圧アクチュエータは、ゴム材料で構成された管状弾性体の外表面に繊維コードで構成された拘束手段が配設され、管状弾性体の両端部を封止部材で気密封止する構造となっている。流体注入出手段を通じて空気等の圧縮性流体により内圧を管状弾性体の内部空間に与えると、管状弾性体が主に半径方向に膨張しようとするが、拘束手段の作用により、管状弾性体の中心軸方向の運動に変換され、全長が収縮する。このマッキベン型のアクチュエータは主に弾性体で構成されるため、柔軟性があり、安全で軽量なアクチュエータであるという特徴を有する。
【0006】
しかしながら、マッキベン型のアクチュエータ等、空気等の流体圧によって動作する流体圧駆動アクチュエータでは、流体の圧縮性による弾性的性質又は流路抵抗等の影響により応答性が悪い。このため、従来より存在する一般的なフィードバック制御では所望の精度が達成できない等、弾性体アクチュエータは制御が難しいという課題をかかえている。
【0007】
こうした課題に対し、従来技術としては、内部状態誤差補償手段を配設して、上記弾性体アクチュエータの内部状態をフィードバックする制御系を構成し、そして目標内部状態決定手段を配設して、目標内部状態をフィードフォワードする制御系を構成し、応答性が良く、定常偏差の少ない、高速・高精度な制御ができる制御装置を開示している(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−95989号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記目標内部状態決定手段は、事前に実験を行い出力と内部状態の関係を計測した結果を、近似多項式等で表現するため、事前に想定した変動パラメータ以外の変化に対して、目標内部状態を変更することはできない。このため、家庭用ロボットのように、事前に全ての環境を想定することが困難な状況では、出力と内部状態の関係が事前に想定した環境と異なり、精度が低下するという課題があった。
【0010】
本発明の目的は、上記従来の課題を解決し、弾性体アクチュエータで駆動されるロボットアーム等の可動機構を事前に想定した環境以外でも、位置又は力を精度良く制御できる、弾性体アクチュエータの制御装置及び制御方法、並びに、制御プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記従来の課題を解決するために、本発明は以下のように構成する。
【0012】
本発明の第1態様によれば、弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段とを備え、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御装置であって、
上記適応目標内部状態補正手段は、上記出力の目標値から出力値を減じた値にゲインを乗じた値を積分した適応オフセット値と、上記出力の目標値から初期値を減じた値に、上記出力の目標値から出力値を減じた値を乗じた値にゲインを乗じた値を積分した適応ゲイン値を算出し、上記適応ゲイン値に上記出力の目標値を乗じた値と、上記適応オフセット値とを加算した値を上記内部状態の目標補正値として決定する弾性体アクチュエータの制御装置を提供する。
【0013】
本発明の第3態様によれば、弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段とを備え、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御装置であって、
上記適応目標内部状態補正手段は、規範モデルを備え、上記出力の目標値と上記規範モデルの出力と上記弾性体アクチュエータの出力との間で誤差が生じた場合にその誤差を小さくするゲインを上記出力の目標値と上記規範モデルの状態変数に乗じた値を加算し、上記内部状態の目標補正値として決定する弾性体アクチュエータの制御装置を提供する。
【0014】
本発明の第4態様によれば、弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段と、
上記適応目標内部状態補正手段からの出力をローパスフィルタを通す状態又は通さない状態との間での切り替えを行う補正出力制御手段とを備えて、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御装置を提供する。
【0015】
このような構成により、事前に想定した環境以外でも、位置又は力の精度良く制御できる弾性体アクチュエータの制御が実現できる。
【0016】
本発明の第5態様によれば、弾性体アクチュエータの内部状態を内部状態計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力を出力計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を出力誤差補償手段で補償し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を目標内部状態決定手段で決定し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を適応目標内部状態補正手段で決定し、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を内部状態誤差補償手段で補償し、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御方法であって、
上記内部状態の上記目標補正値を上記適応目標内部状態補正手段で決定するとき、上記出力の目標値から出力値を減じた値にゲインを乗じた値を積分した適応オフセット値と、上記出力の目標値から初期値を減じた値に、上記出力の目標値から出力値を減じた値を乗じた値にゲインを乗じた値を積分した適応ゲイン値を算出し、上記適応ゲイン値に上記出力の目標値を乗じた値と、上記適応オフセット値とを加算した値を上記内部状態の目標補正値として決定する、弾性体アクチュエータの制御方法を提供する。
【0017】
本発明の第6態様によれば、弾性体アクチュエータの内部状態を内部状態計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力を出力計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を出力誤差補償手段で補償し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を目標内部状態決定手段で決定し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を適応目標内部状態補正手段で決定し、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を内部状態誤差補償手段で補償し、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御方法であって、
上記内部状態の上記目標補正値を上記適応目標内部状態補正手段で決定するとき、上記適応目標内部状態補正手段に備えられた規範モデルを使用し、上記出力の目標値と上記規範モデルの出力と上記弾性体アクチュエータの出力との間で誤差が生じた場合にその誤差を小さくするゲインを上記出力の目標値と上記規範モデルの状態変数に乗じた値を加算し、上記内部状態の目標補正値として決定する、弾性体アクチュエータの制御方法を提供する。
【0018】
本発明の第7態様によれば、弾性体アクチュエータの内部状態を内部状態計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力を出力計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を出力誤差補償手段で補償し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を目標内部状態決定手段で決定し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を適応目標内部状態補正手段で決定し、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を内部状態誤差補償手段で補償し、
上記適応目標内部状態補正手段からの出力をローパスフィルタを通す状態又は通さない状態との間での切り替えを補正出力制御手段で行い、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する、弾性体アクチュエータの制御方法を提供する。
【0019】
このような構成により、事前に想定した環境以外でも、位置又は力の精度良く制御できる弾性体アクチュエータの制御が実現できる。
【0020】
本発明の第8態様によれば、弾性体アクチュエータの制御プログラムであって、
コンピュータを、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と、上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値と、が入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段として機能させて、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御するための弾性体アクチュエータの制御プログラムであって、
上記適応目標内部状態補正手段は、上記出力の目標値から出力値を減じた値にゲインを乗じた値を積分した適応オフセット値と、上記出力の目標値から初期値を減じた値に、上記出力の目標値から出力値を減じた値を乗じた値にゲインを乗じた値を積分した適応ゲイン値を算出し、上記適応ゲイン値に上記出力の目標値を乗じた値と、上記適応オフセット値とを加算した値を上記内部状態の目標補正値として決定する、弾性体アクチュエータの制御プログラムを提供する。
【0021】
本発明の第9態様によれば、弾性体アクチュエータの制御プログラムであって、
コンピュータを、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と、上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値と、が入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段として機能させて、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御プログラムであって、
上記適応目標内部状態補正手段は、規範モデルを備え、上記出力の目標値と上記規範モデルの出力と上記弾性体アクチュエータの出力との間で誤差が生じた場合にその誤差を小さくするゲインを上記出力の目標値と上記規範モデルの状態変数に乗じた値を加算し、上記内部状態の目標補正値として決定する、弾性体アクチュエータの制御プログラムを提供する。
【0022】
本発明の第10態様によれば、弾性体アクチュエータの制御プログラムであって、
コンピュータを、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と、上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値と、が入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段と、
上記適応目標内部状態補正手段からの出力をローパスフィルタを通す状態又は通さない状態との間での切り替えを行う補正出力制御手段として機能させて、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する、弾性体アクチュエータの制御プログラムを提供する。
【0023】
このような構成により、事前に想定した環境以外でも、位置又は力の精度良く制御できる弾性体アクチュエータの制御が実現できる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の弾性体アクチュエータの制御装置及び制御方法、並びに、制御プログラムによれば、内部状態誤差補償手段を配設して、上記弾性体アクチュエータの内部状態をフィードバックする制御系を構成し、かつ、目標内部状態決定手段及び適応目標内部状態補正手段を配設して、適応的に補正した目標内部状態をフィードフォワードする制御系を構成することにより、応答性が良く、定常偏差の少ない、高速・高精度な制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
本発明のこれらと他の目的と特徴は、添付された図面についての好ましい実施形態に関連した次の記述から明らかになる。この図面においては、
【図1】図1は、本発明の第1実施形態における弾性体アクチュエータの制御装置の概念を示すブロック図であり、
【図2】図2は、本発明の上記第1実施形態における上記弾性体アクチュエータの制御装置の制御対象であるロボットアームの構造を示す図であり、
【図3】図3は、本発明の上記第1実施形態における上記弾性体アクチュエータの制御装置の制御対象であるロボットアームを駆動する弾性膨張収縮構造体の構造及び動作を示す図であり、
【図4】図4は、本発明の上記第1実施形態における上記弾性体アクチュエータの制御装置の制御対象であるロボットアームを圧縮性流体である空気により駆動するための空気圧供給系の動作を示す図であり、
【図5】図5は、本発明の上記第1実施形態における上記弾性体アクチュエータ制御装置の制御ブロック図であり、
【図6】図6は、本発明の上記第1実施形態における目標圧力差計算の構造を示す図であり、
【図7】図7は、本発明の上記第1実施形態における上記弾性体アクチュエータの制御装置の制御プログラムの実際の動作ステップのフローチャートであり、
【図8】図8は、本発明の第2実施形態における弾性体アクチュエータの制御装置の適応目標圧力差補正手段の構造を示す図であり、
【図9A】図9Aは、図2に示すロボットアームについて、適応目標内部状態補正手段を用いないで図6に示す目標圧力差計算手段のみを行う従来の制御装置により手先位置の軌道追従制御を行った場合の結果を示す図であり、
【図9B】図9Bは、図5に示す本発明の上記第1実施形態における弾性体アクチュエータの制御装置により手先位置の軌道追従制御を行った場合の結果を示す図であり、
【図10】図10は、本発明の上記第1実施形態における弾性体アクチュエータ制御装置の一つである導電性ポリマーアクチュエータを用いた場合の制御ブロック図であり、
【図11A】図11Aは、本発明の上記第1実施形態における上記弾性体アクチュエータの制御装置の制御対象であるロボットアームを駆動する導電性ポリマーアクチュエータの構造及び動作を示す図であり、
【図11B】図11Bは、本発明の上記第1実施形態における上記弾性体アクチュエータの制御装置の制御対象であるロボットアームを駆動する上記導電性ポリマーアクチュエータの構造及び動作を示す図であり、
【図11C】図11Cは、本発明の上記第1実施形態における上記弾性体アクチュエータの制御装置の制御対象であるロボットアームを駆動する上記導電性ポリマーアクチュエータの構造及び動作を示す図であり、
【図12】図12は、本発明の第3実施形態における上記弾性体アクチュエータ制御装置の制御ブロック図であり、
【図13】図13は、本発明の上記第1実施形態における上記弾性体アクチュエータの制御装置に基づく制御プログラムの動作ステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0027】
本発明にかかる実施の形態を説明する前に、本発明の種々の態様について、まず、説明する。
【0028】
本発明の第1態様によれば、弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段とを備え、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御装置であって、
上記適応目標内部状態補正手段は、上記出力の目標値から出力値を減じた値にゲインを乗じた値を積分した適応オフセット値と、上記出力の目標値から初期値を減じた値に、上記出力の目標値から出力値を減じた値を乗じた値にゲインを乗じた値を積分した適応ゲイン値を算出し、上記適応ゲイン値に上記出力の目標値を乗じた値と、上記適応オフセット値とを加算した値を上記内部状態の目標補正値として決定する弾性体アクチュエータの制御装置を提供する。
【0029】
本発明の第2態様によれば、上記目標内部状態決定手段は、さらに上記弾性体アクチュエータの出力の計測値を取得し、上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する、第1の態様に記載の弾性体アクチュエータの制御装置を提供する。
【0030】
本発明の第3態様によれば、弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段とを備え、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御装置であって、
上記適応目標内部状態補正手段は、規範モデルを備え、上記出力の目標値と上記規範モデルの出力と上記弾性体アクチュエータの出力との間で誤差が生じた場合にその誤差を小さくするゲインを上記出力の目標値と上記規範モデルの状態変数に乗じた値を加算し、上記内部状態の目標補正値として決定する弾性体アクチュエータの制御装置を提供する。
【0031】
本発明の第4態様によれば、弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段と、
上記適応目標内部状態補正手段からの出力をローパスフィルタを通す状態又は通さない状態との間での切り替えを行う補正出力制御手段とを備えて、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御装置を提供する。
【0032】
本発明の第5態様によれば、弾性体アクチュエータの内部状態を内部状態計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力を出力計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を出力誤差補償手段で補償し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を目標内部状態決定手段で決定し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を適応目標内部状態補正手段で決定し、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を内部状態誤差補償手段で補償し、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御方法であって、
上記内部状態の上記目標補正値を上記適応目標内部状態補正手段で決定するとき、上記出力の目標値から出力値を減じた値にゲインを乗じた値を積分した適応オフセット値と、上記出力の目標値から初期値を減じた値に、上記出力の目標値から出力値を減じた値を乗じた値にゲインを乗じた値を積分した適応ゲイン値を算出し、上記適応ゲイン値に上記出力の目標値を乗じた値と、上記適応オフセット値とを加算した値を上記内部状態の目標補正値として決定する、弾性体アクチュエータの制御方法を提供する。
【0033】
本発明の第6態様によれば、弾性体アクチュエータの内部状態を内部状態計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力を出力計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を出力誤差補償手段で補償し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を目標内部状態決定手段で決定し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を適応目標内部状態補正手段で決定し、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を内部状態誤差補償手段で補償し、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御方法であって、
上記内部状態の上記目標補正値を上記適応目標内部状態補正手段で決定するとき、上記適応目標内部状態補正手段に備えられた規範モデルを使用し、上記出力の目標値と上記規範モデルの出力と上記弾性体アクチュエータの出力との間で誤差が生じた場合にその誤差を小さくするゲインを上記出力の目標値と上記規範モデルの状態変数に乗じた値を加算し、上記内部状態の目標補正値として決定する、弾性体アクチュエータの制御方法を提供する。
【0034】
本発明の第7態様によれば、弾性体アクチュエータの内部状態を内部状態計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力を出力計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を出力誤差補償手段で補償し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を目標内部状態決定手段で決定し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を適応目標内部状態補正手段で決定し、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を内部状態誤差補償手段で補償し、
上記適応目標内部状態補正手段からの出力をローパスフィルタを通す状態又は通さない状態との間での切り替えを補正出力制御手段で行い、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する、弾性体アクチュエータの制御方法を提供する。
【0035】
本発明の第8態様によれば、弾性体アクチュエータの制御プログラムであって、
コンピュータを、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と、上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値と、が入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段として機能させて、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御するための弾性体アクチュエータの制御プログラムであって、
上記適応目標内部状態補正手段は、上記出力の目標値から出力値を減じた値にゲインを乗じた値を積分した適応オフセット値と、上記出力の目標値から初期値を減じた値に、上記出力の目標値から出力値を減じた値を乗じた値にゲインを乗じた値を積分した適応ゲイン値を算出し、上記適応ゲイン値に上記出力の目標値を乗じた値と、上記適応オフセット値とを加算した値を上記内部状態の目標補正値として決定する、弾性体アクチュエータの制御プログラムを提供する。
【0036】
本発明の第9態様によれば、弾性体アクチュエータの制御プログラムであって、
コンピュータを、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と、上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値と、が入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段として機能させて、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御プログラムであって、
上記適応目標内部状態補正手段は、規範モデルを備え、上記出力の目標値と上記規範モデルの出力と上記弾性体アクチュエータの出力との間で誤差が生じた場合にその誤差を小さくするゲインを上記出力の目標値と上記規範モデルの状態変数に乗じた値を加算し、上記内部状態の目標補正値として決定する、弾性体アクチュエータの制御プログラムを提供する。
【0037】
本発明の第10態様によれば、弾性体アクチュエータの制御プログラムであって、
コンピュータを、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と、上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値と、が入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段と、
上記適応目標内部状態補正手段からの出力をローパスフィルタを通す状態又は通さない状態との間での切り替えを行う補正出力制御手段として機能させて、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する、弾性体アクチュエータの制御プログラムを提供する。
【0038】
以下に、本発明にかかる実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0039】
(第1実施形態)
図1は本発明の第1実施形態にかかる弾性体アクチュエータの制御装置の概念を示すブロック図である。図1において、弾性体アクチュエータ102は、流体圧により駆動される流体圧駆動アクチュエータである。
【0040】
弾性体アクチュエータ102の制御装置は、目標出力生成手段101と、出力計測手段104と、目標内部状態決定手段105と、出力誤差補償手段103と、適応目標内部状態補正手段111と、内部状態計測手段107と、内部状態誤差補償手段106と、出力誤差計算部108とを備えて構成している。
【0041】
目標出力生成手段101は、各弾性体アクチュエータ102の出力の目標値113を生成する。
【0042】
出力計測手段104は、各弾性体アクチュエータ102に接続され、各弾性体アクチュエータ102の出力を計測し、計測値112を、目標内部状態決定手段105と、出力誤差計算部108を介して出力誤差補償手段103と、適応目標内部状態補正手段111とにそれぞれ入力する。
【0043】
出力誤差計算部108は、目標出力生成手段101からの出力目標値113と出力計測手段104からの出力(計算値112)とから出力誤差114を計算し、計算結果を出力誤差補償手段103に出力する。
【0044】
出力誤差補償手段103は、出力誤差計算部108から出力誤差補償手段103に入力された出力誤差114を小さくするように補正し、出力計測手段104により計測される計測値112を、目標出力生成手段101からの出力目標値113に追従させるように制御を行う。
【0045】
目標内部状態決定手段105は、目標出力生成手段101の出力目標値113と出力計測手段104からの計測値112とが入力され、出力目標値113及び計測値112により、各弾性体アクチュエータ102の内部状態目標値116を決定する。
【0046】
適応目標内部状態補正手段111は、目標出力生成手段101の出力目標値113及び出力計測手段104からの計測値112が入力され、出力目標値113及び計測値112に基づいて適応アルゴリズムを用いた信号処理を行い、各弾性体アクチュエータ102の内部状態目標補正値117を決定する。より具体的には、各弾性体アクチュエータ102の出力の目標値及び各弾性体アクチュエータ102の出力の計測値より、弾性体アクチュエータ102の内部状態と弾性体アクチュエータ102の出力の関係との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように信号合成操作を施すことにより得られる信号を、内部状態の目標補正値117として決定する。
【0047】
加算部の一例としての内部状態誤差計算部109は、出力誤差補償手段103からの出力115と、目標内部状態決定手段105からの出力(内部状態目標値)116と、適応目標内部状態補正手段111からの出力(内部状態目標補正値)117と、内部状態計測手段107からの出力(内部状態計測値)118とから、内部状態誤差を計算し、内部状態誤差補償手段106に出力する。
【0048】
内部状態誤差補償手段106は、出力誤差補償手段103からの出力、及び目標内部状態決定手段105からの出力、及び、適応目標内部状態補正手段111からの出力、及び内部状態誤差計算部109からの出力が入力されることによって、内部状態誤差を補償するように、すなわち、に基づいて各弾性体アクチュエータ102の内部状態計測値を目標値に追従させるように制御を行う。
【0049】
内部状態計測手段107は、各弾性体アクチュエータ102に接続され、各弾性体アクチュエータ102の後述する各弾性膨張収縮構造体1の内部圧力である内部状態計測値118を測定して、内部状態誤差計算部109に入力する。
【0050】
以上の原理に基づく制御プログラムの実際の動作ステップについて、図13のフローチャートに基づいて説明する。
【0051】
ステップS101では、出力計測手段104により計測された、弾性体アクチュエータ102の出力の計測値が上記制御装置に取り込まれる。
【0052】
次いで、ステップS102では、目標出力生成手段101内に予め記憶されていた弾性体アクチュエータ102の動作プログラムに基づき、目標出力生成手段101は弾性体アクチュエータ102の出力目標値を計算する。
【0053】
次いで、ステップS103では、目標出力生成手段101で計算された出力目標値と、出力計測手段104により計測された現在の出力の計測値との差である出力誤差が出力誤差計算部108により計算される。
【0054】
次いで、ステップS104では、出力誤差計算部108により計算された出力誤差から出力誤差修正出力が出力誤差補償手段103により計算される。
【0055】
次いで、ステップS105では、目標出力生成手段101で計算された出力目標値と、出力計測手段104により計測された現在の出力の計測値とに基づき、目標内部状態決定手段105が内部状態目標値を算出する。
【0056】
次いで、ステップS106では、目標出力生成手段101で計算された出力目標値と、出力計測手段104により計測された現在の出力の計測値とに基づき、適応目標内部状態補正手段111が適応目標内部状態補正値を算出する。
【0057】
次いで、ステップS107では、内部状態計測手段107により計測された、弾性体アクチュエータ102の内部状態の計測値が上記制御装置に取り込まれる。
【0058】
次いで、ステップS108では、ステップS104で出力誤差補償手段103により計算された出力誤差修正出力とステップS105で目標内部状態決定手段105により算出された内部状態目標値とステップS106で適応目標内部状態補正手段111により算出された目適応目標内部状態補正値とを加算した値から、ステップS107で計測された内部状態の計測値を減算して、内部状態誤差を内部状態誤差計算部109で計算する。
【0059】
次いで、ステップS109では、内部状態誤差計算部109で計算された内部状態誤差を基に、内部状態誤差補償手段106により内部状態誤差修正出力が計算される。
【0060】
次いで、ステップS110では、内部状態誤差補償手段106で計算された内部状態誤差修正出力が、内部状態誤差補償手段106から弾性体アクチュエータ102に与えられ、弾性体アクチュエータ102が駆動する。
【0061】
以上のステップS101〜ステップS110が制御の計算ループとして繰り返し実行されることにより、弾性体アクチュエータ102の制御が実現する。
【0062】
次に、第1実施形態の弾性体アクチュエータ102の制御装置の具体的な例について、制御対象としてロボットアーム10を例に取り説明を行う。
【0063】
図2は、本発明の第1実施形態にかかる弾性体アクチュエータ102の制御装置の制御対象となるロボットアーム10の構成を示す図である。ロボットアーム10は、2自由度のロボットアームであって、直交するx軸とy軸とを含むxy平面内で正逆回転する第1関節軸6−1と、同じくxy平面内で正逆回転する第2関節軸6−2とを備えて構成されている。
【0064】
図2において、1−1a、1−1b、1−2a、1−2b(これらは個別の弾性膨張収縮構造体に対する参照符号であり、代表的に弾性膨張収縮構造体を指し示すときには参照符号1で示す。)は弾性膨張収縮構造体である。弾性膨張収縮構造体1は、図3に示すように、ゴム材料で構成されて駆動部として機能する管状の中空弾性体2の外表面に、材料的には伸びにくい樹脂又は金属の繊維コードで網目状に編んだ変形方向規制部材3が配設される。変形方向規制部材3は、管状弾性体2の膨張による半径方向の変形が軸方向の長さの収縮に変換される一方、管状弾性体2の収縮による半径方向の変形が軸方向の長さの膨張に変換されるように構成される。管状弾性体2の両端部は、封止部材4でそれぞれ気密封止する。封止部材4に備えられた管状の流体通過部材5は、内部に圧縮性流体が通過する流体の流路を有し、中空弾性体2の中空内部に対して流体の注入あるいは注出が可能となる。流体通過部材5を通じて空気等の圧縮性流体が中空の管状弾性体2に供給される。
【0065】
供給された圧縮性流体により内圧を管状弾性体2の内部空間に与えると、管状弾性体2が主に半径方向に膨張しようとする。しかしながら変形方向規制部材3の作用により、管状弾性体2の中心軸方向の運動に変換され、全長が収縮するため、直動駆動の弾性体アクチュエータ102として利用可能である。
【0066】
ロボットアーム10では、1組の弾性膨張収縮構造体(1,1)を関節軸6−1又は6−2を支点に対向するように配設する。1組の弾性膨張収縮構造体(1,1)のうちのどちらか一方の弾性膨張収縮構造体1が収縮し、他方の弾性膨張収縮構造体1が伸張する。そして支点を介して力が作用して軸が回転する拮抗型駆動構造とすることにより、関節軸6−1又は6−2での正逆回転運動を実現することができる。具体的には、弾性膨張収縮構造体1−1aと弾性膨張収縮構造体1−1bとの拮抗駆動により第1関節軸6−1は、正逆回転駆動する。弾性膨張収縮構造体1−2aと弾性膨張収縮構造体1−2bとの拮抗駆動により第2関節軸6−2は、正逆回転駆動する。
【0067】
支持軸(第2軸)303の上端の両側には、第1関節軸6−1と同心に2つの円形支持体302,302が回転自在に支持されている。支持軸303の下端の固定床301側には、支持軸303の長手方向と直交して支持体307,307が固定されている。2つの円形支持体302,302と支持体307,307との間には、弾性膨張収縮構造体1−1a及び1−1bが連結されている。よって、弾性膨張収縮構造体1−1a及び1−1bの拮抗駆動により、第1関節軸6−1の支持軸314の軸回りにxy面内で2つの円形支持体302,302が正逆回転する。この結果、2つの円形支持体302,302に連結されたロボットアーム10の第1腕311と駆動軸313とを一体的に正逆回転させることができる。
【0068】
第1腕311の第1腕用リンク(第1軸)308は、2つの円形支持体302,302に一端が固定されて、2つの円形支持体302,302と一体的に回転可能となっている。第1腕用リンク308の円形支持体302側には、支持体307,307と同様な支持体309,309(図4参照)が第1腕用リンク308の長手方向と直交して固定される。
【0069】
また、第1腕用リンク308の先端側には、第1腕用リンク311の長手方向に直交して固定された支持体310が第2関節軸6−2の軸芯回りに回転可能に連結されている。第1腕用リンク308の円形支持体302側の支持体(図示せず)と先端側の支持体310との間には、弾性膨張収縮構造体1−2a及び1−2bが連結されている。よって、弾性膨張収縮構造体1−2a及び1−2bの拮抗駆動により、第2関節軸6−2の支持軸315の軸回りにxy面内でロボットアーム10の駆動軸313を相対的に正逆回転させることができる。
【0070】
圧力センサ9−1a,9−1bは、弾性膨張収縮構造体(1−1a、1−1b)のそれぞれの内部状態(一例として、内部圧力)を計測する内部状態計測手段107の一例であり、それぞれの流体通過部材5(流体注入出口)に配設され、それぞれの弾性膨張収縮構造体(1−1a、1−1b)内の圧力を計測する。同じく弾性膨張収縮構造体1−2a、1−2bにも内部状態計測手段107の一例である圧力センサ9−2a,9−2b(図示省略)が配設されている。
【0071】
弾性膨張収縮構造体1−1a及び1−1bと、弾性膨張収縮構造体1−2a及び1−2bとのそれぞれには、後述するように、流量比例電磁弁18が接続され、全ての流量比例電磁弁18は、制御部の一例としての一般的なパーソナルコンピュータにより構成された制御コンピュータ19に接続されている。制御コンピュータ19は、流量比例電磁弁18を介して、弾性膨張収縮構造体1−1a及び1−1bと、弾性膨張収縮構造体1−2a及び1−2bとのそれぞれの収縮及び伸張動作を制御する。また、各関節軸6−1,6−2には出力計測手段104の一例である変位計測手段(本実施形態では変位計測手段の一例としてのエンコーダ8)が配設されており、それぞれのエンコーダ8によりそれぞれの関節軸6−1,6−2の関節角度が測定可能である。各弾性膨張収縮構造体1には内部状態計測手段107の一例である圧力計測手段(本実施形態では圧力計測手段の一例として圧力センサ9)が配設されており、圧力センサ9により各弾性膨張収縮構造体1の内部圧力が測定可能となっている。
【0072】
以上のような構造とすれば、多自由度を生かし、例えば駆動軸313の代わりに、物体を把持可能なハンドを取り付ければ、物体の把持及び運搬など、ロボットアーム10として基本的な機能を実現することができる。このハンドの位置及び姿勢を、以下では手先位置及び姿勢として説明する。
【0073】
図4は、本発明の第1実施形態にかかるロボットアーム10を駆動するための空気圧供給系の構成を示す図である。図4ではロボットアーム10の第2関節軸6−2を正逆回転駆動する部分のみを記し、他の部分は省略している。図4において、16は例えばコンプレッサー等の空気圧源、17は空気圧フィルタ17a、空気圧減圧弁17b、及び空気圧用ルブリケータ17cが1組になった空気圧調整ユニットである。18は例えば電磁石の力でスプール弁などを駆動することで流量を制御する流量比例電磁弁の一例としての5ポート流量制御電磁弁である。制御コンピュータ19は、D/Aボードなどの入出力IF20を搭載し、5ポート流量制御電磁弁18に電圧指令値を出力することにより、それぞれの流体通過部材5を流れる各空気の流量を独立して制御可能とする。
【0074】
次に、図4に示す空気圧供給系の動作について説明する。空気圧源16により生成された高圧空気は、空気圧調整ユニット17により減圧され、例えば600[kPa]といった一定圧力に調整され、5ポート流量制御電磁弁18に供給される。5ポート流量制御電磁弁18の開度は、制御コンピュータ19より入出力IF20を介して出力される電圧指令値に比例して制御される。制御コンピュータ19から5ポート流量制御電磁弁18に正の電圧指令値が入力された場合には空気圧回路記号のAで示した状態になり、空気圧源16側から弾性膨張収縮構造体1−2a側への流路が開通し、電圧指令値の絶対値に比例した流量の空気が弾性膨張収縮構造体1−2a側に供給される。また、弾性膨張収縮構造体1−2b側は、大気圧側への流路が開通し、電圧指令値の絶対値に比例した流量の空気流が弾性膨張収縮構造体1−2b側から大気中へ排気される。したがって、図4に示すように、弾性膨張収縮構造体1−2aの全長が縮み、弾性膨張収縮構造体1−2bの全長が伸びることにより、電圧指令値の絶対値に比例した速度で第2関節軸6−2は右回転運動を行う。一方、制御コンピュータ19から5ポート流量制御電磁弁18に負の電圧指令値が入力された場合には空気圧回路記号のBで示した状態になり、弾性膨張収縮構造体1−2a,1−2bの動作は逆となり(すなわち、弾性膨張収縮構造体1−2aの全長が伸び、弾性膨張収縮構造体1−2bの全長が縮むことにより)、第2関節軸6−2は左回転運動を行う。
【0075】
すなわち、5ポート流量制御電磁弁18から弾性膨張収縮構造体1側に供給された空気流は、流体通過部材5により封止部材4を通過し、管状弾性体2の内部に到達し、管状弾性体2の内圧を発生させる。管状弾性体2は発生した内圧により膨張するが、変形方向規制部材3の網目状に組まれた繊維コードの拘束作用(規制作用)により、膨張による半径方向の変形が規制されて軸方向の長さの収縮に変換され、図3の下側に示すように弾性膨張収縮構造体1の全長が短くなる。一方、5ポート流量制御電磁弁18から空気を大気中に排気し、管状弾性体2の内圧を減ずれば、管状弾性体2の弾性力により復元して膨張が解消されて、弾性膨張収縮構造体1の全長は図3の上側に示すように伸張する。この結果、図3において、右端で固定されていると考えると、上記伸縮により、管状弾性体2の左端では距離dの差があることになる。したがって、第1実施形態における弾性膨張収縮構造体1は、空気圧を供給制御することにより、直動変位のアクチュエータとして機能させることが可能である。伸張及び短縮量は弾性膨張収縮構造体1の内圧に概ね比例するので、図4のように制御コンピュータ19で5ポート流量制御電磁弁18を制御して弾性膨張収縮構造体1に供給される空気流量を制御すれば、弾性膨張収縮構造体1の全長を制御できる。
【0076】
図2に示すロボットアーム10では、弾性膨張収縮構造体1−1aと1−1bによる拮抗駆動、及び、弾性膨張収縮構造体1−2aと1−2bによる拮抗駆動のために、拮抗する弾性膨張収縮構造体1それぞれに対して5ポート流量制御電磁弁18が配設されて同様の空気圧供給系が構成されている。そして制御コンピュータ19よりD/Aボード20を介してそれぞれの5ポート流量制御電磁弁18に出力される電圧指令値により、ロボットアーム10の全ての関節軸6−1,6−2を同時に正逆回転駆動することができるようになっている。
【0077】
図5は、本発明の第1実施形態にかかる弾性体アクチュエータ102の制御装置のより具体的な構成を示す図であり、上記制御装置は、例えば、上記制御コンピュータ19内に備えられている。ただし、図5において、10は弾性体アクチュエータ102の制御装置の制御対象である図2に示すロボットアームである。ロボットアーム10からはそれぞれの関節軸6−1,6−2のエンコーダ8により計測される計測値112の一例としての関節角の現在値(関節角度ベクトル)q=[q1,q2]Tと、それぞれの弾性膨張収縮構造体1の圧力センサ9により計測される内部状態計測値118の一例としての弾性膨張収縮構造体1の内圧P=[P1a,P1b,P2a,P2b]Tとが出力される。ただし、q1,q2は、それぞれ、第1関節軸6−1、第2関節軸6−2の関節角度である。また、P1a,P1b,P2a,P2bはそれぞれ、弾性膨張収縮構造体1−1a、1−1b、1−2a、1−2bの内圧である。
【0078】
圧力差計算手段13は、圧力センサ9により計測された内圧P(計測値P)が入力され、圧力センサ9の計測値Pより圧力差ΔP=[ΔP1,ΔP2]T=[P1a−P1b,P2a−P2b]Tが圧力差計算手段13で計算されて内部状態誤差計算部109に向けて出力される。
【0079】
順運動学計算手段21は、各関節軸6−1,6−2のエンコーダ8により計測された関節角の現在値qである関節角度ベクトルqがエンコーダ8から入力され、ロボットアーム10の関節角度ベクトルqから手先位置及び姿勢ベクトルrへの変換の幾何科学的計算を行う。
【0080】
近似逆運動学計算手段(23a,23b,23c)は、近似式uout=Jr(q)−1uinにより、逆運動学の近似計算を行う。ただし、Jr(q)はヤコビ行列、uinは近似逆運動学計算手段23a,23b,23cへの入力、uoutは近似逆運動学計算手段23a,23b,23cからの出力であり、入力uinを手先位置・姿勢誤差reとし、出力uoutを関節角度誤差qeとすれば、qe=Jr(q)−1reのように手先位置・姿勢誤差reから関節角度誤差qeへの変換式となる。この近似逆運動学計算手段23a,23b,23cによれば、近似逆運動学計算が容易に可能となる。
【0081】
近似逆運動学計算手段23aでは、ロボットアーム10において計測される関節角度ベクトルの現在値qと、目標出力生成手段101の一例としての目標軌道生成手段11より出力目標値113の一例として出力される手先位置及び姿勢目標ベクトルrdとの現在の手先位置及び姿勢ベクトルrとの手先位置・姿勢誤差reが入力されて、関節角度ベクトルの誤差qeが出力される。
【0082】
近似逆運動学計算手段23bは、ロボットアーム10において計測される関節角度ベクトルの現在値qと、位置誤差補償手段12から位置誤差修正出力ΔPreとが入力されて、関節誤差修正出力ΔPqeが出力される。
【0083】
近似逆運動学計算手段23cでは、ロボットアーム10において計測される関節角度ベクトルの現在値qと、目標軌道生成手段11より出力される手先位置及び姿勢目標ベクトルrdとの現在の手先位置及び姿勢ベクトルrとの誤差reが入力されて、関節角度ベクトルの誤差qeが出力される。
【0084】
目標軌道生成手段11は、目標とするロボットアーム10の動作を実現するための手先位置及び姿勢目標ベクトルrdが出力される。目標とするロボットアーム10の動作は、目的とする作業に応じて事前にそれぞれの時間(t=0、t=t1、t=t2、・・・)でのポイントごとの位置(rd0、rd1、rd2、・・・)と繰り返し動作するかどうかのフラグが記録されており、目標軌道生成手段11は、それぞれの時間(t=0、t=t1、t=t2、・・・)でのポイントごとの位置(rd0、rd1、rd2、・・・)の情報と手先位置及び姿勢ベクトルrとを基に多項式補間を使用し、各ポイント間の軌道を補完し、手先位置及び姿勢目標ベクトルrdを生成する。
【0085】
出力誤差計算部108は、手先位置及び姿勢目標ベクトルrdと順運動学計算手段21により計算される手先位置及び姿勢ベクトルrとが入力され、手先位置・姿勢誤差re=r−rdを計算し、出力誤差114の一例として手先位置・姿勢誤差reを出力する。
【0086】
出力誤差補償手段103の一例である位置誤差補償手段12は、出力誤差計算部108により出力される手先位置・姿勢誤差reが入力され、出力115の一例として位置誤差修正出力ΔPreが近似逆運動学計算手段23bに向けて出力される。
【0087】
目標内部状態決定手段105は、一例として、出力誤差計算部108と目標圧力差計算手段14と近似逆運動学計算手段23aとで構成される。目標圧力差計算手段14には、ロボットアーム10において計測される関節角度ベクトルの現在値qと関節角度ベクトルの誤差qeとに基づく目標関節角度ベクトルqdとしてqd=q+Jr(q)−1reが入力され、目標関節角度ベクトルqdより内部状態目標値116の一例としての目標圧力差(圧力差の目標値)ΔPd=[ΔP1d,ΔP2d]Tが算出され、目標内部状態誤差計算部109に向けて出力される。ただし、ΔP1d,ΔP2dはそれぞれ、弾性膨張収縮構造体1−1aと1−1bの、弾性膨張収縮構造体1−2aと1−2bの圧力差の目標値である。
【0088】
適応目標内部状態補正手段111は、一例として、出力誤差計算部108と適応目標圧力差補正手段25と近似逆運動学計算手段23cとで構成される。適応目標圧力差補正手段25には、ロボットアーム10において計測される関節角度ベクトルの現在値qと関節角度ベクトルの誤差qeとに基づく目標関節角度ベクトルqdとしてqd=q+Jr(q)−1reと、関節角度ベクトルqとが入力され、目標圧力差の調整補正値(内部状態目標補正値117の一例)ΔPda=[ΔP1da,ΔP2da]Tが適応目標圧力差補正手段25で算出され、算出された調整補正値ΔPdaが適応目標圧力差補正手段25でから内部状態誤差計算部109に向けて出力される。ただし、ΔP1da,ΔP2daはそれぞれ、弾性膨張収縮構造体1−1aと1−1bの、弾性膨張収縮構造体1−2aと1−2bの圧力差の目標値(目標圧力差)の調整補正値である。
【0089】
補正出力制御手段120は、目標軌道生成手段11から入力される動作開始の信号と目標軌道の繰り返し信号と、後述する衝突検知手段121から入力される衝突検知信号と、出力誤差計算部108から入力される出力誤差とに応じて、適応目標圧力差補正手段25のON若しくはOFFの指令(ONモード用の指令若しくはOFFモード用の指令)、又は、出力値のホールドの指令(ホールド(更新停止)モード用の指令)、又は、ローパスフィルタのON若しくはOFFの指令を適応目標圧力差補正手段25に出力する。ローパスフィルタは、適応目標圧力差補正手段25内に例えばソフトウェアとして構成される。ローパスフィルタは、適応目標圧力差補正手段25のOFFモードからONモードに切り替えるとき、又は、ホールド(更新停止)モードからONモードに切り替えるとき、適応目標圧力差補正手段25からの出力である目標圧力差が急変し、ロボットアーム10の動作が不安定になることを防ぐために使用する。上記モードの切替時に、適応目標圧力差補正手段25からの出力をローパスフィルタを経由させたのち出力させることで、目標圧力差を緩やかに変化させることができる。
【0090】
内部状態誤差計算部109は、適応目標圧力差補正手段25から出力される目標圧力差の調整補正値ΔPdaと、目標内部状態決定手段105から出力されるΔPdと、近似逆運動学計算手段23bから出力されるΔPqeとを加算し、加算された値から、圧力差計算手段13から出力されるΔPを減算して算出する圧力差誤差(圧力誤差値)ΔPeを圧力差誤差補償手段15に向けて出力する。
【0091】
内部状態誤差補正手段106の一例である圧力差誤差補償手段15は、内部状態誤差計算部109から圧力差誤差ΔPeが入力され、圧力差誤差修正出力uがロボットアーム10に向けて出力される。圧力差誤差修正出力uは、D/Aボードなどの入出力IF20を介して5ポート流量制御電磁弁18に電圧指令値として与えられ、各関節軸6−1,6−2が正逆回転駆動されてロボットアーム10が動作する。
【0092】
衝突検知手段121は、ロボットアーム10が外部の物体と衝突したことを検知し、衝突検知信号を補正出力制御手段120に出力する。衝突を検知する一例として、図5ではロボットアーム10の手先位置の誤差を用いている。これは手先位置の誤差を微分し、誤差の時間微分の値が、事前に決めた閾値よりも大きくなったときに、衝突が起こったと推定する方法である。衝突の検知方法は、他にもカメラを用いて検知する方法、又は、接触センサ又は力センサなどで検知する方法でもよい。
【0093】
以上のように構成される制御装置に関して、制御動作の原理について説明する。
【0094】
制御動作の基本は、位置誤差補償手段12による手先位置・姿勢誤差reのフィードバック制御(位置制御)である。位置誤差補償手段12として、例えば、PID補償器を使用すれば、手先位置・姿勢誤差reが0に収束するように制御が働き、目標とするロボットアーム10の動作が実現する。
【0095】
圧力差誤差補償手段15には圧力差誤差ΔPeが入力されるため、手先位置・姿勢誤差reが発生すると圧力差誤差補償手段15が動作し、手先位置・姿勢誤差reが0に収束するように圧力差の制御が働く。図3に示す弾性膨張収縮構造体1では内部圧力の変化が発生して初めて変位が発生するため、時間的には位置の変化(変位)よりも圧力変化の方が早く観測されることになる。したがって、図5に示す制御系のように位置制御を行う位置フィードバックループの内側に、圧力差の制御を行う内部圧力フィードバックループを構成することにより、応答性の悪さを補償し、位置制御性能の向上を実現可能である。
【0096】
次に、目標圧力差計算手段14について説明する。図3に示す1組の弾性膨張収縮構造体1,1の拮抗駆動による関節軸6−1,6−2の正逆回転駆動を行う場合、関節角度と1組の弾性膨張収縮構造体1の内部圧力差との関係は、例えば、図6のようになる。図6は全長250mm、内径10mmの弾性膨張収縮構造体(マッキベン型空気圧人工筋)を使用した場合の結果である。図6中に示したように、測定結果は、ほぼ直線で近似することができる。したがって、目標圧力差ΔPdを計算する式として、直線を表す1次式
【0097】
【数1】
を使うことができる。ただし、A、bは係数であり、図6の測定結果より求めることができる。したがって、目標圧力差計算手段14において、式(1)により目標関節角度ベクトルqdから目標圧力差ΔPdを計算し、内部状態誤差計算部109を介して圧力差誤差補償手段15に入力することにより、定常偏差の小さい高精度な位置制御が実現する。ここでは、関節角度と圧力差の関係を1次方程式で近似したが、これに限られるわけではなく、2次方程式など多次元の多項式でも近似可能である。また、上記弾性体アクチュエータ102の出力と上記弾性体アクチュエータ102の内部状態の関係(例えば、関節角度と圧力差の関係)をテーブルとして上記制御装置の記憶部(図示せず)に記憶させておき、記憶部に記憶したテーブルに基づき、上記弾性体アクチュエータ102の出力の目標値(例えば関節角度の目標値)から上記弾性体アクチュエータ102の内部状態の目標値(例えば圧力差の目標値)を内部状態目標値導出部(図示せず)で導出するという構成とすることもできる。
【0098】
目標圧力差計算手段14は、事前の実験にて関節角度と圧力差の関係を算出して、算出結果を上記したように記憶部(図示せず)に記憶している。しかし、ロボットアーム10の先端にかかる負荷による重力の影響又はその他の外乱、弾性体アクチュエータ102の経年変化による特性変化により、出力と内部状態の関係(例えば、関節角度と圧力差の関係)は変化する。この結果として起こる弾性体アクチュエータ102の出力誤差を補正するため、適応目標圧力差補正手段25は目標圧力差の調整補正値ΔPdaを出力する。
【0099】
適応目標圧力差補正手段25の一例を、以下の式(2)〜(3)に示す。適応目標圧力差補正手段25では、関節角度目標値qdと現在の関節角度qより関節誤差qeを算出し、関節誤差qeを用いて目標圧力差の調整補正値ΔPdaを算出することにより、適応的に目標圧力差を変化させる(言い換えれば、関節誤差qeが生じた場合に、その関節誤差qeを小さくするように目標圧力差を変化させる)ことができる。
【0100】
【数2】
【0101】
【数3】
ここで、KPとKIは事前の実験で決めたゲイン、qoは拮抗する2本の弾性体アクチュエータ102,102が中立であるとき(初期値)の関節角度である。式(3)は、式(1)の係数A及び係数bをそれぞれ補正するように設計している。式(3)の前半部
【0102】
【数4】
【0103】
は関節誤差qeにゲインを掛けたものを積分して適応オフセット値を求めているが、これは、式(1)の係数bの補正値として機能する。また、式(3)の後半部のうち
【0104】
【数5】
【0105】
は適応ゲイン値であり、係数Aの補正値として機能する。比例係数Aの誤差による影響は、拮抗する2本の弾性体アクチュエータ102,102の中立点から離れたところほど大きくなるため、中立点からの距離に応じて関節誤差qeに重みをかけ、その値を積分することで、係数Aの補正ができる。
【0106】
以上のように、式(3)を現在の関節誤差qeに応じて適応的に変化する(言い換えれば、現在の関節誤差qeを小さくするように変化する)ことで、式(1)の補正をすることが可能となり、関節誤差qeを減らす方向に働く。
【0107】
また、補正出力制御手段120から適応目標圧力差補正手段25にローパスフィルタがONの指令が入っている場合、適応目標圧力差補正手段25の出力は、目標圧力差の調整補正値ΔPdaをローパスフィルタを通した値を出力する。補正出力制御手段120から適応目標圧力差補正手段25にローパスフィルタがOFFの指令が入っている場合、適応目標圧力差補正手段25の出力は、ローパスフィルタを通さずに、目標圧力差の調整補正値ΔPdaをそのまま出力する。
【0108】
補正出力制御手段120は、
(i)目標圧力差の調整補正値ΔPdaを出力する指令、若しくは、出力しない指令、又は、
(ii)ローパスフィルタを通して出力する指令、又は、
(iii)ΔPdaの値をある値でホールドする指令を、
適応目標圧力差補正手段25に対して行う。具体的には以下の条件の少なくとも1つを用いて、目標圧力差の調整補正値ΔPdaを補正出力制御手段120が制御する。
【0109】
(1)ロボットアーム10の始動時には適応目標圧力差補正手段25は動作せず(使用せず)、始動時から一定時間経過した後から、適応目標圧力差補正手段25の動作を始める(使用し始める)。これは、ロボットアーム10の始動時には、正常な始動に必要な初期動作を行うケースがあり、この初期動作では、位置制御の精度よりも、例えばセンサの確認などが優先される。また、この初期動作が完了するまでは、ロボットアーム10の動作自体が不安定であることも考えられる。そのため、適応的に(誤差が小さくなるように)動かそうとすると、ロボットアーム10の安定性が損なわれる可能性がある。このため、始動しロボットアーム10の初期動作が完了するまでは、適応目標圧力差補正手段25を動作させない(言い換えれば、適応目標圧力差補正手段25のOFFモードを意味する)。
【0110】
(2)衝突検知手段121から衝突検知信号が入力されたときから一定時間の間、適応目標圧力差補正手段25の出力値をホールドして更新しない。外部の物体との衝突により、軌道に沿って動けなくなっているロボットアーム10に対して誤差を補正しようとすることにより、ロボットアーム10もしくは衝突した物体が破損する可能性があるため、衝突が検知されてから一定時間の間は適応目標圧力差補正手段25の出力を更新せず、出力値をホールドする。
【0111】
(3)目標軌道生成手段11から繰り返し軌道である信号(目標軌道の繰り返し信号)が来たときに適応目標圧力差補正手段25を動作させる(適応目標圧力差補正手段25を使用する)(言い換えれば、適応目標圧力差補正手段25のONモードを意味する)。これは、適応目標圧力差補正手段25の効果が最も優位に現れるのが繰り返し動作時であるため、繰り返し動作のときだけ適応目標圧力差補正手段25を使用するために適応目標圧力差補正手段25を動作させる。このため、例えば、適応目標圧力差補正手段25は、判断手段25aを備えて、目標軌道生成手段11から目標軌道の繰り返し信号を適応目標圧力差補正手段25で受け取り、弾性体アクチュエータ102の目標値を時系列に並べた弾性体アクチュエータ102の軌道が繰り返しであると判断手段25aで判断したとき(例えば、目標軌道生成手段11からの信号内に繰り返し動作するとのフラグが記録されていると判断手段25aで判断したとき)に、適応目標圧力差補正手段25を使用することを決定する。
【0112】
(4)目標軌道生成手段11から繰り返し軌道である信号(目標軌道の繰り返し信号)が来ていて、かつ、ロボットアーム10の手先位置誤差が閾値を下回ったとき、適応目標圧力差補正手段25の出力値をホールドして更新しない。これは、適応的に圧力差を補正しても(誤差が小さくなるように圧力差を補正しても)、これ以上は誤差が小さくならない(手先位置誤差が閾値を下回った)と補正出力制御手段120により判断した場合、適応目標圧力差補正手段25の更新を停止するために行う(言い換えれば、適応目標圧力差補正手段25のホールド(更新停止)モードを意味する)。
【0113】
(5)適応目標圧力差補正手段25の動作を開始するとき(OFFモードからONモードに切り替えるとき)、及び、更新を停止した状態から再び更新を開始するとき(ホールド(更新停止)モードからONモードに切り替えるとき)には、事前に決められた時間の間は、適応目標圧力差補正手段25からの出力を適応目標圧力差補正手段25のローパスフィルタを通してから出力する。これは、適応目標圧力差補正手段25の上記モードの切替時に目標圧力差が急変し、ロボットアーム10の動作が不安定になることを防ぐために行う。
【0114】
以上の原理に基づく制御プログラムの実際の動作ステップについて、図7のフローチャートに基づいて説明する。
【0115】
ステップS1では、エンコーダ8により計測された関節角度データ(関節変数ベクトル又は関節角度ベクトルq)が上記制御装置に取り込まれる。
【0116】
次いで、ステップS2では、ロボットアーム10の運動学計算に必要なヤコビ行列Jr等の計算が近似逆運動学計算手段(23a,23b,23c)により行われる。
【0117】
次いで、ステップS3では、ロボットアーム10からの関節角度データ(関節角度ベクトルq)から、ロボットアーム10の現在の手先位置及び姿勢ベクトルrが順運動学計算手段21により計算される(順運動学計算手段21での処理)。
【0118】
次いで、ステップS4では、目標軌道生成手段11内に予め記憶されていたロボットアーム10の動作プログラムに基づき、目標軌道生成手段11はロボットアーム10の手先位置及び姿勢目標ベクトルrdを計算する。
【0119】
次いで、ステップS5では、手先位置及び姿勢目標ベクトルrdと現在の手先位置及び姿勢ベクトルrの差である手先位置・姿勢誤差reが出力誤差計算部108により計算される。
【0120】
次いで、ステップS6では、手先位置・姿勢誤差reから位置誤差修正出力ΔPreが位置誤差補償手段12により計算される(位置誤差補償手段12での処理)。位置誤差補償手段12の具体例としてはPID補償器が考えられる。PID補償器の場合、ステップS6では、手先位置・姿勢誤差reに比例ゲインを乗算した値、手先位置・姿勢誤差reの微分値に微分ゲインを乗算した値、及び手先位置・姿勢誤差reの積分値に積分ゲインを乗算した値の3つの値の合計値が位置誤差修正出力ΔPreとなる。定数の対角行列である比例、微分、積分の3つのゲインを適切に調整することにより、位置誤差が0に収束するように制御が働く。
【0121】
次いで、ステップS7では、ステップS2で計算したヤコビ行列Jrの逆行列を乗算することにより、位置誤差修正出力ΔPreを手先位置の誤差に関する値から関節角度の誤差に関する値である関節誤差修正出力ΔPqeに近似逆運動学計算手段23bにより変換する(近似逆運動学計算手段23bでの処理)。
【0122】
次いで、ステップS8では、ヤコビ行列Jrの逆行列を乗算することにより、手先位置・姿勢誤差reを関節角度ベクトルの誤差qeに近似逆運動学計算手段23a、23cにより変換する(近似逆運動学計算手段23a、23cでの処理)。
【0123】
次いで、ステップS9では、目標圧力差計算手段14により、ステップS8で計算された関節角度ベクトルの誤差qeとエンコーダ8により計測された現在の関節角度qとを加算した値を目標関節角度ベクトルqdとし、目標圧力差ΔPdを算出する。
【0124】
次いで、ステップS10では、適応目標圧力差補正手段25により、ステップS8で計算された関節角度ベクトルの誤差qeとエンコーダ8により計測された現在の関節角度qとを加算した値を目標関節角度ベクトルqdとし、適応目標圧力差の調整補正値ΔPdaを算出する。
【0125】
次いで、ステップS11では、内部状態計測手段107の一例である圧力センサ9により計測された各アクチュエータ102の内部圧力値が上記制御装置に取り込まれ、拮抗駆動されるそれぞれ2本のアクチュエータ102,102の内部圧力間の現在の圧力差ΔPが圧力差計算手段13により計算される。
【0126】
次いで、ステップS12では、ステップS7で近似逆運動学計算手段23bにより計算された関節誤差修正出力ΔPqeとステップS9で目標圧力差計算手段14により算出された目標圧力差ΔPdとステップS10で適応目標圧力差補正手段25により算出された目標圧力差の調整補正値ΔPdaとを加算した値から、ステップS11で圧力差計算手段13により計算した現在の圧力差ΔPを減算して、圧力差誤差ΔPeを圧力差誤差補償手段15で計算する(圧力差誤差補償手段15での処理)。さらに、ステップS12では、圧力差誤差ΔPeより圧力差誤差修正出力が圧力差誤差補償手段15で計算される(圧力差誤差補償手段15での処理)。圧力差誤差補償手段15としては、例えば、PID補償器が考えられる。
【0127】
次いで、ステップS13では、圧力差誤差修正出力が、圧力差誤差補償手段15からD/Aボードなどの入出力IF20を通じ、電圧指令値として、それぞれの流量制御電磁弁18に与えられ、それぞれの流量制御電磁弁18がそれぞれのアクチュエータ102内の圧力を変化させることにより、ロボットアーム10のそれぞれの関節軸6−1,6−2の回転運動が発生する。
【0128】
以上のステップS1〜ステップS13が制御の計算ループとして繰り返し実行されることにより、ロボットアーム10の動作の制御が実現する。
【0129】
図9A及び図9Bは、図2に示すロボットアーム10について、適応目標内部状態補正手段111を用いないで図6に示す目標圧力差計算手段のみを行う従来の制御装置により手先位置の軌道追従制御を行った場合の結果、及び、図5に示す第1実施形態の制御装置により手先位置の軌道追従制御を行った場合の結果を示している。一例として、図2に示すロボットアーム10は、第1軸308、第2軸303とも自然長295mm、内径10mmの弾性膨張収縮構造体1を用いている。
【0130】
図9A及び図9Bの結果は、2自由度ロボットアームの手先位置の目標値と測定結果を示している。今回の実験では、目標値として手先位置がxy平面内で一辺の長さ0.2mの正方形を描く軌道を与えた。
【0131】
図9Aは従来の制御装置による制御結果である。従来の制御装置では事前計測によって定めた目標圧力差と角度の関係に対し、実際の圧力差と角度の関係がずれている場合、図9Aにあるように誤差は大きく、追従性は良くないことがわかる。
【0132】
一方、図9Bは、図5に示す第1実施形態の制御装置による制御結果である。適応目標内部状態補正手段111を付加した効果により、誤差は小さく、追従性に優れることがわかる。
【0133】
以上のように、上記第1実施形態の上記制御装置によれば、圧力差誤差補償手段15を配設して、上記弾性体アクチュエータ102の内部状態をフィードバックする内部圧力制御系を構成し、かつ、目標圧力差計算手段14と適応目標圧力差補正手段25とを配設して、上記弾性体アクチュエータ102の目標内部状態の一例である目標圧力差をフィードフォワードする制御系を構成することにより、事前に想定した環境以外でも、応答性が良く、定常偏差の少ない、高精度なロボットアーム10の制御が可能となる。
【0134】
(第2実施形態)
図8は、適応目標圧力差補正手段25の一例を示す図である。50はロボットアーム10の関節角度が追従すべき規範モデル、51a、51bは可変ゲインである。規範モデル50は、ロボットアーム10に望む応答性などから事前に決定する。規範モデル50は、伝達関数、又は、状態方程式の形で表現されるが、いずれも入力は関節角度目標値qdであり、出力は関節角度qのモデルである。関節角度目標値qdを入力としたときの規範モデル50の出力と現在の関節角度qとの差eqを適応目標圧力差補正手段25で算出し、差eqを用いて目標圧力差の調整補正値ΔPdaを適応目標圧力差補正手段25で算出することにより、適応的に目標圧力差を変化させる(誤差が小さくなるように目標圧力差を変化させる)ことができる。可変ゲイン51a、51bは式(4)〜式(5)により算出される。
【0135】
【数6】
ここで、axとaqとbxとbqは、それぞれ、事前の実験で決めた固定値である。また、xmは、規範モデル50の状態ベクトルを示す。式(4)と式(5)は、単純適応制御などで知られる規範モデル50に追従するためのフィードフォワード項の式であり、関節角度目標値qd及び規範モデル50の状態ベクトルxmのそれぞれに、関節角度の差eqにより変化するゲインをかけることで、現在の関節角度の差eqに適応的に変化する(差eqが小さくなるように変化する)ことが可能となる。規範モデル50は、制御対象(弾性体アクチュエータ102)の使用する周波数帯では、目標値にほぼ追従できるモデルを選択することが多いため、関節角度の差eqによって適応的に変化することは現在の関節誤差qeに応じて適応的に変化することと等しい。よって、式(4)、式(5)により、適応目標圧力差補正手段25は関節誤差qeを減らすように機能する。
【0136】
また、適応目標圧力差補正手段25の出力は、補正出力制御手段120からローパスフィルタがONの指令が入っている場合には、目標圧力差の調整補正値ΔPdaをローパスフィルタを通した値を出力する。
【0137】
その他の構成は図5に示した第1実施形態の制御装置と同様であり、説明は省略する。
【0138】
上記第2実施形態においても、第1実施形態の効果と同様な効果を得ることができる。
【0139】
(第3実施形態)
図12は、本発明の第3実施形態にかかる弾性体アクチュエータ102の制御装置のより具体的な構成を示す図であり、上記制御装置は、例えば、上記制御コンピュータ19内に備えられている。ただし、図12において、10は弾性体アクチュエータ102の制御装置の制御対象である図2に示すロボットアームである。
【0140】
目標軌道生成手段11は、目標出力生成手段101の一例としての機能し、目標とするロボットアーム10の動作を実現するための目標関節角度ベクトルqdが出力される。目標とするロボットアーム10の動作は、目的とする作業に応じて事前にそれぞれの時間(t=0、t=t1、t=t2、・・・)でのポイントごとの位置(qd0、qd1、qd2、・・・)と繰り返し動作するかどうかのフラグが記録されており、目標軌道生成手段11は、それぞれの時間(t=0、t=t1、t=t2、・・・)でのポイントごとの角度(qd0、qd1、qd2、・・・)の情報と関節角度ベクトルqとを基に多項式補間を使用し、各ポイント間の軌道を補完し、目標関節角度ベクトルqdを生成する。
【0141】
出力誤差計算部108は、関節角度目標ベクトルqdとロボットアーム10より出力される関節角度ベクトルqとが入力され、関節角度誤差qe=q−qdを計算し、出力誤差114の一例として関節角度誤差qeを出力する。
【0142】
出力誤差補償手段103の一例である角度誤差補償手段60は、出力誤差計算部108により出力される関節角度誤差qeが入力され、出力115の一例として角度誤差修正出力ΔPqeが内部状態誤差計算部109に向けて出力される。
【0143】
目標内部状態決定手段105の一例である目標圧力差計算手段14は、目標軌道生成手段11の出力である目標関節角度ベクトルqdが入力され、目標関節角度ベクトルqdより内部状態目標値116の一例としての目標圧力差(圧力差の目標値)ΔPd=[ΔP1d,ΔP2d]Tが算出され、目標内部状態誤差計算部109に向けて出力される。ただし、ΔP1d,ΔP2dはそれぞれ、弾性膨張収縮構造体1−1aと1−1bの、弾性膨張収縮構造体1−2aと1−2bの圧力差の目標値である。
【0144】
適応目標内部状態補正手段111の一例である適応目標圧力差補正手段25は、ロボットアーム10において計測される関節角度ベクトルqと目標軌道生成手段11の出力である目標関節角度ベクトルqdとが入力され、目標圧力差の調整補正値(内部状態目標補正値117の一例)ΔPda=[ΔP1da,ΔP2da]Tが適応目標圧力差補正手段25で算出され、算出された調整補正値ΔPdaが適応目標圧力差補正手段25でから内部状態誤差計算部109に向けて出力される。ただし、ΔP1da,ΔP2daはそれぞれ、弾性膨張収縮構造体1−1aと1−1bの、弾性膨張収縮構造体1−2aと1−2bの圧力差の目標値(目標圧力差)の調整補正値である。
【0145】
内部状態誤差計算部109は、適応目標圧力差補正手段25から出力される目標圧力差の調整補正値ΔPdaと、目標圧力差計算手段14から出力されるΔPdと、角度誤差補償手段60から出力されるΔPqeとを加算し、加算された値から、圧力差計算手段13から出力されるΔPを減算して算出する圧力差誤差(圧力誤差値)ΔPeを圧力差誤差補償手段15に向けて出力する。
【0146】
衝突検知手段121は、ロボットアーム10が外部の物体と衝突したことを検知し、衝突検知信号を補正出力制御手段120に出力する。衝突を検知する一例として、図12ではロボットアーム10の関節角度誤差を用いている。これは関節角度誤差を微分し、誤差の時間微分の値が、事前に決めた閾値よりも大きくなったときに、衝突が起こったと推定する方法である。衝突の検知方法は、他にもカメラを用いて検知する方法、又は、接触センサ又は力センサなどで検知する方法でもよい。
【0147】
その他の構成は図5に示した第1実施形態の制御装置と同様であり、説明は省略する。
【0148】
上記第3実施形態においても、第1実施形態の効果と同様な効果を得ることができる。
【0149】
また、上記各実施形態では、出力を関節角度としたが、これに限られるわけではなく、出力計測手段104を変位速度計測手段の一例としての変位速度センサとし、出力値を変位速度として変位速度制御を行う場合でも同様である。
【0150】
また、上記各実施形態では、出力を関節角度としたが、これに限られるわけではなく、出力計測手段104を力計測手段の一例としての力センサとし、出力値を力として力制御を行う場合でも同様である。
【0151】
また、上記各実施形態では、内部状態計測手段107の一例としてセンサを設けるとしたが、オブザーバ(観測器)を設け、オブザーバにより、内部状態を推定し、内部状態の推定値を使用する場合でも同様の効果を発揮する。
【0152】
また、上記各実施形態では弾性体アクチュエータ102として、流体圧により駆動される流体圧駆動アクチュエータを例に説明を行ったが、これに限られるわけではなく、導電性ポリマー、誘電体ポリマー、又は、各種ゲル等の弾性体を電気的刺激により駆動するアクチュエータの場合でも、内部状態として電界又は電荷量等を採用することにより同様の効果を発揮する。
【0153】
図11A〜図11Cは、弾性体アクチュエータ102の一例である導電性ポリマーアクチュエータの構造と動作説明図である。このアクチュエータは、導電性高分子膜であるポリアニリン膜体80a、80bで固体電解質成形体81を挟み込む構造となっている(図11A参照)。スイッチ83をオンすることで、電源82において設定された電位差がポリアニリン膜体80a、80b間に与えられ、一方のポリアニリン膜体80bには陰イオンが挿入されて伸長し、もう一方のポリアニリン膜体80aからは陰イオンが離脱して縮小し、結果として、たわみ変形が発生するようになる(図11B参照)。この場合、一方のポリアニリン膜体80bは、もう一方のポリアニリン膜体80aに対して電解質形成体81を介して接続された電極として作用していることになる。電位差が逆の場合には、図11Cに示すようにポリアニリン膜体80a、80bが逆方向に変形する。
【0154】
図10は、ロボットアーム10Aの弾性体アクチュエータとして、導電性ポリマーアクチュエータを使用した際の弾性体アクチュエータの制御装置の構成を示す図である。図5の構成図と異なるのは、圧力センサ9と適応目標圧力差補正手段25と圧力差計算手段13と目標圧力差計算手段14と圧力差誤差補償手段15とが、それぞれ、電流計72と適応目標電荷量補正手段70と電荷量計算手段73と目標電荷量計算手段71と電荷量誤差補償手段74とに置き換わった点である。
【0155】
目標電荷量計算手段71は目標内部状態決定手段105の一例であり、目標角度ベクトルqdから目標電荷量cdを計算して、内部状態誤差計算部109に向けて出力する。
【0156】
適応目標電荷量補正手段70は、適応目標内部状態補正手段111の一例である。適応目標電荷量補正手段70は、導電性ポリマアクチュエータの出力誤差を補正するために目標電荷量の補正値cdaを内部状態誤差計算部109に向けて出力する。
【0157】
電流計72は、内部状態計測手段107の一例であり、各導電性ポリマーアクチュエータに流れる電流iを計測する。電流計72で計測される電流iが電荷量計算手段73において積分されることにより、現在の電荷量cが計算でき、計算された現在の電荷量cを内部状態誤差計算部109に向けて出力する。
【0158】
位置誤差補償手段12は、出力誤差計算部108から出力される手先位置・姿勢誤差reが入力され、位置誤差修正出力Δcreが近似逆運動学計算手段23bに向けて出力される。
【0159】
近似逆運動学23bは、ロボットアーム10において計測される関節角度ベクトルの現在値qと、位置誤差補償手段12から位置誤差修正出力Δcreとが入力されて、関節誤差修正出力Δcqeが内部状態誤差計算部109に向けて出力される。内部状態誤差計算部109では、関節誤差修正出力Δcqeと目標電荷量cdと目標電荷量の補正値cdaとを加算した値から、電荷量計算手段73で求められた現在の電荷量cを減算した値(電荷量誤差ce)が計算され、電荷量誤差補償手段74に出力される。
【0160】
電荷量誤差補償手段74は、内部状態誤差計算部109から電荷量誤差ceが入力され、電荷量の誤差を補正するように、電荷量誤差修正出力uがロボットアーム10に向けて出力される。
【0161】
以上のように構成することで、導電性ポリマーアクチュエータでも、本発明の実施は可能である。
【0162】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【0163】
また、適応的に制御することで、一般的に、そうでない(適応的に制御しない)場合と比べ、安定性が損なわれる場合がある。しかしながら、上記第1実施形態の上記制御装置によれば、基本となる目標圧力差ΔPdは目標圧力差計算手段14を含む目標内部状態決定手段105で計算を行い、それによって修正できない誤差を、適応目標圧力差補正手段25を含む適応目標内部状態補正手段111によって補っている。そのため、目標圧力差計算手段14が存在しない場合と比べ、適応目標圧力差補正手段25内の固定値(axとaqとbxとbq)を小さくすることができ、安定性を損なわず、かつ、適応的に目標圧力差を補正できる(誤差が小さくなるように目標圧力差を補正できる)。さらに、補正出力制御手段120により、適応目標圧力差補正手段25の機能が不要なときには、適応目標圧力差補正手段25の機能を停止することもできるため、安定性を損なわない効果を発揮できる。
【0164】
なお、上記様々な実施形態のうちの任意の実施形態を適宜組み合わせることにより、それぞれの有する効果を奏するようにすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0165】
本発明の弾性体アクチュエータの制御装置及び制御方法、並びに、制御プログラムは、弾性体アクチュエータにより動作するロボットアームの手先位置の軌道制御等の位置制御を行う制御装置及び制御方法、並びに、制御プログラムとして有用である。また、ロボットアームに限らず、生産設備等における弾性体アクチュエータによる回転機構の制御装置及び制御方法、並びに、制御プログラム、又は、リニアスライダ又はプレス装置等の弾性体アクチュエータによる直動機構の制御装置及び制御方法、並びに、制御プログラムとしても適用が可能である。
【0166】
本発明は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形又は修正は明白である。そのような変形又は修正は、添付した請求の範囲による本発明の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段とを備え、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御装置であって、
上記適応目標内部状態補正手段は、上記出力の目標値から出力値を減じた値にゲインを乗じた値を積分した適応オフセット値と、上記出力の目標値から初期値を減じた値に、上記出力の目標値から出力値を減じた値を乗じた値にゲインを乗じた値を積分した適応ゲイン値を算出し、上記適応ゲイン値に上記出力の目標値を乗じた値と、上記適応オフセット値とを加算した値を上記内部状態の目標補正値として決定する弾性体アクチュエータの制御装置。
【請求項2】
上記目標内部状態決定手段は、さらに上記弾性体アクチュエータの出力の計測値を取得し、上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する、請求項1に記載の弾性体アクチュエータの制御装置。
【請求項3】
弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段とを備え、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御装置であって、
上記適応目標内部状態補正手段は、規範モデルを備え、上記出力の目標値と上記規範モデルの出力と上記弾性体アクチュエータの出力との間で誤差が生じた場合にその誤差を小さくするゲインを上記出力の目標値と上記規範モデルの状態変数に乗じた値を加算し、上記内部状態の目標補正値として決定する弾性体アクチュエータの制御装置。
【請求項4】
弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段と、
上記適応目標内部状態補正手段からの出力をローパスフィルタを通す状態又は通さない状態との間での切り替えを行う補正出力制御手段とを備えて、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御装置。
【請求項5】
弾性体アクチュエータの内部状態を内部状態計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力を出力計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を出力誤差補償手段で補償し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を目標内部状態決定手段で決定し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を適応目標内部状態補正手段で決定し、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を内部状態誤差補償手段で補償し、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御方法であって、
上記内部状態の上記目標補正値を上記適応目標内部状態補正手段で決定するとき、上記出力の目標値から出力値を減じた値にゲインを乗じた値を積分した適応オフセット値と、上記出力の目標値から初期値を減じた値に、上記出力の目標値から出力値を減じた値を乗じた値にゲインを乗じた値を積分した適応ゲイン値を算出し、上記適応ゲイン値に上記出力の目標値を乗じた値と、上記適応オフセット値とを加算した値を上記内部状態の目標補正値として決定する、弾性体アクチュエータの制御方法。
【請求項6】
弾性体アクチュエータの内部状態を内部状態計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力を出力計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を出力誤差補償手段で補償し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を目標内部状態決定手段で決定し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を適応目標内部状態補正手段で決定し、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を内部状態誤差補償手段で補償し、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御方法であって、
上記内部状態の上記目標補正値を上記適応目標内部状態補正手段で決定するとき、上記適応目標内部状態補正手段に備えられた規範モデルを使用し、上記出力の目標値と上記規範モデルの出力と上記弾性体アクチュエータの出力との間で誤差が生じた場合にその誤差を小さくするゲインを上記出力の目標値と上記規範モデルの状態変数に乗じた値を加算し、上記内部状態の目標補正値として決定する、弾性体アクチュエータの制御方法。
【請求項7】
弾性体アクチュエータの内部状態を内部状態計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力を出力計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を出力誤差補償手段で補償し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を目標内部状態決定手段で決定し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を適応目標内部状態補正手段で決定し、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を内部状態誤差補償手段で補償し、
上記適応目標内部状態補正手段からの出力をローパスフィルタを通す状態又は通さない状態との間での切り替えを補正出力制御手段で行い、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する、弾性体アクチュエータの制御方法。
【請求項8】
弾性体アクチュエータの制御プログラムであって、
コンピュータを、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と、上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値と、が入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段として機能させて、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御するための弾性体アクチュエータの制御プログラムであって、
上記適応目標内部状態補正手段は、上記出力の目標値から出力値を減じた値にゲインを乗じた値を積分した適応オフセット値と、上記出力の目標値から初期値を減じた値に、上記出力の目標値から出力値を減じた値を乗じた値にゲインを乗じた値を積分した適応ゲイン値を算出し、上記適応ゲイン値に上記出力の目標値を乗じた値と、上記適応オフセット値とを加算した値を上記内部状態の目標補正値として決定する、弾性体アクチュエータの制御プログラム。
【請求項9】
弾性体アクチュエータの制御プログラムであって、
コンピュータを、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と、上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値と、が入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段として機能させて、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御プログラムであって、
上記適応目標内部状態補正手段は、規範モデルを備え、上記出力の目標値と上記規範モデルの出力と上記弾性体アクチュエータの出力との間で誤差が生じた場合にその誤差を小さくするゲインを上記出力の目標値と上記規範モデルの状態変数に乗じた値を加算し、上記内部状態の目標補正値として決定する、弾性体アクチュエータの制御プログラム。
【請求項10】
弾性体アクチュエータの制御プログラムであって、
コンピュータを、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と、上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値と、が入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段と、
上記適応目標内部状態補正手段からの出力をローパスフィルタを通す状態又は通さない状態との間での切り替えを行う補正出力制御手段として機能させて、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する、弾性体アクチュエータの制御プログラム。
【請求項1】
弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段とを備え、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御装置であって、
上記適応目標内部状態補正手段は、上記出力の目標値から出力値を減じた値にゲインを乗じた値を積分した適応オフセット値と、上記出力の目標値から初期値を減じた値に、上記出力の目標値から出力値を減じた値を乗じた値にゲインを乗じた値を積分した適応ゲイン値を算出し、上記適応ゲイン値に上記出力の目標値を乗じた値と、上記適応オフセット値とを加算した値を上記内部状態の目標補正値として決定する弾性体アクチュエータの制御装置。
【請求項2】
上記目標内部状態決定手段は、さらに上記弾性体アクチュエータの出力の計測値を取得し、上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する、請求項1に記載の弾性体アクチュエータの制御装置。
【請求項3】
弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段とを備え、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御装置であって、
上記適応目標内部状態補正手段は、規範モデルを備え、上記出力の目標値と上記規範モデルの出力と上記弾性体アクチュエータの出力との間で誤差が生じた場合にその誤差を小さくするゲインを上記出力の目標値と上記規範モデルの状態変数に乗じた値を加算し、上記内部状態の目標補正値として決定する弾性体アクチュエータの制御装置。
【請求項4】
弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段と、
上記適応目標内部状態補正手段からの出力をローパスフィルタを通す状態又は通さない状態との間での切り替えを行う補正出力制御手段とを備えて、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御装置。
【請求項5】
弾性体アクチュエータの内部状態を内部状態計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力を出力計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を出力誤差補償手段で補償し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を目標内部状態決定手段で決定し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を適応目標内部状態補正手段で決定し、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を内部状態誤差補償手段で補償し、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御方法であって、
上記内部状態の上記目標補正値を上記適応目標内部状態補正手段で決定するとき、上記出力の目標値から出力値を減じた値にゲインを乗じた値を積分した適応オフセット値と、上記出力の目標値から初期値を減じた値に、上記出力の目標値から出力値を減じた値を乗じた値にゲインを乗じた値を積分した適応ゲイン値を算出し、上記適応ゲイン値に上記出力の目標値を乗じた値と、上記適応オフセット値とを加算した値を上記内部状態の目標補正値として決定する、弾性体アクチュエータの制御方法。
【請求項6】
弾性体アクチュエータの内部状態を内部状態計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力を出力計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を出力誤差補償手段で補償し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を目標内部状態決定手段で決定し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を適応目標内部状態補正手段で決定し、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を内部状態誤差補償手段で補償し、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御方法であって、
上記内部状態の上記目標補正値を上記適応目標内部状態補正手段で決定するとき、上記適応目標内部状態補正手段に備えられた規範モデルを使用し、上記出力の目標値と上記規範モデルの出力と上記弾性体アクチュエータの出力との間で誤差が生じた場合にその誤差を小さくするゲインを上記出力の目標値と上記規範モデルの状態変数に乗じた値を加算し、上記内部状態の目標補正値として決定する、弾性体アクチュエータの制御方法。
【請求項7】
弾性体アクチュエータの内部状態を内部状態計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力を出力計測手段で計測し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と上記出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値とが入力されることにより出力誤差を出力誤差補償手段で補償し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を目標内部状態決定手段で決定し、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を適応目標内部状態補正手段で決定し、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を内部状態誤差補償手段で補償し、
上記適応目標内部状態補正手段からの出力をローパスフィルタを通す状態又は通さない状態との間での切り替えを補正出力制御手段で行い、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する、弾性体アクチュエータの制御方法。
【請求項8】
弾性体アクチュエータの制御プログラムであって、
コンピュータを、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と、上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値と、が入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段として機能させて、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御するための弾性体アクチュエータの制御プログラムであって、
上記適応目標内部状態補正手段は、上記出力の目標値から出力値を減じた値にゲインを乗じた値を積分した適応オフセット値と、上記出力の目標値から初期値を減じた値に、上記出力の目標値から出力値を減じた値を乗じた値にゲインを乗じた値を積分した適応ゲイン値を算出し、上記適応ゲイン値に上記出力の目標値を乗じた値と、上記適応オフセット値とを加算した値を上記内部状態の目標補正値として決定する、弾性体アクチュエータの制御プログラム。
【請求項9】
弾性体アクチュエータの制御プログラムであって、
コンピュータを、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と、上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値と、が入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段として機能させて、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する弾性体アクチュエータの制御プログラムであって、
上記適応目標内部状態補正手段は、規範モデルを備え、上記出力の目標値と上記規範モデルの出力と上記弾性体アクチュエータの出力との間で誤差が生じた場合にその誤差を小さくするゲインを上記出力の目標値と上記規範モデルの状態変数に乗じた値を加算し、上記内部状態の目標補正値として決定する、弾性体アクチュエータの制御プログラム。
【請求項10】
弾性体アクチュエータの制御プログラムであって、
コンピュータを、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値と、上記弾性体アクチュエータの出力を計測する出力計測手段により計測された上記弾性体アクチュエータの出力の計測値と、が入力されることにより出力誤差を補償する出力誤差補償手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値より、上記弾性体アクチュエータの内部状態の目標値を決定する目標内部状態決定手段と、
上記弾性体アクチュエータの出力の目標値及び上記弾性体アクチュエータの出力の計測値との間で誤差が生じた場合に、その誤差を小さくするように内部状態の目標補正値を決定する適応目標内部状態補正手段と、
上記出力誤差補償手段からの出力、及び上記目標内部状態決定手段から出力される内部状態の目標値、及び、上記適応目標内部状態補正手段から出力される内部状態の目標補正値、及び上記弾性体アクチュエータの内部状態を計測する内部状態計測手段からの出力が入力されることにより内部状態誤差を補償する内部状態誤差補償手段と、
上記適応目標内部状態補正手段からの出力をローパスフィルタを通す状態又は通さない状態との間での切り替えを行う補正出力制御手段として機能させて、
上記内部状態誤差補償手段により補償された上記内部状態誤差に基づき上記弾性体アクチュエータの上記出力の計測値を上記出力の目標値とするように制御する、弾性体アクチュエータの制御プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−221399(P2010−221399A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149171(P2010−149171)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【分割の表示】特願2010−520353(P2010−520353)の分割
【原出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【分割の表示】特願2010−520353(P2010−520353)の分割
【原出願日】平成22年1月5日(2010.1.5)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]