説明

形状シミュレーション装置、形状シミュレーションプログラム、半導体製造装置及び半導体装置の製造方法

【課題】シミュレーションの精度を向上できる形状シミュレーション装置を提供する。
【解決手段】シミュレーション装置のフラックス演算部は、有効立体角Se、ウェハ開口率Rw及びセミローカル開口率Rsに基づいて、計算点221毎の入射フラックスΓを演算する。有効立体角Seは、計算点221が当該計算点221を含むローカル領域223におけるパターンに遮蔽されずに開放される範囲を計算点221側から見込んだ立体角である。ウェハ開口率Rwは、ウェハ201を覆うマスク207の面積に対するマスク207の開口面積の比である。セミローカル開口率Rsは、ローカル領域223を含み、ウェハ201よりも狭いセミローカル領域227の面積に対する当該セミローカル領域227におけるマスク207の開口面積の比である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状シミュレーション装置、形状シミュレーションプログラム、半導体製造装置及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エッチングや堆積によって変化するウェハの表面形状をシミュレートする技術が知られている。特許文献1は、ウェハ開口率及び局所パターンの有効立体角がプラズマエッチングに及ぼす影響を考慮したシミュレーション方法を開示している。ウェハ開口率及び局所パターンの有効立体角については後述する。これらのパラメータの影響を考慮することにより、2次元シミュレータにおいてマスクパターンの形状の影響を3次元的に考慮することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−152269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者の実験では、複数の同一形状のパターン(例えばゲート電極)のエッチングを行うと、当該複数のパターン間においてウェハ開口率及び有効立体角が同一であっても、実際の加工寸法には、ばらつきが生じることが確認されている。従って、加工寸法に影響を及ぼす他の要因を解明して、形状予測の精度を向上させることが望まれる。
【0005】
本発明の目的は、シミュレーションの精度を向上できる形状シミュレーション装置、形状シミュレーションプログラム、半導体製造装置及び半導体装置の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のシミュレーション装置は、マスクが被せられたウェハの表面に入射する粒子のフラックスを算出するフラックス演算部と、その算出された入射フラックスに基づいて、前記ウェハの表面に設定された複数の計算点の座標を時間発展させ、前記ウェハの表面形状を演算する形状演算部と、を有し、前記フラックス演算部は、前記計算点が当該計算点を含む所定のローカル領域内のパターンに遮蔽されずに開放される範囲を前記計算点側から見込んだ立体角と、前記マスクの面積に対する前記マスクの開口面積の比であるウェハ開口率と、前記ローカル領域を含み、前記ウェハよりも狭いセミローカル領域の面積に対する当該セミローカル領域における前記マスクの開口面積の比であるセミローカル開口率と、に基づいて、前記入射フラックスを算出する。
【0007】
好適には、前記フラックス演算部は、前記立体角の分布と、前記ウェハ開口率と、前記セミローカル開口率の分布とに基づいて、前記入射フラックスの分布を演算し、前記形状演算部は、前記入射フラックスの分布に基づいて、3次元表面形状を演算する。
【0008】
好適には、前記フラックス演算部は、前記入射フラックスのうち被エッチング膜起因のものが、前記立体角に比例し、且つ、前記ウェハ開口率及び前記セミローカル開口率の和に比例するように前記入射フラックスを算出する。
【0009】
好適には、前記ローカル領域及び前記セミローカル領域は、前記計算点毎に、前記計算点を中心として設定されている。
【0010】
好適には、前記複数の計算点と、前記複数のセミローカル開口率とを対応付けて記憶部に記憶させるセミローカル開口率マップ作成部を有し、前記フラックス演算部は、前記記憶部に記憶されている前記複数のセミローカル開口率を参照して入射フラックスを演算する。
【0011】
好適には、前記ウェハには、複数のチップ領域が配置され、前記セミローカル領域は、一の前記チップ領域よりも小さく設定されている。
【0012】
好適には、前記セミローカル領域の半径は前記粒子の平均自由行程よりも大きい。
【0013】
本発明の形状シミュレーションプログラムは、コンピュータを、マスクが被せられたウェハの表面に入射する粒子のフラックスを算出するフラックス演算部、及び、その算出された入射フラックスに基づいて、前記ウェハの表面に設定された複数の計算点の座標を時間発展させ、前記ウェハの表面形状を演算する形状演算部、として機能させ、前記フラックス演算部は、前記計算点が当該計算点を含む所定のローカル領域内のパターンに遮蔽されずに開放される範囲を前記計算点側から見込んだ立体角と、前記マスクの面積に対する前記マスクの開口面積の比であるウェハ開口率と、前記ローカル領域を含み、前記ウェハよりも狭いセミローカル領域の面積に対する当該セミローカル領域における前記マスクの開口面積の比であるセミローカル開口率と、に基づいて、前記入射フラックスを算出する。
【0014】
本発明の半導体製造装置は、マスクが被せられたウェハに対して行われているエッチングのパラメータを検出する検出部と、前記ウェハの表面形状のシミュレーションを行うシミュレーション部と、前記検出部の検出したパラメータに応じた、前記シミュレーション部において演算されたシミュレーション結果を取得し、取得したシミュレーション結果に基づいてエッチングのパラメータを補正する制御部と、を有し、前記シミュレーション部は、前記ウェハの表面パターンに入射する粒子のフラックスを算出するフラックス演算部と、その算出された入射フラックスに基づいて、前記ウェハの表面に設定された複数の計算点の座標を時間発展させ、前記ウェハの表面形状を演算する形状演算部と、を有し、前記フラックス演算部は、前記計算点が当該計算点を含む所定のローカル領域内のパターンに遮蔽されずに開放される範囲を前記計算点側から見込んだ立体角と、前記マスクの面積に対する前記マスクの開口面積の比であるウェハ開口率と、前記ローカル領域を含み、前記ウェハよりも狭いセミローカル領域の面積に対する当該セミローカル領域における前記マスクの開口面積の比であるセミローカル開口率と、に基づいて、前記入射フラックスを算出する。
【0015】
本発明の半導体装置の製造方法は、マスクが被せられたウェハに対して行われているエッチングのパラメータを検出する工程と、前記ウェハの表面形状のシミュレーションを行う工程と、前記検出する工程において検出したパラメータに応じた、前記シミュレーションを行う工程において演算されたシミュレーション結果を取得し、取得したシミュレーション結果に基づいてエッチングのパラメータを補正する工程と、を有し、前記シミュレーションを行う工程では、前記ウェハの表面に入射する粒子のフラックスを算出し、その算出された入射フラックスに基づいて、前記ウェハの表面に設定された複数の計算点の座標を時間発展させ、前記ウェハの表面形状を演算し、前記入射フラックスの算出では、前記計算点が当該計算点を含む所定のローカル領域内のパターンに遮蔽されずに開放される範囲を前記計算点側から見込んだ立体角と、前記マスクの面積に対する前記マスクの開口面積の比であるウェハ開口率と、前記ローカル領域を含み、前記ウェハよりも狭いセミローカル領域の面積に対する当該セミローカル領域における前記マスクの開口面積の比であるセミローカル開口率と、に基づいて、前記入射フラックスを算出する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、シミュレーションの精度を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るシミュレーション装置のシミュレーションの対象を説明する図。
【図2】図1のシミュレーション装置の装置構成の概略を示すブロック図。
【図3】図1のシミュレーション装置の機能の概略を示す機能ブロック図。
【図4】図1のシミュレーション装置におけるシミュレーションの実行手順の概略を示すフローチャート。
【図5】図4のステップST1における計算対象領域の設定について説明する図。
【図6】図4のステップST2におけるセルへの分割について説明する図。
【図7】図4のステップST3におけるシミュレーション計算について説明する図。
【図8】図4のステップST4における3次元化について説明する概念図。
【図9】有効立体角の定義及び算出方法を説明する図。
【図10】セミローカル開口率が加工変換差に及ぼす影響を説明する図。
【図11】有効立体角及びセミローカル開口率のマップデータの概念図。
【図12】図4のステップST3の詳細を示すフローチャート。
【図13】第2の実施形態のシミュレーション装置の動作を説明する図。
【図14】第2の実施形態のシミュレーション装置が実行する処理の手順の概略を示すフローチャート。
【図15】第3の実施形態に係るエッチング装置の概略構成を示すブロック図。
【図16】図15のエッチング装置において実行されるプロセスパラメータの補正の手順を示すフローチャート。
【図17】第4の実施形態に係るエッチング装置において実行されるプロセスパラメータの補正の手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明を実施するための形態について説明する。説明は以下の順序で行う。
1.第1の実施形態(シミュレーション装置の例)
2.第2の実施形態(グローバルな計算を行うシミュレーション装置の例)
3.第3の実施形態(シミュレーション結果のデータベースを利用する半導体製造装置の例)
4.第4の実施形態(エッチング中にシミュレーションを行う半導体製造装置の例)
なお、以下に説明する複数の実施形態において、互いに同一の構成については同一符号を付して説明を省略することがある。
【0019】
<1.第1の実施形態>
[シミュレーションの対象]
図1は、本発明の第1の実施形態に係るシミュレーション装置1(図2参照)のシミュレーションの対象を説明する図である。図1(a)は、シミュレーションの対象となるエッチング装置101及びウェハ201を示す模式的な断面図である。
【0020】
シミュレーションの対象となるエッチング装置は、ドライエッチングを行うものであればよい。ドライエッチングは、例えば、反応性イオンエッチング(Reactive Ion Ethcing:RIE)や反応性ガスエッチングである。以下では、RIEを行うエッチング装置を例にとって説明する。
【0021】
このようなRIEを行うエッチング装置の方式としては、例えば、CCP(Capacitive Coupled Plasma)、ICP(Inductive Coupled Plasma)、ECR(Electron Cycrotoron Resonance)が挙げられる。
【0022】
図1(a)では、CCP型のエッチング装置101を例示している。エッチング装置101は、(エッチング)チャンバー103と、チャンバー103内において対向する上部電極105A及び下部電極105Bと、これらの電極に電圧を印加する電源装置107とを有している。
【0023】
ウェハ201は、下部電極105B上に載置される。上部電極105A及び下部電極105Bに電圧が印加されると、ウェハ201上のガスはプラズマ251となり、ウェハ201の表面がエッチングされる。
【0024】
図1(b)は、ウェハ201の表面の模式的な拡大断面図である。なお、本願では、ウェハの語は、不純物の注入やエッチング等の加工が施される前の半導体基板(狭義のウェハ)と、加工が施された後の配線等を含む基板との双方を含むものとする。
【0025】
プラズマエッチングは、以下のように行われる。ウェハ201上には、マスク207が設けられる。マスク207には開口207aが所定のパターンで形成されている。プラズマ251の粒子253(イオンやラジカル)は、開口207aを介してウェハ201の表面に入射する。ラジカルは、ウェハ201と化学反応を生じ、反応生成物257を生成する。反応生成物257は、ウェハ201から離脱する。また、イオンは、スパッタリングを行うとともに、ラジカルによる反応生成物257の生成又はその離脱の促進を行う。
【0026】
エッチングが行われる層は、ウェハ201のいずれの層であってもよい。以下では、ウェハ201の半導体層203及び半導体層203上に積層された反射防止層205がエッチングされる場合を例にとって説明する。半導体層203は、例えば、Siにより形成された基板状部分であり、狭義のウェハである。反射防止層205は、いわゆるBARC(Bottom Anti Reflective Coating)である。
【0027】
[シミュレーション装置の構成]
図2は、シミュレーション装置1の装置構成の概略を示すブロック図である。
【0028】
シミュレーション装置1は、例えば、コンピュータにより構成されており、CPU3、ROM5、RAM7、外部記憶装置9、入力部11及び表示部13を有している。CPU3は、外部記憶装置9に記憶されているシミュレーションプログラム15を読み出し、実行する。これにより、コンピュータは、シミュレーション装置1として種々の機能を果たす。
【0029】
図3は、シミュレーション装置1の機能の概略を示す機能ブロック図である。
【0030】
シミュレーション装置1は、時間発展型の演算(狭義のシミュレーション)の準備を行う手段として、セル分割モジュール19、立体角マップ作成モジュール21及びセミローカル開口率マップ作成モジュール23を有している。
【0031】
また、シミュレーション装置1は、時間発展型の演算を行う2次元シミュレーションモジュール25を有している。2次元シミュレーションモジュール25は、粒子253の入射フラックスを演算するフラックス演算部29、エッチングレート(ER)を演算するER演算部31及びウェハ201の表面形状を演算する形状演算部33を有している。
【0032】
さらに、シミュレーション装置1は、2次元のシミュレーション結果に基づいて、ウェハ201の3次元形状を演算する3次元化モジュール27を有している。
【0033】
[シミュレーション装置の動作]
(動作の概要)
図4は、シミュレーション装置1におけるシミュレーションの実行手順の概略を示すフローチャートである。
【0034】
シミュレーション装置1においては、計算対象領域の設定(ステップST1)、計算対象領域のセルへの分割(ステップST2)、セル毎のシミュレーション計算(ステップST3)及び計算結果の三次元化(ステップST4)が、これらの順に行われる。
【0035】
図5は、図4のステップST1における計算対象領域の設定について説明する図である。
【0036】
計算対象領域は、シミュレーションが行われるウェハ201の範囲である。計算対象領域は、入力部11に対する操作などにより、ユーザによって任意に設定される。本実施形態では、計算対象領域が比較的狭い範囲に設定された場合を例にとって説明する。具体的には、以下のとおりである。
【0037】
図5(a)は、ウェハ201の模式的な斜視図である。ウェハ201には、複数のデバイス(チップ領域)209が形成される。複数のデバイス209は、互いに同一の構成であり、また、ウェハ201の平面視において縦横に配列されている。換言すれば、ウェハ201の表面形状は、互いに同一の複数のパターンが規則的に配列された形状である。なお、マスク207には、複数のデバイス209に対応して、複数の開口パターン207b(符号は図1(b)参照)が形成されることになる。
【0038】
デバイス209の平面形状は、例えば、矩形である。デバイス209の大きさは、例えば、1辺が20〜30mmである。
【0039】
図5(b)は、デバイス209の模式的な平面図である。デバイス209内においては、種々のパターンが適宜な位置に形成されている。すなわち、デバイス209の表面形状は、ウェハ201全体における表面形状のように、同一のパターンが規則的に配列された形状ではない。
【0040】
例えば、デバイス209がイメージャである場合、デバイス209内には、画素部とロジック部とが混在し、デバイス209内の位置によってパターンは異なる。
【0041】
図5(b)では、このようなデバイス209におけるパターンの特徴を模式的に表すために、デバイス209は、互いに異なる複数の機能部211A〜211D(以下、A〜Dを省略することがある。)を有するものと仮定されている。
【0042】
図5(b)において、計算対象領域213は、機能部211C内の一部に設定されている。
【0043】
図5(c)は、計算対象領域213の模式的な斜視図である。
【0044】
本実施形態では、ユーザが壁状のターゲットパターン215の形状予測を希望しているものと仮定して説明する。ターゲットパターン215は、2つの壁状の周囲パターン217に挟まれている。ターゲットパターン215及び周囲パターン217は、例えば、ゲート電極である。
【0045】
計算対象領域213は、図5(c)の例では、ターゲットパターン215及び周囲パターン217を含むように設定されている。計算対象領域213の形状及び大きさは、適宜に設定されてよい。図5(c)では、計算対象領域213の一辺の長さが数百nm〜数μmの矩形に設定された場合を例示している。
【0046】
図6は、図4のステップST2における、計算対象領域213の複数のセル219への分割について説明する図である。具体的には、図6(a)は、複数のセル219を示す模式的な平面図である。また、図6(b)は、一のセル219を示す模式的な斜視図である。
【0047】
本実施形態においては、計算対象領域213内に設定されたセル219毎に2次元の形状シミュレーションが行われる。
【0048】
複数のセル219は、計算対象領域213が所定の方向(図6(a)の紙面上下方向)において複数に分割されることにより設定される。複数のセル219の幅は、例えば、互いに同一である。計算対象領域213の分割方向(複数のセル219の配列方向)及び分割幅(複数のセル219の幅)は、ユーザによって適宜に設定される。図6(a)では、ターゲットパターン215の延びる方向に直交する断面において2次元シミュレーションが行われるように、計算対象領域213が分割された場合を例示している。
【0049】
なお、各セル219において、シミュレーションが行われる断面は、例えば、セル219の中央位置の断面等のセル219を代表する断面である。また、複数のセルの概念は、複数の断面の概念に置換されてよい。
【0050】
シミュレーション装置1を構成するコンピュータは、ステップST2において、ユーザが入力したセル219の幅等に基づいて計算対象領域213を分割する(セル219の、配列方向における座標を取得する)。このとき、当該コンピュータは、セル分割モジュール19として機能する。
【0051】
図7は、図4のステップST3におけるシミュレーション計算について説明する図である。具体的には、図7(a)は、一のセル219についてのシミュレーションの過程を示す模式的な断面図である。図7(b)は、一のセル219についてのシミュレーション結果を示す模式的な断面図である。なお、これらの断面は、図5(c)に示した計算対象領域213の断面よりも狭い範囲で示されている。
【0052】
2次元シミュレーションは、例えば、公知のストリングモデルを用いて実現される。このシミュレーションでは、図7(b)に示すように、ウェハ201(及びマスク207)の表面の形状は、複数の計算点(ストリングポイント)221により表わされる。複数の計算点221の座標は、エッチングレートに基づく時間発展計算により変化する。すなわち、図7(a)において示すように、時刻がt1、t2、t3と進むに伴い、計算点221を結ぶ線(ウェハ201の表面)は、実線L1、L2及びL3の順に遷移する。このようにして、2次元シミュレーションは行われる。
【0053】
なお、シミュレーション装置1を構成するコンピュータは、ステップST3を実行しているとき、2次元シミュレーションモジュール25として機能する。
【0054】
図8は、図4のステップST4における3次元化について説明する概念図である。
【0055】
上述のような2次元シミュレーションが複数のセル219それぞれについて行われることにより、図8の紙面左側に示すように、計算対象領域213における、複数の断面形状が得られる。
【0056】
ステップST4では、複数の断面形状の座標データに基づいて、3次元形状の座標データ又は画像データの生成及び表示を行う。このとき、2次元シミュレーションが実行された複数の断面間における断面形状は、適宜な補間法によって計算される。補間法は、例えば、リニア補間、ガウシアン補間、多項式補間である。
【0057】
なお、シミュレーション装置1を構成するコンピュータは、ステップST4を実行しているとき、3次元化モジュール27として機能する。
【0058】
(2次元シミュレーション)
図1(b)から理解されるように、エッチング装置101においては、マスク207の開口207aを通過してウェハ201に入射する粒子253の入射フラックスがエッチングレートに影響する。入射フラックスは、開口207aの図1(b)の紙面左右方向の大きさだけでなく、開口207aの、図1(b)の紙面上下方向や紙面貫通方向の大きさ等の影響も受ける。そこで、本実施形態では、2次元シミュレーションにおいて、開口207aの影響を3次元的に考慮するために、有効立体角、ウェハ開口率、及び、セミローカル開口率のパラメータをシミュレーションの計算式に組み込む。具体的には、以下のとおりである。
【0059】
(有効立体角)
図9は、有効立体角Seの定義及び算出方法を説明する図である。
【0060】
有効立体角Seは、計算点221から上方(粒子253の入射元)を見たときに、マスク207やウェハ201のパターンによって遮られずに見渡すことができる立体角である。換言すれば、粒子253がマスク207の上方から計算点221に直接的に入射し得る、計算点221から見た3次元的な角度である。
【0061】
有効立体角Seを正確に求めるのであれば、計算点221から見えるパターン全てを考慮することになる。しかし、実際には、計算点221からある程度離れたパターンは、計算点221から見えていても、計算点221における入射フラックスに対する影響が比較的小さい。そこで、本実施形態では、有効立体角Seの算出において、計算点221を含む比較的狭い(例えばμmオーダーの)ローカル領域内におけるパターンによる遮蔽のみを考慮する。
【0062】
図5(b)、図5(c)、図6(a)及び図9に、ローカル領域223の一例を示す。本実施形態において、ローカル領域223は、計算点221毎に設定される。上述の図では、ターゲットパターン215の中央付近の計算点221に対応するローカル領域223を例示している。
【0063】
ローカル領域223の形状及び大きさは適宜に設定されてよい。図9等では、矩形状に設定されたローカル領域223を例示している。ローカル領域223の大きさは、有効立体角Seの算出における正確性と効率性とを比較考量して適宜に設定される。図5(b)では、ローカル領域223が機能部211よりも小さい場合を例示している。
【0064】
なお、発明者の計算や実験では、ローカル領域223は、1辺(直径)が2μmを超えると、それ以上大きくしても、精度向上の効果はあまり増加しないという結果が得られている。この結果からは、ローカル領域223の大きさは、1辺(直径)が2μm程度、若しくは、2μm以下であることが好ましい。
【0065】
なお、後述するように、本実施形態では、シミュレーションの進行に伴って逐次計算されるウェハ201の表面形状に基づいて有効立体角Seも更新される。従って、本実施形態では、上述の計算対象領域213は、ローカル領域223よりも広く設定されることが好ましい。
【0066】
ローカル領域223の形状及び大きさは、シミュレーション装置1のユーザによって設定されてもよいし、シミュレーション装置1(シミュレーションプログラム15)の製造者によって予め設定されてもよい。
【0067】
有効立体角Seの算出は、ローカル領域223内における複数の計算点221の座標に基づいて、適宜なアルゴリズムに基づいて算出されてよい。例えば、まず、図9に示すように、計算点221に関して、ローカル領域223内において存在する隣接パターンとの最近接点4点を割り出す。次に、その4点の座標に基づいて、計算点221から上方を見たときに遮られる立体角Siを所定の近似式(特許文献1参照)により算出する。そして、2πから立体角Siを引くことにより、有効立体角Seを算出する。
【0068】
(ウェハ開口率)
ウェハ開口率は、マスク207の面積(被覆面積+開口面積)に対するマスク207の開口面積の比である。すなわち、ウェハ201全体における開口率である。ただし、ウェハ201は、互いに同一の構成の複数のデバイス209が規則的に配列されたものであるから、ウェハ開口率は、ある程度の数のデバイス209を含む所定範囲における開口率により算出されてもよい。なお、デバイス209における開口率と、ウェハ開口率とは、スクライブなどの影響があり、同一ではない。
【0069】
(セミローカル開口率)
セミローカル開口率は、所定のセミローカル領域の面積に対する当該セミローカル領域におけるマスク207の開口面積の比である。
【0070】
図5(b)にセミローカル領域227の一例を示す。セミローカル領域227は、ウェハ201内に設定され、ウェハ201よりも狭い。また、セミローカル領域227は、ローカル領域223よりも広く、ローカル領域223を含む。
【0071】
ここで、セミローカル開口率が加工変換差に及ぼす影響を説明する。
【0072】
図10(a)は、セミローカル開口率が加工変換差に及ぼす影響を示す実験結果の一例である。図10(a)において、横軸は、セミローカル開口率である。縦軸は、加工変換差である。
【0073】
加工変換差は、図10(b)に示すように、ウェハ201をエッチングする前におけるマスク207のパターンの幅W1と、ウェハ201をエッチングした後におけるウェハ201のパターンの幅W2との差である。加工変換差の値が負となっているのは、加工後のウェハ201のパターンの幅W2が、加工前のマスク207のパターンの幅W1よりも狭くなったことを示している。
【0074】
この実験では、セミローカル領域227の半径は、プロセス条件から予測される粒子253の平均自由行程の約5倍程度(mmオーダー)になっている。有効立体角Se及びウェハ開口率は、各サンプル間で共通である。
【0075】
図10(a)に示されるように、加工変換差は、セミローカル開口率の影響を受けている。具体的には、セミローカル開口率が大きくなると、プロセス条件にもよるが、開口率が大きい場合(例えば70%以上)には被エッチング膜から生成される反応生成物フラックス量が優勢なため、加工変換差が正側に大きくなる。一方、開口率が大きくない場合(例えば70%以下)には前記起因の反応生成物よりもマスク起因のフラックスが優勢なため、セミローカル開口率変動に対して加工変換差が負側に大きくなっている。
【0076】
一方、図5(b)から理解されるように、セミローカル領域227は、デバイス209に対する位置等により、いずれの機能部211をどの程度含むのかが変化し、これにより、セミローカル開口率も変化する。換言すれば、セミローカル開口率は、μmオーダーのパターンの影響を受ける有効立体角Se、及び、cmオーダーのパターンの影響を受けるウェハ開口率の双方に反映されないmmオーダーのパターンの影響を受ける。
【0077】
従って、セミローカル開口率は、有効立体角Se及びウェハ開口率では考慮できないマスク207のパターンが加工寸法に及ぼす影響を考慮可能なパラメータであるといえる。
【0078】
セミローカル開口率は、例えば、以下のように設定される。
【0079】
セミローカル領域227は、本実施形態では、計算点221毎に設定される。例えば、セミローカル領域227は、複数の計算点221を中心とした円形に設定される。なお、セミローカル領域227は、矩形等の多角形に設定されてもよい。
【0080】
セミローカル領域227は、例えば、一のデバイス209(デバイス209に対応するマスク207の開口パターン207b)よりも小さく設定されることが好ましい。なお、大小の判断基準は、直径でもよいし、面積でもよい。例えば、セミローカル領域227の直径は、デバイス209の1辺の長さ(直径)よりも短く設定される。本実施形態の例では、デバイス209は、1辺が20〜30mmであるから、セミローカル領域227の直径は、20〜30mmよりも小さいことが好ましい。
【0081】
セミローカル領域227を大きくしていくと、セミローカル領域227は、複数のデバイス209(開口パターン207b)を含むことになる。そして、セミローカル開口率は、ウェハ開口率に近づいていく。その結果、セミローカル開口率を導入した意義が薄れる。従って、セミローカル領域227が一のデバイス209よりも小さいことは、セミローカル開口率をウェハ開口率と明瞭に差別化する一つの目安となる。すなわち、セミローカル開口率は、デバイス209内の不規則性を反映した値となる。
【0082】
また、発明者の実験等では、セミローカル領域227の半径は、プラズマ251の平均自由行程の5倍程度までが好ましいという結果が得られている。なお、平均自由行程は、プロセス条件にもよるが、例えば、1〜数mmである。
【0083】
セミローカル領域227は、例えば、直径が2μmよりも大きく設定されることが好ましい。上述のように、発明者の実験等では、ローカル領域223の直径が2μmを超えると、有効立体角Seによる精度向上効果はあまり増加しなくなる。換言すれば、直径2μmよりも外側の範囲は有効立体角Seによりパターンの影響を考慮することが困難になる。そこで、セミローカル開口率により、直径2μmよりも外側の範囲についてパターンの影響を考慮することが好ましい。
【0084】
また、セミローカル領域227は、例えば、半径がプラズマ251の平均自由行程程度よりも大きく設定されることが好ましい。半径が平均自由行程よりも長い範囲では、複数の粒子253は、互いに衝突してウェハ201への入射に関して互いに影響を及ぼす。従って、そのような範囲では、有効立体角Seによって開口パターン207bの影響を考慮することが困難になると予想される。そして、そのような範囲について、セミローカル開口率によって開口パターン207bの影響が考慮されることが好ましい。
【0085】
(マップデータ)
図11(a)は、有効立体角Seのマップデータの一例を示す概念図である。図11(b)は、セミローカル開口率のマップデータの一例を示す概念図である。
【0086】
上述のように、本実施形態では、計算対象領域213は、複数のセル219に分割される。各セル219においては、複数の計算点221が設定される。そして、有効立体角Se及びセミローカル開口率は、計算点221毎に算出される。従って、この図に示されるようなマップデータが作成、参照されることにより、計算の利便性が向上する。
【0087】
(演算式)
有効立体角Se、ウェハ開口率Rw及びセミローカル開口率Rsは、以下のように、シミュレーションの演算式に組み込まれる。
【0088】
本実施形態の2次元シミュレーションでは、所定の計算式に基づいて、入射フラックスΓが算出される。また、入射フラックスΓに基づいて、エッチングレートERが算出される。そして、エッチングレートERに基づいて、図7を参照して説明したように、計算点221の座標が移動される。
【0089】
入射フラックスΓの算出、エッチングレートERの算出、及び、計算点221の移動は、一の計算時間ステップにおいて行われる。計算時間ステップを繰り返し行うことにより、シミュレーションは、所定の時間刻みで進行する。
【0090】
有効立体角Se、ウェハ開口率Rw及びセミローカル開口率Rsは、入射フラックスΓの算出式のパラメータとして利用される。例えば、入射フラックスΓは、次式により算出される。
Γ=Γw+Γs
Γw=(1−D)×Rw×ER×ρ×Se+(1−Dm)×(1−Rw)×ERm×ρm×Se
Γs=(1−D)×Rs×ER×ρ×Se+(1−Dm)×(1−Rs)×ERm×ρm×Se
【0091】
ここで、ΓwおよびΓsの右辺第一項は被エッチング膜起因によるもの、第二項はマスク起因によるものである。DとDmは反応生成物257の解離率、ρとρmは被エッチング膜およびマスク膜の密度である。この式でのERとERmの値は、一つ前の計算時間ステップにおけるERとERmの値である。ERmはERにマスク選択比をかけたものとして定義する。なお、本願では、ER及びERmについて言及するときに、ERのみを表示してERについての言及を省略することがある。D及びDmについても同様である。
【0092】
ER×ρは、一つ前の計算時間ステップにおいて生成される反応生成物257の量に相当する。この量に(1−D)が乗じられることにより、再堆積してエッチングに寄与し得る量が算出される。そして、この量に対して、有効立体角Se、ウェハ開口率Rw及びセミローカル開口率Rsの影響が加味されて、入射フラックスΓが算出される。
【0093】
具体的には、入射フラックスΓが有効立体角Seに比例するように、有効立体角Seの影響が加味されている。また、入射フラックスΓのうち被エッチング膜起因によるものが、ウェハ開口率Rw及びセミローカル開口率Rsの和に比例するように、ウェハ開口率Rw及びセミローカル開口率Rsの影響が加味されている。さらに、入射フラックスΓのうちマスク起因によるものが、(1−Rw)及び(1−Rs)の和に比例するように、ウェハ開口率Rw及びセミローカル開口率Rsの影響が加味されている。
【0094】
なお、上式を用いる上で、理論上は、ウェハ開口率Rwは、ウェハ201全体における開口率として定義されるよりも、ウェハ201全体からセミローカル領域227を除いた領域における開口率として定義された方が正確である。ただし、実際には、セミローカル領域227は、ウェハ201全体の面積に対して十分に小さく、ウェハ開口率Rwを、ウェハ201全体における開口率として定義しても問題ない。なお、このような事情から、本願のウェハ開口率は、ウェハ201全体の面積からセミローカル領域227を除いた領域における開口率も含むものとする。
【0095】
入射フラックスΓに基づいてエッチングレートERを算出する演算式としては、公知の適宜なものが利用されてよい。例えば、次の文献において開示されている演算式が用いられてよい。
斧 高一 著、第16回プラズマエレクトロニクス講習会テキスト「実践的プラズマプロセス構築のための基礎と応用最前線」、応用物理学会プラズマエレクトロニクス分科会出版、2005年10月27日発行
また、エッチングレートERに基づく計算点221の移動も公知の適宜なものが利用されてよい。
【0096】
図12は、上述のシミュレーション計算(図4のステップST3)を実現するために、CPU3が実行する処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0097】
ウェハ開口率Rwは、予め求められている。そして、その予め求められた値がシミュレーション計算において一貫して用いられる。
【0098】
ステップST11では、CPU3は、図11(b)に例示したように、セミローカル開口率Rsのマップデータを作成し、RAM7又は外部記憶装置9に記憶する。
【0099】
ステップST12では、CPU3は、図11(a)に例示したように、有効立体角Seのマップデータを作成し、RAM7又は外部記憶装置9に記憶する。
【0100】
ステップST13では、CPU3は、計算対象となるセル219として、所定の順番における最初のセル219をセットする。なお、当該所定の順番は、CPU3又はユーザにより適宜に設定されてよい。
【0101】
ステップST14では、CPU3は、計算対象となる計算点221として、計算対象としてセットされているセル219の複数の計算点221のうち、所定の順番における最初の計算点221をセットする。なお、当該所定の順番は、CPU3又はユーザにより適宜に設定されてよい。
【0102】
ステップST15では、CPU3は、上述した演算式により、計算対象の計算点221に対して、入射フラックスΓを演算する。なお、最初の計算時間ステップにおいては、一つ前のエッチングレートERの値は、(反応生成物の)入射フラックスΓ=0として求められる。また、有効立体角Se及びセミローカル開口率Rsは、ステップST11及びST12において作成されたマップデータが参照されることにより得られる。
【0103】
ステップST16では、CPU3は、ステップST15において算出された入射フラックスΓに基づいて、エッチングレートERを算出する。
【0104】
ステップST17では、CPU3は、ステップST16において算出されたエッチングレートERに基づいて、計算点221の座標を変化させる。すなわち、CPU3は、ウェハ201の表面形状を算出する。
【0105】
ステップST18では、CPU3は、計算対象とされているセル219内の全ての計算点221について計算が終了したか否か判定する。CPU3は、未終了と判定した場合は、計算対象となる計算点221として、所定の順番における次の計算点221をセットし(ステップST19)、ステップST15に戻る。また、CPU3は、終了と判定した場合は、ステップST20に進む。
【0106】
ステップST20では、CPU3は、全てのセル219について計算が終了したか否か判定する。CPU3は、未終了と判定した場合は、計算対象となるセル219として、所定の順番における次のセル219をセットし(ステップST21)、ステップST14に戻る。また、CPU3は、終了と判定した場合は、ステップST22に進む。
【0107】
ステップST22では、CPU3は、所定の終了条件が満たされたか否か判定する。終了条件は、例えば、シミュレーションにおいて所定時間が経過したこと(計算時間ステップが所定回数繰り返されたこと)、計算点221の位置が所定の位置まで到達したこと(所定量エッチングされたこと)である。
【0108】
CPU3は、終了条件が満たされていないと判定した場合は、次の計算時間ステップの演算の準備を行い(ステップST23)、ステップST12に戻る。次の計算時間ステップの準備は、例えば、今回の計算時間ステップのエッチングレートERを一つ前の計算時間ステップのエッチングレートERとしてセットする処理などである。また、CPU3は、終了条件が満たされたと判定した場合は、処理を終了する。
【0109】
なお、CPU3は、ステップST11及びステップST12を実行しているとき、それぞれ、セミローカル開口率マップ作成モジュール23及び立体角マップ作成モジュール21として機能する。また、CPU3は、ステップST15、ステップST16及びステップST17を実行しているとき、それぞれ、フラックス演算部29、ER演算部31、及び形状演算部33として機能する。
【0110】
なお、図12は、一例に過ぎず、適宜に変更されてよい。例えば、ステップST12において有効立体角Seのマップデータを作成せず、ステップST15からステップST19までのループの中において、計算対象となる計算点221について有効立体角Seを算出してもよい。ステップST19及びステップST21のループを、入射フラックスΓの算出(ステップST15)、エッチングレートERの算出(ステップST16)、形状算出(ステップST17)それぞれについて設けてもよい。換言すれば、入射フラックスΓ等のマップデータが作成されてもよい。
【0111】
以上の実施形態によれば、シミュレーション装置1は、ウェハ201の表面に設定された計算点221毎に粒子253の入射フラックスΓを算出するフラックス演算部29を有する。また、シミュレーション装置1は、その算出された入射フラックスΓに基づいて複数の計算点221の座標を時間発展させ、ウェハ201の表面形状を演算する形状演算部33を有する。フラックス演算部29は、有効立体角Se、ウェハ開口率Rw及びセミローカル開口率Rsに基づいて、計算点221毎の入射フラックスΓを演算する。有効立体角Seは、計算点221が当該計算点221を含むローカル領域223におけるパターンに遮蔽されずに開放される範囲を計算点221側から見込んだ立体角である。ウェハ開口率Rwは、ウェハ201を覆うマスク207の面積に対するマスク207の開口面積の比である。セミローカル開口率Rsは、ローカル領域223を含み、ウェハ201よりも狭いセミローカル領域227の面積に対する当該セミローカル領域227におけるマスク207の開口面積の比である。
【0112】
すなわち、本実施形態では、セミローカル領域227という加工形状に影響を与える範囲パラメータを導入してセミローカル開口率マップを導出する。その開口率マップを入射フラックスΓに影響を及ぼすパラメータとして用いる。これにより、有効立体角Seやウェハ開口率Rwだけでは考慮できなかったチップレベルにおけるパターン構造差異の影響までもシミュレーションに加味できる。そして、チップないしウェハ領域に関する3次元空間での加工形状分布予測を行うことができる。これにより、従来予測方法よりもシミュレーションの精度が向上する。
【0113】
フラックス演算部29は、入射フラックスΓが、有効立体角Seに比例し、且つ、ウェハ開口率Rw及びセミローカル開口率Rsの和に比例するように規定された演算式により、入射フラックスΓを演算する。従って、簡素な方法で、有効立体角Se、ウェハ開口率Rw及びセミローカル開口率Rsの影響をシミュレーションに加味することができる。
【0114】
ローカル領域223及びセミローカル領域227は、計算点221毎に、計算点221を中心として設定されている。従って、計算点221毎に有効立体角Se及びセミローカル開口率Rsが算出され、精度が向上する。
【0115】
シミュレーション装置1は、複数の計算点221と、計算点221毎に演算された複数のセミローカル開口率Rsとを対応付けて記憶部(RAM7等)に記憶させるセミローカル開口率マップ作成モジュール23を有する。また、フラックス演算部29は、記憶部に記憶されている複数のセミローカル開口率Rsを参照して入射フラックスΓを演算する。従って、セミローカル開口率Rsは、計算点221毎に一回計算されるだけであり、シミュレーションの計算速度が向上する。
【0116】
<2.第2の実施形態>
第2の実施形態のシミュレーション装置の装置構成は、第1の実施形態のシミュレーション装置1の装置構成と同様であり、図2に示したCPU3等を有している。すなわち、第2の実施形態のシミュレーション装置は、動作のみが第1の実施形態のシミュレーション装置と相違する。
【0117】
なお、第2の実施形態のシミュレーション装置の動作は、第1の実施形態のシミュレーション装置1において実行される、第1の実施形態において説明された動作とは別の動作モードの動作と捉えられてもよい。
【0118】
図13は、第2の実施形態のシミュレーション装置の動作を説明する図である。図13(a)は、ウェハ201の模式的な平面図である。図13(b)は、図13(a)の一部拡大図である。
【0119】
第2の実施形態のシミュレーション装置も、第1の実施形態のシミュレーション装置1と同様に、有効立体角Se、ウェハ開口率Rw及びセミローカル開口率Rsに基づいて入射フラックスΓを算出し、シミュレーションを行う。
【0120】
ただし、第2の実施形態のシミュレーション装置は、図13(a)に示すように、計算対象領域231を複数のメッシュ233に区画して、メッシュ233毎にシミュレーションを行う。
【0121】
計算対象領域231は、比較的広く設定されている。計算対象領域231は、例えば、複数のデバイス209を含む広さ、又は、ウェハ201の概ね全面に亘る広さに設定されている。
【0122】
計算対象領域231は、例えば、シミュレーション装置により自動的にウェハ201の全面に設定される。また、例えば、計算対象領域231は、第1の実施形態と同様に、ユーザによって適宜に設定される。
【0123】
メッシュ233の形状及び大きさは、シミュレーション装置の製造者又はユーザによって適宜に設定される。図13(a)では、メッシュ233が矩形状に設定された場合を例示している。メッシュ233の大きさは、例えば、ウェハ201のデバイス209の大きさよりも小さく設定され、1辺の長さが数百nm〜数μmである。
【0124】
メッシュ233は、第1の実施形態の計算対象領域213に相当するものである。すなわち、図13(b)の左上のメッシュ233において示すように、メッシュ233は、複数のセル219に分割され、複数のセル219内には複数の計算点221が設定される。そして、メッシュ233において、2次元シミュレーションが行われる。なお、メッシュ233を複数のセル219に分割せずに、メッシュ233を代表する一断面(例えばメッシュ233の中央の断面)においてのみ2次元シミュレーションが行われてもよい。
【0125】
また、第2の実施形態のシミュレーション装置は、第1の実施形態に比較して、近似的に算出された有効立体角Se及びウェハ開口率Rwを用いる。具体的には、以下のとおりである。
【0126】
第1の実施形態においては、ローカル領域223は、計算点221毎に設定された。また、有効立体角Seは、複数の計算点221それぞれから上方を見込んだ立体角とされた。一方、第2の実施形態においては、ローカル領域223は、一のメッシュ233の複数の計算点221に共通に設定される。すなわち、ローカル領域223は、メッシュ233毎に設定される。有効立体角Seも同様に、メッシュ233毎に設定される。
【0127】
具体的には、例えば、図13(b)の右上のメッシュ233において示すように、ローカル領域223は、メッシュ233の中心点235を中心として設定される。そして、有効立体角Seは、中心点235から上方を見込んだときに、ローカル領域223内のパターンにより遮蔽されない立体角とされる。ローカル領域223の好適な大きさについては、第1の実施形態と同様である。
【0128】
セミローカル領域227も、有効立体角Seと同様に、メッシュ233毎に設定される。具体的には、例えば、図13(b)の右上のメッシュ233について示すように、セミローカル領域227は、メッシュ233の中心点235を中心として設定される。セミローカル領域227の好適な大きさについては、第1の実施形態と同様である。
【0129】
また、第1の実施形態においては、有効立体角Seは、逐次計算される形状に基づいて計算された。換言すれば、計算時間ステップ毎に更新された。一方、第2の実施形態においては、有効立体角Seは、マスク207のパターン及び膜厚、並びに、被エッチング膜の膜厚に基づいて予め計算され、その計算された値が一貫して用いられる。なお、有効立体角Seを計算するときの、中心点235の被エッチング膜における深さは、加工前から加工後までの深さの範囲から選択される。また、パターンの形状は、エッチングにより形成されるべき形状が近似的に用いられる。
【0130】
図14は、第2の実施形態のシミュレーション装置のCPU3が実行する処理の手順の概略を示すフローチャートである。
【0131】
ステップST31では、CPU3は、入力部11に対するユーザの入力等に基づいて、計算対象領域231を設定する。
【0132】
ステップST32では、CPU3は、入力部11に対するユーザの入力等に基づいて、計算対象領域213を所定の大きさ及び形状の複数のメッシュに分割する。
【0133】
ステップST33では、CPU3は、メッシュ233毎に、上述したように、中心点235を基準として有効立体角Se及びセミローカル開口率Rsを算出する。記憶部(RAM7等)には、算出された有効立体角Se及びセミローカル開口率Rsにより構成されたマップデータが記憶される。なお、このマップデータは、メッシュ233に対応するものであり、図11に示したものよりもグローバルなものである。
【0134】
ステップST34では、CPU3は、計算対象となるメッシュ233として、所定の順番における最初のメッシュ233をセットする。所定の順番は、CPU3又はユーザにより適宜に設定されてよい。
【0135】
ステップST35では、CPU3は、計算対象のメッシュ233内において2次元シミュレーションを行う。この2次元シミュレーションは、例えば、図12のフローチャートから、ステップST11及びST12を省略したものである。また、上述のように、有効立体角Se及びセミローカル開口率Rsは、記憶部(RAM7等)を参照することにより得られ、且つ、メッシュ233内の複数の計算点221に共通である。
【0136】
ステップST36では、CPU3は、全てのメッシュ233について計算が終了したか否か判定する。CPU3は、未終了と判定した場合は、計算対象となるメッシュ233として、所定の順番における次のメッシュ233をセットし(ステップST37)、ステップST35に戻る。また、CPU3は、終了と判定した場合は、ステップST38に進む。
【0137】
ステップST38では、CPU3は、形状分布表示を行う。例えば、CPU3は、メッシュ233毎に、加工精度の評価指標を算出し、3次元のグラフなどにより表示する。評価指標は、例えば、CD(Critical Dimension)、テーパー角、LER(Line Edge Roughness)である。
【0138】
以上の第2の実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、有効立体角Se、ウェハ開口率Rw及びセミローカル開口率Rsの影響がシミュレーション結果に反映され、シミュレーションの精度向上が図られる。
【0139】
<3.第3の実施形態>
図15は、第3の実施形態に係るエッチング装置301の概略構成を示すブロック図である。
【0140】
エッチング装置301は、図1(a)に示したチャンバー103等の構成要素と、チャンバー103におけるエッチングに係る物理量を検出する検出部303とを有している。また、エッチング装置301は、第1又は第2の実施形態において説明したシミュレーション装置を含んで構成されたシミュレーション部305を有している。さらに、エッチング装置301は、チャンバー103におけるエッチングを制御する制御部307を有している。
【0141】
検出部303は、例えば、ラングミュアプローブ、OES(Optical Emission Spectrometer)、QMS(Quadrupole mass Spectrometer)及びイオンエネルギースペクトルアナライザーの少なくともいずれかを有している。
【0142】
シミュレーション部305は、第1又は第2の実施形態において説明したシミュレーション装置と同様に、コンピュータにより構成されている。なお、当該コンピュータは、チャンバー103等を有する装置本体に搭載されていてもよいし、ネットワークを介して装置本体に接続されていてもよい。
【0143】
制御部307は、例えば、コンピュータにより構成されている。なお、制御部307は、シミュレーション部305を構成するコンピュータと同一のコンピュータであってもよいし、別のコンピュータであってもよい。
【0144】
図16は、エッチング装置301において実行されるプロセスパラメータの補正の手順を示すフローチャートである。
【0145】
ステップST41では、検出部303は、プラズマ気相状態(例えば、電子密度、電子温度、発光強度、イオン・原子・分子種、イオンエネルギー)をエッチング中随時モニタリングし、シミュレーション部305に出力する。なお、シミュレーション部305には、検出部303からのモニタリング信号の他、予めレシピパラメータが入力されている。
【0146】
ステップST42では、シミュレーション部305は、検出部303からの信号に基づいて、チャンバー103におけるプロセスパラメータの補正値を取得する。このステップについては、後に詳述する。
【0147】
ステップST43では、シミュレーション部305は、所得した補正値を制御部307に受け渡す。
【0148】
ステップST44では、制御部307は、補正値を新たなプロセスパラメータとして設定する。そして、制御部307は、新たに設定されたプロセスパラメータに従ってエッチングが行われるように、電源装置107等を制御する。
【0149】
ステップST45では、制御部307は、エッチングの終了条件が満たされたか否か判定する。制御部307は、終了条件が満たされていないと判定した場合は、ステップST42に戻る。なお、ステップST42からステップST45までのステップが繰り返される過程においては時間が進む(ステップST46参照)。また、制御部307は、終了条件が満たされたと判定した場合は、エッチングを終了する(ステップST47)。
【0150】
ステップST42の補正値の取得は、以下のように行われる。
【0151】
シミュレーション部305は、エッチング前において、シミュレーション条件を規定する種々のパラメータを変化させて、第1及び第2の実施形態において説明したシミュレーションを実行する。そして、シミュレーション部305は、複数のシミュレーションケースについてのシミュレーション結果のデータベース309を構築する。
【0152】
シミュレーション条件を規定する種々のパラメータは、例えば、膜厚、PR幅、プラズマ気相状態、プロセスパラメータ、ウェハ開口率、セミローカル開口率、有効立体角である。また、プロセスパラメータは、例えば、ガスの圧力、ガス種、流量、バイアスパワー、下部電極温度である。
【0153】
なお、ウェハ開口率及びセミローカル開口率については、例えば、0〜100%(0.0〜1.0)の範囲で、適宜な刻み幅で変化させる。また、有効立体角については、例えば、0〜2πの範囲で、適宜な刻み幅で変化させる。
【0154】
データベース309には、シミュレーション条件を規定する種々のパラメータの値と、その値を用いたときのシミュレーション結果とが対応付けられて記憶されている。シミュレーション結果として記憶されるのは、例えば、CDやテーパー角等のパラメータである。ただし、計算点221の座標自体がシミュレーション結果としてデータベース309に含まれていてもよい。
【0155】
そして、データベース309は、シミュレーション条件を規定する種々のパラメータの値を検索キーとする検索により、CDやテーパー角の値を特定可能に構成されている。なお、シミュレーション条件を規定する種々のパラメータには、検出部303からのモニタリング信号に含まれるパラメータの少なくとも一部が含まれる。すなわち、データベース309は、モニタリング信号に含まれるパラメータの値を検索キーとして検索可能に構成されている。
【0156】
なお、検索キーとして入力されたパラメータの値が、データベース309に記憶されているパラメータの値と値との間に位置する場合には、補間計算により、対応するシミュレーション結果が取得される。
【0157】
図16のステップST48では、シミュレーション部305は、エッチングされているウェハ201に係る有効立体角Se及びセミローカル開口率Rsのマップを作成する。
【0158】
この有効立体角Se及びセミローカル開口率Rsは、例えば、第2の実施形態と同様に、時間発展に関わらずに一貫して用いられる有効立体角Se及びセミローカル開口率Rsである。そして、有効立体角Se及びセミローカル開口率Rsは、予め入力されたマスク207の開口パターンや膜厚等に基づいて算出される。ただし、エッチングの進行に伴って有効立体角Seが適宜な比率で小さくされるなど、エッチングの進行を適宜に加味してこれらのパラメータが算出されてもよい。
【0159】
また、この有効立体角Se及びセミローカル開口率Rsとしては、例えば、第2の実施形態においてメッシュ233の代表値が算出されたように、セル219の代表値が検出される。そして、セル219を単位としてマップが作成される。ただし、より細かい範囲若しくはより大きな範囲を単位としてマップが形成されてもよい。
【0160】
ステップST49〜ステップST52は、複数のセル219それぞれについて実行される。
【0161】
ステップST49では、シミュレーション部305は、有効立体角Se及びセミローカル開口率Rsを検索キーとしてデータベース309を検索し、1以上のシミュレーションケースを特定する。
【0162】
また、シミュレーション部305は、有効立体角Se及びセミローカル開口率Rsによって検索されたシミュレーションケースに対して、検出部303からのモニタリング信号に含まれるパラメータの値を検索キーとして更に絞り込みを行う。
【0163】
そして、シミュレーション部305は、検索により特定されたCD及びテーパー角がスペック値に収まっているか否か判定する。スペック値は、例えば、所望の寸法の−10%〜10%のように定められる。
【0164】
収まっているとの判定がなされた場合は、プロセスパラメータの補正は必要ないということになる。この場合、ステップST50〜ST52は、スキップされる。また、このような判定が全てのセル219に対してなされた場合には、シミュレーション部305は、現在のモニタリング信号に含まれるパラメータの値を制御部307に返す。
【0165】
一方、収まっていないとの判定がなされた場合、シミュレーション部305は、ステップST50に進む。
【0166】
ステップST50では、シミュレーション部305は、モニタリング信号に含まれる種々のパラメータの値のうち、下部電極温度Tの値を種々の値に変化させ(置換し)、その置換後の種々のパラメータの値により、データベース309を再検索する。
【0167】
この際、下部電極温度Tの置換後の値は、所定の割り出し範囲内の値に制限される。例えば、置換後の値は、モニタリング信号に含まれる下部電極温度Tの値に対する変動量が、当該値の−50%〜+50%となる範囲内の値とされる。
【0168】
シミュレーション部305は、上記の置換後の検索を行い、特定されたCD等とスペック値とを比較することにより、CD等が最適となる下部電極温度Tの値(最適値)又はその範囲を上記の割り出し範囲内において割り出す。
【0169】
下部電極温度Tの最適値を用いたときのCD等がスペック値に収まる場合には、ステップST51及びST52はスキップされる。最適値を用いたときのCD等がスペック値に収まらない場合には、シミュレーション部305は、ステップST51に進む。
【0170】
ステップST51では、シミュレーション部305は、ステップST50において下部電極温度Tの最適値を求めたのと同様の処理をガス圧力Pについて行い、最適値又はその範囲を求める。ただし、ステップST50では、モニタリング信号において下部電極温度Tの値を変化させたのに対し、ステップST51では、下部電極温度Tの値を最適値に置換後のモニタリング信号においてガス圧力Pの値を変化させる。
【0171】
そして、最適値を用いたときのCD等がスペック値に収まる場合には、ステップST52はスキップされる。最適値を用いたときのCD等がスペック値に収まらない場合には、シミュレーション部305は、ステップST52に進む。
【0172】
ステップST52では、ステップST51と同様に、下部電極温度T及びガス圧力Pの値が最適値に置換されたモニタリング信号に基づいてバイアスパワーWbの最適値又はその範囲が求められる。
【0173】
ステップST50〜ST51の処理を全てのセル219に対して繰り返し行うことにより、全てのセル219においてCD等がスペック値を満たす下部電極温度T、ガス圧力P及びバイアスパワーWbが求められる(ステップST53)。そして、求められた値は、制御部307に受け渡される。
【0174】
なお、上記では、補正されるパラメータとして下部電極温度、ガス圧力、バイアスパワーを例示した。しかし、補正されるパラメータは、ガス流量やトップパワーであってもよい。
【0175】
以上の実施形態によれば、立体角Se、ウェハ開口率Rw、ならびにセミローカル開口率Rs分布を用いることにより、チップレベルないしはウェハレベルまでの構造差異の影響を考慮した精度の高いシミュレーションを行うことができる。そして、そのようなシミュレーションを利用して、リアルタイムにエッチングの補正を行うことができ、精度の高い加工が安価に実現される。
【0176】
<4.第4の実施形態>
第3の実施形態では、エッチング前に予めシミュレーションが行われ、データベース309が構築された。一方、第4の実施形態では、エッチング中にリアルタイムにシミュレーションが行われる。なお、第4の実施形態のエッチング装置の装置構成は、データベース309が構築されないこと以外は、図15に示した装置構成と同様である。
【0177】
図17は、第4の実施形態に係るエッチング装置において実行されるプロセスパラメータの補正の手順を示すフローチャートである。
【0178】
図17の紙面左側(ステップST41〜ST47)は、図16の紙面左側と同様である。ステップST48についても、図17は図16と同様である。
【0179】
ステップST62では、シミュレーション部305は、検出部303からのモニタリング信号に含まれる種々のパラメータの値を用いて、シミュレーションを行う。なお、このシミュレーションには、ステップST48で算出された有効立体角Se及びセミローカル開口率Rsが利用される。
【0180】
シミュレーションの結果、全てのセル219において、算出されるCD等がスペック値に収まるのであれば、補正は行われない。
【0181】
一方、算出されるCD等がスペック値に収まらない場合には、下部電極温度T、ガス圧力P及びバイアスパワーWbを所定の割り出し範囲内で変動させつつシミュレーションを行う。そして、CD等がスペック値に収まる下部電極温度T、ガス圧力P及びバイアスパワーWbを求める。
【0182】
そして、このような処理を全てのセル219に対して繰り返し行うことにより、全てのセル219についてCD等がスペック値に収まる下部電極温度T、ガス圧力P及びバイアスパワーWbを求める(ステップST63)。
【0183】
本発明は、以上の実施形態に限定されず、種々の態様で実施されてよい。
【0184】
第1の実施形態では、有効立体角はシミュレーションの進行に伴って更新され、セミローカル開口率やウェハ開口率は更新されないシミュレーション装置を例示した。しかし、セミローカル開口率やウェハ開口率も、時間の経過による変化が考慮されて更新されてよい。
【0185】
また、有効立体角、セミローカル開口率及びウェハ開口率の更新は、シミュレーションにおいて逐次計算されるウェハの形状に基づいてなされるものに限定されない。例えば、これらのパラメータの更新は、シミュレーションの進行に伴って適宜な比率で値を減少又は増加させることにより、行われてもよい。
【0186】
ローカル領域及びセミローカル領域は、実施形態でも例示したように、計算点毎、セル毎、メッシュ(比較的小さい計算対象領域)毎など、適宜な単位で設定されてよい。また、ローカル領域は計算点毎に設定され、セミローカル領域はメッシュ毎に設定されるなど、ローカル領域とセミローカル領域とで設定単位が異なっていてもよい。
【0187】
有効立体角、セミローカル開口率及びウェハ開口率に基づいて入射フラックスを算出する方法は、演算式に基づくものに限定されない。例えば、これらのパラメータと入射フラックスとを対応付けたマップデータによって算出されてもよい。また、演算式は、実施形態において例示したものに限定されない。例えば、これらのパラメータの高次の項の影響を考慮した演算式が用いられてもよい。
【符号の説明】
【0188】
1…シミュレーション装置、29…フラックス演算部、33…形状演算部、201…ウェハ、207…マスク、213…セミローカル領域、221…計算点、223…ローカル領域、253…粒子。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスクが被せられたウェハの表面に入射する粒子のフラックスを算出するフラックス演算部と、
その算出された入射フラックスに基づいて、前記ウェハの表面に設定された複数の計算点の座標を時間発展させ、前記ウェハの表面形状を演算する形状演算部と、
を有し、
前記フラックス演算部は、前記計算点が当該計算点を含む所定のローカル領域内のパターンに遮蔽されずに開放される範囲を前記計算点側から見込んだ立体角と、前記マスクの面積に対する前記マスクの開口面積の比であるウェハ開口率と、前記ローカル領域を含み、前記ウェハよりも狭いセミローカル領域の面積に対する当該セミローカル領域における前記マスクの開口面積の比であるセミローカル開口率と、に基づいて、前記入射フラックスを算出する
形状シミュレーション装置。
【請求項2】
前記フラックス演算部は、前記立体角の分布と、前記ウェハ開口率と、前記セミローカル開口率の分布とに基づいて、前記入射フラックスの分布を演算し、
前記形状演算部は、前記入射フラックスの分布に基づいて、3次元表面形状を演算する
請求項1に記載の形状シミュレーション装置。
【請求項3】
前記フラックス演算部は、前記入射フラックスのうち被エッチング膜起因のものが、前記立体角に比例し、且つ、前記ウェハ開口率及び前記セミローカル開口率の和に比例するように前記入射フラックスを算出する
請求項1に記載の形状シミュレーション装置。
【請求項4】
前記ローカル領域及び前記セミローカル領域は、前記計算点毎に、前記計算点を中心として設定されている
請求項1に記載の形状シミュレーション装置。
【請求項5】
前記複数の計算点と、前記複数のセミローカル開口率とを対応付けて記憶部に記憶させるセミローカル開口率マップ作成部を有し、
前記フラックス演算部は、前記記憶部に記憶されている前記複数のセミローカル開口率を参照して入射フラックスを演算する
請求項4に記載の形状シミュレーション装置。
【請求項6】
前記ウェハには、複数のチップ領域が配置され、
前記セミローカル領域は、一前記チップ領域よりも小さく設定されている
請求項1に記載の形状シミュレーション装置。
【請求項7】
前記セミローカル領域の半径は前記粒子の平均自由行程よりも大きい
請求項1に記載の形状シミュレーション装置。
【請求項8】
コンピュータを、
マスクが被せられたウェハの表面に入射する粒子のフラックスを算出するフラックス演算部、及び、
その算出された入射フラックスに基づいて、前記ウェハの表面に設定された複数の計算点の座標を時間発展させ、前記ウェハの表面形状を演算する形状演算部、
として機能させ、
前記フラックス演算部は、前記計算点が当該計算点を含む所定のローカル領域内のパターンに遮蔽されずに開放される範囲を前記計算点側から見込んだ立体角と、前記マスクの面積に対する前記マスクの開口面積の比であるウェハ開口率と、前記ローカル領域を含み、前記ウェハよりも狭いセミローカル領域の面積に対する当該セミローカル領域における前記マスクの開口面積の比であるセミローカル開口率と、に基づいて、前記入射フラックスを算出する
形状シミュレーションプログラム。
【請求項9】
マスクが被せられたウェハに対して行われているエッチングのパラメータを検出する検出部と、
前記ウェハの表面形状のシミュレーションを行うシミュレーション部と、
前記検出部の検出したパラメータに応じた、前記シミュレーション部において演算されたシミュレーション結果を取得し、取得したシミュレーション結果に基づいてエッチングのパラメータを補正する制御部と、
を有し、
前記シミュレーション部は、
前記ウェハの表面に入射する粒子のフラックスを算出するフラックス演算部と、
その算出された入射フラックスに基づいて、前記ウェハの表面に設定された複数の計算点の座標を時間発展させ、前記ウェハの表面形状を演算する形状演算部と、
を有し、
前記フラックス演算部は、前記計算点が当該計算点を含む所定のローカル領域内のパターンに遮蔽されずに開放される範囲を前記計算点側から見込んだ立体角と、前記マスクの面積に対する前記マスクの開口面積の比であるウェハ開口率と、前記ローカル領域を含み、前記ウェハよりも狭いセミローカル領域の面積に対する当該セミローカル領域における前記マスクの開口面積の比であるセミローカル開口率と、に基づいて、前記入射フラックスを算出する
半導体製造装置。
【請求項10】
マスクが被せられたウェハに対して行われているエッチングのパラメータを検出する工程と、
前記ウェハの表面形状のシミュレーションを行う工程と、
前記検出する工程において検出したパラメータに応じた、前記シミュレーションを行う工程において演算されたシミュレーション結果を取得し、取得したシミュレーション結果に基づいてエッチングのパラメータを補正する工程と、
を有し、
前記シミュレーションを行う工程では、
前記ウェハの表面に入射する粒子のフラックスを算出し、
その算出された入射フラックスに基づいて、前記ウェハの表面に設定された複数の計算点の座標を時間発展させ、前記ウェハの表面形状を演算し、
前記入射フラックスの算出では、前記計算点が当該計算点を含む所定のローカル領域内のパターンに遮蔽されずに開放される範囲を前記計算点側から見込んだ立体角と、前記マスクの面積に対する前記マスクの開口面積の比であるウェハ開口率と、前記ローカル領域を含み、前記ウェハよりも狭いセミローカル領域の面積に対する当該セミローカル領域における前記マスクの開口面積の比であるセミローカル開口率と、に基づいて、前記入射フラックスを算出する
半導体装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−44656(P2011−44656A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193334(P2009−193334)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】