説明

形状測定装置、形状測定方法、及びそのプログラム

【課題】穴のある被検物に対して、その穴の内側の形状を効率よく適切に測定することができる形状測定装置を提供する。
【解決手段】中空状の被検物の内面に測定光を照射するとともに、該被検物に照射した測定光を受光して、被検物の形状を測定する形状測定装置は、被検物に照射するライン状の測定光を出力する光出力部と、光出力部と隔てて設けられ、予め定められた方向から受光する測定光の散乱光を検出する受光部と、測定光を検出する位置に応じて受光部の位置が調整され、照射した光の出力位置と、受光部の位置との距離に応じて被検物との距離を算定する制御部と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、形状測定装置、形状測定方法、及びそのプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
工業製品等の物体の表面形状を測定する技術は従来から種々提案されており、被検物の形状を、接触式の測定プローブを用いて三次元測定するものや、光切断方式等のような非接触式の測定プローブを用いて三次元測定するものが知られている。
【0003】
ところで、被検物の形状には様々なものがあり、穴のある被検物に対してその穴の内側の形状を測定する場合もある。例えば、穴の形状を測定する場合、レーザスポットを穴の内面に導き、そのレーザスポットが照射されるスポット位置の焦点を検出することにより、該スポット位置の座標を測定する技術がある(特許文献1参照)。また、穴の外側からスキャンを行い穴の入り口付近の内面の部分的な情報から穴径を測定するような技術がある(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−101731号公報
【特許文献2】特開2006−208237号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような測定方法では、穴の内側の形状を高速、且つ適切に測定することが望まれている。例えば、レーザスポットを用いる場合と比較して高速に穴の内側の形状を測定でき、且つレーザスポットを用いる場合のように適切に穴の内側の形状を測定できることが望まれている。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、穴のある被検物に対して、その穴の内側の形状を高速、且つ適切に測定することができる形状測定装置、形状測定方法、及びそのプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は上述した課題を解決するためになされたもので、本発明は、中空状の被検物の内面に測定光を照射するとともに、該被検物で散乱した散乱光を受光して、前記被検物の前記内面の形状を測定する形状測定装置であって、前記被検物に照射するライン状の測定光を出力する光出力部と、前記測定光の散乱光を受光する受光部と、前記光出力部から出力された光が前記受光部に受光されるまでに通過する光路長を調整する調整部と、前記受光された散乱光の位置を検出する検出部と、前記調整部による調整状態と前記検出部による検出位置とに基づいて前記被検物の形状を測定する制御部と、を備えることを特徴とする形状測定装置である。
【0008】
また、本発明は、中空状の被検物の内面に測定光を照射するとともに、該被検物で散乱した散乱光を受光して、前記被検物の前記内面の形状を測定する形状測定方法であって、光出力部が前記被検物に照射するライン状の測定光を出力する光出力過程と、受光部が、前記測定光の散乱光を受光する受光過程と、調整部が、前記光出力部から出力された光が前記受光部に受光されるまでに通過する光路長を調整する調整過程と、検出部が、前記受光された散乱光の位置を検出する検出過程と、制御部が、前記調整部による調整状態と前記検出部による検出位置とに基づいて前記被検物の形状を測定する制御過程と、を含むことを特徴とする形状測定方法である。
【0009】
また、本発明は、中空状の被検物の内面に測定光を照射するとともに、該被検物で散乱した散乱光を受光して、前記被検物の前記内面の形状を測定する形状測定装置が備えるコンピュータに、光出力部に前記被検物に照射するライン状の測定光を出力させるステップと、受光部に前記測定光の散乱光を受光させるステップと、調整部に、前記光出力部から出力された光が前記受光部に受光されるまでに通過する光路長を調整させるステップと、検出部に前記受光された散乱光の位置を検出させるステップと、前記調整部による調整状態と前記検出部による検出位置とに基づいて前記被検物の形状を測定するステップと、を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、形状測定装置は、穴のある被検物に対して、その穴の内側の形状を高速、且つ適切に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本実施形態による形状測定装置の構成例を示す斜視図である。
【図2】検出部ライン光の出力方向を示す概略図である。
【図3】検出部の構成の一例を示す概略構成図である。
【図4】本実施形態による形状測定装置の構成例を示す概略ブロック図である。
【図5】被検物の穴形状を測定する場合の動作を示す模式図である。
【図6】形状測定装置が穴形状を測定する処理の手順を示すフローチャートである。
【図7】撮像系の補正を説明する説明図である。
【図8】被検物の穴形状を測定する場合の動作の別の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の形状測定装置の一実施形態に係る構成について説明する。なお、本実施形態は、発明の要旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
【0013】
(形状測定装置の構成)
図1は、本発明の一実施形態による形状測定装置100の構成の一例を示す斜視図である。本実施形態に係る形状測定装置100は、光切断方式を用いることで、被検物の表面に一本のライン光からなるライン状投影パターンを投影し、ライン状投影パターンを被検物表面の全域を走査させる毎に投影方向と異なる角度から被検物に投影されたライン状投影パターンを撮像する。そして、撮像された被検物表面の撮像画像よりライン状投影パターンの長手方向の画素毎に三角測量の原理等を用いて被検物表面の基準平面からの距離を算出し、被検物表面の三次元形状を測定する装置である。この実施形態の形状測定装置100は、中空状の穴を有する被検物200の表面(穴の内面)の形状を高速、且つ適切に測定することを特徴とする装置である。
【0014】
図1に示すように、形状測定装置100は、水平な上面を備えている基台11、被検物の形状を測定するためのプローブ部20、プローブ部20を移動させる移動部30、及びプローブ部20を移動部30に対して回転させる回転機構40を備えている。また、図1に示す範囲を測定装置本体110とも記述する。そして、形状測定装置100は、図3及び図4において後述する制御部を備えており、測定装置本体110を制御する。
【0015】
基台11は、架台12と、この架台12の上に載置される定盤13とを有する。架台12は、形状測定装置100全体の水平度を調整するためのものである。定盤13は、石製または鋳鉄製からなるものであり、上面が架台12により水平に保たれたものとなっている。そして、基台11には、形状測定装置100における測定対象となる被検物が設置される。ここで、図1に示す被検物200は、中空状の穴を有する物体である。
【0016】
以下、互いが直交する3方向により規定されるXYZ座標系を用いて形状測定装置100の構成について説明する。ここで、XY平面とは基台11の上面と平行な面を規定するものである。すなわち、X軸方向とは基台11上における一方向を規定するものであり、Y軸方向とは基台11の上面においてX軸方向に直交する方向を規定するものであり、Z軸方向とは基台11の上面に対して直交する方向を規定するものである。
【0017】
プローブ部20は、基台11に設置された被検物200にライン状の測定光(ライン光)を照射し、照射されたライン光の散乱光を検出する。光切断方式の形状測定装置100においては、このプローブ部20からライン光が照射されることにより光切断面(線)が現れた被検物200の表面を検出する。
【0018】
図2は、プローブ部20のライン光Laの出力方向を示す概略図である。この図に示すように、プローブ部20は、Z軸方向に直交する方向のうち1方向にライン光Laを出力する。例えば、プローブ部20は、被検物200の穴の中に挿入され、Z軸方向に対して直角の方向にライン光Laを出力して穴の内面に照射し、照射されたライン光Laの散乱光を検出する。
【0019】
移動部30は、基台11の上面に設置された被検物200に対して、プローブ部20をX軸方向、Y軸方向、またはZ軸方向に移動させるものである。移動部30は門型フレーム15を主体として構成されている。なお、基台11は、基台11の上面における端部(図1では右側の端部)が、基台11上をY軸方向に門型フレーム15を駆動させるY軸ガイドを兼ねるように構成されている。
【0020】
門型フレーム15は、X軸方向に延びるX軸ガイド15a、定盤13のY軸ガイドに沿って駆動する駆動側柱15b、および駆動側柱15bの駆動に従って基台11の上面を滑動する従動側柱15cを備えている。
【0021】
ヘッド部16は、門型フレーム15のX軸ガイド15aに沿ってX軸方向に沿って駆動可能とされている。ヘッド部16には、このヘッド部16に対してZ軸方向に駆動可能なZ軸ガイド17が装着されている。また、ヘッド部16の下端部には回転機構40を介してプローブ部20が装着されている。
【0022】
回転機構40は、プローブ部20を移動部30に対してZ軸を中心に回転駆動させる機構である。例えば、回転機構40は、移動部30により被検物200の穴の中に挿入されたプローブ部20を、移動部30に対してZ軸を中心に360度回転駆動させ所望の回転角度に停止させることが可能である。これにより、プローブ部20は、被検物200の穴の内面の全周に対してライン光LaをZ軸方向と直角の方向に照射し、照射されたライン光Laの散乱光を検出する。
【0023】
(検出部の構成)
図3は、プローブ部20の構成の一例を示す概略構成図である。この図は、プローブ部20及び被検物200の断面図であって、上記において規定したXYZ座標系におけるXZ平面による断面図である。なお、YZ平面による断面図とした場合も同様である。
【0024】
プローブ部20は、中空状の穴を有している被検物200における該穴の内面の形状を検出する。プローブ部20は、光源55と、光源55から出力される照明光をライン光Laにするライン光生成部53と、生成されたライン光Laをプローブ部20の先端方向(Z軸方向のうち被検物200の設置される側の方向)に反射する反射ミラー52と、反射ミラー52により反射されたライン光Laを、プローブ部20のZ軸方向と直角の方向に反射する反射ミラー51を有する光出力部50と、を備えている。また、プローブ部20は、光出力部50から被検物200に照射されたライン光Laの散乱光を受光する受光部60と、受光部60に受光されたライン光Laを撮像部70に導く反射ミラー62と、撮像部70(検出部)と、を備えている。光出力部50と受光部60とは、プローブ部20において、中空状の穴を有している被検物200の穴の深さ方向を長手方向とする棒状の筐体に設けられている。そして、プローブ部20が移動部30または回転機構40により移動または回転された場合に、光出力部50と受光部60とは、プローブ部20において相対的な距離が保持されるように共通の筐体の中に設けられている。また、受光部60は、Z軸方向に移動可能なように光出力部50に対して隔てて設けられている。
【0025】
光出力部50は、光源55から出力されて生成されたライン光Laを、Z軸方向と直角の方向に出力して被検物200の穴の内面に照射する。
光源55としては、LEDやレーザー光源・SLD(super luminescent diode)等を用いることができる。LEDを用いた場合は安価に光源を形成することができる。また、レーザー光源を用いた場合、点光源であるため収差の少ないライン光Laを作ることができ、波長安定性に優れ半値幅が小さいため、迷光カットに半値幅の小さいフィルターが使えるため、外乱の影響を少なくすることができる。また、SLD(super luminescent diode)を用いた場合は、レーザー光源の特性に加え可干渉性がレーザー光よりも低いため被検物面でのスペックルの発生を抑えることができる。
【0026】
ライン光生成部53は、例えば、シリンドリカルレンズや細い帯状の切り欠きを有したスリット板等から構成され、光源55からの照明光を受けてライン光Laを生成するものである。また、反射ミラー52及び反射ミラー51は、例えば90度の方向に光を反射する反射ミラーであり、ライン光Laを反射ミラー52によりプローブ部20の先端方向に導き、反射ミラー51によりプローブ部20のZ軸方向に対して直角の方向に出力して照射する。
【0027】
受光部60は、光出力部50から出力から被検物200に照射されたライン光Laの散乱光を受光する反射ミラー61(反射部)を備えている。
調整部25は、反射ミラー61の位置(受光部60の位置)を移動させる受光位置駆動部21(第1駆動部)と、反射ミラー61の位置(受光部60の位置)を検出する受光位置検出部22と、を備えており、光出力部50から出力された光が受光部60に受光されるまでに通過する光路長を調整する。
【0028】
光出力部50からのライン光Laの出力位置と受光部60の受光位置とは、光出力部50からのライン光Laの照射方向と、被検物200の測定面上のライン光Laによる散乱光の受光部60に対する入射方向とが、所定角度θをなすように設定されている。本実施形態においては、上記の所定角度θが例えば45度に設定されている。
【0029】
反射ミラー61は、被検物200に照射されたライン光Laの散乱光を予め定められた方向から受光し、受光した光を撮像部70に導くものである。本実施形態においては、反射ミラー61は、被検物200に照射された被検物200の測定面上のライン光Laの散乱光を、光出力部50からの照射方向に対して45度となる入射方向から受光する。反射ミラー61は、例えば135度の方向に光を反射する反射ミラーであり、受光したライン光Laを、Z軸方向沿ってプローブ部20の先端方向と反対方向に反射する。そして、反射されたライン光Laは、90度の方向に光を反射する反射ミラー62を介して撮像部70に入力される。
【0030】
受光位置駆動部21は、被検物200の中空状の穴の深さ方向に、受光部60の受光位置を移動させる。すなわち、受光位置駆動部21は、受光部60の反射ミラー61をZ軸方向に沿って上または下に移動させる。これにより、光出力部50からの光が反射ミラー51で反射してから受光部60の反射ミラー61に受光するまでの光路長を調整することができ、受光位置駆動部21は、被検物200の穴径が変わることにより、プローブ部20と穴の内面との距離が変化した場合であっても、受光部60の位置を移動させることにより、上記の所定角度θ(例えば45度)を維持することができる。また、受光位置駆動部21は、制御部80により制御される。
【0031】
受光位置検出部22は、受光部60のZ軸方向の位置を検出する。例えば、受光位置検出部22は、光出力部50からのライン光Laの出力位置と、受光部60の反射ミラー61のZ軸方向の位置との距離を検出して制御部80に出力する。
【0032】
反射ミラー62は、例えば90度の方向に光を反射する反射ミラーである。受光部60により受光されて反射されたライン光Laは、反射ミラー62により反射されて撮像部70に入力される。
【0033】
撮像部70は、例えば結像レンズや撮像素子等から構成され、後述のように制御部80により移動部30または回転機構40が駆動されてライン光Laが所定の距離間隔で走査される毎に被検物200を撮像する。そして、撮像部70は、撮像された被検物200の画像データを制御部80に出力する。すなわち、撮像部70は、光出力部50から出力されたライン光Laが被検物200で散乱して受光部60において受光された散乱光の位置を撮像して検出する。
【0034】
制御部80は、調整部25による調整状態と撮像部70による検出位置とに基づいて被検物200の形状を測定する。例えば、制御部80は、撮像された被検物200の画像データに対して所定の画像演算処理を実行するとともに、受光位置検出部22により検出された受光部60のZ軸方向の位置に基づいて、被検物200の表面(穴の内面)と受光部60との距離を算出する。例えば、制御部80は、被検物200の穴径に基づくライン光Laを検出する位置に応じて、受光部60の位置を移動して調整し、光出力部50からのライン光Laの出力位置と受光部60の位置との距離に応じて、被検物200の表面(穴の内面)とプローブ部20との距離を算出する。
【0035】
具体的には、制御部80は、被検物200の穴径に基づいて、上記の所定角度θが、例えば45度を維持するように、受光部60の受光位置を受光位置駆動部21に移動させる。そして、制御部80は、受光位置検出部22により検出された光出力部50からのライン光Laの出力位置と受光部60の反射ミラー61のZ軸方向の位置との距離、及び所定角度θ(例えば45度)に基づいて、三角測量の原理を用いて被検物200の表面(穴の内面)とプローブ部20との距離を算出する。なお、光出力部50の出力位置と受光部60の位置との距離は、受光位置検出部22により検出された検出結果に加えて、撮像された被検物200の画像データにおけるライン光Laの位置情報も加味されて算出される。
【0036】
例えば、制御部80は、被検物200の表面(穴の内面)に凹凸がある場合、被検物200の画像において、被検物200の凹凸に応じて変形したライン光Laによる光切断面(線)の位置情報と、受光位置検出部22により検出された受光部60の位置とに基づいて、光切断面(線)(ライン光La)が延びる長手方向の画素毎に三角測量の原理を用いて被検物200の表面(穴の内面)とプローブ部20との距離を算出する。
【0037】
そして、制御部80は、移動部30及び回転機構40を駆動することにより、プローブ部20を穴の深さ方向(Z軸方向)に移動、及び回転軸20a回りに回転させて、被検物200の表面(穴の内面)に対してライン光Laを所定の距離間隔で走査する毎に被検物200の表面(穴の内面)とプローブ部20との距離を算出して、被検物200の表面(穴の内面)の三次元形状を求める処理を行う。
【0038】
このように、形状測定装置100は、中空状の穴がある被検物200の穴の内面にZ軸方向に対して直角の方向にライン光Laを照射し、照射されたライン光Laの散乱光を受光して検出する。また、形状測定装置100は、穴径に応じて、ライン光Laの出力位置に対する受光位置を移動させることが可能である。これにより、形状測定装置100は、レーザスポット光を用いる場合に比較して、光切断方式を用いて穴の内側の形状を高速、に測定できる。また、形状測定装置100は、光切断方式を用いて穴の内側の形状を、精度よく適切に測定することができる。
【0039】
(形状測定装置の機能ブロックの構成)
図4は、形状測定装置100の構成の一例を示す概略ブロック図である。図1から図3と同じ構成には、同じ符号を附す。
形状測定装置100は、測定装置本体110と制御部80とを備える。
測定装置本体110は、位置駆動部112(第2の駆動部)と、位置検出部113と、プローブ部20とを備えている。
位置駆動部112は、移動位置駆動部115と回転位置駆動部117とを備えている。
移動位置駆動部115は、移動部30の内部に設けられており、制御部80の制御に基づいて、門型フレーム15をY軸方向に駆動するY軸用モータ、ヘッド部16をX軸方向に駆動するX軸用モータ、およびZ軸ガイド17をZ軸方向に駆動するZ軸用モータを備えている。移動位置駆動部115は、後述の制御部80の駆動制御部83から供給される駆動信号を受け取る。そして、移動位置駆動部115は、この駆動信号に基づいて移動部30の位置、すなわちプローブ部20の位置を3方向(X、Y、Z軸方向)に移動させる。
【0040】
回転位置駆動部117は、回転機構40の内部に設けられており、制御部80の制御に基づいて回転機構40を駆動することにより、プローブ部20を回転軸20a回りに回転駆動させる回転軸駆動モータを備えている。回転位置駆動部117は、駆動制御部83から供給される駆動信号を受け取る。そして、回転位置駆動部117は、この駆動信号に基づいて回転機構40を駆動することにより、プローブ部20を回転軸20a回りに回転させる。
【0041】
位置検出部113は、移動位置検出部116と、回転位置検出部118とを備えている。
移動位置検出部116は、移動部30の内部に設けられ、移動部30のX軸、Y軸、およびZ軸方向の位置をそれぞれ検出するX軸用エンコーダ、Y軸用エンコーダ、およびZ軸用エンコーダを備えている。移動位置検出部116は、これらのエンコーダによって移動部30の位置をそれぞれ検出し、移動部30の位置、すなわちプローブ部20の位置を示す信号を後述の制御部80の座標検出部84へ供給する。
【0042】
回転位置検出部118は、回転機構40の内部に設けられており、プローブ部20の回転軸20a回りの回転位置を検出する回転軸用エンコーダを備えている。回転位置検出部118は、このエンコーダを用いて、プローブ部20の回転軸20a回りの回転位置を検出し、検出した回転位置を示す信号を座標検出部84へ供給する。
【0043】
プローブ部20は、中空状の穴を有している被検物200における穴の内面の表面形状を検出する。
プローブ部20は、光切断方式により被検物200の穴の内面形状を求めるために、前述の光出力部50と、受光部60と、受光位置駆動部21と、受光位置検出部22と、撮像部70とを備えている。
光出力部50は、後述の制御部80の測定指示部86から供給される測定タイミングを制御する制御信号に基づいて光源55から照射された照明光(ライン光La)により、Z軸方向に対して直角の方向にライン光Laを出力して被検物200の穴の内面に照射する。
【0044】
受光部60は、光出力部50からの照射方向に対して、受光部60への散乱光の入射方向を所定角度θ(例えば45度)ずらした方向に移動されて位置される。受光位置駆動部21は、プローブ部20の内部に設けられており、制御部80の制御に基づいて受光部60をZ軸方向に駆動するZ軸用モータを備えている。受光位置駆動部21は、制御部80の駆動制御部83から供給される駆動信号を受け取る。そして、受光位置駆動部21は、この駆動信号に基づいて受光部60の位置を移動させる。
【0045】
受光位置検出部22は、プローブ部20の内部に設けられており、制御部80の制御に基づいて受光部60のZ軸方向の位置を検出するZ軸用エンコーダを備えている。受光位置検出部22は、このエンコーダにより受光部60の位置を検出して、受光部60の位置を示す信号を制御部80の座標検出部84へ供給する。
【0046】
撮像部70は、測定指示部86から供給される測定タイミングを制御する制御信号に基づいて、光出力部50からのライン光Laにより被検物200の表面(穴の内面)に形成される光切断線を、受光部60を介して撮像する。ここで、光切断線は、被検物200の断面形状に応じて形成される。撮像部70は、被検物200の表面に形成される陰影パターンを撮像し、撮像した画像データを画像入力部81へ供給する。なお、撮像部70は、CCD(Charge Coupled Device)、C−MOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)センサなどの個体撮像素子を備えている。
【0047】
次に、制御部80について説明する。
制御部80は、画像入力部81、測定光位置判定部82(判定部)、駆動制御部83、座標検出部84、座標算出部85、測定指示部86、及び記憶部87を備えている。画像入力部81は、撮像部70により撮像された画像データが入力される。入力された画像データは、記憶部87に記憶されて制御部80により画像処理が実行される。
【0048】
測定光位置判定部82は、受光部60により受光されたライン光Laの位置(反射ミラー61のミラー面の領域におけるライン光Laの位置、または反射ミラー61を介して撮像部70により撮像された撮像領域内におけるライン光Laの位置)を、撮像部70により撮像された画像データに基づいて検出する。そして、測定光位置判定部82は、検出したライン光Laの位置が、受光部60の予め定められた所定の範囲内であるか否かを判定する。例えば、測定光位置判定部82は、撮像部70により撮像されたライン光Laの位置が、撮像領域において予め定められた有効画素範囲の領域(有効領域)内にあるか否かを判定する。つまり、測定光位置判定部82は、三角測量の原理を用いて被検物200の表面(穴の内面)と受光部60との距離を算出する場合において、前述した所定角度θ(例えば45度)に対して、受光部60の位置が適切であるか否かを判定する。なお、測定光位置判定部82は、撮像部70により撮像されたライン光Laの位置が、撮像領域において予め定められた中央位置を示す範囲の領域内にあるか否かを判定することにより、有効領域内にあるか否かを判定してもよい。
【0049】
駆動制御部83は、測定光位置判定部82により、撮像部70により撮像されたライン光Laの位置が撮像領域において予め定められた有効領域内にないと判定された場合、ライン光Laの位置が撮像領域内の有効領域内の位置になる方向に受光部60を移動させる駆動信号を、受光位置駆動部21に供給する。一方、駆動制御部83は、測定光位置判定部82により、撮像部70により撮像されたライン光Laの位置が撮像領域において予め定められた有効領域内にあると判定された場合、受光部60の移動を停止させる駆動信号を、受光位置駆動部21に供給する。そして、ライン光Laの位置が撮像領域において中央位置の範囲の領域にある場合、制御部80において、受光位置駆動部21の駆動量及び撮像されるライン光Laの位置に基づいて、三角測量の原理を用いて被検物200の表面(穴の内面)と受光部60との距離が算出される。
【0050】
そして、被検物200の表面(穴の内面)に対してライン光Laを所定の距離間隔で走査して穴形状を測定するために、駆動制御部83は、プローブ部20の位置を3方向(X、Y、Z軸方向)に移動させる駆動信号、及びプローブ部20を回転軸20a回りに回転させる駆動信号を位置駆動部112に供給して、被検物200の位置に対するプローブ部20の相対位置を移動させる。
【0051】
座標検出部84は、移動位置検出部116から供給されるプローブ部20の位置を示す信号に基づいて、被検物200の位置に対するプローブ部20の水平方向(X、Y軸方向)及び垂直方向(Z軸方向)における相対位置を検知する。また、座標検出部84は、回転位置検出部118から供給されるプローブ部20の回転軸20a回りの回転位置を示す信号に基づいて、被検物200の位置に対するプローブ部20の回転方向の位置を検知する。座標検出部84は、それぞれ検知した水平方向、垂直方向、及び回転方向の位置の情報に基づいて、被検物200に対するプローブ部20の相対位置の座標情報と回転位置を示す情報(回転位置情報)とを検出する。そして、座標検出部84は、このプローブ部20の座標情報と回転位置情報とを座標算出部85へ供給する。
また、座標検出部84は、受光位置検出部22から供給される受光部60の位置を示す信号に基づいて、光出力部50からのライン光Laの出力位置と受光部60の位置との距離を検知する。そして、座標検出部84は、検知した光出力部50の出力位置と受光部60の位置との距離を示す情報(受光部60の位置情報)を座標算出部85へ供給する。
【0052】
座標算出部85は、座標検出部84から供給されたプローブ部20の座標情報及び回転位置情報に基づいて、被検物200における測定位置を算出するとともに、受光部60の位置情報と撮像部70から入力された画像データとに基づいて、三角測量の原理を用いて被検物200の表面(穴の内面)と受光部60との距離を算出する。これにより、座標算出部85は、被検物200における測定位置毎の表面(穴の内面)の座標値(三次元座標値)の点群データを算出する。
【0053】
測定指示部86は、測定タイミングを制御する制御信号を供給する。測定指示部86は、この制御信号により光出力部50からのライン光Laの照射タイミング、及び撮像部70の撮像タイミングを制御して測定を行う。例えば、測定指示部86は、駆動制御部83によりプローブ部20が被検物200を所定の距離間隔で走査される毎に測定を行う制御をする。
【0054】
記憶部87は、画像入力部81から入力された画像データを保持する。また、記憶部87は、プローブ部20の相対位置の座標情報や回転位置情報、受光部60の位置情報、座標算出部85により算出された被検物200の測定位置、測定位置毎における被検物200の表面(穴の内面)の座標値(三次元座標値)の点群データ等を保持する。
また、記憶部87は、予め定められた測定条件や測定手順に関する各種指示情報等、制御部80が所定の制御を実行するためのデータを備えている。例えば、被検物200の測定開始位置(最初の測定位置)の座標値、測定範囲を示す測定位置の座標値、測定位置の移動方向、測定位置の距離間隔(例えば、予め定められた一定間隔の測定ピッチ)、および測定終了位置(最後の測定位置)の座標値等、を示すデータを備えている。なお、記憶部87には、操作者により入力された測定条件や測定手順に関する各種指示情報を保持されてもよい。そして、制御部80は、入力された各種指示情報、予め定められた各種指示情報、またはその両方に基づいて測定を実行してもよい。
【0055】
(穴の形状測定動作の一例)
次に、形状測定装置100における測定手順及び測定動作について説明する。
図5は、被検物200aの穴形状を測定する場合のプローブ部20の動作を示す模式図である。この図は、プローブ部20及び被検物200aの断面図であって、上記において規定したXYZ座標系におけるXZ平面による断面図である。なお、YZ平面による断面図とした場合も同様である。
【0056】
この図に示す被検物200aの有する穴は、穴の深さによって穴径が均一でない穴であって、Z軸方向の入り口側から領域Zr1、領域Zr2、及び領域Zr3、の順に穴径が大きくなっている。具体的には、領域Zr3における穴径は、領域Zr1における穴径に対して大きく、領域Zr2における穴径は、領域Zr3側から領域Zr1側に向かって次第に小さくなる。
【0057】
図5(a)に示すように、形状測定装置100は、被検物200aの領域Zr1における穴の内面を測定する場合、まず初めに、プローブ部20の回転軸20aが穴の中心に位置されるようにプローブ部20をXY平面上において水平方向(X、Y軸方向)に移動する。次に、形状測定装置100は、プローブ部20をZ軸方向の領域Zr1の位置に移動する。続いて、形状測定装置100は、所定角度θ(例えば45度)が維持されるような位置に受光部60をZ軸方向に移動する。この図において、光出力部50の出力位置と受光部60の受光位置との距離が距離D1となる位置に受光部60は位置している。ここで、被検物200aの領域Zr1における穴の内面とプローブ部20との距離Dk1は、所定角度θ(例えば45度)、及び距離D1に基づいて算出される。また、穴の内面の表面形状は、光出力部50から穴の内面に照射されたライン光Laによる光切断線を、受光部60を介して撮像部70により撮像された画像データによって得られる。これにより、座標算出部85は、所定角度θ(例えば45度)、距離D1、及び撮像された画像データにおけるライン光Laによる光切断線の位置情報に基づいて、光切断線(ライン光La)が延びる長手方向の画素毎に三角測量の原理を用いて被検物200aの穴の内面とプローブ部20との距離を算出する。
【0058】
次に、図5(b)に示すように、形状測定装置100は、被検物200aの領域Zr3における穴の内面を測定する場合、プローブ部20をZ軸方向の領域Zr1の位置から領域Zr3の位置に移動する。続いて、形状測定装置100は、所定角度θ(例えば45度)が維持されるような位置に受光部60をZ軸方向に移動する。この図において、光出力部50の出力位置と受光部60の受光位置との距離が距離D2となる位置に、受光部60は位置している。ここで、被検物200aの領域Zr3における穴の内面とプローブ部20との距離Dk2は、所定角度θ(例えば45度)、及び距離D2に基づいて算出される。また、穴の内面の表面形状は、光出力部50から穴の内面に照射されたライン光Laによる光切断線を、受光部60を介して撮像部70により撮像された画像データによって得られる。これにより、座標算出部85は、所定角度θ(例えば45度)、距離D2、及び撮像された画像データにおけるライン光Laによる光切断線の位置情報に基づいて、光切断線(ライン光La)が延びる長手方向の画素毎に三角測量の原理を用いて被検物200aの穴の内面とプローブ部20との距離を算出する。
【0059】
また、形状測定装置100は、被検物200aの領域Zr2における穴の内面を測定する場合、領域Zr2において領域Zr3側から領域Zr1側に向かってプローブ部20をZ軸に沿って移動するとともに、次第に小さくなる穴径に応じて、所定角度θ(例えば45度)が維持されるような位置に受光部60をZ軸方向に移動する。これにより、形状測定装置100は、領域Zr2における穴の内面を測定する場合も、図5(a)及び図5(b)に示す領域Zr1及び領域Zr3の場合と同様に三角測量の原理を用いて被検物200aの穴の内面とプローブ部20との距離を算出する。
【0060】
例えば、形状測定装置100は、プローブ部20を被検物200aの穴に挿入し、プローブ部20をZ軸に沿って穴の最も深い位置から穴の入り口に向かって所定の距離間隔で走査する毎に、穴径の大きさに応じて受光部60の位置を所定角度θ(例えば45度)が維持されるようにZ軸方向に移動させ、被検物200aの表面(穴の内面)とプローブ部20との距離を算出する。そして、プローブ部20を穴の全周に対して所定の回転角度の間隔で回転させる毎に、上述のZ軸方向に走査して被検物200aの穴の内面とプローブ部20との距離を算出することにより、被検物200aの穴の三次元形状を測定する。
【0061】
次に、図6を用いて、形状測定装置100が被検物200aの穴の三次元形状を測定する処理の手順について説明する。
図6は、形状測定装置100が穴形状を測定する処理の手順を示すフローチャートである。
まず、操作者により、被検物200aが形状測定装置100の基台11の上面における測定有効範囲内の位置に設置される(ステップS1)。
【0062】
次に、形状測定装置100は、プローブ部20の水平方向(X、Y軸方向)の回転中心位置(回転軸20aの位置)を、被検物200aの穴の中心位置付近になるように移動する。例えば、制御部80の駆動制御部83は、プローブ部20の回転中心位置が被検物200aの穴の中心位置付近になるように、移動位置駆動部115に駆動信号を供給して移動部30を移動させる(ステップS2)。
【0063】
続いて、被検物200aの穴の深さに応じて、Z軸方向に走査して測定する速度(スキャン速度)、及びZ軸方向に走査して測定する移動距離範囲(スキャン距離範囲)が、形状測定装置100に設定される(ステップS3)。なお、これらのスキャン速度、及びスキャン距離範囲に関する設定情報は、記憶部87に予め設定されて記憶されていてよいし、操作者により入力されて記憶部87に記憶されてもよい。形状測定装置100の制御部80は、この設定情報に基づいて形状測定装置100における測定の制御を実行する。
【0064】
例えば、スキャン速度、及びスキャン距離範囲は、以下に示すように設定される。
穴の深さがL(mm)である被検物200aの穴の深さ方向(Z軸方向)をS(mm)ピッチの距離間隔で測定して座標値の点群データを生成する場合、撮像部70の撮像フレームレートをf(フレーム/sec)とすると、スキャン速度V(mm/sec)は、一例として数式1により示される値に設定される。
【0065】
【数1】

【0066】
また、構造上の制約から、プローブ部20の先端方向にライン光Laを照射できない範囲があることにより、穴の最深部から測定可能な位置までの距離(測定できない距離)をM(mm)とすると、測定可能なスキャン距離範囲Eは、一例として数式2により示される値に設定される。
【0067】
【数2】

【0068】
この場合のZ軸のスキャン開始位置は、穴の入り口のZ軸の座標値である。また、Z軸のスキャン終了位置は、「穴の入り口のZ軸の座標値−E(mm)」のZ軸の座標値で表される。これら、スキャン開始位置及びスキャン終了位置も、設定情報として記憶部87に記憶される。
なお、この場合のZ軸方向の1回のスキャン時間Tは、数式3により示される。
【0069】
【数3】

【0070】
次に、被検物200aの穴に対して、回転機構40によりプローブ部20を回転させる場合の、回転方向に走査して測定する回転開始角度(スキャン開始角度)、回転終了角度(スキャン終了角度)、及び回転角度単位(スキャン角度単位)が、形状測定装置100に設定される(ステップS4)。なお、これらのスキャン開始角度、スキャン終了角度、及びスキャン角度単位に関する設定情報は、記憶部87に予め設定されて記憶されていてよいし、操作者により入力されて記憶部87に記憶されてもよい。形状測定装置100の制御部80は、この設定情報に基づいて形状測定装置100における測定の制御を実行する。
【0071】
例えば、スキャン角度単位は、以下に示すように設定される。
穴の半径がR(mm)である被検物200aの穴の内面を全周測定して座標値の点群データを生成する場合、ライン光Laの有効幅をW(mm)とすると、スキャン角度単位Uは、一例として数式4により示される値に設定される。
【0072】
【数4】

【0073】
なお、この場合、スキャン角度範囲P(rad)に対してプローブ部20を回転させて測定した際のZ軸方向のスキャンの繰り返し回数は、数式5により示される。
【0074】
【数5】

【0075】
なお、スキャン開始角度、及びスキャン終了角度は、形状測定装置100において予め決まっている角度、または操作者により指定された任意の角度に設定される。
【0076】
形状測定装置100に測定条件が設定されると、制御部80は、測定を開始する制御を実行する。
まず、制御部80の駆動制御部83は、回転位置駆動部117に駆動信号を供給して回転機構40を駆動させることにより、プローブ部20の回転角度を設定されたスキャン開始角度に回転させて停止させる(ステップS5)。
【0077】
次に、制御部80は、回転位置検出部118により検出されたプローブ部20の回転角度(回転位置)に基づいて、プローブ部20の回転角度(回転位置)が、設定されたスキャン終了角度であるか否かを判定する(ステップS6)。ステップS6においてプローブ部20の回転角度が、設定されたスキャン終了角度である場合、制御部80はステップS14に処理を進める。
【0078】
一方、ステップS6においてプローブ部20の回転角度が、設定されたスキャン終了角度でない場合、制御部80の駆動制御部83は、移動位置駆動部115に駆動信号を供給して移動部30を駆動させることにより、プローブ部20の位置を設定されたZ軸方向のスキャン開始位置に移動して停止させる(ステップS7)。
【0079】
次に、制御部80の測定指示部86は、測定タイミングを制御する制御信号を供給して、光出力部50からのライン光Laを被検物200aの穴の内面に照射させ、受光部60を介して受光されたライン光Laを撮像部70に撮像させる。そして、制御部80の測定光位置判定部82は、撮像部70により撮像された画像データに基づいて、撮像されたライン光Laの位置が撮像領域において予め定められた有効領域内にあるか否かを判定する(ステップS8)。
【0080】
ステップS8において、撮像されたライン光Laの位置が撮像領域において予め定められた有効領域内にないと判定された場合、駆動制御部83は、ライン光Laの位置が撮像領域内の有効領域内の位置になる方向に受光部60を移動させる駆動信号を、受光位置駆動部21に供給する。受光位置駆動部21は、この供給された駆動信号に基づいて受光部20の位置を移動させる(ステップS9)。そして、制御部80は、ステップS8に処理を戻す。
【0081】
一方、ステップS8において、撮像されたライン光Laの位置が撮像領域において予め定められた有効領域内にあると判定された場合、制御部80は、撮像部70により撮像された画像データ(受光部60を介してライン光Laが撮像されたデータ)、座標検出部84により検出されたプローブ部20の座標情報と回転位置情報、及び座標検出部84により検出された受光部60の位置情報を取得し、記憶部87に記憶させる(ステップS10)。
【0082】
次に、制御部80の駆動制御部83は、移動位置駆動部115に駆動信号を供給して移動部30を駆動させることにより、プローブ部20のZ軸方向のスキャン位置を1ステップ(予め設定された距離間隔(移動量単位)の1つ分)移動して停止させる(ステップS11)。
【0083】
続いて、制御部80は、移動位置検出部116により検出されたプローブ部20の位置に基づいて、プローブ部20のZ軸方向の位置が設定されたスキャン終了位置であるか否かを判定する(ステップS12)。ステップS12においてプローブ部20のZ軸方向の位置が、設定されたスキャン終了位置でない場合、制御部80はステップS8に処理を進め、Z軸方向の次のスキャン位置に対する測定の処理を実行する。
【0084】
一方、ステップS12においてプローブ部20のZ軸方向の位置が、設定されたスキャン終了位置である場合、制御部80の駆動制御部83は、回転位置駆動部117に駆動信号を供給して回転機構40を駆動させることにより、プローブ部20の回転方向のスキャン角度を1ステップ(予め設定されたスキャン角度単位の1つ分)移動して停止させる(ステップS13)。そして、制御部80は、ステップS6に処理を戻し、回転方向の次のスキャン角度に対する測定の処理を実行する。
【0085】
そして、ステップS6においてプローブ部20の回転角度が、設定されたスキャン終了角度である場合、すなわち、Z軸方向の測定を穴の全周に対して終了した場合、制御部80の座標算出部85は、ステップ10において取得した画像データと位置情報に基づいて、三角測量の原理を用いて穴の三次元形状データを算出して生成する(ステップS14)。
【0086】
以上のように、本実施形態における形状測定装置100は、プローブ部20を穴の中に挿入し、穴の測定位置に相当する深さ位置において、測定するためのライン光Laを90度反射させてZ軸方向に対して直角の方向にライン光Laを出力することにより、プローブ部20から穴の内面にライン光Laを照射することができる。また、形状測定装置100は、この穴の内面に照射されたライン光Laの散乱光を受光する受光部60の位置を穴径の大きさに応じて移動可能であるため、穴径の大きさに合わせて受光部60を移動して三角測量の原理を用いてプローブ部20と穴の内面との距離を算出することができる。さらには、形状測定装置100は、プローブ部20を360度回転可能な回転機構40を備えていることにより、穴の内面の全周を測定することができる。
これにより、形状測定装置100は、ライン光Laを測定光として用いる光切断方式により穴の内側の形状を測定するため、レーザスポット光を測定光として用いる場合に比較して高速に測定できる。また、形状測定装置100は、穴の内側にプローブ部20を挿入して光切断方式により形状を測定することにより、穴の内側の形状を精度よく適切に測定することができる。
【0087】
なお、上記実施形態において、測定される穴が垂直に開けられた穴である場合について説明したが、形状測定装置100は、例えば、回転機構40の上部に2軸の回転機構をさらに設けて、X軸回り回転及びY軸回り回転を可能とすることにより、斜めに開けられた穴に対しても穴の深さ方向にプローブ部20を挿入可能な構成としてもよい。これにより、形状測定装置100は、斜めに開けられた穴に対しても穴形状を測定することができる。
【0088】
なお、図6のステップS8においてライン光Laの位置が有効領域内でないと判定された場合の制御は、受光部60の位置を調整して測定を継続する制御に限らず、例えば、エラー処理として扱い、プローブ部20をZ軸方向のスキャン開始位置に戻して再測定させる制御としてもよい。
【0089】
なお、図6を用いて、形状測定装置100が穴のZ軸方向及び全周方向の全ての画像データ及び位置情報を取得してから、穴の三次元形状データを算出して生成する処理について説明したが、これに限られるものではない。例えば、形状測定装置100は、各測定位置において取得される画像データ及び位置情報に基づいて、該測定位置の測定毎に形状データを生成してもよい。
【0090】
なお、穴の形状は、凹形状の穴であっても貫通された形状の穴であってもよい。
また、形状測定装置100は、穴の内面の表面形状に連続性ある場合(例えば、穴の深さ方向の位置に応じて穴径の大きさが連続的に異なる場合)、Z軸方向の現在の測定位置において得られる穴の内面の位置情報に基づいて、次の測定位置における穴の内面の位置を予測し、予測した位置に基づいて受光部60を移動させてもよい。これにより、形状測定装置100は、Z軸方向にプローブ部20の位置を移動させて穴の内面の位置を検出するスキャン中に、撮像されたライン光Laの位置を有効領域内の位置に追従させることができる。
【0091】
また、ライン光Laが撮像された画像データから穴の形状データを生成する場合、制御部80は、例えば、画像データ内の走査線毎に、ピクセル単位(画素単位)のサンプリングデータに対して、スプライン補間、または自己相関処理をして、1/100ピクセルの精度でライン光Laのピーク位置を検出する処理を実行する。これにより、制御部80は、画像データ内において撮像されたライン光Laのピーク位置を精度よく検出することができる。
【0092】
また、ライン光Laが撮像された画像データから穴の形状データを生成する場合、制御部80は、該画像データに撮像系における補正を実行する。ここでの補正とは、撮像部70の設置誤差(3方向の位置及び3方向の回転による設置誤差)、または反射ミラーやレンズ等の光学部品における歪み等、の補正である。
図7は、撮像系の補正を説明する説明図である。例えば、図7に示すように被検物の表面における光切断面210に基準格子Lcを設置し、この像を撮像部70が撮像した画像データにおける画素位置と、基準格子Lcの姿勢であるクロス点を含む面内の3次元座標が、補正式、または補正データによって関連付けられている。
例えば、ここでは簡略化して示すと、数式6に示す関係があり、スクリーン座標から基準格子面への変換を撮像系補正関数Fとして数式7に示すように定義する。
【0093】
【数6】

【0094】
【数7】

【0095】
そして、ライン光Laが撮像された画像データから穴の形状データを生成する場合、制御部80は、撮像系補正関数Fを用いて、該画像データに撮像系における補正を実行する。これにより、制御部80は、画像データ内において撮像されたライン光Laのピーク位置を精度よく検出することができる。
【0096】
(穴の形状測定動作の別の一例)
上記実施形態において、形状測定装置100が穴形状を測定する際に、穴径の大きさに応じて受光部60の位置をZ軸方向に移動させる制御について説明したが、形状測定装置100は、穴径の大きさに応じてプローブ部20の水平方向(X、Y軸方向)の位置を移動させる制御をしてもよい。
【0097】
図8は、被検物200bの穴形状を測定する場合のプローブ部20の動作を示す例として、穴径の大きさに応じてプローブ部20の水平方向(X、Y軸方向)の位置を移動させる場合の一例を示す模式図である。この図は、プローブ部20及び被検物200bの断面図であって、上記において規定したXYZ座標系におけるXZ平面による断面図である。なお、YZ平面による断面図とした場合も同様である。この図において、形状測定装置100は、穴径の大きさに応じてプローブ部20の水平方向(X、Y軸方向)の位置を移動させることにより、所定角度θ(例えば45度)を維持して三角測量の原理を用いて被検物200bの穴の内面とプローブ部20との距離を算出する。
【0098】
図8に示す被検物200bの有する穴は、穴の深さによって穴径が均一でない穴であって、Z軸方向の入り口側から領域Zr5、領域Zr6、及び領域Zr7、の順に穴径が小さくなっている。具体的には、領域Zr7における穴径は、領域Zr5における穴径に対して小さく、領域Zr6における穴径は、領域Zr7側から領域Zr5側に向かって次第に大きくなる。
【0099】
図8(a)に示すように、形状測定装置100は、被検物200bの領域Zr7における穴の内面を測定する場合、まず初めに、プローブ部20の回転軸20aが穴の中心軸Z200の位置と同じになるようにプローブ部20をXY平面上において水平方向(X、Y軸方向)に移動する。次に、形状測定装置100は、プローブ部20をZ軸方向の領域Zr7の位置に移動する。続いて、形状測定装置100は、所定角度θ(例えば45度)が維持されるような位置に受光部60をZ軸方向に移動する。この図において、光出力部50の出力位置と受光部60の受光位置との距離が距離D5となる位置に受光部60は位置している。ここで、被検物200aの領域Zr7における穴の内面とプローブ部20との距離Dk5は、所定角度θ(例えば45度)、及び距離D5に基づいて算出される。また、穴の内面の表面形状は、光出力部50から穴の内面に照射されたライン光Laによる光切断線を、受光部60を介して撮像部70により撮像された画像データによって得られる。これにより、座標算出部85は、所定角度θ(例えば45度)、距離D5、及び撮像された画像データにおけるライン光Laによる光切断線の位置情報に基づいて、光切断線(ライン光La)が延びる長手方向の画素毎に三角測量の原理を用いて被検物200bの穴の内面とプローブ部20との距離を算出する。
【0100】
次に、図8(b)に示すように、形状測定装置100は、被検物200bの領域Zr5における穴の内面を測定する場合、プローブ部20をZ軸方向の領域Zr7の位置から領域Zr5の位置に移動する。また、形状測定装置100は、図8(b)に示すように、プローブ部20と穴の内面との距離Dk5が維持されるように、プローブ部20の回転軸20aの位置が穴の中心軸Z200の位置と異なる位置(穴の内面に近づく方向の位置)にプローブ部20をXY平面上において水平方向(X、Y軸方向)に移動する。これにより、受光部60の位置を領域Zr7において測定した位置から変更せずに所定角度θ(例えば45度)は維持される。よって、座標算出部85は、プローブ部20の回転軸20aの移動距離分を加算することにより、所定角度θ(例えば45度)、距離D5、及び撮像された画像データにおけるライン光Laによる光切断線の位置情報に基づいて、光切断線(ライン光La)が延びる長手方向の画素毎に三角測量の原理を用いて被検物200bの穴の内面とプローブ部20との距離を算出する。
【0101】
また、形状測定装置100は、被検物200bの領域Zr6における穴の内面を測定する場合、領域Zr6において領域Zr7側から領域Zr5側に向かってプローブ部20をZ軸に沿って移動するとともに、次第に大きくなる穴径に応じて、プローブ部20と穴の内面との距離Dk5が維持されるように、プローブ部20をXY平面上において水平方向(X、Y軸方向)に移動する。これにより、受光部60の位置を領域Zr7において測定した位置から変更せずに所定角度θ(例えば45度)は維持される。よって、形状測定装置100は、領域Zr6における穴の内面を測定する場合も、図8(a)及び図8(b)に示す領域Zr5及び領域Zr7の場合と同様に三角測量の原理を用いて被検物200aの穴の内面とプローブ部20との距離を算出する。
【0102】
なお、受光部60の位置は、穴径が最も小さい測定位置において所定角度θ(例えば45度)となるように位置させることが望ましい。これにより、穴径が大きい測定位置に移動した場合、受光部60の位置を変更せずにプローブ部20の位置を移動することにより、所定角度θ(例えば45度)を維持させることができる。
【0103】
このように、形状測定装置100は、穴径の大きさに応じてプローブ部20の水平方向(X、Y軸方向)の位置を移動させる制御をすることにより、受光部60の位置を穴径に大きさに応じてZ軸方向に移動させることなく三角測量の原理を用いて被検物200bの穴の三次元形状データを算出して生成する。
これにより、形状測定装置100は、光切断方式を用いて穴の内側の形状を高速、且つ適切に測定することができる。
【0104】
なお、このプローブ部20の位置を移動させる制御においては、図5に示す被検物200aのように穴の入り口側の穴径が小さく穴の最深部側の穴径が大きい場合、穴径の大きい位置で測定する際に、プローブ部20を充分に移動できない場合がある。このような場合は、穴径の大きさに応じて、受光部60の位置を移動する制御の方が優位である。
【0105】
なお、上記実施形態によれば、形状測定装置100は、中空状の被検物200の内面にライン光La(測定光)を照射するとともに、被検物200に照射したライン光Laを受光して、被検物200の形状を測定する形状測定装置である。そして、形状測定装置100は、被検物200に照射するライン光La(ライン状の測定光)を出力する光出力部50と、光出力部50と隔てて設けられ、予め定められた方向から受光するライン光Laの散乱光を検出する受光部60と、を備えている。また、形状測定装置100は、測定光を検出する位置に応じて受光部60の位置が調整され、照射した光の出力位置と、受光部60の位置との距離に応じて被検物200との距離を算出する制御部80を備えている。
つまり、形状測定装置100は、被検物200の穴の中に光出力部50がライン光Laを照射し、光出力部50と隔てて設けられている受光部60の位置を調整して該ライン光Laを受光する。これにより、形状測定装置100は、光切断方式を用いて穴の内側の形状を高速、且つ適切に測定することができる。
【0106】
また、上記実施形態によれば、形状測定装置100は、中空状の深さ方向に受光部60の位置を移動させる受光位置駆動部21(第1駆動部)を備えている。また、受光部60は、検出されたライン光Laによって示されるラインの位置を検出する。そして、制御部80は、検出したラインの位置に応じて受光部60の位置を受光位置駆動部21によって移動させて、検出したラインの位置が予め定められる所定の位置になるように、受光部60の位置を調整する。
つまり、形状測定装置100は、光出力部50と隔てて設けられている受光部60の位置を受光位置駆動部21により穴の深さ方向に沿って上下に移動させることが可能である。そして、制御部80は、ライン光Laの受光される位置が適切な位置になるように、受光部60の位置を穴の深さ方向に沿って上下に移動させる。
これにより、形状測定装置100は、光切断方式を用いて穴の内側の形状を測定する際に、穴の内面に照射したライン光Laを適切な位置により受光して検出することができる。
【0107】
また、上記実施形態によれば、受光位置駆動部21は、照射した光の出力位置に対し受光部60の位置を相対的に移動させる。光出力部50は、受光部60の位置を移動させる方向に対して直角の方向にライン状のライン光Laを出力する。受光部60は、受光したライン光Laを受光位置駆動部21が受光部60の位置を移動させる方向に沿って反射する反射ミラー61(反射部)を備えている。そして、制御部80は、反射されたライン光Laに基づいて検出されるライン光Laによるラインの位置を判定して、判定結果を出力する測定光判定部81(判定部)を備えており、ラインの位置の判定結果に応じて、受光部60の位置を調整する。
つまり、受光位置駆動部21は、光出力部50は、受光部60の位置を移動させる方向、すなわち穴の深さ方向(Z軸方向)に対して直角の方向にライン光Laを出力する。形状測定装置100は、Z軸方向に対して直角の方向に出力してライン光Laを穴の内面に照射し、照射したライン光Laを受光部60の有する反射ミラー61により穴の深さ方向に対して平行に穴から遠ざかる方向に反射する。そして、この反射されたライン光Laは、撮像部70により撮像され、測定光判定部81により撮像されたライン光Laによるラインの位置が判定される。
これにより、測定光判定部81は、光切断方式を用いて穴の内側の形状を測定する際に、穴の内面に照射したライン光Laが受光された位置が適切な位置であるか否かを判定することができる。
なお、測定光判定部81が制御部80に備えられている例について説明したが、これに限られるものではない。測定光判定部81は、受光部60に備えられていてもよく、受光部60において受光されたライン光Laの位置を判定し、判定した結果を制御部80に供給してもよい。
【0108】
また、上記実施形態によれば、測定光判定部81は、ライン光Laによるラインの位置が、予め定められる所定の範囲内に治まるか否かを判定する。
例えば、測定光判定部81は、受光されたライン光Laによるラインの位置が、検出可能な有効領域内にあるか否かを判定する。これにより、測定光判定部81は、受光されたライン光Laによるラインの位置が検出可能な適切な位置に受光されているか否かを判定することができる。
【0109】
また、上記実施形態によれば、測定光判定部81は、反射されたライン光Laを撮像して形成される画像内に示されるライン光Laによるラインの位置を判定する。
つまり、定光判定部81は、受光されたライン光Laによるラインの位置が、撮像領域において予め定められた有効画素範囲の領域(有効領域)内にあるか否かを判定する。これにより、測定光判定部81は、撮像されたライン光Laによるラインの位置が検出可能な適切な位置に受光されているか否かを判定することができる。
【0110】
また、上記実施形態によれば、光出力部50と受光部60とは、指令に基づいて、光出力部50と受光部60との間の相対的な距離が保持されるように形成された共通の筐体に設けられているプローブ部20(プローブ部)を形成する。
つまり、光出力部50と受光部60とは、プローブ部20内の共通の筐体に設けられおり、光出力部50と受光部60との間の相対的な距離が保持されるような構造になっている。 これにより、形状測定装置100は、プローブ部20を穴の中に挿入、または穴の中で移動や回転をさせて測定を実行した場合に、光出力部50と受光部60との間の相対的な距離が保持される。
【0111】
また、上記実施形態によれば、形状測定装置100は、プローブ部20の位置を被検物200に対して相対的に移動させる位置駆動部112(第2駆動部)を備えている。
これにより、形状測定装置100は、位置駆動部112により、プローブ部20を穴の中に挿入、または穴の中で移動や回転をさせて測定を実行することができる。
【0112】
また、上記実施形態によれば、制御部80は、プローブ部20によって、被検物200に設けられている凹部又は貫通部の形状に沿って走査して、凹部又は貫通部の形状を算出する。つまり、形状測定装置100は、制御部80の制御により、プローブ部20を被検物200の穴の形状に従って穴の中を移動させて走査し、穴の形状を算出する。
これにより、形状測定装置100は、凹部又は貫通部を有する穴の形状を、光切断方式を用いて高速、且つ適切に測定することができる。
【0113】
また、上記実施形態によれば、光出力部50と受光部60とは、中空状の深さ方向を長手方向とする棒状の筐体に設けられる。つまり、プローブ部20は、穴の深さ方向を長手方向とする棒状の筐体であって、該筐体の内部に光出力部50と受光部60とを備えている。
これにより、プローブ部20は、穴の中に挿入しやすく、且つ穴の中に挿入した状態で穴の内面に対してライン光Laを照射し、照射したライン光Laの散乱光を受光することができる。
【0114】
また、上記実施形態によれば、中空状の被検物200の内面にライン光Laを照射するとともに、被検物200に照射したライン光Laを受光して、被検物200の形状を測定する形状測定方法において、光出力部50が被検物200に照射するライン光Laを出力する光出力過程と、光出力部50と隔てて設けられている受光部60が、予め定められた方向から受光する測定光の散乱光を検出する受光過程と、ライン光Laを検出する位置に応じて受光部60の位置が調整され、照射した光の出力位置と、受光部60の位置との距離に応じて被検物200との距離を算出する制御過程とを含む。
つまり、形状測定装置100における形状測定方法は、被検物200の穴の中に光出力部50がライン光Laを照射し、光出力部50と隔てて設けられている受光部60の位置を調整して該ライン光Laを受光する方法である。この形状測定方法により、形状測定装置100は、光切断方式を用いて穴の内側の形状を高速、且つ適切に測定することができる。
【0115】
また、上記実施形態によれば、中空状の被検物200の内面にライン光Laを照射するとともに、被検物200に照射したライン光Laを受光して、被検物200の形状を測定する形状測定装置100が備えるコンピュータにおけるプログラムは、光出力部50に被検物200に照射するライン光Laを出力させるステップと、光出力部50と隔てて設けられている受光部60に、予め定められた方向から受光するライン光Laの散乱光を検出させるステップと、ライン光Laを検出する位置に応じて受光部60の位置が調整され、照射した光の出力位置と、受光部60の位置との距離に応じて被検物200との距離を算出するステップとを実行させる。
つまり、形状測定装置100が備えるコンピュータにおけるプログラムは、被検物200の穴の中に光出力部50がライン光Laを照射し、光出力部50と隔てて設けられている受光部60の位置を調整して該ライン光Laを受光する制御を実行させる。このプログラムにより、形状測定装置100が備えるコンピュータは、光切断方式を用いて穴の内側の形状を高速、且つ適切に測定する制御をすることができる。
【0116】
なお、図4における制御部80は専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、また、メモリおよびCPU(中央演算装置)により構成され、上述の制御部80の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
また、プローブ部20を移動する代わりに、反射ミラー51の姿勢を制御してライン光Laの照射方向を調整することも可能である。この場合、撮像されるライン光Laを撮像部70の撮像範囲に入るように反射ミラー51の姿勢(角度)を調整する。また、この場合、距離計算には反射ミラー51の姿勢(基準位置に対する角度)とライン光Laとの位置を用いる。
【0117】
また、図4における制御部80の各部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述の各部の処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0118】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【0119】
以上、この発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0120】
20 プローブ部、21 受光位置駆動部(第1駆動部)、25 調整部、 50 光出力部、60 受光部、61 反射ミラー(反射部)、70 撮像部(検出部)、80 制御部、81 測定光判定部(判定部)、100 形状測定装置、112 位置駆動部(第2駆動部)、被検物200,200a,200b

【特許請求の範囲】
【請求項1】
中空状の被検物の内面に測定光を照射するとともに、該被検物で散乱した散乱光を受光して、前記被検物の前記内面の形状を測定する形状測定装置であって、
前記被検物に照射するライン状の測定光を出力する光出力部と、
前記測定光の散乱光を受光する受光部と、
前記光出力部から出力された光が前記受光部に受光されるまでに通過する光路長を調整する調整部と、
前記受光された散乱光の位置を検出する検出部と、
前記調整部による調整状態と前記検出部による検出位置とに基づいて前記被検物の形状を測定する制御部と、
を備えることを特徴とする形状測定装置。
【請求項2】
前記調整部は、
前記中空状の深さ方向に前記受光部の位置を移動させる第1駆動部
を備え、
前記検出部は、
前記受光された散乱光によって示されるラインの位置を検出し、
前記制御部は、
前記検出部により検出されたラインの位置に応じて前記受光部の位置を前記第1駆動部によって移動させて、前記検出されたラインの位置が前記予め定められる所定の位置になるように、前記受光部の位置を調整する
ことを特徴とする請求項1に記載の形状測定装置。
【請求項3】
前記第1駆動部は、
前記光出力部から出力された光の出力位置に対し前記受光部の位置を相対的に移動させ、
前記光出力部は、
前記受光部の位置を移動させる方向に対して直角方向に前記ライン状の光を出力し、
前記受光部は、
前記受光した散乱光を前記第1駆動部が前記受光部の位置を移動させる方向に沿って反射する反射部、
を備え、
前記検出部は、
前記反射された散乱光に基づいて、前記受光された散乱光によって示されるラインの位置を検出し
前記制御部は、
前記検出されたラインの位置を判定して判定結果を出力する判定部、
を有し、
前記判定部によるラインの位置の判定結果に応じて、前記受光部の位置を調整する
ことを特徴とする請求項2に記載の形状測定装置。
【請求項4】
前記判定部は、
前記検出されたラインの位置が、前記予め定められる所定の範囲内に治まるか否かを判定する
ことを特徴とする請求項3に記載の形状測定装置。
【請求項5】
前記検出部は、
前記反射された散乱光を撮像して形成される画像内に示される前記反射された散乱光によるラインの位置を検出する
ことを特徴とする請求項4に記載の形状測定装置。
【請求項6】
前記光出力部と前記受光部とは、
指令に基づいて、前記光出力部と前記受光部との間の相対的な距離が保持されるように形成された共通の筐体に設けられているプローブ部を形成する
ことを特徴とする請求項1から6の何れか1項に記載の形状測定装置。
【請求項7】
前記プローブ部の位置を前記被検物に対して相対的に移動させる第2駆動部

備えることを特徴とする請求項6に記載の形状測定装置。
【請求項8】
前記制御部は、
前記プローブ部によって、前記被検物に設けられている凹部又は貫通部の形状に沿って走査して、前記凹部又は前記貫通部の形状を算出する
ことを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の形状測定装置。
【請求項9】
前記光出力部と前記受光部とは、
前記中空状の深さ方向を長手方向とする棒状の前記筐体に設けられる
ことを特徴とする請求項6から請求項8の何れか1項に記載の形状測定装置。
【請求項10】
中空状の被検物の内面に測定光を照射するとともに、該被検物で散乱した散乱光を受光して、前記被検物の前記内面の形状を測定する形状測定方法であって、
光出力部が前記被検物に照射するライン状の測定光を出力する光出力過程と、
受光部が、前記測定光の散乱光を受光する受光過程と、
調整部が、前記光出力部から出力された光が前記受光部に受光されるまでに通過する光路長を調整する調整過程と、
検出部が、前記受光された散乱光の位置を検出する検出過程と、
制御部が、前記調整部による調整状態と前記検出部による検出位置とに基づいて前記被検物の形状を測定する制御過程と、
を含むことを特徴とする形状測定方法。
【請求項11】
中空状の被検物の内面に測定光を照射するとともに、該被検物で散乱した散乱光を受光して、前記被検物の前記内面の形状を測定する形状測定装置が備えるコンピュータに、
光出力部に前記被検物に照射するライン状の測定光を出力させるステップと、
受光部に前記測定光の散乱光を受光させるステップと、
調整部に、前記光出力部から出力された光が前記受光部に受光されるまでに通過する光路長を調整させるステップと、
検出部に前記受光された散乱光の位置を検出させるステップと、
前記調整部による調整状態と前記検出部による検出位置とに基づいて前記被検物の形状を測定するステップと、
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−220341(P2012−220341A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86396(P2011−86396)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】