説明

微小電気機械素子の製造におけるエッチング電荷ダメージの低減

【解決手段】基板上に少なくとも2つの導電層を形成することを含む微小電気機械素子を製造する方法。絶縁層が2つの導電層の間に形成される。導電層は互いに電気的に結合され、次に絶縁層が除去され、導電層間に隙間を形成する。層の電気的な結合は、除去プロセスの間に素子上に増える静電荷の影響を除く。

【発明の詳細な説明】
【分野】
【0001】
【背景】
【0002】
微小電気機械素子(MEMS)は、薄膜プロセスにより製造することができる。これらのプロセスは、素子を形成するためにパターンニングされエッチングされている層に堆積された一連の薄膜を含むことができる。素子が動作できるように、1つの層は絶縁層であることができる。絶縁層は、構造部材として機能する層を形成するのに用いられるものであるが、素子が完成したときに除去できるものである。
【0003】
絶縁層の除去は、犠牲層材料に機能するだけのエッチャントとしての材料を用いるエッチングプロセスを含むことができる。場合によっては、絶縁層はドライガスエッチングで除去できる酸化物であることがある。他の除去方法の場合のように、他の絶縁層の形態も可能である。絶縁層を除去すると、典型的には、素子の部材が作動を進めることになる隙間になる。
【0004】
MEMS素子は、多くの場合、隙間により分離された第1の導電層と第2の導電層との間の電圧差を引き起こす電気信号を用いて作動する。絶縁層のガスエッチングであるドライエッチングの間、帯電が層上で増すことがあり、可動部材が他の導電層に引き付けられる。極端な場合、2つの層が互いに貼り付くことがあり、素子が動作しなくなる。少し極端な場合、可動部材は損傷し、変形し、その後正しく動かなくなることがある。
【発明の開示】
【概要】
【0005】
【詳細な説明】
【0006】
本発明は、図面を参照し開示を読むことで最も理解することができる。
【0007】
図1は、絶縁層を含む薄膜プロセスで形成される微小電気機械素子の例を示す。この特定の例は、干渉変調器によるが、本発明の実施形態は絶縁層を有する薄膜プロセスで形成される全ての種類のMEMS素子に適用することができる。変調器は、透明基板10上に形成される。典型的には12及び14のような金属及び酸化物の層を備える光積層が、基板10の上に形成される。金属膜18は、図示しない犠牲層の上に形成される。犠牲層は絶縁層と呼ぶことができ、処理の間、導電層を互いから電気的に絶縁するよう機能する。膜の形成の前に、ビアが絶縁層にパターニングされ、膜からの金属がビアに埋まり、16のように柱を形成することを可能にする。
【0008】
金属膜18のような変調器構造が完成すると、絶縁層は除去される。これは、膜18の部分が光積層の電極層12の方へ偏向することを可能にする。干渉変調器の場合、膜18は、膜18と電極層12の間の電圧差の操作により、金属層12に引き付けられる。層12と膜18は、ここで述べるように金属あるいは任意の導電材であることができる。図1に示す膜の部分により形成されたセルは、導電層14に18における膜の電圧とは異なる電圧を印加することにより作動する。これは、膜が電極層12、すなわち第1の導電層に静電気的に引き付けられるようにする。導電層は、金属あるいは任意の他の導電材であることができる。
【0009】
絶縁層の除去の間、2つの導電層の表面上で十分に帯電が増し、膜を作動されることなく導電層14の方へ引き付けさせる。この状態を図2に示す。これは、通常干渉変調器の作動状態であるが、違いは、膜は電位が変化する時に酸化層12から放れないことである。膜は、この作動状態を恒久的に前提としている。これは、付着と摩擦により引き起こされることがあり、導電層12と導電膜18との間の静電気力により悪化させられるスティクションと多くの場合呼ばれる。
【0010】
絶縁層の除去は、多くの異なる方法でなされる。典型的には、二フッ化キセノン(XeF)エッチングのようなドライ、ガスエッチングを用いて除去される。これらはエッチングプロセスの例であるが、任意のエッチングプロセスを用いることができる。帯電を増すのに寄与するのは、ドライ環境であることがある。しかしながら、帯電の増加をなくすプロセスを適応させるため以外は、MEMS素子を製造するのに用いられる材料またはプロセスの主成分は、変えられる必要がない方がよいであろう。
【0011】
さらにウェットエッチングプロセスの間に導電層を接地することにより得られる利点がある。接地により、望ましい場合は効果的な、または望ましくない場合は軽減された素子電気化学への影響があるであろう。一実施形態において、層は共に接地され、絶縁層は除去され、接地は適切な位置に残されているので、素子は静電放電のおそれ無しに安全に運ぶことができる。これは、エッチングがウェットエッチングであってもドライエッチングであっても有益である。
【0012】
接地プロセスは、素子の構造外の装置または機構により外部接地とすることができる。あるいは、接地は製造の間に可能になる素子の内部構造の部分とすることもできる。最初に、外部接地について述べる。
【0013】
エッチングプロセスの間、帯電の増加を軽減する装置を図3に示す。他の実施形態を図4に示す。図3において、導電線22は、第1の導電層14と第2の導電層18に、それらを同電位に保つように取り付けられている。同電位は、それらを接地面に取り付けること、すなわちそれらをぴったり付け合せることを含むことができる。それらを同電位に保つことにより、帯電の増加は2つの層の差を引き起こさないであろうし、それゆえエッチングプロセスの間、膜を作動させる問題を回避するであろう。さらにより詳しく述べるように、2つの層はエッチングプロセスの前の任意の時点で互いに電気的に結合させることができるが、これは典型的にはエッチングプロセスの直前に行われるであろう。素子が製造される基板のインアクティブエリアへの電気的な結合を制限することが望ましいであろう。
【0014】
図4の他の実施形態は、3つの導電層と2つの絶縁層によって製造される素子を示す。干渉変調器の本実施形態において、図1及び図3で第2の導電層18に相当するのは、実際には2つの導電層18a及び18bである。それらは、一般に2つの別個の層として堆積されるが、互いに物理的または電気的に接続される。これは、典型的には、他の導電層との接続になる1つの接続を必要とするだけの柔軟層と鏡層の組み合わせという結果になるであろう。絶縁層は、層18aと電極層12の間に形成されるものに加えて、層18aと層18bの間に形成することができるので、この特定の構成は、第1の絶縁層に相当する2つの絶縁層を必要とすることができる。層18aと層18bの接続は、第1の絶縁層の第2の部分におけるビアにより形成することができる。ここでの説明のため、この絶縁層は、堆積された導電層がそれを他の導電層に接続するために一般に導電線を必要としないことについて問題にしない。
【0015】
第2の絶縁層25は、柔軟層18b上に形成することができ、導電層18bと第3の導電層26を分離する。この例の第3の導電層はバス層であり、変調器のセルのアドレス指定を支援するために、柔軟層及び鏡層上に信号伝達バスを形成するのに用いられる。本発明の実施形態が用いられる用途すなわちMEMS素子に関わらず、これは典型的には、エッチングプロセスの間に帯電の増加を軽減または無くすために電気的に結合される複数の導電層の例を正に意図している。
【0016】
図4に示すのも、2つの層の間のみの接続の他の実施形態である。図24において、導電線22は接地面、この例においてはエッチングチャンバー30の枠に取り付けられている。これは、それらが「既知の」電位すなわち接地になる場合、互いに電気的に接続された2つあるいはそれ以上の層を有するよりも望ましいであろう。あるいは、導電線22及び24は、他の構造に取り付けることができる。2つあるいはそれ以上の層が同電位に保たれる限り、帯電の増加により膜が基板上の導電層に引き付けられることはないはずである。
【0017】
前述したように、MEMS素子の製造のための現行のプロセスフローに支障を来たさない帯電の増加を回避するあるいは軽減する手段を使うことがより望ましい。MEMS素子を製造する方法の例を、この場合は前述した干渉変調器であるが、図5におけるフローチャートの形態に示す。
【0018】
なお、この説明で特定の例として挙げられたプロセスフローは、干渉変調器に関する。しかしながら、本発明の実施形態はドライ、ガスエッチングにより除去される絶縁層を有する任意のMEMS素子製造フローに適用することができる。前述したように、干渉変調器はガラスのような透明基板の上に設けられる。32で、電極層が堆積され、パターニングされ、エッチングされ、変調器のセルにアドレス指定をするための電極を形成する。次に34で、光層が堆積されエッチングされる。36で、第1の絶縁層が堆積され、次に38で、鏡層が堆積される。この例において、第1の導電層は鏡層になるであろう。
【0019】
次に40で、第1の導電層はパターニングされ、エッチングされる。42で、第2の絶縁層が堆積される。この場合も、これは第2の導電層が実際に2つの導電層、柔軟層、及び鏡層から形成される図4の例に特有である。第1及び第2の絶縁層は、第2の絶縁層の両側面上の導電層間の帯電の増加に関係がないので、1つの絶縁層として扱うことができる。次に44で、柔軟層が堆積され、46で、パターニングされ、エッチングされる。
【0020】
48で、典型的なプロセスフローが、第1及び第2の導電層、この場合、電極層と鏡/柔軟層の接地を含むように変更される。2つの導電層と1つの有効な絶縁層を有する素子に関して、50で、絶縁層がエッチングで除去されている状態でプロセスは終わることができる。これは、1つの実施形態であるだけであり、それゆえプロセスの終了は破線のボックス中に示される。2つを超える導電層を有する素子に関して、52で、プロセスは継続することができる。
【0021】
52で、第3の絶縁層はこの特定の例においては52で堆積される。上述したように、これは実際に第2の、有効な絶縁層だけであることができる。バス層、すなわち第3の導電層は、54で堆積され、56でパターニングされエッチングされる。58で、導電層は、この例では3つあるが、58で接地されあるいは互いに電気的に結合されており、60で、絶縁層は除去される。素子と電気駆動方式の機能性により、62で、導電層は切り離すことができる。素子の動作が異なる電位に保持されている導電層間に起きる静電気引力に依存する干渉変調器の例に対して、結合は除去される必要があるであろう。
【0022】
結線は、導電層を結合する外部プロセスの例である。他の外部の例は、テストプローブ構造を用いて層間を結合させることと、ガス自体の分子が層間を結合するイオン化ガスの使用を含む。
【0023】
なお、層を互いに接続するプロセス、すなわちそれらを全て同電位に接続することは、層の結合と呼ばれる。これは、層が互いにぴったり接続される状況、その電位が接地を含む共通電位に互いに接続される状況、または共通電位すなわち同電位に個別に接続される状況をカバーすることを意図している。層をどのように電気的に互いに接続するかの制限は意図していない。
【0024】
内部の接地装置の例が図6a及び6bに示されている。MEMS素子の製造の部分として、典型的には多くの素子が図6aにおいて70で示される部分である1つの基板上に製造されている。素子の製造の間、リード線を、電極層12、機械または鏡層18、バス層26のような素子の様々な層から、76のようなパッドまたはタブを検査するために供給することができる。これらのパッドを、全てのパッドを互いに結ぶ接続74によるように、素子の製造における導電層パターニング及びエッチングプロセスの一部のように結合することが可能である。これは、その後の処理のために導電層を互いに結合するであろう。
【0025】
上述したように、互いに結合している層と共に動作できない素子に対して、この内部結合は除去されなければならないであろう。図6bに示すように、パッド76aと結合接続74との間の接続は切断され得る。基板がその個々の素子に分割されるとき、切られ、削られ、そうでなければ壊されるであろう。スクライブライン78のような切断を形成するのに用いられる線は、パッド76間の結合と接続74の結合に役立つであろう。これは内部結合の例である。
【0026】
このように、導電層と少なくとも1つの絶縁層を有するMEMS素子は、素子を動作不能にすることがある帯電の増加を避けながら、現行の処理を用いてエッチングすることができる。パッケージングの前に、典型的にはエッチチャンバーからの素子の移動時に、接続は取り除かれ、そうでなければ素子から除去される。
【0027】
このように、エッチプロセスの間の帯電の影響を軽減するか除去するための方法及び装置の特定の実施形態を重点に述べたが、そのような特定の言及は、特許請求の範囲で述べられる範囲外の本発明の範囲の制限であるとみなされることを意図していない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】絶縁層を用いて形成される微小電気機械素子の実施形態を示す。
【図2】エッチングプロセスの間に増える静電荷により動作不能になる微小電気機械素子の実施形態を示す。
【図3】エッチングプロセスの間に増える静電荷の影響を軽減するための装置の実施形態を示す。
【図4】エッチングプロセスの間の静電荷の影響を軽減するための装置の他の実施形態を示す。
【図5】微小電気機械素子を製造するための方法の実施形態のフローチャートを示す。
【図6a】エッチングプロセスの間の静電荷の影響を軽減するための他の装置の実施形態を示す。
【図6b】エッチングプロセスの間の静電荷の影響を軽減するための他の装置の実施形態を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微小電気機械素子を製造する方法であり、
基板上に少なくとも第1の導電層及び第2の導電層を形成することと、
前記第1の導電層と前記第2の導電層の間に絶縁層を形成することと、
前記第1の導電層と前記第2の導電層を互いに電気的に結合することと、
前記絶縁層を除去し、前記第1の導電層と前記第2の導電層の間の隙間を形成することと、
を含む方法。
【請求項2】
第3の導電層を形成することをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記絶縁層を形成することは、2つの絶縁層を形成することをさらに含む請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記絶縁層を除去することは、前記絶縁層のエッチングを行うことを含む請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記エッチングを行うことは、ドライガスエッチングを行うことを含む請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記ドライガスエッチングを行うことは、二フッ化キセノンエッチングを行うことを含む請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記導電層を互いに電気的に結合することは、前記導電層を外部から互いに結合することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記導電層を外部から互いに結合することは、導線を用いること、プローブ構造を適用すること、またはイオン化ガスを用いて前記絶縁層を除去することを含む請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記導電層を互いに電気的に結合することは、前記導電層を内部で互いに結合することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記導電層を互いに電気的に結合することは、導線を用い前記導電層に電気的な接続を供給することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記導電層を互いに電気的に結合することは、導線を用い前記導電層に電気的な接続を供給することと、次に前記導線を共通電位に接続することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記導電層を互いに電気的に結合することは、各導電層に対して導線を用いることと、全ての前記線を前記同電位に電気的に接続することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記導電層を互いに電気的に結合することは、前記基板のインアクティブエリアにおいて前記導電層を互いに電気的に結合することを含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
微小電気機械素子を製造する装置であり、
エッチングプロセスの前に少なくとも2つの導電層を互いに電気的に結合するよう構成され、前記エッチングプロセスでは、前記少なくとも2つの導電層は前記微小電気機械素子の少なくとも一部分を形成する装置。
【請求項15】
前記導線は、前記導電層を互いに接続するよう構成された外部導線を含む請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記導線は、前記導電層を互いに接続するよう構成された内部導線接続を含む請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記導線は、前記導電層を互いにかつ共通電位に接続するよう構成された導線を含む請求項14に記載の装置。
【請求項18】
前記導線は、前記導電層を個々に共通電位に接続するよう構成された導線を含む請求項14に記載の装置。
【請求項19】
前記導線は、ガスエッチングチャンバー内に供給される請求項14に記載の装置。
【請求項20】
前記少なくとも2つの導電層の1つは金属層を含む請求項14に記載の装置。
【請求項21】
前記少なくとも2つの導電層の1つは電極を含む請求項14に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【公表番号】特表2007−536097(P2007−536097A)
【公表日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−511399(P2007−511399)
【出願日】平成17年4月20日(2005.4.20)
【国際出願番号】PCT/US2005/013462
【国際公開番号】WO2005/110915
【国際公開日】平成17年11月24日(2005.11.24)
【出願人】(505258472)アイディーシー、エルエルシー (122)
【Fターム(参考)】