説明

微細パターンの製造方法および光学素子

【課題】高スループット・大面積・低コストの微細パターンの製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】透明基体1上に加工対象層2を形成し、前記加工対象層2上に透明誘電体からなるレジスト層を形成するとともに、前記レジスト層をナノインプリント法によってパターニングすることにより、前記レジスト層の上面に凹部53を有するパターン化レジスト層3を作るパターン化レジスト層形成工程と、少なくとも前記パターン化レジスト層3の上面3aに金属層からなるハードマスク層4を形成した後、前記凹部53の底部53aに残されたレジスト残渣55をエッチングして除去してから、前記パターン化レジスト層3をマスクにして前記加工対象層2をエッチングするエッチング工程と、を具備することを特徴とする微細パターンの製造方法を提供することによって、上記課題を解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細パターンの製造方法および光学素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、ナノオーダーの加工精度を必要とする微細パターンを有する半導体素子あるいは光学素子が増加している。半導体素子においては、集積度を高めるために、また、光学素子においては、より高精度に光を制御するために、配線・パターンサイズをより細かくすることが求められている。しかし、微細パターンを細くするにつれて、微細パターンの製造はますます困難となり、生産コストも高くなっている。
【0003】
このような微細パターンの製造方法の代表的なものとして、リソグラフィーとドライエッチングの組み合わせが一般的に利用されている。この方法は、基板上にエッチング対象膜およびレジストを順次成膜し、電子線(EB)リソグラフィーあるいは光リソグラフィー(例えば、ArFエキシマレーザリソグラフィー)を用いて前記レジストをパターニングしてエッチングマスクとした後、エッチング対象膜の露出部分をドライエッチングして、最後に前記レジストを除去することにより、エッチング対象膜に微細パターンを転写するというものである。この方法によれば、複雑な配線パターンなどをエッチング対象膜に正確・精密に形成することができる。例えば、数十nmの幅の微細金属パターンなどでも作製することができる。
【0004】
特許文献1〜9には、この方法を用いて微細パターンを製造した例が開示されている。特許文献1には、グリッド偏光子の製造方法が開示されている。この製造方法では、基板上に金属膜を形成し、その上に縞状にパターニングしたフォトレジストを形成し、さらに、その上に金属又は誘電体の硬質被膜を斜め蒸着し、前記硬質被膜をマスクとして、前記金属膜をドライエッチングして金属グリッドを形成した後、前記マスクを除去してグリッド偏光子を製造する。
【0005】
なお、グリッド偏光子(Grid Polarizers(GP))、特に、ワイヤーグリッド偏光子(Wire−Grid Polarizers(WGP))とは、導体からなる細線(導体グリッド)を、対象光の波長以下の周期でグリッド状に平行に配列させたものである。光がグリッド偏光子に入射された場合、この導体グリッドと平行な方向に振動している光の電界成分の一部はこのグリッド偏光子で反射され、導体グリッドと垂直な方向に振動している光の電界成分はこのグリッド偏光子を透過する性質を有するため、対象光のある偏光成分のみを通過させることができる。
【0006】
特許文献2には、半導体素子の製造方法が開示されている。この製造方法では、微細なゲート電極パターンを簡易に形成することができる。ここでは、パターニングしたレジストと、金属膜の斜め蒸着の手法を用いている。この斜め蒸着の手法を用いるとともに、レジストを壁あるいは「ひさし」のように利用して、金属膜を蒸着する部分と、金属膜を蒸着しない部分とを形成することにより、微細パターンをより微細に形成する。
【0007】
特許文献3には、化合物半導体装置及びその製造方法が開示されており、レジストをパターニングした後、金属膜の斜め蒸着の手法を用いている。特許文献4には、電界放射冷陰極の製造方法が開示されおり、レジストを形成し、それをパターニングして開口部を形成した後、その開口部に金属を斜め蒸着することにより、開口部内にエミッターを形成している。特許文献5には、半導体装置の製造方法が開示されている。スペーサ膜に対してAlを斜め蒸着してメタル膜を形成する。このスペーサ膜には、凹部からなるリセス部が設けられており、斜め蒸着により形成される前記メタル膜は、このリセス部の底面には形成されない。そのため、前記メタル膜をマスクとしてエッチングすることにより、前記リセス部の底面をエッチングし、メタル膜を除去して、前記リセス部の底面にゲート電極を形成することによって、微細なパターンを形成する。
【0008】
特許文献6には、微細構造を有する光学素子の製造方法が開示されている。従来、微細パターンを形成するレジストの断面は矩形形状をなすものに限られていたが、レジストの側壁面に金属膜を形成することにより、レジストの断面が波型形状であっても微細パターンを形成することができることが記載されている。特許文献7には、ナノメートルオーダの機械振動子とその製造方法及びその機械振動子を用いた測定装置が開示されており、特許文献8には、パターンド・メディア・インプリント・マスタを作成する装置、方法及びシステムが開示されている。どちらの文献においても、斜め蒸着による金属膜の作製について記載されている。特許文献9には、ゲート電極形成方法が開示されている。パターニングしたレジストと斜め蒸着手法を用いて、微細パターンのゲート電極を形成する方法について記載されている。
【0009】
しかしながら、上記のいずれの微細パターンの製造方法においても、レジストのパターニングに低スループット・小面積・高コストの電子線(EB)リソグラフィーあるいは光リソグラフィー(例えば、ArFエキシマレーザリソグラフィー)を必要とするため、高スループット・大面積で製造されるデバイスの製造には適さないという問題があった。
【特許文献1】特開平9−304620号公報
【特許文献2】特開平8−250513号公報
【特許文献3】特開平11−186292号公報
【特許文献4】特開2000−173448号公報
【特許文献5】特開2002−26034号公報
【特許文献6】特開2006−11129号公報
【特許文献7】特開2006−153886号公報
【特許文献8】特開2006−286181号公報
【特許文献9】特開平3−87036号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、高スループット・大面積・低コストの微細パターンの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の微細パターンの製造方法は、透明基体上に加工対象層を形成し、前記加工対象層上に透明誘電体からなるレジスト層を形成するとともに、前記レジスト層をナノインプリント法によってパターニングすることにより、前記レジスト層の上面に凹部を有するパターン化レジスト層を作るパターン化レジスト層形成工程と、少なくとも前記パターン化レジスト層の上面に金属層からなるハードマスク層を形成した後、前記凹部の底部に残されたレジスト残渣をエッチングして除去してから、前記パターン化レジスト層をマスクにして前記加工対象層をエッチングするエッチング工程と、を具備することを特徴とする。
【0012】
本発明の微細パターンの製造方法は、前記エッチング工程の後に、前記ハードマスク層と前記パターン化レジスト層を取り除く工程を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の微細パターンの製造方法は、前記加工対象層が、金属層からなることを特徴とする。
【0014】
本発明の微細パターンの製造方法は、前記エッチング工程が、前記レジスト残渣と、金属層からなる前記加工対象層に形成された自然酸化物膜と、前記加工対象層とを順次エッチングする工程であることを特徴とする。
【0015】
本発明の微細パターンの製造方法は、前記エッチング工程において、前記レジスト残渣のエッチングガスとして、O、CF、CHF、Ar、HCl、Cl、BCl、H、Nのいずれかを含むガスを用い、前記自然酸化物膜のエッチングガスとして、CF、CHF、Ar、HCl、Cl、BCl、H、Nのいずれかを含むガスを用い、前記金属層のエッチングガスとして、CF、CHF、Ar、Cl、Nのいずれかを含むガスを用い、ガス圧を0.1〜10Paとし、バイアス電力を10〜2000Wとする条件でドライエッチングすることを特徴とする。
【0016】
本発明の微細パターンの製造方法は、前記エッチング工程において、蒸着法により前記レジスト層の上面に前記ハードマスク層を形成してから前記加工対象層をエッチングすることを特徴とする。
【0017】
本発明の微細パターンの製造方法は、前記エッチング工程において、斜め蒸着法により前記レジスト層の上面に前記ハードマスク層を形成してから前記加工対象層をエッチングすることを特徴とする。
【0018】
本発明の微細パターンの製造方法は、前記エッチング工程において、前記レジスト層の上面における厚みが前記凹部の底部における厚みよりも厚くなるように、前記ハードマスク層をスパッタ法により形成した後、ウェットエッチングを行って前記凹部内の前記ハードマスク層のみを除去して、前記レジスト層の上面に前記ハードマスク層を形成してから前記加工対象層をエッチングすることを特徴とする。
【0019】
本発明の微細パターンの製造方法は、前記エッチング工程において、前記凹部を有する前記パターン化レジスト層の表面を覆うようにハードマスク素材をウェットコーティング法により塗布した後、アッシング法またはポリッシング法を用いて前記パターン化レジスト層の上面を露出させ、前記凹部に残されたハードマスク素材を前記ハードマスク層として、前記パターン化レジスト層の露出部分をエッチング除去してから、前記パターン化レジスト層の残留部分をマスクにして前記加工対象層をエッチングすることを特徴とする。
【0020】
本発明の光学素子は、透明基体上に、グリッド状に成形されてなる微細パターンが形成されており、前記微細パターンが、金属層と、前記金属層上に積層された透明誘電体層と、前記透明誘電体層上に形成された別の金属層とからなることを特徴とする。
【0021】
本発明の光学素子は、前記透明誘電体層の高さが200nm以上であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明の微細パターンの製造方法によれば、高スループット・大面積・低コストの微細パターンの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
(実施形態1)
本発明の実施形態である微細パターンの製造方法の一例について説明する。
図1(a)〜(d)および図2(a)〜(d)は、本発明の実施形態である微細パターンの製造方法の一例を説明する工程断面図である。
【0024】
本発明の実施形態である微細パターンの製造方法は、パターン化レジスト層形成工程と、エッチング工程とからなる。
【0025】
(パターン化レジスト層形成工程)
図1(a)に示すような透明基体1の上面1aを公知の洗浄方法で洗浄した後、図1(b)に示すように、加工対象層2を膜厚tで成膜する。
【0026】
加工対象層2は金属層からなることが好ましい。微細パターンを正確に形成することができ、また、形状安定性も高いためである。
加工対象層2の材料として金属材料を用いる場合には、Al、Au,Agなどの金属材料を単独で用いても、複数の種類の金属からなる合金として構成しても良く、また、複数の金属層からなる構成としてもよい。たとえば、グリッド偏光子を形成する場合には、加工対象層2をAlで構成して微細パターンを形成すれば、消光比(コントラスト)を高くすることができる。
【0027】
加工対象層2が金属層からなる場合に、その表面に自然酸化物層が形成されていてもよい。加工対象層2を金属層として形成した場合、製造プロセスの条件によって、金属層の表面に自然酸化物層が形成される場合がある。この場合、自然酸化物層の膜厚は非常に薄いので、グリッド偏光子の特性にほとんど影響を与えない。
【0028】
加工対象層2の材料としては、非金属材料を用いてもよい。非金属材料からなる微細パターンも、光学素子などに利用できるためである。加工対象層2の材料として非金属材料を用いる場合には、たとえば、Alなどの金属酸化物などを用いることができる。
【0029】
加工対象層2の形成方法は、蒸着法、スパッタ法などのドライプロセスのほか、スピンコーティング法、ディップ法などのウェットプロセスなどを適宜選択して利用することができる。
【0030】
また、加工対象層2と透明基体1との間には、必要に応じて他の材料を成膜して下地層40を形成してもよい。
下地層40は、透明基体1と加工対象層2との密着性をあげるため、あるいは、微細パターンを形成する構造体として加工対象層2と下地層40からなる2層構造体を用いるために設けることができる。
下地層40の材料としては、加工対象層2の材料として挙げた金属材料あるいは非金属材料のほか、樹脂材料などを用いることができる。
【0031】
次に、図1(c)に示すように、加工対象層2上に、透明誘電体からなるレジスト層48を膜厚vで塗布する。さらに、ナノインプリント法を用いて、微細パターンをレジスト層48に転写する。具体的には、表面46aに、幅W、ピッチpの凹部44からなる微細パターンを刻み込んだ金型46を、レジスト層48に押し付けてその形状を転写(パターニング)する。これにより、図1(d)に示すように、上面3aに、幅p−W、ピッチpの凹部53からなる微細パターンを有するパターン化レジスト層3が形成される。
【0032】
なお、この転写の工程は数分で終了し,同じ形状の部品を短時間で大量に作り出すことができる。また、ナノインプリント法で使う金型46の微細パターンの凹凸は、数十nm〜数百nm範囲で形成されており、通常、電子線(EB)露光技術とエッチング技術を使って作成する。
【0033】
レジスト層48としては、加工対象層2をエッチングする際、ある程度のエッチング耐性(少なくとも加工対象層2のエッチングレートに対して同等、もしくは遅いもの)を有するものであれば、特に限定されない。より高スループットでナノインプリントを行うという観点からは、ラジカル重合系のレジストを用いることが望ましく、例えば東洋合成工業製PAK−01などを用いることができる。
【0034】
しかし、このナノインプリント法では、金型をレジスト層48に押し付けて形状を転写するので、どうしても凹部53の底面53aに余分なレジスト層48からなるレジスト残渣55が残される。このレジスト残渣55は、異方性エッチングでエッチバックして取り除くことができるが、前記エッチバックの際どうしても回りこみが生じるので、完全に基板面1aに垂直にエッチバックを行うことができず、微細パターンの外形をこのエッチバックによって削るおそれが発生する。数十nm〜数百nm範囲の凹凸からなる微細パターンの場合には、この削りの影響が大きく、大きな問題となる。そこで、次のエッチング工程では、まず、ハードマスク層4を形成した後、これをマスクとしてエッチングを行う。
【0035】
(エッチング工程)
まず、図2(a)に示すように、パターン化レジスト層3の上面3aに、金属層からなるハードマスク層4を膜厚xで形成する。
【0036】
ハードマスク層4の材料としては、耐エッチング性の高い材料が好ましく、たとえば、 Ni、Crなどの金属材料を用いることができる。たとえば、Niは、耐エッチング性の高い材料であって、すべてのエッチングプロセスでマスクとして効果的に利用することができる。
【0037】
ハードマスク層4として前記金属材料を用いる場合、蒸着法により形成することができる。この場合、凸部50に対応した孔部をレイアウト配置した蒸着マスクを作製し、それをパターン化レジスト層3の上面3aに精密に合わせて配置した後、前記金属材料を蒸着してハードマスク層4を形成する。
【0038】
なお、前記蒸着工程において、必ずしも蒸着マスクを使用しなくてもよい。凹部53の幅p−Wおよび深さsが数十nm〜数百nm範囲で形成されているとともに、この幅p−Wに対して深さsが大きく設定されているので、パターン化レジスト層3の上面3aにハードマスク層4を成膜する際に、凹部53内にハードマスク層4が侵入しにくく、所望の厚さのハードマスク層4を成膜する間に、凹部53内にハードマスク層4が侵入したとしても、凹部53がハードマスク層4で埋め尽くされないようにすることができる。
【0039】
その際、これらの寸法は、ハードマスク層4の成膜方法や、必要な成膜厚さなどにもよるが、凹部53の幅p−Wは狭いほどよく、深さsは深いほどよい。また、凹部53の幅p−Wおよび深さsが数十nm〜数百nm範囲になると、凹部53の開口の大きさと金属粒子径の比だけでは決まらず、粒子経に対して十分大きい開口でも金属粒子が凹部53の底部53aにほとんど侵入しないということが起こる。
【0040】
次に、図2(b)に示すように、ハードマスク層4側から透明基体1の上面1aにほぼ垂直な方向に矢印rで示されるように異方性エッチングを行う。
この異方性エッチングは2段階で行われる。まず、最初の異方性エッチングにより、凹部53の底部53aに残されたレジスト残渣55をエッチング除去する。さらに、次の異方性エッチングでは、最初の異方性エッチングでエッチング除去されなかったパターン化レジスト層3の残留部分をエッチングマスクとして、レジスト残渣55が除去されたことにより露出された加工対象層2をドライエッチング除去する。
【0041】
前記エッチング工程において、エッチング条件は次の通りである。
まず、レジスト残渣55のエッチングにおいては、エッチングガスとしてO、CF、CHF、Ar、HCl、Cl、BCl、H、Nのいずれかを含むガスを用いることが好ましい。基本的には、前記のどのエッチングガスを用いてもエッチングすることが可能だが、レジストのような有機物に対してはOが特に好ましい。エッチングガスは単体で用いても、混合ガスとして用いても良い。
【0042】
前記エッチングガスの流量は、装置によって異なるが、1〜500sccm(cc/min)程度とすることが好ましい。
【0043】
前記エッチングガスのガス圧は、0.1〜10Paとすることが好ましい。一般にガス圧が高いほどエッチングレートが上げることができるが、分子・ラジカル同士の干渉も激しくなるため異方性は失われるので、10Paよりも高いガス圧とすることは好ましくない。一方、ガス圧が0.1Paよりも低い場合には、プラズマをたてるのが困難となるので好ましくない。本発明においては、極端な異方性が求められるので、ガス圧は低い方が好ましく、安定したプラズマ放電との兼ね合いから1Pa以下とすることが特に好ましい。
【0044】
バイアス電力は、10〜2000Wとすることが好ましい。数値が大きいほど、分子やラジカルの異方性を高くすることができ、エッチングレートも上げることができる。
【0045】
加工対象層2のエッチングにおいては、加工対象層2として金属層を用いた場合と、非金属層を用いた場合でエッチング条件が異なる。
加工対象層2として、金属層を用いた場合においては、エッチングガスとしては、CF、CHF、BCl、Ar、Cl、Nのいずれかを含むガスを用いることが好ましい。なお、エッチングガスは単体で用いても、混合ガスとして用いても良い。
【0046】
加工対象層2として、非金属層を用いた場合においては、エッチングガスとしては、CF、CHF、Ar、HCl、Cl、BCl、H、Nのいずれかを含むガスを用いることが好ましい。なお、エッチングガスは単体で用いても、混合ガスとして用いても良い。
【0047】
加工対象層2が、金属層からなり、その表面に自然酸化物層が形成されている場合には、前記エッチング工程が、前記レジスト残渣55と、前記自然酸化物層と、前記金属層とを順次エッチングする工程とする。このように、順次エッチングすることによって、ナノインプリント法によってレジスト層48に形成した微細パターンを正確に加工対象層2に転写することができる。
たとえば、加工対象層2としてアルミニウム(Al)からなる金属層を用い、その表面にAlからなる自然酸化物層が形成された場合においては、まず、還元性のエッチングガスであるBCl、H、Nなどを用いてAlからなる自然酸化物層のエッチングを行い、次に、Cl、などを用いてAlからなる金属層のエッチングを行うことが好ましい。
【0048】
加工対象層2のエッチングにおいては、前記エッチングガスの流量は、1〜500sccm(cc/min)とすることが好ましい。また、前記エッチングガスのガス圧は、0.1〜10Paとすることが好ましい。さらに、バイアス電力は、10〜2000Wとすることが好ましい。レジストエッチングの場合と同様の理由である。
これらの条件でエッチングを行うことにより、精密な微細パターンを効率よく製造することができる。
【0049】
このエッチング工程を行うことにより、確実に、レジスト残渣55をエッチング工程によって除去することができるとともに、パターン化レジスト層3の上面3aに設けられたハードマスク層4によりマスクされた部分を確実に残存させることができる。
【0050】
図2(c)に示す微細パターン13は、このようにして製造した微細パターンの一例を示す断面模式図である。
微細パターン13の構造体70は、幅W、高さlの構造体として形成されており、加工対象層2と、パターン化レジスト層3と、金属層からなるハードマスク層4との3層構造とされている。また、この構造体70は、間隔p−W、ピッチpで配列されている。
【0051】
グリッド偏光子として、この微細パターン13を用いる場合には、周期pを100nm以下、高さlを200nm以上とすることが好ましい。こうすることにより、消光比を高くできるためである。幅Wを50nmで形成した場合には、アスペクト比(高さl/幅W)は4となる。このアスペクト比を高くするほど消光比(コントラスト)を高くすることができるが、製造は困難となる。
【0052】
なお、微細パターン13は、加工対象層2と、透明誘電体からなるパターン化レジスト層3と、金属層からなるハードマスク層4の3層構造とされており、パターン化レジスト層3は光透過性であるので、透過率を高く保ったままで、消光比(コントラスト)を向上させることができる。
【0053】
前記異方性エッチング工程の際に、必要に応じて透明基体1をエッチングしても良い。その場合には、微細パターン13の構造体70の高さlをより高くすることができ、消光比(コントラスト)を高くすることができる。
また、透明基体1と加工対象層2との間に下地層40を形成していた場合には、必要に応じて下地層40をエッチング除去しても良い。この場合にも、微細パターンの構造体70の高さlをより高くすることができ、消光比(コントラスト)を高くすることができる。
【0054】
さらにまた、前記異方性エッチング工程の後に、レジスト除去液に浸漬して、ハードマスク層4とパターン化レジスト層3を取り除く工程を行っても良い。
図2(d)に示す微細パターン10は、ハードマスク層4とパターン化レジスト層3を取り除いて製造した微細パターンの別の一例を示す断面模式図である。
微細パターン10は、幅W、高さtの加工対象層2が、間隔p−W、ピッチpで配列されて形成されている。
【0055】
このようにして、微細パターン13、10を製造することができる。これらの微細パターン13、10は、たとえば、光学素子あるいは半導体素子などに利用することができる。
【0056】
本発明の実施形態である微細パターンの製造方法は、ナインプリント法により、すなわち、数十nm〜数百nm範囲の凹部44を有する微細パターンを形成した金型46をレジスト層48に押し付けることにより、レジスト層48に金型46の微細パターンを転写する構成なので、低コストで、かつ、高スループットに微細パターン13、10を形成することができる。また、大面積の金型46を作ることにより、大面積の微細パターン13、10を容易に形成することもできる。
【0057】
本発明の実施形態である微細パターンの製造方法は、エッチングしない部分をハードマスク層4により保護して異方性エッチングを行う構成なので、ナインプリント法により形成された微細パターン10の凹部53に残されたレジスト残渣55のみを容易に除去することができ、効率的に微細パターン13、10を形成することができる。また、レジスト残渣55の厚みやエッチング対象物の素材を考慮する必要がない。
【0058】
本発明の実施形態である微細パターンの製造方法は、エッチングしない部分をハードマスク層4により保護して異方性エッチングを行う構成なので、パターン化レジスト層3自体にエッチング耐性がない場合でも、容易に微細パターン13、10を製造することができる。また、逆に、加工対象層2が難エッチング耐性である場合でも、効率的に微細パターン13、10を製造することができる。
【0059】
(実施形態2)
本発明の実施形態である微細パターンの製造方法の別の一例について説明する。
図3(a)〜(d)は、本発明の実施形態である微細パターンの製造方法の別の一例を説明する工程断面図である。
本発明の実施形態である微細パターンの製造方法は、実施形態1と同様に、パターン化レジスト層形成工程と、エッチング工程とからなるが、エッチング工程において、ハードマスク層4を斜め蒸着法により形成する点が実施形態1で示した微細パターンの製造方法と異なる。なお、実施形態1で用いた部材と同様の部材については同じ符号を付して示している。
【0060】
(パターン化レジスト層形成工程)
実施形態1で示した工程と同様に、パターン化レジスト層形成工程を行い、透明基体1上に加工対象層2を形成し、さらに、パターン化レジスト層3を形成する。
【0061】
(エッチング工程)
次に、このエッチング工程では、まず、ハードマスク層4を形成した後、これをマスクとしてエッチングを行う。図3(a)は、パターン化レジスト層3を形成した時点の工程断面図の一例を示す図である。透明基体1上に加工対象層2が厚さtで成膜され、さらにその加工対象層2の上に、幅p−W、深さsの凹部53がピッチpで形成されたパターン化レジスト層3が形成されている。
また、蒸着源から飛来する蒸着材料の方向が矢印qで示されている。この矢印qは、透明基体1の基板面1aに垂直な線mから角度θ(蒸着角度)をなす方向とされている。
【0062】
このような蒸着角度θで、斜め蒸着法を行うことにより、図3(b)に示されるように、パターン化レジスト層3の上面3aにハードマスク層4が形成される。
すなわち、斜め蒸着法を用いた場合には、凹部53では、蒸着の初期段階では、隣接して突出されたパターン化レジスト層3がマスクとなり、進入経路が妨害されて凹部53の底部53aには蒸着成分がほとんど侵入しない。そのため、凹部53の底部53aおよび蒸着源と反対側となる面53cにはハードマスク層4が形成されない。
一方、パターン化レジスト層3の上面3aと、凹部53の蒸着源側となる面53bにのみハードマスク層4が順次積層される。パターン化レジスト層3の上面3aにハードマスク層4が成長しはじめてからは、さらに、ハードマスク層4によって進入経路が塞がれるため、蒸着成分は主としてハードマスク層4上に積層されて、蒸着方向に対向するハードマスク層4を成長され、蒸着成分はさらに凹部53に侵入しにくくなる。
このようにして、図3(b)に示すように、図示上方向に成長するとともに、図示横方向にも徐々に積層範囲を増しつつ積層される。
【0063】
前記蒸着角度θは、45°以上であることが好ましい。ハードマスク層4の膜質やパターン化レジスト層3の上面3aに対するハードマスク層4の密着性を向上させるには、蒸着角度θは、0°に近い範囲であることが好ましいが、凹部53の底部53aにハードマスク層4を形成させないためには、蒸着角度θは大きい方がよいことを考慮して、前記蒸着角度θを45°以上とすることが好ましい。微細パターンの大きさ、形状にも依存するが、一般的な微細パターンを形成する場合には、前記蒸着角度θを45°以上とすれば、凹部53の底面53aにハードマスク層4を形成しないですむためである。なお、たとえば、凹部53の幅p−Wと深さsが等しい場合、すなわち、s=p−Wの場合、あるいは、凹部53の深さsが幅p−Wより大きい場合、すなわち、s>p−Wの場合には、少なくとも前記角度θ=45°とすれば、凹部53の底面53aにハードマスク層4は形成されない。
【0064】
このようにして、斜め蒸着法を用いる場合には、蒸着マスクを用いずに、パターン化レジスト層3の上面3aにハードマスク層4を形成することができる。そのため、蒸着マスクの位置合わせを行う必要がなく、微細パターンの生産効率を向上させることができる。
【0065】
なお、斜め蒸着法においてハードマスク層4をパターン化レジスト層3の上面3aにしっかりと密着させて形成するために、基板温度を適切に設定することが好ましい。基板温度が低すぎる場合には良好な密着強度が得られず、基板温度が高すぎる場合には安定した柱状形状が得られない。
例えば、絶対温度で測ったハードマスク層4の融点の30%〜50%とすることが好ましい。すなわち、ハードマスク層4がAlの場合、融点は933K(660℃)のため、好ましい温度範囲は、280K〜466K(7℃〜193℃)とすることが好ましい。
【0066】
次に、図3(c)に示すように、ハードマスク層4側から透明基体1の表面1aにほぼ垂直な方向に矢印rで示されるように異方性エッチングを行う。
まず、最初の異方性エッチングにより、凹部53に残されたレジスト残渣55がエッチング除去される。
さらに、次の異方性エッチングでは、ハードマスク層4およびパターン化レジスト層3をエッチングマスクとして、レジスト残渣55が除去されたことにより露出された加工対象層2がドライエッチング除去されて、図3(d)に示されるように、透明基体1の表面1aが露出される。
一方、ハードマスク層4がマスクとなり、ハードマスク層4にマスクされたパターン化レジスト層3はエッチングされず、さらに、そのパターン化レジスト層3にマスクされた加工対象層2もエッチングされない。その結果、加工対象層2とパターン化レジスト層3とハードマスク層4とからなる微細パターン15が形成される。
【0067】
図3(d)に示す微細パターン15は、このようにして製造した微細パターンの一例を示す断面模式図である。
微細パターン15の構造体70は、幅W、高さlの構造体として形成されており、加工対象層2と、透明誘電体からなるパターン化レジスト層3と、別の金属層からなるハードマスク層4との3層構造とされている。また、この構造体70は、間隔p−W、ピッチpで配列されている。
【0068】
なお、前記エッチング工程の後に、レジスト除去液に浸漬して、ハードマスク層4とパターン化レジスト層3を取り除く工程を行っても良い。この工程を行うことにより、実施形態1の図2(d)に示すように、透明基体1の表面1aに加工対象層2が形成された微細パターン10を形成することができる。
【0069】
本発明の実施形態である微細パターンの製造方法は、ハードマスク層形成工程において、斜め蒸着法を用いてハードマスク層4を形成する構成なので、蒸着マスクの位置合わせを行う必要がなく、微細パターン15、10の製造効率を向上させることができるとともに、生産コストを低減させることができる。
【0070】
(実施形態3)
本発明の実施形態である微細パターンの製造方法のさらに別の一例について説明する。
図4(a)〜(c)は、本発明の実施形態である微細パターンの製造方法のさらに別の一例を説明する工程断面図である。
【0071】
本発明の実施形態である微細パターンの製造方法は、実施形態1と同様に、パターン化レジスト層形成工程と、エッチング工程とからなるが、エッチング工程において、スパッタ法により、パターン化レジスト層3の上面3aに形成したハードマスク層42bの膜厚hが、凹部53の底部53aに形成したハードマスク層42aの膜厚iよりも厚くなるように、ハードマスク層42を形成した後、ウェットエッチングを行って凹部53のハードマスク層42aのみを除去してパターン化レジスト層3の上面3aのみにハードマスク層4を残す点が実施形態1で示した微細パターンの製造方法と異なる。なお、実施形態1で用いた部材と同様の部材については同じ符号を付して示している。
【0072】
(パターン化レジスト層形成工程)
実施形態1で示した工程と同様に、パターン化レジスト層形成工程を行い、透明基体1上に加工対象層2を形成し、さらに、パターン化レジスト層3を形成する。
【0073】
(エッチング工程)
エッチング工程では、まず、ハードマスク層4を形成した後、これをマスクとしてエッチングを行う。図4(a)は、スパッタ法により、パターン化レジスト層3の上面3aに形成したハードマスク層42bの膜厚hが、凹部53の底部53aに形成したハードマスク層42aの膜厚iよりも厚くなるように、ハードマスク層42を形成した時点の工程断面図の一例を示す図である。このように、ハードマスク層42は、パターン化レジスト層3の上面3aに形成されるハードマスク層42bと、凹部53の底部53aに形成したハードマスク層42aとからなる。
【0074】
凹部53の幅p−W、深さsが数十nm〜数百nm範囲で形成されているとともに、幅p−Wに対して深さsが大きく設定されているので、パターン化レジスト層3の上面3aにハードマスク層42を成膜する際に、凹部53にハードマスク層42aが侵入しにくく、パターン化レジスト層3の上面3aに所望の厚さのハードマスク層42bを成膜する間に、凹部53内にハードマスク層42aが侵入したとしても、凹部53がハードマスク層42aで埋め尽くされないようにすることができる。
【0075】
次に、ハードマスク層42が均一の深さでエッチング除去するウェットエッチングを行う。たとえば、その深さをiとすると、凹部53のハードマスク層42aは完全に除去され、凸部50の先端側50bには、高さh−iのハードマスク層4が残される。このようにして、凹部53のハードマスク層42aのみを除去するとともに、パターン化レジスト層3の上面3aのみにハードマスク層42を残して、図4(b)に示すように、これをハードマスク層4とする。
【0076】
次に、ハードマスク層4側から透明基体1の表面1aにほぼ垂直な方向に異方性エッチングを行う。
まず、最初の異方性エッチングにより、凹部53の底部53aに残されたレジスト残渣55がエッチング除去される。
さらに、次の異方性エッチングでは、ハードマスク層4にマスクされたパターン化レジスト層3をエッチングマスクとして、レジスト残渣55が除去されたことにより露出された加工対象層2がドライエッチング除去されて、図4(c)に示されるように、透明基体1の表面1aが露出される。
一方、ハードマスク層4がマスクとなり、ハードマスク層4にマスクされたパターン化レジスト層3はエッチングされず、さらに、そのパターン化レジスト層3にマスクされた加工対象層2もエッチングされない。その結果、加工対象層2とパターン化レジスト層3とハードマスク層4とからなる微細パターン17が形成される。
【0077】
なお、前記エッチング工程の後に、レジスト除去液に浸漬して、ハードマスク層4とパターン化レジスト層3を取り除く工程を行っても良い。この工程を行うことにより、実施形態1の図2(d)に示すように、透明基体1の表面1aに加工対象層2が形成された微細パターン10を形成することができる。
【0078】
本発明の実施形態である微細パターンの製造方法は、スパッタ法によりハードマスク層42を形成した後、ウェットエッチングにより、パターン化レジスト層3の上面3aに形成されたハードマスク層42bの一部を除去するとともに、凹部53の底面53aに形成されたハードマスク層42aを完全に除去する構成なので、容易にハードマスク層4を形成することができ、微細パターン17、10の製造効率を向上させることができるとともに、生産コストを低減させることができる。
【0079】
(実施形態4)
本発明の実施形態である微細パターンの製造方法のさらに別の一例について説明する。
図5(a)〜(d)は、本発明の実施形態である微細パターンの製造方法のさらに別の一例を説明する工程断面図である。
【0080】
本発明の実施形態である微細パターンの製造方法は、実施形態1と同様に、パターン化レジスト層形成工程と、エッチング工程とからなるが、エッチング工程が、ウェットコーティング法によりパターン化レジスト層3の表面を覆うようにハードマスク素材40を塗布した後、アッシング法またはポリッシング法を用いてパターン化レジスト層3の上面3aを露出させ、凹部53に残されたハードマスク素材40をハードマスク層4とする工程である点が実施形態1で示した微細パターンの製造方法と異なる。なお、実施形態1で用いた部材と同様の部材については同じ符号を付して示している。
【0081】
(パターン化レジスト層形成工程)
実施形態1で示した工程と同様に、パターン化レジスト層形成工程を行い、透明基体1上に加工対象層2を形成し、さらに、その加工対象層2上にパターン化レジスト層3を形成する。
【0082】
(エッチング工程)
次に、図5(a)に示すように、パターン化レジスト層3上に、ウェットコーティング法によりパターン化レジスト層3の表面を覆うようにハードマスク素材40を塗布する。
ここで、ハードマスク素材40の厚さuは、凹部53の深さsよりも厚くなるように、ハードマスク素材4を成膜する。
【0083】
次に、図5(b)に示すように、アッシング法またはポリッシング法を用いて、パターン化レジスト層3の上面3aが露出するまで、ハードマスク素材40の表面側40bを除去して、凹部53に残されたハードマスク素材40をハードマスク層4とする。
【0084】
次に、図5(c)に示すように、ハードマスク層4側から透明基体1の表面1aにほぼ垂直な方向に矢印rで示されるように異方性エッチングを行う。
まず、最初の異方性エッチングにより、パターン化レジスト層3の露出部分50がエッチングされて除去される。さらに、次の異方性エッチングでは、その露出部分50が除去されたことにより露出された加工対象層2がエッチングされて除去されて、図5(d)に示されるように、透明基体1の表面1aが露出される。
このとき、凹部53に残されたハードマスク層4をマスクとして、凹部53の底面53aのパターン化レジスト層3はエッチングされず、残留部分50cとなる。さらにまた、この残留部分50cをマスクとして加工対象層2もエッチングされず、図5(d)に示すように、加工対象層2とパターン化レジスト層3とハードマスク層4とからなる微細パターン19が形成される。
【0085】
なお、前記エッチング工程の後に、レジスト除去液に浸漬して、ハードマスク層4とパターン化レジスト層3を取り除く工程を行っても良い。この工程を行うことにより、実施形態1の図2(d)に示すように、透明基体1の表面1aに加工対象層2が形成された微細パターン10を形成することができる。
【0086】
本発明の実施形態である微細パターンの製造方法は、ハードマスク素材40を形成した後、アッシング法またはポリッシング法を用いて、パターン化レジスト層3の上面3aが露出するまで、ハードマスク素材40の表面側40bを除去して、凹部53に残されたハードマスク素材40をハードマスク層4とする構成なので、容易にハードマスク層4を形成することができ、微細パターン19、10の製造効率を向上させることができるとともに、生産コストを低減させることができる。
【0087】
(実施形態5)
次に、本発明の実施形態である光学素子について説明する。
図6は、本発明の実施形態である光学素子の一例を示す図であって、図6(a)は斜視概略図であり、図6(b)は、図6(a)のA−A’線における断面模式図である。
【0088】
図6に示すように、光学素子30は、透明基体1上に、金属層からなる加工対象層2と、パターン化レジスト層3と、別の金属層からなるハードマスク層4とが積層され、この3層構造体70がグリッド状に成形されてなる微細パターン13を具備した光学素子30である。なお、実施形態1で用いた部材と同様の部材については同じ符号を付して示している。
【0089】
光学素子30において、略矩形断面形状の3層構造体70は透明基体1の上面1aに、幅W、高さlの略矩形断面を有するラインとして形成されており、各ラインは周期p、間隔p−Wで平行に形成されている。なお、この3層構造体70の幅W、高さl、および各ラインの周期p、間隔p−Wは、それぞれ数百nm以下で形成されている。
また、3層構造体70は、金属層からなる加工対象層2と、パターン化レジスト層3と、金属層からなるハードマスク層4とが積層されて構成されている。
【0090】
透明基体1は、板状またはフィルム状の透明な材料から構成されている。そのため、微細パターン13を安定して保持させることができ、光学素子30として安定して使用することができる。
【0091】
金属層からなる加工対象層2は、たとえば、Al、Au,Agのいずれかの金属を1種以上含有させて形成する。このようにすることで、光学素子30の特性を向上させることができる。特に、光学素子30をグリッド偏光子として用いる場合には、金属層からなる加工対象層2はAlから構成されることが好ましい。消光比を向上させることができるためである。なお、金属層からなる加工対象層2は、複数の種類の金属からなる合金として構成しても良く、また、複数の金属層からなる構成としてもよい。
金属層からなる加工対象層2の高さtは、凹部の幅wを考慮して設定する。アスペクト比t/wが、光学素子30の消光比(コントラスト)および透過率などの光特性に関係するためである。
【0092】
透明誘電体からなるパターン化レジスト層3は、可視光領域で高透明なものであれば特に限定されないが、アクリル系の材料含有率を上げることで、より高透過率を達成することができる。このようなレジストとして、例えば東洋合成工業製PAK−01などを用いることができる。
【0093】
光学素子30のパターン化レジスト層3の高さvは、200nm以上であることが好ましく、200nm〜400nmであることがより好ましい。3層構造体70において、パターン化レジスト層3の高さvを200nm以上とした場合には、可視光領域で薄膜干渉が起こりにくくなり、消光比(コントラスト)を向上させることができる。
【0094】
金属層からなるハードマスク層4は、たとえば、Ni、Crのいずれかの金属を1種以上含有させて形成する。ハードマスク層4の材料としては、耐エッチング性の高い材料が好ましく、たとえば、Ni、Crなどの金属材料は耐エッチング性の高い材料であり、特に、Niは耐エッチング性の高い材料であって、すべてのエッチングプロセスでマスクとして効果的に利用することができる。
また、ハードマスク層4の高さxは、光学特性の観点から、可能な限り高くすることが望ましい。ハードマスク層4のアスペクト比x/wが大きいほど、光学素子30の消光比(コントラスト)および透過率の向上に寄与するためである。
【0095】
微細パターン13は、3層構造体70がグリッド状に形成されて構成されている。そのため、グリッド偏光子などの光学素子として使用することができる。その場合には、微細パターン13は、幅Wおよび高さlはできるだけ一定の誤差範囲内であることが好ましい。
【0096】
なお、このような微細パターン13は一例であって、先の実施形態に記載したように、微細パターン15、17および19などを使用することができる。
また、複数のラインが平行かつ微細な隙間をおいて配置されたパターンであれば、各ラインの配置位置、接続関係、ライン幅などを変化させた様々なパターンを採用することができる。また、加工誤差などに起因する許容範囲の微細な形状の変化を有していてもよい。
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。しかし、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【実施例】
【0097】
(実施例1)
(パターン化レジスト層形成工程)
透明基体としてガラス基板を用い、その表面を公知の洗浄方法で洗浄した後、蒸着法を用いて、Alからなる金属層を膜厚175nmで成膜した。
【0098】
次に、金属層上に、レジストとして東洋合成工業製PAK−01を塗布し、ナノインプリント法を用いて金型形状を転写(パターニング)した。これにより、周期140nm、幅70nm、高さ275nmの凹部を有するパターン化レジスト層を形成した。
【0099】
(エッチング工程)
次に、斜め蒸着法を用いて、蒸着角度θ=45°で、パターン化レジスト層の上面にCrからなるハードマスク層を膜厚25nmで形成した。
【0100】
次に、ハードマスク層側から透明基体の表面にほぼ垂直な方向に異方性エッチングを行い、微細パターンの凹部に残された。レジスト残渣のエッチング除去を行った。このエッチングにおいては、ガス種としてOを用い、前記ガスのガス圧は1Paとし、バイアス電力は、500Wとした。
【0101】
さらに、金属層のエッチングを行った。このエッチングは2段階に分けられ、前半のステップで金属層表面の自然酸化膜の除去、後半のステップで金属層本体のエッチングをそれぞれ行う。ガス種として前半のステップではBClを、後半のステップではClをそれぞれ用い、前記ガスのガス圧はそれぞれ1Pa、バイアス電力は500Wとした。
【0102】
このようにして、透明基体としてガラス基板を用い、金属層としてAl(高さ175nm、幅70nm)、パターン化レジスト層として東洋合成工業製PAK−01(高さ275nm、幅70nm)を用い、ハードマスク層としてCr(高さ25nm、幅70nm)を用いた3層構造体からなる微細パターン(周期140nm)を前記ガラス基板上に形成した。
この光学素子の光特性は、透過率34.2%、消光比(コントラスト)99500であった。
【0103】
(比較例1)
実施例1において、金属層の膜厚を200nmとした他は同様にして、金属層としてAl(高さ200nm、幅70nm)、パターン化レジスト層として東洋合成工業製PAK−01(高さ275nm、幅70nm)を用い、ハードマスク層としてCr(高さ25nm、幅70nm)を用いた3層構造体からなる微細パターン(周期140nm)を前記ガラス基板上に形成した。
これをレジスト除去液に浸漬して、パターン化レジスト層およびハードマスク層を除去して、金属層としてAl(高さ200nm、幅70nm)からなる微細パターン(周期140nm)をガラス基板上に形成した光学素子を形成した。
この光学素子の光特性は、透過率39.7%、消光比(コントラスト)48600であった。
【0104】
(比較例2)
実施例1において、膜厚175nmのAlを形成した後、その上に膜厚25nmのCrを形成して金属層とした他は同様にして、Al(高さ175nm、幅70nm)とCr(高さ25nm、幅70nm)からなる2層構造体の金属層を備え、パターン化レジスト層として東洋合成工業製PAK−01(高さ275nm、幅70nm)を用い、ハードマスク層としてCr(高さ25nm、幅70nm)を用いた微細パターン(周期140nm)を前記ガラス基板上に形成した。
これをレジスト除去液に浸漬して、パターン化レジスト層およびハードマスク層を除去して、Al(高さ175nm、幅70nm)とCr(高さ25nm、幅70nm)からなる2層構造体の金属層の微細パターン(周期140nm)をガラス基板上に形成した光学素子を形成した。
この光学素子の光特性は、透過率36.7%、消光比(コントラスト)39300であった。
【産業上の利用可能性】
【0105】
本発明は、微細パターンの製造方法に関するものであり、特に、半導体素子あるいは光学素子に用いられるものであり、光学部材産業あるいは半導体産業において利用可能性がある。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の実施形態である微細パターンの一例を示す工程断面図である。
【図2】本発明の実施形態である微細パターンの一例を示す工程断面図である。
【図3】本発明の実施形態である微細パターンの一例を示す工程断面図である。
【図4】本発明の実施形態である微細パターンの一例を示す工程断面図である。
【図5】本発明の実施形態である微細パターンの一例を示す工程断面図である。
【図6】本発明の実施形態である光学素子の一例を示す断面模式図である。
【符号の説明】
【0107】
1…基板、1a…上面、2…加工対象層、3…パターン化レジスト層、3a…上面、4…ハードマスク層、10、13、15、17、19…微細パターン、30…光学素子、40…ハードマスク素材、40b…表面側、42、42a、42b…ハードマスク層、44…凹部、45…凸部、46…金型、48…レジスト、50…露出部分、50c…残留部分、53…凹部、53a…底面、53b、53c…内壁面、55…レジスト残渣、70…構造体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基体上に加工対象層を形成し、前記加工対象層上に透明誘電体からなるレジスト層を形成するとともに、前記レジスト層をナノインプリント法によってパターニングすることにより、前記レジスト層の上面に凹部を有するパターン化レジスト層を作るパターン化レジスト層形成工程と、
少なくとも前記パターン化レジスト層の上面に金属層からなるハードマスク層を形成した後、前記凹部の底部に残されたレジスト残渣をエッチングして除去してから、前記パターン化レジスト層をマスクにして前記加工対象層をエッチングするエッチング工程と、を具備することを特徴とする微細パターンの製造方法。
【請求項2】
前記エッチング工程の後に、前記ハードマスク層と前記パターン化レジスト層を取り除く工程を備えることを特徴とする請求項1に記載の微細パターンの製造方法。
【請求項3】
前記加工対象層が、金属層からなることを特徴とする請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の微細パターンの製造方法。
【請求項4】
前記エッチング工程が、前記レジスト残渣と、金属層からなる前記加工対象層に形成された自然酸化物膜と、前記加工対象層とを順次エッチングする工程であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の微細パターンの製造方法。
【請求項5】
前記エッチング工程において、前記レジスト残渣のエッチングガスとして、O、CF、CHF、Ar、HCl、Cl、BCl、H、Nのいずれかを含むガスを用い、
前記自然酸化物膜のエッチングガスとして、CF、CHF、Ar、HCl、Cl、BCl、H、Nのいずれかを含むガスを用い、
前記金属層のエッチングガスとして、CF、CHF、Ar、Cl、Nのいずれかを含むガスを用い、
ガス圧を0.1〜10Paとし、
バイアス電力を10〜2000Wとする条件でドライエッチングすることを特徴とする請求項1〜4に記載の微細パターンの製造方法。
【請求項6】
前記エッチング工程において、蒸着法により前記パターン化レジスト層の上面に前記ハードマスク層を形成してから前記加工対象層をエッチングすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の微細パターンの製造方法。
【請求項7】
前記エッチング工程において、斜め蒸着法により前記パターン化レジスト層の上面に前記ハードマスク層を形成してから前記加工対象層をエッチングすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の微細パターンの製造方法。
【請求項8】
前記エッチング工程において、前記パターン化レジスト層の上面における厚みが前記凹部の底部における厚みよりも厚くなるように、前記ハードマスク層をスパッタ法により形成した後、ウェットエッチングを行って前記凹部内の前記ハードマスク層のみを除去して、前記パターン化レジスト層の上面に前記ハードマスク層を形成してから前記加工対象層をエッチングすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の微細パターンの製造方法。
【請求項9】
前記エッチング工程において、前記凹部を有する前記パターン化レジスト層の表面を覆うようにハードマスク素材をウェットコーティング法により塗布した後、アッシング法またはポリッシング法を用いて前記パターン化レジスト層の上面を露出させ、前記凹部に残されたハードマスク素材を前記ハードマスク層として、前記パターン化レジスト層の露出部分をエッチング除去してから、前記パターン化レジスト層の残留部分をマスクにして前記加工対象層をエッチングすることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の微細パターンの製造方法。
【請求項10】
透明基体上に、グリッド状に成形されてなる微細パターンが形成されており、
前記微細パターンが、金属層と、前記金属層上に積層された透明誘電体層と、前記透明誘電体層上に形成された別の金属層とからなることを特徴とする光学素子。
【請求項11】
前記透明誘電体層の高さが200nm以上であることを特徴とする請求項9に記載の光学素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−105252(P2009−105252A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−276148(P2007−276148)
【出願日】平成19年10月24日(2007.10.24)
【出願人】(500005066)チェイル インダストリーズ インコーポレイテッド (263)
【Fターム(参考)】