説明

情報の記録方法及び記録装置、並びに情報記録媒体

【課題】 3次元的に記録再生を行う場合、熱的影響や光学的影響のために記録マーク間をある程度離す必要がある。本発明の目的は、高密度記録に適した記録マークの配置を考慮した3次元記録媒体を提供する。
【解決手段】 深さ方向の任意な場所に記録可能な3次元記録媒体への記録方法であって、個々の記録マーク3’に対して半径方向隣の記録トラックでは深さ方向に層間の半分だけずらして記録マークを形成する。これにより半径方向の記録トラックピッチを狭くすることができ、高密度化が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は情報の記録方法及び光記録装置、並びに光記録媒体に係り、特に記録媒体の厚さ方向に3次元的に記録マークを形成し、連続的或いはランダムに記録を行う情報の記録方法及び光記録装置、並びに3次元的に記録マークが形成された光記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、情報の大容量化に伴い、光記録を用いた高密度記録技術の開発が活発に行われている。光記録では、その限界が光の回折により、記録ビット径が500nm前後といわれている。この回折限界は光の波長に比例し、さらに、レンズの性能指数(NA)に反比例する。このため、高密度化の1つの方向は、光の波長を短波長化すること、絞り込みレンズを高NA化することにある。また、別の方法としては、この回折限界によらない光学現象を利用する方法である。記録媒体においては、超解像膜を記録膜上に形成する方法がある。また、光ヘッドにおいては、最近、特に、これらを推進する方法として、光における近接場が注目されている。たとえば、SIL(Solid Immersion Lens)を用いて高NA化を実現し、通常の光学レンズを用いたものより小さなスポット径を得ている。
【0003】
前記のように、記録の為のビームスポットを小さくする方向とは別に、記録媒体の深さ方向へ記録することにより更なる大容量化を図る方法も考えられている。その内の一つが、例えば特許文献1に記載されているような記録層を複数積み重ねた多層型記録媒体の利用であり、もう一つが、特許文献2に記載されているようなバルク状態の記録媒体に3次元的に記録再生を行うものである。
【0004】
【特許文献1】特開2003−346378号公報
【特許文献2】特開2002−312958号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような3次元的に記録再生を行う場合、熱的影響や光学的影響のために記録マーク間をある程度離す必要がある。これまでは層間が数10μm離れていた為に隣の記録マークとの関係を考えれば良かった。しかし、層間が数μm程度と狭くなった場合や実質的な層が無いバルク状態への記録には3次元的にマーク間距離を考慮する必要がでてくる。
【0006】
本発明は、このような情報の記録方法及び光記録装置、並びに光記録媒体の従来技術における問題点を解決するためになされたものである。
【0007】
即ち、本発明の目的は、更なる高密度化が可能な情報の記録方法及び光記録装置、並びに光記録媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために、本発明においては、個々の記録マークに対して半径方向隣の記録トラックの記録マークを深さ方向にずらしている。
【0009】
図1は、従来技術及び本発明における3次元記録媒体に記録された記録マークの配置図を比較したものである。またサーボ用の凹凸部1を形成している場合を示している。更に、レーザビームの入射方向に対してほぼ垂直な面を記録面2と仮定し、この記録面には同心円状あるいはスパイラル状に記録マーク3を形成するための記録トラック、即ちサーボ用の凹部4及び凸部5に対応する記録トラックが設定されている。この記録トラックは凹凸などの形状変化はしてない仮想の記録トラックである。わかりやすくする為に、各記録トラックすべてに記録マークが形成されている場合の記録媒体の断面図を示している。このうち図1(A)には、従来技術として他のマークに何らかの影響を及ぼす範囲を球状として、最も高密度に記録できるパターンを図示している(層間:D)。これに対して、図1(B)は、本発明の記録マークの配置図を示している。本発明では、他のマークからの何らかの影響が及ばないような範囲で、かつ高密度化を図るために、個々の記録マークに対して半径方向隣の記録トラックの記録マークを深さ方向にずらしている。この時、図1(B)のように層間Dの半分だけずらすのが最も効率が良い。計算すると、半径方向に約13.4%の高密度化が図れる(cos30°=0.866=86.6%)。結果的に、記録トラックの半径方向両隣の記録トラックには記録マークを形成していないことになる。更に、層間の上下の記録トラックで記録マークが重ならないように記録マークを形成することにより更なる高密度化も可能である。計算を簡単にする為に、他のマークに何らかの影響を及ぼす範囲を球状としたが、実際にはビームが及ぼす範囲は深さ方向に長い長円形となる。しかし、基本的にはずらした方が従来技術より高密度記録は可能となる。
【0010】
図1において、深さ方向に注目すると従来技術よりも本発明の方が層間Dの半分の厚みだけ厚くなっていることがわかる。ただ、従来技術においてもう1層増やすには距離Dの分の厚さが必要となる。即ち3層分の記録においては3D以内の間にすれば良く、本技術においても深さ方向の必要な厚さは2.5Dである為に容量的には同じといえる。また、深さ方向の層数が多くなればなるほど、余分なD/2分の厚さの全体に占める割合は少なくなっていく。
【0011】
また、記録マークを深さ方向にずらす場合、サーボ用の凹凸に対応させた方が好ましい。即ち、凹部4’のすぐ下にある記録トラックの方が凸部5’のすぐ下にある記録トラックよりも深さ方向に1/2層だけずれているのである。この方がサーボトラックとの距離が一定となり記録再生マージンが増えるので好ましい。
【0012】
上下の記録トラックに形成される記録マーク間同士の位置関係を制御することは現実的には難しく、本発明のように隣の記録トラック間同士の位置関係を制御する方が装置側から見ると好ましい。
【0013】
本発明に用いる記録装置は、少なくともサーボ用のレーザと記録用のレーザを用い、サーボ用のビームはサーボ用の凹凸部に焦点を合わし、記録用のビームは記録媒体の目的の記録層に焦点をあわせている。また、記録面の深さ位置を変える必要があるため、本発明ではリレーレンズを用いて、記録用ビームの深さ方向の焦点距離を変えている。この時、球面収差も発生するので、リレーレンズと連動して球面収差補正板(液晶パネル)が移動することを特徴としている。更に、確実に素早く記録マークを形成するために、光パワーのガスレーザ(ArやKrなど)を用いている。場合によっては、複数のビームを用いて同時に記録を行えば短時間で記録が終了でき好ましい。
【発明の効果】
【0014】
かくして本発明によれば、更なる高密度化が可能な情報の記録方法及び記録装置、並びに情報記録媒体及が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面に基づき、本発明を実施するための最良の形態(以下、実施の形態)について詳細に説明する。
【0016】
図2は、本実施の形態が適用される3次元記録媒体への記録装置を説明するための図である。記録装置100は、記録ビームに使用する波長351nmのレーザ光を発光する最大出力2Wの記録用Krレーザ6と、記録用Krレーザ6からのビームを平行光線にするコリメートレンズ7と、コリメートレンズ7を透過した平行光線を記録照射用とモニタ用との2方向に分ける偏光ビームスプリッタ8と、記録用のビームの焦点位置を変えるためのリレーレンズ9と、球面収差を補正する球面収差補正板(液晶パネル)10と、記録ビーム及びAF(Auto Focus)制御ビームを3次元記録媒体11内に焦点を絞る対物レンズ12と、ビームスプリッタ8により分けられたモニタ用の平行光線を絞り込む絞り込みレンズ13と、記録ビームのパワーモニタ用の検出器14と、を有している。
【0017】
また、記録装置100は、AF制御ビームに使用する波長405nmのレーザ光を発光するAF制御用半導体レーザ15と、コリメートレンズ16と、偏光ビームスプリッタ17と、λ/4波長板18と、偏光ビームスプリッタ19と、反射ミラー20と、絞り込みレンズ21と、シリンドリカルレンズ22とAF制御用の検出器23と、を有する。
【0018】
更に、記録装置100は、記録ビーム28用のKrレーザ6を制御するレーザドライバ24と、AF制御ビーム用の半導体レーザ15を制御するレーザドライバ25と、検出器23からの信号を用いて対物レンズ12の焦点位置を調整するAF制御回路26(自動焦点制御回路)と、記録レーザ6から発光されるレーザビームパワーの制御回路であるパワーモニタ回路27と、自動焦点、記録パワー制御などを総合的に制御するマイクロプロセッサ28と、を備えている。
【0019】
尚、記録装置100は、対物レンズ12の位置を調整するためのアクチュエータと、検出器23を光軸方向に動かす移動装置と、リレーレンズ9の各レンズを移動させる移動装置と、リレーレンズ9と連動して移動する球面収差補正板10の移動装置を備え、さらに、レーザスポットを3次元記録媒体11の半径方向に移動させる移動装置と、3次元記録媒体11の回転装置と、を有し、これらは図示を省略した。
【0020】
また、本実施の形態においては、記録ビームに波長(λ)351nmのkrレーザ6を使用しているが、これに限定されず、波長(λ)250nm〜450nmの高出力レーザを用いても良好な結晶化が得られる。更に、光源は、ガスレーザに限定されず、高出力半導体レーザ等、他の構造のレーザを用いることができる。記録ビームの波長は、3次元記録媒体の記録層における吸収率が大きい波長が好ましい。
【0021】
本実施例では2光子吸収を利用するためにアクリル樹脂を用いたが、3次元記録媒体としては、フォトリフラクティブ効果を利用したものやフォトクロミズム効果を利用した物等、ビーム照射によりその部分の反射率や屈折率などの光学定数が変化するものなら本発明に使用できる。
【0022】
次に、実際の記録は次のようにして行われる。図1(B)を用いて説明する。
まず記録しようとする記録トラックの半径位置にサーボ用の凹凸部1’に記録されている位置情報を元に対物レンズ12を移動させる。そして、その位置でサーボをかけた状態で目的の深さ(記録面)まで記録ビームの焦点を変化させ、例えば、溝の凸部5’の下にある一番上の記録面2’に記録を行う。もし、サーボ用の凹凸部1’がスパイラル状に形成されていた場合には、記録媒体が1回転すると隣の溝の凸部に移動してくる。これを繰り返すと図1(B)のようにサーボ用の凸部の下に位置している記録トラックのみマークが形成される。次にその下の面に記録を行う場合には、リレーレンズ9の移動により更に層間の1/2の深さだけ記録ビームの焦点を下に移動させ、サーボ用レーザのトラッキングの極性を変えた後、サーボ用の凹部4’にトラッキングをかけながら記録面2’の下の層に記録を行う。この動作を繰り返すことにより、図1(B)に示すような高密度記録が可能となる。結果的には、サーボ用の溝の凸部と凹部で記録する面が深さ方向に交互にずれていることになる。
【0023】
また、本実施例のようにバルク状態の記録媒体でなくても、層間が数μm程度と狭い記録層を積み重ねた多層型記録媒体の場合にも本発明は適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来技術と本発明における記録マークの配置比較図
【図2】本実施例における記録装置の構成図
【符号の説明】
【0025】
1、1’ サーボ用の凹凸部
2、2’ 仮想の記録面
3、3’ 記録マーク
4、4’ 凹部
5、5’ 凸部
6 記録用Krレーザ
7 コリメートレンズ
8,17,19 偏光ビームスプリッタ
9 リレーレンズ
10 球面収差補正板(液晶パネル)
11 3次元記録媒体
12 対物レンズ
13,21 絞り込みレンズ
14,23 検出器
15 AF制御用半導体レーザ
16 コリメートレンズ
18 λ/4波長板
20 反射ミラー
22 シリンドリカルレンズ
24,25 レーザドライバ
26 AF制御回路
27 パワーモニタ回路
28 マイクロプロセッサ
100 記録装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
深さ方向に記録が可能な3次元記録媒体に情報を記録する情報の記録方法であって、
前記3次元記録媒体への記録は、個々の記録マークに対して半径方向隣の記録トラックの記録マークを深さ方向にずらして記録を行うことを特徴とする情報の記録方法。
【請求項2】
深さ方向の記録マーク間距離の半分だけずらして記録を行うことを特徴とする請求項1記載の情報の記録方法。
【請求項3】
前記記録媒体の表面にはサーボ用の凹凸部が設けられ、該凹部の深さ方向にある記録マークの方が該凸部の深さ方向にある記録マークよりも深い位置になるように記録を行うことを特徴とする請求項1記載の情報の記録方法。
【請求項4】
前記個々の記録マークを形成するために、記録用のレーザとサーボ用のレーザを用い、かつ記録用のレーザビームの焦点距離をリレーレンズにより変化させて記録を行うことを特徴とする請求項1記載の情報の記録方法。
【請求項5】
前記記録用のレーザビームの焦点距離が変化することによる、記録媒体からの球面収差を補正する為の球面収差補正板を用いて記録を行うことを特徴とする請求項3記載の情報の記録方法。
【請求項6】
深さ方向に記録が可能な3次元記録媒体に情報を記録する情報の記録装置であって、
前記3次元記録媒体への記録は、個々の記録マークに対して半径方向隣の記録トラックの記録マークを深さ方向にずらして記録を行うことを特徴とする情報の記録装置。
【請求項7】
深さ方向の記録マーク間距離の半分だけずらして記録を行うことを特徴とする請求項6記載の情報の記録装置。
【請求項8】
前記記録媒体の表面にはサーボ用の凹凸部が設けられ、該凹部の深さ方向にある記録マークの方が該凸部の深さ方向にある記録マークよりも深い位置になるように記録を行うことを特徴とする請求項6記載の情報の記録装置。
【請求項9】
前記個々の記録マークを形成するために、記録用のレーザとサーボ用のレーザを用い、かつ記録用のレーザビームの焦点距離をリレーレンズにより変化させて記録を行うことを特徴とする請求項6記載の情報の記録装置。
【請求項10】
前記記録用のレーザビームの焦点距離が変化することによる、記録媒体からの球面収差を補正する為の球面収差補正板を用いて記録を行うことを特徴とする請求項9記載の情報の記録装置。
【請求項11】
深さ方向に記録が可能な3次元記録媒体であって、個々の記録マークに対して半径方向隣の記録トラックの記録マークが深さ方向にずれて記録されていることを特徴とする情報記録媒体。
【請求項12】
深さ方向の記録マーク間距離の半分だけずれて記録されていることを特徴とする請求項11記載の情報記録媒体。
【請求項13】
前記記録媒体の表面にはサーボ用の凹凸部が設けられ、該凹部の深さ方向にある記録マークの方が該凸部の深さ方向にある記録マークよりも深い位置になるように記録されていることを特徴とする請求項11記載の情報記録媒体。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−12244(P2006−12244A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−185294(P2004−185294)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】