情報処理装置、及び車両
【課題】性能の異なる駆動モータを有する車両間で追従走行を良好に行う。
【解決手段】先行車両2と追従車両3は、出力マップをそれぞれ保持している。先行車両2は、追従車両3が追従走行を行う前に、追従車両3から出力マップを送信してもらう。そして、先行車両2は、これを自車両の出力マップと合成して、先行車両2と追従車両3の何れの車両の駆動モータでも出力しうる仮想のマップであるエミュレーションマップを生成し、自車両でこれを保持すると共に追従車両3にも送信する。先行車両2と追従車両3は、エミュレーションマップに従った出力を行うような制御系を有しており、この制御系を駆動モータに対する指令の出力の直前に作用させることで、先行車両2と追従車両3の駆動モータの性能差を調整し、良好な追従走行を行うことができる。
【解決手段】先行車両2と追従車両3は、出力マップをそれぞれ保持している。先行車両2は、追従車両3が追従走行を行う前に、追従車両3から出力マップを送信してもらう。そして、先行車両2は、これを自車両の出力マップと合成して、先行車両2と追従車両3の何れの車両の駆動モータでも出力しうる仮想のマップであるエミュレーションマップを生成し、自車両でこれを保持すると共に追従車両3にも送信する。先行車両2と追従車両3は、エミュレーションマップに従った出力を行うような制御系を有しており、この制御系を駆動モータに対する指令の出力の直前に作用させることで、先行車両2と追従車両3の駆動モータの性能差を調整し、良好な追従走行を行うことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に係り、例えば、複数の車両が追従走行するものに関する。
【背景技術】
【0002】
先行する車両(以下、先行車両)に追従しながらオートクルーズする車両(以下、追従車両)について提案されている。
例えば、次の特許文献1の「車両」では、単独走行可能な1人乗りの車両において、先行車両がホスト車両として走行し、一方、他の車両が追従車両としてホスト車両の横に並んで並走追従走行する場合について提案されている。
【0003】
また、この技術は、縦方向に追従するものであるが、先行車両と追従車両の車間距離を制御する技術として、次の特許文献2の「車間距離制御システムおよび車両」がある。
この技術は、先行車両がアクセル開度または要求加速度を追従車両に送り、追従車両がこれを用いて追従走行することにより、両車両の車間距離の変動を低減するものである。
【0004】
更に、先行車両と追従車両のエンジン特性の差を補正する技術として、次の特許文献3の「走行制御装置」がある。
この技術は、最大速度や最大加速度を制限するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−338117
【特許文献2】特開2008−155740
【特許文献3】特開2008−120302
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、車両が縦または横方向に短い車間距離で追従し、あたかも一台の車両のように走行する追従制御を行う場合、先行車両と追従車両の駆動モータに特性の差があると、このような一台の車両のような制御が困難となる場合がある。
例えば、追従車両の駆動モータが先行車両のものよりも出力が小さい場合、速度や加速度の大きい領域では追従車両が先行車両に追従できない場合があり、特許文献2の技術によって先行車両の要求加速度などを追従車両に送っても追従車両は追従できない。
また、特許文献3の技術によって、最大速度や最大加速度を制限しても、その最大速度や最大加速度に至るまでの特性が同一ではないため、この場合も、良好に追従することは困難である。
特に、原動機(駆動モータ、内燃機関など)は、負荷が大きいと指令を出しても要求通りの出力を実現できない場合があるため、追従車両の性能が低い場合、坂道などで、負荷が変わると、設定された最高速度や最高加速度以下でも追従できなくなる場合が考えられる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、性能の異なる駆動モータを有する車両間で追従走行を良好に行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、車両の駆動モータの出力指令に対する回転速度と出力の関係を表す出力マップを処理する情報処理装置であって、複数の車両の駆動モータの出力マップを取得する出力マップ取得手段と、前記取得した出力マップを用いて、前記複数の車両の駆動モータが出力できる前記複数の車両に共通の共通出力マップを生成する共通出力マップ生成手段と、前記生成した共通出力マップを出力する共通出力マップ出力手段と、を具備したことを特徴とする情報処理装置を提供する。
(2)請求項2に記載の発明では、前記共通出力マップ生成手段は、出力指令に対して最も出力の低い出力を回転速度が変化する区間に渡って選択することにより前記共通出力マップを生成することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置を提供する。
(3)請求項3記載の発明では、請求項1、又は請求項2に記載の情報処理装置の前記共通出力マップ出力手段が出力する共通出力マップを取得する共通出力マップ取得手段と、 自車両の出力マップを記憶する自車両出力マップ記憶手段と、出力指令を受け付ける出力指令受付手段と、自車両の駆動モータの回転速度を取得する回転速度取得手段と、前記受け付けた出力指令と前記取得した回転速度に対する共通出力を、前記取得した共通出力マップを用いて取得する出力取得手段と、前記取得した共通出力に対する実出力指令を前記記憶した自車両の出力マップを用いて取得する出力指令取得手段と、前記取得した実出力指令を用いて自車両の駆動モータに出力指令を行う出力指令手段と、を具備したことを特徴とする車両を提供する。
(4)請求項4記載の発明では、前記出力指令手段は、自車両が他車両に追従走行を行う場合、又は、他車両が自車両に対して追従走行を行う場合に実出力指令を用い、追従走行を行わない場合に前記出力指令受付手段で受け付けた出力指令を用いて前記駆動モータに出力指令を行う、ことを特徴とする請求項3に記載の車両を提供する。
(5)請求項5記載の発明では、請求項1、又は請求項2に記載の情報処理装置を搭載し、前記搭載した情報処理装置が出力した共通出力マップを追従走行を行う他の車両に送信する共通出力マップ送信手段を具備したことを特徴とする請求項3に記載の車両を提供する。
(6)請求項6記載の発明では、前記出力指令受付手段は、他車両に追従して走行するための出力指令を取得する、ことを特徴とする請求項3に記載の車両を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の車両の駆動モータの出力マップから、これら複数の車両の駆動モータが出力できる共通の共通出力マップを生成し、これを用いて走行することにより、性能の異なる駆動モータを有する車両間で追従走行を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】先行車両と追従車両が行う追従走行を説明するための図である。
【図2】車両の構成を示した図である。
【図3】駆動モータの出力マップを説明するための図である。
【図4】エミュレーションマップの作成方法を説明するための図である。
【図5】要求トルクの指令方法を説明するための図である。
【図6】出力トルク指令処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【図7】変形例における出力トルク指令処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)実施の形態の概要
追従走行することにより群走行する先行車両2と追従車両3は、要求トルクに対する駆動モータの特性、即ち、回転速度ごとの出力トルクをマップ化した出力マップをそれぞれ保持している。
先行車両2は、追従車両3が追従走行を行う前に、追従車両3から出力マップを送信してもらう。そして、先行車両2は、これを自車両の出力マップと合成して、先行車両2と追従車両3の何れの車両の駆動モータでも出力しうる仮想のマップであるエミュレーションマップを生成し、自車両でこれを保持すると共に追従車両3にも送信する。
先行車両2と追従車両3は、エミュレーションマップに従った出力を行うような制御系を有しており、この制御系を駆動モータに対する指令の出力の直前に作用させることで、先行車両2と追従車両3の駆動モータの性能差を調整し、良好な追従走行を行うことができる。
【0012】
(2)実施の形態の詳細
図1の各図は、本実施の形態の先行車両2と追従車両3が行う追従走行を説明するための図である。
追従車両3は、図1(a)に示したように、先行車両2の代表点6から横方向距離aの位置に目標点5を設定し、自車両の代表点7と目標点5との前後方向(進行方向、縦方向)の前後偏差Δdと、左右方向(横方向)の左右偏差Δwを計算し、これらの偏差が0に収束するように、自車両の車速と旋回をフィードバック制御する。
その結果、図1(b)に示したように、追従車両3は、先行車両2の横に並んで、両車両は、あたかも1台の車両であるかのように走行する。
【0013】
なお、この例は、追従走行の一例であって、例えば、先行車両2の後部から追従車両3が追従するように構成したり、あるいは、並走する先行車両2と追従車両3のうちの何れか一方、又は両方に他の車両が追従したり、更に多くの車両がグループを成して群走行(グループ走行)したりするように構成することもできる。
何れの場合も、1台の先行車両2がホストとなって走向し、他の車両は先行車両2を基準に追従走行する。
【0014】
また、本実施形態の車両は、通常の4輪車両に対しても適用が可能であるが、小型の車両で横方向の旋回自由度が高い車両に適用することも可能である。
本実施形態では、特に小半径で旋回することが可能な倒立振り子車両(1軸2輪車両等)に適用した場合を例に説明することとする。なお、先行車両も倒立振り子車両を対象として説明するが、それ以外の4輪車両等であってもよい。
【0015】
倒立振り子車両は、搭乗部の姿勢を感知し、その姿勢に応じて、駆動輪の駆動方向で前後方向のバランスを保持するように姿勢制御を行いながら走行するものである。その姿勢制御の方法としては、例えば、米国特許第6,302,230号明細書、特開昭63−35082号公報、特開2004−129435公報、特開2004−276727公報で開示された各種制御方法が使用可能である。
【0016】
図2は、本実施形態の車両(追従車両3)の構成を表したものである。
先行車両2の構成も基本的に追従車両3と同様であり、以降、先行車両2の構成に言及する場合には、追従車両3と同じ符号を用いて説明する。
図2に示されるように、追従車両3は、ECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)10と、レーザレーダ20、車速センサ30、ヨーレートセンサ40、無線通信装置50、駆動モータ60a、60bを備えている。
なお、図示しないが、駆動モータ60a、60bなどに駆動用の電力を供給し、また、ECU10に制御用の低電圧の電源を供給する、バッテリも備えている。
【0017】
ECU10は、図示しない各種プログラムやデータが格納されたROM、作業領域として使用されるRAM、外部記憶装置、インターフェース部等を備えたコンピュータシステムで構成されている。
倒立振り子車両に適用されている本実施形態においては、その姿勢を保持する姿勢制御プログラム、操縦装置からの各種指示信号に基づいて走行を制御する走行制御プログラム、本実施形態における先行車両2に対する追従走行を行うための追従走行プログラム等の各種プログラムがROMに格納されており、ECU10は、これら各種プログラムを実行することで対応する処理を行う。
【0018】
また、ECU10は、先行車両相対位置検出部11、追従制御部12、車両制御部13を備えている。
先行車両相対位置検出部11は、レーザレーダ20で測定された位置と距離に基づいて、先行車両2の相対位置および向き(進行方向)を検出し、追従制御部12に供給する。
なお、先行車両2から通信で車速およびヨーレートの情報を受信してもよい。
また、本実施形態では不要であるが、先行車両2から位置座標データを受信してデッドレコニングを行う場合には、自車両(追従車両3)の絶対位置を検出するためにGPS等の現在位置検出装置を備えるようにしてもよい。
【0019】
追従制御部12は、本実施形態における追従走行として、並走追従走行を行う場合の制御指令値(前後方向指令値、左右方向指令値)を車両制御部13に供給する。
追従制御部12は、車速センサ30から車速、ヨーレートセンサ40からヨーレートを取得する。また、無線通信装置50で受信した先行車両2の目標指令値を取得する。無線通信装置50は、先行車両2や他の車両(追従車両を含む)との間で車車間通信によりデータの送受信を行うようになっている。
追従制御部12は、フィードバック制御とフィードフォワード制御による、前後方向の前後制御部と左右方向の左右制御部を備えている。
追従制御部12は、先行車両相対位置検出部11、車速センサ30、ヨーレートセンサ40、無線通信装置50からの各入力に基づいて、前後制御部による前後制御指令値(目標速度、又は目標加速度)と、左右制御部による左右制御指令値(目標回転角速度ω)を車両制御部13に供給する。
【0020】
車両制御部13は駆動モータ60a、60bを制御する。
即ち、車両制御部13は、追従制御部12から供給される目標速度(又は目標加速度)となるように、駆動モータ60a、60bを制御する。具体的には、車両制御部13は、駆動モータ60用の速度(又は加速度)−電流マップを備えており、このトルク−電流マップに従って、追従制御部12から供給される目標速度(又は目標加速度)に対応する電流を駆動モータ60a、60bに対して出力するように電流制御を行う。
【0021】
また、車両制御部13は、追従制御部12から供給される目標回転角速度ω(左右制御指令値)で追従車両3が旋回するように、両駆動モータ60a、60bに対して異なる電流を出力することで、両駆動モータ60a、60bの差動により旋回を行うようにしてもよい。
更に、車両制御部13は、自車両の出力マップ(後述)を記憶すると共に、先行車両2が生成したエミュレーションマップ(後述)を記憶する。先行車両2の車両制御部13も同様に自車両の出力マップと自車両で生成したエミュレーションマップを記憶する。
このように、先行車両2と追従車両3は、自車両の出力マップを記憶する自車両出力マップ記憶手段を備えている。
【0022】
なお、本実施形態では倒立振り子車両を対象に説明しているが、それ以外の車両、例えば、4輪車両等にも適用が可能であり、その場合には、車両は操舵モータを備える。そして、車両制御部13は、追従制御部12から供給される目標回転角速度ωに対応する操舵角となるように操舵モータを制御する。
【0023】
図3は、電動車両の駆動モータの出力(特性)マップを説明するための図である。
先行車両2や追従車両3の駆動モータ60a、60b(以下、両者を区別しない場合には単に駆動モータ60と記す)は、それぞれ、このような固有の特性を有している。
出力マップは、駆動モータの特性をグラフ化した出力トルク−回転速度−要求トルクのマップであり、要求トルクに対して、駆動モータが実際に出力する出力トルクの回転速度による変化を表したものである。ここで、回転速度は、駆動モータ60のロータが単位時間当たりに回転する回転数である。
【0024】
一般に、要求トルクに対する駆動モータの出力トルクは駆動モータの回転速度によって変化する。
例えば、出力曲線101は、駆動モータに対して要求トルクAを指令した場合に、駆動モータが実際に出力する出力トルクの回転速度による変化を表しており、出力曲線102は、駆動モータに対して要求トルクB(要求トルクB<要求トルクA)を指令した場合に、駆動モータが実際に出力する出力トルクの回転速度による変化を表している。
【0025】
図3に示したように、出力曲線101、102共に駆動モータの回転速度が低い領域では、ほぼ指令通りの出力トルクが出力される。
そして、出力曲線102に関しては、回転速度bまでは出力トルクがほぼ一定であり、これより回転速度の高い領域では、出力トルクが急落して、回転速度c以上では、出力トルクがほぼ0となる。
【0026】
出力曲線101に関しては、回転速度aまでは出力トルクがほぼ一定であり、その後、回転速度bまでは、出力トルクが若干低くなる。
そして、回転速度bより高い領域では、出力トルクが急落して、回転速度c以上では、出力トルクがほぼ0となる。
他の要求トルクに対する出力トルクの関係も同様となっており、回転速度が高い領域では出力トルクが低下する。
そして、要求トルクが高いほど、出力トルクの低下の程度が大きくなる。
【0027】
先行車両2と追従車両3は、ECU10の車両制御部13のメモリに、自車両の駆動モータ60の出力マップを記憶している。
そして、追従走行の要求があった時に、エミュレーションマップの生成依頼元の車両が(ここでは追従車両3)がエミュレーションマップの生成元(ここでは先行車両2)に無線通信で送信する。
【0028】
次に、図4の各図を用いてエミュレーションマップの作成方法について説明する。
図4(a)は、先行車両2の駆動モータ60の出力マップで、要求トルクAに対する出力トルクの出力曲線71と要求トルクBに対する出力トルクの出力曲線72を実線で示した図である。
図から明らかなように、駆動モータ60の回転数が上がるほど、出力トルクが低下し、回転速度dで出力トルクが等しくなっている。
図4(b)は、追従車両3の駆動モータ60の出力マップで、要求トルクAに対する出力トルクの出力曲線81と要求トルクBに対する出力トルクの出力曲線82を破線で示した図である。
これも駆動モータ60の回転数が上がるほど、出力トルクが低下し、回転速度dで出力トルクが等しくなっている。
【0029】
図4(c)は、先行車両2の出力マップと追従車両3の出力マップを重ね合わせたところを示した図である。
要求トルクBに対する出力トルク(出力曲線72、出力曲線82)に関して、回転速度cでは、両者は等しく、回転速度c未満では、出力曲線82の方が出力トルクが小さく、回転速度cよりも高い領域では、出力曲線72の方が出力トルクが小さい。
そこで、回転速度の変化領域に渡って、出力トルクが小さい方の出力曲線を採用してこれをつなぎ合わせると、太線で表した出力曲線92が得られる。
即ち、出力曲線92は、回転速度c未満では出力曲線82を採用し、回転速度c以上では出力曲線72を採用してつなぎ合わせた出力曲線である。
【0030】
要求トルクAに対しても同様の処理を行うと、低回転速度側では出力曲線81を採用し、高回転速度側では出力曲線71を採用してつなぎ合わせた出力曲線91が得られる。
以上の処理を全ての要求トルクに渡って行うと、先行車両2と追従車両3の出力マップを統合したエミュレーションマップが生成される。
エミュレーションマップでは、要求トルクに対して出力トルクが低い側の出力曲線が採用されているため、エミュレーションマップによる出力トルクは、先行車両2と追従車両3の何れの駆動モータ60の能力でも出力することができるものとなっている。
【0031】
なお、本実施の形態では、要求トルクに対して出力トルクの低い側をエミュレーションマップの出力トルクとしたが、これは一例であって、これ以下の出力トルクであれば、先行車両2、追従車両3の何れも出力できるため、要求トルクに対して出力トルクが低い側の出力曲線以下の出力トルクを採用してエミュレーションマップを作成することができる。
【0032】
先行車両2は、エミュレーションマップを作成した後、これを車両制御部13に記憶すると共に、追従車両3にも送信する。そして、追従車両3は先行車両2からエミュレーションマップを受信して車両制御部13に記憶する。
そして、先行車両2と追従車両3は、追従走行時において、要求トルクをエミュレーションマップ変換(以下、変換後の要求トルクを共通要求トルクという)し、この共通要求トルクと自車用の出力マップとから、実際に駆動モータ60に指令する要求トルク(以下、実要求トルクという)を求め、駆動モータ60に指令する。
このように、先行車両2における指令された要求トルクや、追従車両3における先行車2に追従するための要求トルクを、エミュレーションマップと自車の出力マップとを介して実要求トルクに変更することで、先行車両2と追従車両3は、両車両の駆動モータ60の能力の範囲内にある同じ駆動モータを仮想的に搭載し、これを駆動するのと同じ効果を得ることができる。
【0033】
なお、以上では、先行車両2と追従車両3の出力マップをエミュレーションマップに統合する場合について説明したが、同じ手法を用いて、更に、多くの車両の出力マップを統合することができる。
この場合は、これら多くの車両の出力マップを全て重ね合わせ、最も出力トルクの低いものをつなぎ合わせることによりエミュレーションマップを作成する。
【0034】
即ち、先行車両2のECU10は、演算qp=min(Qn(m,qd))を行うことによりエミュレーションマップを作成する。
ここで、qpは、新しく生成されるエミュレーションマップの出力トルク、Qnは、自車の出力マップと、それ以外の車両n−1台の出力マップの出力を示すn個の関数であり、mはモータ回転速度、qdは要求トルクである。
【0035】
先行車両2のECU10は、出力マップ内の全ての離散点で上記演算を行い、その結果をメモリ内に保持する。これを行うことにより、全ての車両が出力しうるエミュレーションマップが生成される。
ここで、エミュレーションマップは、複数の車両(先行車両2と追従車両3)の駆動モータ60が出力できる当該複数の車両に共通の共通出力マップとして機能しており、先行車両2は、出力指令(要求トルク)に対して最も出力の低い出力トルクを回転速度が変化する区間に渡って選択することにより共通出力マップを生成している。
【0036】
図5は、エミュレーションマップを用いた実要求トルクの指令方法を説明するための図である。
ここでは、先行車両2が要求トルクdmを指令する場合について説明する。
図5(a)は、先行車両2が作成して記憶したエミュレーションマップを示しており、図5(b)は、先行車両2の駆動モータ60の出力マップを示している。
【0037】
先行車両2は、アクセルの開度などから加速度要求を受け付け、これを要求トルクdmに変換する。
そして、先行車両2は、要求トルクdmを駆動モータ60に直接指令せずに、まず、エミュレーションマップで表される仮想の駆動モータに要求トルクdmを指令した場合の共通出力トルクを計算する。
すなわち、先行車両2は、図5(a)に示したように、現在の駆動モータ60の回転速度と要求トルクdmの出力曲線との交点で表される共通出力トルクqecを求める。
【0038】
ここで、現在の駆動モータ60の回転速度は、車速センサ値およびギア比から算出される。
また、交点は、エミュレーションマップが離散マップの場合、現在の駆動モータ60の回転速度での要求トルクdmより小さくて最も近い交点と、要求トルクdmより大きくて最も近い交点を算出し、この2つから一次元の補間を行うことにより算出してよい。
【0039】
次に、先行車両2は、自車両の駆動モータ60での出力が、この仮想の駆動モータの共通出力トルクqecとなるように、駆動モータ60に指令すべき実要求トルクqdrを自車両の出力マップを用いて逆算する。
すなわち、先行車両2は、図5(b)に示したように、現在の駆動モータ60の回転速度と、共通出力トルクqecの交点にある出力曲線を特定し、当該出力曲線の実要求トルクqdrを取得し、駆動モータ60に当該実要求トルクqdrを出力指令する。
このように、先行車両2は、要求トルクdmに対してエミュレーションマップと自車両の出力マップを介して変換した実要求トルクqdrを駆動モータ60に指令することで、駆動モータ60は、先行車両2と追従車両3が出力可能な共通出力トルクqecを出力する。
【0040】
このように、先行車両2は、エミュレーションマップと自車両の出力マップを用いることにより、駆動モータ60に対する指令を仮想の駆動モータに対する指令に変換し、駆動モータ60をあたかも仮想の駆動モータであるかのように制御(エミュレート)することができる。
追従車両3も同様に、エミュレーションマップと自車両の出力マップを用いて自車両の駆動モータ60を制御し、自車両の駆動モータ60をあたかも仮想の駆動モータであるかのように制御(エミュレート)する。
【0041】
このようにして、先行車両2と追従車両3の駆動モータ60を、同一の性能を有する仮想の共通駆動モータとして振る舞うようにエミュレートすることにより、先行車両2と追従車両3が搭載する駆動モータ60に性能の差があったとしても、あたかも同一の性能の駆動モータを搭載しているかのように制御し、追従車両3による先行車両2の追従走行を良好に行うことができる。
【0042】
図6は、先行車両2と追従車両3が追従走行を行う場合に先行車両2が行う出力トルク指令処理の手順を説明するためのフローチャートである。
以下の処理は、先行車両2のECU10が行うものである。
まず、先行車両2は、通信により各追従車両3から追従車両3の出力マップを受信する(ステップ5)。
【0043】
次に、先行車両2は、自車両の出力マップと、追従車両3から受信した出力マップを用いてエミュレーションマップを生成し(ステップ10)、当該生成したエミュレーションマップを自車両で記憶すると共に、これを追従車両3に送信する(ステップ15)。
追従車両3は、先行車両2からエミュレーションマップが送信されてくると、これを受信して記憶する。
【0044】
このように、先行車両2は、自車両を含めた複数の車両(先行車両2と追従車両3)の駆動モータの出力マップを取得する出力マップ取得手段と、当該取得した出力マップを用いて、当該複数の車両の駆動モータが出力できる当該複数の車両に共通の共通出力マップ(エミュレーションマップ)を生成する共通出力マップ生成手段と、当該生成した共通出力マップを出力する共通出力マップ出力手段と、を備えた情報処理装置を搭載している。
そして、当該共通出力マップ出力手段が出力する共通出力マップを、先行車両2はECU10の出力により、また追従車両3は通信により先行車両2から取得する共通出力マップ取得手段を備えている。
【0045】
このようにして、先行車両2は、自車両の出力マップと追従車両3の出力マップを統合してエミュレーションマップを生成し、生成したエミュレーションマップを先行車両2と追従車両3が保持する。その後、先行車両2と追従車両3は、保持したエミュレーションマップに基づいて駆動モータ60を制御して追従走行する。
【0046】
まず、先行車両2は、例えば、ドライバのアクセル開度やブレーキ踏量などから要求加速度を取得し(ステップ20)、これから要求トルクdmを算出すると共に(ステップ25)、駆動モータ60の回転速度を取得する(ステップ30)。
先行車両2は、出力調整装置(例えばジョイスティック、アクセルなど)による加速度指令を要求トルクdmに変換することができる。また、速度指令を要求トルクdmに変換するように構成してもよい。
このように、先行車両2は、出力指令(要求トルクdm)を受け付ける出力指令受付手段と、自車両の駆動モータ60の回転速度を取得する回転速度取得手段を備えている。
【0047】
次に、先行車両2は、この要求トルクdmと回転速度をエミュレーションマップに適用し、エミュレーションマップに基づく共通出力トルクqecを算出する(ステップ35)。
このように、先行車両2は、出力指令(要求トルク)と回転速度に対する出力(共通出力トルクqec)を共通出力マップ(エミュレーションマップ)を用いて取得する出力取得手段を備えている。
【0048】
次に、先行車両2は、当該算出した共通出力トルクqecと、駆動モータ60の回転速度を自車両の出力マップに適用し、実要求トルクqdrを算出し(ステップ40)、当該算出した実要求トルクqdrを駆動モータ60に指令する(ステップ45)。
このように、先行車両2は、出力(共通出力トルクqec)に対する出力指令(実要求トルクqdr)を自車両の出力マップを用いて取得する出力指令取得手段と、当該取得した出力指令(実要求トルクqdr)を用いて自車両の駆動モータ30に出力指令を行う出力指令手段を備えている。
以上のようにして、先行車両2は、エミュレーションマップに基づく駆動モータ60の制御を行うことができる。
【0049】
一方、追従車両3の場合は、先行車両2に自車両の出力マップを送信し、これに対して先行車両2が生成したエミュレーションマップを先行車両2から受信して記憶する。
このように、先行車両2は、共通出力マップ(エミュレーションマップ)を追従走行を行う他の車両(追従車両3)に送信する共通出力マップ送信手段を備えている。
そして、エミュレーションマップと自車両の出力マップを用いてステップ20〜ステップ45と同様の処理を行い、先行車両2に追従する。
【0050】
追従車両3では、ステップ20の要求加速度は、図1に示したフィードバック制御を行うフィードバックシステムから出力される。
より詳細には、追従車両3の要求加速度は、センサから追従制御部12(図2)を介して車両制御部13が受け取った車両速度値を微分することで算出された車両加速度に対しフィードバック制御を行うことで算出される。
フィードバック制御は、一般的なP、PI、PID制御などにより行ってよいが、他のフィードバック制御でもよい。
このように、追従車両3は、共通出力マップ(エミュレーションマップ)を用いて他の車両(先行車両2)に追従走行する追従手段を備えている。
【0051】
なお、追従車両3の追従の応答を高めるため、先行車両2から要求加速度を追従車両3に送信し、追従車両3がこれを用いてフィードフォワード制御するように構成することもできる。
この場合、ステップ20の要求加速度は、フィードバックシステムによる出力指令と、フィードフォワードによる出力指令を合成したものとなる。
【0052】
以上のフローチャートで説明した例は、先行車両2がエミュレーションマップを生成し、追従車両3に送信する場合であるが、他の形態によりエミュレーションマップを各車両に保持させるように構成することもできる。
例えば、各車両が互いに他の車両の出力マップを収集して、それぞれ個別にエミュレーションマップを作成するように構成することができる。
【0053】
また、例えば、先行車両2と追従車両3と通信可能なセンタサーバを設置する。そして、先行車両2と追従車両3がそれぞれ自車両の出力マップをセンタサーバに送信し、センタサーバはこれを用いてエミュレーションマップを作成し、先行車両2と追従車両3に送信する。
このようにセンタサーバでエミュレーションマップを作成する場合には、予め各車両の出力マップをセンタサーバに記憶しておき、各車両が自車両のID情報をセンタサーバに送信するように構成することもできる。
この場合、センタサーバはID情報から各車両の出力マップを読み出してエミュレーションマップを作成し、各車両に送信する。このように各車両の出力マップをセンタサーバに予め記憶しておくことにより、車両とセンタサーバの通信量を低減することができる。
【0054】
以上に説明したように、本実施の形態では、追従制御開始時に、追従走行に参加する車両が、各々、自車両の加速および減速性能を無線通信により送出し、各車両はこの性能と自車両の性能とを比較し、低い方に合わせる演算を行う。
追従対象車両(先行車両2)がこの性能をエミュレートすることにより、事実上原動機の出力トルクを過渡状態も含めて制限して、追従車両3の追従を円滑に行うことができる。
この低い方に合わせる演算は、各々で行ってもよいし、先行車両2、追従車両3どちらかで行った後、通信により配布してもよいし(この場合無駄な演算を省略できる)、またはセンタサーバにて行ってもよい。
【0055】
また、以上説明した実施形態では、各車両がモータ単体の出力マップを保持する場合について説明したが、ギアやタイヤを含めた(考慮した)総合出力マップを定義し、保持するようにし、共通出力マップもこの総合出力マップから作成するようにしてもよい。
【0056】
さらに、本実施形態による追従走行をより汎用的にするため、各車両の車両重量や空気抵抗係数が大きく異なる場合を想定し、出力トルクをすべて出力加速度とし、出力指令はすべて加速度指令としてもよい。
この場合、上記実施形態で説明した要求トルクは、要求加速度となる。
【0057】
そして、実施形態の図3〜図5で説明した出力マップの出力トルク−回転速度−要求トルクの関係を表す出力マップに変えて、出力加速度−車両速度mn−要求加速度aの関係を表す出力マップを保持する。
このマップは、各車両ごとに、予め平坦路、無風状態を想定し、計算あるいは実験的に求めたものを保持する。加速度は、速度センサ値の微分、または加速度センサ値に対するフィードバック制御で実現する。
このように変形することで、例えば極端な場合として、倒立車両とダンプカーの追従走行も可能になる。
【0058】
なお、追従走行においては、先行車両のドライバーだけが走行指令を行うため、要求加速度は、ジョイスティックやアクセルペダルなどの操作値となる。
ただし、この操作値と要求加速度を単純に対応させておくと、モータが出力できる限り加速を続けてしまうので、次の数式(1)により車両速度に応じて漸減させる関数を作用させることで、一般車両の走行感覚に近づけることが可能になる。
【0059】
(1)a=(A*dmj)/(|mn|+A)
mn<0の場合、aは数式(1)のaに(−1)を乗じた値である。
【0060】
数式(1)において、aは要求加速度、dmjはジョイスティック、アクセルペダル等の位置(速度0の時の要求加速度を表す)、mnは車両速度、Aは実験的に感覚的に違和感が無いようにチューニングされる定数である。
【0061】
図7は、出力トルクを出力加速度とし、出力指令を加速度指令とした本変形例により追従走行を行う場合の先行車両の処理を表したフローチャートである。
まず、先行車両2は、図6で説明したと同様にして、通信により各追従車両3から追従車両3の出力マップを受信し(ステップ5)、自車両の出力マップと受信した出力マップを用いて、出力加速度−車両速度mn−要求加速度aによるエミュレーションマップを生成し(ステップ10)、当該生成したエミュレーションマップを自車両で記憶すると共に、これを追従車両3に送信する(ステップ15)。
【0062】
追従車両3は、先行車両2からエミュレーションマップが送信されてくると、これを受信して記憶する。
その後、先行車両2と追従車両3は、保持したエミュレーションマップに基づいて駆動モータ60を制御して追従走行する。
【0063】
先行車両2は、dmjはジョイスティック、アクセルペダル等の位置から、数式(1)に従い要求加速度aを取得する(ステップ26)共に、車両速度mnを取得する(ステップ36)。
そして、先行車両2は、この要求加速度aと車両速度mnをエミュレーションマップに適用し、エミュレーションマップに基づく出力加速度を算出する(ステップ36)。
【0064】
次に、先行車両2は、当該算出した出力加速度と、車両速度mnを自車両の出力マップに適用し、実要求加速度を算出する(ステップ41)。
そして、先行車両は算出した実要求加速度を実現するトルクをフィードバック演算により算出し(ステップ42)、算出したトルクを要求トルクとして駆動モータ60に指令する(ステップ46)。
以上のようにして、先行車両2は、エミュレーションマップに基づく駆動モータ60の制御を行うことができる。
【0065】
一方、追従車両3の場合は、先行車両2に自車両の出力マップを送信し、これに対して先行車両2が生成したエミュレーションマップを先行車両2から受信して記憶する。
そして、エミュレーションマップと自車両の出力マップを用いて、図7で説明したステップ26〜ステップ46と同様の処理を行い、先行車両2に追従する。
なお、ステップ26の要求加速度aは、図1に示したフィードバック制御を行うフィードバックシステムから取得する。
【0066】
以上、本実施の形態とその変形例について説明したが、これによって次のような効果を得ることができる。
(1)性能差のある車両が(縦、横とも)追従制御を行う場合、先行車両2が、追従車両3にとって実現できない加速度や速度を出力してしまうことを防ぐことができる。
(2)各車両が自車両の原動機の出力特性をマップ化して出力マップとして保持しており、追従走行開始時に、通信によりこの情報をエミュレーションマップ生成元に送信することができる。
(3)エミュレーションマップの生成元は、送信されてきた出力マップを用いて、各回転速度と要求トルクに渡って、追従に参加する車両全てが出力しうる特性を演算し、この特性をエミュレーションマップにマップ化することができる。
(4)各車両は、エミュレーションマップを用いて、要求トルクの指令に対して出力すべき値を算出し、この値を用いて、自車両の出力マップから実際の出力トルクの指令を逆算して、これを用いて駆動モータ60に指令することができる。
【符号の説明】
【0067】
2 先行車両
3 追従車両
5 目標点
6 代表点
7 代表点
10 ECU
11 先行車両相対位置検出部
12 追従制御部
13 車両制御部
20 レーザレーダ
30 車速センサ
40 ヨーレートセンサ
50 無線通信装置
60a、60b 駆動モータ
71、72 出力曲線
81、82 出力曲線
91、92 出力曲線
101、102 出力曲線
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に係り、例えば、複数の車両が追従走行するものに関する。
【背景技術】
【0002】
先行する車両(以下、先行車両)に追従しながらオートクルーズする車両(以下、追従車両)について提案されている。
例えば、次の特許文献1の「車両」では、単独走行可能な1人乗りの車両において、先行車両がホスト車両として走行し、一方、他の車両が追従車両としてホスト車両の横に並んで並走追従走行する場合について提案されている。
【0003】
また、この技術は、縦方向に追従するものであるが、先行車両と追従車両の車間距離を制御する技術として、次の特許文献2の「車間距離制御システムおよび車両」がある。
この技術は、先行車両がアクセル開度または要求加速度を追従車両に送り、追従車両がこれを用いて追従走行することにより、両車両の車間距離の変動を低減するものである。
【0004】
更に、先行車両と追従車両のエンジン特性の差を補正する技術として、次の特許文献3の「走行制御装置」がある。
この技術は、最大速度や最大加速度を制限するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−338117
【特許文献2】特開2008−155740
【特許文献3】特開2008−120302
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、車両が縦または横方向に短い車間距離で追従し、あたかも一台の車両のように走行する追従制御を行う場合、先行車両と追従車両の駆動モータに特性の差があると、このような一台の車両のような制御が困難となる場合がある。
例えば、追従車両の駆動モータが先行車両のものよりも出力が小さい場合、速度や加速度の大きい領域では追従車両が先行車両に追従できない場合があり、特許文献2の技術によって先行車両の要求加速度などを追従車両に送っても追従車両は追従できない。
また、特許文献3の技術によって、最大速度や最大加速度を制限しても、その最大速度や最大加速度に至るまでの特性が同一ではないため、この場合も、良好に追従することは困難である。
特に、原動機(駆動モータ、内燃機関など)は、負荷が大きいと指令を出しても要求通りの出力を実現できない場合があるため、追従車両の性能が低い場合、坂道などで、負荷が変わると、設定された最高速度や最高加速度以下でも追従できなくなる場合が考えられる。
【0007】
そこで、本発明の目的は、性能の異なる駆動モータを有する車両間で追従走行を良好に行うことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明では、車両の駆動モータの出力指令に対する回転速度と出力の関係を表す出力マップを処理する情報処理装置であって、複数の車両の駆動モータの出力マップを取得する出力マップ取得手段と、前記取得した出力マップを用いて、前記複数の車両の駆動モータが出力できる前記複数の車両に共通の共通出力マップを生成する共通出力マップ生成手段と、前記生成した共通出力マップを出力する共通出力マップ出力手段と、を具備したことを特徴とする情報処理装置を提供する。
(2)請求項2に記載の発明では、前記共通出力マップ生成手段は、出力指令に対して最も出力の低い出力を回転速度が変化する区間に渡って選択することにより前記共通出力マップを生成することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置を提供する。
(3)請求項3記載の発明では、請求項1、又は請求項2に記載の情報処理装置の前記共通出力マップ出力手段が出力する共通出力マップを取得する共通出力マップ取得手段と、 自車両の出力マップを記憶する自車両出力マップ記憶手段と、出力指令を受け付ける出力指令受付手段と、自車両の駆動モータの回転速度を取得する回転速度取得手段と、前記受け付けた出力指令と前記取得した回転速度に対する共通出力を、前記取得した共通出力マップを用いて取得する出力取得手段と、前記取得した共通出力に対する実出力指令を前記記憶した自車両の出力マップを用いて取得する出力指令取得手段と、前記取得した実出力指令を用いて自車両の駆動モータに出力指令を行う出力指令手段と、を具備したことを特徴とする車両を提供する。
(4)請求項4記載の発明では、前記出力指令手段は、自車両が他車両に追従走行を行う場合、又は、他車両が自車両に対して追従走行を行う場合に実出力指令を用い、追従走行を行わない場合に前記出力指令受付手段で受け付けた出力指令を用いて前記駆動モータに出力指令を行う、ことを特徴とする請求項3に記載の車両を提供する。
(5)請求項5記載の発明では、請求項1、又は請求項2に記載の情報処理装置を搭載し、前記搭載した情報処理装置が出力した共通出力マップを追従走行を行う他の車両に送信する共通出力マップ送信手段を具備したことを特徴とする請求項3に記載の車両を提供する。
(6)請求項6記載の発明では、前記出力指令受付手段は、他車両に追従して走行するための出力指令を取得する、ことを特徴とする請求項3に記載の車両を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の車両の駆動モータの出力マップから、これら複数の車両の駆動モータが出力できる共通の共通出力マップを生成し、これを用いて走行することにより、性能の異なる駆動モータを有する車両間で追従走行を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】先行車両と追従車両が行う追従走行を説明するための図である。
【図2】車両の構成を示した図である。
【図3】駆動モータの出力マップを説明するための図である。
【図4】エミュレーションマップの作成方法を説明するための図である。
【図5】要求トルクの指令方法を説明するための図である。
【図6】出力トルク指令処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【図7】変形例における出力トルク指令処理の手順を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(1)実施の形態の概要
追従走行することにより群走行する先行車両2と追従車両3は、要求トルクに対する駆動モータの特性、即ち、回転速度ごとの出力トルクをマップ化した出力マップをそれぞれ保持している。
先行車両2は、追従車両3が追従走行を行う前に、追従車両3から出力マップを送信してもらう。そして、先行車両2は、これを自車両の出力マップと合成して、先行車両2と追従車両3の何れの車両の駆動モータでも出力しうる仮想のマップであるエミュレーションマップを生成し、自車両でこれを保持すると共に追従車両3にも送信する。
先行車両2と追従車両3は、エミュレーションマップに従った出力を行うような制御系を有しており、この制御系を駆動モータに対する指令の出力の直前に作用させることで、先行車両2と追従車両3の駆動モータの性能差を調整し、良好な追従走行を行うことができる。
【0012】
(2)実施の形態の詳細
図1の各図は、本実施の形態の先行車両2と追従車両3が行う追従走行を説明するための図である。
追従車両3は、図1(a)に示したように、先行車両2の代表点6から横方向距離aの位置に目標点5を設定し、自車両の代表点7と目標点5との前後方向(進行方向、縦方向)の前後偏差Δdと、左右方向(横方向)の左右偏差Δwを計算し、これらの偏差が0に収束するように、自車両の車速と旋回をフィードバック制御する。
その結果、図1(b)に示したように、追従車両3は、先行車両2の横に並んで、両車両は、あたかも1台の車両であるかのように走行する。
【0013】
なお、この例は、追従走行の一例であって、例えば、先行車両2の後部から追従車両3が追従するように構成したり、あるいは、並走する先行車両2と追従車両3のうちの何れか一方、又は両方に他の車両が追従したり、更に多くの車両がグループを成して群走行(グループ走行)したりするように構成することもできる。
何れの場合も、1台の先行車両2がホストとなって走向し、他の車両は先行車両2を基準に追従走行する。
【0014】
また、本実施形態の車両は、通常の4輪車両に対しても適用が可能であるが、小型の車両で横方向の旋回自由度が高い車両に適用することも可能である。
本実施形態では、特に小半径で旋回することが可能な倒立振り子車両(1軸2輪車両等)に適用した場合を例に説明することとする。なお、先行車両も倒立振り子車両を対象として説明するが、それ以外の4輪車両等であってもよい。
【0015】
倒立振り子車両は、搭乗部の姿勢を感知し、その姿勢に応じて、駆動輪の駆動方向で前後方向のバランスを保持するように姿勢制御を行いながら走行するものである。その姿勢制御の方法としては、例えば、米国特許第6,302,230号明細書、特開昭63−35082号公報、特開2004−129435公報、特開2004−276727公報で開示された各種制御方法が使用可能である。
【0016】
図2は、本実施形態の車両(追従車両3)の構成を表したものである。
先行車両2の構成も基本的に追従車両3と同様であり、以降、先行車両2の構成に言及する場合には、追従車両3と同じ符号を用いて説明する。
図2に示されるように、追従車両3は、ECU(エレクトロニック・コントロール・ユニット)10と、レーザレーダ20、車速センサ30、ヨーレートセンサ40、無線通信装置50、駆動モータ60a、60bを備えている。
なお、図示しないが、駆動モータ60a、60bなどに駆動用の電力を供給し、また、ECU10に制御用の低電圧の電源を供給する、バッテリも備えている。
【0017】
ECU10は、図示しない各種プログラムやデータが格納されたROM、作業領域として使用されるRAM、外部記憶装置、インターフェース部等を備えたコンピュータシステムで構成されている。
倒立振り子車両に適用されている本実施形態においては、その姿勢を保持する姿勢制御プログラム、操縦装置からの各種指示信号に基づいて走行を制御する走行制御プログラム、本実施形態における先行車両2に対する追従走行を行うための追従走行プログラム等の各種プログラムがROMに格納されており、ECU10は、これら各種プログラムを実行することで対応する処理を行う。
【0018】
また、ECU10は、先行車両相対位置検出部11、追従制御部12、車両制御部13を備えている。
先行車両相対位置検出部11は、レーザレーダ20で測定された位置と距離に基づいて、先行車両2の相対位置および向き(進行方向)を検出し、追従制御部12に供給する。
なお、先行車両2から通信で車速およびヨーレートの情報を受信してもよい。
また、本実施形態では不要であるが、先行車両2から位置座標データを受信してデッドレコニングを行う場合には、自車両(追従車両3)の絶対位置を検出するためにGPS等の現在位置検出装置を備えるようにしてもよい。
【0019】
追従制御部12は、本実施形態における追従走行として、並走追従走行を行う場合の制御指令値(前後方向指令値、左右方向指令値)を車両制御部13に供給する。
追従制御部12は、車速センサ30から車速、ヨーレートセンサ40からヨーレートを取得する。また、無線通信装置50で受信した先行車両2の目標指令値を取得する。無線通信装置50は、先行車両2や他の車両(追従車両を含む)との間で車車間通信によりデータの送受信を行うようになっている。
追従制御部12は、フィードバック制御とフィードフォワード制御による、前後方向の前後制御部と左右方向の左右制御部を備えている。
追従制御部12は、先行車両相対位置検出部11、車速センサ30、ヨーレートセンサ40、無線通信装置50からの各入力に基づいて、前後制御部による前後制御指令値(目標速度、又は目標加速度)と、左右制御部による左右制御指令値(目標回転角速度ω)を車両制御部13に供給する。
【0020】
車両制御部13は駆動モータ60a、60bを制御する。
即ち、車両制御部13は、追従制御部12から供給される目標速度(又は目標加速度)となるように、駆動モータ60a、60bを制御する。具体的には、車両制御部13は、駆動モータ60用の速度(又は加速度)−電流マップを備えており、このトルク−電流マップに従って、追従制御部12から供給される目標速度(又は目標加速度)に対応する電流を駆動モータ60a、60bに対して出力するように電流制御を行う。
【0021】
また、車両制御部13は、追従制御部12から供給される目標回転角速度ω(左右制御指令値)で追従車両3が旋回するように、両駆動モータ60a、60bに対して異なる電流を出力することで、両駆動モータ60a、60bの差動により旋回を行うようにしてもよい。
更に、車両制御部13は、自車両の出力マップ(後述)を記憶すると共に、先行車両2が生成したエミュレーションマップ(後述)を記憶する。先行車両2の車両制御部13も同様に自車両の出力マップと自車両で生成したエミュレーションマップを記憶する。
このように、先行車両2と追従車両3は、自車両の出力マップを記憶する自車両出力マップ記憶手段を備えている。
【0022】
なお、本実施形態では倒立振り子車両を対象に説明しているが、それ以外の車両、例えば、4輪車両等にも適用が可能であり、その場合には、車両は操舵モータを備える。そして、車両制御部13は、追従制御部12から供給される目標回転角速度ωに対応する操舵角となるように操舵モータを制御する。
【0023】
図3は、電動車両の駆動モータの出力(特性)マップを説明するための図である。
先行車両2や追従車両3の駆動モータ60a、60b(以下、両者を区別しない場合には単に駆動モータ60と記す)は、それぞれ、このような固有の特性を有している。
出力マップは、駆動モータの特性をグラフ化した出力トルク−回転速度−要求トルクのマップであり、要求トルクに対して、駆動モータが実際に出力する出力トルクの回転速度による変化を表したものである。ここで、回転速度は、駆動モータ60のロータが単位時間当たりに回転する回転数である。
【0024】
一般に、要求トルクに対する駆動モータの出力トルクは駆動モータの回転速度によって変化する。
例えば、出力曲線101は、駆動モータに対して要求トルクAを指令した場合に、駆動モータが実際に出力する出力トルクの回転速度による変化を表しており、出力曲線102は、駆動モータに対して要求トルクB(要求トルクB<要求トルクA)を指令した場合に、駆動モータが実際に出力する出力トルクの回転速度による変化を表している。
【0025】
図3に示したように、出力曲線101、102共に駆動モータの回転速度が低い領域では、ほぼ指令通りの出力トルクが出力される。
そして、出力曲線102に関しては、回転速度bまでは出力トルクがほぼ一定であり、これより回転速度の高い領域では、出力トルクが急落して、回転速度c以上では、出力トルクがほぼ0となる。
【0026】
出力曲線101に関しては、回転速度aまでは出力トルクがほぼ一定であり、その後、回転速度bまでは、出力トルクが若干低くなる。
そして、回転速度bより高い領域では、出力トルクが急落して、回転速度c以上では、出力トルクがほぼ0となる。
他の要求トルクに対する出力トルクの関係も同様となっており、回転速度が高い領域では出力トルクが低下する。
そして、要求トルクが高いほど、出力トルクの低下の程度が大きくなる。
【0027】
先行車両2と追従車両3は、ECU10の車両制御部13のメモリに、自車両の駆動モータ60の出力マップを記憶している。
そして、追従走行の要求があった時に、エミュレーションマップの生成依頼元の車両が(ここでは追従車両3)がエミュレーションマップの生成元(ここでは先行車両2)に無線通信で送信する。
【0028】
次に、図4の各図を用いてエミュレーションマップの作成方法について説明する。
図4(a)は、先行車両2の駆動モータ60の出力マップで、要求トルクAに対する出力トルクの出力曲線71と要求トルクBに対する出力トルクの出力曲線72を実線で示した図である。
図から明らかなように、駆動モータ60の回転数が上がるほど、出力トルクが低下し、回転速度dで出力トルクが等しくなっている。
図4(b)は、追従車両3の駆動モータ60の出力マップで、要求トルクAに対する出力トルクの出力曲線81と要求トルクBに対する出力トルクの出力曲線82を破線で示した図である。
これも駆動モータ60の回転数が上がるほど、出力トルクが低下し、回転速度dで出力トルクが等しくなっている。
【0029】
図4(c)は、先行車両2の出力マップと追従車両3の出力マップを重ね合わせたところを示した図である。
要求トルクBに対する出力トルク(出力曲線72、出力曲線82)に関して、回転速度cでは、両者は等しく、回転速度c未満では、出力曲線82の方が出力トルクが小さく、回転速度cよりも高い領域では、出力曲線72の方が出力トルクが小さい。
そこで、回転速度の変化領域に渡って、出力トルクが小さい方の出力曲線を採用してこれをつなぎ合わせると、太線で表した出力曲線92が得られる。
即ち、出力曲線92は、回転速度c未満では出力曲線82を採用し、回転速度c以上では出力曲線72を採用してつなぎ合わせた出力曲線である。
【0030】
要求トルクAに対しても同様の処理を行うと、低回転速度側では出力曲線81を採用し、高回転速度側では出力曲線71を採用してつなぎ合わせた出力曲線91が得られる。
以上の処理を全ての要求トルクに渡って行うと、先行車両2と追従車両3の出力マップを統合したエミュレーションマップが生成される。
エミュレーションマップでは、要求トルクに対して出力トルクが低い側の出力曲線が採用されているため、エミュレーションマップによる出力トルクは、先行車両2と追従車両3の何れの駆動モータ60の能力でも出力することができるものとなっている。
【0031】
なお、本実施の形態では、要求トルクに対して出力トルクの低い側をエミュレーションマップの出力トルクとしたが、これは一例であって、これ以下の出力トルクであれば、先行車両2、追従車両3の何れも出力できるため、要求トルクに対して出力トルクが低い側の出力曲線以下の出力トルクを採用してエミュレーションマップを作成することができる。
【0032】
先行車両2は、エミュレーションマップを作成した後、これを車両制御部13に記憶すると共に、追従車両3にも送信する。そして、追従車両3は先行車両2からエミュレーションマップを受信して車両制御部13に記憶する。
そして、先行車両2と追従車両3は、追従走行時において、要求トルクをエミュレーションマップ変換(以下、変換後の要求トルクを共通要求トルクという)し、この共通要求トルクと自車用の出力マップとから、実際に駆動モータ60に指令する要求トルク(以下、実要求トルクという)を求め、駆動モータ60に指令する。
このように、先行車両2における指令された要求トルクや、追従車両3における先行車2に追従するための要求トルクを、エミュレーションマップと自車の出力マップとを介して実要求トルクに変更することで、先行車両2と追従車両3は、両車両の駆動モータ60の能力の範囲内にある同じ駆動モータを仮想的に搭載し、これを駆動するのと同じ効果を得ることができる。
【0033】
なお、以上では、先行車両2と追従車両3の出力マップをエミュレーションマップに統合する場合について説明したが、同じ手法を用いて、更に、多くの車両の出力マップを統合することができる。
この場合は、これら多くの車両の出力マップを全て重ね合わせ、最も出力トルクの低いものをつなぎ合わせることによりエミュレーションマップを作成する。
【0034】
即ち、先行車両2のECU10は、演算qp=min(Qn(m,qd))を行うことによりエミュレーションマップを作成する。
ここで、qpは、新しく生成されるエミュレーションマップの出力トルク、Qnは、自車の出力マップと、それ以外の車両n−1台の出力マップの出力を示すn個の関数であり、mはモータ回転速度、qdは要求トルクである。
【0035】
先行車両2のECU10は、出力マップ内の全ての離散点で上記演算を行い、その結果をメモリ内に保持する。これを行うことにより、全ての車両が出力しうるエミュレーションマップが生成される。
ここで、エミュレーションマップは、複数の車両(先行車両2と追従車両3)の駆動モータ60が出力できる当該複数の車両に共通の共通出力マップとして機能しており、先行車両2は、出力指令(要求トルク)に対して最も出力の低い出力トルクを回転速度が変化する区間に渡って選択することにより共通出力マップを生成している。
【0036】
図5は、エミュレーションマップを用いた実要求トルクの指令方法を説明するための図である。
ここでは、先行車両2が要求トルクdmを指令する場合について説明する。
図5(a)は、先行車両2が作成して記憶したエミュレーションマップを示しており、図5(b)は、先行車両2の駆動モータ60の出力マップを示している。
【0037】
先行車両2は、アクセルの開度などから加速度要求を受け付け、これを要求トルクdmに変換する。
そして、先行車両2は、要求トルクdmを駆動モータ60に直接指令せずに、まず、エミュレーションマップで表される仮想の駆動モータに要求トルクdmを指令した場合の共通出力トルクを計算する。
すなわち、先行車両2は、図5(a)に示したように、現在の駆動モータ60の回転速度と要求トルクdmの出力曲線との交点で表される共通出力トルクqecを求める。
【0038】
ここで、現在の駆動モータ60の回転速度は、車速センサ値およびギア比から算出される。
また、交点は、エミュレーションマップが離散マップの場合、現在の駆動モータ60の回転速度での要求トルクdmより小さくて最も近い交点と、要求トルクdmより大きくて最も近い交点を算出し、この2つから一次元の補間を行うことにより算出してよい。
【0039】
次に、先行車両2は、自車両の駆動モータ60での出力が、この仮想の駆動モータの共通出力トルクqecとなるように、駆動モータ60に指令すべき実要求トルクqdrを自車両の出力マップを用いて逆算する。
すなわち、先行車両2は、図5(b)に示したように、現在の駆動モータ60の回転速度と、共通出力トルクqecの交点にある出力曲線を特定し、当該出力曲線の実要求トルクqdrを取得し、駆動モータ60に当該実要求トルクqdrを出力指令する。
このように、先行車両2は、要求トルクdmに対してエミュレーションマップと自車両の出力マップを介して変換した実要求トルクqdrを駆動モータ60に指令することで、駆動モータ60は、先行車両2と追従車両3が出力可能な共通出力トルクqecを出力する。
【0040】
このように、先行車両2は、エミュレーションマップと自車両の出力マップを用いることにより、駆動モータ60に対する指令を仮想の駆動モータに対する指令に変換し、駆動モータ60をあたかも仮想の駆動モータであるかのように制御(エミュレート)することができる。
追従車両3も同様に、エミュレーションマップと自車両の出力マップを用いて自車両の駆動モータ60を制御し、自車両の駆動モータ60をあたかも仮想の駆動モータであるかのように制御(エミュレート)する。
【0041】
このようにして、先行車両2と追従車両3の駆動モータ60を、同一の性能を有する仮想の共通駆動モータとして振る舞うようにエミュレートすることにより、先行車両2と追従車両3が搭載する駆動モータ60に性能の差があったとしても、あたかも同一の性能の駆動モータを搭載しているかのように制御し、追従車両3による先行車両2の追従走行を良好に行うことができる。
【0042】
図6は、先行車両2と追従車両3が追従走行を行う場合に先行車両2が行う出力トルク指令処理の手順を説明するためのフローチャートである。
以下の処理は、先行車両2のECU10が行うものである。
まず、先行車両2は、通信により各追従車両3から追従車両3の出力マップを受信する(ステップ5)。
【0043】
次に、先行車両2は、自車両の出力マップと、追従車両3から受信した出力マップを用いてエミュレーションマップを生成し(ステップ10)、当該生成したエミュレーションマップを自車両で記憶すると共に、これを追従車両3に送信する(ステップ15)。
追従車両3は、先行車両2からエミュレーションマップが送信されてくると、これを受信して記憶する。
【0044】
このように、先行車両2は、自車両を含めた複数の車両(先行車両2と追従車両3)の駆動モータの出力マップを取得する出力マップ取得手段と、当該取得した出力マップを用いて、当該複数の車両の駆動モータが出力できる当該複数の車両に共通の共通出力マップ(エミュレーションマップ)を生成する共通出力マップ生成手段と、当該生成した共通出力マップを出力する共通出力マップ出力手段と、を備えた情報処理装置を搭載している。
そして、当該共通出力マップ出力手段が出力する共通出力マップを、先行車両2はECU10の出力により、また追従車両3は通信により先行車両2から取得する共通出力マップ取得手段を備えている。
【0045】
このようにして、先行車両2は、自車両の出力マップと追従車両3の出力マップを統合してエミュレーションマップを生成し、生成したエミュレーションマップを先行車両2と追従車両3が保持する。その後、先行車両2と追従車両3は、保持したエミュレーションマップに基づいて駆動モータ60を制御して追従走行する。
【0046】
まず、先行車両2は、例えば、ドライバのアクセル開度やブレーキ踏量などから要求加速度を取得し(ステップ20)、これから要求トルクdmを算出すると共に(ステップ25)、駆動モータ60の回転速度を取得する(ステップ30)。
先行車両2は、出力調整装置(例えばジョイスティック、アクセルなど)による加速度指令を要求トルクdmに変換することができる。また、速度指令を要求トルクdmに変換するように構成してもよい。
このように、先行車両2は、出力指令(要求トルクdm)を受け付ける出力指令受付手段と、自車両の駆動モータ60の回転速度を取得する回転速度取得手段を備えている。
【0047】
次に、先行車両2は、この要求トルクdmと回転速度をエミュレーションマップに適用し、エミュレーションマップに基づく共通出力トルクqecを算出する(ステップ35)。
このように、先行車両2は、出力指令(要求トルク)と回転速度に対する出力(共通出力トルクqec)を共通出力マップ(エミュレーションマップ)を用いて取得する出力取得手段を備えている。
【0048】
次に、先行車両2は、当該算出した共通出力トルクqecと、駆動モータ60の回転速度を自車両の出力マップに適用し、実要求トルクqdrを算出し(ステップ40)、当該算出した実要求トルクqdrを駆動モータ60に指令する(ステップ45)。
このように、先行車両2は、出力(共通出力トルクqec)に対する出力指令(実要求トルクqdr)を自車両の出力マップを用いて取得する出力指令取得手段と、当該取得した出力指令(実要求トルクqdr)を用いて自車両の駆動モータ30に出力指令を行う出力指令手段を備えている。
以上のようにして、先行車両2は、エミュレーションマップに基づく駆動モータ60の制御を行うことができる。
【0049】
一方、追従車両3の場合は、先行車両2に自車両の出力マップを送信し、これに対して先行車両2が生成したエミュレーションマップを先行車両2から受信して記憶する。
このように、先行車両2は、共通出力マップ(エミュレーションマップ)を追従走行を行う他の車両(追従車両3)に送信する共通出力マップ送信手段を備えている。
そして、エミュレーションマップと自車両の出力マップを用いてステップ20〜ステップ45と同様の処理を行い、先行車両2に追従する。
【0050】
追従車両3では、ステップ20の要求加速度は、図1に示したフィードバック制御を行うフィードバックシステムから出力される。
より詳細には、追従車両3の要求加速度は、センサから追従制御部12(図2)を介して車両制御部13が受け取った車両速度値を微分することで算出された車両加速度に対しフィードバック制御を行うことで算出される。
フィードバック制御は、一般的なP、PI、PID制御などにより行ってよいが、他のフィードバック制御でもよい。
このように、追従車両3は、共通出力マップ(エミュレーションマップ)を用いて他の車両(先行車両2)に追従走行する追従手段を備えている。
【0051】
なお、追従車両3の追従の応答を高めるため、先行車両2から要求加速度を追従車両3に送信し、追従車両3がこれを用いてフィードフォワード制御するように構成することもできる。
この場合、ステップ20の要求加速度は、フィードバックシステムによる出力指令と、フィードフォワードによる出力指令を合成したものとなる。
【0052】
以上のフローチャートで説明した例は、先行車両2がエミュレーションマップを生成し、追従車両3に送信する場合であるが、他の形態によりエミュレーションマップを各車両に保持させるように構成することもできる。
例えば、各車両が互いに他の車両の出力マップを収集して、それぞれ個別にエミュレーションマップを作成するように構成することができる。
【0053】
また、例えば、先行車両2と追従車両3と通信可能なセンタサーバを設置する。そして、先行車両2と追従車両3がそれぞれ自車両の出力マップをセンタサーバに送信し、センタサーバはこれを用いてエミュレーションマップを作成し、先行車両2と追従車両3に送信する。
このようにセンタサーバでエミュレーションマップを作成する場合には、予め各車両の出力マップをセンタサーバに記憶しておき、各車両が自車両のID情報をセンタサーバに送信するように構成することもできる。
この場合、センタサーバはID情報から各車両の出力マップを読み出してエミュレーションマップを作成し、各車両に送信する。このように各車両の出力マップをセンタサーバに予め記憶しておくことにより、車両とセンタサーバの通信量を低減することができる。
【0054】
以上に説明したように、本実施の形態では、追従制御開始時に、追従走行に参加する車両が、各々、自車両の加速および減速性能を無線通信により送出し、各車両はこの性能と自車両の性能とを比較し、低い方に合わせる演算を行う。
追従対象車両(先行車両2)がこの性能をエミュレートすることにより、事実上原動機の出力トルクを過渡状態も含めて制限して、追従車両3の追従を円滑に行うことができる。
この低い方に合わせる演算は、各々で行ってもよいし、先行車両2、追従車両3どちらかで行った後、通信により配布してもよいし(この場合無駄な演算を省略できる)、またはセンタサーバにて行ってもよい。
【0055】
また、以上説明した実施形態では、各車両がモータ単体の出力マップを保持する場合について説明したが、ギアやタイヤを含めた(考慮した)総合出力マップを定義し、保持するようにし、共通出力マップもこの総合出力マップから作成するようにしてもよい。
【0056】
さらに、本実施形態による追従走行をより汎用的にするため、各車両の車両重量や空気抵抗係数が大きく異なる場合を想定し、出力トルクをすべて出力加速度とし、出力指令はすべて加速度指令としてもよい。
この場合、上記実施形態で説明した要求トルクは、要求加速度となる。
【0057】
そして、実施形態の図3〜図5で説明した出力マップの出力トルク−回転速度−要求トルクの関係を表す出力マップに変えて、出力加速度−車両速度mn−要求加速度aの関係を表す出力マップを保持する。
このマップは、各車両ごとに、予め平坦路、無風状態を想定し、計算あるいは実験的に求めたものを保持する。加速度は、速度センサ値の微分、または加速度センサ値に対するフィードバック制御で実現する。
このように変形することで、例えば極端な場合として、倒立車両とダンプカーの追従走行も可能になる。
【0058】
なお、追従走行においては、先行車両のドライバーだけが走行指令を行うため、要求加速度は、ジョイスティックやアクセルペダルなどの操作値となる。
ただし、この操作値と要求加速度を単純に対応させておくと、モータが出力できる限り加速を続けてしまうので、次の数式(1)により車両速度に応じて漸減させる関数を作用させることで、一般車両の走行感覚に近づけることが可能になる。
【0059】
(1)a=(A*dmj)/(|mn|+A)
mn<0の場合、aは数式(1)のaに(−1)を乗じた値である。
【0060】
数式(1)において、aは要求加速度、dmjはジョイスティック、アクセルペダル等の位置(速度0の時の要求加速度を表す)、mnは車両速度、Aは実験的に感覚的に違和感が無いようにチューニングされる定数である。
【0061】
図7は、出力トルクを出力加速度とし、出力指令を加速度指令とした本変形例により追従走行を行う場合の先行車両の処理を表したフローチャートである。
まず、先行車両2は、図6で説明したと同様にして、通信により各追従車両3から追従車両3の出力マップを受信し(ステップ5)、自車両の出力マップと受信した出力マップを用いて、出力加速度−車両速度mn−要求加速度aによるエミュレーションマップを生成し(ステップ10)、当該生成したエミュレーションマップを自車両で記憶すると共に、これを追従車両3に送信する(ステップ15)。
【0062】
追従車両3は、先行車両2からエミュレーションマップが送信されてくると、これを受信して記憶する。
その後、先行車両2と追従車両3は、保持したエミュレーションマップに基づいて駆動モータ60を制御して追従走行する。
【0063】
先行車両2は、dmjはジョイスティック、アクセルペダル等の位置から、数式(1)に従い要求加速度aを取得する(ステップ26)共に、車両速度mnを取得する(ステップ36)。
そして、先行車両2は、この要求加速度aと車両速度mnをエミュレーションマップに適用し、エミュレーションマップに基づく出力加速度を算出する(ステップ36)。
【0064】
次に、先行車両2は、当該算出した出力加速度と、車両速度mnを自車両の出力マップに適用し、実要求加速度を算出する(ステップ41)。
そして、先行車両は算出した実要求加速度を実現するトルクをフィードバック演算により算出し(ステップ42)、算出したトルクを要求トルクとして駆動モータ60に指令する(ステップ46)。
以上のようにして、先行車両2は、エミュレーションマップに基づく駆動モータ60の制御を行うことができる。
【0065】
一方、追従車両3の場合は、先行車両2に自車両の出力マップを送信し、これに対して先行車両2が生成したエミュレーションマップを先行車両2から受信して記憶する。
そして、エミュレーションマップと自車両の出力マップを用いて、図7で説明したステップ26〜ステップ46と同様の処理を行い、先行車両2に追従する。
なお、ステップ26の要求加速度aは、図1に示したフィードバック制御を行うフィードバックシステムから取得する。
【0066】
以上、本実施の形態とその変形例について説明したが、これによって次のような効果を得ることができる。
(1)性能差のある車両が(縦、横とも)追従制御を行う場合、先行車両2が、追従車両3にとって実現できない加速度や速度を出力してしまうことを防ぐことができる。
(2)各車両が自車両の原動機の出力特性をマップ化して出力マップとして保持しており、追従走行開始時に、通信によりこの情報をエミュレーションマップ生成元に送信することができる。
(3)エミュレーションマップの生成元は、送信されてきた出力マップを用いて、各回転速度と要求トルクに渡って、追従に参加する車両全てが出力しうる特性を演算し、この特性をエミュレーションマップにマップ化することができる。
(4)各車両は、エミュレーションマップを用いて、要求トルクの指令に対して出力すべき値を算出し、この値を用いて、自車両の出力マップから実際の出力トルクの指令を逆算して、これを用いて駆動モータ60に指令することができる。
【符号の説明】
【0067】
2 先行車両
3 追従車両
5 目標点
6 代表点
7 代表点
10 ECU
11 先行車両相対位置検出部
12 追従制御部
13 車両制御部
20 レーザレーダ
30 車速センサ
40 ヨーレートセンサ
50 無線通信装置
60a、60b 駆動モータ
71、72 出力曲線
81、82 出力曲線
91、92 出力曲線
101、102 出力曲線
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の駆動モータの出力指令に対する回転速度と出力の関係を表す出力マップを処理する情報処理装置であって、
複数の車両の駆動モータの出力マップを取得する出力マップ取得手段と、
前記取得した出力マップを用いて、前記複数の車両の駆動モータが出力できる前記複数の車両に共通の共通出力マップを生成する共通出力マップ生成手段と、
前記生成した共通出力マップを出力する共通出力マップ出力手段と、
を具備したことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記共通出力マップ生成手段は、出力指令に対して最も出力の低い出力を回転速度が変化する区間に渡って選択することにより前記共通出力マップを生成することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
請求項1、又は請求項2に記載の情報処理装置の前記共通出力マップ出力手段が出力する共通出力マップを取得する共通出力マップ取得手段と、
自車両の出力マップを記憶する自車両出力マップ記憶手段と、
出力指令を受け付ける出力指令受付手段と、
自車両の駆動モータの回転速度を取得する回転速度取得手段と、
前記受け付けた出力指令と前記取得した回転速度に対する共通出力を、前記取得した共通出力マップを用いて取得する出力取得手段と、
前記取得した共通出力に対する実出力指令を前記記憶した自車両の出力マップを用いて取得する出力指令取得手段と、
前記取得した実出力指令を用いて自車両の駆動モータに出力指令を行う出力指令手段と、
を具備したことを特徴とする車両。
【請求項4】
前記出力指令手段は、自車両が他車両に追従走行を行う場合、又は、他車両が自車両に対して追従走行を行う場合に実出力指令を用い、追従走行を行わない場合に前記出力指令受付手段で受け付けた出力指令を用いて前記駆動モータに出力指令を行う、
ことを特徴とする請求項3に記載の車両。
【請求項5】
請求項1、又は請求項2に記載の情報処理装置を搭載し、
前記搭載した情報処理装置が出力した共通出力マップを追従走行を行う他の車両に送信する共通出力マップ送信手段を具備したことを特徴とする請求項3に記載の車両。
【請求項6】
前記出力指令受付手段は、他車両に追従して走行するための出力指令を取得する、ことを特徴とする請求項3に記載の車両。
【請求項1】
車両の駆動モータの出力指令に対する回転速度と出力の関係を表す出力マップを処理する情報処理装置であって、
複数の車両の駆動モータの出力マップを取得する出力マップ取得手段と、
前記取得した出力マップを用いて、前記複数の車両の駆動モータが出力できる前記複数の車両に共通の共通出力マップを生成する共通出力マップ生成手段と、
前記生成した共通出力マップを出力する共通出力マップ出力手段と、
を具備したことを特徴とする情報処理装置。
【請求項2】
前記共通出力マップ生成手段は、出力指令に対して最も出力の低い出力を回転速度が変化する区間に渡って選択することにより前記共通出力マップを生成することを特徴とする請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
請求項1、又は請求項2に記載の情報処理装置の前記共通出力マップ出力手段が出力する共通出力マップを取得する共通出力マップ取得手段と、
自車両の出力マップを記憶する自車両出力マップ記憶手段と、
出力指令を受け付ける出力指令受付手段と、
自車両の駆動モータの回転速度を取得する回転速度取得手段と、
前記受け付けた出力指令と前記取得した回転速度に対する共通出力を、前記取得した共通出力マップを用いて取得する出力取得手段と、
前記取得した共通出力に対する実出力指令を前記記憶した自車両の出力マップを用いて取得する出力指令取得手段と、
前記取得した実出力指令を用いて自車両の駆動モータに出力指令を行う出力指令手段と、
を具備したことを特徴とする車両。
【請求項4】
前記出力指令手段は、自車両が他車両に追従走行を行う場合、又は、他車両が自車両に対して追従走行を行う場合に実出力指令を用い、追従走行を行わない場合に前記出力指令受付手段で受け付けた出力指令を用いて前記駆動モータに出力指令を行う、
ことを特徴とする請求項3に記載の車両。
【請求項5】
請求項1、又は請求項2に記載の情報処理装置を搭載し、
前記搭載した情報処理装置が出力した共通出力マップを追従走行を行う他の車両に送信する共通出力マップ送信手段を具備したことを特徴とする請求項3に記載の車両。
【請求項6】
前記出力指令受付手段は、他車両に追従して走行するための出力指令を取得する、ことを特徴とする請求項3に記載の車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2010−166635(P2010−166635A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−4390(P2009−4390)
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年1月13日(2009.1.13)
【出願人】(591261509)株式会社エクォス・リサーチ (1,360)
【Fターム(参考)】
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